説明

酸素捕捉組成物

ポリプロピレンオキシドセグメントとポリマーセグメントとを含むコポリマーと酸化触媒とを含む酸素捕捉組成物であって、該コポリマーが、官能化されたポリプロピレンオキシドセグメントの存在下に対応するモノマーを共重合させることによって調製されていることを特徴とする酸素捕捉組成物およびこの組成物を調製するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンオキシドセグメントとポリマーセグメントとを含むコポリマーと酸化触媒とを含む酸素捕捉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の組成物は国際公開第99/15433号パンフレットにより周知である。この文書においては、ポリマーセグメント、特に重縮合物と、官能化されたポリプロピレンオキシドオリゴマーとを反応押出に付すことによって酸素捕捉組成物が調製されている。その結果として得られる共縮合物と称される生成物は、そのまま単層または多層膜として適用されるか、あるいはさらなる重縮合物で希釈されている。
【0003】
この組成物の酸素捕捉性は有効性が限られているため、ある程度のアクティブ酸素バリア性(active oxygen barrier properties)を得るためにはより厚い層を適用することが必要であることが判っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、周知の組成物よりもアクティブ酸素バリア性の高い、ポリプロピレンオキシドセグメントとポリマーとを含むコポリマーを含む組成物にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このことは、本発明に従い、官能化されたポリプロピレンオキシドセグメントの存在下に対応するモノマーを共重合させることによりコポリマーを調製することによって達成される。
【0006】
驚くべきことに、既に重合したポリマーセグメントを官能化されたポリプロピレンオキシドセグメントと反応させるのではなく、対応するモノマーをこれらの官能化されたポリプロピレンオキシドセグメントと共重合させることによりポリマーセグメントを形成することによって、組成物の酸素捕捉性に顕著な差が生じるという事実が判明した。
【発明の効果】
【0007】
本発明による組成物は非常に有利なアクティブ酸素捕捉性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
縮合ポリマーとしても知られる重縮合物、その中でもポリエステル、特にポリアミドは、酸素に対しある種のバリアを形成する。こうした理由などから、これらは、飼料、食品、および飲料用のフィルム、包装材(wrap)、瓶、液体容器(vessel)、またはそれ以外の容器に適している。これらは、包装された物品が周囲空気中の酸素等の環境と直接接することのないように保護するためのものである。これらのポリマーからなる層は酸素を全く透過させないわけではないので、ポリマー層内に浸入した酸素を酸素と結合する化学反応によって捕捉する化合物をポリマー中に混合することが知られている。
【0009】
この種の化合物はアクティブ酸素捕捉物質(active oxygen scavenger)として知られており、その中でも、ポリアルキレンオキシドおよびポリジエンがアクティブ酸素捕捉剤の例として報告されている。重縮合物と反応性を有する酸素捕捉物質を使用して、この酸素捕捉物質を重縮合物との混合時(例えば反応押出時)に反応させることも知られている。
【0010】
重縮合物としては、例えば、ポリエステルおよびポリアミドが挙げられる。好適なポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタノエート(naphtanoate)(PEN)、ポリブチレンナフタノエート(PBN)が挙げられる。好適なポリアミド(PA)としては、例えば、最終的に分岐のポリアミドであってもよい、PA6、PA4,6、PA6,6、PA11、PA12等の脂肪族ポリアミド、MXD6、PA6,I/6,T、PA6,6/6,T等の半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ならびに上に列挙したポリアミドおよびポリエステルのコポリマーおよびブレンドが挙げられる。
【0011】
