説明

重量物交換用器具

【課題】設置条件の悪い場所においても重量物を運搬することができる重量物交換用器具を提供する。
【解決手段】垂直に設地される支柱11と、支柱11に対して両側に延設され、水平方向および垂直方向に回動自在に接続された棒状部材13と、棒状部材13の一端に重量物を吊り下げるための吊下げ金具15と、を備えた重量物交換用器具10であって、支柱11に、一端が回動可能に支持された固定具27が設けられ、固定具27の他端は線路の一方のレールに支持可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物交換用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、重量物を効率よく移動するための重量物移動具が知られている。例えば、特許文献1の重量物移動具は、三脚形の支脚の上部に梃杆の略中央を、自在継手を介して固定し、梃杆の先端にワイヤーロープなどの接続部を設けたものである。
一方、鉄道の線路沿いにはインピーダンスボンドなどの重量物が随所に配置されている。このインピーダンスボンドは定期的に交換する必要があるが、交換する際は、地中に埋設されているインピーダンスボンドを人力で持ち上げ、線路上に配置した移動貨車に載置した後、運搬していた。
【特許文献1】登録実用新案第3007311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の特許文献1の重量物移動具は、支脚が三脚形であるため、設置スペースを広く確保しなければならないという問題があった。
一方、インピーダンスボンドの交換作業は砕石が敷き詰められた場所で行う場合が多く、このような場所で人力により運搬するときは、足場が悪いため、バランスを崩し易く危険を伴う作業であった。また、足場が悪いため、上述のような重量物移動具を使用することができなかった。さらに、インピーダンスボンドは約100kgのものもあり、人力で運搬する際には多くの要員を必要とする重労働作業であった。
【0004】
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、設置条件の悪い場所においても重量物を運搬することができる重量物交換用器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、垂直に設地される支柱と、該支柱に対して両側に延設され、水平方向および垂直方向に回動自在に接続された棒状部材と、該棒状部材の一端に重量物を吊り下げるための吊下げ金具と、を備えた重量物交換用器具であって、前記支柱に、一端が回動可能に支持された固定具が設けられ、該固定具の他端は線路の一方のレールに支持可能に構成されていることを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記支柱にフックが設けられ、該フックと前記線路の他方のレールとの間にワイヤが張設されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記固定具が伸縮可能に構成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載した発明は、前記棒状部材における、前記支柱から前記棒状部材の一端までの長さが前記支柱から前記棒状部材の他端までの長さより短く構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載した発明は、前記棒状部材における、前記支柱から前記棒状部材の一端までの長さと、前記支柱から前記棒状部材の他端までの長さの比率を変更可能に構成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項6に記載した発明は、前記棒状部材の他端に取っ手が設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項7に記載した発明は、前記重量物が、インピーダンスボンドであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、地面に設置された支柱に設けられた固定具をレールに支持することで支柱を立設させることができる。したがって、設置条件の悪い砕石上などでも使用することができる効果がある。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、支柱と他方のレールとの間にワイヤを張設することで、さらに安定して支柱を立設させることができる。したがって、設置条件の悪い砕石上などでも確実に使用することができる効果がある。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、固定具を伸縮させることで、支柱と一方のレールとの距離を厳密に設定することがない。したがって、簡便に重量物交換用器具を使用することができる効果がある。
【0015】
請求項4に記載した発明によれば、てこの原理により重量物の実際の重さよりも軽い力で重量物を持ち上げることができる。したがって、要員を削減することができ、また、安全に重量物を運搬することができる効果がある。
【0016】
