説明

重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法

【課題】従来に比べて緩和された条件で、重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる重質油軽質化装置を提供する。
【解決手段】重質油軽質化装置100は、重質油貯留器10と、重質油HO及び触媒22を含む液相部23、軽質油の少なくとも一部(軽質油LO)が液相部23から分離される気相部21、並びに気相部21にキャリアガスCGを供給するキャリアガス供給口24aを有し、キャリアガスCG及び重質油HOを、重質油の流速(voil)に対するキャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕が1<〔vcg/voil〕となるように流通させながら重質油HOと触媒22とを150℃〜300℃で接触させて軽質油を生成する反応器20と、加熱器30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、重質油を軽質化する方法(重質油軽質化方法)としては、触媒を用いる接触分解法や、水素を添加しながら重質油を分解させる水素化分解法、熱のみで分解する熱分解法が用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
従来の重質油軽質化方法では、水素化分解法では例えば500℃以上及び30〜100気圧の高温高圧条件が、接触分解法では例えば500℃程度の高温条件が、熱分解法では例えば400〜500℃及び2〜30気圧の高温高圧条件が、それぞれ必要であり、反応場を形成するのに多量のエネルギーが必要である。
【0003】
従来よりも緩和された条件での重質油軽質化方法としては、重質油と水とを380℃〜450℃、25〜35MPaに維持された反応器で反応させて前記重質油を軽質化して軽質油を生成する工程と、前記軽質油とガスと水を含む混合物から軽質油とガスと水とにそれぞれ分離する工程と、を含み、前記反応器に一酸化炭素を25〜35MPaの圧力で供給する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、酸化還元電位が−850mV以下であってpHが12以下であるアルカリイオン水を重質油(原料油)中に乳化することによって乳濁液を精製する工程と、加熱された熱媒体の表面へ前記乳濁液の液滴を滴下する工程と、を備えた重質油軽質化方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−011259号公報
【特許文献2】特開平9−183983号公報
【特許文献3】特開2001−139960号公報
【特許文献4】国際公開第2007/125576号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献3に記載の方法でも、依然として380℃〜450℃、25〜35MPaといった高温高圧条件が必要であるため、更なる条件の緩和が求められている。
また、特許文献3及び4に記載の方法では、重質油に添加物質(水)を加えているため、例えば生成される軽質油に酸素が含まれる等、生成される軽質油の品質に劣る傾向がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、従来に比べて緩和された条件で、重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、液体状態の重質油を貯留する重質油貯留器と、前記重質油貯留器から送液された重質油及び該重質油を軽質化させる触媒を含む液相部、前記重質油の軽質化により生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって前記液相部から分離される気相部、並びに前記気相部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給口を有し、前記気相部に前記キャリアガスを、前記液相部に前記重質油を、前記重質油の流速(voil)に対する前記キャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕が1<〔vcg/voil〕となるようにそれぞれ流通させながら、前記重質油と前記触媒とを150℃〜300℃の条件下で接触させることにより前記重質油を軽質化させて軽質油を生成する反応器と、前記反応器を加熱する加熱器と、を備える。
【0008】
請求項1に記載の重質油軽質化装置では、軽質化の対象となる液体状態の重質油が、重質油貯留器から反応器に送液される。そして、反応器の液相部において、液体状態の重質油と触媒とが接触し、該液体状態の重質油が軽質化されて軽質油が生成する。このため、気体状態の重質油を軽質化させる重質油軽質化装置と比較して、重質油ガス化装置が不要であり、かつ、軽質化の反応温度を従来に比べて低く、具体的には150℃〜300℃とすることができる。
【0009】
請求項1に記載の重質油軽質化装置では、軽質化の反応温度を従来に比べて低温の150℃〜300℃とすることによる反応速度の低下及び軽質油収量の低下を、以下のようにして緩和できる。
即ち、反応器の液相部において、重質油を流通させながら触媒と接触させることにより、重質油と触媒との接触頻度を高めることができるので、重質油の軽質化の反応(以下、「軽質化反応」ともいう)を促進できる。
