説明

酵母におけるHPV58L1の最適化発現

【課題】ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染予防用ワクチンの製造に利用できる抗原タンパク質の提供。
【解決手段】58 L1タンパク質をコードする合成DNA分子、特に酵母細胞内での高レベル発現に関してコドン最適化された、HPV58 L1タンパク質をコードするポリヌクレオチド。該分子は、HPV58ウイルス様粒子(VLP)の製造、ならびにHPV58 VLPを含むワクチンの製造に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の予防および/または治療に関する。より詳しくは、本発明は、HPV58 L1タンパク質をコードする合成ポリヌクレオチド、ならびに該ポリヌクレオチドを含む組換えベクターおよび宿主に関する。本発明はまた、酵母細胞内で組換えHPV58 L1またはL1+L2を発現させることにより製造されるHPV58ウイルス様粒子(VLP)、ならびにHPV感染の予防および治療のためのワクチンおよび医薬組成物におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
80を超える型のヒトパピローマウイルス(HPV)が存在し、これらのうちの多くは良性増殖性疣贅から悪性癌に及ぶ多種多様な生物学的表現型に関連づけられている(概説としては、McMurrayら,Int.J.Exp.Pathol.82(1):15−33(2001)を参照されたい。)。HPV6およびHPV11は、性器粘膜または呼吸器粘膜の良性疣贅、非悪性尖形コンジローマおよび/または低悪性異形成に最も一般的に関連している型である。HPV16およびHPV18は、子宮頸部、膣、外陰部および肛門管のin situおよび浸潤性癌に最も頻繁に関連している高リスク型である。子宮頸癌の90%以上はHPV16、HPV18またはより稀な発癌性型HPV31、33、45、52および58に関連している(Schiffmanら,J.Natl.Cancer Inst.85(12):958−64(1993))。HPV DNAが子宮頸癌の90以上で検出されるという観察は、HPVが子宮頸癌を引き起こすという強力な疫学的証拠を提供している。
【0003】
パピローマウイルスは、8個までの初期遺伝子および2個の後期遺伝子をコードする小型(50〜60nm)非外包性二十面体DNAウイルスである。そのウイルスゲノムのオープンリーディングフレーム(ORF)はE1〜E7ならびにL1およびL2と称され、この場合の「E」は初期を意味し、「L」は後期を意味する。L1およびL2はウイルスカプシドタンパク質をコードし、一方、E遺伝子は、ウイルス複製および細胞トランスフォーメーションのような機能に関連している。
【0004】
L1タンパク質は主要カプシドタンパク質であり、55〜60kDaの分子量を有する。L2タンパク質は副次的カプシドタンパク質である。免疫学的データは、L2タンパク質の大部分がウイルスカプシド内のL1タンパク質の内部に存在することを示唆している。L1タンパク質およびL2タンパク質は共に、種々のパピローマウイルス間で高度に保存されている。
【0005】
酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞または細菌におけるL1タンパク質またはL1およびL2タンパク質の組合せ体の発現はウイルス様粒子(VLP)の自己集合を引き起こす(概説としては、SchillerおよびRoden,in Papillomavirus Reviews:Current Research on Papillomaviruses;Lacey編,Leeds,UK:Leeds Medical Information,pp 101−12(1996)を参照されたい。)。VLPは真正ビリオンに形態学的に類似しており、動物またはヒトに投与されると高力価の中和抗体を誘導しうる。VLPは潜在的発癌性ウイルスゲノムを含有していないため、それは、HPVワクチンの開発における生ウイルスの使用に代わる安全な手段となる(概説としては、SchillerおよびHidesheim,J.Clin.Virol.19:67−74(2000)を参照されたい。)。この理由により、L1およびL2遺伝子はHPV感染および疾患に対する予防用および治療用ワクチンの開発のための免疫学的標的と目されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】McMurrayら,Int.J.Exp.Pathol.82(1):15−33(2001)
【非特許文献2】Schiffmanら,J.Natl.Cancer Inst.85(12):958−64(1993)
【非特許文献3】SchillerおよびRoden,in Papillomavirus Reviews:Current Research on Papillomaviruses;Lacey編,Leeds,UK:Leeds Medical Information,pp 101−12(1996)
【非特許文献4】SchillerおよびHidesheim,J.Clin.Virol.19:67−74(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
うまく形質転換された宿主生物における高い発現レベルのカプシドタンパク質の入手に伴う困難性、およびそれによる精製タンパク質の製造の制限のため、HPVワクチンの開発および商業化は妨げられている。したがって、HPV58 L1タンパク質のようなHPV L1タンパク質をコードする野生型ヌクレオチド配列が同定されているものの、意図される宿主細胞内での発現に関して最適化されたHPV58 L1コード化ヌクレオチド配列を利用する容易に再生可能な粗HPV L1タンパク質源を開発することが非常に望ましいであろう。また、ワクチン開発で使用する天然タンパク質の免疫付与特性を有する大量のHPV58 L1 VLPを製造することが有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、HPV58 L1遺伝子により発現されるタンパク質産物に対する免疫を惹起または増強するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、また酵母細胞内での高レベル発現に関してコドン最適化された、HPV58 L1をコードする合成ポリヌクレオチドを提供する。本発明は更に、酵母細胞内で組換えHPV58 L1またはL2を発現させることにより製造されるHPV58ウイルス様粒子(VLP)を提供し、HPV関連癌の予防および/または治療用の医薬組成物およびワクチンにおけるHPV58 VLPの使用を開示する。
【0009】
本発明は、HPV58 L1タンパク質をコードする合成DNA分子に関する。該合成分子のコドンは、酵母細胞にとって好ましいコドンが利用されるよう設計される。該合成分子は、VLPに自己集合しうるHPV58 L1タンパク質の源として使用することが可能である。該VLPは、VLPに基づくワクチンにおいて使用することが可能である。
【0010】
本発明の典型的な実施形態は、配列番号2に記載のHPV58 L1タンパク質をコードする合成核酸分子を含み、該核酸分子は、酵母細胞内での高レベル発現に関してコドン最適化されたヌクレオチドの配列を含む。好ましい実施形態においては、該核酸は、配列番号1に記載のヌクレオチドの配列を含む(本明細書においては「58 L1 R配列」と称される。)。
【0011】
また、本明細書中の全体に開示されている核酸分子を含有する組換えベクターおよび組換え宿主細胞(原核細胞および真核細胞の両方)を提供する。本発明の好ましい実施形態においては、宿主細胞は酵母細胞である。
【0012】
本発明はまた、(a)HPV58 L1タンパク質をコードする核酸を含むベクターを酵母宿主細胞内に導入すること、(b)該HPV58 L1タンパク質の発現を可能にする条件下、該酵母宿主細胞を培養することを含む、組換え宿主細胞内でHPV58 L1タンパク質を発現させるための方法に関する。
【0013】
本発明は更に、(a)HPV58 L1タンパク質をコードする核酸分子(該核酸分子は、酵母宿主細胞内での最適化発現に関してコドン最適化されている)を含むベクターを酵母宿主細胞内に導入すること、(b)該HPV58 L1タンパク質の発現を可能にする条件下、該酵母宿主細胞を培養することを含む、組換え宿主細胞内でHPV58 L1タンパク質を発現させるための方法に関する。
