説明

針挿通弁及び中空ボール

【課題】注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気漏れを防止する針挿通弁、及び、この針挿通弁を備えた中空ボールを提供すること。
【解決手段】軸線方向に延在して空気注入用の注入針が挿通される針通路11を有するゴム製の針挿通弁1であって、針通路11は、注入針が挿通されていないときに開放し、注入針が挿通されたときに注入針の外周に密接して閉塞する第1シール部12と、注入針が挿通されていないときに密接して閉塞する第2シール部13とを、注入針の挿通方向に沿ってこの順で、有していることを特徴とする針挿通弁1、並びに、この針挿通弁1を備えて成る中空ボール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、針挿通弁及び中空ボールに関し、さらに詳しくは、注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気漏れを防止できる針挿通弁、並びに、この針挿通弁を備えた中空ボールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サッカーボール、バレーボール、バスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、テニスボール等の中空ボールは内部空間に空気が充填されている。ところが、時間の経過と共に、及び/又は、使用状態によって、内部空間に充填された空気が外部に漏出することがあるので、空気を内部空間に補充する必要がある。したがって、このような中空ボールは、ポンプ等に接続された、空気を注入するための注入針が刺通又は挿通される針挿通弁を備えている。
【0003】
このような針挿通弁として、例えば、空気注入用の注入針を挿通する針通路を有する針挿通弁が提案されている。例えば、特許文献1の図3及び図4には、針挿通弁として「弾性ゴムよりなる円柱部(2)、該円柱部(2)と同一の弾性ゴム材料よりなり該円柱部(2)側面に一体形成された鍔部(3)、上記円柱部(2)に設けられた微小孔(4)及び切断部(5)よりなるムシ(1)」が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には「前記ボール球殻の内周面に接着される薄肉のフランジ部と、前記フランジ部から外方側に突出し、前記ボール球殻に形成した小孔に係合する突部と、前記突部の外面に開口する有底の開口部と、前記フランジ部から内方側に延びる柱状のバルブ本体と、前記開口部の底面から前記バルブ本体の内端面を貫いて前記ゴムバルブ内に形成されたスリットとを有し、前記バルブ本体は外方から内方に向かうに従って外径が漸減するテーパー形状に形成されているゴムバルブ」が記載されている(請求項1及び図2等)。
【0005】
さらに、特許文献3には「前記ボール球殻の内周面に接着されるフランジ部と、前記フランジ部から外方側に突出し、前記ボール球殻に形成した小孔に係合する突部と、前記突部の外面に開口する有底の開口部と、前記フランジ部からボール内方側に延びる柱状の胴部と、前記開口部の底面から前記胴部の内端面を貫いて前記ゴムバルブ内に形成されたスリットとを有し、前記胴部は、前記内端面に略平行する断面の縦横の長さが異なる柱状に形成し、前記スリットの長さ方向と前記胴部の長径方向とが略直交する方向に前記スリットを貫通形成したゴムバルブ」が記載されている(請求項1及び図2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−54867号公報
【特許文献2】特開2004−201733号公報
【特許文献3】特開2006−55335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気漏れを防止できる針挿通弁、並びに、この針挿通弁を備えた中空ボールを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸線方向に延在して空気注入用の注入針が挿通される針通路を有するゴム製の針挿通弁であって、前記針通路は前記注入針が挿通されていないときに開放し、前記注入針が挿通されたときに前記注入針の外周に密接して閉塞する第1シール部と、前記注入針が挿通されていないときに密接して閉塞する第2シール部とを前記注入針の挿通方向に沿ってこの順で有していることを特徴とする針挿通弁であり、
請求項2は、前記第1シール部は前記注入針の外径よりも小さな内径の内面を有していることを特徴とする請求項1に記載の針挿通弁であり、
請求項3は、前記第1シール部は前記軸線方向に沿って延設された有底穴であることを特徴とする請求項1又は2に記載の針挿通弁であり、
請求項4は、前記第1シール部は前記針通路の内側に突出する少なくとも1つの環状体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の針挿通弁であり、
請求項5は、前記第2シール部はスリットであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の針挿通弁であり、
請求項6は、前記第2シール部は前記第1シール部に連設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の針挿通弁であり、
請求項7は、前記挿通方向の前記第1シール部よりも上流側に前記注入針を前記第1シール部に案内する案内孔を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の針挿通弁であり、
