説明

鋼管杭の連結構造

【課題】回転力だけでなく曲げ力に対しても有効に対抗し得る無溶接方式の鋼管杭の連結構造を提供する。
【解決手段】複数の円弧状部材20を介して一対の鋼管杭10が連結されてなる鋼管杭の連結構造である。各鋼管杭10は、鋼管杭本体11と、鋼管杭本体11の先端部に取り付けられている端部部材12と、を備える。端部部材12の端部には、周方向に間隔をおいて複数の凸部を設け、凸部の間に複数の凹部を設ける。端部部材12を周方向に均等に分割した各部分に凹凸部を複数個ずつ配置する。二つの鋼管杭10の端部部材12の凹凸部同士を嵌合させ、両端部部材12の凹凸部全体を外側から覆うように円弧状部材20を取り付け、円弧状部材20の止め孔を介して雄ネジ部材30を両端部部材12の雌ネジ部に螺入して円弧状部材20を両端部部材12に締結することにより、両端部部材12を密着固定して鋼管杭10同士を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭基礎工事に用いられる鋼管杭の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築基礎工事等で地中に埋め込まれる鋼管杭を長手方向に接続するための技術が種々提案されている。その一つとして、鋼管杭を現場溶接により接合する方法が提案されているが、このように溶接を行う方法は高度な技能を必要としたり天候の影響を受けたりすることから、無溶接方式の鋼管杭の接合構造が検討されている。
【0003】
また、現在においては、鋼管杭に回転力を与えることにより先端のスクリュー状の羽根を地盤にねじ込む施工方法が提案されていることに鑑み、回転力に対抗し得る鋼管杭の接合構造の開発が進められている。
【0004】
このような背景の下、近年においては、連結する二つの鋼管杭の各端部に複数の凹凸部を形成し、これら凹凸部同士を嵌合させた状態で、周方向に沿って隣接する凸部同士を連結部材で連結する鋼管杭の連結構造が提案されている(特許文献1参照)。かかる連結構造を採用すると、二つの鋼管杭の各端部に形成した凹凸部同士を嵌合させた状態で両鋼管杭を連結しているので、回転力に良好に対抗し得る、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−52333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記した特許文献1に記載された連結構造は、連結する二つの鋼管杭の各端部の凹凸部同士を嵌合させた状態で、周方向に沿って隣接する凸部同士を、細い帯状の連結部材で単に連結するものであるため、連結した鋼管杭に大きい曲げ力が作用した場合に充分に対抗できない虞があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、回転力だけでなく曲げ力に対しても有効に対抗し得る無溶接方式の鋼管杭の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る連結構造は、連結部材を介して一対の鋼管杭が連結されてなる鋼管杭の連結構造であって、各鋼管杭は、筒状の鋼管杭本体と、鋼管杭本体の先端部に取り付けられている環状の端部部材と、を備えている。端部部材の鋼管杭本体と反対側の端部には、鋼管杭本体の軸方向に突出するように周方向に間隔をおいて複数の凸部が設けられているとともに、これら複数の凸部の間に複数の凹部が設けられており、凹凸部は、端部部材を周方向に均等に分割(例えば3分割)した各部分に複数個(例えば2個又は3個)ずつ配置されており、周方向に均等に分割した各部分の周方向端部に配置されている凸部には雌ネジ部が設けられている。また、連結部材は、連結される二つの鋼管杭の端部部材の凹凸部同士を嵌合させた状態において両端部部材の凹凸部全体を外側から覆うように構成された複数の円弧状部材を有し、この円弧状部材の個数は、端部部材の周方向に均等に分割した各部分の数(例えば3個)に一致する。円弧状部材には、端部部材の雌ネジ部に対応できる位置に配置された止め孔が設けられている。そして、連結される二つの鋼管杭の端部部材の凹凸部同士を嵌合させた状態で、両端部部材の凹凸部全体を外側から覆うように円弧状部材が取り付けられ、円弧状部材に設けられた止め孔を介して雄ネジ部材が両端部部材の雌ネジ部に螺入されて円弧状部材が両端部部材に締結されることにより、両端部部材が密着固定され鋼管杭同士が連結されてなるものである。
【0009】