【0014】
本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、該核酸は、配列番号1に記載のヌクレオチドの配列を含む。
【0015】
本発明はまた、酵母細胞内で製造されるHPV58ウイルス様粒子(VLP)、HPV58 VLPの製造方法、およびHPV58 VLPの使用方法に関する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態においては、酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、クリーベルミセス・フラジリス(Kluyvermyces fragilis)、クルベロミセス・ラクチス(Kluveromyces lactis)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)よりなる群から選ばれる。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、酵母細胞内でHPV58 L1またはHPV58 L1+L2の組換え発現により製造されるHPV58 VLPである。
【0018】
本発明の更にもう1つの態様は、コドン最適化HPV58 L1遺伝子により製造されるHPV58 L1タンパク質を含むHPV58 VLPである。本発明のこの態様の典型的な実施形態においては、コドン最適化HPV58 L1遺伝子は、配列番号1に記載のヌクレオチドの配列を含む。
【0019】
本発明はまた、HPV58ウイルス様粒子を動物に投与することを含んでなる、動物において免疫応答を誘導するための方法を提供する。好ましい実施形態においては、HPV58 VLPはコドン最適化遺伝子により製造される。
【0020】
本発明の更にもう1つの態様は、HPV58 VLPを含むワクチンを哺乳動物に投与することを含む、HPV関連子宮頸癌の予防または治療方法である。本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、HPV58 VLPは酵母内で製造される。
【0021】
本発明はまた、酵母内で製造されるHPV58ウイルス様粒子(VLP)を含むワクチンに関する。
【0022】
本発明のこの態様のもう1つの実施形態においては、該ワクチンは更に、少なくとも1つの追加的HPV型のVLPを含む。この少なくとも1つの追加的HPV型は、当技術分野において記載されている又は後に同定される任意のHPV型を含む、関心のある任意のHPV型でありうる。好ましい実施形態においては、該HPV型は、疣贅または子宮頸癌のような臨床的表現型に関連した型である。もう1つの好ましい実施形態においては、この少なくとも1つの追加的HPV型は、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV55、HPV56、HPV59およびHPV68よりなる群から選ばれる。
【0023】
本発明はまた、酵母内で製造されるHPV58ウイルス様粒子と製薬上許容される担体とを含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、HPV58 VLPと少なくとも1つの追加的HPV型のVLPとを含む医薬組成物に関する。好ましい実施形態においては、この少なくとも1つの追加的HPV型は、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV55、HPV56、HPV59およびHPV68よりなる群から選ばれる。
【0024】
本明細書中の全体において及び添付する特許請求の範囲において用いる単数表現は、文脈から例外であることが明らかである場合を除き、複数物に対する言及を含む。
【0025】
本明細書中の全体において及び添付する特許請求の範囲においては、以下の定義および略語が適用される。
【0026】
「プロモーター」なる語は、RNAポリメラーゼが結合する、DNA鎖上の認識部位を意味する。プロモーターはRNAポリメラーゼと共に開始複合体を形成して、転写活性を始動し駆動する。該複合体は、「エンハンサー」もしくは「上流活性化配列」と称される配列を活性化することにより又は「サイレンサー」と称される配列を抑制することにより修飾されうる。
【0027】
「ベクター」なる語は、宿主生物または宿主組織内へのDNA断片の導入をもたらしうる何らかの手段を意味する。プラスミド、ウイルス(アデノウイルスを含む)、バクテリオファージおよびコスミドを含む種々のタイプのベクターが存在する。
【0028】
「カセット」なる語は、ベクターから発現されるヌクレオチドまたは遺伝子配列、例えば、HPV58 L1タンパク質をコードするヌクレオチドまたは遺伝子配列を意味する。一般に、カセットは、いくつかの実施形態においては該ヌクレオチドまたは遺伝子配列の発現のための調節配列を提供するベクター内に挿入された遺伝子配列を含む。他の実施形態においては、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は、その発現のための調節配列を提供する。他の実施形態においては、該ベクターはいくつかの調節配列を提供し、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は他の調節配列を提供する。例えば、該ベクターは該ヌクレオチドまたは遺伝子配列の転写のためのプロモーターを提供することが可能であり、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は転写終結配列を提供する。該ベクターにより提供されうる調節配列は、エンハンサー、転写終結配列、スプライス受容および供与配列、イントロン、リボソーム結合配列ならびにポリ(A)付加配列を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0029】
「58 L1野生型配列」および「58 L1 wt配列」なる表現は、本明細書中に配列番号3として開示されているHPV58 L1配列を意味する。HPV58 L1野生型配列は既に記載されているが、臨床分離体から得たDNA間に若干の配列変異を見出すことは珍しいことではない。したがって、代表的なHPV58 L1野生型配列を、HPV58 DNAを含有することが既に示されている臨床サンプルから単離した(実施例1を参照されたい)。本明細書中に開示されているコドン最適化58 L1配列を比較するための参照配列として該58 L1野生型配列を使用した(図1を参照されたい。)。
【0030】
「HPV 58 L1 R」および「58 L1 R」なる表現は、酵母細胞による高レベル発現に好ましいコドンを含むように再構築された、本明細書中に開示されている典型的な合成HPV 58 L1ヌクレオチド配列(配列番号1)を意味する。
【0031】
「有効量」なる語は、免疫応答が生じるよう、適度なレベルの該ポリペプチドの産生に十分なワクチン組成物が導入されることを意味する。このレベルは様々なものとなりうると当業者に理解される。
【0032】
「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸残基が、化学的に類似した別のアミノ酸残基により置換されることを意味する。そのような保存的置換の例としては、疎水性残基同士(イソロイシン、ロイシン、バリンまたはメチオニン)の置換、同じ電荷の極性残基同士(例えば、アルギニンとリシン;グルタミン酸とアスパラギン酸)の置換が挙げられる。
【0033】
「哺乳動物(哺乳類)」なる語は、ヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。
【0034】
「VLP」はウイルス様粒子を意味する。
【0035】
「合成」は、示されている天然に存在する野生型HPV58 L1遺伝子(58 L1 wt、配列番号3)内に存在するヌクレオチド配列と同じではないヌクレオチド配列をHPV58 L1遺伝子が含有するよう、該遺伝子が作製されたことを意味する。前記のとおり、本発明において、酵母細胞による発現に好ましいコドンを含むヌクレオチドの配列を含む合成分子を提供する。本発明で提供する合成分子は、野生型HPV58 L1遺伝子(配列番号2)と同じアミノ酸配列をコードしている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】図1は、本発明の合成HPV58 L1遺伝子(配列番号1;「58 L1 R」として示されている。)において改変されたヌクレオチドを比較する配列アライメントである(実施例2を参照されたい。)。参照配列は58 L1野生型配列(配列番号3;「58 L1 wtとして示されている」;実施例1を参照されたい。)である。改変されたヌクレオチドは、それらの対応位置に示されている。括弧内にはヌクレオチド番号が示されている。58 L1再構築配列における同一ヌクレオチドは点で示されている。