請求項8は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の針挿通弁を備えて成る中空ボールである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る針挿通弁は、注入針が挿通されていないときに開放し、注入針が挿通されたときに注入針の外周に密接して閉塞する第1シール部と、注入針が挿通されていないときに密接して閉塞する第2シール部とを注入針の挿通方向に沿ってこの順で有する針通路を有しているから、注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気漏れを防止できる。また、この発明に係る中空ボールはこの発明に係る針挿通弁を備えている。
【0010】
したがって、この発明によれば、注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気漏れを防止できる針挿通弁、及び、この針挿通弁を備えた中空ボールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明に係る針挿通弁の一例である針挿通弁を示す図であり、図1(a)はこの発明に係る針挿通弁の一例である針挿通弁を示す正面図であり、図1(b)はこの発明に係る針挿通弁の一例である針挿通弁の断面を示す断面図である。
【図2】図2は、この発明に係る針挿通弁の別の一例である針挿通弁を示す図であり、図2(a)はこの発明に係る針挿通弁の別の一例である針挿通弁を示す正面図であり、図2(b)はこの発明に係る針挿通弁の別の一例である針挿通弁の断面を示す断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る針挿通弁のまた別の一例である針挿通弁を示す図であり、図3(a)はこの発明に係る針挿通弁のまた別の一例である針挿通弁を示す正面図であり、図3(b)はこの発明に係る針挿通弁のまた別の一例である針挿通弁の断面を示す断面図である。
【図4】図4は、この発明に係る針挿通弁のさらにまた別の一例である針挿通弁を示す図であり、図4(a)はこの発明に係る針挿通弁のさらにまた別の一例である針挿通弁を示す正面図であり、図4(b)はこの発明に係る針挿通弁のさらにまた別の一例である針挿通弁の断面を示す断面図である。
【図5】図5は、この発明に係る針挿通弁の一例である針挿通弁に注入針を挿通した状態を示す図であり、図5(a)はこの発明に係る針挿通弁の一例である針挿通弁に注入針を挿通した状態を示す断面図であり、図5(b)は図5(a)のA−A線における断面を示す断面図であり、図5(c)はこの発明に係る針挿通弁の一例である針挿通弁に挿通した注入針を抜脱する途中の状態を示す断面図である。
【図6】図6は、この発明に係る針挿通弁の別の一例である針挿通弁に注入針を挿脱した状態を示す図であり、図6(a)はこの発明に係る別の針挿通弁の一例である針挿通弁に注入針を挿通した状態を示す断面図であり、図6(b)はこの発明に係る針挿通弁の別の一例である針挿通弁に挿通した注入針を抜脱する途中の状態を示す断面図である。
【図7】図7は、従来の針挿通弁の一例である針挿通弁を示す図であり、図7(a)は従来の針挿通弁の一例である針挿通弁を示す正面図であり、図7(b)は従来の針挿通弁の一例である針挿通弁の断面を示す断面図であり、図7(c)は従来の針挿通弁の一例である針挿通弁に注入針を挿通した状態を示す断面図である。
【図8】図8は、この発明に係る中空ボールの一例である中空ボールを示す概略断面図であり、図8(a)はこの発明に係る中空ボールの一例である中空ボールの全体を示す概略断面図であり、図8(b)はこの発明に係る中空ボールの一例である中空ボールの針挿通弁装着部近傍を示す概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係る針挿通弁は、中空ボールに装着されて、空気注入用の注入針が刺通又は挿通される弁である。この発明に係る針挿通弁が装着される中空ボールは、その内部に空間を有し、この内部空間に空気等の気体が所定の空気圧で充填されるボールであればよく、例えば、スポーツ用ボール、具体的には、サッカーボール、バレーボール、バスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、テニスボール等が挙げられる。
【0013】
また、この発明に係る針挿通弁に挿脱される注入針は、通常管体であり、その先端は尖形である必要はなく、平坦な先端面又は半球面状若しくは半楕円球面状の先端面であるのが取扱性及び安全性が高くてよい。この発明に係る針挿通弁が装着される中空ボールにもよるが、注入針は、その軸線に垂直な断面形状が円形又は楕円形であるのが一般的であり、その外径(長径)は、例えば、0.8〜2.4mmである。
【0014】
この発明に係る針挿通弁は、その一部例えばその軸線方向の一端面が中空ボールの表面に露出するように、中空ボール、特にその内面に装着される。したがって、この発明に係る針挿通弁は中空ボールの針挿通弁と称することができる。
【0015】
