説明

酒石酸ゾルピデム組成物

【課題】酒石酸ゾルピデムの光に対する安定性を増大させることのできる組成物、及び、酒石酸ゾルピデムを主成分とし、フィルムコートを施さずに素錠の状態でも光による分解が少ない、安定な錠剤を提供する。
【解決手段】本発明の酒石酸ゾルピデム組成物は、酒石酸ゾルピデムと酸性物質とを含有することを特徴とするものである。酸性物質としては、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸及びフマル酸一ナトリウム等の有機酸を挙げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光安定性に優れた、酒石酸ゾルピデムを含有する組成物、及び、この酒石酸ゾルピデム組成物を含有する酒石酸ゾルピデム含有錠に関する。
【背景技術】
【0002】
(+)-N,N,6-Trimethyl-2-p-tolylimidazo[1,2-a]pyridine-3-acetamide hemi L-tartrate(一般名:酒石酸ゾルピデム)は、非ベンゾジアゼピン構造を有し、ω1受容体に選択的に作用する速効性の短時間型睡眠薬である。薬理学的及び臨床薬理学的には、選択的な睡眠鎮静作用を有し、しかも生理的睡眠パターンに近い睡眠をもたらすため、入眠障害、熟眠障害のみならず、作用持続時間が短いにもかかわらず途中覚醒、早朝覚醒にも効果を示し、翌朝までの持ち越し効果が少なく、又、反復投与しても対薬性、依存性が形成されにくく、増量なしで長時間安定した作用を示すことが知られている。
【0003】
一般的に酒石酸ゾルピデムは、光虐待において外観着色及び数種の光分解物が認められる、光に対して不安定な薬物である。そのため、現在では酒石酸ゾルピデム含有製剤としては、光遮断を目的として、フィルムコート錠としたものが上市されている。
【0004】
しかし、患者が市販されているフィルムコート錠を服用する際、錠剤を2分割する場合や錠剤を粉砕して粉末として服用する場合があるが、この際に主薬である酒石酸ゾルピデムが光に曝露されて変色し、且つ、光分解物が生成してしまうことから、フィルムコート錠には服用条件によっては安定性に劣るといった欠点がある。
【0005】
一方、フィルムコート錠については、患者が服用する際に、フィルム基材として多くのものに使用されているヒプロメロース等が、セルロース類特有の不快なヌメリ感や付着感又はベトツキ感を口腔内で発生させ、特に嚥下する力が弱っている高齢者患者、及び、小児や嚥下機能の低下している患者にとっては服用が困難となり、患者にとって苦痛となるといった問題が生じているばかりか、薬剤の胃腸管への付着によって副作用が発生するといった問題も生じている。
【0006】
又、フィルムコート錠を製造するには、通常の打錠工程の後にフィルムコーティング工程を設けることが必要であり、その製造工程は長時間を要し、生産性及び経済的に劣るといった欠点もあり、更に又、フィルムコーティング工程で使用するコーティング剤は、これを水に懸濁又は有機溶媒に溶解して用いるが、有機溶媒を用いる場合は、作業者への衛生上の悪影響、環境汚染及び製剤中の残留などの問題が多い。
【0007】
一方、従来より、光に対して不安定な薬物の製剤化に関し、薬物の安定化を図るために、種々の製剤化法が報告されている。例えば特開2003-104887号公報には、アラニジピンを含有する顆粒に対し、酸化チタン、食用黄色5号及び黄色三二酸化鉄を、精製水を用いてコーティングすることにより、光分解物の生成量を抑制したアラニジピン含有の顆粒剤が開示されている。しかしながら、上記のように、製剤においてコーティング工程が増えることで、これに要する製造時間及び労力は多大となるばかりか、コストが高くなり、又、細粒剤、顆粒剤、散剤の場合、比表面積が大きい為、表面全体を完全にコーティングすることは非常に難しく、錠剤へのコーティングと比べ時間を要し、労力も更に多大となるばかりか、コーティング中に発生する顆粒同士の凝集等により、収率の低下及び品質の悪化といった問題が生じる可能性が考えられる。
【0008】
又、特開2000-191516号公報には、ソファルコンと共に、食用黄色5号、酸化チタン又は三二酸化鉄を、精製水を用いて湿式造粒することにより、光によるソファルコンの含量低下を抑制させた細粒剤が開示されている。しかし、この方法では、本発明組成物の主成分である酒石酸ゾルピデムを製剤するに際し、光に対する安定性が不十分であり、特に製剤の製造後における経時的な光分解に対する安定性に問題があった。尚、遮光目的として酸化チタン、食用黄色5号、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄を配合することは、医薬品添加物辞典に記載の通り、遮光剤としての使用は公知の事実である。
【0009】
【特許文献1】特開2003-104887号公報
【特許文献2】特開2000-191516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、酒石酸ゾルピデムの光に対する安定性を増大させることのできる組成物、及び、酒石酸ゾルピデムを主成分とし、フィルムコートを施さずに素錠の状態でも光による分解が少ない、安定な錠剤を提供すべく、鋭意検討した結果、以下の手段によりこの課題を解決できることを見い出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、以下の構成により上記課題を解決しようとするものである。
