説明

金属屋根材及びその接続構造

【課題】隣接する金属屋根材の接続強度を向上させることができる金属屋根材を提供する。
【解決手段】金属製の屋根材本体1の前端に断面横V字状の嵌合部4が設けられ、前記屋根材本体1の後端に被嵌合部5が設けられ、隣接する前記屋根材本体1の嵌合部4と被嵌合部5とを嵌合させることによって、前記隣接する屋根材本体1が接続される金属屋根材Aに関する。前記嵌合部4は、前記屋根材本体1の下方に位置する被係止部4bを備える。この被係止部は断面逆ヘ字状に屈曲されて屈曲部4cが形成される。前記被嵌合部5は前記屋根材本体1の上面側に突設される。前記被嵌合部5と前記屋根材本体1との間が挿入部6として形成される。接続された前記屋根材本体1が上方に向かって凸曲した際に、前記挿入部6に挿入された前記被係止部4bの屈曲部4cが前記屋根材本体1の上面に当接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の勾配方向と直交する方向に接続される横葺き屋根材などの金属屋根材及びこれを用いた敷設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は特許文献1に記載の金属屋根材を提案している。この金属屋根材は、屋根材本体の両方の側端部に断面略波状の接続部を形成したものであって、横方向(屋根の勾配方向と直交する方向)に隣接する金属屋根材の接続部を重ねあわせるようにして敷設することにより、防水性を向上させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−159597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記のような金属屋根材をさらに検討した結果、縦方向(屋根の勾配方向と平行な方向)に隣接する金属屋根材の接続強度を向上させる構造を見出して、本発明に至った。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、隣接する金属屋根材の接続強度を向上させることができる金属屋根材及びその接続構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る金属屋根材は、金属製の屋根材本体の前端に断面横V字状の嵌合部が設けられ、前記屋根材本体の後端に被嵌合部が設けられ、隣接する前記屋根材本体の嵌合部と被嵌合部とを嵌合させることによって、前記隣接する屋根材本体が接続される金属屋根材であって、前記嵌合部は、前記屋根材本体の下方に位置する被係止部を備え、この被係止部は断面逆ヘ字状に屈曲されて屈曲部が形成され、前記被嵌合部は前記屋根材本体の上面側に突設され、前記被嵌合部と前記屋根材本体との間が挿入部として形成され、隣接する前記屋根材本体のうち、一方の前記屋根材本体の被係止部が他方の前記屋根材本体の前記挿入部に挿入されて前記隣接する屋根材本体が嵌合により接続可能に形成され、接続された前記屋根材本体が上方に向かって凸曲した際に、前記挿入部に挿入された前記被係止部の屈曲部が前記屋根材本体の上面に当接されることを特徴とするものである。
【0007】
前記金属屋根材は、接続された前記屋根材本体が上方に向かって凸曲していないときには、前記屈曲部は前記屋根材本体の表面から離間可能に形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る金属屋根材の接続構造は、金属製の屋根材本体の前端に断面横V字状の嵌合部が設けられると共に前記屋根材本体の後端に被嵌合部が設けられて金属屋根材が形成され、隣接する前記金属屋根材の嵌合部と被嵌合部とを嵌合させることによって、前記隣接する金属屋根材が接続される金属屋根材の接続構造であって、前記嵌合部は、前記屋根材本体の下方に位置する被係止部を備え、この被係止部は断面逆ヘ字状に屈曲されて屈曲部が形成され、前記被嵌合部は前記屋根材本体の上面側に突設され、前記被嵌合部と前記屋根材本体との間が挿入部として形成され、隣接する前記屋根材本体のうち、一方の前記屋根材本体の被係止部が他方の前記屋根材本体の前記挿入部に挿入されて前記隣接する屋根材本体が嵌合により接続可能に形成され、接続された前記屋根材本体が表面側に向かって凸曲して変形した際に、前記挿入部に挿入された前記被係止部の屈曲部が前記屋根材本体の上面に当接されることを特徴とするものである。
【0009】