更に、反応器に、生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって液相部から分離される気相部を設けることにより、液相部(反応場)から、生成された軽質油の少なくとも一部(反応温度以下の沸点を有する成分)が気体状態で分離される。即ち、触媒周りの反応場は常に重質油で満たされるため、軽質化反応における反応平衡を軽質化が進む方向にずらすことができる。このため、前記分離を行わない場合と比較して、軽質化の反応速度を向上でき、軽質油収量の低下を緩和できる。更に、軽質油は反応場に留まらないため、過度の分解や重合が抑制されるので、軽質油の収率が向上する。
更に、キャリアガスを気相部に流通させながら軽質油を生成することにより、キャリアガスがスイープガスとして機能し、液相部からの軽質油の分離効率を向上させることができ、ひいては軽質化反応における反応平衡を軽質化が進む方向にずらすことができる。このとき、重質油の流速(voil)に対する前記キャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕が1<〔vcg/voil〕を満たすことにより、キャリアガスと重質油とのスリップが生じるので、液相部からの軽質油の分離が更に促進される。
【0010】
以上により、請求項1に記載の重質油軽質化装置では、反応の条件を高圧とする必要もなく、大気圧程度(例えば、0.08〜0.12MPa程度)の圧力で軽質化を行うことができる。また、重質油に対し水などの添加物質を混入させる必要がないので、良質な軽質油を得ることができる。また、重質油に対し水などの添加物質を混入させる必要がないので、脱酸素のための工程(水素化処理工程など)を付加する必要もない。
【0011】
従って、請求項1に記載の重質油軽質化装置によれば、従来に比べて緩和された条件で(即ち、従来に比べて低温かつ低圧の条件で)重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1に記載の重質油軽質化装置において、前記反応器は、前記気相部から前記気体状態の軽質油及び前記キャリアガスを排出するガス排出口を有する。
これにより、液相部(反応場)からの軽質油の少なくとも一部(反応温度以下の沸点を有する成分)の分離の効率をより向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1又は請求項2に記載の重質油軽質化装置において、前記比〔vcg/voil〕が、25≦〔vcg/voil〕を満たす。
これにより、キャリアガスと重質油とのスリップが増すので、液相部からの軽質油の分離がより促進され、軽質油の収量をより増大させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、前記比〔vcg/voil〕が、〔vcg/voil〕≦600を満たす。
これにより、液相部から分離される軽質油中に高カーボン数成分が混入する現象をより抑制できるので、より良質な軽質油を得ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、前記反応器から未反応の重質油を排出し、排出された未反応の重質油を前記反応器に戻す重質油配管を備える。
これにより、未反応の重質油を無駄にすることなく利用できる。
【0016】
請求項6に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項5に記載の重質油軽質化装置において、前記重質油貯留器は、前記重質油配管の途中に設けられている。
これにより、重質油を、重質油貯留器、反応器、重質油貯留器、反応器の順に循環させながら触媒と接触させることができるので、未反応の重質油を無駄にすることなく利用できる。
【0017】
請求項7に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、前記ガス排出口は、前記キャリアガス供給口に対し、前記重質油の流通方向についての上流側に設けられている。
これにより、重質油の流れとキャリアガスの流れとが対向流となり、並行流とした場合と比較してキャリアガスと重質油とのスリップが増すので、液相部からの軽質油の分離効率がより向上し、ひいては軽質油の収量をより増大させることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、液体状態の重質油及び該重質油を軽質化させる触媒を含む液相部と、前記重質油の軽質化により生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって前記液相部から分離される気相部と、を有する反応器の前記気相部にキャリアガスを、前記液相部に前記重質油を、前記重質油の流速(voil)に対する前記キャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕が1<〔vcg/voil〕となるようにそれぞれ流通させながら前記重質油と前記触媒とを150℃〜300℃の条件下で接触させることにより、前記重質油を軽質化させて軽質油を生成する工程を有する。
【0019】
請求項8に記載の発明に係る重質油軽質化方法によれば、請求項1に記載の重質油軽質化装置と同様に、軽質化の反応温度を従来に比べて低温の150℃〜300℃とすることによる反応速度の低下及び軽質油収量の低下を緩和できるので、従来に比べて緩和された条件で(即ち、従来に比べて低温かつ低圧の条件で)重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる。
【0020】
請求項9に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、請求項8に記載の重質油軽質化方法において、前記軽質油の生成は、前記気相部から気体状態の軽質油及び前記キャリアガスを排出しながら行う。
