説明

酢酸およびレイシポリサッカリドの寿命延長効果

少なくとも酢酸およびRFポリサッカリドがC.elegansまたはヒトにおける寿命の延長に有効である、C.elegansにおいてDAF−16の発現をもたらす酢酸の組成物ならびに酢酸およびRFの組成物。少なくとも酢酸およびRFポリサッカリドを含む組成物を投与する工程、細胞表面上の少なくとも1つの受容体に組成物を提供する工程、DAF−16発現を増加させる工程を含む、DAF−16発現を調節する方法。C.elegansの寿命およびその基礎となる機構に影響を及ぼすかどうかを決定するための試験を行うために、生体生物モデルとしてC.elegansを使用した、いくつかの抗酸化ビタミン、伝統的な漢方薬、および酢を含む一連の化合物または化合物の構成部分をスクリーニングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
MING−HONG CHUANG
WEN−BIN YANG,
SHYH−HORNG CHIOU
CHI−HUEY WONG 。
【0002】
(関連出願)
この出願は、2008年4月17日に出願された米国仮特許出願番号第61/045,911号、および2009年4月16日に出願された米国特許出願番号第12/425,319号に対する優先権を主張し、これらは、本明細書において完全に説明されたかのように、参照によって本明細書に援用される。この出願は、2007年9月21日に出願され米国特許公開第2007/0105814号として公開された米国特許出願番号第11/534204号、および2006年10月13日に出願され米国特許公開第2007/0231339号として公開された米国特許出願番号第11/549,215号を、本明細書において完全に説明されたかのように、参照によって援用する。
【0003】
(開示の分野)
本開示は、DAF−16/FOXOの遺伝子発現の上昇のための化合物および方法、高等生物の寿命延長を増加させる可能性についてのスクリーニング系、ならびにかかる可能性(DAF−16/FOXOの遺伝子発現の上昇が含まれるが、これに限定されない)を示す化合物の同定に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
老化は、固有の際立った多様性を有する基本的過程である。老化は、他の多くの生物学的過程と同様に、進化を通じて保存されてきた経路による調節を受ける。これらの経路内の単一遺伝子の変化は劇的に寿命を延長し得、実験動物を正常であるが通常よりゆっくり老化させることができる。これらの長命変異体には異常な寿命で生存するものもある。老化研究では、2つの一般的な無脊椎動物モデル生物(すなわち、Caenorhabditis elegansおよびDrosophila melanogaster)が広く使用されていた。
【0005】
C.elegansは、特に、近年大いに研究されている線虫である。これは、温暖な地域の土壌に生息し、細菌を常食とするたった1mm長の小さな蠕虫である。これは、1つにはその短く且つ一貫した寿命(20℃で平均14〜20日間)により、老化研究のために広く使用されてきた。C.elegansの寿命調節機構は、保存されたインスリン/IGF−1 DAF−2シグナル伝達経路に関連することが示されている。このインスリン−シグナル伝達経路は、DAF−2膜貫通受容体、一連の細胞内キナーゼ、およびDAF−16タンパク質(最終的に、代謝遺伝子、シャペロン遺伝子、細胞防御遺伝子、および他の遺伝子の転写を正および負の両方に制御するように機能する)を含む。種々の抗酸化酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD))の発現調節におけるDAF−16タンパク質は、C.elegansの寿命の調節で主要な役割を果たす。このインスリン様シグナル伝達カスケードを介した寿命の調節は、進化的に保存された機構であり、ハエおよびマウスで機能することも証明されている。しかし、DAF−16活性はまた、核内でJNKシグナル伝達経路、SIR−2.1デアセチラーゼ、HSF−1、LIN−14、およびSMK−1によって調節されることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(概要)
以前の研究により、Ganoderma lucidum由来のポリサッカリド画分3(RF3)がToll様受容体4(TLR4)を介した免疫調節効果を保有することが示されている。ポリサッカリドRF3を与えた場合、腫瘍移植マウスは長寿命を享受し、これはおそらく宿主免疫応答の活性化に起因する。C.elegansにTLRの何らかのオルソログが存在するかどうか、およびその機能が何であり得るかについては依然として未確定である。しかし、Toll様受容体細胞内ドメイン(TIR−1)は、この原始的な蠕虫に存在することが明確に証明されている。TIR−1はまた、C.elegans中の抗菌経路に関連することが示されている。したがって、RF3は、C.elegansの寿命に有益な効果を及ぼす候補である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態によれば、少なくとも酢酸および/またはRF3ポリサッカリドを組み合わせて含む組成物であって、少なくとも酢酸および/またはRF3ポリサッカリドをDAF−16発現を調節するために投与し、DAF−16が配列番号19に対応する配列を有し得る、組成物を開示する。組成物は、約50ppm〜約100ppmの酢酸および約100ppmと約500ppmとの間のRF3ポリサッカリドを含むことができる。組成物は、さらに、Antrodia camphorate抽出物およびHericium erinaceus抽出物の少なくとも1つを含むことができる。
【0008】
本開示の実施形態によれば、少なくとも酢酸および/またはRF3ポリサッカリドを含む組成物を投与する工程、細胞表面上の少なくとも1つの受容体に組成物を提供する工程、DAF−16発現を増加させる工程であって、DAF−16が配列番号19に対応する配列を有し得る工程、を含む、DAF−16発現の調節方法を開示する。少なくとも1つの受容体にはTLR4が含まれ得る。DAF−16発現の増加誘導には、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路の活性化、RAB−1発現の増加誘導、PMK−1発現の増加誘導、またはDAF−2発現の阻害が含まれ得る。
【0009】
本開示の実施形態によれば、少なくとも1つの公知の化合物をC.elegansに投与する工程、少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegansの寿命を少なくとも1つの公知の化合物を投与しなかったコントロールC.elegansの寿命と比較する工程、少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegansの寿命が選択した比率で通常の寿命を超えたかどうかを決定する工程、および少なくとも1つの公知の化合物がC.elegansにおいて少なくともDAF−16発現を増加させたかどうかを決定する工程を含む、C.elegansにおけるDAF−16発現への効果について化合物をスクリーニングする方法を開示する。少なくとも1つの公知の化合物は酢酸を含むことができる。少なくとも1つの公知の化合物がC.elegansにおいて少なくともDAF−16発現を増加させたかどうかを決定する工程を、少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegans由来の単離および精製したRNAサンプルの逆転写の実施によって達成することができる。単離および精製したRNAサンプルは、DAF−2、DAF−16、TIR−1、RAB−1、およびPMK−1の少なくとも1つを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
(図面)
本開示の上記特徴および目的は、添付の図面と共に用いられる以下の説明を参照してより明らかになる。図中、同等の参照番号は同等の要素を示す。