【図1B】図1は、本発明の合成HPV58 L1遺伝子(配列番号1;「58 L1 R」として示されている。)において改変されたヌクレオチドを比較する配列アライメントである(実施例2を参照されたい。)。参照配列は58 L1野生型配列(配列番号3;「58 L1 wtとして示されている」;実施例1を参照されたい。)である。改変されたヌクレオチドは、それらの対応位置に示されている。括弧内にはヌクレオチド番号が示されている。58 L1再構築配列における同一ヌクレオチドは点で示されている。
【図1C】図1は、本発明の合成HPV58 L1遺伝子(配列番号1;「58 L1 R」として示されている。)において改変されたヌクレオチドを比較する配列アライメントである(実施例2を参照されたい。)。参照配列は58 L1野生型配列(配列番号3;「58 L1 wtとして示されている。」;実施例1を参照されたい)である。改変されたヌクレオチドは、それらの対応位置に示されている。括弧内にはヌクレオチド番号が示されている。58 L1再構築配列における同一ヌクレオチドは点で示されている。
【図2A】図2は、再構築合成HPV58 L1の二本鎖核酸および一文字記号アミノ酸配列(上)を示す。左側にヌクレオチド番号が示されている。
【図2B】図2は、再構築合成HPV58 L1の二本鎖核酸および一文字記号アミノ酸配列(上)を示す。左側にヌクレオチド番号が示されている。
【図2C】図2は、再構築合成HPV58 L1の二本鎖核酸および一文字記号アミノ酸配列(上)を示す。左側にヌクレオチド番号が示されている。
【図3】図3は、HPV58 L1 wtおよび58 L1 R転写産物のノーザンブロットを示す(実施例4を参照されたい。)。該ブロットは、等量のDIG標識58L1 wtおよび58 L1 R DNAプローブの混合物でプローブした。レーン当たりの、電気泳動された全RNAの量が示されている。右側の矢印は、完全長58 L1転写産物の推定サイズを示す。
【図4】図4は、HPV58 L1 wt(58)および58 L1 R(58R)タンパク質のウエスタンブロットを示す。HPV 16 L1を参照体(16)として含めた。10、5および2.5μgの全酵母タンパク質抽出物を変性させ、10% SDS−PAGEゲルに適用した。58 L1および16 L1と交差反応する酵母吸収抗trpE−HPV31 L1ヤギポリクローナル抗血清を使用して、HPV58 L1タンパク質を検出した。左側に、分子量マーカーがkDa単位で示されている。
【図5】図5は、ELISAにおいて捕捉され検出された全酵母タンパク質1μg当たりの無傷HPV58 L1 VLPの量(ng)を示す(実施例7を参照されたい。)。二重に行った2つの実験の結果が含まれている。HPV58 L1 wtのVLP発現(黒および灰色の枠)は36ng/μg全酵母タンパク質であった。HPV58 L1 RのVLP発現(白および線影付きの枠)(再構築酵母コドン最適化58L1)はHPV58 L1 wt発現より2〜3倍高く、実験#2においては95ng/μg全酵母タンパク質に達した。
【図6】図6は、透過型電子顕微鏡検査により可視化された、本明細書に記載のHPV58 L1 Rタンパク質分子から構成されるHPV58 VLPの代表的サンプルを示す(実施例8を参照されたい。)。棒線は100nmを表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
子宮頸癌のほとんどは、特定の発癌型のヒトパピローマウイルス(HPV)の感染に関連している。本発明は、発癌性HPV型の遺伝子により発現されるタンパク質産物に対する免疫を惹起または増強する組成物および方法に関する。特に、本発明は、酵母内での高レベル発現に関してコドン最適化されたHPV58 L1をコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、酵母内で製造されるHPV58ウイルス様粒子(VLP)を提供し、HPV関連癌の予防および/または治療用の医薬組成物およびワクチンにおける該ポリヌクレオチドおよびVLPの使用を開示する。
【0038】
野生型HPV58 L1ヌクレオチド配列は既に報告されている(Genbankアクセッション番号NC 001443,Kiriiら,Virology 185(1):424−427(1991)を参照されたい。)。本発明は、HPV58 L1タンパク質をコードする合成DNA分子を提供する。本発明の合成分子は、高レベル発現のために酵母細胞にとって好ましいコドンを使用するようコドンの少なくとも幾つかが改変された、コドンの配列を含む。該合成分子は、VLPへと自己集合しうるHPV58 L1タンパク質の発現のためのコード配列として使用することが可能である。該VLPは、中和抗体および細胞性免疫によりパピローマウイルス感染に対する有効な免疫予防をもたらすために、VLPに基づくワクチンにおいて使用することが可能である。VLPに基づくそのようなワクチンは、既に確立したHPV感染の治療にも有用である。
【0039】
酵母細胞におけるHPV VLPの発現は、費用効果的であり発酵槽内での大規模増殖に容易に適合するという利点をもたらす。また、酵母ゲノムは、増強した増殖能および発現能を有する組換え形質転換酵母の選択が保証されるよう容易に改変されうる。しかし、HPV58 L1を含む多数のHPV L1タンパク質は、商業的大規模化に望ましいものより低いレベルでしか酵母細胞内では発現されない。
【0040】
したがって、本発明は、酵母細胞環境中での高レベル発現に関して「最適化」されたHPV58 L1遺伝子配列に関する。
【0041】
4つの可能なヌクレオチド塩基の「トリプレット」コドンは、60を超える変異形態で存在しうる。これらのコドンは僅か20個の異なるアミノ酸(ならびに転写開始および終結)のメッセージを与えるに過ぎないため、いくつかのアミノ酸は2以上のコドンによりコードされうる(コドン縮重として公知の現象である)。完全には理解されていない理由により、異なる細胞型の内因性DNA内には代替的コドンは一様には存在しない。実際、或る細胞型においては或るコドンに関する可変的天然階層または「優先性」が存在するようである。一例として、アミノ酸ロイシンは、CTA、CTC、CTG、CTT、TTAおよびTTGを含む6つのDNAコドンのいずれかにより特定される。大腸菌(E.coli)の内因性DNAは、最も一般的には、ロイシン特定コドンCTGを含有し、一方、酵母および粘菌のDNAは、最も一般的には、ロイシン特定コドンTTAを含むことが、微生物についてのゲノムコドン使用頻度の詳細な分析から示されている。この階層を考慮すると、ロイシンに富むポリペプチドの高レベルの発現が大腸菌(E.coli)宿主により得られる可能性は、コドン使用頻度に或る程度は左右されると、一般に考えられる。例えば、TTAコドンに富む遺伝子は大腸菌(E.coli)内では発現されにくいと考えられ、一方、CTGに富む遺伝子は、おそらく、この宿主内で高度に発現されるであろう。同様に、ロイシンに富むポリペプチドの酵母宿主細胞内での発現に好ましいコドンはTTAであろう。
【0042】
組換えDNA技術へのコドン優先性現象の関与は明白であり、該現象は、成功裏に形質転換された宿主生物において外因性遺伝子の高い発現レベルがこれまで多くの場合に達成されていないことを説明するのに役立ちうる。すなわち、該挿入遺伝子内には、それほど「好ましく」ないコドンが反復的に存在している可能性があり、発現用の宿主細胞装置が、それほど効率的には機能していない可能性があるのである。この現象は、意図される宿主細胞にとって好ましいコドンを含むように設計された合成遺伝子が、組換えDNA技術の実施のための好ましい形態の外来遺伝物質の最適形態を与えることを示唆している。したがって、本発明の1つの態様は、酵母細胞内での発現に関してコドン最適化されたHPV58 L1遺伝子である。本発明の好ましい実施形態において、同じタンパク質配列をコードする代替的コドンの使用は、酵母細胞によるHPV58 L1タンパク質の発現に対する制約を除去しうることが判明した。