請求項5に記載した発明によれば、長さの比率を変更することで、重量物を運搬する際に必要な力(重量)を調整することができる。したがって、作業状況に合わせて簡便に調整することができる効果がある。
【0017】
請求項6に記載した発明によれば、重量物交換用器具をより容易に使用することができ、重量物を簡単に持ち上げることができる効果がある。
【0018】
請求項7に記載した発明によれば、重量物交換用器具でインピーダンスボンドを簡便に運搬することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、この発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、インピーダンスボンド交換用器具(重量物交換用器具)10は、垂直に立設される支柱11と、支柱11の先端を支点として取り付けられた棒状部材13と、棒状部材13の一端に取り付けられた吊下げ金具15とを備えている。
【0020】
支柱11は、例えばSGP(配管用炭素鋼鋼管)で形成されている。支柱11は垂直方向に3分割可能に構成され、下方からベース部17、中間支柱部18、上部支柱部19に分割される。なお、支柱11は必要な強度を有する材料であればよい。
【0021】
ベース部17は、例えばSGP50Aで厚み4.2mmのパイプ材で形成され、下端には平面視略長方形の板状部材からなる接地部21が設けられている。ベース部17の上端は、開口22が形成され、中間支柱部18が挿入できるように構成されている。また、ベース部17の周壁23には、軸方向(垂直方向)に貫通孔24が複数略等間隔に形成されている。貫通孔24は、周壁23の対向する位置(両側)に形成され、ピンが挿通できるように構成されている。さらに、ベース部17の開口22近傍の周壁23には、取付金具25が溶接などにより設けられ、取付金具25には固定具27がその接続点26を中心に垂直方向に回動可能に取り付けられている。
【0022】
固定具27は、例えばSGPで形成されている。固定具27は2つの部材で構成され、取付金具25に接続されたパイプ状の第一部材28と、第一部材28に出し入れ自在に構成されたパイプ状の第二部材29とを備えている。第一部材28の配管径が第二部材29の配管径より大きく構成され、第二部材29を第一部材28内に挿入でき、固定具27の長さを伸縮することができる。また、第二部材29の先端には、一方のレール50aに支持するための支持片30が取り付けられている。さらに、第二部材29をレール50aに支持した際に、固定具27の長さを固定するための図示しないピンが、第一部材28と第二部材29との接続部に設けられている。
【0023】
中間支柱部18は、例えばSGP50Aで厚み4.2mmのパイプ材で形成された第一部材31と、SGP32Aのパイプ材で形成された第二部材32とを備えている。第一部材31と第二部材32とは軸方向を同一にした状態で溶接などにより一体化されている。第二部材32は、ベース部17の開口22に挿入可能に構成されている。第二部材32の周壁33には、ベース部17の貫通孔24に対応した位置に貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、ピンが挿通できるように周壁33の対向する位置(両側)に形成されている。
【0024】
また、第一部材31の上端は、開口35が形成され、上部支柱部19が挿入できるように構成されている。さらに、第一部材31の周壁36には略L字状のフック37が溶接などにより取り付けられている。フック37と他方のレール50bとの間にワイヤ38を張設して支柱11をより確実に立設させることができる。
【0025】
上部支柱部19は、例えばSGP32Aで厚み3.5mmのパイプ材で形成され、中間支柱部18の開口35に挿入可能に構成されている。上部支柱部19の先端には、棒状部材13を取り付け可能な上部フック39が設けられている。上部フック39は断面略U字状の部材で構成され、上部フック39は上部支柱部19に溶接などにより固定されている。なお、上部フック39は例えばSUS304で形成されている。
【0026】
上部フック39の両壁部39aには貫通孔40が形成され、ピンを挿通可能に構成されている。また、棒状部材13にも貫通孔46が形成されている。ピンを貫通孔40および貫通孔46に挿通して、上部フック39に棒状部材13を取り付けている。ここで、棒状部材13には貫通孔46が複数略等間隔に形成されている。ピンを挿通させる貫通孔46の位置を変更することで、インピーダンスボンド(重量物)を運搬する際の重量バランスを変更することができる。
【0027】
棒状部材13は、2つの部材で構成され、上部フック39に接続されたパイプ状の第一部材41と、第一部材41に接続されたパイプ状の第二部材42とを備えている。第一部材41における第二部材42が接続される側の反対側端部(棒状部材13の一端)には吊下げ金具15が取り付けられている。第一部材41および第二部材42は例えばSTPG(圧力配管用炭素鋼鋼管)32Aで形成され、第二部材42における第一部材41と接続される先端部は、縮径されており、挿入できるように構成されている。また、第二部材42を第一部材41に挿入した状態で固定するためにピン43が設けられている。