【図1】図1A〜Cは、C.elegansの寿命に及ぼす試験物質の効果を示すグラフである。示した生存曲線は、表示の物質での処理後に分析した種々の蠕虫組を示す。(A)水(コントロール)、酢酸(50ppm)、および種々のビタミン(50ppm)で処理した蠕虫。(B)水(コントロール)、酢酸(50ppm)、およびRF3(100ppm)で処理した蠕虫。(C)水(コントロール)および東洋の異なる種の薬用キノコ由来のポリサッカリド画分(100ppm)で処理した蠕虫。寿命測定実験を20℃で行った。各生存率(%)を、表示時点での、最初の蠕虫数に対する生存蠕虫数の比から計算した。統計的P値を、表示物質で処理した各実験群から計算し、同一時点でのコントロール群と直接比較した。分析を三連で行い、類似の結果が得られ、P<0.01を使用して分析した。濃度を、重量/体積(w/v)比に基づいたppm(100万分率)で示した。
【図2】図2A〜Dは、処理2日後のC.elegansにおけるDAF−2、DAF−16、TIR−1、RAB−1、PMK−1、およびCLK−1 mRNAの転写物の半定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)検出である。各遺伝子の特異的プライマー(表1に列挙)を反応で使用し、ACT−1を内部コントロールとして使用した。遺伝子の発現レベルの比較は、全RT−PCRデータにおいて内部コントロールに対する正規化に基づいて行った。(A)処理後のDAF−16発現。(上のパネル)C:コントロール;F:RF3(100ppm);A:酢酸(50ppm);(下のパネル)C:コントロール;F3:RF3(100ppm);AC:A.camphorate菌糸の粗抽出物(100ppm);HE:H.erinaceus菌糸の粗抽出物(100ppm);(B)処理後のDAF−2およびTIR−1の発現。C:コントロール;F3:RF3(100ppm);AC:A.camphorate菌糸の粗抽出物(100ppm);HE:H.erinaceus菌糸の粗抽出物(100ppm);(C)RF3(100ppm)あり(F)またはなし(N)での2日間のC.elegansのインキュベーション後のDAF−16、CLK−1、TIR−1、RAB−1、およびPMK−1の発現。RAB−1およびPMK−1は、MAPK経路中に存在する2つの重要な遺伝子である。矢印はRF3処理後の表示遺伝子の転写レベルの上昇を示し、横線はRF3処理後のmRNA転写に変化がないことを示す。(D)RF3刺激に応答したTIR−1およびDAF−16のmRNA転写の経時分析。全実験を三連で行った。
【図3】図3A〜Bは、RF3で処理したC.elegansの寿命に及ぼすRNAiによる遺伝子ノックアウト実験の結果を示すグラフである。材料および方法に記載のようにDAF−16遺伝子およびTIR−1遺伝子に特異的なRNAi細菌を含むプレートを使用して寿命を測定した。(A)コントロール蠕虫と比較すると、DAF−16 RNAiは寿命を約25%短縮した一方で、TIR−1 RNAiは寿命を約18%延長させた。(B)DAF−16をターゲティングするRNAiにより、RF3処理による延命が完全に阻止された。RF3およびDAF−16 RNAiの両方で処理した蠕虫は、野生型コントロール群に類似の寿命を有していた。他方では、TIR−1 RNAiは、RF3で処理した蠕虫の延命に対してより弱い影響を示した。上記蠕虫はTIR−1をノックアウトしていない蠕虫より短い寿命を有していたが、コントロール群よりも依然として遥かに長く生存した(18%超)。実験を三連で行い、結果をP<0.01を使用して分析した。注目すべきは、TIR−1の活性化がRF3処理によるDAF−16媒介延命のための排他的シグナル伝達経路上に存在する可能性が低いことである。
【図4】図4A〜Dは、C.elegansにおける寿命調節および遺伝子発現に及ぼすRF3およびLPSの影響を示す。(A)濃度100ppmおよび500ppmのRF3および濃度10ppmのLPSで処理した蠕虫の寿命測定。通常の蠕虫(N、コントロール群)と比較して、10ppm LPSで処理した蠕虫で寿命が約13%短縮され、100ppm RF3で35%延命された。500ppmのRF3処理では100ppmより寿命に及ぼす効果が弱かったことに留意すべきである。(B)50ppm酢酸(A)、100ppm RF3(F)、および10ppm LPS(L)で処理したtif−1およびDAF−16 mRNA転写レベルの半定量的RT−PCR分析。(C)RNAiによるTIR−1のノックアウトあり(白抜きのバー)またはなし(黒塗りのバー)での100ppm RF3または10ppm LPSでの処理後のTIR−1、DAF−16、およびRAB−1 mRNAレベルのリアルタイムq−PCR分析(P値<0.01、独立両側t検定を使用した分析;エラーバー、s.d.)。半定量的RT−PCRおよびリアルタイムq−PCR実験の両方についてn=4。
【図5】図5は、酢酸ならびにレイシ(Reishi(RF3))、それぞれA.camphorataおよびH.erinaceus由来のポリサッカリド画分で処理したC.elegansにおけるDAF−16媒介寿命延長効果に関与する細胞シグナル伝達経路についてのスキームの略図である。上下の矢印は、シグナル伝達経路に関与する遺伝子の上方制御または下方制御を示す。酢酸およびH.erinaceusについては、MAPK経路は見かけ上関連しないようである。その寿命延長促進効果は、おそらく、いくつかの未知の因子または細胞受容体を使用したいくつかの未同定の下流シグナル伝達調節によって、DAF−2発現を減少させDAF−16発現を間接的に増加させる経路によって媒介された。
【図6】図6A〜Bは、C.elegansの寿命に及ぼす酢酸およびRF3の相乗効果を示すグラフである。(A)異なる比率または濃度でのRF3と酢酸との混合物の効果。異なる比率の酢酸とRF3との種々の混合物は全て、単独使用したいずれかの物質よりも高い活性を保有することを明確に示す。50ppmの酢酸および100ppmのRF3を含む混合物を使用して最適な結果が得られた。(B)RF3(100ppm)と酢酸(50ppm)との混合物の長期安定性。C.elegansにおいて試験した場合、2週間の静置後でさえ、混合物は依然として新たに調製したRF3溶液と同一の活性を維持していた。生存率曲線下の表は、コントロール群と比較した酢酸とRF3との種々の混合物についての延命力を一覧にしている。示した全ての値は、三連の実験から計算した平均±SDである。
【図7】図7は、配列番号1〜14によって識別した、反応で使用した各遺伝子の特異的プライマーを示す表である。図2A〜Dに示すように、ACT−1を、処理2日後のC.elegansにおけるDAF−2、DAF−16、TIR−1、RAB−1、PMK−1、およびCLK−1 mRNAの転写物のRT−PCR検出の内部コントロールとして使用した。
【図8】図8は、図9A〜Dに示すような、酢酸およびレイシポリサッカリド画分RF3で処理したC.elegansにおいて異なって発現したタンパク質のリストを示す表である。
【図9−1】図9A〜Dは、RF3(100ppm)、酢酸(50ppm)、またはこれら2つの混合物で処理したC.elegansの2−DEゲルパターンの比較を示す。C.elegansの溶解物由来の全タンパク質150μgを、IPGゲルストリップ(pH3〜10、13cm)上にロードした。IEF後のIPGストリップを再水和し、2−DEに供した。処理なしのコントロール(A)、酢酸での処理(B)、RF3での処理(C)、およびこれらの混合物での処理(D)についてのC.elegansの2−DEタンパク質プロフィールを得た。マップ上に1〜15番とマークしたタンパク質スポットは異なって発現することが見出された。これらを、LC−MS/MSによってさらに同定し、図8の表中に列挙した。2DE−ゲル画像を、蛍光画像スキャナTyphoon9400を使用してスキャンし、PDQuestソフトウェアを使用して分析した。各ゲル中のタンパク質スポットの強度レベルを、ゲル全体について検出された全タンパク質強度の比率としてゲル間で正規化した。
【図9−2】図9A〜Dは、RF3(100ppm)、酢酸(50ppm)、またはこれら2つの混合物で処理したC.elegansの2−DEゲルパターンの比較を示す。C.elegansの溶解物由来の全タンパク質150μgを、IPGゲルストリップ(pH3〜10、13cm)上にロードした。IEF後のIPGストリップを再水和し、2−DEに供した。処理なしのコントロール(A)、酢酸での処理(B)、RF3での処理(C)、およびこれらの混合物での処理(D)についてのC.elegansの2−DEタンパク質プロフィールを得た。マップ上に1〜15番とマークしたタンパク質スポットは異なって発現することが見出された。これらを、LC−MS/MSによってさらに同定し、図8の表中に列挙した。2DE−ゲル画像を、蛍光画像スキャナTyphoon9400を使用してスキャンし、PDQuestソフトウェアを使用して分析した。各ゲル中のタンパク質スポットの強度レベルを、ゲル全体について検出された全タンパク質強度の比率としてゲル間で正規化した。