かかる構成を採用すると、連結される二つの鋼管杭の端部部材の凹凸部同士を嵌合させた状態で、両端部部材の凹凸部全体を外側から覆うように円弧状部材を取り付け、円弧状部材に設けられた止め孔を介して雄ネジ部材を両端部部材の雌ネジ部に螺入して円弧状部材を両端部部材に締結することにより、両端部部材を密着固定して鋼管杭同士を連結することができる。この際、両端部部材の凹凸部同士を嵌合させているので、連結された鋼管杭に回転力が作用した場合においても、この回転力に対して有効に対抗することができる。また、両端部部材の凹凸部全体を外側から円弧状部材で覆った状態で円弧状部材を両端部部材に締結しているので、連結された鋼管杭に曲げ力が作用した場合においても、この曲げ力に対して有効に対抗することができる。
【0010】
本発明に係る連結構造において、端部部材には、凹凸部よりも鋼管杭本体に近い部位の外周面に環状凹部を設け、円弧状部材には、嵌合させた両端部部材の凹凸部全体を外側から覆う際に両端部部材の環状凹部に嵌め込まれる一対の環状凸部を設けることが好ましい。
【0011】
かかる構成を採用すると、嵌合させた両端部部材の凹凸部全体を円弧状部材で外側から覆う際に、両端部部材の環状凹部に円弧状部材の一対の環状凸部を嵌め込むことができる。従って、一方の端部部材の環状凹部と他方の端部部材の環状凹部との間の領域を、円弧状部材の一対の環状凸部で外側から挟み込むようにして両端部部材に円弧状部材を取り付けることができるので、両端部部材同士をより強固に密着固定することができる。
【0012】
また、本発明に係る連結構造において、端部部材の雌ネジ部が設けられている凸部の周方向長さを、雌ネジ部が設けられていない凸部の周方向長さよりも長く設定することが好ましい。
【0013】
かかる構成を採用すると、端部部材の雌ネジ部が設けられている凸部(端部部材を周方向に均等に分割した各部分の周方向端部に配置されている凸部)の周方向長さを、雌ネジ部が設けられていない凸部(端部部材を周方向に均等に分割した各部分の周方向中央部に配置されている凸部)の周方向長さよりも長く設定するので、雌ネジ部が設けられている凸部の強度を確保することができる。
【0014】
また、本発明に係る連結構造において、連結される二つの鋼管杭の端部部材の凹凸部同士を嵌合させた状態において両端部部材の凸部の内周面に密着するように配置される内側環状部材を備えることもできる。
【0015】
かかる構成を採用すると、連結される二つの鋼管杭の端部部材の凹凸部同士を嵌合させた状態において、両端部部材の凸部の内周面に密着するように内側環状部材が配置されるので、連結された鋼管杭に曲げ力が作用した場合においても、この曲げ力に対してより一層有効に対抗することができる。
【0016】
また、本発明に係る連結構造において、端部部材の凸部の内周面に、内側環状部材を嵌め込むための環状溝を設けることが好ましい。
【0017】
かかる構成を採用すると、端部部材の凸部の内周面に設けられた環状溝に内側環状部材を嵌め込むことができるので、内側環状部材の位置ずれを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転力だけでなく曲げ力に対しても有効に対抗し得る無溶接方式の鋼管杭の連結構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る鋼管杭の連結構造の斜視図である。
【図2】図1に示す連結構造の縦断面図である。
【図3】図2のIII部分の分解拡大断面図であり、(A)は嵌合状態にある二つの鋼管杭を示す断面図、(B)は連結部材を示す断面図、(C)は雄ネジを示す図である。
【図4】図2のIV-IV部分の断面図である。
【図5】図1に示す連結構造で使用される連結部材を示すものであり、(A)は正面図、(B)は(A)のVB-VB部分の断面図、(C)は底面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る鋼管杭の連結構造の縦断面図である。
【図7】図6のVII-VII部分の断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る鋼管杭の連結構造の縦断面図である。
【図9】図8のIX-IX部分の断面図である。
【図10】図8に示す連結構造で使用される連結部材を示すものであり、(A)は正面図、(B)は(A)のXB-XB部分の断面図、(C)は底面図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る鋼管杭の連結構造の縦断面図である。
【図12】図12のXII-XII部分の断面図である。
