説明

酸素捕捉性組成物

重縮合物と、ポリプロピレンオキシドセグメントおよびポリマーセグメントを含むコポリマーと、酸化触媒とを含む酸素捕捉性組成物であって、本コポリマーが、官能基化ポリプロピレンオキシドセグメントの存在下で、対応のモノマーの共重合によって調製されたことを特徴とする酸素捕捉性組成物、ならびにこの組成物の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重縮合物と、ポリプロピレンオキシドセグメントおよびポリマーセグメントを含むコポリマーと、酸化触媒とを含む酸素捕捉性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
このような組成物は、国際公開第99/15433号パンフレットから分かっている。この文献では、酸素捕捉性組成物は、ポリマーセグメント、特に重縮合物、および官能基化ポリプロピレンオキシドオリゴマーの反応押出によって調製される。その結果得られる、共重縮合物で示される生成物は、単層または多層フィルムにおいてそれ自体として適用されるか、あるいは更なる重縮合物で希釈される。
【0003】
この希釈組成物は、酸素捕捉特性の効率が限られており、ある程度の活性酸素バリア特性を得るためには、より厚い層の適用を必要とすることが明白になった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、重縮合物と、ポリプロピレンオキシドセグメントおよびポリマーセグメントを含むコポリマーとを含み、既知の組成物よりも優れた活性酸素バリア特性を示す組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これは本発明によって達成され、コポリマーは、官能基化ポリプロピレンオキシドセグメントの存在下で、対応のモノマーの共重合によって調製されている。
【0006】
驚くことに、ポリマーセグメントが、これらの官能基化ポリプロピレンオキシドセグメントを既に重合されたポリマーセグメントと反応させるのではなく、対応のモノマーと官能基化ポリプロピレンオキシドセグメントとの共重合から形成されたという事実は、最終の希釈組成物の酸素捕捉特性にかなりの違いを生じることが明らかになった。
【0007】
本発明による組成物は、組成物中の重縮合物に非常に有利な活性酸素捕捉特性をもたらすことを示す。縮合ポリマーとしても知られる重縮合物、その中でもポリエステルと、特にポリアミドとは、酸素に対する特定のバリアを形成し、この理由およびその他の理由で、飼料および食物および飲料のためのフィルム、ラップ、ボトル、容器またはその他の入れ物として適用される。これらは、周囲空気中の酸素を含む環境との直接的な接触から、包装された品物を保護する。これらのポリマーの層は、酸素に対して完全に不透過性ではないので、酸素と結合する化学反応によって、ポリマー層内に浸透する酸素を捕捉することができる化合物をポリマー内に混合することが知られている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
かかる化合物は、活性酸素捕捉剤として知られている。これらの中でポリアルキレンオキシドおよびポリジエンは、活性酸素捕捉剤の例であることが報告されている。また、重縮合物と反応性である酸素捕捉剤を適用すること、そして例えば反応押出による混合の間に、捕捉剤を重縮合物と反応させることも知られている。本発明による組成物において有利な結果を伴って適用され得る重縮合物の例としては、ポリエステルおよびポリアミドがある。適切なポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタノエート(PEN)、ポリブチレンナフタノエート(PBN)である。適切なポリアミド(PA)の例は、結局はPA6、PA4,6、PA6,6、PA11、PA12などの分枝ポリアミドであり得る脂肪族ポリアミド、MXD6、PA6,1/6,T、PA6,6/6,Tのような半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ならびに記載されたポリアミドおよびポリエステルのコポリマーおよびブレンドである。本発明の効果は、重縮合物として脂肪族ポリアミドを含む組成物において最も有利である。というのは、これらのポリアミドはそれ自体、例えば芳香族ポリアミドよりも低い酸素バリア特性を有するからである。
【0009】
