説明

銅用腐食防止剤

【目的】 銅材質の腐食を少ない薬剤使用量にて長期にわたり確実に防止する。
【構成】 ポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとを含む銅用腐食防止剤。
【効果】 ポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとの併用による著しく優れた相乗効果で、従来の防食剤では効果が得られなかった水系に対しても、極めて良好な電位上昇抑制効果、即ち、腐食防止効果が得られ、少量の薬剤使用量にて、長期にわたり銅材質の腐食を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は銅用腐食防止剤に係り、特に、銅管等の銅材質部材の孔食発生の前段階としての電位上昇を抑制し、孔食の発生を有効に防止する銅用腐食防止剤に関する。
【0002】
【従来の技術】冷却水系等の各種水系に使用される銅又は銅合金よりなる配管、その他の部材では、銅(又は銅合金)の腐食ないしは腐食による孔食が大きな問題となっている。
【0003】従来、銅材質の腐食防止のために、水系に防止剤を添加する方法が多く採用されており、防食剤としてはトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾールが主に用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾールよりなる防食剤では、腐食を十分に防止し得ない場合があった。特に、地下水を補給水とする蓄熱冷温水系では、これらの防食剤を用いても、銅材質の腐食ないし孔食が発生し易い。
【0005】本発明は上記従来の問題点を解決し、銅材質の腐食を、少ない薬剤使用量にて長期にわたり確実に防止することができる銅用腐食防止剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の銅用腐食防止剤は、ポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとを含むことを特徴とする。
【0007】以下に本発明を詳細に説明する。
【0008】本発明の銅用腐食防止剤において、ポリエチレンポリアミンとしては、ペンタエチレンヘキサミン、ヘプタエチレンペンタミン、オクタエチレンヘプタミン、ヘキサエチレンテトラミンなどを用いることができる。
【0009】このようなポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとの使用割合には特に制限はないが、併用による優れた防食効果を得るためには、ポリエチレンポリアミン100重量部に対して、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを50〜200重量部とするのが好ましい。
【0010】このような本発明の銅用腐食防止剤は、ポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを予め混合した一液型のものであっても良く、各々別々に提供されたポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを現場にて混合使用ないし併用するものであっても良い。
【0011】また、本発明の銅用腐食防止剤の使用方法にも特に制限はなく、例えば、冷温水槽に予め一液に混合したものを投入添加しても良く、ポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとを各々別々に投入添加しても良い。
【0012】この場合、投入回数は被処理対象系によっても異なるが、本発明の銅用腐食防止剤は長期効果持続性に優れることから、3〜6カ月に1回の投入添加で十分な効果が得られる。また、銅材質部材の自然電位を測定し、その自然電位に基いて投入を制御することもできる。具体的には銅管の自然電位が150mVを超えた場合には、本発明の銅用腐食防止剤を投入添加するようにすれば良い。なお、本発明の銅用腐食防止剤の添加量についても、被処理対象水系や投入回数、投入方法によっても異なるが、通常の場合、被処理対象水系の水量1000mlに対して5〜500mgとするのが適当である。
【0013】
【作用】ポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとの併用による著しく優れた相乗効果で、従来の防食剤では効果が得られなかった水系に対しても、極めて良好な電位上昇抑制効果、即ち、腐食防止効果が得られ、少量の薬剤使用量にて、長期にわたり銅材質の腐食を確実に防止することができる。
【0014】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0015】比較例1表1に示す水質の地下水を、図1に示す試験装置で通水し、自然電位及び腐食の進行を調べた。
【0016】なお、図1において、1は水槽、2は流量計、3はりん脱酸銅管(直径16mm、長さ500mm、肉厚0.5mm)、4は電位差計、5はAg/AgCl比較電極、Pはポンプ、V1 ,V2 はバルブ、6は配管であり、水槽1内の水はポンプPにより、配管6、流量計2、配管7、りん脱酸銅管3及び配管8を経て室温にて0.1m/sの流速で循環させた。
【0017】
【表1】


【0018】その結果、表2に示す如く、試験開始後経時的に銅管の自然電位が上昇し、20日後には自然電位は銅管の孔食発生電位と言われている190mV(飽和Ag/AgCl電極)以上に達した。また120日後に銅管を半割りにしたところ、表3に示す如く、緑色の腐食生成物(X線回折の結果、塩基性炭酸銅が存在しており、化学分析の結果、珪酸銅も存在していることが判明)が存在し、腐食生成物の下部には無数の孔色が生じており、その最大孔食深さは0.31mmであることが判明した。
【0019】実施例1、比較例2〜4水槽内に表1に示す薬剤を表1に示す割合で添加したこと以外は比較例1と同様に通水試験を行なって、自然電位の経日変化を調べ、結果を表2に示した。
【0020】また、120日後のチューブ表面状態と最大孔食深さを調べ、結果を表3に示した。
【0021】表2,3より、本発明の銅用腐食防止剤によれば自然電位の上昇は抑制され、孔食は確実に防止されることが明らかである。
【0022】これに対して、従来の防食剤であるトリルトリアゾールを用いた比較例4では、防食剤を用いない比較例1の結果と殆ど変わらず、効果が全くない。
【0023】また、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとポリエチレンポリアミンとを各々単独で用いた比較例2,3と実施例1とを比較することにより、ポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとの併用により著しく優れた相乗効果が得られていることが明らかである。
【0024】
【表2】


【0025】
【表3】


【0026】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の銅用腐食防止剤によれば、少ない薬剤使用量にて、長期間、腐食ないし孔食に到る銅材質の電位上昇を抑制し、銅材質の腐食ないし孔食を有効に防止することができる。このため、銅管等の孔食による貫通、漏水事故を確実に防止することが可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例で用いた通水試験装置を示す系統図である。
【符号の説明】
1 水槽
2 流量計
3 りん脱酸銅管
4 電位差計
5 Ag/AgCl比較電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエチレンポリアミンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとを含む銅用腐食防止剤。

【図1】
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【公開番号】特開平6−88262
【公開日】平成6年(1994)3月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−240490
【出願日】平成4年(1992)9月9日
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)