前記金属屋根材の接続構造は、接続された前記金属屋根材の屋根材本体が表面側に向かって凸曲して変形していないときには、前記屈曲部は前記屋根材本体の表面から離間していることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、隣接する金属屋根材の接続強度を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】同上の斜視図である。
【図3】(a)(b)は同上の一部を示す断面図である。
【図4】(a)は同上の断面図、(b)は同上の一部の断面図である。
【図5】(a)は同上の断面図、(b)は同上の一部の断面図である。
【図6】(a)(b)は同上の一部の断面図である。
【図7】同上の他の金属屋根材の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
本発明の金属屋根材Aは、金属板をロール成形加工などで加工して所望の形状に形成されている。金属板としては、厚み0.3〜0.5mmのものを好適に用いることができ、また、金属板の種類としては、塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)などの各種のものを用いることができる。尚、製造については、ロール成形機で対応する他に、ベンダー加工機でも対応することができる。また、端部加工はヘミング曲げ加工及びプレス加工などで対応することができる。
【0014】
本発明の金属屋根材Aは、図2に示すように、略平板状に形成される屋根材本体1と、屋根材本体1の前端に形成される嵌合部4と、屋根材本体1の後端に形成される被嵌合部5と、被嵌合部5から屋根材本体1の後方にまで突設される固定部10とを備えて形成されている。ここで、屋根材本体1の前端とは、金属屋根材Aを施工した際に水下側となる端部であって、例えば、軒側端部である。また、屋根材本体1の後端とは、金属屋根材Aを施工した際に水上側となる端部であって、例えば、棟側端部である。
【0015】
屋根材本体1は横方向(屋根の勾配方向と直交する方向)に長く形成されており、この横方向に一定の断面形状を有するものである。屋根材本体1の横方向の長さ寸法は、例えば、2000mm程度の定尺とすることができ、また、屋根材本体1の縦方向(屋根の勾配方向と平行な方向)の働き幅は、例えば、200mm程度とすることができる。
【0016】
嵌合部4は屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されており、図3(a)に示すように、三角形のような断面横V字状の先細り形状に形成されている。この嵌合部4は、屋根材本体1の前端から略真っ直ぐに前方に向かって突出される延出部4aと、延出部4aの前端から延出部4aの下面側(後方斜め下方に向かって)に屈曲されて屋根材本体1の下方に位置する被係止部4bとを有して形成されている。被係止部4bは断面逆へ字状に屈曲して形成されており、その屈曲部分は下方に突出する屈曲部4cとして形成されている。被係止部4bは、屈曲部4cを挟んで角度が約120°に屈曲されている。また、延出部4aと被係止部4bとの境界部分は曲率半径が約1.5mmの略円弧状に形成されている。尚、被係止部4bの先端には、通常、「アダ折」と称される折り返しを設けることが多いが、本発明では、排水性の向上のために、「アダ折」を形成していない。
【0017】
被嵌合部5は屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されており、図3(b)に示すように、三角形のような断面横V字状の先細り形状に形成されている。この被嵌合部5は、屋根材本体1の後端から上面側に前方斜め上方に向かって屈曲して形成される当接部5aと、当接部5aの前端から当接部5aの上側に屈曲形成される支持部5bとを有して形成されている。そして、被嵌合部5とこれに対向する屋根材本体1の後端部の上面との間の空間が挿入部6として形成されている。当接部5aと支持部5bとの境界部分は、曲率半径が約1mmの略円弧状に形成されている。
【0018】
固定部10は、被係止部5の後端から屋根材本体1の後方にまで延設され、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されている。すなわち、固定部10は、支持部5bの後端から後方斜め下方に向かって突出する突出部10aと、突出部10aの後端から後方に向かって突設される固着部10bとを備えて形成されている。また、固着部10bの表面には断面略V字状の溝部10cが横方向の略全長にわたって形成されている。尚、固着部10bの後端部には「アダ折」と称される折り返しを設けることができる。