本発明による組成物中の酸素捕捉性化合物として、官能基化ポリプロピレンオキシド(PPO)セグメントおよびポリマーセグメントを含むコポリマーであって、ポリプロピレンオキシドセグメントの存在下で、ポリマーの対応のモノマーを重合することによって調製されたコポリマーが使用される。これは、官能基化PPOオリゴマーセグメントと、特定の長さまたは分子量を有する予備形成されたポリマーセグメントとの反応押出によって得られる、従来技術から分かっているコポリマーとは異なる。国際公開第99/15433号パンフレットから分かっている製造プロセスでは、PPOオリゴマーセグメントは、通常、ポリマーの反応部位と反応することができる末端基で官能基化される。かかる官能性末端基および反応性ポリマー部位の例は、例えば、国際公開第99/15433号パンフレットから分かる。本発明で適用されるコポリマーの共重合方法において、同じ官能性が適用されていてもよい。
【0010】
適切なPPOセグメントはPPOの線状オリゴマーであり、好ましくは置換タイプのものである。IUPAC命名法では、このPPOは、ポリプロピレングリコール(ポリオキシ−1,2−プロパンジイル)で示される。これらは、2〜5000個のポリプロピレンオキシドモノマー単位、好ましくは10〜2500個の単位からなり、この形状およびサイズで、これらはモノマーと共重合されている。この範囲では、重縮合物中のコポリマーの均等な分配が達成されると思われる。この共重合の間に、可変長のポリマーセグメントAと、プロピレンセグメントBとを交互に含む−ABABA−型のコポリマーが形成される。
【0011】
もう1つの実施形態では、PPOセグメントは、2つ、3つ、4つまたはそれより多い星型の分枝化合物中の枝として存在し、その中心単位は、例えば、二官能性、三官能性、四官能性またはそれよりも多い多官能性のエステル、アミド、エーテル、ウレタンであり得る。本発明の組成物において適用されるコポリマーの調製方法では、ポリマーセグメントは、次に、PPOセグメントの枝の自由末端から成長する。この共重合の間に、ABA型の線状コポリマーが形成され得るか、あるいは分枝コポリマーはBA型の分枝を有することができる。
【0012】
PPOセグメントは別として、例えばポリエチレンオキシドのような他のエーテルセグメントも、任意選択で、存在し得るが、PPOよりも少量である。好ましくは、他のエーテルセグメントは、PPOの量の40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、または10重量%未満の量で存在する。
【0013】
PPOセグメントの存在下で対応のモノマーの共重合によって形成されたコポリマー中の適切なポリマーセグメントは、重縮合物について上記で定義されてものであり、特にポリエステル、好ましくはPBT、および脂肪族ポリアミド、好ましくはPA6またはPA6,6である。
【0014】
これらのコポリマーは、対応のモノマーの重合についてよく知られている条件、または米国特許第4590243号明細書およびEP0067695による条件において、モノマーの存在下で官能基化PPOを反応させることによって形成することができる。
【0015】
これらの方法では、モノマーおよびPPOセグメントは別として、例えば、触媒、連鎖停止剤、安定剤など、他の化合物も存在することができる。線状PPOセグメントは、例えばヒドロキシ、アミノまたは酸、もしくはポリマー部分に重合されるモノマーと反応することができるその他の基を有するその末端で官能性が終了する二価の部分として、これらの反応に導入される。星型分枝タイプのPPOセグメントでは、自由末端、すなわち星型の中心部分に結合していないPPOセグメントのPPO部分の末端は、上記の基で官能基化される。
【0016】
本発明による組成物において適用することができるコポリマー中で、PPOの相対量は、0.5または1〜95重量%であり、好ましくは2〜85または5〜75または5〜60重量%でよい。
【0017】
重縮合物およびコポリマーを含む組成物では、PPOの相対量は、重縮合物の希釈効果によって低下し得る。最終組成物において、該当する場合にはその重合過程を停止している化合物と、重縮合物とを含むコポリマー全体に関するPPOの相対量は、0.5〜50重量%、好ましくは1〜30重量%の範囲内で変化し得る。これより少ない量は、特に、酸素捕捉特性が高レベルで残存し得る期間を減少させるであろう。これより多い量は、組成物中にPPOセグメントの共連続相の形成をもたらし得る。これは組成物の酸素バリア能力全体にとって有害であり、従って組成物中のPPOの量は、PPOが組成物中で分散相を形成するように選択すべきである。本発明による組成物中のPPOの所望される特定の相対量は、コポリマー中のPPOの量および組成物中に混合されるコポリマーの量のいくつかの組み合わせによって達成できることが理解されるであろう。
【0018】