【0043】
本発明においては、参照により本明細書に組み入れるSharpおよびCowe,Synonymous Codon Usage in Saccharomyces cerevisiae.Yeast 7:657−678(1991)に記載されている、同一の翻訳配列を有するが代替的コドン使用頻度を伴う配列に、HPV58 L1遺伝子セグメントを変換した。該方法は、一般には、高度に発現される酵母遺伝子に一般に関連していない野生型配列内のコドンを特定し、それらを、酵母細胞内での高発現のための最適コドンで置換することよりなる。ついでその新たな遺伝子配列を、これらのコドン置換により生じた望ましくない配列(例えば、「ATTTA」配列、イントロンスプライス認識部位の非意図的生成、望ましくない制限酵素部位、高いGC含量、酵母により認識される転写終結シグナルの存在など)に関して調べる。同一アミノ酸をコードする異なるコドンで既存コドンを置換することにより、望ましくない配列を除去する。ついで該合成遺伝子セグメントを発現の改善に関して試験する。
【0044】
前記の方法を用いてHPV58 L1の合成遺伝子セグメントを作製して、高レベル発現に関して最適化されたコドンを含む遺伝子を得た。前記方法は、HPVワクチンにおいて使用するコドン最適化遺伝子を設計するための本発明者らの方法の概要を説明するものであるが、該方法における若干の変更または該配列における若干の変更によっても、同様のワクチン効力または遺伝子発現の増強が達成されうると当業者に理解される。
【0045】
したがって、本発明は、HPV58 L1タンパク質またはHPV58 L1タンパク質の生物学的に活性な断片もしくは突然変異体をコードするヌクレオチド配列を含む、酵母宿主内での発現に関して最適化されたコドンを含む合成ポリヌクレオチドに関する。HPV58 L1タンパク質の突然変異体は、保存的アミノ酸置換、アミノ末端トランケート化、カルボキシ末端トランケート化、欠失または付加を含むが、これらに限定されるものではない。任意のそのような生物学的に活性な断片および/または突然変異体は、配列番号2に記載のHPV58 L1タンパク質の免疫学的特性を少なくとも実質的に模擬するタンパク質またはタンパク質断片をコードする。本発明の合成ポリヌクレオチドは、治療用または予防用HPVワクチンの開発において有用となるよう、機能的HPV58 L1タンパク質を発現するmRNA分子をコードする。
【0046】
本発明の1つの態様は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む、配列番号2に記載のHPV58 L1タンパク質をコードするコドン最適化核酸分子である。
【0047】
本発明はまた、本明細書中の全体に開示されている核酸分子を含有する組換えベクターおよび組換え宿主細胞(原核細胞および真核細胞の両方)に関する。本発明の好ましい実施形態においては、該宿主細胞は酵母宿主細胞である。
【0048】
本明細書に記載の方法により構築した合成HPV58 DNAまたはその断片を、適当なプロモーターと他の適当な転写調節要素とを含有する発現ベクター内への分子クローニングにより組換え的に発現させ、原核または真核宿主細胞内に導入して、組換えHPV58 L1を得ることが可能である。このような操作のための技術はSambrookら Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,(1989);Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら,Green Pub.Associates and Wiley−Interscience,New York(1988);Yeast Genetics:A Laboratory Course Manual,Roseら,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,(1990)(これらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)に十分に記載されている。
【0049】
したがって、本発明は、(a)HPV58 L1タンパク質をコードする核酸を含むベクターを酵母宿主細胞内に導入すること、(b)HPV58 L1タンパク質の発現を可能にする条件下、該酵母宿主細胞を培養することを含む、組換え宿主細胞内でHPV58 L1タンパク質を発現させるための方法に関する。
【0050】
したがって、本発明は更に、(a)HPV58 L1タンパク質をコードする核酸(該核酸分子は、酵母宿主細胞内での最適発現のためにコドン最適化されている。)を含むベクターを酵母宿主細胞内に導入すること、(b)HPV58 L1タンパク質の発現を可能にする条件下、該酵母宿主細胞を培養することを含む、組換え宿主細胞内でHPV58 L1タンパク質を発現させるための方法に関する。
【0051】
本発明は更に、(a)配列番号1に記載の核酸を含むベクターを酵母宿主細胞内に導入すること、(b)HPV58 L1タンパク質の発現を可能にする条件下、該酵母宿主細胞を培養することを含む、組換え宿主細胞内でHPV58 L1タンパク質を発現させるための方法に関する。
【0052】
本発明の合成遺伝子は、宿主細胞内でのHPV58 L1タンパク質の効率的発現をもたらすように設計された配列を含む発現カセットに集合させることが可能である。該カセットは、好ましくは、合成遺伝子を、それに機能しうる形で連結された関連転写および翻訳制御配列(例えば、プロモーターおよび終結配列)と共に含有する。好ましい実施形態においては、プロモーターはエス・セレビシエ(S.cerevisiae)GAL1プロモーターであるが、多数の他の公知酵母プロモーター、例えばGAL10、GAL7、ADH1、TDH3もしくはPGKプロモーターまたは他の真核生物遺伝子プロモーターのいずれかを使用しうると当業者は認識するであろう。好ましい転写ターミネーターはエス・セレビシエ(S.cerevisiae)ADH1ターミネーターであるが、他の公知転写ターミネーターも使用することが可能である。GAL1プロモーター−ADH1ターミネーターの組合せが特に好ましい。
【0053】
本発明は更に、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む単離および精製されたHPV58 L1ポリペプチドを提供する。
【0054】
本発明のもう1つの態様は、HPV58 L1またはL1+L2遺伝子を酵母細胞内で組換え的に発現させることにより製造されるHPV58ウイルス様粒子(VLP)、HPV58 VLPの製造方法、およびHPV58 VLPの使用方法である。ヒトおよび動物パピローマウイルスの主要カプシドタンパク質であるL1が酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞または細菌内で発現される場合には、VLPは自己集合しうる(概説としては、SchillerおよびRoden,in Papillomavirus Reviews:Current Research on Papillomaviruses;Lacey編,Leeds,UK:Leeds Medical Information,pp 101−12(1996))。L1およびL2カプシドタンパク質の組合せを発現させることにより、形態学的に不明瞭なHPV VLPも製造されうる。VLPは、T=7二十面体構造のL1の72個の五量体から構成される(Bakerら,Biophys.J.60(6):1445−56(1991))。
【0055】
VLPは真正ビリオンと形態学的に類似しており、動物に投与されると高力価の中和抗体を誘導しうる。VLPでのウサギ(Breitburdら,J.Virol.69(6):3959−63(1995))およびイヌ(Suzichら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92(25):11553−57(1995))の免疫化は中和抗体の誘導および実験パピローマウイルス感染に対する防御の両方をもたらすことが示された。しかし、VLPは、潜在的に発癌性のウイルスゲノムを含有せず、発現されると単一遺伝子から自己集合しうるため、これは、HPVワクチン開発における生ウイルスの使用に代わる安全な手段となる(概説としては、SchillerおよびHidesheim,J.Clin.Virol.19:67−74(2000)を参照されたい。)。