【図13】図11に示す連結構造で使用される連結部材を示すものであり、(A)は正面図、(B)は(A)のXIIIB-XIIIB部分の断面図、(C)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る鋼管杭の連結構造について説明する。
【0021】
<第一実施形態>
最初に、図1〜図5を用いて、本発明の第一実施形態に係る連結構造について説明することとする。本実施形態に係る連結構造は、図1に示すように、複数の円弧状部材20(連結部材)及びボルト30(雄ネジ部材)を介して一対の鋼管杭10が連結されてなる構造である。連結される二つの鋼管杭10は、同一の構造・形状を有している。
【0022】
まず、連結される鋼管杭10の構成について説明する。
【0023】
鋼管杭10は、図1及び図2に示す容易、鋼管杭本体11と、鋼管杭本体11の先端部に取り付けられている端部部材12と、を備えている。鋼管杭本体11は、所定の長さ及び径を有する金属製の中空筒体である。鋼管杭本体11の先端部には、図2に示すように、端部部材12の一方の端部が工場溶接により固着されている。
【0024】
端部部材12は、金属製の環状部材であり、その他方の端部(鋼管杭本体11と反対側の端部)には、図1に示すように、鋼管杭本体11の軸方向に突出するように周方向に間隔をおいて複数の凸部12aが設けられており、これら複数の凸部12aの間には複数の凹部12bが設けられている。そして、一方の鋼管杭10の端部部材12の凸部12aは、他方の鋼管杭10の端部部材12bの凹部12bに嵌め込むことができるようになっている。なお、以下の説明においては、図1の紙面上方に配置された鋼管杭10の凹凸部と下方に配置された鋼管杭10の凹凸部とを区別する際に、上方の鋼管杭10の凸部及び凹部を各々「12aU」及び「12bU」と称し、下方の鋼管杭10の凸部及び凹部を各々「12aD」及び「12bD」と称することとする。
【0025】
本実施形態における凸部12a及び凹部12bは、図4に示すように、端部部材12を周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)に2個ずつ配置されている。よって、各鋼管杭10の端部部材12は、凸部12a及び凹部12bを6個ずつ有することとなる。例えば、上方の鋼管杭10の端部部材12の部分12Aには、2個の凸部12aUと、2個の凹部12bUと、が配置されている。また、下方の鋼管杭10の端部部材12の部分12Aにも、2個の凸部12aDと、2個の凹部12bDと、が配置されている。そして、上方の鋼管杭10の2個の凹部12bUに、下方の鋼管杭10の2個の凸部12aDが各々嵌め込まれている。
【0026】
また、図1、図2、図3(A)、図4に示すように、周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)の周方向端部に配置されている凸部12aU(12aD)には、雌ネジ部12cが設けられている。そして、図4に示すように、雌ネジ部12cが設けられている凸部12aU(12aD)の周方向長さは、雌ネジ部12cが設けられていない凸部の周方向長さよりも長く設定されている。これにより、雌ネジ部12cが設けられている凸部12aU(12aD)の強度を確保することができる。
【0027】
さらに、端部部材12には、図1、図2及び図3(A)に示すように、凸部12a及び凹部12bよりも鋼管杭本体11に近い部位の外周面に環状凹部12dが設けられている。この環状凹部12dには、後述する円弧状部材20の環状凸部22が嵌め込まれることとなる。また、端部部材12の凸部12aの内周面には、図3(A)に示すように、後述する内側環状部材40を嵌め込むための環状溝12eが設けられている。この環状溝12eに内側環状部材40を嵌め込むことにより、内側環状部材40の位置ずれを防止することができる。
【0028】
次に、一対の鋼管杭10を連結する円弧状部材20(連結部材)の構成について説明する。
【0029】
円弧状部材20は、図1及び図5(C)に示すように、平面視円弧状に形成された金属製の部材である。円弧状部材20は、図1及び図2に示すように、連結される二つの鋼管杭10の端部部材12の凹凸部同士を嵌合させた状態において両端部部材12の凹凸部全体を外側から覆うように構成されている。円弧状部材20の個数は、端部部材12の周方向に均等に分割した各部分(12A、12B、12C)の数に一致するようにされている。本実施形態においては、3個の円弧状部材20を採用している。
【0030】