この点で、コポリマーが重縮合物と十分に相溶性であること、すなわちサブミクロンスケールで混和性であることも関係がある。この混和性は、コポリマー中のポリマーの量および種類、ならびに最終組成物中のPPOの量によって明確に影響を受ける。これらの量を上記範囲内で変化させることによって、当業者は、重縮合物中の酸素捕捉性コポリマーの良好な分散と、組成物中の酸素捕捉PPOセグメントの有利に小さい集塊(conglomerate)とを得て、所望の酸素捕捉効果を達成することができるであろう。これらの集塊は球状であってもよく、サイズ、すなわち直径または最小軸を有し、軸は、集塊の表面上の正反対の位置にある2つの点を結ぶ500nmまでの線と定義される。好ましくは30%まで、またはより好ましくは25%までの集塊は、500nm超の直径または最小軸を有する。球形は、3つの空間方向において同一またはほぼ同一の寸法を有し、軸の長さが、同一体積を有する球の直径の長さの1.3倍までの程度だけ球形形状から逸脱すると理解されるべきである。好ましくは、少なくとも50%の集塊は、300nmまで、好ましくは200nmまでのサイズを有する。より好ましくは、少なくとも70、90、または更に99%の集塊は、指定された範囲内である。より小さい集塊サイズは、より良好な酸素バリア特性をもたらすことが明らかになった。
【0019】
さらに、集塊の大部分がその形状においてアスペクト比を有し、大部分が配向されている場合には、本発明による組成物の層を含む物体は、増強された酸素捕捉性能を示すことが分かった。かかる集塊は、葉巻またはパンケーキ形状のような長尺または扁平形状を有することができる。アスペクト比を有する集塊は、少なくとも1つの空間方向におけるその寸法が、少なくとも1つの他の空間方向におけるその寸法よりも大きいという特徴によって特徴付けられる。前記寸法間の比が好ましくは少なくとも1.3であり、より好ましくは少なくとも2または更に5、または更に50、または100超である。これは、3つの空間方向において本質的に同じ寸法を有する集塊とは対照的である。配向されるとは、ここでは、最も大きい寸法が、捕捉すべきに酸素にさらされる物体の表面に平行な空間方向に延在することを意味する。前記平行な方向における集塊のこの最も大きい寸法は、500nmよりも大きく、さらに、数ミリメートルまででもよく、達成可能な上限は、実際の技術的限界によってのみ制限される。しかしながら、前記表面に垂直な集塊の寸法は、好ましくは400nm未満、より好ましくは350nm未満である。このことは、物体中の酸素捕捉層の透明性を著しく高めると思われる。アスペクト比を有する集塊を含有する物体は、その製造中または製造後に、例えば溶融状態におけるせん断にさらし、押圧し、そして特に1つまたは複数の方向に延伸することによる配向ステップを、物体に受けさせることによって得ることができる。
【0020】
従って、本発明は、酸素含有環境にさらされる少なくとも1つの表面を有する物体にも関し、該物体は、PPOセグメントの集塊が存在する本発明による組成物を含有する層を含み、その集塊の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、そしてより好ましくは少なくとも90%は、少なくとも1つの他の空間方向における寸法よりも少なくとも1.3倍大きい少なくとも1つの空間方向における寸法を有し、前記大きい寸法は、前記物体の少なくとも1つの表面に平行な空間方向に延在する。
【0021】
混和性は、重縮合物および酸素捕捉性コポリマーのポリマー部分が同じ種類のものである場合、例えば、これらがいずれもポリアミドまたはポリエステルである場合に高められる。それにもかかわらず、特定のポリエステルは、特定のポリアミドとの十分な相溶性を示し、所望のサイズの以下に記載される集塊を含有する組成物を得ることができる。相溶性は、本来このために知られている方法の適用、または化合物の添加、もしくは重縮合物とコポリマーのポリマーセグメントとの間の転移反応のための触媒によって高めることができる。
【0022】
本発明による組成物は、更に好ましくは酸化触媒を含み、酸素捕捉性化合物の酸素捕捉活性を促進する。
【0023】
適切な酸化触媒としては、少なくとも2つの酸化状態間で容易に転換することができる遷移金属触媒がある。好ましくは、遷移金属は、遷移金属塩または遷移金属錯体の形態であり、ここで金属は、元素周期表の族4、5、6、7、8、9、10、11および12から選択される。適切な金属としては、マンガンIIまたはIII、鉄IIまたはIII、クロムIIまたはIII、コバルトIIまたはIII、銅IまたはII、ニッケルIIまたはIII、ロジウムII、またはIIまたはIV、およびルテニウムI、IIまたはIV、チタンIIIまたはIV、バナジウムIII、IVまたはVが挙げられる。