本発明による組成物の酸素捕捉化合物としては、官能化されたポリプロピレンオキシド(PPO)セグメントとポリマーセグメントとを含むコポリマーが使用され、これは、該ポリマーに対応するモノマーをポリプロピレンオキシドセグメントの存在下に重合させることによって調製されるものである。これは、従来技術により知られている、官能化されたPPOオリゴマーセグメントとある程度の長さまたは分子量を有する予め形成されたポリマーセグメントとを反応押出することにより得られるコポリマーとは異なるものである。国際公開第99/15433号パンフレットにより知られている製造方法においては、通常、PPOオリゴマーセグメントは、ポリマーの反応性部位と反応することができる末端基で官能化されている。この種の末端官能基およびポリマーの反応性部位の例は、例えば、国際公開第99/15433号パンフレットにより周知である。本発明に適用されるコポリマーの共重合方法にこれと同じ官能性を用いてもよい。
【0012】
好適なPPOセグメントは、PPOの直鎖状オリゴマーであり、置換された種類のものが好ましい。このPPOは、IUPAC命名法ではポリプロピレングリコール(ポリオキシ−1,2−プロパンジイル)と称されるものである。これはポリプロピレンオキシドモノマー2〜5000単位、好ましくは10〜2500単位から構成されており、この形状および大きさでモノマーと共重合されている。重縮合物中における共重合体の均一な分布がこの範囲内で達成されることが判明している。この共重合に際しては、様々な長さのポリマーセグメントAとプロピレンオキシドセグメントBとを交互に含む−ABABA−型の共重合体が形成される。
【0013】
別の実施態様においては、PPOセグメントは、例えば、2、3、4、またはそれ以上の官能性を有するエステル、アミド、エーテル、ウレタンを中心単位としてもよい、2、3、4、またはそれ以上の分岐を有する星型化合物の分岐鎖として存在してもよい。本発明の組成物に適用されるコポリマーの調製方法においては、これに続いて、PPOセグメント分岐鎖の自由末端からポリマーセグメントが成長する。この共重合に際しては、ABA型の直鎖状コポリマーかまたはBA型の分岐を有する分岐コポリマーが形成される。
【0014】
場合により、このPPOセグメントとは別に、例えばポリエチレンオキシド等の他のエーテルセグメントも存在してもよいが、その量はPPOよりも少量である。好ましくは、他のエーテルセグメントは、PPOの量の40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、または10重量%未満の量で存在する。
【0015】
対応するモノマーをPPOセグメントの存在下に共重合させることによって形成されるコポリマー中の好適なポリマーセグメントは、上述の重縮合物、特にポリエステルおよび脂肪族ポリアミド、好ましくはPA6またはPA6,6を構築するモノマーを形成するものである。
【0016】
これらのコポリマーは、対応するモノマーを重合させる周知の条件下か、あるいは米国特許第4590243号明細書およびEP0067695に従い、官能化されたPPOをモノマーの存在下に反応させることによって形成することができる。
【0017】
これらの方法においては、モノマーおよびPPOセグメントとは別に、例えば触媒、連鎖停止剤、安定剤等の他の化合物も存在してもよい。この反応に2価の部分として導入される直鎖状PPOセグメントは、末端が例えば、ヒドロキシ、アミノ、または酸、あるいは重合してポリマー部分となるモノマーと反応することができる他の基で官能化されている。星分岐型のPPOセグメントにおいては、自由末端、すなわちPPOセグメントの星の中心部分に結合していないPPO部の末端が上述の基で官能化されている。
【0018】
本発明による組成物に適用可能なコポリマー中のPPOの相対量は、0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%の範囲内にあってもよい。これよりも少量であれば、酸素捕捉性が高水準に留まるであろう期間が特に短縮されることとなる。これよりも多量であれば、組成物中にPPOセグメントの共連続相が形成される可能性がある。これは組成物全体の酸素バリア性能に不利であり、したがって、組成物中のPPOの量を、組成物中にPPOの分散相が形成されるようにすることが必要である。
【0019】
酸素捕捉PPOセグメントは、有利には、組成物中の小集合体として組成物中に存在する。これらの集合体は球状であってもよく、その大きさ、すなわち直径または最短軸(軸とは、集合体表面の正反対に位置する2点を結ぶ線と定義される)は500nmまでであってもよく、好ましくは、直径または最短軸が500nmを超える集合体は最大でも30%またはそれ以上、好ましくは最大でも25%である。球状とは、空間の3方向の寸法が等しいかまたはほぼ等しく、軸の長さが、同一体積を有する球の直径の長さに比し最大1.3倍であることのみが球形との差異であるものと理解されたい。好ましくは、集合体の少なくとも50%は、大きさが最大でも300nm、好ましくは最大でも200nmである。より好ましくは、少なくとも70%、90%、あるいはさらに99%もの集合体が規定の範囲内にある。集合体の大きさが小さい方が良好な酸素バリア性が得られることが判明した。