【0056】
したがって、本発明は、HPV58の組換えL1タンパク質または組換えL1+L2タンパク質(該組換えタンパク質は酵母細胞内で発現される)から構成されるウイルス様粒子に関する。
【0057】
前記のとおり、本発明の好ましい実施形態においては、HPV58 VLPは酵母内で製造される。もう1つの好ましい実施形態においては、酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、クリーベルミセス・フラジリス(Kluyvermyces fragilis)、クルベロミセス・ラクチス(Kluveromyces lactis)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)よりなる群から選ばれる。
【0058】
本発明のもう1つの態様は、コドン最適化HPV58 L1遺伝子により製造されるHPV58 L1タンパク質を含むHPV58 VLPである。本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、コドン最適化HPV58 L1遺伝子は、配列番号1に記載のヌクレオチドの配列を含む。
【0059】
本発明の更にもう1つの態様は、(a)HPV58 L1タンパク質またはHPV58 L1+L2タンパク質をコードする組換えDNA分子で酵母を形質転換すること、(b)該組換えDNA分子の発現を可能にする条件下、該形質転換酵母を培養して組換えHPV58タンパク質を得ること、(c)該組換えHPV58タンパク質を単離してHPV58 VLPを得ることを含む、HPV58 VLPの製造方法である。
【0060】
本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、HPV58 VLPを得るために、コドン最適化HPV58 L1遺伝子で酵母を形質転換する。特に好ましい実施形態においては、コドン最適化HPV58 L1遺伝子は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0061】
本発明はまた、HPV58ウイルス様粒子を動物に投与することを含んでなる、動物において免疫応答を誘導するための方法を提供する。好ましい実施形態においては、HPV58 VLPはコドン最適化遺伝子により製造される。
【0062】
本発明の更にもう1つの態様は、HPV58 VLPを含むワクチンを哺乳動物に投与することを含む、HPV関連子宮頸癌の予防または治療方法である。本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、HPV58 VLPは酵母内で製造される。
【0063】
本発明はまた、HPV58ウイルス様粒子(VLP)を含むワクチンに関する。
【0064】
本発明のこの態様のもう1つの実施形態においては、該ワクチンは更に、少なくとも1つの追加的HPV型のVLPを含む。好ましい実施形態においては、その少なくとも1つの追加的HPV型は、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV55、HPV56、HPV59およびHPV68よりなる群から選ばれる。
【0065】
本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、該ワクチンは更に、HPV16 VLPを含む。
【0066】
本発明のもう1つの好ましい実施形態においては、該ワクチンは更に、HPV16 VLPおよびHPV18 VLPを含む。
【0067】
本発明の更にもう1つの好ましい実施形態においては、該ワクチンは更に、HPV6 VLP、HPV11 VLP、HPV16 VLPおよびHPV18 VLPを含む。
【0068】
本発明はまた、HPV58ウイルス様粒子を含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、HPV58 VLPと少なくとも1つの追加的HPV型のVLPとを含む医薬組成物に関する。好ましい実施形態においては、その少なくとも1つの追加的HPV型は、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV55、HPV56、HPV59およびHPV68よりなる群から選ばれる。
【0069】
本発明のワクチン組成物は、最小の潜在的毒性でHPV58感染の最適抑制を可能にする適当な量で単独で使用することが可能である。また、他の物質の共投与または連続的投与が望ましいであろう。
【0070】
ワクチン被投与者に導入すべきウイルス様粒子の量は、発現される遺伝子産物の免疫原性に左右される。一般に、VLP約10μg〜100μg、好ましくは約20μg〜60μgの免疫学的または予防的に有効な量を筋肉組織内に直接投与する。皮下注射、皮内導入、皮膚を介した圧入(impression)、および他の投与方法、たとえば、腹腔内、静脈内または吸入運搬も意図される。また、ブースターワクチン接種を行いうると意図される。本発明のワクチンの非経口導入と同時またはその後の、ミョウバンまたはメルク(Merck)アルミニウムアジュバントのようなアジュバントの非経口投与、例えば静脈内、筋肉内、皮下または他の手段での投与も有利である。
【0071】
本発明に関連して用いられうる方法および材料を記載し開示する目的で、本明細書に記載のすべての刊行物を、参照により本明細書に組み入れることとする。ここで、本発明が先行発明としてそのような開示に先行するものではないと自認するものと解釈されるべきではない。
【0072】
添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態が記載されているが、本発明はそれらの実施形態そのものに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲において定められる本発明の範囲または精神から逸脱することなく本発明には種々の変更および修飾が当業者によって施されうると理解されるべきである。
【0073】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0074】
代表的HPV58 L1配列の決定
HPV58 L1野生型配列は既に記載されている(Genbankアクセッション番号NC 001443)。しかし、臨床分離体から得たDNA間に若干の配列変異を見出すことは珍しいことではない。代表的なHPV58 L1野生型配列を決定するために、HPV58 DNAを含有することが既に示されている3つの臨床サンプルからDNAを単離した。Taq DNAポリメラーゼおよび以下のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、HPV58 L1配列を増幅した:HPV 58 LI F 5’−ATGTCCGTGTGGCGGCCTAGT−3’(配列番号4)および58 3’l1 BglII 5’−GAGATCTGTGTAAGTACCACAACAATTA−3’(配列番号5)。増幅産物をアガロースゲル上で電気泳動し、臭化エチジウム染色により可視化した。〜1500bpのL1バンドを切り出し、Geneclean Spin Kit(Q−Bio Gene,Carlsbad,CA)を使用してDNAを精製した。ついで該DNAをTAクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen)に連結した。TOP10F’大腸菌(E.coli)を該連結混合物で形質転換し、アンピシリン+IPTGおよびX−gal(青/白コロニー選択用)を含有するLB寒天上でプレーティングした。該プレートを反転させ、37℃で16時間インキュベートした。白色コロニーを、アンピシリンを含有するLB培地内で37℃で16時間、振とうしながら培養した。ミニプレップを行って該プラスミドDNAを抽出した。
【0075】