これにより、液相部(反応場)からの軽質油の少なくとも一部(反応温度以下の沸点を有する成分)の分離の効率をより向上させることができる。
【0021】
請求項10に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、請求項8又は請求項9に記載の重質油軽質化方法において、前記比〔vcg/voil〕が、25≦〔vcg/voil〕を満たす。
これにより、キャリアガスと重質油とのスリップが増すので、液相部からの軽質油の分離がより促進され、軽質油の収量をより増大させることができる。
【0022】
請求項11に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の重質油軽質化方法において、前記比〔vcg/voil〕が、〔vcg/voil〕≦600を満たす。
これにより、液相部から分離される軽質油中に高カーボン数成分が混入する現象をより抑制でき、より良質な軽質油を得ることができる。
【0023】
請求項12に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の重質油軽質化方法において、前記軽質油の生成は、前記反応器から前記未反応の重質油を排出し、排出された未反応の重質油を前記反応器に戻しながら行う。
これにより、未反応の重質油を無駄にすることなく利用できる。
【0024】
請求項13に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載の重質油軽質化方法において、前記反応器は、前記気相部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給口と、前記キャリアガス供給口に対し前記重質油の流通方向についての上流側に設けられ、前記気相部から気体状態の軽質油及び前記キャリアガスを排出するガス排出口と、を有する。
これにより、重質油の流れとキャリアガスの流れとが対向流となり、並行流とした場合と比較してキャリアガスと重質油とのスリップが増すので、液相部からの軽質油の分離効率がより向上し、ひいては軽質油の収量をより増大させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来に比べて緩和された条件で、重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る重質油軽質化装置を模式的に示した図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る重質油軽質化装置を模式的に示した図である。
【図3】本実施例1において、比〔vcg/voil〕と軽質油量及び軽質成分割合との関係を示すグラフである。
【図4】本実施例1(SV2.5)、本実施例2(SV4.17)、及び本実施例3(SV0.83)において、比〔vcg/voil〕と軽質油量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の各実施形態に係る重質油軽質化装置について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100を模式的に示した図である。
図1に示すように、重質油軽質化装置100は、液体状態の重質油を貯留する重質油貯留器10と、重質油の軽質化反応を行う反応器20と、反応器20を加熱するための加熱器30と、を備えている。
重質油貯留器10と反応器20とは、重質油配管40によって連通されるとともに送液手段P1を備えた重質油配管70によっても連通されており、送液手段P1を作動させることにより、重質油貯留器10と反応器20との間で重質油HOを循環できるようになっている。
即ち、重質油軽質化装置100では、重質油貯留器10が重質油配管(重質油配管40及び重質油配管70)の途中に設けられており、重質油配管(重質油配管40及び重質油配管70)により、反応器20から排出された未反応の重質油HOを、重質油貯留器10を経由させて反応器20に戻すことができるように構成されている。即ち、重質油貯留器10から反応器20への重質油HOの供給経路と、重質油HOの循環経路と、が一部重複している。
但し、本発明はこの形態には限定されず、重質油の供給経路と重質油の循環経路とが全く重複しない形態(即ち、重質油貯留器から反応器への重質油を供給するための重質油配管とは別に、反応器から排出された未反応の重質油を重質油貯留器を経由させずに直接反応器に戻す重質油配管を備えた形態)であってもよい。
【0029】
重質油貯留器10としては、液体状態の重質油が貯留できる内部空間を有する重質油貯留器(例えば、重質油貯留タンク)を用いる。
ここで重質油としては、例えば、A重油(JIS K2205(1991)で規定されている「1種」の重油)またはB重油(JIS K2205(1991)で規定されている「2種」の重油)に相当する重質油を用いる。
【0030】
反応器20は、重質油貯留器10から送液された重質油HO及び触媒22を含む液相部23と、後述する気相部21と、を有する。
これにより、液相部23において、重質油HOと触媒22とを接触させることにより重質油HOを軽質化させて軽質油を生成できるようになっている。
触媒22としては、粉末状、顆粒状、塊状等の固体触媒を用いることができる。
触媒22として、具体的には、ゼオライト、シリカ−アルミナ、アルミナ、これらの複合材料を主成分とした材料等を用いることができる。