【0024】
好ましくは、触媒の金属部分として、CoIIまたはIIIが使用される。
【0025】
金属の適切な対イオンとしては、塩化物、アセテート、アセチルアセトネート、ステアレート、プロピオネート、パルミテート、2−エチルヘキサノアート、ネオデカノアートまたはナフテネートが挙げられるが、これらに限定されない。また金属は、アイオノマーでもよく、この場合高分子対イオンが用いられる。かかるアイオノマーは、当該技術分野においてよく知られている。適切な錯化部分の例としては、フタロシアニンが挙げられる。遷移金属化合物は、10ppm〜10重量%で存在することができる。
【0026】
好ましくは、遷移金属化合物の量は、50〜5000ppmである。
【0027】
更に、本発明による組成物は、組成物に更に必要とされる特定の性質を与え得るその他の通常の添加剤を含むことができ、その例は、繊維などの補強材料、充填剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、およびこの目的のために当該技術分野において知られているその他の化合物である。
【0028】
本発明による組成物は優れた酸素バリア特性を有し、例えば、60μmの厚さを有するフィルムにおいて乾燥条件下でASTM標準D3985に従って測定した場合に、0.3未満、好ましくは0.1cc.mm/(m・day・atm)未満の酸素バリアを有する。
【0029】
本発明の組成物は、多層フィルム中の層として、好ましくは他の層の間に挟まれた内側層として適用することができる。このようなサンドイッチ構造では、組成物の活性寿命および有効性は、環境に直接さらされる層と比較してかなり増強される。更なる用途は、ボトル、容器またはその他の入れ物、特に、酸素の影響下で品質が劣化する食物またはその他の物質の包装に適用されるものの壁層である。従って、本発明は更に、言及された用途のための本発明による組成物の使用に関する。このために適切な方法はそれ自体知られており、ポリマー材料の一般に使用される成形および製造技法である。
【0030】
本発明は更に、重縮合物と、ポリプロピレンオキシドセグメントおよびポリマーセグメントを含むコポリマーとを含む酸素捕捉性組成物であって、重縮合物が、ポリプロピレンオキシドセグメントの存在下でポリマーを構成する対応のモノマーを重合することによって調製されたコポリマーと溶融混合されることを特徴とする酸素捕捉性組成物の調製方法に関する。
【0031】
重縮合物と、ポリプロピレンオキシドセグメントおよびポリマーセグメントを含むコポリマーとを含む酸素捕捉性組成物の調製方法は、国際公開第99/15433号パンフレットから分かっている。この既知の方法では、重縮合物と反応できる部分でその末端が官能基化されたPPOセグメントは、官能基化された部分が重縮合物の官能基と反応できる条件下で、押出機内において混合される。すなわち、方法は反応押出方法である。
【0032】
驚くことに、同程度の条件下で同程度の時間混合された、本発明の方法で調製された酸素捕捉性コポリマーは、既知の方法で調製された組成物よりも良好な酸素捕捉特性を示すことが分かった。
【0033】
本発明による方法は、押出機およびミキサーなど、熱可塑性ポリマーを混合するために当該技術分野において既知である装置において実行することができる。方法は、溶融混合を適用する。すなわち、混合は、重縮合物および酸素捕捉性コポリマーの両方の融点よりも高いが、両方の成分の分解温度未満の温度で生じる。
【実施例】
【0034】
本発明は、以下の実施例によって、それに限定されることなく、解明されるであろう。
【0035】
実験1:酸素捕捉性コポリマーの調製
コポリマー1の調製
蒸留塔およびスターラーを備えた2Lの反応器に、332.0gのε−カプロラクタム、500.0gのポリオキシプロピレンジアミン、2.0gの85m%のリン酸水溶液、および36.4gのアジピン酸を入れた。反応器に窒素を3回流した後、攪拌しながら大気圧下で、反応器の内容物を1時間以内で徐々に205℃の温度まで加熱し、この温度で19時間保持した。続いて、更に3時間、210℃に更に加熱した。窒素圧力下、重合生成物を反応器から取り出し、粉砕した。次に、これを過剰の沸騰水で3回抽出し、90℃の窒素雰囲気下、真空ストーブ(vacuum stove)内で一晩乾燥させた。
【0036】
コポリマー2の調製