円弧状部材20には、端部部材12の雌ネジ部12cに対応できる位置に配置された止め孔21が設けられている。本実施形態においては、端部部材12を周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)に2個の雌ネジ部12cが設けられることから、各円弧状部材20には2個の止め孔21が設けられている。また、円弧状部材20の外側面の止め孔21周囲部分には、図5に示すように、所定深さの座繰り部21aが形成されている。ボルト30を止め孔21に挿入して端部部材12の雌ネジ部12cに螺入する際には、図3(C)に示されるワッシャ31とボルト30の頭部とを座繰り部21aに収納して、安定した締結状態を維持させるようにする。
【0031】
また、円弧状部材20には、図1、図2、図3(B)及び図5に示すように、嵌合させた両端部部材12の凹凸部全体を外側から覆う際に両端部部材12の環状凹部12dに嵌め込まれる一対の環状凸部22が設けられている。両端部部材12の環状凹部12dに、円弧状部材20の一対の環状凸部22を嵌め込むことにより、一方の端部部材12の環状凹部12dと他方の端部部材12の環状凹部12dとの間の領域を、円弧状部材20の一対の環状凸部22で外側から挟み込むことができる。これにより、両端部部材12同士をより強固に密着固定することができる。
【0032】
次に、曲げ力への対抗力を向上させる内側環状部材40について説明する。
【0033】
本実施形態においては、図2、図3(A)及び図4に示すように、連結される二つの鋼管杭10の端部部材12の凹凸部同士を嵌合させた状態において両端部部材12の凸部12aの内周面に密着するように配置される内側環状部材40を採用している。内側環状部材40は、所定の厚さ及び幅を有する金属製の環状部材である。連結される二つの鋼管杭10の端部部材12の凹凸部同士を嵌合させた状態において両端部部材12の凸部12aの内周面に密着するように内側環状部材40が配置されるので、連結された鋼管杭10に曲げ力が作用した場合においても、この曲げ力に対して有効に対抗することができる。内側環状部材40は、図3(A)に示すように、端部部材12の凸部12aの内周面に形成された環状溝12eに嵌め込まれた状態で配置される。
【0034】
なお、ボルト30は、図1〜図4に示すように円弧状部材20の止め孔21に挿通されるとともに、端部部材12の雌ネジ部12cに螺入されるものである。ボルト30が端部部材12の雌ネジ12cに螺入されることにより、円弧状部材20が端部部材12に締結される。ボルト30と円弧状部材20との間にはワッシャ31が配置される。
【0035】
続いて、本実施形態に係る連結構造を得る手順について説明する。
【0036】
まず、図1及び図2に示すように、一方の鋼管杭10の端部部材12の凹部12bに、他方の鋼管杭10の端部部材12の凸部12aを嵌め込み(連結される二つの鋼管杭10の凹凸部同士を嵌合させ)、両端部部材12を密着させる。この際、図2及び図3に示すように、両端部部材12の凸部12aの内周面に形成された環状溝12eに、内側環状部材40を嵌め込んでおく。
【0037】
次いで、図1及び図2に示すように、両端部部材12の凹凸部全体を外側から覆うように3個の円弧状部材20を取り付け、各円弧状部材20に設けられた止め孔21にワッシャ31を装着するとともにボルト30を挿通し、ボルト30を両端部部材12の雌ネジ部12cに螺入する。これにより、各円弧状部材20が両端部部材12に締結されて両端部部材12が密着固定され、一対の鋼管杭10同士が連結されることとなる。
【0038】
以上説明した実施形態に係る連結構造においては、連結される二つの鋼管杭10の端部部材12の凹凸部同士を嵌合させた状態で、両端部部材12の凹凸部全体を外側から覆うように円弧状部材20を取り付け、円弧状部材20に設けられた止め孔21を介してボルト30を両端部部材12の雌ネジ部12cに螺入して円弧状部材20を両端部部材12に締結することにより、両端部部材12を密着固定して鋼管杭10同士を連結することができる。この際、両端部部材12の凹凸部同士を嵌合させているので、連結された鋼管杭10に回転力が作用した場合においても、この回転力に対して有効に対抗することができる。また、両端部部材12の凹凸部全体を外側から円弧状部材20で覆った状態で円弧状部材20を両端部部材12に締結しているので、連結された鋼管杭10に曲げ力が作用した場合においても、この曲げ力に対して有効に対抗することができる。
【0039】
また、以上説明した実施形態に係る連結構造においては、嵌合させた両端部部材12の凹凸部全体を円弧状部材20で外側から覆う際に、両端部部材12の環状凹部12dに円弧状部材20の一対の環状凸部22を嵌め込むことができる。従って、一方の端部部材12の環状凹部12dと他方の端部部材12の環状凹部12dとの間の領域を、円弧状部材20の一対の環状凸部22で外側から挟み込むようにして両端部部材12に円弧状部材20を取り付けることができるので、両端部部材12同士をより強固に密着固定することができる。