反応器20には、重質油配管40に連通され反応器20に重質油を供給するための重質油供給口26a、及び重質油配管70に連通され反応器20から重質油を排出するための重質油排出口27aが、それぞれ設けられている。
【0031】
液相部23は、気相部21に隣接する領域であって重質油HOの流通方向において触媒22が存在しない領域23A(以下、「触媒不存在領域23A」ともいう)と、重質油HOの流通方向において触媒が存在する領域23B(以下、「触媒存在領域23B」ともいう)と、から構成されている。
反応器20の内部空間を高さ方向(深さ方向)について見ると、上部が気相部21、下部が液相部23となっており、液相部23は、上部(図1中の想像線(二点鎖線)よりも上の領域)が触媒不存在領域23A、下部(図1中の想像線(二点鎖線)以下の領域)が触媒存在領域23Bとなっている。
このような構成とするための方法としては、図1に示すように、重質油排出口27aを、反応器20における触媒存在領域23Bよりも高い位置に設ける方法が好適である。
反応器20において、重質油HOは、軽質化反応で生成した軽質油と入れ替わって触媒存在領域23B中に存在するとともに、一部は触媒不存在領域23A中を流通する。
【0032】
また、反応器20は、液相部23上に、気体状態の軽質油LOが流通される気相部21を有する。
ここで、気体状態の軽質油LOは、重質油の軽質化によって得られた軽質油のうち、主には反応温度(重質油と触媒との接触温度、具体的には150℃〜300℃)以下の沸点を有する成分であって、液相部23から分離された成分である。
【0033】
気相部21の重質油流通方向についての上流側の端部にはキャリアガス供給口24aが設けられており、これにより、不図示のキャリアガス供給手段(例えば、ガスボンベ等)からキャリアガス配管62aを通じて気相部21にキャリアガスCGを供給し、気相部21にキャリアガスCGを流通できるようになっている。
キャリアガスCGとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、等を用いることができる。
【0034】
また、気相部21の重質油流通方向についての下流側の端部には、ガス排出口25aが設けられており、これにより、気体状態の軽質油LO及びキャリアガスCGを、気相部21から軽質油配管60aに排出できるようになっている。
この実施形態では、ガス排出口25aが、キャリアガス供給口24aに対し、重質油流通方向についての下流側に設けられており、これにより、反応器20において、重質油HOの流れとキャリアガスCGの流れとが並行流となるように構成されている。
【0035】
また、図示しないが、反応器20は、液相部の温度、気相部の圧力、重質油の流速、キャリアガスの流速等を測定する各種の測定手段(センサー等)を備えていてもよい。
【0036】
また、前述のとおり、反応器20と重質油貯留器10とを連通する重質油配管70には、重質油貯留器10から反応器20への重質油を送液するための送液手段P1(例えば、送液ポンプ等)が設けられている。但し、送液手段は重質油配管70ではなく重質油配管40に設けられていてもよいし、重質油配管40及び重質油配管70の両方に設けられていてもよい。
ここで、送液手段P1は、送液量を調整する送液量調整機能を備えていることが好ましい。この送液量の調整によって、反応器20における重質油の流速や、下記の空間速度(SV)を調整できる。
【0037】
本実施形態においては、反応器20内における触媒量(単位;g)に対する反応器20内における重質油の流量(単位;g/h)の比[反応器内における重質油の流量(単位;g/h)/反応器内における触媒量(単位;g)](単位;1/h)(以下、空間速度(SV)ともいう)は、0.5以上50以下であることが好ましい。
この空間速度(SV)(単位;1/h)が0.5以上であると、重質油と触媒との接触頻度がより向上し、軽質化反応がより促進される。一方、前記比が50以下であると、軽質油が、反応場から分離される前に未反応油とともに排出されてしまう現象をより抑制できる。
従って、空間速度(SV)(単位;1/h)が0.5以上50以下であると、軽質油の収量をより増大させることができる。
前記空間速度(SV)は、より好ましくは0.5以上20以下、更に好ましくは2以上10以下、特に好ましくは2以上5以下である。
前記空間速度(SV)の調整は、例えば、送液量調整機能を備えた送液手段P1による重質油の送液量の調整や、後述するバルブV1による重質油の排出量の調整によって行うことができる。
【0038】
また、反応器20において、重質油の流速(voil)に対するキャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕は、1<〔vcg/voil〕であることが必要である。これにより、重質油とキャリアガスとのスリップが生じるので、キャリアガスの流通による、液相部からの軽質油の分離効率向上の効果がより効果的に奏され、最終的に得られる軽質油の収量がより増大する。
前記比〔vcg/voil〕は、重質油とキャリアガスとのスリップをより増大させる観点から、25≦〔vcg/voil〕が好ましく、40≦〔vcg/voil〕がより好ましく、100≦〔vcg/voil〕が特に好ましい。
また、前記比〔vcg/voil〕は、〔vcg/voil〕≦600を満たすことが好ましく、〔vcg/voil〕≦300を満たすことがより好ましく、〔vcg/voil〕≦200を満たすことが特に好ましい。〔vcg/voil〕≦600を満たすことにより、液相部から分離される軽質油中に高カーボン数成分が混入する現象をより抑制できるので、より良質な軽質油を得ることができる。更に、〔vcg/voil〕≦600を満たす場合には、高カーボン数成分を除去する工程を設ける必要がないので、装置の構成をより簡易なものとすることができる。軽質油中に含まれる高カーボン数成分の含有量は、軽質油を軽油等として利用する観点からは、10質量%以内であることが好ましい。