【図10−1】図10(a)〜(d)は、(a)16種のタンパク質(ヒトFOXOタンパク質FOXO1、FOXO3a、およびFOXO4、C.elegans DAF−16、ならびにマウスFoxa3)のフォークヘッドドメインの多重配列アラインメントから計算した系統樹;(b)哺乳動物FOXOタンパク質と同一の方向に3つのPKBリン酸化部位を有するdFOXO(この部位をタンパク質上に示した)。PEST配列(破壊)、核局在化配列(NLS)、核外輸送配列(NES)、およびDNA結合配列も示す;(c)dFOXO、ヒトFOXO、およびDAF−16のフォークヘッドドメインの複数のアミノ酸配列アラインメント(アラインメント上に二次構造を示し、類似および同一のアミノ酸残基にそれぞれ灰色および黒で陰をつけた);および(d)31キロベース(kb)のゲノム領域にわたり、且つ11個のエクソン(灰色のバー)を含むdFOXO遺伝子を示す。
【図10−2】図10(a)〜(d)は、(a)16種のタンパク質(ヒトFOXOタンパク質FOXO1、FOXO3a、およびFOXO4、C.elegans DAF−16、ならびにマウスFoxa3)のフォークヘッドドメインの多重配列アラインメントから計算した系統樹;(b)哺乳動物FOXOタンパク質と同一の方向に3つのPKBリン酸化部位を有するdFOXO(この部位をタンパク質上に示した)。PEST配列(破壊)、核局在化配列(NLS)、核外輸送配列(NES)、およびDNA結合配列も示す;(c)dFOXO、ヒトFOXO、およびDAF−16のフォークヘッドドメインの複数のアミノ酸配列アラインメント(アラインメント上に二次構造を示し、類似および同一のアミノ酸残基にそれぞれ灰色および黒で陰をつけた);および(d)31キロベース(kb)のゲノム領域にわたり、且つ11個のエクソン(灰色のバー)を含むdFOXO遺伝子を示す。
【図10−3】図10(a)〜(d)は、(a)16種のタンパク質(ヒトFOXOタンパク質FOXO1、FOXO3a、およびFOXO4、C.elegans DAF−16、ならびにマウスFoxa3)のフォークヘッドドメインの多重配列アラインメントから計算した系統樹;(b)哺乳動物FOXOタンパク質と同一の方向に3つのPKBリン酸化部位を有するdFOXO(この部位をタンパク質上に示した)。PEST配列(破壊)、核局在化配列(NLS)、核外輸送配列(NES)、およびDNA結合配列も示す;(c)dFOXO、ヒトFOXO、およびDAF−16のフォークヘッドドメインの複数のアミノ酸配列アラインメント(アラインメント上に二次構造を示し、類似および同一のアミノ酸残基にそれぞれ灰色および黒で陰をつけた);および(d)31キロベース(kb)のゲノム領域にわたり、且つ11個のエクソン(灰色のバー)を含むdFOXO遺伝子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
いくつかの例示的実施形態において、酢酸、RF3ポリサッカリド、Antrodia camphorate抽出物、およびHericium erinaceus抽出物の少なくとも1つを含む組成物を開示する。かかる組成物を投与してDAF−16発現を調節することができる。DAF−16発現の増加は寿命延長の増大に関連すると考えられる。
【0012】
組成物をDAF−16発現を調節するために被験体に投与することができる。組成物が酢酸を含む実施形態において、酢酸は、組成物の約50ppm〜約100ppmを構成することができる。組成物がRF3ポリサッカリドを含む実施形態において、RF3ポリサッカリドは組成物の約100ppmと約500ppmとの間を構成することができる。
【0013】
いくつかの例示的実施形態において、組成物は、RF3ポリサッカリド抽出物またはAntrodia camphorate抽出物を含むことができる。投与した場合、RF3ポリサッカリドまたはAntrodia camphorateを含む組成物は、細胞の1つまたは複数の受容体に作用してMAPK経路を活性化させ、それにより、DAF−16発現が増加すると考えられる。MAPK経路は、PMK−1およびDAF−16の発現をもたらすTIR−1およびRAB−1の発現によって活性化され得、または、RAB−1、PMK−1、およびDAF−16の発現をもたらす別の機構によって活性化され得る。したがって、RF3ポリサッカリドまたはAntrodia camphorateを含む組成物は、少なくともTIR−1、RAB−1、PMK−1、およびDAF−16の発現を増加させると考えられる。
【0014】
いくつかの例示的実施形態において、組成物は、酢酸またはHericium erinaceus抽出物を含むことができる。投与した場合、酢酸またはHericium erinaceusを含む組成物は、細胞の1つまたは複数の受容体に作用してDAF−2発現を阻害し、それにより、DAF−16発現を増加させると考えられる。
【0015】
酢酸およびHericium erinaceusが作用する少なくともいくつかの受容体は、RF3ポリサッカリドおよびAntrodia camphorateが作用する少なくともいくつかの受容体と異なると考えられる。同様に、本明細書中に考察されるように、別の経路によってDAF−16発現を増加させることができる。酢酸およびHericium erinaceusの少なくとも1つ、ならびにRF3ポリサッカリドおよびAntrodia camphorateの少なくとも1つを含む組成物は、より高いDAF−16発現を引き起こすことができる。例えば、少なくとも酢酸およびRF3ポリサッカリドを含む組成物を投与してDAF−16発現を調製することができる。
【0016】
いくつかの例示的実施形態において、DAF−16発現の制御方法を使用することができる。本方法は、少なくとも酢酸およびRF3ポリサッカリドを含む組成物を投与する工程、細胞表面上の少なくとも1つの受容体に組成物を提供する工程、およびDAF−16発現を増加させる工程を含む。組成物は、TIR−1の発現に続くRAB−1の発現によってまたは何らかの他の機構によってMAPK経路を活性化する受容体に対して作用することができる。MAPK経路の活性化は、少なくともPMK−1の発現を含むことができる。組成物はまた、DAF−2発現を阻害する受容体に対して作用し得、それにより、DAF−16発現を増加させ得る。
【0017】
いくつかの例示的実施形態における、C.elegansの寿命およびその基礎をなす機構に影響を及ぼすかどうかについてのデータを取得するための、抗酸化ストレス作用があるとか免疫を高めるかまたは増強するとして促されている一連の市販の栄養補助食品(いくつかの抗酸化ビタミン、伝統的な漢方薬、および酢が含まれる)のスクリーニング方法。
【0018】
本開示のいくつかの例示的実施形態において、種々の化合物の寿命延長可能性を試験および評価するための生体モデル生物としてC.elegansを使用した化合物スクリーニング系を開示する。1つの態様では、上記生体モデルの寿命への効果について天然物質群をスクリーニングする。
【0019】
いくつかの例示的実施形態における、C.elegansにおけるDAF−16発現への効果について化合物をスクリーニングする方法。この方法は、少なくとも1つの公知の化合物をC.elegansに投与する工程、少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegansの寿命を少なくとも1つの公知の化合物を投与しなかったコントロールC.elegansの寿命と比較する工程、少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegansの寿命が選択した比率で通常の寿命を超えたかどうかを決定する工程、および少なくとも1つの公知の化合物がC.elegansにおいて少なくともDAF−16発現を増加させたかどうかを決定する工程を含むことができる。少なくとも1つの公知の化合物は酢酸を含むことができる。少なくとも1つの公知の化合物がC.elegansにおいて少なくともDAF−16発現を増加させたかどうかを決定する工程を、少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegans由来の単離および精製したRNAサンプルの逆転写の実施によって達成することができる。単離および精製したRNAサンプルは、DAF−2、DAF−16、TIR−1、RAB−1、およびPMK−1の少なくとも1つを含むことができる。