この発明に係る針挿通弁は、通常、管状体に形成され、その軸線に垂直な断面形状は円形又は楕円形になっている。この発明に係る針挿通弁は装着される中空ボールの種類等に応じて適宜の寸法に設定される。この発明に係る針挿通弁は、ポンプ等に接続された、空気注入用の注入針が刺通又は挿通され、空気を補充した後に刺通又は挿通された注入針が抜脱される。したがって、この発明に係る針挿通弁は、軸線方向に延在した針通路、すなわち、軸線方向の一端面から他端面にわたって連通した針通路、さらにいうと、軸線方向に貫通した針通路を有し、この針通路は空気注入用の注入針が挿通される。この針通路は、針挿通弁の軸線に沿って、好ましくはこの軸線と同軸となるように形成され、空気を補充する際等に注入針が挿脱されると共に中空ボールの内部空間に充填された空気の漏出を防止する機能を果たす。
【0016】
この発明に係る針挿通弁における針通路は、注入針が挿通されていないとき、すなわち非挿通時に開放し、注入針が挿通されたとき、すなわち挿通時に注入針の外周に密接して閉塞する第1シール部を有している。この第1シール部は、注入針が挿通されたときに注入針との密着性すなわち機密性を保って中空ボールの内部空間を中空ボールの外側から閉塞する機能を奏する。したがって、第1シール部は、挿通された注入針の外周に密接して中空ボールの内部と外部との連通を遮断し、すなわち、中空ボールの内部を閉塞するように構成されていればよく、例えば、注入針が挿通されていないときに間隙を有し、注入針が挿通されたときに注入針の外周に密接する環状の内面を有している。この内面は、挿通された注入針の外周に密接する形状であればよく、例えば、針通路の軸線に垂直な平面における輪郭が円形、楕円形又は多角形等、注入針の軸線に垂直な断面形状と相似形等が挙げられ、注入針の軸線に垂直な断面形状と相似形であるのが好ましい。このような内面を有する第1シール部として、例えば、針挿通弁の軸線方向に沿って延設された有底穴、針通路の内側に突出する環状体等が挙げられる。この第1シール部は、注入針が挿通されていないときに針通路の半径方向に間隙を有して開放されており、すなわち閉塞されていない。注入針が挿通されていないときに第1シール部が解放されていると注入針を挿通させるときの目安になる。
【0017】
したがって、この第1シール部、すなわち、内面は注入針の外径よりも小さな間隙距離を有している。この間隙距離は、注入針の挿脱しやすさ(以下、注入針の挿脱性と称することがある。)と空気漏れの防止とを高い水準で両立できる点で、例えば、注入針の外径に対して50%以上100%未満であるのが好ましく、70〜95%であるのが特に好ましい。具体的には、この間隙距離は、0.4〜2.4mmであるのが好ましく、0.6〜2.2mmであるのが特に好ましい。
【0018】
この発明に係る針挿通弁における針通路は、注入針が挿通されていないとき、好ましくは中空ボールに装着され、かつ注入針が挿通されていないときに、密接して針通路の軸線方向の両側、すなわち、中空ボールの内部空間と外側とを閉塞する第2シール部を有している。この第2シール部は、注入針が挿通されていないときに中空ボールの内部空間の気密性を保って中空ボールの内部空間を中空ボールの外側から閉塞する機能を奏する。したがって、第2シール部は、少なくも注入針が挿通されていない非挿通時は閉塞状態になるように構成されていればよく、例えば、スリット等が採用される。このようなスリットとして、例えば、一文字スリット、三叉スリット、十字スリット等が挙げられる。スリットの寸法すなわちスリット幅は、注入針の挿脱性と空気漏れの防止防とを高い水準で両立できる点で、例えば、注入針の外径に対して120〜200%であるのが好ましく、140〜170%であるのが特に好ましく、具体的には、1.2〜4mmであるのが好ましく、1.5〜3.5mmであるのが特に好ましい。なお、スリット幅は、スリットの端部に外接する仮想外接円の直径であり、例えば、一文字スリットの場合はその全長、三叉スリット又は十字スリットの場合は3つ又は4つのスリットそれぞれの端部に外接する仮想外接円の直径である。
【0019】
この発明に係る針挿通弁における針通路は、第1シール部と第2シール部とを、注入針の挿通方向に沿って上流から下流に向かってこの順で有している。すなわち、針通路において、第1シール部は中空ボールの外側に形成され、第2シール部は中空ボールの内部空間側に形成される。第1シール部と第2シール部とは、この順で針通路に配設されていればよく、第1シール部と第2シール部とが連設されていてもよく、互いに離れて配設されていてもよい。
【0020】
この発明に係る針挿通弁は、第1シール部と第2シール部とを有する針通路が形成されているから、第1シール部で注入針の挿脱時における内部空間に充填された空気の漏出を防止し、第2シール部で注入針の非挿脱時すなわち通常時における内部空間に充填された空気の漏出を防止できる。したがって、この発明に係る針挿通弁は、中空ボールに装着されたときに、具体的には後述するように、注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気漏れを防止できる。
【0021】
この発明に係る針挿通弁は、ゴムで形成されている。針挿通弁を形成するゴムは、特に限定されず、各種のゴムが挙げられる。ゴムとして、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムが挙げられる。この中でも、空気漏れを防止できることに加えて注入針をスムーズに挿通できることに着目すると、シリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムは、特に限定されず、各種のシリコーンゴムを用いることができ、例えば、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、炭素数1〜6のアルキル基を有するオルガノシリコーンゴム等が挙げられる。ゴムは通常用いられる各種添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、分散剤、発泡剤、加硫剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、可塑剤、難燃性向上剤、離型剤等が挙げられる。
