説明

鍵盤楽器

【課題】鍵盤楽器において、小さな力で素早い打鍵操作を容易に行うことができると共に、力の弱い人でも容易に演奏することができるようにする。
【解決手段】フレームに対して揺動可能に支持された鍵を複数備える鍵盤部7と、作動部材の動作に基づいて音源から生の音を発生させるように構成された発音部13と、各鍵に設けられてその押鍵動作を検出する押鍵動作検出手段25と、該押鍵動作検出手段25において前記押鍵動作が検出された際に該押鍵動作検出手段25から出力される押鍵動作信号に基づいて、前記作動部材を駆動して前記音源から生の音を発生させる駆動制御手段37とを備えることを特徴とする鍵盤楽器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生の音を発する鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キーボードやアコースティックピアノ等の鍵盤楽器には、各鍵を個々に駆動するソレノイド等のアクチュエータを設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。この種の鍵盤楽器においては、楽曲を構成する一連の楽音に対応する演奏情報に応じてアクチュエータにより各鍵を駆動して、自動演奏を行うことができるようになっている。また、この種の鍵盤楽器には、鍵の動作を検出する位置センサが設けられており、自動演奏の際には位置センサの検出結果に基づいて鍵をアクチュエータにより適切に動作させることができるようになっている。
【特許文献1】特開平2−254494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、アコースティックピアノのように弦をハンマーで叩く等して生の音を発生させる自然鍵盤楽器では、低音部ほどハンマー等の駆動部品が重くなるため、鍵の駆動に必要な力が高音部よりも大きくなるという問題があり、素早い打鍵動作が困難となっている。また、初心者や子供、中高年のように力の弱い人にとっては、上述した自然鍵盤楽器での演奏が困難となる。
なお、上述した課題は、特許文献1に記載されたものでは解決することができない。すなわち、特許文献1に記載のものでは自動演奏の際にアクチュエータにより鍵の駆動を行うだけの構成となっているため、手動演奏において鍵の駆動に必要な力を軽減することはできない。
【0004】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、手動演奏に際して素早い打鍵操作を行うことができると共に、力の弱い人でも演奏することができる鍵盤楽器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、フレームに対して揺動可能に支持された鍵を複数備える鍵盤部と、作動部材の動作に基づいて音源から生の音を発生させるように構成された発音部と、各鍵に設けられてその押鍵動作を検出する押鍵動作検出手段と、該押鍵動作検出手段において前記押鍵動作が検出された際に該押鍵動作検出手段から出力される押鍵動作信号に基づいて、前記作動部材を駆動して前記音源から生の音を発生させる駆動制御手段とを備えることを特徴とする鍵盤楽器を提案している。
【0006】
ここで、生の音を発生する音源は、例えばアコースティックピアノやチェンバロの弦、パイプオルガンの音管等を示している。また、作動部材は、弦を叩くハンマーや弦を弾くプレクトラム、音管への送風を切り換えるパレット等を示している。
この発明に係る鍵盤楽器において、手指で押鍵した際には、この押鍵動作の検出結果である押鍵動作信号に基づいて、駆動制御手段が作動部材を駆動して音源から生の音を発生させる。すなわち、鍵と作動部材とが、機械的に相互に分離されているため、従来の自然鍵盤楽器のように、押鍵の際に作動部材の重さや付勢力が鍵に伝達されることはない。したがって、鍵盤部の鍵を揺動させる力のみにより音源から生の音を発生させることができ、押鍵の際には作動部材の重さや付勢力に左右されない鍵のタッチ感を得ることができる。
【0007】
また、鍵と作動部材とは、機械的に分離されているため、鍵盤部と発音部とを機械的に独立して構成することが可能となる。これにより、同一の発音部に対して鍵盤部を容易に交換することが可能となり、このように交換することで鍵のタッチ感を変更しながら同一の発音部から生の音を発生させることができる。また、同一の鍵盤部に対しても発音部を容易に交換することが可能となり、このように交換することで鍵のタッチ感を変えることなく異なる音色の音を発音部から発生させることができきる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記駆動制御手段が、前記発音部に設けられて前記作動部材を駆動するアクチュエータと、前記押鍵動作信号及び前記アクチュエータの動作を制御する駆動制御信号を相互に対応づけて記憶したメモリ部と、前記押鍵動作が検出された際に出力される前記押鍵動作信号に基づいて、これに対応する前記駆動制御信号を前記メモリ部から前記アクチュエータに出力して、前記アクチュエータの動作を制御する制御部とを備えることを特徴とする鍵盤楽器を提案している。