【0020】
別の態様によれば、酢酸、RF3ポリサッカリド、Antrodia camphorate抽出物、およびHericium erinaceus抽出物の少なくとも1つを含む組成物を、本開示を読んだ際に当業者が同定可能なさらなる活性薬剤、キャリア、ビヒクル、賦形剤、または助剤と共に、医薬組成物または栄養補助組成物中に含めることができる。
【0021】
医薬組成物または栄養補助組成物は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリアを含む。かかる医薬組成物では、酢酸、RF3ポリサッカリド、Antrodia camphorate抽出物、およびHericium erinaceus抽出物の少なくとも1つを含む組成物は、「活性薬剤」とも呼ばれる「活性化合物」を形成する。本明細書中で使用する場合、用語「薬学的に許容可能なキャリア」には、薬学的投与に適合可能な、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などが含まれる。補助活性化合物を、組成物に組み込むこともできる。意図する投与経路に適合するように薬学的組成物を処方する。投与経路の例としては、非経口投与(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口投与(例えば、吸入)、経皮投与(局所)、経粘膜投与、および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下への適用のために使用される溶液または懸濁物には以下の成分が含まれ得る:無菌希釈剤(注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒など);抗菌剤(ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど);抗酸化剤(アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸など);緩衝液(酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはリン酸緩衝液など)、および張性を調整するための薬剤(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)。酸または塩基(塩酸または水酸化ナトリウムなど)を使用してpHを調整することができる。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量バイアルに封入することができる。
【0022】
本明細書中で使用する場合、被験体は、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えば、ゴリラ(guerilla)、マカク、マーモセット)、家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、およびブタ)、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲野性動物(例えば、キツネ、シカ)、および本開示の薬剤から利益を得ることができる任意の他の生物をいう。本明細書中に記載の薬剤から利益を得ることができる動物のタイプに制限はない。ヒトであるか非ヒト生物であるかとは無関係に、被験体を、患者、個体、動物、宿主、またはレシピエントということができる。
【0023】
注射での使用に適切な医薬組成物には、滅菌の水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射液もしくは分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために、適切なキャリアには、生理食塩水、静菌化注射用蒸留水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。全ての場合において、組成物は無菌であるべきであり、且つ容易な注射可能性(syringability)が存在する程度に流体であるべきである。この組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護されるべきである。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)ならびにこれらの適切な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、そして界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の阻止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなど)によって達成することができる。多くの場合、組成物に、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトールなど)または塩化ナトリウム)を含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによって達成され得る。
【0024】
滅菌注射液を、必要に応じ、必要量の活性化合物を上に列挙した成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒に組み込み、次いで濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散液を、基本的な分散媒および上で列挙されたものからの必要な他の成分を含む無菌のビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製する。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、前もって濾過滅菌された溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥を含む。
【0025】
経口組成物は、一般に、不活性の希釈剤または可食キャリアを含む。経口による治療的投与の目的のために、活性化合物を、賦形剤を使用して組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態で使用することができる。経口組成物を、うがい薬としての使用のために、流体キャリアを使用して調製することもできる。薬学的に適合可能な結合剤またはアジュバント物質を、上記組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、およびトローチなどは、以下の任意の成分または類似の性質を有する化合物を含み得る:結合剤(微結晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンなど);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトースなど)、崩壊剤(アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチなど);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなど);流動促進剤(コロイド状二酸化ケイ素など);甘味剤(スクロースまたはサッカリンなど);または矯味矯臭薬(ペパーミント、メチルサリチレート、またはオレンジフレーバーなど)。
【0026】
吸入による投与のために、化合物を、適切な噴霧体(例えば、二酸化炭素などのガス)含む加圧容器もしくはディスペンサーまたは噴霧器からのエーロゾルスプレーの形態で送達する。
【0027】
全身投与はまた、経粘膜投与または経皮投与であり得る。経粘膜投与または経皮投与のためには、透過されるべきバリアに適切な浸透剤を処方物で使用する。かかる浸透剤は、当該分野で一般的に公知であり、例えば、経粘膜投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与を、鼻内噴霧または坐剤の使用によって達成することができる。経皮投与のために、活性化合物を、当該分野で一般的に公知の軟膏(ointment、salve)、ゲル、またはクリームに処方する。化合物を、直腸送達のための坐剤(例えば、カカオ脂および他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用)または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0028】