本実施形態において、液相部からの軽質油の分離効率向上の効果と、軽質油中に高カーボン数成分が混入する現象を抑制する効果と、のバランスの観点からは、前記比〔vcg/voil〕は、25≦〔vcg/voil〕≦600を満たすことが好ましく、40≦〔vcg/voil〕≦600を満たすことがより好ましく、100≦〔vcg/voil〕≦300を満たすことが更に好ましく、100≦〔vcg/voil〕≦200を満たすことが特に好ましい。
【0039】
前記比〔vcg/voil〕を調整する方法には特に限定は無いが、例えば、空間速度(SV)の調整や、気相部21や液相部23の体積の調整によって行うことができる。
以下、気相部21及び液相部23の体積の調整によって、前記比〔vcg/voil〕を増大させる場合の一例を示す。
例えば、一定の空間速度(SV)の下では、液相部23の体積を増大させることにより、voilを低下させることができる。一方、一定のキャリアガス流量の下では、気相部21の体積を縮小させることにより、vcgを増大させることができる。
従って、一定の空間速度(SV)及び一定のキャリアガス流量の下では、液相部23の体積を増大させ、かつ、気相部21の体積を縮小させることにより、比〔vcg/voil〕を増大させることができる。
【0040】
また、重質油配管70にはバルブV1が設けられており、これにより、反応器20からの重質油HOの排出量を調整できるようになっている。
前記送液量の調整に加え、この排出量の調整によっても、反応器20における重質油HOの流速(voil)を調整できる。
【0041】
また、この実施形態では、反応器20に対向する位置に、反応器20を加熱するための加熱器30が設けられている。
これにより反応器20を加熱することで、反応器20の液相部23において、重質油HOと触媒22との接触を150℃〜300℃の温度条件下で行えるようになっている。
加熱器30としては公知のものを用いることができ、例えば、ヒーター、燃焼器(バーナー)、熱交換器、等を用いることができる。
【0042】
前記熱交換器としては、外部から供給された高温ガスの熱を蓄熱し、蓄熱された熱で前記反応器を加熱する熱交換器が好適である。前記高温ガスとしては、例えば200〜350℃の高温ガス(但し反応温度と熱交換器の性能とに依存する)を用いることができる。高温ガスとしては、工場排気の高温ガスを利用することができる。
【0043】
また、この実施形態では、反応器20から排出された気体状態の軽質油LOを液化させる液化器50と、反応器20と液化器50とを連通する軽質油配管60aと、が設けられている。
これにより、反応器20から排出された気体状態の軽質油LOを、液化器50内で液化できるようになっている。
液化器50としては、気体状態の軽質油LOを該軽質油LOの沸点以下にまで冷却できる冷却器(クーラー等)を用いることができる。
【0044】
また、この実施形態では、液化器50には配管86が連通されており、液化器50からキャリアガスCGを排出できるようになっている。
また、この実施形態では、配管84によって液化器50と連通された軽質油貯留器80が設けられている。液化器50で生じた液体状態の軽質油LOは、この軽質油貯留器80に貯留される。
軽質油貯留器80としては、例えば、液体状態の軽質油LOを貯留できる内部空間を有する貯留タンクを用いる。
【0045】
次に、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100における、重質油の軽質化の動作の一例について説明する。
【0046】
まず初期状態として、重質油貯留器10内に、軽質化の対象となる液体状態の重質油を収容するとともに、反応器20の気相部21にキャリアガスCGを流通させる。重質油配管70に備えられたバルブV1は開放させておく。
【0047】
次に、送液手段P1を作動させて、重質油貯留器10、重質油配管40、反応器20、重質油配管70、重質油貯留器10の順に重質油を循環させる。
このとき、反応器20内の液相部23では、重質油HOが流通しながら触媒22と接触する。
この接触は、加熱器30による加熱により150℃〜300℃の条件で行う。この加熱温度(反応温度)は、生成したい軽質油の蒸留温度の上限とすることが好ましい。
接触時の反応器20内(気相部21)の圧力には特に限定はないが、大気圧程度(例えば、0.08〜0.12MPa程度。以下同じ。)とすることができる。
【0048】
前記接触により、液体状態の重質油HOが軽質化されて軽質油が生成される。
生成された軽質油の少なくとも一部(気体状態の軽質油LO)は、気体状態となって液相部23から気相部21に分離される。
気体状態の軽質油LO及びキャリアガスCGは、気相部21からガス排出口25aを通じて排出され、軽質油配管60aを通って液化器50に至る。
液化器50では、気体状態の軽質油LO及びキャリアガスCGが、例えば−20〜30℃程度(より好ましくは1〜10℃程度)に冷却され、気体状態の軽質油LOが液体状態の軽質油LOに液化される。
液体状態の軽質油LOは配管84を通って軽質油貯留器80に回収される。
一方、液化器50に供給されたキャリアガスCGは、配管86を通って外部に排出される。
【0049】
反応器20において、軽質化されなかった未反応の重質油HOは反応器20の液相部23から重質油配管70に排出され、重質油配管70を通って重質油貯留器10に戻される。
