説明

金属を溶着したプラスチックコンベヤベルト部品及び作製方法

金属コーティングされた熱可塑性コンベヤベルト部品及びそれを製造するための方法。ヒンジロッド、スプロケット、及びベルトモジュールが金属でコーティングされており、その剛性又は対摩耗性を高め、又は他の性能の特性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コーティングで覆われたモジュール式プラスチック製コンベヤベルトに関する。
【0002】
らせん状のベルトコンベヤが、多くの場合、炉、プルーファー、又は冷凍庫を通してゆっくりと製品を搬送するよう使用される。大部分のらせん状のベルトコンベヤは、大きな開口を具えた金属ベルトを使用し、ゆっくりと回転するらせん駆動タワーの周りのらせん状の搬送経路に沿って製品を搬送する。金属ベルトは本質的に硬いため、それを支持するためベルトの下方の2、3のレールのみを必要とする。軽量、耐腐食性のモジュール式プラスチックコンベヤベルトが、あるらせん状のコンベヤにおいて、金属ベルトに取って代わっている。改造されたものでは、既存のらせん状のコンベヤの支持レールに、プラスチックベルトを直接的に取り付けることができる。しかしながら、ベルトの幅方向のモジュール式プラスチックコンベヤベルトのビーム剛性は、金属ベルトのビーム剛性よりも高くない。中実のステンレス鋼製のロッドが多くの場合使用され、プラスチックベルトにビーム剛性を加える。しかしながら、中実の金属ロッドは、ベルトの重量を増やし、その剛性のため、ベルトの外側端部の最初のヒンジ部材のみに荷重負担を限定する。
【0003】
らせん状ベルトに特有なこれらの問題のほか、モジュール式プラスチックコンベヤベルトは、ヒンジピンとヒンジ穴との間、及びスプロケットとベルトの駆動面との間が擦り切れる場合に、ヒンジ及び駆動面で摩耗する。
【発明の概要】
【0004】
これらの欠点及び他の欠点が、本発明の態様を実施するコンベヤベルト部品によって克服される。このような部品は、モジュール式コンベヤベルトとともに使用するよう構成され、少なくとも部分的に金属コーティングによって覆われた外面を有する熱可塑性部材を具える。
【0005】
本発明の別の態様では、このようなコンベヤベルトを作製する方法が、外面を具え、モジュール式コンベヤベルトとともに使用するよう構成され、金属コーティングで外面の少なくとも一部を覆う熱可塑性部材を形成するステップを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明のこれらの特徴且つ態様は、その利点とともに、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付図面を参照することによって、より良く理解される。
【0007】
【図1】図1は、本発明の態様を実施するヒンジロッドを有するらせん状コンベヤベルトの一部の平面図である。
【図2】図2は、ライン2−2に沿った図1のヒンジロッドの拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の態様を実施するスプロケットの側面図である。
【図4】図4は、本発明の態様を実施するコンベヤベルトモジュールの一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の態様を実施する、ヒンジロッドによって相互連結されたモジュール式コンベヤベルトの一部を示す。らせん状のコンベヤの駆動タワーといったらせん状経路を移動するのに適したベルト10は、ヒンジロッド18によってヒンジジョイント16で連結された1又はそれ以上のベルトモジュール14の一連の列12を具えている。横方向に間隔を空けた部材を通して、穴20が、又は各列の先端に沿って、目22が、前列の後端に沿って交互配置されたヒンジ部材を介して揃っており、ベルトの幅にわたって横方向通路を形成している。隣接する列間の通路に受容されるヒンジロッドがベルトを連結し、スプロケットの周囲で連接し得る。このような特定のベルトでは、穴20の総て又はいくつかが、ベルトの移動方向24に延びており、外側端部27が伸長したときにベルトの内側端部26がターンの内側で潰れることができる。
【0009】
ベルトは、レール28によって内側及び外側端部の近くで支持される。レール間でのプラスチックベルトの撓みを規制するために、ヒンジロッド18のいくつか又は総てを金属コーティング30で補強し、又はその長さの総て又は大部分に沿って金属被覆する。ロッドは、ベルトの横方向のビーム強さを増加させて弛みを規制する。図1のらせん状ベルトでは、ベルトの外側端部27のヒンジロッドの端部32が、ベルトの外側端部に十分な柔軟性を与えるようコーティングされておらず、最も外側のヒンジ部品の大部分にわたってベルトの引っ張りを共有する。
【0010】
図2に示すように、ヒンジロッド18のコーティング部分は、環状の円筒形外面36が一様な厚さの薄い金属コーティング30によって覆われた、内側の熱可塑性コア34を具える。コアは、押し出し又は成形によって形成されるポリプロピレン、ポリエチレン、アセタール、及びナイロンといった熱可塑性ポリマーである。金属コーティングは、好適には、例えば、高分子コアに溶着されるニッケル−鉄合金といったナノ結晶金属合金である。DuPont Engineering Polymers of Wilmington,Delaware,Morph Technologies,Inc.,Integran Technologies,Inc.及び PowerMetal Technologiesによって開発されたMetaFuse(商標)ナノ結晶金属/ポリマーのハイブリッド技術が、金属に熱可塑性材料をコーティングして剛性を高めるよう被覆するのに有用な1つの技術である。その技術及び他の適切な金属コーティング技術が、2008年4月8日の米国特許第7,354,354号の「Article Comprising a Fine−Grained Metallic Material and a Polymeric Material」に記載されており、参照することにより引用されている。
【0011】
また、図1のベルトの各列は、外側端部27から内側端部26まで内側に、略正弦波から先細のステップ状まで形状が変化する細い横方向のビーム38を有する。金属コーティング39によるビームの総て又は一部のコーティングにより、ベルトのビームの剛性を高める。ベルトの内側端部を金属37でコーティングして、駆動タワーに対する摩耗に抗すことができる。
【0012】