実施形態によれば、活性化合物は、移植片およびマイクロカプセル化送達系を含む徐放性処方物のような、身体からの急速な排出に対してその化合物を保護するキャリアと共に調製される。生分解可能な生体適合性のポリマー(エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など)を使用することができる。かかる製剤の調製方法は、当業者に明らかである。物質を、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入することもできる。リポソーム懸濁物(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞にターゲティングされるリポソームを含む)を、薬学的に受容可能なキャリアとして使用することもできる。これらを、当業者に公知の方法(例えば、米国特許第4,522,811号(本明細書中で参照により援用される)に記載)にしたがって調製することができる。
【0029】
投与を容易にし、そして投薬を均一にするために、単位投薬形態で経口組成物または非経口組成物を処方することが有利である。本明細書中で使用する場合、単位投薬形態は、処理(処置)される被験体のための単位投薬に適切な物理的に別個の単位をいい、各単位は、必要とされる薬学的キャリアと組み合わせて所望の治療効果を生じるように算出された活性化合物の所定の量を含む。
【0030】
かかる化合物の毒性および治療効能を、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、LD50(集団の50%の致死用量)およびED50(集団の50%で治療有効性を示す用量)の決定のための手順によって決定することができる。有毒作用と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として示すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物を使用することができるが、非感染細胞に対する潜在的傷害を最小にし、それにより副作用を軽減するように、罹患部位にかかる化合物をターゲティングする送達系をデザインするように注意を払うべきである。
【0031】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得たデータを、ヒトで用いる投薬量の範囲を処方するのに使用することができる。かかる化合物の投薬量は、好ましくは、ED50を含むが毒性がほとんどないか全くない循環血中濃度の範囲内である。投薬量は、使用する投薬形態および使用する投与経路に応じてこの範囲内で変化し得る。本開示の方法で使用される任意の化合物に対して、治療有効用量を、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。細胞培養で決定したIC50(すなわち、症状の最大半量阻害が達成される試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて用量を処方することができる。かかる情報を使用して、ヒトで有用な用量をより正確に決定することができる。血漿でのレベルを、例えば、高速液体クロマトグラフィによって測定することができる。
【0032】
本明細書中で定義されるように、活性化合物の治療有効量(すなわち、有効投薬量)は、約0.001〜100g/kg体重の範囲であり得、または過度の実験を行うことなく明らかであり且つ当業者によって理解される他の範囲であり得る。当業者は、一定の要因が被験体の有効な治療に必要な投薬量およびタイミングに影響を及ぼし得、その要因としては、疾患または障害の重症度、以前受けた治療、被験体の一般的健康状態または年齢、他の疾患の存在が挙げられるが、これらに限定されないと認識する。
【0033】
別の態様によれば、当業者は1つまたは複数の部品のキット(kit of part)を想定することができる。この部品のキットは本明細書中に開示の方法の少なくとも1つを行うためのものである。部品のキットは2つ以上の組成物を含み、この組成物は、上記方法の少なくとも1つにしたがって、酢酸、RF3ポリサッカリド、Antrodia camphorate抽出物、およびHericium erinaceus抽出物の少なくとも1つを単独または組み合わせて有効量で含む。
【0034】
キットは、おそらく、酢酸、RF3ポリサッカリド、Antrodia camphorate抽出物、およびHericium erinaceus抽出物以外の活性薬剤、生物学的事象の識別物、または本開示を読んだ際に当業者が同定することができる他の化合物を含む組成物も含む。用語「識別物」は、当業者が同定することができる手順で生物学的事象の存在、実在、または事実を発見または決定することができるか、そうでなければ検出することができる、分子、代謝産物、または他の化合物(抗体、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドなど)をいう。例示的な識別物は抗体であり、例示的手順はウェスタンブロット、亜硝酸塩アッセイ、およびRT−PCR、または実施例に記載の他の手順である。
【0035】
キットはまた、有効量の、酢酸、RF3ポリサッカリド、Antrodia camphorate抽出物、およびHericium erinaceus抽出物、または細胞株の少なくとも1つを含む少なくとも1つの組成物を含むことができる。当業者が同定可能な手順にしたがって本明細書中に開示の少なくとも1つの方法を実施するために使用すべき部品のキットの組成物および細胞株。
【0036】
本出願で使用する場合、「DAF−16」は、配列番号19と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性、またはそれを超えるか、もしくは完全な(100%)配列同一性を有する核酸、核酸産物、またはタンパク質を意味する。当業者は、本開示の実施による組成物および方法は種々の配列(配列番号19とある程度の相同性を有する配列を含む)に関連するので有効であり得ると認識する。さらに、当業者は、用語「DAF−16」が当業者に公知であり且つ他の名称にて理解されていること、一般的特徴が配列番号19との実質的な相同性であることを容易に認識する。
【0037】
本出願で使用する場合、「ACT−1」、「CLK−1」、「DAF−2」、「PMK−1」、「RAB−1」、および「TIR−1」は、核酸、核酸産物、または核酸、核酸産物に対応するタンパク質、または当業者に一般に公知のタンパク質を意味する。
【0038】
寿命延長促進性を有するといわれている天然産物の試験およびスクリーニングのために、野生型C.elegans(N2)を生体モデル生物として使用した。各寿命を、選択した天然物質および市販の健康食品製品の存在下または非存在下で測定した。これらには、ビタミン(ビタミンEおよびC、ビタミンB複合体群など)、市販の酢、および酢酸(酢中に見出される一成分である)、さらに、いくつかの食用キノコ抽出物(RF3など)ならびにAntrodia camphorateおよびHericium erinaceus(ヤマブシタケ(lion’s mane mushroom))の菌糸体画分が含まれていた。寿命測定により、ネガティブコントロール群(処理なし)と比較した場合に上記物質のいくつかを使用した処理によって有意に延命された(図1)ことが示された。
【0039】
C.elegansに対して同時に試験した安息香酸およびクエン酸とは対照的に、酢酸は延命効果を示し、高等生物で使用される可能性がある。RF3ポリサッカリド画分(A.camphorata、およびH.erinaceus)も延命効果を示し、高等生物で使用される可能性がある。しかし、ビタミン群はC.elegansにおいて有意な寿命延長効果を示さないようであった。
【0040】
