説明

鋼管柱基部構造体

【課題】 本発明は、鋼管柱基部構造体に関し、鋼管柱の基部における破断・折損時の鋼管柱の倒壊を防止する。
【解決手段】 鋼管柱の基部に内挿管を内包させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立設する鋼管柱の基部構造体に関する。
特に、街路や高架道路などの道路の路傍、または、公園などに設置し、照明用および標識用やカメラ、マイクロフォン、スピーカ等の設備設置用等として適用される鋼管柱の基部構造体に関し、風力、交通振動などによって鋼管柱に作用する横方向の応力により鋼管柱に亀裂、破断が生じた場合でも鋼管柱の倒壊防止を可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
鋼管柱は、数メートルの高さ位置に照明灯や標識等の比較的軽量の設備を保持するものであり、一般用の建築用構造部材とは異なり、上方からの大きな荷重が掛からないため、たとえば(社)建設電気技術協会の道路照明器材仕様書等の基準に定められるように、肉厚3〜6mm程度のものが使用されている。また、その外径は概ね5〜50cm程度とされる。
また、鋼管柱は風雨に曝される場所で使用されるため、その基部には、風力、交通振動などによって横方向への繰り返しの応力が加えられる。そして、そのような荷重が掛かったときに、その基部において折損し、鋼管柱が倒壊することのないように十分な強度を保持できる設計がなされている。また、一般的に、鋼管柱の外径は1/100 〜1/75程度のテーパが設けられ、先端を先細りとしたテーパ管となっている。
【0003】
従来の鋼管柱の基部構造体の代表的な例を図2に示す。
図2に示すように、鋼管柱1の下端部には、鋼管柱1を支持するベースプレート5が設けられる。ここで、鋼管柱1は、例えば、ベースプレート5に穿設された穴に嵌挿され、2bで示す箇所を円周方向に溶接して接合される。ただし、鋼管柱1とベースプレート5の接合方法としては、鋼管柱1の底部とベースプレート5の上面を溶接接合するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0004】
また、ベースプレート5には、設置・固定のため所要数のアンカー取付穴6が穿設されている。
さらに、ベースプレート5から鋼管柱1の下端部にかけては、縦方向に所要数のリブ4が配設されている。このリブ4は、鋼管柱1にかかる四方からの荷重に耐える構造とする必要があることから、鋼管柱の円周方向等間隔に少なくとも4個、場合によっては6ないし8個設けられる。なお、リブ4と、鋼管柱1およびベースプレート5とは、溶接接合されるのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、風力や交通振動などによって常時、繰り返してかかる横荷重のため、長年の使用によって、鋼管柱の基部には疲労が蓄積されることになる。
特に、リブを有する場合には、リブの上端溶接部(図2に示す2aの位置)に疲労に基づく亀裂が発生し、場合によっては破断して鋼管柱が倒壊するという問題があった。これは、鋼管柱に横荷重がかかると、それによって発生する応力が、この上端の溶接部2aに集中し、リブ上端部の隅肉溶接止端部である溶接部2aが応力集中部3ともなってしまうためである。
【0006】
本発明は、上述のように亀裂が発生し、破断が生じた場合であっても、鋼管柱が倒壊することを防止し、補修するまでの期間、応急的に、照明、標識などを所定の位置に保持し、鋼管柱の機能を維持可能とする鋼管柱基部構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、立設する鋼管柱の基部を構成する鋼管柱基部構造体であって、テーパ管である鋼管柱およびベースプレートとリブとを溶接接合して基部において倒壊しないようにした前記鋼管柱の基部内に、外径が前記鋼管柱の最下端部の内径よりも細く、長さが前記リブの高さ以上で、前記鋼管柱が基部において倒壊しそうな状態になつたときつっかえ棒となる内挿管を内包したことを特徴とする鋼管柱基部構造体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、鋼管柱の基部において鋼管柱が破断し、折損した場合にも、鋼管柱が直ちに倒壊することがなくなり、応急的に鋼管柱を自立保持できるようになった。その結果、鋼管柱倒壊による周辺設備の破損事故や交通障害となるトラブルを解消することができ、補修するまでの期間、応急的に、照明、標識などの設備を所定の位置に保持することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な実施の形態を図1に基づき説明する。なお、すでに図2において説明した同一部材には同一の番号を付し、ここでの説明を省略する。
図1(a)は、本発明の鋼管柱基部構造体の部分断面図であり、図の左半分を断面図として示している。また、図1(b)は図1(a)のA−A部を切断して示したA−A視平面図である。
【0010】