蒸留塔およびスターラーを備えた2Lの反応器に、410gのジメチルテレフタレート、290gの1,4−ブタンジオール、550gのプロピレンオキシドベースのオリゴマー、250mgのチタンテトラブトキシド、150mgの酢酸マグネシウム四水和物、および590mgのN,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−(tert)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)を入れた。反応器に窒素を3回流した後、攪拌しながら大気圧下で、反応器の内容物を1時間以内で徐々に150℃の温度まで加熱し、この温度で30分間保持し、続いて2時間以内で220℃の温度まで更に加熱した。次に、こうして得られたエステル交換生成物を、20RPMの攪拌速度で、真空下(2mbarまで低下)240℃において180分間更に重合させた。窒素圧力下、重合生成物をストランドの形態で反応器から取り出し、水中で冷却し、ペレタイザー内で粒状にした。
【0037】
コポリマー3の調製
スターラー、熱電対および窒素注入口を備えたフラスコに、カプロラクタム(55.6重量%)およびPPO含有オリゴマー(ブリュッゲマン(Bruggemann)P1−30、ポリプロピレングリコールエステルアシルカプロラクタム)(44.4重量%)を入れた。この混合物を、触媒溶液(ブリュッゲマンC1、カプロラクタム中12%のカプロラクタムマグネシウムブロミド)で1:1に希釈した。100℃で混合した後、得られた混合物をモールド内に注ぎ、145℃で5分間保持した。20重量%のポリプロピレングリコールを含有する固体のコポリアミドをモールドから取り出し、粉砕した。
【0038】
実験2:酸素捕捉性ブレンド1〜7、A1、A2およびBの調製
コポリマー1およびポリアミド6(DSMアクロン(Akulon)F132−E、粘度数210ml/gISO307、30℃で90%のギ酸中で測定した相対粘度:3.20)に基づく4つのブレンド(1〜4)を、ブレンド組成および酸化触媒含量を変化させて調製した。更に、0.05重量%のイルガノックス(Irganox)1098を更に含有するコポリマー2に基づく1つのブレンド(5)と、コポリマー3に基づく1つのブレンド(6)とを調製し、いずれも、ブレンド1〜4と同じポリアミド6を含有した。更に、コポリマー1および分枝ポリアミド−6(30℃で90%のギ酸中で測定した相対粘度:3.12)に基づいてブレンド(7)を調製した。これらのブレンドは全て、円錐形の同時回転する完全に噛み合った実験室規模のツインスクリュー押出機において調製した。酸化触媒として酢酸コバルトを添加した。
【0039】
混合は、260℃のバレル温度、120rpmの回転速度、および3分の滞留時間で実行した。全ての実験を窒素雰囲気下で実行した。ポリアミドは、処理する前に乾燥させた。調製したブレンドは、処理の後、密封した袋内に貯蔵した。比較のために、官能基化PPOオリゴマー(ハンツマン(Huntsman)のジェファミン(Jeffamine)D−2000)およびポリアミド6に基づく組成物A1およびA2は、3および5分の滞留時間で、実験室規模のツインスクリュー押出機における反応押出方法によって調製されている。また、酸素捕捉性化合物を含有しないブレンドBを調製した。ブレンド組成は、表1に与えられる。
【0040】
【表1】

【0041】
実験3:ブレンド1〜7、A1、A2およびBの酸素捕捉性フィルムの調製
全てのブレンドを極低温条件下で粉砕した。得られた粉末を平坦な熱いプレートの間で押圧して、55〜75マイクロメートルの範囲の厚さのフィルムにした。フィルムの寸法は1313cmであった。押圧条件は、プレート温度が260℃であり、圧力をかけずにプレート間にある時間が5分であり、続いて系を10kNで3分間加圧した。ブレンド5(8%のコポリマー2を含有する)のフィルムのモルホロジーを透過電子顕微鏡法で決定した。PA6マトリックス中に分散したコポリマー2の粒子の形状は、直径約0.5μmの球形であった。
【0042】
実験4:酸素捕捉性ブレンド8の調製
ポリアミド6(DSMアクロン(Akulon)F132−E、粘度数210ml/gISO307、30℃で90%のギ酸中で測定した相対粘度:3.20)中の8重量%のコポリマー2、0.1重量%の酢酸コバルトに基づくブレンドを、ZSK25mm同時回転ツインスクリュー押出機(押出機の出口で、手で持った温度計により測定した溶融物の温度:290℃、スクリュー速度:300rpm)において調製した。
【0043】
実験5:ブレンド8および純粋なPA6(組成物C)の酸素捕捉性フィルムの調製
以下の装置および対応の設定を用いて、ブレンド8の寸法300mm(幅)/40μm(厚さ)の透明フィルムをフィルムキャスト法により作製した。