C.elegansにおける延命効果の基礎をなす機構をさらに調査した。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いた一連の実験を行って、C.elegansにおけるいくつかの標的遺伝子の転写プロフィールの分析を実行した。これらの標的遺伝子には、DAF−2およびDAF−16(寿命決定で直接的役割を果たす経路に関与することが示された)ならびに3つの遺伝子TIR−1、RAB−1、およびPMK−1(宿主病原体免疫系のToll様受容体およびMAPK経路に関連する)が含まれる。図2Aに示すように、3つ全てのキノコ抽出物および酢酸により、DAF−16発現が有意に増加した。以前の研究では、DAF−16の増加が抗酸化酵素(SODなど)発現の活性化によって酸化的損傷から細胞を防御し得、それにより、C.elegansを延命することができることが示されている。したがって、この所見は、これらのキノコ抽出物がDAF−16の誘導によって延命することができることを確証した。多数の研究によってDAF−16誘導がDAF−2機能の減少または喪失に起因すると考えられていたにもかかわらず、試験した3つのキノコ抽出物のうちのたった1つのみ(H.erinaceus)が実際にDAF−2発現を減少させた。RF3およびA.camphorataのいずれもDAF−2発現を有意に減少させなかったが、これらは共にTIR−1発現を顕著に刺激した(図2B)。TIR−1活性化がMAPK経路の活性化に先立っていたかどうかを理解するために、in vivoでのRF3処理後のRAB−1およびPMK−1の転写レベルをさらに分析した。その結果、RF3によるTIR−1刺激後にMAPK経路が活性化されたことが明らかに示唆された。CLK−1遺伝子発現(DAF−16発現調節に関与し、おそらくミトコンドリアエネルギー依存経路に関連する別の重要な要因である)もチェックした。CLK−1 mRNAシグナルの増強は認められなかった(図2C)。経時研究により、RF3処理後の第1日目にTIR−1は最大に誘導されたのに対して、DAF−16の最大誘導レベルは2日目に観察された(図2D)ことも明らかとなった。
【0041】
次いで、RF3ポリサッカリドによって刺激した場合にTIR−1発現の増加がDAF−16誘導の排他的且つ直接的な原因であったかどうか試験するために、C.elegansの寿命に及ぼすRF3の効果をTIR−1またはDAF−16 RNAi細菌での処理によって分析した(図3)。結果は、DAF−16発現のノックアウトがRF3の延命効果を完全に消失させ得、C.elegansの寿命をその元の寿命に戻し得ることを示した。RF3の寿命延長促進効果がTIR−1 RNAiでの処理によって低減したにもかかわらず、処理したC.elegansは依然として処理無しの蠕虫またはRF3およびDAF−16 RNAiで処理した蠕虫よりも長い寿命を達成した。これは、RF3ポリサッカリドに応答するC.elegansの受容体がTIR−1に関連する受容体に限定されないという事実を示した。したがって、本明細書中に報告したRF3の寿命延長効果に関連する他の依然として同定されていない受容体がおそらく存在する。
【0042】
いくつかの以前の報告によれば、RF3は、TLR4受容体への結合を介して動物における免疫調節を刺激し得、細菌由来のリポ多糖(LPS)内毒素と同一の経路を開始することができる。したがって、RF3ポリサッカリドおよびE.coli由来のLPSがTIR−1媒介MAPK活性化に同一の効果を及ぼし、それにより、C.elegansのDAF−16が発現するかどうかについても調査した(図4A〜C)。蠕虫へのRNAi細菌の投与およびその後のmRNAレベルのリアルタイムRT−PCR検出により、RF3およびLPSの両方がTIR−1発現を同様の程度に(LPSがわずかに高い)誘導することができることが明らかとなった。しかし、RF3がDAF−16発現を有意に誘導した一方で、その発現はLPSによって類似の条件下で強く阻害された(図4B)。さらに、TIR−1のノックアウト後、LPSによるDAF−16の抑制は弱くなった(図4Cの右)。一方、どのような処理を適用しようとも、TIR−1発現が阻害された場合にRAB−1発現は常に増加した(図4Cの下)。RF3と同一の条件下でA.camphorataを使用した場合、RF3と同一の結果が得られた(データ示さず)。したがって、RF3およびA.camphorataが寿命延長を促進する機構が類似し得ると考えられる。したがって、ポリサッカリド画分RF3が細胞表面上の少なくとも2つの異なるタイプの受容体に結合すると示唆される。受容体の1つがTIR−1発現を増加させ、それにより、シグナルが下流に伝達され、RAB−1発現が減少するように調節された。しかし、これらは同時に別の未知の受容体にも結合することができ、RAB−1発現およびその後のMAPK経路活性化を誘導し、DAF−16活性を増加させC.elegansを延命することができるであろう。酢酸およびH.erinaceusに対しては、MAPK経路は見かけ上関与しなかった。その寿命延長促進効果は、おそらく、いくつかの未同定の下流シグナル伝達調節によってDAF−2発現を減少させ、DAF−16発現を間接的に増加させる経路によって媒介された(図5)。
【0043】
酢酸およびRF3の両方は、異なる機構によってC.elegansの寿命を有意に増進した。これら2つの物質を組み合わせて生物に適用した場合に組み合わせ効果または相乗効果が存在するかどうかをさらに調査した。異なる比率の酢酸とRF3との種々の混合物は全て、単独で使用したいずれかの物質よりも高い活性を有することが見出されたことが興味深い(図6A)。これらのうち、50ppm(w/v)酢酸および100ppm RF3を含む溶液が最も高い活性を示し、50ppm酢酸の単独使用の1.4倍、および100ppm RF3の単独使用の1.3倍の延命が達成された。
【0044】
サプリメント、活性化合物、または少なくともDAF−16の発現を調節するための活性化合物としてのこの混合物の1つの態様を試験するために、5%酢酸(米国の酢製品に含まれるほぼ最小の酸性度)におけるRF3の長期安定性も試験した。C.elegansにおいて試験した場合、2週間の静置後でさえ、混合物は依然として新たに調製したRF3溶液と同一の活性を維持していた(図6B)。
【0045】
試験した物質のうち、酢酸およびレイシポリサッカリドRF3は、劇的な正の効果(DAF−16(寿命関連転写因子)の遺伝子発現の上昇に付随した寿命の増加)を生じることが示された。延命シグナル伝達経路の基礎となる機構を、RT−PCRおよびリアルタイムqPCRと組み合わせたRNAiの使用によって同定および確証することができる。したがって、いくつかの天然物質または合成化合物の存在下でこの実験生物の生活環を観察することにより、酢酸のような単純な化合物と本明細書中で示されたレイシキノコ由来の活性成分ポリサッカリドRF3との正しい組み合わせの選択によって延命のゴールを達成することが可能である。本研究によって、天然物質の医薬機能を評価するための有効且つ安価なin vivo系を開発するという急務も果たされる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
株、細菌、天然産物、および化学物質。C.elegansの野生型N2株を全実験で使用した。この蠕虫を、線虫成長培地(NGM)寒天プレート上または餌供給源としてE.coli OP50を含む液体培地中で維持および培養した。蠕虫を回収し、M9緩衝液(22mM KHPO、42mM NaHPO、86mM NaCl、および1mM MgSO)で洗浄した。夾雑している餌および蠕虫のデブリをショ糖浮遊法によって除去した。OP50に加えて、RNAiのための2つのE.coli株を使用した(TIR−1 RNAiのためのIII−1N20およびDAF−16 RNAiのためのI−5M24)。以前の論文に記載のように、RF3(A.camphorateおよびH.erinaceusの粗菌糸体粉末)を調製した。各溶液を脱イオン水で希釈して、種々のアッセイに望ましい濃度の試験溶液を作製した。
(実施例2)
種々の物質での処理後の寿命分析。12ウェル組織培養プレート中で寿命アッセイを行った。各ウェルは、1mg/mlエリスロマイシン(細菌分裂防止のため)を補足した1〜2mlのNGM培地および100μlの所望の濃度の試験物質の溶液を含んでいた。処理後の分析を、L4幼生または成虫期のみのいずれかで行った。処理前に、100μMの2フルオロ−5デオキシウリジン(FUDR,Sigma,St.Louis,MO,USA)を培養培地に添加して、試験被験体のいかなる子孫の成体への成長も阻止した。簡潔に述べれば、蠕虫をOP50細菌を播種したNGMプレート上でL4/幼年期まで成長させ、次いで、少なくとも60匹の蠕虫を、三連のアッセイのための3つの各ウェルに移した。全プレートを、以前に記載のように穏やかに旋回震盪しながら20℃に保持した。ウェルを、適切な時間間隔で生きている蠕虫および死んだ蠕虫についてスコアリングした。顕微鏡(Olympus 1×71、NY、USA)を使用して観察した場合に、プレートのタッピングまたは白金線で穏やかに触れることに蠕虫が応答することができなかった場合、蠕虫が死んだと見なした。統計分析のためにANOVAプログラムを使用して、平均およびパーセンタイルを決定した。全アッセイでは、ログランク(Mantel−Cox)法を使用してP値を計算した。