該プラスミド中のL1遺伝子の存在を示すために、制限エンドヌクレアーゼ消化を行った。制限断片をアガロースゲル電気泳動および臭化エチジウム染色により可視化した。これらの3つの臨床分離体のそれぞれからのクローン化L1インサートを含有するプラスミドに関してDNA配列決定を行った。後の最適化のための参照配列を作製するために、該クローンのそれぞれからのヌクレオチドおよび翻訳アミノ酸配列を、公開されているHPV 58 L1配列と比較した。これらの3つの臨床分離体の配列分析は、どの配列も該Genbank配列と同一でないことを示した。代表的な58 L1配列としてpCR2.1 HPV58 L1クローン#4を選択した。これは本明細書中では互換的に「58 L1野生型配列」または「58 wt配列」(配列番号3;図1を参照されたい)と称される。58 L1 wt配列は5つの点突然変異を含有し、このうちの2つはアミノ酸変化を引き起こすものであり、3つはサイレント点突然変異であった。Genbank HPV 58 L1配列に対してアミノ酸変化を引き起こす点突然変異はヌクレオチド372(A→T)(これはアミノ酸124をロイシンからフェニルアラニンに変化させる)およびヌクレオチド897(A→G)(これはアミノ酸299をイソロイシンからメチオニンに変化させる)に位置していた。前記の3つのサイレント点突然変異はヌクレオチド774(A→G)、792(T→C)および999(G→A)に位置していた。
【0076】
Taqポリメラーゼおよび以下のプライマー(これはBamHI伸長を付加する)を使用して、58 L1野生型配列を増幅した:5’58 BamHI 5’−GGGATCCCACAAAACAAAATGTCCGTGTGGC−3’(配列番号6)および3’Bam58 5’−GGGATCCGTGTAAGTACCACAACAATTA−3’(配列番号7)。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動およびそれに続く臭化エチジウム染色により可視化した。〜1500bpのバンドを切り出し、Genecleanキットを使用してDNAを精製した。ついでPCR産物をpCR2.1に連結し、TOP10F’細胞を該連結混合物で形質転換した。白色コロニーを選択し、アンピシリンを含有するLB培地内で37℃で16時間、振とうすることにより培養した。ミニプレップを行って該プラスミドDNAを抽出した。該ベクター配列からHPV 58 L1遺伝子を遊離させるために、BamHI制限エンドヌクレアーゼ消化を行った。消化されたDNAをアガロースゲル電気泳動に付し、臭化エチジウム染色により可視化した。L1バンドを、Genecleanキットを使用して精製し、脱リン酸化されBamHIで消化されたpGAL110に連結した。DH5α大腸菌(E.coli)細胞を該連結混合物で形質転換した。正しい配向のHPV 58 L1インサートに関してスクリーニングするために、コロニーからのプラスミドDNAをPCR増幅した。該インサートの配列および配向を確認するために、DNA配列決定を行った。単一クローンを選択し、pGAL110−HPV 58L1#10と命名した。選択したクローンからマキシプレップ(Maxiprep)DNAを調製した。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞を、グルスラーゼでスフェロプラスト化することによりコンピテントにし、pGAL110−HPV 58L1#1で形質転換した。該酵母形質転換混合物をLeu(−)ソルビトールプレート上のLeu(−)ソルビトール上層寒天内でプレーティングし、反転させて30℃で3〜5日間インキュベートした。コロニーを拾い、Leu(−)ソルビトール寒天プレート上での単離のためにストリークした。ついで、58 L1転写およびタンパク質発現を誘導するために、単離されたコロニーを、30℃の回転チューブ培養において、1.6%グルコースおよび4%ガラクトースを含有する5mlの5×Leu(−)Ade(−)ソルビトール内で成長させた。
【実施例2】
【0077】
酵母コドン最適化
酵母にとって好ましいコドンは既に記載されている(Sharp,Paul MおよびCowe,Elizabeth.Synonymous Codon Usage in Saccharomyces cerevisiae YEAST 7:657−678(1991))。HPV58 L1 wtタンパク質の発現は検出可能であったが、発現の増強を得るために、好ましい酵母コドンを使用してHPV58 L1遺伝子を再構築した。酵母最適化コドン配列を含む再構築58 L1配列は、58 L1 wt配列と比較して404個のヌクレオチド変化を含有していた。得られた配列は本明細書中では「58 L1 R」(R=再構築;図1を参照されたい。)と称される。58 L1 Rの翻訳アミノ酸配列は変化しなかった。HPV58 L1 Rのヌクレオチド(配列番号1)およびアミノ酸(配列番号2)配列を図2に示す。該再構築配列はHPV58 L1発現の増強をもたらし、これは、ワクチン開発における使用のための、該野生型に対する有意な進歩である(実施例4を参照されたい。)。
【0078】
最適化遺伝子の製造に用いた方法は、該アミノ酸配列を維持しながら酵母にとって好ましいコドン配列でヌクレオチドを置換する、該遺伝子に広がる長い重複するセンスおよびアンチセンスオリゴマーを設計するものであった。Pfuポリメラーゼを使用するPCR反応において、鋳型DNAの代わりにこれらのオリゴマーを使用した。追加的な増幅プライマーを設計し、これらを使用して鋳型オリゴマーから再構築配列を増幅した。
【0079】
増幅のための最適条件は部位特異的なものであったが、ほとんどの場合には、以下に類似した方法を用いた:95℃で2分間(変性)、およびそれに続く95℃で1分間(変性)、55℃で1分間(アニーリング)、72℃で3.5分間(伸長)の35サイクル、およびそれに続く72℃で10分間の最終伸長、および4℃での維持。PCR産物をアガロースゲル電気泳動により検査した。適当なサイズのバンドを切り出し、DNAをゲル精製した。ついで該増幅断片を鋳型として使用して1497ヌクレオチドの再構築HPV58L1遺伝子を作製した。
【0080】
再構築後、1497ヌクレオチドのバンドをゲル精製し、pCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)に連結した。連結後、TOP10細胞を該連結混合物で形質転換した。カナマイシンを含有するLB内でコロニーを成長させ、ミニプレップ技術により該コロニーからプラスミドDNAを抽出した。所望の58 L1再構築変化を確認するために、該プラスミドDNAを配列決定した。両末端にBamHI伸長を付加するために、以下のプライマーを使用して58 L1 R(再構築体)をpCR−Blunt−58 L1 Rから再増幅した:5’Bam 58Rebuild 5’−GGATCCCACAAAACAAAATGTCTGTCTGGAGACC−3’(配列番号8)および3’Bam 58Rebuild 5’−GGATCCTTACTTCTTGACCTTC−3’(配列番号9)。
【0081】
増幅されたL1産物を、Genecleanキットを使用してゲル精製し、pCR2.1(Invitrogen)内にクローニングした。TOP10F’細胞を該pCR2.1プラスミドで形質転換した。白色コロニーを、アンピシリンを含有するLB培地内で37℃で16時間、振とうすることにより培養した。ミニプレップを行って該プラスミドDNAを抽出した。該ベクター配列からHPV 58 L1遺伝子を遊離させるために、BamHI制限エンドヌクレアーゼ消化を行った。消化されたDNAをアガロースゲル電気泳動に付し、臭化エチジウム染色により可視化した。L1バンドを、Genecleanキットを使用して精製し、脱リン酸化されBamHIで消化されたpGAL110に連結した。DH5α大腸菌(E.coli)細胞を該連結混合物で形質転換した。
【0082】
得られたコロニーを、正しい配向のHPV 58 L1インサートに関してPCRによりスクリーニングした。制限消化プロフィールおよびDNA配列決定により、配列および配向を確認した。選択したクローンをpGAL110−HPV 58L1R#17と命名した。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞を、グルスラーゼでスフェロプラスト化することによりコンピテントにし、pGAL110−HPV 58L1R#17で形質転換した。該酵母形質転換物をLeu ソルビトール寒天プレート上のLeu(−)ソルビトール上層寒天内でプレーティングし、反転させて30℃で3〜5日間インキュベートした。コロニーを拾い、Leu(−)ソルビトール寒天プレート上でのクローン単離のためにストリークした。ついで、L1転写およびタンパク質発現を誘導するために、単離されたコロニーを、30℃の回転チューブ培養において、1.6%グルコースおよび4%ガラクトースを含有する5mlの5×Leu(−)Ade(−)ソルビトール内で成長させた。48時間後、OD600=10の細胞量と同等の培養容量をペレット化し、上清を除去し、該ペレットを凍結し、−70℃で保存した。