【0012】
[1]少なくとも、酒石酸ゾルピデムと酸性物質とを含有することを特徴とする酒石酸ゾルピデム組成物。
【0013】
[2]酸性物質が有機酸である[1]に記載の酒石酸ゾルピデム組成物。
【0014】
[3]有機酸が、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸及びフマル酸一ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である[1]又は[2]に記載の酒石酸ゾルピデム組成物。
【0015】
[4]酒石酸ゾルピデムの含有量が、組成物100質量部に対して0.1〜20重量部の範囲である[1]乃至[3]のいずれかに記載の酒石酸ゾルピデム組成物。
【0016】
[5]酸性物質の含有量が、酒石酸ゾルピデム1質量部に対して0.01〜10重量部の範囲である[1]乃至[4]のいずれかに記載の酒石酸ゾルピデム組成物。
【0017】
[6][1]乃至[5]のいずれかに記載の酒石酸ゾルピデム組成物を含有する酒石酸ゾルピデム含有錠。
【0018】
[7]剤形が、フィルムコーティングを施す必要のない成形したままの素錠である[6]に記載の酒石酸ゾルピデム含有錠。
【発明の効果】
【0019】
本発明の酒石酸ゾルピデム組成物は、酒石酸ゾルピデムの光に対する安定性が改善され、光遮蔽を目的としたフィルムコートを施さない素錠の状態でも、光に対して安定な製剤とすることができる。
【0020】
又、本発明の酒石酸ゾルピデム組成物によれば、薬物に光遮蔽を目的とした皮膜剤を直接にコーティングする微粒子コーティング等の特別な製造機器を用いる必要や、又、特殊な製造技術や製造工程が多岐にわたる等の煩雑な製造方法を採用する必要がないので、生産性を向上することができるという利点を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0022】
以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0023】
本発明の酒石酸ゾルピデム組成物の主成分である酒石酸ゾルピデムは、(+)-N,N,6-Trimethyl-2-p-tolylimidazo[1,2-a]pyridine-3-acetamide hemi L-tartrate(IUPAC)であり、上記のように光に対して不安定であり、光に曝されると着色及び光分解物が生成する。
【0024】
本発明の酒石酸ゾルピデム組成物は、少なくとも、酒石酸ゾルピデムと酸性物質とを含有するが、この組成物に用いる酒石酸ゾルピデムの配合量は、医薬品の有効成分としての有効量を投与できるのであれば、特に限定されないが、組成物100重量部中に0.1〜20重量部であり、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0025】
本発明の酒石酸ゾルピデム組成物における酸性物質としては、有機酸を挙げることができ、この有機酸は、特に限定されず、例えば酒石酸、L-アスパラギン酸、アスコルビン酸、L-システイン、クエン酸、コハク酸、安息香酸、グリシン、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウム等を挙げることができるが、特に酒石酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸及びフマル酸一ナトリウムが好ましい。尚、有機酸は1種のみでも2種以上を混合して用いても良い。
【0026】
更に、本発明の酒石酸ゾルピデム組成物における酸性物質の含有量は、酒石酸ゾルピデム組成物の光に対する安定化が良好に得られ、酒石酸ゾルピデム含有錠の好ましい特性を得ることができる限りにおいて、特に限定されないが、通常酒石酸ゾルピデム1重量部に対して酸性物質0.01〜10重量部であり、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜4重量部である。
【0027】
本発明の酒石酸ゾルピデム組成物には、医薬組成物に一般に使用される各種の成分、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、着色剤、着香剤、香料、甘味剤及び滑沢剤などを任意に用いることができる。
【0028】
賦形剤としては、例えば、乳糖水和物、無水乳糖、乳糖G、ショ糖、白糖等の糖類;D-マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、マルトース、キシリトール、ソルビトール、トレハロース等の糖アルコール類;結晶セルロール、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;コーンスターチ、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分α化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン類;リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウム等を挙げることができ、中でもD-マンニトール、乳糖水和物、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウムが好ましい。