【0047】
(実施例3)
RNAの調製および逆転写酵素PCR(RT−PCR)。RNeasyミニキット(Qiagen)を使用して適切な時間間隔でNGM培地中のサンプルからC.elegansのバッチの全RNAを単離した。次いで、各サンプル由来のRNA(500ng)を逆転写し、Superscript One−step RT−PCRキット(Invitrogen)を使用してPCRを行った。1PCRサイクルは以下の工程からなった:1.94℃で15秒間、50〜56℃で30秒間、および72℃で45秒間。2.40サイクル繰り返す。3.72℃で7分間の最終伸長。プライマー配列を、表1に列挙のようにデザインした。PCR産物を1.8%アガロースゲルで泳動し、0.4μg/ml臭化エチジウムで染色した。染色したバンドを、UV光下で視覚化し、カメラ(Nikon E4500)で撮影した。
【0048】
(実施例4)
定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)分析。各実験のために、約100匹のL4幼生または若年成体の蠕虫をアッセイした。処理1日後のTIR−1およびRAB−1 mRNAレベルを測定するために、20℃でインキュベートした蠕虫から全RNAを単離した。しかし、全RNAをDAF−16 mRNAレベルについて試験する場合は、蠕虫を2日目に回収した。C.elegansの全RNAの単離、精製、および逆転写を前記のように行った。定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)をRG−3000リアルタイムPCRシステム(Corbett Research,Australia)で行い、Rotor−Geneリアルタイム分析ソフトウェア6.1(Corbett Research)を使用して分析し、ACT−1のmRNAレベルを正規化のために使用した。要求に応じてプライマー配列は利用可能である。
【0049】
(実施例5)
RNA干渉(RNAi)分析。ホールライフ(whole−life)RNAi分析では、遺伝子特異的RNAi細菌(E.coli HT115株)を播種した寒天プレートに卵を添加した。薬物処理実験では、OP50を播種したプレートに卵を添加し、L4期まで蠕虫を成長させ、次いで、遺伝子特異的RNAi細菌を含む新鮮な液体NGM培地に移した。100μMの2フルオロ−5デオキシウリジン(FUDR)も培地に添加して、試験被験体のいかなる子孫の成体への成長をも阻止した。2日後、蠕虫に試験物質を与えた。RNAiを使用した動物の全寿命測定を上記のようにスコアリングした。全実験で、成虫期の前妊孕期を、寿命分析についてのt=0として使用した。統計分析のためにANOVAも使用して、平均およびパーセンタイルを決定した。全アッセイで、ログランク(Mantel−Cox)法を使用してP値を計算した。
【0050】
(実施例6)
緑色蛍光タンパク質(GFP)発現アッセイ。DAF−16::gfp転写レポーター構築物を保有するトランスジェニック蠕虫を、GFP発現アッセイのために使用した。GFP発現がDAF−16発現を特異的に例証したかどうかを試験するために、DAF−16およびTIR−1 RNAiを使用してその特異性を決定した。RF3および/または酢酸での処理後に寿命分析に応じた適切な時間間隔にて、蛍光顕微鏡(Olympus1×71,NY,USA)および接続したデジタルカメラ(Olympus DP controller)にて蠕虫の蛍光画像を撮影した。全実験を、2回繰り返し、一定且つ類似の結果を得た。
【0051】
(実施例7)
2−DEおよび画像分析。L4幼生または若年成体の蠕虫を新たに調製した液体NGM培地に移し、20℃で4日間培養した。次いで、100μM FUDR、50ppm酢酸、および100ppm RF3を培地に添加した。処理3日後、蠕虫を、8M尿素、0.5%TritonX−100、およびプロテアーゼインヒビターカクテルを含む溶解緩衝液中で溶解し、液体窒素中で凍結し、次いで、乳鉢を使用して微粉末に粉砕した。ホモジネートを超音波処理し、遠心分離後の上清を回収し、これをタンパク質ローディングサンプルとして使用した。2−D Quantキット(Amersham Biosciences)を使用したタンパク質含量量決定によって推定した150μgの全タンパク質を、固定pH勾配(IPG)ゲルストリップ(pH3〜10、13cm、Amersham Biosciences)にロードした。IPGストリップを一晩再水和した。一次元目の分離のために、Ettan IPGphor II(Amersham Biosciences)を使用して300〜8000Vで16時間IEFを行った。IEF後、IPGストリップを2つの平衡化溶液(50mM Tris−HCl(pH8.8)、6M尿素、2%SDS、30%グリセロール(100mgジチオトレイトール(DTT)または250mgヨード酢酸をそれぞれ含む))で各10分間平衡化し、二次元目の電気泳動を130〜250Vで5〜6時間行った。ゲルをSypro−Rubyで一晩染色した。2−DEゲル画像を、蛍光画像スキャナTyphoon9400(Amersham Biosciences)を使用してスキャンし、PDQuestソフトウェア(Bio−Rad)を使用して分析した。ゲル全体について検出された全タンパク質強度の比率としてゲル間で強度レベルを正規化した。
【0052】
(実施例8)
ゲル内消化およびLC−MS/MS。異なる処理下でのサンプルの2−DE分析に基づいて、Institute of Biological Chemistry,Academia Sinicaのプロテオミックコア施設(proteomic core facility)でのLC−MS/MS(ナノESI−Q/TOF)によるさらなる同定のために、15の異なって発現されたタンパク質(コントロールと試験サンプルとの間のタンパク質発現の少なくとも2倍の変化に基づく)を選択した。タンパク質スポットを2−Dゲルから切り出し、次いで、25mM重炭酸アンモニウム緩衝液(pH8.0)を含む50%アセトニトリル(ACN)での1時間の脱色を3回行った。ゲル片を100%ACN中で5分間脱水し、次いで、真空遠心分離機で30分間乾燥させた。サンプルあたり0.5μgトリプシンを含む25mM重炭酸アンモニウムの添加によって37℃で16時間酵素消化を行った。ペプチドフラグメントを、50μlの50%ACN/0.1%TFAで2回抽出した。真空遠心分離機での遠心分離によるACNおよびTFAの除去後、サンプルを0.1%ギ酸/50%ACNに溶解し、LC−ナノESI−MS/MSによって分析した。タンパク質を、MASCOTプログラムを使用したMS/MSイオン検索に基づきNCBIデータベースで同定した。
【0053】
(実施例9)
図10を参照して、DAF−16のヒトホモログは、DAF−16(C.elegans)とかなりの相同性を示し、特にDNA結合ドメイン内の重要な結合領域中の保存度が高い(図10(c)を参照のこと)。ヒトでは、FOXOは、C.elegansにおけるDAF−16機能と同じように、アポトーシス、細胞周期、DNA損傷の修復、酸化ストレス、細胞分化、グルコース代謝、および他の細胞機能に関与する遺伝子発現を調整するための転写因子として機能する。したがって、酢酸、RF3、またはRF3と酢酸との組み合わせの使用により、ヒトの寿命延長が調整される。
【0054】
以下の刊行物は、本明細書中に完全に記載されているかのように本明細書中で参照によって援用される:A.Salminena,J.Ojala,J.Huuskonen,A.Kauppinena,T.Suuronen,K.Kaarnirantac,Interaction of aging−associated signaling cascades:Inhibition of NF−κB signaling by longevity factors FoxOs and SIRT1,Cell.Mol.Life Sci.65(2008)1049−1058;Haojie Huang,Donald J.Tindall,Dynamic FoxO transcription factors,J.of Cell Science 120(2007),2479−2487;およびColeen T.Murphy,The search for DAF−16/FOXO transcriptional targets:Approaches and discoveries,Experimental Gerontology 41(2006),910−921。