【実施例3】
【0083】
RNA調製
ガラクトース誘導によりHPV58 L1またはHPV58 L1 Rを発現するよう誘導された形質転換酵母細胞の細胞ペレットを氷上で解凍し、0.8mlのTrizol試薬(Life Technologies,Gibco BRL)に懸濁させ、室温で5分間インキュベートした。5分の1容量のクロロホルムを該バイアルに加えた。ついでそれを15秒間、激しく振とうして混合し、室温で3分間インキュベートした。13krpmでの5分間の遠心分離の後、上相を集め、新たなバイアルに移した。0.4mlのイソプロパノールを加え、室温で10分間インキュベートした。RNAをペレット化し、遠心分離を13krpmで10分間行った。上清をデカントし、RNAペレットを75% EtOHで洗浄し、遠心分離を繰返した。上清をデカントし、RNAペレットを15分間風乾させ、ついで、RNアーゼを含有しない水に懸濁させた。A260/280が1.7〜2.0である場合にA260測定値1=40μg/ml RNAという仮定により、サンプル中のRNAの濃度を測定するために分光光度測定を行った。
【実施例4】
【0084】
ノーザンブロット分析
1.1% アガロースホルムアルデヒドゲルを成型した。5および10μgのRNAを変性バッファー(最終濃度:6% ホルムアルデヒド、50% ホルムアミドおよび0.1×MOPS)と一緒にし、65℃で10分間加熱した。10分の1の容量のゲルローディングバッファーを加え、サンプルを該ゲル上にローディングした。1×MOPSバッファー中、75ボルトで〜3時間、電気泳動を行った。該ゲルを10×SSC中で60分間洗浄した。
【0085】
該RNAを、10×SSC中、16時間にわたり、毛管作用により、Hybond−N+ナイロン膜(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)にトランスファーした。ついで該RNAを、Stratagene UV Stratalinker自動架橋機能(Stratagene,La Jolla,CA)を使用する架橋によりナイロン膜に固定した。固定後、該ナイロン膜を風乾させた。
【0086】
ノーザンブロット上の58 L1 wtおよび58 L1 R転写産物を検出するためのプローブ混合物として使用するDIGで58 L1 wtおよび58 L1 R DNA配列を標識するために、Roche DIG High Prime DNA Labeling and Detection Kit I(Hoffmann−La Roche Ltd.,Basel,Switzerland)を使用した。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションおよび抗DIGアルカリホスファターゼ結合抗体を使用する免疫学的現像を、製造業者の推奨に従い行った。簡潔に説明すると、該ブロットを、穏やかに振とうしながら37℃で30分間プレハイブリダイズさせた。該プローブ混合物を、95℃で5分間加熱することにより変性させ、氷上でクエンチした。該プローブ混合物をハイブリダイゼーション溶液に加え、穏やかに振とうしながら44.6℃で4時間にわたり該膜に適用した。ついで該ハイブリダイゼーション溶液を除去し、該ブロットを、0.1% SDSを含有する2×SSC中、室温で5分間の2回の洗浄に付し、ついで0.5×SSCおよび0.1% SDSで65℃で更に洗浄した。ついで該ブロットを30分間ブロッキングし、抗DIGアルカリホスファターゼ結合抗体を1:5000希釈で30分間適用した。該ブロットを洗浄し、プローブ結合RNAの存在をアルカリホスファターゼ結合抗DIG結合抗体のNBT/BCIP基質検出により測定した。
【0087】
58 L1 wtを発現する酵母の初期分析は、機能的HPV58 L1完全長の転写および翻訳が生じることを示した。しかし、酵母にとって好ましいコドン配列で該配列が再構築された場合には、発現のレベルが増加しうるであろう。活発な転写が保証されるよう、いずれかの可能な未熟転写終結部位を除去するために再構築58 L1配列を操作した。58 L1 R転写産物のノーザンブロット分析は、58 L1 wtで見られた結果と比較して完全長転写産物の量の増加が生じることを示した(図3)。
【実施例5】
【0088】
HPV58 L1タンパク質発現
OD600=10の細胞量と等価な、ガラクトースにより誘導された培養物の凍結酵母細胞ペレットを、氷上で解凍し、2mM PMSFを含有する300μlのPCバッファー(100mM NaHPOおよび0.5M NaCl,pH7.0)に懸濁させた。酸で洗浄した0.5mmガラスビーズを、〜0.5g/チューブの濃度で加えた。該チューブを、1分間の間隔を伴う4℃で5分間の3サイクルにわたりボルテックスした。7.5μlの20% TritonX100を加え、ボルテックス工程を4℃で5分間反復した。該チューブを氷上に15分間配置し、ついで4℃で15分間遠心分離した。上清を無菌微小遠心管に移し、全酵母タンパク質抽出物と表記し、日付を記入し、−70℃で保存した。
【実施例6】
【0089】
ウエスタンブロット分析
ガラクトース誘導後の58 L1タンパク質の発現を確認するために、それぞれの58 L1構築物についての20個の単離された酵母コロニーからの全酵母タンパク質抽出物をウエスタンブロットにより分析した。
【0090】
代表的な58 L1 wtおよび58 L1 R単離物の10、5および2.5μgの全酵母タンパク質抽出物をSDS−PAGEローディングバッファーと一緒にし、95℃で10分間加熱した。陰性対照としてのHPV L1非含有全酵母タンパク質抽出物と共に、約55kDである16 L1タンパク質を陽性対照として含めた(データ非表示)。
【0091】
該タンパク質を10% SDS−PAGEゲル上にローディングし、Tris−グリシンバッファー中で電気泳動した。タンパク質の分離後、該タンパク質を該ゲルからニトロセルロースにウエスタントランスファーし、該ブロットを1×希釈バッファー(Kirkegaard and Perry Laboratories,Gaithersburg,MD)中、振とうしながら室温で1時間ブロッキングした。該ブロットを3回洗浄し、HPV16およびHPV58 L1タンパク質と交差反応する酵母吸収ヤギ抗trpE−HPV31 L1血清と共に室温で16時間インキュベートした。ついで該ブロットを3回洗浄し、抗ヤギHRP結合抗体の1:2500希釈物と共に1時間インキュベートした。該ブロットを再び3回洗浄し、NBT/BCIP検出基質(Kirkegaard and Perry Laboratories)を適用した。免疫反応性タンパク質が該ブロット上で紫色バンドとして検出された。
【0092】
すべての場合において、58 L1タンパク質は、ニトロセルロース上で、約55kDに対応する明瞭な免疫反応性バンドとして検出された(図4)。58 L1 Rバンドの強度は、58 L1 wtで見られるものより大きいようであり、このことは、酵母コドン最適化により58 L1発現の改善が達成されたことを示唆している。
【実施例7】
【0093】
ELISAアッセイ
58 L1 VLP発現を示すために、58 L1 wtおよび58 L1 R全酵母タンパク質抽出物の一部をELISAにより分析した。HPV58 L1およびHPV58 L1 Rを発現する酵母細胞を、回転チューブ培養、振とうフラスコおよび発酵槽を含む種々の方法により増殖させた。全タンパク質1μg当たりに産生されたHPV58 L1ウイルス様粒子(VLP)の量を測定するために、該酵母細胞を細胞溶解し、タンパク質抽出物を調製した。HPV58 L1 VLP発現を示すために、サンドイッチELISAを計画した。
【0094】
該酵母タンパク質抽出物中に見出される無傷58 L1 VLPに結合させるために、プロテインG精製H582C3.F7(F7)モノクローナル抗体(mAb)を使用した。F7はHPV58 L1 VLPコンホメーションエピトープを特異的に認識する。未結合タンパク質を洗浄除去し、もう1つのHPV58 L1 VLPコンホメーション特異的mAbであるH586E11.4F(F4)を検出抗体として適用した。コンホメーション的に正しい真正な58 L1 VLPが結合し、検出は、抗マウスIgG2b HRP結合抗体およびTMB基質の使用により促進された。
【0095】