【0020】
さらに、本発明による組成物の層を含む物品の酸素捕捉挙動は、集合体の大部分がアスペクト比を有する形状を有し、その大部分が配向している場合に高くなることが見出された。かかる集合体は、葉巻またはパンケーキの形状のように細長いかまたは平たい形状であってもよい。アスペクト比を有する集合体とは、少なくとも1つの空間方向の寸法が他の少なくとも1つの空間方向の寸法よりも長い外形を特徴とするものである。上記寸法の比率は少なくとも1.3が好ましいが、より好ましくは、少なくとも2、あるいはさらに5、あるいはさらに50、あるいは100超である。これは、3つの空間方向の寸法が基本的に等しい集合体とは対照的である。本明細書において配向しているとは、最長の寸法が、捕捉すべき酸素に曝されている物品の面と平行な空間方向に延在していることを意味する。この集合体の上記平行な方向の最長寸法は500nmを超えてもよく、さらに最大数ミリメーターであってもよい。しかしながら、上記面に対し垂直な方向の集合体の寸法は、好ましくは400nm未満、より好ましくは350nm未満である。こうすることで物品の酸素捕捉層の透明性が著しく向上することが判明した。アスペクト比を有する集合体を含む物品は、該物品の製造中または製造後にこれを配向ステップに付す(例えば、溶融状態での加圧や、特に、1またはそれ以上の方向への延伸によって剪断を加える)ことによって得ることができる。
【0021】
したがって、本発明はさらに、酸素を含む環境に曝される少なくとも1つの面を有する物品であって、PPOセグメントの集合体が存在する本発明による組成物を含む層を備え、この集合体の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%は、少なくとも1つの空間方向の寸法が他の少なくとも1つの空間方向の寸法よりも少なくとも1.3倍長く、上記長い方の寸法が該物品の該少なくとも1つの面と平行な空間方向に延在している物品に関する。
【0022】
本発明による組成物は、酸素捕捉化合物の酸素捕捉活性を高める酸化触媒をさらに含む。
【0023】
好適な酸化触媒は、少なくとも2種の酸化状態の間を容易に行き来することのできる遷移金属触媒を含む。好ましくは、この遷移金属は、遷移金属塩または遷移金属錯体の形態にあり、該金属は、元素周期律系の4、5、6、7、8、9、10、11、および12族から選択される。好適な金属としては、マンガンIIまたはIII、鉄IIまたはIII、クロムIIまたはIII、コバルトIIまたはIII、銅IまたはII、ニッケルIIまたはIII、ロジウムII、またはII、またはIV、およびルテニウムI、II、またはIV、チタンIIIまたはIV、バナジウムIII、IV、またはVが挙げられる。
【0024】
好ましくは、CoIIまたはIIIが、触媒の金属部分として使用される。
【0025】
金属の好適な対イオンとしては、塩化物イオン、酢酸イオン、アセチルアセトネートイオン、ステアリン酸イオン、プロピオン酸イオン、パルミチン酸イオン、2−エチルヘキサン酸イオン、ネオデカン酸イオン、またはナフテナート(naphtenate)イオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この金属はアイオノマーであってもよく、その場合は、対イオンとしてポリマーが用いられる。かかるアイオノマーは当業者によく知られている。好適な錯化部分としては、例えばフタロシアニンが挙げられる。遷移金属化合物は10ppm〜10重量%存在してもよい。
【0026】
好ましくは、組成物中の遷移金属化合物の量は、50〜5000重量ppmである。
【0027】
さらに、本発明による組成物は、さらに必要とされる特定の特性を該組成物に付与し得る他の通常の添加剤を含んでいてもよく、その例として、繊維、充填剤、ナノ粒子、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、および当該技術分野において知られているこの目的のための他の化合物が挙げられる。
【0028】