【0022】
このゴム、すなわち、針挿通弁は、そのゴム硬度(JIS A)が10〜50°であるのが好ましく、20〜40°であるのが特に好ましい。ゴムのゴム硬度が前記範囲内にあると、針挿通弁の針通路を高い気密性で閉塞できる。ゴム硬度(JIS A)は次のようにして測定できる。すなわち、ゴムを形成するゴム組成物を準備する。具体的には、ゴムの組成が分かっている場合にはその組成のゴム組成物を準備し、ゴムの組成が不明である場合にはIR分析方法によって決定された組成のゴム組成物を準備する。そして準備したゴム組成物を用いて上下面が平滑な平面で平行である板状の試験片(14mm以上×14mm以上×4mm以上)を作成し、この試験片における硬度をJIS K 6253 デューロメータ硬さ試験法に準拠して測定したときの値をゴムの硬度とする。
【0023】
この発明に係る針挿通弁は、例えば、ゴムを形成可能なゴム組成物を所定形状に成形して、製造することできる。準備するゴム組成物は、ゴムを形成するゴム前駆体及び所望により各種の前記添加剤を含有する。ゴム前駆体としては、各種ゴムを形成しうる公知のモノマー等が挙げられる。例えば、シリコーンゴム前駆体としてポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0024】
準備したゴム組成物を、例えば、各種成形方法で所定形状に成形する。例えば、金型を用いた射出成形、圧縮成形等が好適に採用される。このようにして針挿通弁を製造することができる。なお、第2シール部がスリットである場合にはゴム組成物を成形した後にカッター等を用いて第2シール部を後から形成することもできる。
【0025】
この発明に係る中空ボールは、この発明に係る針挿通弁を備えている。この発明に係る中空ボールは、球状に形成された球殻と、この球殻に設けられた弁装着部と、この弁装着部に装着された針挿通弁とを有している。球殻は、1層構造でも複層構造でもよく、中空ボールの用途に応じて適宜に層構造が選択される。複層の球殻を構成する層として、例えば、球殻の強度を補強する補強層、表皮層等が挙げられる。弁装着部は、球殻の内側に嵌合等によって設けられ、針挿通弁を自身の収納空間に収納する。したがって、弁装着部は管状の中空筐体になっている。この弁装着部において、通常その収納空間は径方向の寸法が針挿通弁よりも小さくなっており、針挿通弁はこの収納空間に径方向に圧縮された状態で、かつ収納凹部に形成された針挿通弁の鍔部が嵌合した状態で、収納される。このように収納空間に収納されることによって針挿通弁、特に第2シール部は高い密接状態を維持する。この発明に係る中空ボールは、この発明に係る針挿通弁以外は、公知の構成を適宜に採用することができ、中空ボールの種類、例えば、サッカーボール、バレーボール、バスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、テニスボール等に応じて、適宜の構成とされる。
【0026】
この発明に係る中空ボールは、この発明に係る針挿通弁を備えているから、注入針を容易に挿脱でき、注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気が漏れにくい。したがって、この発明によれば、注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気が漏れにくい中空ボールを提供するという目的を達成できる。
【0027】
この発明に係る針挿通弁を図面を参酌して具体的に説明する。この発明に係る針挿通弁の一例である針挿通弁1は、図1に示されるように、ゴムで形成され、管状の基体7と基体7の外周面に形成された鍔部8とを有している。この針挿通弁1の軸線長さは、中空ボールの種類にかかわらず同一長さにすることもでき、例えば17〜18mmに設定される。
【0028】
基体7は、図1に示されるように、外径が一定の円筒部7aとこの円筒部7aの端部に連設され、延在方向に向かって外径が徐々に減少する円錐台部7bとを有し、さらに、円筒部7aの円錐台部7bに対する反対側には面取りされた面取部7cを有している。すなわち、この基体7は、軸線方向に沿って円錐台部7b、円筒部7a及び面取部7cが連続して形成された管状体に成形されている。基体7は、その軸線に垂直な断面形状が円形になっている。基体7は、針挿通弁1が装着される中空ボールの種類、内部空間に充填される空気圧等に応じて適宜の外径及び軸線長さに調整される。基体7の外径は、中空ボールの種類にかかわらず同一径にすることもでき、例えば4〜11mmに設定される。円筒部7a、円錐台部7b及び面取部7cの軸線方向長さは適宜に決定される。
【0029】
基体7は、図1に示されるように、軸線方向に延在し、好ましくは軸線と同軸となるように軸線方向に延在した針通路11を有している。この針通路11は、注入針が挿通されていないときに開放し、注入針が挿通されたときに注入針の外周に密接して閉塞する第1シール部12と、注入針が挿通されていないときに密接して閉塞する第2シール部13とを、有している。したがって、この針通路11は、中空ボールに装着されたときに、注入針が挿通されているか否かにかかわらず、少なくとも第2シール部13で中空ボールの内部空間と中空ボールの外部とを気密に閉塞する。