【0040】
また、以上説明した実施形態に係る連結構造においては、端部部材12の雌ネジ部12dが設けられている凸部(端部部材12を周方向に均等に分割した各部分の周方向端部に配置されている凸部)12aU(12aD)の周方向長さを、雌ネジ部12dが設けられていない凸部の周方向長さよりも長く設定しているので、雌ネジ部12dが設けられている凸部12aU(12aD)の強度を確保することができる。
【0041】
また、以上説明した実施形態に係る連結構造においては、連結される二つの鋼管杭10の端部部材12の凹凸部同士を嵌合させた状態において、両端部部材12の凸部12aの内周面に密着するように内側環状部材40が配置されるので、連結された鋼管杭10に曲げ力が作用した場合においても、この曲げ力に対してより一層有効に対抗することができる。また、端部部材12の凸部12aの内周面に設けられた環状溝12eに内側環状部材40を嵌め込むことができるので、内側環状部材40の位置ずれを防止することができる。
【0042】
<第二実施形態>
続いて、図6及び図7を用いて、本発明の第二実施形態に係る連結構造について説明する。第二実施形態に係る連結構造は、第一実施形態における鋼管杭の端部部材の凹凸部の位置及び個数を変更し、これに併せて円弧状部材の止め孔の位置を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。このため、第二実施形態においては、第一実施形態と異なる構成を中心に説明することとし、重複する構成については詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施形態における凸部12a及び凹部12bは、図7に示すように、端部部材12を周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)に3個ずつ配置されている。よって、各鋼管杭10の端部部材12は、凸部12a及び凹部12bを9個ずつ有することとなる。例えば、上方の鋼管杭10の端部部材12の部分12Aには、3個の凸部12aUと、3個の凹部12bUと、が配置されている。また、下方の鋼管杭10の端部部材12の部分12Aにも、3個の凸部12aDと、3個の凹部12bDと、が配置されている。そして、上方の鋼管杭10の3個の凹部12bUに、下方の鋼管杭10の3個の凸部12aDが各々嵌め込まれている。
【0044】
本実施形態においても、図6及び図7に示すように、周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)の周方向端部に配置されている凸部12aU(12aD)には、雌ネジ部12cが設けられている。そして、図7に示すように、雌ネジ部12cが設けられている凸部12aU(12aD)の周方向長さは、雌ネジ部12cが設けられていない凸部の周方向長さよりも長く設定されている。これにより、雌ネジ部12cが設けられている凸部12aU(12aD)の強度を確保することができる。
【0045】
本実施形態における円弧状部材20は、第一実施形態とほぼ共通の構成を有している。但し、端部部材12の雌ネジ部12cの位置が若干変更されたことに対応して、各円弧状部材20において、2個の止め孔21の各々が第一実施形態よりも周方向端部に近い位置に配置されている。
【0046】
以上説明した実施形態に係る連結構造においても、第一実施形態に係る連結構造と同様の作用効果を奏することができる。
【0047】
<第三実施形態>
続いて、図8〜図10を用いて、本発明の第三実施形態に係る連結構造について説明する。第三実施形態に係る連結構造は、第一実施形態における鋼管杭の端部部材の凹凸部の位置及び個数を変更するとともに雌ネジ部の個数を変更し、これに併せて円弧状部材の止め孔の位置及び個数を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。このため、本実施形態においては、第一実施形態と異なる構成を中心に説明することとし、重複する構成については詳細な説明を省略する。
【0048】
本実施形態における凸部12a及び凹部12bは、図9に示すように、端部部材12を周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)に3個ずつ配置されている。よって、各鋼管杭10の端部部材12は、凸部12a及び凹部12bを9個ずつ有することとなる。例えば、上方の鋼管杭10の端部部材12の部分12Aには、3個の凸部12aUと、3個の凹部12bUと、が配置されている。また、下方の鋼管杭10の端部部材12の部分12Aにも、3個の凸部12aDと、3個の凹部12bDと、が配置されている。そして、上方の鋼管杭10の3個の凹部12bUに、下方の鋼管杭10の3個の凸部12aDが各々嵌め込まれている。