押出機:ゴットフェルト(Gottfert)32mm/3D、スクリュー速度90rpm、温度設定260℃、スリットダイの寸法:320mm(幅)/0.4mm(厚さ)、110℃のチルロール、そして40μmのフィルム厚さを得るように速度を調整した。
【0044】
フィルムのモルホロジーを透過電子顕微鏡法で決定した。PA6マトリックス中に分散したコポリマー2の粒子の形状は、長軸I:短軸dの比が7.8、標準偏差が2.3、そしてd<400μmの長円体であった。粒子は、押出方向に配向された。
【0045】
参考として、同じ機械で、同じ設定を用いて、DSMアクロンF132−EのストレートのPA6フィルムを参考として作製した。
【0046】
実験5:PETおよびコポリマー2と、純粋なPETとに基づく酸素捕捉性フィルムの調製
コポリマー2の顆粒をCo−アセテートのテトラヒドロフラン溶液で湿潤させ、続いて乾燥させた。これらの顆粒を、ポリエチレンテレフタレート(アルナイト(Arnite)D04300)(PET)顆粒と乾燥ブレンドして、8重量%のコポリマー2および1000ppmのCo−アセテートを含有するPET組成物(ブレンド9)を得た。この混合物から、以下の装置および対応の設定を用いて、50μmの厚さを有するフィルムをフィルムキャスト法により作製した。
押出機:バッテンフェルド(Battenfeld)45mm、温度設定270℃、スクリュー速度15rpm、スリットダイの寸法:250mm(幅)/0.5mm(厚さ)、18℃のチルロール、50〜54μmのフィルム厚さを得るように速度を調整した。
【0047】
参考として、同じ機械で、同じ設定を用いて、ストレートのPETフィルムを参考として調製した。
【0048】
実施例I〜XIおよび比較実験A〜E:フィルムの酸素透過度の測定
フィルムの一方の面を窒素環境にさらし、フィルムの他方の面を酸素雰囲気にし、フィルムを越える酸素分圧差を1barにすることによって、調製したフィルムの酸素透過度を、ASTM D3985に従ってモコン(MOCON)OX−TRAN2/21透過度計(permeameter)で測定した。乾燥条件下、別途規定されない限りは室温(23℃)で透過度試験を実行した。PA6ベースのフィルムでは測定条件における50時間のコンディショング後に、PETベースのブレンドでは50時間(実施例X)および130時間(実施例XI)後に、測定を開始した。表2には、様々なフィルムの酸素透過度が与えられる。酸素透過度は、フィルム厚さに関して正規化される。
【0049】
【表2】

【0050】
オクストラン(Oxtran)透過度計の検出限界は、510−3cc/(m2・day・atm)である。サンプルの所与の厚さ範囲では、これは、約410−4cc.mm/(m・day・atm)の固有透過度限界をもたらす。ブレンド1、3、4および6から製造したサンプルの固有酸素透過度は、410−4cc.mm/(m・day・atm)よりも小さい。
【0051】
これらの結果は、本発明によるPA6ベースの酸素捕捉性組成物が、乾燥条件および85%相対湿度の両方において、1000ppmの酸化触媒を含有する組成物では、0.00〜0.07cc.mm/(m・day・atm)の範囲の酸素透過度値を有することを示す。これらの値は、国際公開第99/15433号パンフレットに開示される方法に従って調製した比較実験AおよびBの値よりもはるかに低く、そして比較例Cに属する値よりもはるかに低い。本発明による組成物がわずか100ppmの酸化触媒を含有する場合(実験III)でさえ、酸素透過度は、従来技術のブレンドフィルムの透過度よりもまだ著しく低い。実施例VIと実施例IXの酸素透過度の結果を比較すると、アスペクト比(aspect ration)を有する粒子を含有する組成物は、球形の捕捉性粒子を含有する組成物よりも低い酸素透過度値を示すことが明らかになる。実施例XおよびXIを実施例E(PET参考)と比較すると、酸素捕捉性材料(コポリマー2)および遷移金属触媒のPETへの添加が、酸素透過度値の低下をもたらすことが明らかになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重縮合物と、ポリプロピレンオキシドセグメントおよびポリマーセグメントを含むコポリマーと、酸化触媒とを含む酸素捕捉性組成物であって、前記コポリマーが、官能基化ポリプロピレンオキシドセグメントの存在下で、対応のモノマーの共重合によって調製されたことを特徴とする酸素捕捉性組成物。
【請求項2】
前記ポリマーセグメントが、ポリアミドまたはポリエステルである請求項1に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項3】