特に、4℃で一晩にわたりImmulon 4 HBX 96ウェルプレートの底をコートするためにF7を使用した。該プレートをPBSおよび0.05% Tween 20で3回洗浄し、ついでブロッキング溶液(PBS + 0.05% Tween 20 + 1% BSA)でブロッキングした。該プレートを3回洗浄し、抗原(ブロッキング溶液中で12.5μg/mlに希釈された全酵母細胞ライセート)をA行に二重に適用した。精製されたHPV58 L1 VLPの参照標準物を、12.5μg/ml全酵母タンパク質中の206ng/mlで、A行の3列および4列に適用した。ついで該参照体および試験サンプルを各行下方へ2倍系列希釈した。室温で3時間後、過剰の抗原を吸引により除去し、該プレートを3回洗浄した。F4コンホメーション特異的mAbをブロッキング溶液中で希釈し、各ウェルに室温で1時間適用した。該プレートを3回洗浄し、抗マウスIgG2b HRP結合抗体をブロッキング溶液中で希釈し、室温で1時間適用した。該プレートを洗浄し、HRP結合抗体複合体を検出するためにTMB(Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL)を5分間適用した。該検出反応を2M HSOの添加により停止させた。プレートを450nmの波長で読取り、参照標準物との比較によりHPV58 L1 VLPの濃度をng VLP/μg全タンパク質の単位で測定した。
【0096】
図5は、2つの別々の実験からのHPV58 L1 wtおよびHPV58 L1 Rを発現する酵母からの全タンパク質1μg当たりの検出VLPの量の比較を示す。HPV58 L1 VLP発現レベルは酵母コドン最適化により〜2〜3倍増加した。
【実施例8】
【0097】
透過型電子顕微鏡検査
58 L1タンパク質が実際に自己集合して五量体L1カプソマー(これは今度は、ウイルス様粒子に自己集合する)を形成したことを示すために、部分的に精製された58 L1 Rタンパク質抽出物を透過型電子顕微鏡検査(EM)に付した。
【0098】
酵母を小規模発酵で増殖させ、ペレット化した。得られたペレットを精製処理に付した。L1タンパク質の発現および精製操作における保持を示すために、ペレットおよび清澄化酵母を免疫ブロットにより分析した。ついで清澄化酵母抽出物を45% スクロースクッション上の遠心分離に付し、得られたペレットを透過型EMによる分析のためにバッファーに懸濁させた。
【0099】
産生された58 L1 R VLPの代表的イメージを図6に示す。この粗サンプル中の球状粒子の直径は30〜60nmであり、いくつかの粒子はカプソマーの規則的配置を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母細胞内での高レベル発現に関してコドン最適化された、配列番号2に記載のHPV58 L1タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子。
【請求項2】
請求項1記載の核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項3】
請求項2記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項4】
宿主細胞が酵母細胞である、請求項3記載の宿主細胞。
【請求項5】
酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、クリーベルミセス・フラジリス(Kluyvermyces fragilis)、クルベロミセス・ラクチス(Kluveromyces lactis)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)よりなる群から選ばれる、請求項4記載の宿主細胞。
【請求項6】
宿主細胞がサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項5記載の宿主細胞。
【請求項7】
ヌクレオチド配列が、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の核酸分子。
【請求項8】
請求項7記載の核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項9】
請求項8記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項10】
HPV58の組換えL1タンパク質または組換えL1+L2タンパク質(該組換えL1タンパク質または該組換えL1+L2タンパク質は酵母内で製造される。)から構成されるウイルス様粒子(VLP)。
【請求項11】
組換えL1タンパク質または組換えL1+L2タンパク質がコドン最適化HPV58 L1核酸分子によりコードされる、請求項10記載のVLP。
【請求項12】
該コドン最適化核酸分子が、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む、請求項11記載のVLP。
【請求項13】
(a)HPV58 L1タンパク質またはHPV58 L1+L2タンパク質をコードするコドン最適化DNA分子で酵母を形質転換すること、
(b)該コドン最適化DNA分子の発現を可能にする条件下、該形質転換酵母を培養して組換えパピローマウイルスタンパク質を得ること、
(c)該組換えパピローマウイルスタンパク質を単離して請求項11記載のVLPを得ること
を含んでなる、請求項11記載のVLPの製造方法。
【請求項14】
請求項11記載のVLPを含んでなるワクチン。
【請求項15】
請求項11記載のVLPを含んでなる医薬組成物。
【請求項16】
請求項14記載のワクチンを哺乳動物に投与することを含んでなる、HPV感染の予防方法。
【請求項17】
請求項11記載のVLPを動物に投与することを含んでなる、動物において免疫応答を誘導するための方法。
【請求項18】
酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、クリーベルミセス・フラジリス(Kluyvermyces fragilis)、クルベロミセス・ラクチス(Kluveromyces lactis)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)よりなる群から選ばれる、請求項11記載のウイルス様粒子。
【請求項19】
酵母がサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項18のウイルス様粒子。
【請求項20】
少なくとも1つの追加的HPV型のVLPを更に含む、請求項14記載のワクチン。
【請求項21】
少なくとも1つの追加的HPV型が、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV55、HPV56、HPV59およびHPV68よりなる群から選ばれる、請求項20記載のワクチン。
【請求項22】
少なくとも1つのHPV型がHPV16を含む、請求項21記載のワクチン。
【請求項23】
HPV18 VLPを更に含む、請求項22記載のワクチン。
【請求項24】
HPV6 VLPおよびHPV11 VLPを更に含む、請求項23記載のワクチン。
【請求項25】
HPV31 VLPを更に含む、請求項24記載のワクチン。
【請求項26】
HPV31 VLPを更に含む、請求項23記載のワクチン。
【請求項27】
HPV45 VLPを更に含む、請求項25記載のワクチン。
【請求項28】
HPV45 VLPを更に含む、請求項26記載のワクチン。
【請求項29】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を含んでなる単離および精製されたHPV58 L1ポリペプチド。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−95652(P2012−95652A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−268598(P2011−268598)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【分割の表示】特願2006−539751(P2006−539751)の分割
【原出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】