【0049】
また、本実施形態においては、図8及び図9に示すように、周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)の周方向端部に配置されている凸部12aU(12aD)に雌ネジ部12cが設けられており、さらに、この周方向端部の凸部に隣接する凸部12aU(12aD)にも雌ネジ部12cが設けられている。そして、図9に示すように、雌ネジ部12cが設けられている各凸部12aU(12aD)の周方向長さは、雌ネジ部12cが設けられていない凸部の周方向長さよりも長く設定されている。これにより、雌ネジ部12cが設けられている凸部12aU(12aD)の強度を確保することができる。
【0050】
本実施形態における円弧状部材20は、第一実施形態とほぼ共通の構成を有している。但し、端部部材12の雌ネジ部12cの個数が変更されたことに対応して、図10に示すように、各円弧状部材20に4個の止め孔21が設けられている。また、各円弧状部材20の周方向端部は、斜めに切り欠かれている。
【0051】
以上説明した実施形態に係る連結構造においても、第一実施形態に係る連結構造と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
<第四実施形態>
続いて、図11〜図13を用いて、本発明の第四実施形態に係る連結構造について説明する。第四実施形態に係る連結構造は、第一実施形態における鋼管杭の端部部材の凹凸部の位置を変更するとともに雌ネジ部の個数を変更し、これに併せて円弧状部材の止め孔の位置及び個数を変更し、かつ、内側環状部材を省いたものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。このため、本実施形態においては、第一実施形態と異なる構成を中心に説明することとし、重複する構成については詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態における凸部12a及び凹部12bは、図12に示すように、第一実施形態と同様に端部部材12を周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)に2個ずつ配置されている。但し、本実施形態においては、図11及び図12に示すように、全ての凸部12aU(12aD)に雌ネジ部12cが設けられており、全ての凸部12aU(12aD)の周方向長さは同一とされている。
【0054】
本実施形態における円弧状部材20は、第一実施形態とほぼ共通の構成を有している。但し、端部部材12の雌ネジ部12cの個数が変更されたことに対応して、図13に示すように、各円弧状部材20に4個の止め孔21が設けられている。また、各円弧状部材20の周方向端部は、斜めに切り欠かれている。
【0055】
また、本実施形態においては、第一実施形態で採用していた内側環状部材40を省いており、これに伴い、端部部材12の凸部12aの内周面に環状溝を設ける手間を省くこととしている。
【0056】
以上説明した実施形態に係る連結構造においても、第一実施形態に係る連結構造とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
なお、以上説明した各実施形態においては、各鋼管杭10の端部部材12を周方向に均等に3分割し、これに対応させて3個の円弧状部材20を採用した例を示したが、周方向の分割態様や円弧状部材20の個数はこれに限られるものではない。例えば、各鋼管杭の端部部材を周方向に均等に2分割(又は4分割)し、これに対応させて2個(又は4個)の円弧状部材を採用することもできる。この際においても、端部部材12を周方向に均等に2分割(又は4分割)した各部分に、凸部及び凹部を複数個ずつ(例えば2個又は3個ずつ)配置することができる。
【0058】
また、以上説明した各実施形態においては、各鋼管杭10の端部部材12を周方向に均等に3分割した各部分(12A、12B、12C)に、凸部12a及び凹部12bを2個又は3個ずつ配置した例を示したが、凸部及び凹部の個数をさらに増やす(例えば4個ずつとする)こともできる。
【0059】