【0019】
そして、本発明の金属屋根材Aはその複数枚を野地板などの屋根下地の上に略全面にわたって縦横に敷設するものであり、これにより、金属屋根を形成することができる。この場合、隣接して敷設されて金属屋根材A、Aは取り付け強度の確保や防水性の向上のために接続されている。尚、各金属屋根材Aは固定部10により屋根下地に取り付けられる。すなわち、固着部10bの溝部10cから屋根下地に向かってビス等の固定具を打入し、固着部10bを屋根下地に固定することによって、各金属屋根材Aを屋根下地に固定することができる。
【0020】
縦方向で隣接する金属屋根材A、Aはその一部を上下に重ね合わせることにより接続する。この場合、軒側に敷設された金属屋根材(敷込み側の金属屋根材)Aの後部の上に、棟側に敷設された金属屋根材(被せ側の金属屋根材)Aの前部を被せるようにする。また、敷込み側の金属屋根材Aに形成した挿入部6に被せ側の金属屋根材Aに設けた被係止部4bを挿入する。被係止部4bの挿入は挿入部6の前側開口より挿し込むようにし、被係止部4bの屈曲部4cを挿入部6の奥の方に位置させるようにする。このようにして、敷込み側の金属屋根材Aの被嵌合部5と被せ側の金属屋根材Aの嵌合部4とを嵌合することによって、縦方向で隣接する金属屋根材A、Aを接続することができ、また、被せ側の金属屋根材Aの前部で敷込み側の金属屋根材Aの固定部10及び被嵌合部5を覆うようにすることができる。
【0021】
図4(a)(b)に、通常時の金属屋根材Aの施工状態を示す。この場合、金属屋根材Aには風荷重がかからず、屋根材本体1は略平坦な状態となっている。また、挿入部6に挿入された被係止部4bの屈曲部4cの下面は、挿入部6内の屋根材本体1の上面に接触せず、被係止部4bの先端が被嵌合部5の当接部5aの基部の下面(挿入部6内の表面)に弾性的に接触している。このようにして挿入部6内の屋根材本体1の上面と屈曲部4cとの間に隙間Sを形成することにより、挿入部6の奥部に水が溜まりにくくなって排水性が向上するものであり、挿入部6の乾燥性が優れて耐食性を向上させることができるものである。また、被係止部4bの先端が当接部5aの基部の下面に接触することにより形成される防水ラインが、挿入部6の奥部で形成され、かつ挿入部6内に広い空間が形成されていることで、毛細管現象の発生を少なくし、さらに防水性を向上させることができる。
【0022】
図5(a)(b)に、風荷重を受けた場合の金属屋根材Aの施工状態を示す。この場合、金属屋根材Aは、風荷重により、屋根材本体1が上方に向かって凸曲し、屋根材本体1の上面(働き面)が略全面にわたって上向き凸曲(逆反り)するように弾性変形するが、図1に示すように、この変形により、屈曲部4cが挿入部6内の屋根材本体1の上面に当接し、被係止部4bの先端が挿入部6内の当接部5aの基部の表面に弾性的に圧接し、さらに、敷込み側の金属屋根材Aの被嵌合部5と屋根材本体1の間隔(挿入部6の上下寸法)が弾性的に狭まくなる。これにより、敷込み側の金属屋根材Aの被嵌合部5の当接部5aと屋根材本体1との間で被係止部4bを挟み込んで、挿入部6内で被係止部4bを挟持することができ、被係止部4bを挿入部6で強固に締め付けて保持することができる。よって、被嵌合部5と被係止部4bとの係止を強固にし、被せ側の金属屋根材Aと敷込み側の金属屋根材Aとの接続強度を向上させることができる。実験によると、本発明の金属屋根材Aでは、縦方向の長さが220〜270mmの場合、接続部分の強度が8000〜10000N/mの強度を有するのに対して、従来からある一般的な金属屋根材では、縦方向の長さが190〜220mmの場合、接続部分の強度が6500〜8000N/mの強度となり、本発明の方が接続部分の強度が高いことが判る。
【0023】
本発明の金属屋根材Aは、その複数枚を横方向に並設する場合に、横方向で隣接する金属屋根材A、Aの側端部2,2同士を上下に重ね合わせることにより接続したり、あるいは横方向で隣接する金属屋根材A、Aの側端部2,2同士を上下に重ね合わせないで、例えば、突き合わせたりして接続したりすることができる。横方向で隣接する金属屋根材A、Aの側端部2,2同士を上下に重ね合わせる場合、金属屋根材Aの側端部2の先部では、図6(a)に示すように、一方の金属屋根材Aの屋根材本体1と嵌合部4との表面側に、他方の金属屋根材Aの屋根材本体1と嵌合部4とがそれぞれ配置されている。