【0029】
崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、結晶セルロース、粉末セルロース、コーンスターチ、バレイショデンプン等を挙げることができ、中でも低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、粉末セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウムが好ましい。
【0030】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(置換度タイプ:1828、2208、2906、2910)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ポビドン、カルメロースナトリウム、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプン、結晶セルロース、デキストリン、アラビアゴム末等を挙げることができ、中でも低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、ヒプロメロース(置換度タイプ:2910)が好ましい。
【0031】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、青色1号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色102号アルミニウムレーキ等を挙げることができ、中でも黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄が好ましい。
【0032】
着香剤・香料としては、例えば、オレンジ油、レモン油、ストロベリーエッセンス、バニラエッセンス、バナナエッセンス、オレンジミクロン、ストロベリーミクロン、バニラミクロン、バナナミクロン、ピーチミクロン、サイダーミクロン、メントールミクロン、l-メントール等を挙げることができ、中でもオレンジミクロン、l-メントールが好ましい。
【0033】
甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、ステビア抽出物、カンゾウ、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、タウマチン、スクラロース等を挙げることができ、中でもアスパルテーム、スクラロースが好ましい。
【0034】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができ、中でもステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸が好ましい。
【0035】
又、打錠粉体、散剤、細粒剤又は顆粒剤を調製する際に、造粒溶媒を使用することができる。この造粒溶媒としては、特に限定されないが、例えば水や各種有機溶媒等、更に具体的には水;メタノール、エタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;塩化メチレン、或いはそれらの混合液等を挙げることができ、好ましくは、水、エタノール又は水とエタノールの混液である。
【0036】
本発明の酒石酸ゾルピデム含有錠は、酒石酸ゾルピデム、酸性物質、更には各種任意成分よりなる、上記本発明の酒石酸ゾルピデム組成物を含有するもので、酒石酸ゾルピデム、酸性物質、更には各種任意成分を公知の方法で添加、混合、造粒、乾燥、整粒、後混合、打錠することにより得ることができる。
【0037】
造粒方法としては、通常の製剤時に用いられる方法でよく、乾式造粒法、高速攪拌造粒法、流動層造粒法、転動流動層造粒法、遠心転動流動層造粒法、押出し造粒法等を例示することができる。
【0038】
例えば、本発明の酒石酸ゾルピデム組成物を、水、アルコール又は水とアルコールの混液にて造粒し、得られた造粒物を乾燥させ、整粒する。次いで得られた整粒物に、必要に応じ賦形剤、崩壊剤、着色剤、甘味剤、着香剤・香料及び滑沢剤等を添加し混合した後、打錠用粉体とする。又は、本発明の酒石酸ゾルピデム組成物を打錠用粉体とし、得られた打錠用粉体を、例えば単発打錠機又はロータリー打錠機を用いて圧縮成形して錠剤とする。
【0039】
本発明の酒石酸ゾルピデム含有錠の形状は特に制限されないが、丸型、キャブレット型、オブロング型等の形状などであってもよく、又、識別性のためのマーク、文字や分割用の割線を付すこともできる。
【0040】
このようにして得られた本発明の酒石酸ゾルピデム含有錠は、フィルムコーティングを施す必要のない成形したままの錠剤、即ち素錠として提供することができる。
【0041】