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、この実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0060】
10…鋼管杭
11…鋼管杭本体
12…端部部材
12a・12aD・12aU…凸部
12b・12bD・12bU…凹部
12c…雌ネジ部
12d…環状凹部
12e…環状溝
20…円弧状部材(連結部材)
21…止め孔
22…環状凸部
30…ボルト(雄ネジ部材)
40…内側環状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部材を介して一対の鋼管杭が連結されてなる鋼管杭の連結構造であって、
前記各鋼管杭は、筒状の鋼管杭本体と、前記鋼管杭本体の先端部に取り付けられている環状の端部部材と、を備え、
前記端部部材の前記鋼管杭本体と反対側の端部には、前記鋼管杭本体の軸方向に突出するように周方向に間隔をおいて複数の凸部が設けられているとともに、これら複数の凸部の間に複数の凹部が設けられており、前記凹凸部は、前記端部部材を周方向に均等に分割した各部分に複数個ずつ配置されており、前記周方向に均等に分割した各部分の周方向端部に配置されている前記凸部には雌ネジ部が設けられており、
前記連結部材は、連結される二つの前記鋼管杭の前記端部部材の前記凹凸部同士を嵌合させた状態において前記両端部部材の前記凹凸部全体を外側から覆うように構成された複数の円弧状部材を有し、前記円弧状部材の個数は、前記端部部材の前記周方向に均等に分割した各部分の数に一致するようにされ、前記円弧状部材には、前記端部部材の前記雌ネジ部に対応できる位置に配置された止め孔が設けられており、
連結される二つの前記鋼管杭の前記端部部材の前記凹凸部同士を嵌合させた状態で、前記両端部部材の前記凹凸部全体を外側から覆うように前記円弧状部材が取り付けられ、前記円弧状部材に設けられた前記止め孔を介して雄ネジ部材が前記両端部部材の前記雌ネジ部に螺入されて前記円弧状部材が前記両端部部材に締結されることにより、前記両端部部材が密着固定され前記鋼管杭同士が連結されてなる、
鋼管杭の連結構造。
【請求項2】
前記端部部材には、前記凹凸部よりも前記鋼管杭本体に近い部位の外周面に環状凹部が設けられており、
前記円弧状部材には、嵌合させた前記両端部部材の前記凹凸部全体を外側から覆う際に前記両端部部材の前記環状凹部に嵌め込まれる一対の環状凸部が設けられている、
請求項1に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項3】
前記端部部材の前記雌ネジ部が設けられている前記凸部の周方向長さが、前記雌ネジ部が設けられていない前記凸部の周方向長さよりも長く設定されている、
請求項1又は2に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項4】
前記凹凸部は、前記端部部材を周方向に均等に3分割した各部分に複数個ずつ配置されており、
前記円弧状部材は、3個設けられている、
請求項1から3の何れか一項に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項5】
前記凹凸部は、前記端部部材を周方向に均等に3分割した各部分に2個ずつ配置されている、
請求項4に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項6】
前記凹凸部は、前記端部部材を周方向に均等に3分割した各部分に3個ずつ配置されている、
請求項4に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項7】
連結される二つの前記鋼管杭の前記端部部材の前記凹凸部同士を嵌合させた状態において前記両端部部材の前記凸部の内周面に密着するように配置される内側環状部材を備える、
請求項1から6の何れか一項に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項8】
前記端部部材の前記凸部の内周面には、前記内側環状部材を嵌め込むための環状溝が設けられている、
請求項7に記載の鋼管杭の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−40536(P2013−40536A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179784(P2011−179784)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【出願人】(595081013)株式会社小島製作所 (4)
【Fターム(参考)】