本発明は、鋼管柱1の下端部近傍の内部に内挿管10を内包することを特徴とする。すなわち、本発明の鋼管柱基部構造体は、少なくとも、鋼管柱1と、鋼管柱1の下端部近傍の内部に内包する内挿管10とから構成される。
鋼管柱1の下端部近傍である基部において、横方向に繰り返し加わる外力によって疲労破壊が発生し、亀裂や断裂等の破断をおこして鋼管柱が倒壊しそうな状態となったとき、あらかじめ内包させておいた内挿管10がつっかえ棒となり、鋼管柱1の破断部分の上部および下部の内面とそれぞれ競った状態となって、破断した鋼管柱の上部が完全に倒壊することを防止するものである。
【0011】
このような状態となった鋼管柱は直ちに補修、交換を行うことが必要であるが、その準備の間には、鋼管柱の倒壊を確実に防止することができるため、周囲の施設の毀損や交通の妨害につながることなく、照明柱、標識柱等としての機能を応急的に維持することができる。
ここで、内挿管10は、ボルト7で鋼管柱1と連結することを好適とする。図1では、2本のボルト7で内挿管10と鋼管柱1を連結した例を示しているが、1〜2本程度で連結すれば良い。このボルト7は、据え付けるまでの搬送時等に内挿管10を鋼管柱1の内部に連結して保持するものであり、また、据え付け後に、内挿管が鋼管柱内で振動し、内面を傷つけることを防止するために固定しておくものである。そのため、特に強度を必要としない。また、特に問題なければ、内挿管をボルト止めせず、単に鋼管柱内に内包しておくだけでも良い。
【0012】
鋼管柱は、一般にテーパ管とされるが、内挿管としては、通常、ストレート管を用いる。内挿管の外径は、鋼管柱の最下端部の内径dより細く、0.9 d〜0.98d程度とすることを好適とする。内挿管の外径を0.9 d未満とすると、鋼管柱の断裂位置が比較的低い位置であったときに、内挿管の外周面と鋼管柱の断裂部分の上部および下部の内周面との競りがうまく行われず、倒壊防止ができない場合がある。一方、0.98dを超えるような大きい外径の内挿管を使用すると、鋼管柱の振動によって常時鋼管柱内面と内挿管とが接触する状態となり、鋼管柱内面の損傷が生じやすくなるため好ましくない。
【0013】
一方、内挿管の長さは、3d〜10d程度とすることが好ましい。
内挿管の長さを3d未満とすると、鋼管柱の基部近傍に断裂が生じた場合に抜けてしまって倒壊する可能性があり、好ましくない。また、10dを超える長さの内挿管を内包しても倒壊を防ぐ効果に変化はないため、コスト面からも不必要に長くすることはない。
なお、図3に示すような壁12に架台13を介してフランジ11によって支持される鋼管柱1においても、鋼管柱に底板を設けて内挿管10を内包することにより同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の鋼管柱基部構造体の一例を示す部分断面図である。
【図2】従来の鋼管柱基部構造体の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の鋼管柱基部構造体の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0015】
1 鋼管柱
2a、2b 溶接部
3 応力集中部
4 リブ
5 ベースプレート
6 アンカー取付穴
7 ボルト
10 内挿管(補強管)
11 フランジ
12 壁
13 架台
14 留具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設する鋼管柱の基部を構成する鋼管柱基部構造体であって、テーパ管である鋼管柱およびベースプレートとリブとを溶接接合して基部において倒壊しないようにした前記鋼管柱の基部内に、外径が前記鋼管柱の最下端部の内径よりも細く、長さが前記リブの高さ以上で、前記鋼管柱が基部において倒壊しそうな状態になったときつっかえ棒となる内挿管を内包したことを特徴とする鋼管柱基部構造体。
【請求項2】
前記鋼管柱がテーパ管であり、前記内挿管がストレート管であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管柱基部構造体。
【請求項3】
前記内挿管が、前記鋼管柱の内面と接触しないように前記基部内に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管柱基部構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−95500(P2008−95500A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55(P2008−55)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【分割の表示】特願2000−246257(P2000−246257)の分割
【原出願日】平成12年8月15日(2000.8.15)
【出願人】(591006298)JFEテクノリサーチ株式会社 (52)
【出願人】(594109657)水島ゼネラルサービス株式会社 (6)