【0055】
図10(c)を参照して、配列番号15(dFOXO);配列番号16(hFOXO1);配列番号17(hF0X03a);配列番号18(hFOXO4);および配列番号19(DAF−16)の多重アミノ酸配列アラインメントは、DAF−16/FOXOのヒト、C.elegans、およびショウジョウバエ(drosophilia)バージョンの相同性を示す。示したアミノ酸配列は、各タンパク質のDNA結合ドメインに対応する。dFOXO(ショウジョウバエ)、hFOXO(ヒト)、およびDAF−16(C.elegans)フォークヘッドドメインは、特にDNA結合ドメイン内の配列保存度が高い。二次構造をアラインメント上部に示す。類似および同一のアミノ酸残基に、それぞれ灰色および黒色の陰をつけた。DNA二重らせんの主溝に接触するDNA認識ヘリックスであるフォークヘッドドメインのヘリックス3をコードする領域は、5つのタンパク質間で同一である。したがって、これらの各タンパク質は、ヘリックス3を介してインスリン応答エレメントに接触する。
【0056】
最も実際的且つ好ましい実施形態であると現在考えられている事項の観点から装置および方法を記載しているが、開示が開示の実施形態に限定される必要はないと理解すべきである。特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる種々の修飾形態および類似の改変を対象とすることを意図し、その範囲は全てのかかる修飾形態および類似の構造を包含するように最も広義の解釈に従うべきである。本開示は、以下の特許請求の範囲の任意および全ての実施形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酢酸とRF3ポリサッカリドとを組み合わせて含む組成物であって、前記少なくとも酢酸および前記RF3ポリサッカリドが配列番号19に対応する配列を有するDAF−16の発現を増加させるのに有効である、組成物。
【請求項2】
前記組成物が約50ppm〜約100ppmの酢酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が約100ppmと約500ppmとの間のRF3ポリサッカリドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が約50ppmの酢酸および約100ppmのRF3ポリサッカリドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Antrodia camphorate抽出物およびHericium erinaceus抽出物の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも酢酸および前記RF3ポリサッカリドがC.elegansの寿命を延長するのに有効である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも酢酸および前記RF3ポリサッカリドがヒトの寿命を延長するのに有効である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも酢酸とRF3ポリサッカリドとを組み合わせて含む組成物であって、前記少なくとも酢酸および前記RF3ポリサッカリドが配列番号19と少なくとも70%の配列が相同であるアミノ酸配列を保有するタンパク質の発現を増加させる、組成物。
【請求項9】
DAF−16発現を調節する方法であって、
少なくとも酢酸およびRF3ポリサッカリドを含む組成物を投与する工程、
細胞表面上の少なくとも1つの受容体に前記組成物を提供する工程、
配列番号19に対応する配列を有するDAF−16の発現を増加させる工程、
を含む、方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの受容体がTLR4を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記DAF−16の発現を増加させる工程がMAPK経路を活性化することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記DAF−16の発現を増加させる工程がRAB−1発現を増加させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記DAF−16の発現を増加させる工程がPMK−1発現を増加させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記DAF−16の発現を増加させる工程がDAF−2発現を阻害することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
C.elegansにおけるDAF−16発現への効果について化合物をスクリーニングする方法であって、
少なくとも1つの公知の化合物をC.elegansに投与する工程、
前記少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegansの寿命を前記少なくとも1つの公知の化合物を投与しなかったコントロールC.elegansの寿命と比較する工程、
前記少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegansの寿命が選択した比率で通常の寿命を超えたかどうかを決定する工程、および
前記少なくとも1つの公知の化合物がC.elegansにおいて少なくともDAF−16発現を増加させたかどうかを決定する工程、
を含む、方法。
【請求項16】
少なくとも1つの公知の化合物が酢酸を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの公知の化合物がC.elegansにおいて少なくともDAF−16発現を増加させたかどうかを決定する工程を、前記少なくとも1つの公知の化合物を投与したC.elegans由来の単離および精製されたRNAサンプルの逆転写の実施によって達成する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記単離および精製されたRNAサンプルがDAF−2、DAF−16、TIR−1、RAB−1、およびPMK−1の少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも酢酸を組み合わせて含む組成物であって、前記少なくとも酢酸が配列番号19に対応する配列を有するDAF−16の発現を増加させるのに有効である、組成物。
【請求項20】
少なくともRF3ポリサッカリドを組み合わせて含む組成物であって、前記少なくともRF3ポリサッカリドが配列番号19に対応する配列を有するDAF−16の発現を増加させるのに有効である、組成物。

【図5】
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【図8】
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【図10−1】
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【図10−3】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−2】
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【公表番号】特表2011−517952(P2011−517952A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505217(P2011−505217)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/040879
【国際公開番号】WO2009/129424
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【Fターム(参考)】