【0030】
第1シール部12は、図1に示されるように、基体7の軸線に沿って穿孔され、挿通された注入針の外周に密接する環状の内面15と底部14とを有する有底穴となっている。すなわち、針挿通弁1における第1シール部12は針挿通弁1の軸線方向に沿って延設された有底穴12となっている。この有底穴12は、その軸線に垂直な平面における輪郭が注入針の軸線に垂直な断面形状と相似形である円形であってこの注入針の外周に密接するようになっている。このように有底穴12の内周面全体が内面15になっていると注入針の外周により高い機密性を確保して密接するから空気漏れを高度に防止できる。
【0031】
この有底穴12は注入針が挿通されていないときに針通路11の半径方向に間隙を有して開放している。この間隙の間隙距離すなわち内面15の内径は0を超え注入針の外径よりも小さく、注入針の挿脱性と空気漏れの防止とを高い水準で両立できる点で、例えば、注入針の外径に対して50%以上100%未満であるのが好ましく、70〜95%であるのが特に好ましい。具体的には、この間隙距離は、0.4〜2.4mmであるのが好ましく、0.6〜2.2mmであるのが特に好ましい。針挿通弁1において、有底穴12は、後述する鍔部8まで形成されているが、有底穴12の深さは基体7の軸線長さ等に応じて適宜に設定され、例えば、6〜9mmとされる。有底穴12の底部14は注入針を後述する第2シール部13に案内するように略半球状に形成されている。
【0032】
第2シール部13は、図1に示されるように、第1シール部12の底部14から面取部7cの端面まで、軸線方向に沿って、好ましくは第1シール部12と同軸となるように、形成されている。この第2シール部13は、針挿通弁1の軸線方向に沿って有底穴12に連設され、非挿通時は互いの内面が密接して閉塞状態になる一文字状のスリットとして形成されている。このスリット13の寸法は、注入針の挿脱性と空気漏れの防止とを高い水準で両立できる点で、例えば、注入針の外径に対して120〜200%であるのが好ましく、140〜170%であるのが特に好ましい。具体的には、この寸法は、1.2〜4mmであるのが好ましく、1.5〜3.5mmであるのが特に好ましい。
【0033】
鍔部8は、図1に示されるように、基体7の軸線方向の略中央に、基体7の外周面から放射状に膨出する環状に、形成されている。鍔部8は中空ボール内に設けられた装着体の嵌合凹部に嵌合して針挿通弁1が中空ボールから容易に脱落しないように機能する。したがって、鍔部8は、嵌合凹部と嵌合するように、その形成位置並びに外径及び軸線長さが設定されている。例えば、鍔部8の外径は5〜15mm、軸線長さは3〜6mmである。
【0034】
この発明に係る針挿通弁の別の一例である針挿通弁2は、図2に示されるように、針通路21が異なること以外は針挿通弁1と基本的に同様である。この針通路21は、第1シール部12と第2シール部13と導出穴22とを、注入針の挿通方向に沿ってこの順で有している。この針通路21の第1シール部12及び第2シール部13は針通路11の第1シール部12及び第2シール部13と基本的に同様である。導出穴22は、図2に示されるように、基体7の最下流側に穿孔された有底穴であって底部が第2シール部13に連設され、注入針の針挿通弁2からの導出を案内する。この導出穴22は、注入針の外径よりも大きな外径を有し、注入針を案内する。したがって、導出穴22の内径は注入針の外径よりも大きければよく、例えば、注入針の外径に対して101〜300%に設定されている。導出穴22の、軸線に垂直な断面形状は特に限定されないが、注入針の案内確実性等を考慮すると、円形、楕円形又は多角形であるのがよく、注入針の断面形状に相似の形状であるのが好ましく、この例においては円形とされている。導出穴22の底部は略半球状に形成されている。導出穴22の深さは基体7の軸線長さ等に応じて適宜に設定され、例えば、1〜5mmとされる。
【0035】
この発明に係る針挿通弁のまた別の一例である針挿通弁3は、図3に示されるように、針通路31が異なること以外は針挿通弁1と基本的に同様である。この針通路31は、基体7の軸線に沿って穿孔された案内穴35と、案内穴35の底部34から連設された第2シール部13とを、注入針の挿通方向に沿ってこの順で有し、案内穴35における軸線方向略中央の内面に形成された第1シール部32を有している。この針通路31の第2シール部13は針通路11の第2シール部13と基本的に同様である。
【0036】
案内穴35は、図3に示されるように、基体7の最上流側に基体7の軸線に沿って穿孔され、底部34を有する有底穴となっている。この案内穴35は、注入針の外径よりも大きな外径を有し、注入針を案内する。したがって、案内穴35の内径は注入針の外径よりも大きければよく、例えば、注入針の外径に対して101〜300%に設定されている。案内穴35の、軸線に垂直な断面形状は特に限定されないが、注入針の案内確実性等を考慮すると、円形、楕円形又は多角形であるのがよく、注入針の断面形状に相似の形状であるのが好ましく、この例においては円形とされている。案内穴35の底部34は注入針を第2シール部13に案内するように略半球状に形成されている。案内穴35の深さは基体7の軸線長さ等に応じて適宜に設定され、例えば3〜9mmとされる。
【0037】