【0028】
また、第二部材42における第一部材41と接続されない側の先端部近傍(棒状部材13の他端)には、取手44が設けられている。取手44は、第二部材42に対して直交する方向に両側に延設されるように設けられている。
さらに、第一部材41の周壁45には上述した一対の貫通孔46が複数形成されている。上部フック39と第一部材41との接続点を変更可能に構成されている。
【0029】
そして、吊下げ金具15は例えばSS400で形成され、その先端にはベルト47が吊下げられ、ベルト47の先端にはフック48が取り付けられている。なお、フック48は例えばSUS304で形成されている。
【0030】
(組立方法)
次に、インピーダンスボンド交換用器具10の組立方法について説明する。
まず、支柱11のベース部17を線路の外側近傍に立設する。次に、ベース部17の開口22に中間支柱部18の第二部材18を挿入する。そして、貫通孔24および貫通孔34に対してピンを挿入してベース部17と中間支柱部18とを接続固定する。
【0031】
同時に、ベース部17に設けられている固定具27を一方のレール50aの基部51に当接する。このとき、固定具27の第二部材29を伸縮させることで調整し、第二部材29の支持片30を基部51に当接する。この状態で、第一部材28と第二部材29との接続部を図示しないピンにより固定する。
【0032】
次に、中間支柱部18の開口35に上部支柱部19を挿入する。このとき、中間支柱部18内に形成された図示しない係止部により上部支柱部19が支持される。また、上部支柱部19に設けられている上部フック39には予め棒状部材13の第一部材41が取り付けられている。
第一部材41の開口に第二部材42を挿入し、そこにピン43を取り付けることで、第一部材41と第二部材42とを支持固定する。
【0033】
吊下げ金具15に、フック48が予め取り付けられたベルト47を取り付ける。
そして、中間支柱部18のフック37にワイヤ38の一端を巻き付け、ワイヤ38の他端には図示しないピン(例えば、鉄製の長さ20〜30cmのもの)を取り付け、このピンを他方のレール50bの外側から、レール50bの底面と砕石との間に挿入するようにして取り付けて、インピーダンスボンド交換用器具10の組立が完了する。このとき、ワイヤ38が緊張状態になるように取り付ける。このように構成することで、レール沿いのあらゆる位置でインピーダンスボンド交換用器具10を設置することができる。
【0034】
(作用)
次に、インピーダンスボンド交換用器具10の作用について説明する。
図3に示すように、棒状部材13の第二部材42の取手44を上方に持ち上げ、フック48をインピーダンスボンド100の係止部101に取り付けたロープ103に引っ掛ける。
【0035】
図4に示すように、取手44を下方に向かって押し下げて、棒状部材13を略水平状態にすると、てこの原理でインピーダンスボンド100が持ち上がる。このとき、上部フック39から吊下げ金具15までの長さが、上部フック39から取手44までの長さよりも短くなるように構成されているため、インピーダンスボンド100の実際の重量よりも軽い力で持ち上がる。例えば、上部フック39から吊下げ金具15までの長さを1000mmとし、上部フック39から取手44までの長さを2000mmとして、インピーダンスボンド100の重量が100kgとすると、取手44において50kgの力で押し下げることでインピーダンスボンド100を持ち上げることができる。
【0036】
図5に示すように、棒状部材13を略水平方向に回転させてインピーダンスボンド100を線路50上に配置された移動貨車110上まで移動させる。このとき上部支柱部19が中間支柱部18に対して回転する。
図6に示すように、取手44を再度上方に持ち上げると、インピーダンスボンド100が降下して、移動貨車110上に載置され、フック48を取り外すことでインピーダンスボンド100の運搬が完了する。
運搬が完了した後、上述の組立方法の逆の手順でインピーダンスボンド交換用器具10を分解して回収する。
【0037】
本実施形態によれば、垂直に設地される支柱11と、支柱11に対して両側に延設され、水平方向および垂直方向に回動自在に接続された棒状部材13と、棒状部材13の一端にインピーダンスボンド100を吊り下げるための吊下げ金具15と、を備えたインピーダンスボンド交換用器具100であって、支柱11に、一端が回動可能に支持された固定具27を設け、固定具27の他端を線路50の一方のレール50aに支持可能に構成した。
【0038】
このように構成したため、地面に設置された支柱11に設けられた固定具27を一方のレール50aに支持することで支柱11を立設させることができる。したがって、設置条件の悪い砕石上などでも使用することができる。また、支柱11を地面に直接設置するため、支柱11の設置に必要なスペースを省スペース化することができる。
【0039】
また、支柱11にフック37を設け、フック37と線路50の他方のレール50bとの間にワイヤ38を張設するように構成した。
このように構成したため、さらに安定して支柱11を立設させることができる。したがって、設置条件の悪い砕石上などでも確実にインピーダンスボンド100の運搬などに使用することができる。
【0040】