前記重縮合物が、(コ)ポリアミドまたは(コ)ポリエステルもしくはこれらの混合物である請求項1または2に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項4】
前記重縮合物およびポリマーセグメントが、同じ種類である請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項5】
前記ポリプロピレンオキシドセグメントの量が、組成物に対して0.5〜50重量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項6】
前記量が、1〜30重量%の範囲である請求項5に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項7】
前記ポリプロピレンオキシドセグメントが集塊として存在し、前記集塊の25%までが、500nm超のサイズを有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項8】
前記酸化触媒が、遷移金属塩または錯体である請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項9】
60μmの厚さを有するフィルムにおいて乾燥条件下でASTM標準D3985に従って測定した場合に、0.3cc.mm/(m・day・atm)未満の酸素バリアを有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項10】
60μmの厚さを有するフィルムにおいて乾燥条件下でASTM標準D3985に従って測定した場合に、0.1cc.mm/(m・day・atm)未満の酸素バリアを有する請求項9に記載の酸素捕捉性組成物。
【請求項11】
前記重縮合物が、官能基化ポリプロピレンオキシドセグメントの存在下でポリマーセグメントを構成する対応のモノマーの共重合によって調製されたコポリマーと溶融混合され、そして酸化触媒が添加されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸素捕捉性組成物の調製方法。
【請求項12】
前記コポリマーが、官能基化ポリプロピレンオキシドセグメントの存在下で、ポリマーセグメントを構成する対応のモノマーの共重合によって調製され、前記コポリマーが重縮合物と溶融混合され、そして酸化触媒が添加されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸素捕捉性組成物の調製方法。
【請求項13】
請求項1〜109のいずれか一項に記載の酸素捕捉性組成物、もしくは請求項11または12に記載の方法で調製された酸素捕捉性組成物の、酸素捕捉性物体を調製するための使用。
【請求項14】
前記物体が、フィルム、ボトル、容器、またはラップなどの、食物、飲料または飼料の包装のための入れ物である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記物体が、酸素捕捉性組成物の層が別の材料の2つの層の間に挟まれた多層物体である請求項13に記載の使用。
【請求項16】
酸素含有環境にさらされる少なくとも1つの表面を有する物体であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物もしくは請求項11または12に記載の方法によって調製された組成物を含有する層を含み、前記組成物中には、ポリプロピレンオキシドセグメントの集塊が存在し、前記集塊の少なくとも90%が、少なくとも1つの他の空間方向の寸法よりも少なくとも1.3倍大きい少なくとも1つの空間方向の寸法を有し、前記大きい寸法が、前記少なくとも1つの表面に平行な方向に延在する物体。
【請求項17】
前記少なくとも1つの表面に垂直な方向において、25%までの集塊の寸法が、350nm未満である請求項16に記載の物体。
【請求項18】
前記物体が、フィルム、ボトル、容器、またはラップなどの、食物、飲料または飼料の包装のための入れ物である請求項16に記載の物体。
【請求項19】
前記物体が、酸素捕捉性組成物の層が別の材料の2つの層の間に挟まれた多層物体である請求項16に記載の物体。

【公表番号】特表2007−514818(P2007−514818A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545252(P2006−545252)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000854
【国際公開番号】WO2005/059019
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】