第1シール部32は、図3に示されるように、案内穴35の軸線方向の略中央部に形成され、針通路31すなわち案内穴35の内側に向かって突出すると共に案内穴35の内周面を一巡する環状体32である。この環状体32は、案内穴35に挿通された注入針の外周に密接する環状の内面33(図3(b)参照。)を有している。この内面33は、その軸線方向の長さが異なること以外は、有底穴12の内面15と基本的に同様であって注入針の外周に密接するようになっている。したがって、内面33の間隙距離すなわち内径は0を超え注入針の外径よりも小さくなっている。内面33の軸線方向の長さは注入針の挿脱性と空気漏れの防止とを考慮して適宜に設定され、例えば1〜5mmとされる。
【0038】
この発明に係る針挿通弁のさらにまた別の一例である針挿通弁4は、図4に示されるように、針通路41が異なること以外は針挿通弁1と基本的に同様である。この針通路41は、注入針を案内する案内孔44と、第1シール部42と、第2シール部43とを、注入針の挿通方向に沿って、この順で有している。
【0039】
案内孔44は、図4に示されるように、基体7の最上流側に基体7の軸線に沿って穿孔され、穿孔方向に向かって内径が徐々に小さくなる先細形状に形成されており、注入針を第1シール部42に案内する。基体7に開口する案内孔44の開口径(最大径)は注入針の外径よりも大きく、案内孔44の最小径は後述する第1シール部42の内径と同一となっている。案内孔44の開口径は、例えば、注入針の外径に対して101〜300%に設定されている。案内孔44の、軸線に垂直な断面形状は特に限定されないが、注入針の案内確実性等を考慮すると、円形、楕円形又は多角形であるのがよく、注入針の断面形状に相似の形状であるのが好ましく、この例においては円形とされている。案内孔44の深さは基体7の軸線長さ等に応じて適宜に設定され、例えば1〜5mmとされる。
【0040】
第1シール部42は、案内孔44に連接され、その軸線長さが異なること以外は第1シール部12と基本的に同様である。第2シール部43は十文字状のスリットであること以外は第2シール部13と基本的に同様である。
【0041】
この発明に係る針挿通弁に注入針を挿脱するときの状態を従来の針挿通弁と対比して説明する。この発明に係る針挿通弁に挿脱する注入針Nは、この発明に係る針挿通弁の第1シール部の内径よりも大きな外径を有する管体であり、その先端に開口した空気孔(図示しない。)を有している。
【0042】
この注入針Nを針挿通弁1に挿通させるには、注入針Nの先端を第1シール部12の開口に対向配置させて、針挿通弁1側に圧入する。このようにして注入針Nを針通路11に圧入すると、図5(a)に示されるように、注入針Nは、第1シール部12及び第2シール部13に順次進入して、最終的に、その先端が第2シール部13から突出して、中空ボールの内部空間に到達する。このようにして注入針Nが針挿通弁1に挿通され、図示しないポンプ等によって吐出された空気が注入針Nの空気孔から中空ボールの内部空間に供給される。
【0043】
この注入針Nの挿通状態において、第1シール部12は、注入針Nの進入によって、その間隙が径方向に拡径され、ゴム製の針挿通弁1の弾力等によって間隙に復元力が作用し、図5(a)に示されるように、第1シール部12の内面15が注入針Nの外周に密接している。一方、第2シール部13はスリットであるから、注入針Nを挿通させると、図5(b)に示されるように、第2シール部13を挿通した注入針Nの外周と第2シール部13の内面との間に隙間Gが形成されることがある。ところが、針挿通弁1は、第1シール部12を有しているから、注入針Nの外周に密接している第1シール部12によって中空ボールの内部空間と中空ボールの外部との連通が遮断され、たとえ第2シール部に隙間Gが形成されても中空ボールの内部空間が閉塞される。このようにして、注入針Nの挿通時に中空ボールの内部空間に充填された空気が中空ボールの外部に漏出することを防止できる。この発明において、針挿通弁1がシリコーンゴムで形成されている場合には針通路11と注入針Nとの摩擦力が小さく注入針Nをスムーズに針通路11に挿通できるという効果を奏する。
【0044】
針通路11に挿通した注入針Nを抜脱するときは、注入針Nの挿通と逆の操作を行う。すなわち、針通路11に挿通された注入針Nを逆方向に後退すなわち針挿通弁1から後退させる。そうすると、注入針Nは第2シール部13及び第1シール部12から順次退却して、最終的に針挿通弁1から抜脱する。このとき、針挿通弁1がシリコーンゴムで形成されている場合には針通路11と注入針Nとの摩擦力が小さく注入針Nをスムーズに針通路11から抜脱できるという効果を奏する。
【0045】
注入針Nの抜脱過程において、注入針Nの外周と第2シール部13の内面との間に隙間Gが形成されても注入針Nが第2シール部13に挿通している場合には注入針Nは常に第1シール部12をも挿通しており、さらに、注入針Nが針挿通弁1から完全に抜脱されるまで第1シール部12は注入針Nの外周に密接しているから、注入針Nの抜脱過程において、中空ボールの内部空間に充填された空気が中空ボールの外部に漏出することを防止できる。
【0046】
