説明

配線板の製造方法

【課題】 薄い銅箔とプリプレグとを積層する作業時の煩雑化や遅延を招くことが少なく、銅箔の位置ずれや皺の発生を防いで製品の信頼性や品質の向上を図ることのできる配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 厚さ18μm以下の銅箔3と厚さ100μm以下のプリプレグ4を使用して配線板を製造する配線板の製造方法であり、サポート基材1の弱粘着性を有する表面に銅箔3の全対向面を着脱自在に粘着し、銅箔3の表面にプリプレグ4と積層用の銅箔5を順次積層してプレスするとともに、積層用の銅箔5に所定の配線パターンをパターニングして積層体6を形成し、サポート基材1から積層体6を剥離した後、積層体6を形成する銅箔3を所定の電極パターンにパターニングする。剛性を有するサポート基材1に薄く扱いにくい銅箔3を粘着して剛性を確保するので、一枚目の銅箔3とプリプレグ4を積層する際、作業の煩雑化や遅延を招くことが少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ、スイッチ、携帯電話、携帯情報端末等に使用される配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線板を製造して出荷する場合には、パターン設計工程で電子機器としての性能・仕様を決定した後、図示しない銅箔やプリプレグを必要数用意し、これらをアートワーク工程、内層作成工程、多層積層工程、穴加工工程、メッキ工程、外層パターン作成工程、ソルダーレジスト形成工程、表面処理・外形加工工程で配線板に加工し、この配線板を完成品検査工程で検査して出荷するようにしている(特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
銅箔とプリプレグとは、様々なタイプがあるが、配線板に軽量化や薄型化が求められる場合には、厚さが18μm以下の銅箔が使用され、厚さ100μm以下のプリプレグが選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007‐324161号公報
【特許文献2】特開2000‐068648号公報
【特許文献3】特開平09‐153661号公報
【特許文献4】特開平07‐224252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における配線板は、以上のように製造され、薄型化が求められる場合に非常に薄く撓み易い銅箔が使用されるので、扱いにくい銅箔とプリプレグとを積層する際、特に最初の一枚目の銅箔とプリプレグとを積層する際、積層作業の煩雑化や遅延を招くことがある。また、銅箔に位置ずれや皺が発生し、製品の信頼性や品質の向上を図ることのできないおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、薄い銅箔とプリプレグとを積層する作業時の煩雑化や遅延を招くことが少なく、銅箔の位置ずれや皺の発生を防いで製品の信頼性や品質の向上を図ることのできる配線板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、厚さ18μm以下の銅箔と厚さ100μm以下のプリプレグとを使用して配線板を製造する配線板の製造方法であって、
サポート基材の少なくとも表裏いずれか一方の粘着面に、対向する銅箔の全対向面を着脱自在に粘着し、この銅箔にプリプレグと積層用の銅箔とを順次積層してプレスするとともに、積層用の銅箔に所定の導体パターンを形成して積層体を形成し、サポート基材から積層体を剥離した後、この積層体を形成する銅箔に所定の導体パターンを形成することを特徴としている。
【0008】
なお、積層体にプリプレグを介し積層用の銅箔を積層プレスし、この積層用の銅箔に所定の導体パターンを形成する処理を繰り返すことにより、積層体を多層化することができる。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における銅箔は、サポート基材の表裏面、サポート基材の表面、あるいはサポート基材の裏面に粘着される。銅箔や積層用の銅箔は、必要に応じ、パターン化することもできるし、一部又は全部を除去することもできる。また、積層体の層間には接続用のビアを形成し、このビアにはメッキを施すことができる。
【0010】
本発明によれば、サポート基材の粘着性を有する面に、薄い銅箔を重ねてその対向面の全面を着脱自在に粘着し、この銅箔にプリプレグと積層用の銅箔とを積層して加熱加圧する。この際、サポート基材に銅箔の全対向面を隙間なく粘着してこれらを一体化するので、銅箔を容易に取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄い銅箔とプリプレグとを積層する作業時の煩雑化や遅延を招くことが少なく、銅箔の位置ずれや皺の発生を防いで製品の信頼性や品質の向上を図ることができるという効果がある。
また、請求項2記載の発明によれば、積層体を多層化して配線量の増大に対応するので、LSIの高性能化と小型化、部品のリード点数の増加等に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る配線板の製造方法の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る配線板の製造方法の実施形態におけるサポート基材から積層体を剥離した状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図3】本発明に係る配線板の製造方法の実施形態における積層体を形成する銅箔を所定の電極パターンにパターニングした状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における配線板の製造方法は、図1ないし図3に示すように、所定の剛性を有するサポート基材1の表面に、導体パターンを形成する銅箔3を粘着し、この銅箔3にプリプレグ4と積層用の銅箔5とを積層してプレスするとともに、積層用の銅箔5に配線パターンをパターニングして積層体6を形成し、サポート基材1から積層体6を剥離した後、この積層体6を形成する銅箔3を電極パターン7にパターニングするようにしている。
【0014】