重質油貯留器10に戻された未反応の重質油HOは、再び、反応器20に送液され、反応器20の液相部23で触媒22と150℃〜300℃の条件下で接触する。
【0050】
重質油軽質化装置100における、重質油の軽質化では、以上の動作が繰り返される。
このように、重質油軽質化装置100では、液体状態の重質油HOを、重質油貯留器10→重質油配管40→反応器20→重質油配管70→重質油貯留器10の順に循環させながら、重質油HOと触媒22との接触を連続的に行う。これにより、反応器20における重質油HOと触媒22との接触頻度を高めることができるので、軽質化の条件を従来に比べて低温の150℃〜300℃としたことによる反応速度低下により増加する未反応油を無駄にすることなく軽質化に繰り返し利用することができる。
更に、反応器20では、生成された気体状態の軽質油LOを排出しながら重質油HOの軽質化を行うので、過度の軽質化や重合を抑制することにより軽質油の収率を向上させることができる。また、軽質化反応における反応平衡を軽質化が進む方向にずらすことができ、軽質化の反応速度を向上させることができる。
【0051】
従って、重質油軽質化装置100によれば、従来に比べて緩和された条件で(即ち、従来に比べて低温かつ低圧の条件で)重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる。また、重質油に対し水などの添加物質を混入させる必要がないので、良質な軽質油を得ることができる。
重質油軽質化装置100では、軽質化の反応の条件が従来に比べて低温であるため、例えば太陽熱や工場廃熱などの未利用のエネルギーを反応熱源として利用して重質油の軽質化を行うことができる。
【0052】
上記重質油の軽質化において、反応器20における、重質油の流速(voil)に対するキャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕については前述のとおりである。
【0053】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
なお、上記第一の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品、部分については、上記第一の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0054】
[第二の実施形態]
図2は、本発明の第二の実施形態に係る重質油軽質化装置200を模式的に示した図である。
図2に示すように、第二の実施形態に係る重質油軽質化装置200の構成は、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100の構成において、キャリアガス供給口及びガス排出口の重質油流通方向についての配置が異なること以外は第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同一である。
図2に示すように、重質油軽質化装置200の反応器20(気相部21)において、キャリアガス配管62bに通じるキャリアガス供給口24bは重質油流通方向についての下流側に設けられており、軽質油配管60bに通じるガス排出口25bは重質油流通方向についての上流側に設けられている。即ち、この実施形態では、ガス排出口25bが、キャリアガス供給口24bに対し、重質油流通方向についての上流側に設けられており、これにより、反応器20において、重質油HOの流れとキャリアガスCGの流れとが対向流となるように構成されている。
これにより、重質油HOの流れとキャリアガスCGの流れとを並行流とした場合と比較して重質油HOとキャリアガスCGとのスリップが増すので、重質油からの軽質油の分離効率が向上し、ひいては軽質油の収量をより増大させることができる。
【0055】
第二の実施形態に係る重質油軽質化装置200におけるその他の構成、好ましい範囲、及び変形例は、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同様である。重質油を軽質化させる基本的な動作も、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同様である。
【0056】
以上、本発明の第一及び第二の実施形態に係る重質油軽質化装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記各実施形態では、反応器20における液相部23が触媒不存在領域23Aを有する形態を示したが、触媒不存在領域23Aは必須ではなく、液相部23が触媒存在領域23Bのみから構成されていてもよい。但し、軽質油収量をより増大させる観点からは、上記各実施形態のように、触媒不存在領域23Aが存在する形態が好ましい。
【0057】
また、上記各実施形態において、加熱器30として燃焼器を用いる場合、燃焼器と重質油貯留器とを連通させ、重質油貯留器内の重質油の一部を燃焼器における燃料として利用できるように構成されていてもよい。また、加熱器30として燃焼器を用いる場合、反応器20と液化器50との間に、気体状態の軽質油LOから高沸点成分を分離する分離器(例えば冷却器)を設け、更に分離器と燃焼器とを連通させ、高沸点成分を燃焼器における燃料として使用できるように構成されていてもよい。これらの構成によれば、もともと系内(重質油軽質化装置内)に存在していた重質油(及び該重質油から生じた軽質油の一部)を反応器の加熱に利用できるので、反応温度の微調整や反応変動などに対応できる。