注入針Nを針挿通弁2に挿通させるには針挿通弁1と同様にして針通路21に注入針Nを圧入する。このようにして注入針Nを針通路21に圧入すると、図6(a)に示されるように、注入針Nは、第1シール部12、第2シール部13及び導出穴22に順次進入して、その先端が中空ボールの内部空間に到達する。この注入針Nの挿通状態において、図6(a)に示されるように、第1シール部12は内面15が注入針Nの外周に密接している。一方、注入針の外径よりも大きな内径を有する導出穴22はその内面が注入針Nの外周に密接せず、また、第2シール部13は注入針Nの外周との間に隙間Gが形成されることがある。ところが、針挿通弁2は、第1シール部12によって中空ボールの内部空間と中空ボールの外部との連通が遮断され、注入針Nの挿通時に中空ボールの内部空間に充填された空気が中空ボールの外部に漏出することを防止できる。この発明において、針挿通弁2がシリコーンゴムで形成されている場合には針通路12と注入針Nとの摩擦力が小さく注入針Nをスムーズに針通路12に挿通できるという効果を奏する。
【0047】
針通路21に挿通した注入針Nを抜脱するには針挿通弁1と同様にして針通路21に挿通された注入針Nを逆方向に後退させる。このとき、針挿通弁2がシリコーンゴムで形成されている場合には注入針Nをスムーズに針通路21から抜脱できるという効果を奏する。注入針Nの抜脱過程において、針挿通弁1と同様に注入針Nが針挿通弁1から完全に抜脱されるまで第1シール部12は注入針Nの外周に密接しているから、注入針Nの抜脱過程において、針挿通弁1と同様に、中空ボールの内部空間に充填された空気が中空ボールの外部に漏出することを防止できる。
【0048】
そして、針挿通弁1及び2に注入針が挿通されていないときは、第1シール部12及び第3シール部22は開放しているが、第2シール部が閉塞しているから中空ボールの内部空間に充填された空気が中空ボールの外部に漏出することを防止できる。
【0049】
針挿通弁3及び4における、中空ボールの内部空間に充填された空気の外部への漏出防止は針挿通弁1及び2と基本的に同様である。ただし、針挿通弁3においては、案内穴35の形成された環状体32の内面33が注入針Nの外周に密接する点で異なる。したがって、この発明に係る針挿通弁は注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気漏れを防止できる。
【0050】
これに対して、従来の針挿通弁50は、図7(a)及び図7(b)に示されるように、注入針の外径よりも大きな内径を有する案内穴52と、スリット53と、注入針の外径よりも大きな内径を有する導出穴54とを、注入針の挿通方向に沿ってこの順で有する針通路51を備えている。この針挿通弁50は、針挿通弁1と基本的に同様の外径に成形され、すなわち、針挿通弁50は基体7及び鍔部8を有している。したがって、針挿通弁50に注入針Nを挿通すると、図7(c)に示されるように、案内穴52及び導出穴54の内面は注入針Nの外周に密接せず、注入針Nの外周と一文字状のスリット53の内面との間に隙間Gが形成されることがある。このように、針挿通弁50は、注入針Nを挿通すると中空ボールの内部空間が密閉されず、注入針Nから内部空間に空気を補充するかたわら内部空間に充填された空気がスリット53と注入針Nとの隙間Gから漏出してしまう。したがって、従来の針挿通弁50は特に注入針の挿通時に空気漏れが生じやすい。
【0051】
この発明に係る針挿通弁は、前記例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、針挿通弁1〜4はいずれも基体7と鍔部8とを備えているが、この発明において、針挿通弁は鍔部に代えて他の嵌合手段を備えていなくてもよく、基体のみを備えていてもよい。
【0052】
前記針挿通弁1、2及び4において、第1シール部12及び42は1つの有底穴に形成されているが、この発明において、第1シール部は複数有していてもよい。例えば、注入針Nの挿通方向の上流側から、第1シール部として機能するシール孔と、内径が拡径した連設部と、第1シール部として機能する有底穴とからなる2つの第1シール部を挙げることができる。
【0053】
前記針挿通弁3において、針通路31は、案内穴35における軸線方向略中央の内面に環状体の第1シール部32を1つ有しているが、この発明において、環状の第1シール部は案内穴の内面に複数形成されてもよく、また、案内穴における軸線方向中央以外の内面に形成されてもよい。
【0054】
この発明に係る中空ボールを図面を参酌して具体的に説明する。この発明に係る中空ボールの一例である中空ボール70は、図8に示されるように、球状に形成された球殻71と、この球殻71に設けられた弁装着部72と、この弁装着部72に装着された、この発明に係る針挿通弁、例えば、針挿通弁1とを有している。球殻71は、基層71aと補強層71bと表皮層71cとからなる3層構造になっている。基層71aは空気非透過性のゴム、例えば、ブチルゴム等で中空状に形成されている。補強層71bはナイロン等の繊維を基層71aの外周面上に巻き付けてなる層であり、表皮層71cは天然皮革又は合成皮革で形成されている。この球殻71は空気が充填される内部空間73を画成する。弁装着部72は、図8に示されるように、基層71aの内側に接着された管状の中空筐体であり、その内部に針挿通弁1を、鍔部8を嵌合凹部に嵌合させることで、径方向に圧縮して収納する収納空間72a(図8(b)参照。)を有している。
【0055】
この発明に係る中空ボールは、前記例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、球殻71は基層71aと補強層71bと表皮層71cとからなる3層構造を有しているが、この発明において、球殻は1層構造、2層構造又は4層以上の多層構造を有していてもよい。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