サポート基材1は、所定の材料を使用して銅箔3、プリプレグ4、積層用の銅箔5よりも大きい平面矩形の平板に形成され、平坦な全上面に耐熱性に優れる粘着層2が平面矩形に積層形成されており、この弱粘着性の粘着層2が表面として銅箔3を着脱自在に粘着保持する。このサポート基材1は、特に限定されるものではないが、例えば銅や42アロイ等からなる金属シート、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、ガラスエポキシ(ガラエポ)等を使用し、剛性、ハンドリング性、取扱性等を確保する観点から25μm〜1mmの厚さに形成される。
【0015】
粘着層2は、厚さ1〜50μm、好ましくは20μm程度の厚さを有するシリコーン系、フッ素系、エポキシ系、ウレタン系の粘着剤が使用される。但し、銅箔3、プリプレグ4、積層用の銅箔5の積層時に不要なガスが発生拡散するのを防止し、優れた粘着性や剥離性等を得るためには、熱硬化系の粘着剤、すなわち、シリコーン系粘着剤の採用が好ましい。
【0016】
銅箔3と積層用の銅箔5とは、配線板の薄型化に資するため、厚さ18μm以下、好ましくは厚さ12μm以下、例えば厚さ9μmのタイプが使用される。これら銅箔3や積層用の銅箔5のプリプレグ4と接触する接触面は、強度向上の観点からそれぞれ粗面化処理される。このような銅箔3と積層用の銅箔5とは、ハンダ接続の場合の信頼性を向上させるよう機能する。
【0017】
プリプレグ4は、補強材のガラス布に熱硬化性樹脂を含浸させ、半硬化のB状態にした接着シートであり、配線板の薄型化を図るため、厚さ100μm以下、例えば厚さ30μm程度のタイプが使用される。このようなプリプレグ4は、銅箔3や積層用の銅箔5と共に加熱加圧されることで、銅張積層板となる。
【0018】
上記において、薄い配線板を製造する場合には、先ず、サポート基材1を用意し、このサポート基材1の弱粘着性を有する平坦な表面に、銅箔3を対向させてその粘着層2に対向する対向面、すなわち、下面の全面を着脱自在に隙間なく粘着し、この銅箔3の表面にプリプレグ4と積層用の銅箔5とを順次積層(図1参照)してプレスするとともに、積層用の銅箔5に所定の配線パターンをパターニングして積層体6を形成する。
【0019】
この際、サポート基材1に銅箔3の全対向面を隙間なく粘着してこれらを一体化するので、銅箔3がばたつくことがなく、薄さにかかわらず、銅箔3を容易に取り扱うことができる。また、所定の配線パターンは、エッチングレジストを形成するとともに、レジストをパターニングし、積層用の銅箔5の不要部分をエッチングして除去することにより形成される。
【0020】
積層体6に多層化(例えば3層、5層、18層等)が要求される場合には、積層体6を形成する積層用の銅箔5表面にプリプレグ4を介し積層用の銅箔5を新たに積層プレスし、この積層用の銅箔5に所定の配線パターンをパターニングする処理を必要数繰り返し施すことにより、積層体6を多層化する。積層体6を多層化すると、積層体6の強度が徐々に増大するので、銅箔3の場合と異なり、積層用の銅箔5の接着や積層に支障を来たすことが少ない。また、積層体6には、層間を電気的に接続する複数のビアを形成し、各ビアにメッキを施しても良い。
【0021】
次いで、積層体6を端部から徐々に曲げながら引き上げ、サポート基材1の表面から積層体6を剥離(図2参照)した後、この積層体6の裏面、すなわち、積層体6を形成する銅箔3を所定の電極パターン7にパターニング(図3参照)すれば、薄い配線板を製造することができる。サポート基材1から積層体6を剥離する際、サポート基材1から粘着層2を剥離し、その後、剥離した粘着層2から積層体6を反らせて剥離するようにしても良い。また、所定の配線パターンは、各種のエッチング法により形成される。
【0022】
上記製法によれば、サポート基材1の表面に薄く扱いにくい銅箔3を粘着して剛性を確保するので、扱いにくい銅箔3とプリプレグ4とを積層する際、特に一枚目の銅箔3とプリプレグ4とを積層する際、積層作業の煩雑化や遅延を招くことがない。また、銅箔3を粘着してその位置ずれや皺の発生を有効に防止するので、配線むらの発生を抑制し、製品の信頼性や品質を大幅に向上させることができる。さらに、サポート基材1を25μm〜1mmの範囲で形成するので、優れた剛性を確保したり、ハンドリング性を向上させて取り扱いを簡易、かつ容易にすることができる。
【0023】
なお、上記実施形態ではサポート基材1の上面に粘着層2を接着したが、サポート基材1の上下面に粘着層2をそれぞれ接着し、各粘着層2に銅箔3を着脱自在に粘着して積層体6を形成しても良い。また、上記実施形態では積層体6を形成する銅箔3を電極パターン7にパターニングしたが、銅箔3を配線パターンにパターニングしても良い。また、配線板の配線パターンや電極パターン7には耐食メッキを施し、電極パターン7にはハンダバンプ等を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る配線板の製造方法は、インターポーザ、コアレスビルドアップ基板、半導体パッケージ、プリント配線板の製造分野等で使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 サポート基材
2 粘着層
3 銅箔
4 プリプレグ
5 積層用の銅箔
6 積層体
7 電極パターン(導体パターン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ18μm以下の銅箔と厚さ100μm以下のプリプレグとを使用して配線板を製造する配線板の製造方法であって、
サポート基材の少なくとも表裏いずれか一方の粘着面に、対向する銅箔の全対向面を着脱自在に粘着し、この銅箔にプリプレグと積層用の銅箔とを順次積層してプレスするとともに、積層用の銅箔に所定の導体パターンを形成して積層体を形成し、サポート基材から積層体を剥離した後、この積層体を形成する銅箔に所定の導体パターンを形成することを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項2】
積層体にプリプレグを介し積層用の銅箔を積層プレスし、この積層用の銅箔に所定の導体パターンを形成する処理を繰り返すことにより、積層体を多層化する請求項1記載の配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115316(P2013−115316A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261806(P2011−261806)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】