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤部の各鍵に対応させる前記発音部の各音源をオクターブ単位で選択するオクターブセレクタを備え、前記駆動制御手段が、前記オクターブセレクタにおいて選択された前記音源から生の音を発生させることを特徴とする鍵盤楽器を提案している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、鍵盤部の鍵を揺動させる力のみにより音源から生の音を発生させることができるため、小さな力で素早い打鍵操作を容易に行うことができると共に、力の弱い人でも容易に演奏することができる。
また、鍵盤部と発音部とを機械的に独立して構成することができるため、演奏者は自身の好みに対応する鍵のタッチ感を有する鍵盤部を選択することができ、また、鍵のタッチ感を変えることなく様々な音色を選択して演奏することも可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、押鍵検出手段から制御部に押鍵動作信号が出力され、制御部からアクチュエータに駆動制御信号が出力されるように構成されているため、鍵及び押鍵動作検出手段を備えた鍵盤部と、制御部と、アクチュエータ、作動部材及び音源を備えた発音部とを機械的に分離して構成することが可能となる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、オクターブセレクタにおいて鍵に対応づける音源を適宜選択しておくことで、鍵の数が音源の数よりも少なくても発音部の音源の数を活用した演奏を行うことができる。
また、発音部に備える音源の数に対して鍵盤部に備える鍵の数を少なくすることができるため、オクターブセレクタにおいて選択される音源を切り換えることで、音源の数が多くても腕を大きく動かさずに演奏を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜3を参照して本発明の一実施形態に係る鍵盤楽器について説明する。図1に示すように、鍵盤楽器1は、フレーム5に対して揺動可能に支持された鍵3を複数備える鍵盤部7と、ハンマー(作動部材)9の動作に基づいて弦(音源)11から生の音を発生させるように構成された発音部13とを備えている。すなわち、この鍵盤楽器1の発音部13は、アコースティックピアノと同様の弦11及びハンマー9を備えた構成となっており、鍵盤部7及び発音部13は、着脱自在なコネクタ15を介して相互に電気接続できるようになっている。
鍵盤部7の各鍵3は、図2に示すように、その後端3b側を支点F1としてAB方向に揺動できるようになっている。また、鍵3には、これを初期位置に復帰させるためのスプリングや錘(いずれも不図示)が取り付けられており、鍵3をA方向に付勢するようになっている。すなわち、この鍵盤楽器1では、手指により鍵3の前端3a側の表面3cを押すことで、鍵3をA方向とは逆向き(B方向)に揺動させる押鍵動作ができるようになっている。
【0014】
また、各鍵3には、その表面3cに対する押し付け圧力を検出する感圧センサ17と、鍵3の揺動位置を検出する位置センサ19とが設けられている。
感圧センサ17は、フィルム状に形成されて鍵3の表面3cに貼り付けられており、例えば、手指により鍵3の表面3cを押し付ける圧力を電圧に変換する圧電素子により構成される。この感圧センサ17においては、手指が鍵3の表面3cに接触して押し付けられているかどうかを検出できる、すなわち、押鍵動作を検出できるようになっている。
【0015】
位置センサ19は、例えば鍵3の前端3a側の裏面3dに取り付けられて磁界強度を電圧として検出するホール素子21と、ホール素子21に対向してフレームに固定された磁石23とから構成されている。
ホール素子21は、鍵3が押されていない初期位置に配されている状態で磁石23から最も遠くに位置し、鍵3をB方向に揺動させることで磁石23に近づくようになっている。そして、このホール素子21において検出される電圧の大きさは、磁石23から離れている程小さく、磁石23に近づく程大きくなる。したがって、この位置センサ19においては、鍵3の揺動位置を電圧の大きさとして検出できるようになっている。
【0016】
なお、位置センサ19は、上記構成に限ることはなく、例えば磁石23を鍵3の裏面3dに固定してホール素子21をフレーム側に固定するとしても構わない。また、位置センサ19は鍵3の揺動位置を検出できればよいため、例えば光学式センサ等により構成されるとしてもよい。