第1シール部12を有する針通路11を形成可能な金型に、シリコーンゴム前駆体を含有するシリコーンゴム組成物を注入し、成形温度175℃で6分成形した。この成形体に刃幅3mmのカッターで第1シール部12の底部14から面取部7cの端面まで一字状のスリット13を形成して、図1に示される針挿通弁1を製造した。この針挿通弁1のゴム硬度は40°で以下の寸法を有していた。
針挿通弁1:軸線長さ17.2mm
円筒部7a:外径6mm、軸線長さ7.0mm
円錐台部7b:最大外径6mm、最小外径5.3mm、軸線長さ6.3mm
面取部7c:最小外径4.6mm、軸線長さ0.7mm
鍔部8:外径9.6mm、軸線長さ3.2mm
第1シール部12:深さ7mm、内径1.8mm、底部14の曲率半径R1.8mm
第2シール部13:軸線長さ10.2mm、スリット幅3mm
【0057】
(比較例1)
案内穴52及び導出穴54を有する針通路51を形成可能な金型に前記シリコーンゴム組成物を注入し、成形温度175℃で6分成形した。この成形体に刃幅3mmのカッターで案内穴52のから導出穴54まで一字状のスリット53を形成して、図7に示される従来の針挿通弁50を製造した。この針挿通弁50のゴム硬度は40°で以下の寸法を有していた。
針挿通弁50:軸線長さ17.2mm
円筒部7a:外径6mm、軸線長さ7.0mm
円錐台部7b:最大外径6mm、最小外径5.3mm、軸線長さ6.3mm
面取部7c:最小外径4.6mm、軸線長さ0.7mm
鍔部8:外径9.6mm、軸線長さ3.2mm
案内穴52:深さ1mm、内径2.2mm、底部の曲率半径R1.8mm
スリット53:軸線長さ9mm、スリット幅3mm
導出穴54:深さ7.2mm、内径2.2mm、底部の曲率半径R2.2mm
【0058】
(空気漏れ試験)
針挿通弁1及び針挿通弁50それぞれを株式会社モルテン製のバレーボール(型番:MTV5SLEC 5号)に装着し、中空内部の内圧を300hPaに調整した。その後、バレーボールに装着された各針挿通弁1及び50に注入針N(外径2.5mm)が完全に貫通するまで挿通し、次いで、注入針Nを完全に針挿通弁から抜脱する挿脱操作を1サイクルとして、連続50サイクルの挿脱操作を繰り返し行った。50サイクルの挿脱操作が終了した後に「デジタル式ボール内圧計」(商品名「デジタル圧力計」、株式会社モルテン製)を針挿通弁2及び50に挿通して各中空ボールの内圧を測定した。その結果、針挿通弁1を装着した中空ボールの内圧は270〜280hPaであったのに対して、針挿通弁50を装着した中空ボールの内圧は100hPa以下であった。
【0059】
したがって、針挿通弁を備えていない図8に示される中空ボールを準備して、この弁装着部72に針挿通弁1を装着すると、注入針の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても空気が漏れにくい中空ボールを製造できる。
【符号の説明】
【0060】
1、2、3、4 針挿通弁
7 基体
8 鍔部
11、21、31、41、 針通路
12、42 第1シール部(有底穴)
13、43 第2シール部(スリット)
14 底部
15 内面
22 導出穴
32 第1シール部(環状体)
33 内面
34 底部
35 案内穴
44 案内孔
70 中空ボール
71 球殻
72 弁装着部
73 内部空間
N 注入針
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延在して空気注入用の注入針が挿通される針通路を有するゴム製の針挿通弁であって、
前記針通路は、前記注入針が挿通されていないときに開放し、前記注入針が挿通されたときに前記注入針の外周に密接して閉塞する第1シール部と、前記注入針が挿通されていないときに密接して閉塞する第2シール部とを、前記注入針の挿通方向に沿ってこの順で、有していることを特徴とする針挿通弁。
【請求項2】
前記第1シール部は、前記注入針の外径よりも小さな内径の内面を有していることを特徴とする請求項1に記載の針挿通弁。
【請求項3】
前記第1シール部は、前記軸線方向に沿って延設された有底穴であることを特徴とする請求項1又は2に記載の針挿通弁。
【請求項4】
前記第1シール部は、前記針通路の内側に突出する少なくとも1つの環状体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の針挿通弁。
【請求項5】
前記第2シール部は、スリットであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の針挿通弁。
【請求項6】
前記第2シール部は、前記第1シール部に連設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の針挿通弁。
【請求項7】
前記挿通方向の前記第1シール部よりも上流側に前記注入針を前記第1シール部に案内する案内孔を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の針挿通弁。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の針挿通弁を備えて成る中空ボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−143421(P2012−143421A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4510(P2011−4510)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)