そして、重なった嵌合部4の被係止部4bは両方共に敷込み側の金属屋根材Aの挿入部6に挿入されるが、挿入部6内には隙間Sを形成するための寸法があるので、二枚の被係止部4bが重なった状態でも挿入しやすいものである。また、横方向で隣接する金属屋根材A、Aの側端部2,2同士を上下に重ね合わせる場合、金属屋根材Aの側端部2の後部では、図6(b)に示すように、一方の金属屋根材Aの挿入部6に他方の金属屋根材Aの屋根材本体1の後端部と当接部5aとが挿入される。また、一方の金属屋根材Aの固定部10の表面に被さるように、他方の金属屋根材Aの固定部10が配置される。ここで、金属屋根材Aの縦方向の断面形状は横方向の全長にわたって略一定であるため、重ね合わせ寸法は任意に設定可能であり、防水性能を確保するために、屋根材本体1の側端から100mm以上重ね合わせることが好ましいが、屋根の各部分の納めの寸法調整に応じて重ね合わせ寸法を変えることができる。
【0024】
横方向で隣接する金属屋根材A、Aの側端部2,2同士を上下に重ね合わせる場合、図7に示すように、屋根材本体1の両方の側端部2に複数本のリブ部3を設けても良い。リブ部3は屋根材本体1の縦方向と略平行に長く形成され、屋根材本体1の縦方向の略全長にわたって形成することができる、また、リブ部3は屋根材本体1の側端部2の下面に突出するように形成され、リブ部3は屋根材本体1の側端部2の上面で開口している。従って、リブ部3は屋根材本体1の側端部2の上面に溝状に形成されている。このようなリブ部3を形成することにより、リブ部3を排水用の溝として形成することができると共に側端部2、2の重ね合わせ部分に排水用の隙間を形成することができ、防水性を損なうことなく隣接する金属屋根材A、Aの側端部2、2同士の重ね合わせにより接続することができる。
【符号の説明】
【0025】
A 金属屋根材
1 屋根材本体
4 嵌合部
4b 被係止部
4c 屈曲部
5 被嵌合部
6 挿入部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の屋根材本体の前端に断面横V字状の嵌合部が設けられ、前記屋根材本体の後端に被嵌合部が設けられ、隣接する前記屋根材本体の嵌合部と被嵌合部とを嵌合させることによって、前記隣接する屋根材本体が接続される金属屋根材であって、前記嵌合部は、前記屋根材本体の下方に位置する被係止部を備え、この被係止部は断面逆ヘ字状に屈曲されて屈曲部が形成され、前記被嵌合部は前記屋根材本体の上面側に突設され、前記被嵌合部と前記屋根材本体との間が挿入部として形成され、隣接する前記屋根材本体のうち、一方の前記屋根材本体の被係止部が他方の前記屋根材本体の前記挿入部に挿入されて前記隣接する屋根材本体が嵌合により接続可能に形成され、接続された前記屋根材本体が上方に向かって凸曲した際に、前記挿入部に挿入された前記被係止部の屈曲部が前記屋根材本体の上面に当接されて成ることを特徴とする金属屋根材。
【請求項2】
接続された前記屋根材本体が表面側に向かって凸曲して変形していないときには、前記屈曲部は前記屋根材本体の表面から離間可能に形成されて成ることを特徴とする請求項1に記載の金属屋根材。
【請求項3】
金属製の屋根材本体の前端に断面横V字状の嵌合部が設けられると共に前記屋根材本体の後端に被嵌合部が設けられて金属屋根材が形成され、隣接する前記金属屋根材の嵌合部と被嵌合部とを嵌合させることによって、前記隣接する金属屋根材が接続される金属屋根材の接続構造であって、前記嵌合部は、前記屋根材本体の下方に位置する被係止部を備え、この被係止部は断面逆ヘ字状に屈曲されて屈曲部が形成され、前記被嵌合部は前記屋根材本体の上面側に突設され、前記被嵌合部と前記屋根材本体との間が挿入部として形成され、隣接する前記屋根材本体のうち、一方の前記屋根材本体の被係止部が他方の前記屋根材本体の前記挿入部に挿入されて前記隣接する屋根材本体が嵌合により接続可能に形成され、接続された前記屋根材本体が上方に向かって凸曲して変形した際に、前記挿入部に挿入された前記被係止部の屈曲部が前記屋根材本体の上面に当接されて成ることを特徴とする金属屋根材の接続構造。
【請求項4】
接続された前記金属屋根材の屋根材本体が表面側に向かって凸曲して変形していないときには、前記屈曲部は前記屋根材本体の表面から離間して成ることを特徴とする請求項3に記載の金属屋根材の接続構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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