ヒンジロッド以外のコンベヤベルト部品を同じ方法で作製でき、これら且つ他の利益を実現する。例えば、モジュール式コンベヤベルトのスプロケット40を図3に示す。スプロケットは、射出成形された熱可塑性部材42を具えており、その外面の部分が金属コーティングで覆われている。特に、スプロケットの駆動面又は歯部43が金属コーティング44を有しており、ベルト駆動面に出入りするよう移動する際に受ける絶え間ない擦れによる摩耗を減らす。また、スプロケットを通る中央コア48を境界とする金属コーティング46を示す。金属コーティングは、壁にシャフトが擦れることによるその穴の壁面の摩耗に抗する。このように、他のコンベヤベルトの部品との摩擦接触を受ける摩耗領域に金属コーティングを使用する。
【0013】
金属コーティングされた熱可塑性コンベヤベルト部品の別の例は、図4のベルトモジュール50である。図3のスプロケットと同じように、ベルトモジュールが概して、射出成形プロセスによって熱可塑性ポリマーで作製される。その外面の一部は、−このケースでは、ヒンジ部材54を通るロッド穴52の円筒壁−金属コーティング56によって覆われており、ベルトモジュールの摩耗領域に耐摩耗性を与える。
【0014】
2、3の好適なバージョンを参照して本発明を説明したが、他のバージョンも可能である。例えば、その長さの部分のみに沿ってコーティングされた金属コーティングされたヒンジロッドを示したが、その全体に沿ってコーティングできる。円形断面のロッドを示したが、その断面は、楕円、矩形、又は非対称形でさえも可能である。金属コーティングの利点を有する他のコンベヤベルト部品は、フライト(flight)の上端部;ベルトモジュールの駆動受容面;ボールベルトのローラボールを支持するベアリング面;ラジアル、らせん状、又は傾斜ベルトの押し下げガイド;ローラベルトの固定軸ローラの固定軸を有する。また、金属コーティングを使用して、電気伝導、磁気特性、目に見える又はそうでなければ検出可能な目印、又は美的なデザインを具えた熱可塑性コンベヤベルト部品を提供する。別の例として、金属蒸着、電気めっき、及び接着といった他の金属コーティングプロセスを使用して、熱可塑性コンベヤベルト部材を強化できる。このため、これらの数少ない例が示唆するように、特許請求の範囲は、詳細な説明の好適なバージョンに限定することを意味するものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルト部品であって、
外面を有し、モジュール式コンベヤベルトとともに使用するよう構成された熱可塑性部材と;
前記熱可塑性部材の前記外面の少なくとも一部を覆う金属コーティングと;
を具えることを特徴とするコンベヤベルト部品。
【請求項2】
前記熱可塑性部材が、ロッドの両端部間に円筒形の外面を有するヒンジロッドを具えており、
前記金属コーティングが、前記円筒形の外面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項3】
前記金属コーティングが、前記ヒンジロッドの一端から内側に前記円筒形の外面を覆うことを特徴とする請求項2に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項4】
前記熱可塑性部材が、それを通る穴を具えるヒンジ部材を有するコンベヤベルトモジュールを具えており、
前記金属コーティングが、前記ヒンジ部材の外面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項5】
前記金属コーティングが、前記穴の境界を示すことを特徴とする請求項4に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項6】
前記熱可塑性部材が、中央ビームを有するコンベヤベルトモジュールを具えており、
前記金属コーティングが、前記中央ビームの外面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項7】
前記熱可塑性部材が、ベアリング領域を形成する側部エッジを具えるコンベヤベルトモジュールを具えており、
前記金属コーティングが、前記側部エッジの少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項8】
前記熱可塑性部材が、駆動面を有するスプロケットを具えており、
前記金属コーティングが、前記駆動面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項9】
前記熱可塑性部材が、中央穴を有するスプロケットを具えており、
前記スプロケットの外面の前記金属コーティングが、前記穴の境界を示すことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項10】
前記金属コーティングが、前記熱可塑性部材の前記外面に溶着されることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項11】
前記コーティングの厚さが一定であることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項12】
コンベヤベルトに組み込まれた場合に、他の部品と摩擦接触するベアリング領域を具えており、
前記ベアリング領域が、前記金属コーティングを有することを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト部品。
【請求項13】
コンベヤベルト部品を作製するための方法であって、
外面を具え、モジュール式コンベヤベルトとともに使用するよう構成された熱可塑性部材を形成するステップと;
金属コーティングで前記外面の少なくとも一部を覆うステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記熱可塑性コンベヤベルト部材の前記外面に前記金属コーティングを溶着するステップを具えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱可塑性コンベヤベルト部材が、押出成形によって形成されることを特徴とする請求項13に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−515124(P2012−515124A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545481(P2011−545481)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/020586
【国際公開番号】WO2010/081061
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(508181663)レイトラム,エル.エル.シー. (43)
【Fターム(参考)】