【0058】
また、上記各実施形態において、一端が液化器50に連通されたキャリアガス配管86の他端は、キャリアガス供給管62a若しくは62b又は反応器20の気相部21に連通されていてもよい。このとき、キャリアガス配管86には、必要に応じキャリアガスを送気するための送気手段が設けられていてもよい。これにより、キャリアガスを循環させて繰り返し使用できるので、キャリアガスの使用量をより低減できる。
【0059】
なお、本発明における、重質油貯留器、反応器、液化器、分離器、重質油配管や軽質油配管等の各種配管の材質には特に限定はなく、例えばステンレス鋼(SUS)等、公知の材質から適宜選択することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1〕
図1に示す重質油軽質化装置100を用い、重質油の軽質化を行った。
重質油HOとしては、動粘度が8cSt(50℃)であり、蒸留特性が0〜90%留出温度320〜450℃の物性となるA重油相当の重質油を用いた。
触媒22としては、ゼオライトを主成分とする触媒を0.75g用いた。
反応器20における反応温度(重質油の温度)は250℃とした。
反応器20の反応圧力は、0.1MPaとした。
加熱器30としては、ヒーターを用いた。
キャリアガスCGとしては窒素を用いた。
液化器50における冷却温度は25℃とした。
反応時間(重質油軽質化装置の作動時間)は、6時間とした。
反応器20における空間速度(SV)[1/h]は、2.5[1/h]に固定した。
【0062】
上記条件の下、気相部及び液相部の体積の調整により、反応器20における重質油の流速(voil)に対するキャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕を種々変化させて重質油の軽質化を行った。
【0063】
重質油の軽質化により得られた軽質油の量は、軽質油貯留器80に回収された液体状態の軽質油の質量を測定することにより確認した。
更に、この液体状態の軽質油を、ガスクロマトグラフィーによって、この軽質油を軽質成分と高カーボン成分とに分類し、軽質油中に含まれる軽質成分の割合(質量比)を求めた。
ここで軽質成分とは、一分子に含まれる総炭素数が23以下である成分を指し、高カーボン成分とは、一分子に含まれる総炭素数が24以上である成分を指す。
【0064】
表1に、比〔vcg/voil〕と軽質油量との関係を示す。
また、図3は、比〔vcg/voil〕と、軽質油量及び軽質油に含まれる軽質成分の割合と、の関係を示すグラフである。
【0065】
【表1】

【0066】
表1及び図3に示すように、比〔vcg/voil〕が大きくなるにつれ、軽質油量が増大することが確認された。
また、図3に示すように、比〔vcg/voil〕が600以下のときに、軽質油中における軽質成分の割合(質量比)を0.9以上に維持できることが確認された。
【0067】
〔実施例2〕
実施例1において、空間速度(SV)[1/h]を4.17[1/h]に固定したこと以外は実施例1と同様にして、比〔vcg/voil〕と軽質油量との関係を調べた。
【0068】
〔実施例3〕
実施例1において、空間速度(SV)[1/h]を0.83[1/h]に固定したこと以外は実施例1と同様にして、比〔vcg/voil〕と軽質油量との関係を調べた。
【0069】
図4は、実施例1(SV2.5)、実施例2(SV4.17)、及び実施例3(SV0.83)における、比〔vcg/voil〕と軽質油量との関係を示すグラフである。
図4に示すように、実施例1(SV2.5)、実施例2(SV4.17)、及び実施例3(SV0.83)のいずれにおいても、比〔vcg/voil〕が大きくなるにつれ、軽質油量が増加することが確認された。
【0070】
〔実施例4〕
図1に示す重質油軽質化装置100(重質油HOの流れとキャリアガスCGの流れとが並行流である形態;条件2−1)、及び、図2に示す重質油軽質化装置200(重質油HOの流れとキャリアガスCGの流れとが対向流である形態;条件2−2)を用い、重質油の軽質化を行った。
条件2−1及び条件2−2におけるその他の条件は下記のとおりとした。
重質油HOとしては、動粘度が8cSt(50℃)であり、蒸留特性が0〜90%留出温度320〜450℃の物性となるA重油相当の重質油を用いた。
触媒22としては、ゼオライトを主成分とする触媒を0.75g用いた。
反応器20における反応温度(重質油の温度)は250℃とした。
反応器20の反応圧力は、0.1MPaとした。
加熱器30としては、ヒーターを用いた。
キャリアガスCGとしては窒素を用いた。
液化器50における冷却温度は25℃とした。
反応時間(重質油軽質化装置の作動時間)は、6時間とした。
反応器20における重質油の流速(voil)に対するキャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕は、107とした。
反応器20における空間速度(SV)[1/h]は、2.5[1/h]とした。
【0071】
表2に、方向(並行流又は対向流)と軽質油量との関係を示す。
軽質油量は、下記条件2−1(並行流)における軽質油量を1.00としたときの相対値である。
【0072】
【表2】

【0073】
表2に示すように、条件2−2(対向流)では条件2−1(並行流)と比較して、得られる軽質油量が1.08倍となっていた。
【0074】
〔実施例5〕
実施例4において、比〔vcg/voil〕を183としたこと以外は実施例4と同様にして軽質油量を測定した。
その結果、実施例4と同様に、対向流とした場合には、並行流とした場合と比較して、得られる軽質油量が1.08倍となっていた。