本発明による組成物は非常に優れた酸素バリア性を有し、例えば、ASTM標準D3985に準拠し、厚さ60μmのフィルムを用いて乾燥条件下に測定した酸素バリアが0.3cc・mm/(m・day・atm)未満、好ましくは0.1cc・mm/(m・day・atm)未満である。
【0029】
本発明の組成物は、多層膜の層として、好ましくは他の層の間に挟まれた内層として適用してもよい。このようなサンドイッチ構造の場合、環境に直接曝される層とした場合と比較して、該組成物の有効寿命および有効性が著しく向上する。さらには、瓶、液体容器、またはその他の容器、特に、酸素の影響下で品質が劣化する食品やそれ以外の物質を包装するために用いられるものの壁部の層として適用される。したがって本発明はさらに、本発明による組成物を上述の用途に使用することに関する。このために好適な方法は、ポリマー材料の成形および製造に慣用されているそれ自体周知の技法である。
【0030】
コポリマーと酸化触媒とを含む酸素捕捉組成物の調製は、コポリマーと酸化触媒とを別個のステップにおいて混合するか、または本発明の組成物から物品を製造するステップにおいて混合することによって行ってもよい。
【0031】
この混合は、押出機や混合機など、熱可塑性ポリマーを混合するための当該技術分野において知られている設備で実施してもよい。この方法は、溶融混合、すなわち酸素捕捉コポリマーの融点を超え、かつ分解温度未満の温度における混合に適している。
【0032】
以下に示す非限定的な実施例により本発明が明らかになるであろう。
【実施例】
【0033】
実施例1:酸素捕捉コポリマーの調製
(コポリマー1の調製)
撹拌器、熱電対、および窒素導入口を備えたフラスコに、カプロラクタム(88.8重量%)およびPPO含有オリゴマー(ブリュゲマン(Brueggemann)P1−30、ポリプロピレングリコールエステルアシルカプロラクタム)(11.2重量%)を装入した。この混合物を触媒溶液(ブリュゲマンC1、カプロラクタムマグネシウムブロマイドのカプロラクタム中12%溶液)で1:1に希釈した。100℃で混合した後、結果として得られた混合物を型枠に注いで145℃で5分間保持した。ポリプロピレングリコール5重量%を含む固体のコポリアミドを型枠から取り出して粉砕した。
【0034】
(コポリマー2の調製)
撹拌器、熱電対、および窒素導入口を備えたフラスコに、カプロラクタム(55.6重量%)およびPPO含有オリゴマー(ブリュゲマンP1−30、ポリプロピレングリコールエステルアシルカプロラクタム)(44.4重量%)を装入した。この混合物を触媒溶液(ブリュゲマンC1、カプロラクタムマグネシウムブロマイドのカプロラクタム中12%溶液)で1:1に希釈した。100℃で混合した後、結果として得られた混合物を型枠に注いで145℃で5分間保持した。ポリプロピレングリコール20重量%を含む固体のコポリアミドを型枠から取り出して粉砕した。
【0035】
(コポリマー3の調製(比較))
撹拌器、熱電対、および窒素導入口を備えたフラスコに、カプロラクタム(29.9重量%)およびPPO含有オリゴマー(ブリュゲマンP1−30、ポリプロピレングリコールエステルアシルカプロラクタム)(70.1重量%)を装入した。この混合物を、触媒溶液(ブリュゲマンC1、カプロラクタムマグネシウムブロマイドのカプロラクタム中15%溶液)で2:1に希釈した。100℃で混合した後、結果として得られた混合物を型枠に注いで145℃で5分間保持した。ポリプロピレングリコール42重量%を含む固体のコポリアミドを型枠から取り出して粉砕した。
【0036】
(コポリマー4の調製)
蒸留カラムおよび撹拌器を備えた2Lの反応器に、テレフタル酸ジメチル790g、1,4−ブタンジオール560g、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシド)100g、チタンテトラブトキシド250mg、および酢酸マグネシウム四水和物150mgを装入した。反応器を3回窒素置換した後、反応器の内容物を大気圧下で撹拌しながらゆっくりと加熱して1時間以内に温度を150℃とし、この温度を30分間保持した後、さらに加熱して2時間以内に温度を220℃とした。次いで、このようにして得られたエステル交換生成物を、減圧(2mbarまで低下させる)下で撹拌速度を20RPMとして240℃でさらに150分間重合させた。重合生成物を窒素圧下に反応器からストランドの形態で吐出させて水冷し、ペレタイザーで粒状化した。
【0037】
(コポリマー5の調製(比較))