また、固定具27を伸縮可能に構成した。
このように構成したため、支柱11と一方のレール50aとの距離を厳密に設定する必要がない。したがって、簡便にインピーダンスボンド交換用器具100を使用することができる。
【0041】
また、棒状部材13における、支柱11から棒状部材13の一端までの長さが支柱11から棒状部材13の他端までの長さより短く構成した。
このように構成したため、てこの原理によりインピーダンスボンド100の実際の重さよりも軽い力でインピーダンスボンド100を持ち上げることができる。したがって、作業要員を削減することができ、また、安全にインピーダンスボンド100を運搬することができる。結果として、作業効率を向上することができる。
【0042】
さらに、棒状部材13における、支柱11から棒状部材13の一端までの長さと、支柱11から棒状部材13の他端までの長さの比率を変更可能に構成した。
このように構成したため、長さの比率を変更することで、インピーダンスボンド100を運搬する際に必要な力(重量)を調整することができる。したがって、運搬する重量物の重さなどの作業状況に合わせて簡便に調整することができる。
【0043】
そして、棒状部材13の他端に取手44を設けた。
このように構成したため、インピーダンスボンド交換用器具100をより容易に使用することができる。
【0044】
尚、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態において、上部支柱部に上部フックを溶接などにより固定したが、上部フックを上部支柱部に対して水平方向に回転可能に支持し、上部支柱部と中間支柱部とはピンなどにより固定するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態におけるインピーダンスボンド交換用器具の正面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインピーダンスボンド交換用器具の側面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるインピーダンスボンド交換用器具の使用状況を示す説明図である。
【図4】図3の続きのインピーダンスボンド交換用器具の使用状況を示す説明図である。
【図5】図4の続きのインピーダンスボンド交換用器具の使用状況を示す説明図である。
【図6】図5の続きのインピーダンスボンド交換用器具の使用状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
10…インピーダンスボンド交換用器具(重量物交換用器具) 11…支柱 13…棒状部材 15…吊下げ金具 27…固定具 37…フック 38…ワイヤ 44…取手 50…線路 50a…一方のレール 50b…他方のレール 100…インピーダンスボンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に設地される支柱と、
該支柱に対して両側に延設され、水平方向および垂直方向に回動自在に接続された棒状部材と、
該棒状部材の一端に重量物を吊り下げるための吊下げ金具と、を備えた重量物交換用器具であって、
前記支柱に、一端が回動可能に支持された固定具が設けられ、該固定具の他端は線路の一方のレールに支持可能に構成されていることを特徴とする重量物交換用器具。
【請求項2】
前記支柱にフックが設けられ、該フックと前記線路の他方のレールとの間にワイヤが張設されていることを特徴とする請求項1に記載の重量物交換用器具。
【請求項3】
前記固定具が伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の重量物交換用器具。
【請求項4】
前記棒状部材における、前記支柱から前記棒状部材の一端までの長さが前記支柱から前記棒状部材の他端までの長さより短く構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重量物交換用器具。
【請求項5】
前記棒状部材における、前記支柱から前記棒状部材の一端までの長さと、前記支柱から前記棒状部材の他端までの長さの比率を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の重量物交換用器具。
【請求項6】
前記棒状部材の他端に取っ手が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の重量物交換用器具。
【請求項7】
前記重量物が、インピーダンスボンドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の重量物交換用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18928(P2009−18928A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184461(P2007−184461)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(399039719)東日本電気エンジニアリング株式会社 (30)