【0075】
以上、実施例1〜5を示したが、実施例1〜5において、A重油相当の重質油を、動粘度が20cSt(50℃)であるB重油相当の重質油に変更したこと以外は実施例1〜5と同様にして重質油の軽質化を行ったところ、実施例1〜5と同様の効果が確認された。
【符号の説明】
【0076】
10 重質油貯留器
20 反応器
21 気相部
22 触媒
23 液相部
23A 触媒不存在領域
23B 触媒存在領域
24a、24b キャリアガス供給口
25a、25b ガス排出口
26a 重質油供給口
27a 重質油排出口
30 加熱器
40、70 重質油配管
50 液化器
60a、60b 軽質油配管
62a、62b キャリアガス配管
80 軽質油貯留器
100、200 重質油軽質化装置
CG キャリアガス
HO 重質油
LO 軽質油
P1 送液手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状態の重質油を貯留する重質油貯留器と、
前記重質油貯留器から送液された重質油及び該重質油を軽質化させる触媒を含む液相部、前記重質油の軽質化により生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって前記液相部から分離される気相部、並びに前記気相部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給口を有し、前記気相部に前記キャリアガスを、前記液相部に前記重質油を、前記重質油の流速(voil)に対する前記キャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕が1<〔vcg/voil〕となるようにそれぞれ流通させながら、前記重質油と前記触媒とを150℃〜300℃の条件下で接触させることにより前記重質油を軽質化させて軽質油を生成する反応器と、
前記反応器を加熱する加熱器と、
を備えた重質油軽質化装置。
【請求項2】
前記反応器は、前記気相部から前記気体状態の軽質油及び前記キャリアガスを排出するガス排出口を有する請求項1に記載の重質油軽質化装置。
【請求項3】
前記比〔vcg/voil〕が、25≦〔vcg/voil〕を満たす請求項1又は請求項2に記載の重質油軽質化装置。
【請求項4】
前記比〔vcg/voil〕が、〔vcg/voil〕≦600を満たす請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項5】
前記反応器から未反応の重質油を排出し、排出された未反応の重質油を前記反応器に戻す重質油配管を備えた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項6】
前記重質油貯留器は、前記重質油配管の途中に設けられている請求項5に記載の重質油軽質化装置。
【請求項7】
前記ガス排出口は、前記キャリアガス供給口に対し、前記重質油の流通方向についての上流側に設けられている請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項8】
液体状態の重質油及び該重質油を軽質化させる触媒を含む液相部と、前記重質油の軽質化により生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって前記液相部から分離される気相部と、を有する反応器の前記気相部にキャリアガスを、前記液相部に前記重質油を、前記重質油の流速(voil)に対する前記キャリアガスの流速(vcg)の比〔vcg/voil〕が1<〔vcg/voil〕となるようにそれぞれ流通させながら前記重質油と前記触媒とを150℃〜300℃の条件下で接触させることにより、前記重質油を軽質化させて軽質油を生成する工程を有する重質油軽質化方法。
【請求項9】
前記軽質油の生成は、前記気相部から気体状態の軽質油及び前記キャリアガスを排出しながら行う請求項8に記載の重質油軽質化方法。
【請求項10】
前記比〔vcg/voil〕が、25≦〔vcg/voil〕を満たす請求項8又は請求項9に記載の重質油軽質化方法。
【請求項11】
前記比〔vcg/voil〕が、〔vcg/voil〕≦600を満たす請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の重質油軽質化方法。
【請求項12】
前記軽質油の生成は、前記反応器から前記未反応の重質油を排出し、排出された未反応の重質油を前記反応器に戻しながら行う請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の重質油軽質化方法。
【請求項13】
前記反応器は、前記気相部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給口と、前記キャリアガス供給口に対し前記重質油の流通方向についての上流側に設けられ、前記気相部から前記気体状態の軽質油及び前記キャリアガスを排出するガス排出口と、を有する請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載の重質油軽質化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−91689(P2013−91689A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233397(P2011−233397)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】