蒸留カラムおよび撹拌器を備えた2Lの反応器に、テレフタル酸ジメチル800g、1,4−ブタンジオール495g、ポリ(テトラヒドロフラン−1000)100g、チタンテトラブトキシド480mg、および酢酸マグネシウム四水和物300mgを装入した。反応器を3回窒素置換した後、反応器の内容物を大気圧下で撹拌しながらゆっくりと加熱して1時間以内に温度を150℃とし、この温度を30分間保持した後、さらに加熱して2時間以内に温度を220℃とした。次いで、このようにして得られたエステル交換生成物を、減圧(2mbarまで低下させる)下で撹拌速度を20RPMとして240℃でさらに150分間重合させた。重合生成物を窒素圧下に反応器からストランドの形態で吐出させて水冷し、ペレタイザーで粒状化した。
【0038】
実施例2:酸素捕捉試料の調製
コポリマー1、2、3、4、および5を、酸化触媒である酢酸コバルトと一緒に溶融混合した。この混合は、バレル温度を260℃、回転速度を120rpm、滞留時間を3分間として実施した。どの実験も窒素雰囲気下で実施した。コポリマーは加工前に乾燥させた。こうして調製された加工後の材料は、密封された袋に保管した。これらの試料に関する情報を表1に示す。
【0039】
比較のため、官能化されたPPOオリゴマー(ハンツマン(Huntsman)のジェファーミン(Jeffamine)D−2000)およびポリアミド6(DSMのアクロン(Akulon)F132−E、粘度数210ml/g(ISO307)、90%ギ酸中、30℃で測定された相対粘度3.20)をベースとする試料C1およびC2を、実験室規模の二軸押出機で滞留時間を3および5分間として反応押出法により調製した。
【0040】
試料1、2、A、C1、およびC2の対照用として、酸素捕捉化合物を含まない対照用ポリアミド6も準備した(試料D)。
【0041】
試料3およびBの対照用として、酸素捕捉化合物を含まない対照用ポリブチレンテレフタレート(DSMアーナイト(Arnite))T04 200、m−クレゾールの1重量%溶液中、25℃で測定された相対粘度1.85)試料も準備した(試料E)。表1を参照されたい。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例3:酸素捕捉フィルムの調製
試料をいずれも極低温状態で粉砕した。結果として得られた粉末を平らな熱板の間で加圧成形することにより厚さが55〜75マイクロメーターの範囲のフィルムとした。フィルムの寸法は13×13cmとした。加圧条件は、板の温度を260℃、板の間で加圧しない時間を5分間とし、次いでこの系を10kNで3分間加圧した。
【0044】
実施例4:フィルムの酸素透過度測定
こうして調製されたフィルムの酸素透過度を、ASTM D3985に準拠し、モコン(MOCON)の酸素透過度測定装置(permeameter)OX−TRAN2/21を用いて測定した。フィルムの片面を窒素環境に曝し、フィルムのもう一方の面を酸素雰囲気に曝すことによって、フィルムを隔てた酸素分圧の差が1barとなるようにした。透過度試験は、室温(23℃)の乾燥条件下で実施した。この測定条件下で50時間状態調整を行った後に測定を実施した。
【0045】
表2に、様々なフィルムの酸素透過係数(permeability)を示す。この酸素透過係数は、フィルムの厚さに応じて標準化したものである。
【0046】
【表2】

【0047】
酸素透過度測定装置オキシトラン(Oxtran)の検出限界は5×10−3cc/(m・day・atm)である。この限界値は、所与の試料厚範囲では、約4×10−4cc・mm/(m・day・atm)という固有の透過係数となる。試料1および2に固有の酸素透過係数は、4×10−4cc・mm/(m・day・atm)よりも低い。
【0048】
ポリアミドベースの酸素捕捉試料(試料1、2、A、C1、C2)および対応する対照試料Dの酸素バリアに関する結果を比較すると、本発明による試料、すなわち試料1および2の酸素透過係数の値は、酸化触媒を1000ppm含有する組成物では、4×10−4cc・mm/(m・day・atm)よりも低いことがわかる。これらの値は、国際公開第99/15433号パンフレットに開示された方法に従い調製した比較試料A1およびA2の値よりもはるかに低い。この値はまた、対照試料Dと比較してもはるかに低い。試料Aの場合は、酸素バリア性能は寧ろ劣っており、この主要因はおそらくエーテル相が共連続になっていることであろう。試料1および2の場合、エーテル相は分散性を有している。
【0049】