尚、本発明の酒石酸ゾルピデム組成物による打錠用粉体は、このまま細粒剤、顆粒剤、散剤として使用してもよく、或いはカプセルに充填するなどしてもよい。
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されるわけではない。
【0043】
実施例1
酒石酸ゾルピデム22.5g、酒石酸22.5g及びD-マンニトール274.5gを高速攪拌造粒機(VG-01:(株)パウレック製)にて混合し、水90gを徐々に加えながら造粒した。これを乾燥し、乾燥物を30号の篩(500μm)にて篩過・整粒した。この整粒物に結晶セルロース180g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース36gを混合し、更にステアリン酸マグネシウム4.5gを添加、混合して打錠用粉体を製した。この粉体を直径7.0mmの平杵、1錠重量120mgにて打錠した。
【0044】
実施例2
実施例1の調製法に従い、酒石酸の代わりにマレイン酸を用いて、以下、実施例1と同様に打錠用粉体を製し、同様に打錠を行った。
【0045】
実施例3
酒石酸ゾルピデム22.5g、酒石酸11.25g、沈降炭酸カルシウム22.5g、D-マンニトール258.66g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース36g及び黄色三二酸化鉄3.6gを高速攪拌造粒機(VG-01:(株)パウレック製)にて混合し、水90gを徐々に加えながら造粒した。これを乾燥し、乾燥物を30号の篩(500μm)にて篩過・整粒した。この整粒物に結晶セルロース170.1g、スクラロース6.75g、オレンジミクロン0.54g及び黄色三二酸化鉄3.6gを混合し、更にステアリン酸マグネシウム4.5gを添加、混合して打錠用粉体を製した。この粉体を直径7.0mmの平杵、1錠重量120mgにて打錠した。
【0046】
実施例4
酒石酸ゾルピデム22.5g、クエン酸11.25g、乳糖水和物273.87g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース36g、黄色三二酸化鉄3.6g及び三二酸化鉄0.45gを転動流動層造粒機(MP-01:(株)パウレック製)にて混合し、水/エタノール混液(7:3)400gを噴霧して造粒した。これを乾燥し、乾燥物を30号の篩(500μm)にて篩過・整粒した。この整粒物に結晶セルロース170.1g、アスパルテーム6.75g、オレンジミクロン2.43g、黄色三二酸化鉄3.6g及び三二酸化鉄0.45gを添加し、混合した後、ステアリン酸マグネシウム4.5g及び軽質無水ケイ酸4.5gを添加、混合して打錠用粉体を製した。この粉体を直径7.0mmの平杵、1錠重量120mgにて打錠した。
【0047】
実施例5
酒石酸ゾルピデム22.5g、フマル酸11.25g、リン酸水素カルシウム232.425g、粉末セルロース67.5g、黄色三二酸化鉄3.6g及び三二酸化鉄0.45gを転動流動層造粒機(MP-01:(株)パウレック製)にて混合し、水500gを徐々に加えながら造粒した。これを乾燥し、乾燥物を30号の篩(500μm)にて篩過・整粒した。この整粒物に結晶セルロース180g、スクラロース9g、l-メントール0.225g、黄色三二酸化鉄3.6g及び三二酸化鉄0.45gを添加、混合した後、ステアリン酸マグネシウム4.5g及び含水二酸化ケイ素4.5gを添加、混合して打錠用粉体を製した。この粉体を直径8.5mmの平杵、1錠重量240mgにて打錠した。
【0048】
実施例6
酒石酸ゾルピデム22.5g、酒石酸11.25g、デキストリン22.5g、黄色三二酸化鉄2.7g、乳糖水和物260.55g、結晶セルロース45g、ヒプロメロース(置換度タイプ:2910)18g、カルボキシスターチナトリウム18gを高速攪拌造粒機(VG-01:(株)パウレック製)にて混合し、水80gを徐々に加えながら造粒した。これを乾燥し、乾燥物を30号の篩(500μm)にて篩過・整粒した。この整粒物にステアリン酸マグネシウム4.5gを混合して打錠用粉体を製した。この粉体を直径6.5mmの平杵、1錠重量90mgにて打錠した。
【0049】
実施例7
酒石酸ゾルピデム22.5g、酒石酸67.5g、D-マンニトール177.21gを転動流動層造粒機(MP-01:(株)パウレック製)にて混合し、水441gにヒプロメロース(置換度タイプ:2910)9gを溶解した溶液に、酸化チタン90g及び黄色三二酸化鉄0.54gを加えて懸濁液を製し、この懸濁液を噴霧して造粒した。これを乾燥し、乾燥物を30号の篩(500μm)にて篩過・整粒した。この整粒物に結晶セルロース135g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース22.5g及びアスパルテーム13.5gを添加し、混合した後、ステアリン酸マグネシウム2.25gを添加、混合して打錠用粉体を製した。この粉体を直径7.0mmの平杵、1錠重量120mgにて打錠した。
【0050】
比較例1
実施例1の調製法に従い、酒石酸の代わりにD-マンニトールを用いた以外は実施例1と同様に打錠用粉体を製造し、同様に打錠を行った。
【0051】
比較例2
酒石酸ゾルピデム22.5g、沈降炭酸カルシウム22.5g、D-マンニトール277.11g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース36gを高速攪拌造粒機(VG-01:(株)パウレック製)にて混合し、水100gを徐々に加えながら造粒した。これを乾燥し、乾燥物を30号の篩(500μm)にて篩過・整粒した。この整粒物に結晶セルロース170.1g、スクラロース6.75g、オレンジミクロン0.54gを混合し、更にステアリン酸マグネシウム4.5gを添加、混合して打錠用粉体を製した。この粉体を直径7.0mmの平杵、1錠重量120mgにて打錠した。
【0052】
比較例3
酒石酸ゾルピデム22.5g、リン酸水素カルシウム251.775g及び粉末セルロース67.5gを転動流動層造粒機(MP-01:(株)パウレック製)にて混合し、水600gを徐々に加えながら造粒した。これを乾燥し、乾燥物を30号の篩(500μm)にて篩過・整粒した。この整粒物に結晶セルロース180g、スクラロース9g及びl-メントール0.225gを添加、混合した後、ステアリン酸マグネシウム4.5g及び含水二酸化ケイ素4.5gを混合して打錠用粉体を製した。この粉体を直径8.5mmの平杵、1錠重量240mgにて打錠した。
【0053】
比較例4
実施例6の調製法に従い、酒石酸、デキストリン及び黄色三二酸化鉄の代わりに乳糖水和物を用いた以外は実施例6と同様に打錠用粉体を製造し、同様に打錠を行った。
【0054】
比較例5
実施例7の調製法に従い、酒石酸の代わりにD-マンニトールを用いた以外は実施例7と同様に(即ち、特開2000-191516号公報記載の方法に準じて)打錠用粉体を製造し、同様に打錠を行った。
【0055】
実施例1〜7及び比較例1〜5で得られた酒石酸ゾルピデム含有錠並びに市販製剤を、それぞれ透明なシャーレに均一に広げ、25℃・65%RH保存、蛍光灯照射下で50日間放置(120万Lux・hr照射)及びD65ランプ照射下で25日間放置(120万Lux・hr照射)した後、錠剤外観の目視検査及び錠剤中の総類縁物質量を測定した。尚、総類縁物質量は、高速液体クロマトグラフ法にて測定し、面積百分率で求めた。結果を表1及び2に示す。
【0056】
表1及び2に示されるように、実施例1〜7の酒石酸ゾルピデム含有錠は、比較例1〜5の組成物に比べ蛍光灯照射及びD65ランプ照射による光分解物の生成量が少なく、錠剤表面の着色もなく光安定性が確保されていることが確認された。又、市販製剤と比較しても光による分解が同等もしくは改善されており、フィルムを施すことなく素錠の状態においても光に対して安定であることが確認された。
【0057】
【表1】


【0058】
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の酒石酸ゾルピデム組成物では、酒石酸ゾルピデムの物性である光に対する不安定性に改善が認められたため、素錠の状態で光に対して安定な錠剤を製造することが可能である。
【0060】
又、光に対して安定な製剤であるため、コーティングを施す必要がなく、コーティング工程を簡素化できることから、上市されている製剤と比較して経済的に優れ、又、生産性を向上することが可能である。更に、本発明の酒石酸ゾルピデム組成物による製剤は、光に対して安定であるため、錠剤を2分割して投与する方法や、錠剤を粉砕し粉末にして投与する方法も採用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酒石酸ゾルピデムと酸性物質とを含有することを特徴とする酒石酸ゾルピデム組成物。
【請求項2】
酸性物質が有機酸である請求項1に記載の酒石酸ゾルピデム組成物。
【請求項3】
有機酸が、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸及びフマル酸一ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の酒石酸ゾルピデム組成物。
【請求項4】
酒石酸ゾルピデムの含有量が、組成物100質量部に対して0.1〜20重量部の範囲である請求項1乃至3のいずれかに記載の酒石酸ゾルピデム組成物。
【請求項5】
酸性物質の含有量が、酒石酸ゾルピデム1質量部に対して0.01〜10重量部の範囲である請求項1乃至4のいずれかに記載の酒石酸ゾルピデム組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の酒石酸ゾルピデム組成物を含有する酒石酸ゾルピデム含有錠。
【請求項7】
剤形が、フィルムコーティングを施す必要のない素錠である請求項6に記載の酒石酸ゾルピデム含有錠。

【公開番号】特開2008−105969(P2008−105969A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288539(P2006−288539)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(393016952)小林化工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】