ポリエステルベースの酸素捕捉試料(試料4、5)および対応する対照試料Cの酸素バリアに関する結果を比較すると、本発明による試料、すなわち試料4の酸素透過係数の値は、酸化触媒を1000ppm含有する組成物では、0.2cc・mm/(m・day・atm)よりも低いことがわかる。この値は、PPOベースのエーテル系の替わりにテトラヒドロフランベースのエーテル系を含む試料Bの値よりもはるかに低く、このことから、PPOの酸素捕捉性能がこれらの他のエーテルよりも優れていることがわかる。また、この値は、酸素捕捉成分を含まない対照試料Eよりもはるかに低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンオキシドセグメントとポリマーセグメントとを含むコポリマーと酸化触媒とを含む酸素捕捉組成物であって、前記コポリマーが、官能化されたポリプロピレンオキシドセグメントの存在下に対応するモノマーを共重合させることによって調製されていることを特徴とする、酸素捕捉組成物。
【請求項2】
前記ポリマーセグメントが、ポリアミドまたはポリエステルである、請求項1に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項3】
ポリプロピレンオキシドセグメントの量が、前記組成物に対し0.5〜40重量%である、請求項1または2に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項4】
前記量が、1〜30重量%の範囲にある、請求項3に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項5】
重縮合物が存在せず、前記ポリプロピレンオキシドセグメントが球状の集合体として存在し、前記集合体のうち大きさが300nmを超えるものが最大で25%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項6】
前記酸化触媒が、遷移金属の塩または錯体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項7】
ASTM標準D3985に準拠し、厚さ60μmのフィルムを用いて乾燥条件下で測定した酸素バリアが、0.3cc・mm/(m・day・atm)未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項8】
ASTM標準D3985に準拠し、厚さ60μmのフィルムを用いて乾燥条件下で測定した酸素バリアが、0.1cc・mm/(m・day・atm)未満である、請求項7に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸素捕捉組成物の、酸素捕捉物品を製造するための使用。
【請求項10】
前記物品が、食品、飲料、または飼料を包装するための、フィルム、瓶、液体容器、または包装材等の容器である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記物品が、前記酸素捕捉組成物の層を他の材料の2つの層の間に挟んだ多層物品である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
酸素を含有する環境に曝される少なくとも1つの面を有し、前記ポリプロピレンオキシドセグメントの集合体が存在する請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を含む層を備える物品であって、この集合体の少なくとも90%は、少なくとも1つの空間方向の寸法が他の少なくとも1つの空間方向の寸法よりも少なくとも1.3倍長く、前記長い方の寸法が前記少なくとも1つの面と平行な方向に延在している、物品。
【請求項13】
前記集合体のうち、前記少なくとも1つの面と垂直な方向の寸法が350nm未満であるものが最大で25%である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記物品が、食品、飲料、または飼料を包装するための、フィルム、瓶、液体容器、または包装材等の容器である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記物品が、前記酸素捕捉組成物の層を他の材料の2つの層の間に挟んだ多層物品である、請求項13に記載の物品。

【公表番号】特表2007−523223(P2007−523223A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545253(P2006−545253)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000856
【国際公開番号】WO2005/059020
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】