各鍵3に設けられる感圧センサ17及び位置センサ19は、鍵3の押鍵動作を検出するセンサユニット(押鍵動作検出手段)25を構成しており、感圧センサ17及び位置センサ19においてそれぞれ検出される電圧信号は、それぞれ押鍵動作信号として後述する制御部35に出力されるようになっている。
【0017】
図1に示すように、発音部13に備える弦11は鍵3と同じ数だけあり、ハンマー9は各弦11に1つずつ設けられている。各ハンマー9は、発音部13のフレーム(不図示)に対して支点F2を中心にCD方向に揺動可能に取り付けられている。そして、ハンマー9は、その自重によって揺動方向の一方(C方向)に付勢されており、他方(D方向)に揺動することで弦11を叩くように構成されている。
このように構成される発音部13には、各ハンマー9をD方向に駆動するアクチュエータ27が設けられている。このアクチュエータ27は、ハンマー9の下方に配置されてフレームに固定されたソレノイドコイル29と、ソレノイドコイル29に挿通されてハンマー9に当接する磁性体のプランジャ31とから構成されている。
【0018】
このアクチュエータ27においては、ソレノイドコイル29に電流を流すことでプランジャ31がハンマー9を下方から押し上げて、ハンマー9をD方向に揺動させることができるようになっている。ここで、プランジャ31によりハンマー9を押し上げる力は、ソレノイドコイル29に流す電流の大きさにより制御することができる。
なお、ソレノイドコイル29に電流が流れていない状態においては、プランジャ31が所定位置に配されてハンマー9のC方向への揺動を規制する規制部材としての役割も果たす。
【0019】
また、図3に示すように、この鍵盤楽器1は、アクチュエータ27を動作させるための参照データを記憶したメモリ部33と、各センサユニット25から出力される押鍵動作信号やメモリ部33に記憶された参照データに基づいて、センサユニット25に対応する所定のアクチュエータ27の動作を制御する制御部35とを備えている。この実施形態において、メモリ部33及び制御部35は鍵盤部7に設けられている。
メモリ部33に記憶される参照データは、上記押鍵動作信号と、アクチュエータ27の動作を制御する駆動制御信号とを相互に対応づけたデータテーブルである。なお、押鍵動作信号には、上述したセンサユニット25において検出される鍵3への押鍵圧力や鍵3の揺動位置の他に、鍵3の揺動速度や揺動加速度が含まれている。これら鍵3の揺動速度や揺動加速度は、位置センサ19による鍵3の揺動位置の検出結果に基づいて制御部35において算出することができる。
また、駆動制御信号は、アクチュエータ27のソレノイドコイル29に流す電流の大きさを示す信号であり、アクチュエータ27の動作に基づくハンマー9の揺動位置や揺動速度、揺動加速度に対応するようになっている。
【0020】
このデータテーブルにおいては、鍵3の揺動位置とアクチュエータ27の動作によるハンマー9の揺動位置とが対応づけられている。すなわち、初期位置からB方向への鍵3の揺動長さが長い程、初期位置からD方向へのハンマー9の揺動位置が長くなるように対応づけられている。
また、このデータテーブルにおいては、鍵3のB方向への揺動速度や揺動加速度とハンマー9の揺動速度や揺動加速度とがそれぞれ対応づけられている。すなわち、鍵3の揺動速度や揺動加速度が大きい程、ハンマー9の揺動速度や揺動加速度が大きくなるように対応づけられている。
【0021】
制御部35は、所定の鍵3の感圧センサ17から出力された信号に基づいて手指による押鍵動作が検出されたか否かを判定するように構成されている。そして、制御部35は、上記押鍵動作が検出された際に同一の鍵3の位置センサ19から出力される押鍵動作信号に基づいて、これに対応する駆動制御信号をメモリ部33からアクチュエータ27に出力することで、上記鍵3に対応するアクチュエータ27の動作を制御するように構成されている。なお、制御部35から出力される駆動制御信号は、コネクタ15を介してアクチュエータ27に到達するようになっている。
上述したアクチュエータ27、メモリ部33及び制御部35は、センサユニット25において押鍵動作が検出された際に、センサユニット25から出力される押鍵動作信号に基づいて、ハンマー9を駆動して弦11から生の音を発生させる駆動制御手段37を構成している。
【0022】
以上のように構成された鍵盤楽器1において、鍵3を手指でB方向に揺動させた際には、感圧センサ17が手指による押鍵動作を検出し、この検出結果が制御部35に出力される。この際、制御部35は位置センサ19から出力される押鍵動作信号に基づいて、これに対応する駆動制御信号をメモリ部33から読み出す。そして、制御部35はコネクタ15を介してこの駆動制御信号を鍵3に対応するアクチュエータ27に出力し、このアクチュエータ27は駆動制御信号に基づいてハンマー9をD方向に駆動する。この駆動によってハンマー9が弦11を叩くことになり、弦11から生の音が発生することになる。
【0023】
上記鍵盤楽器1によれば、鍵盤部7と発音部13とがコネクタ15を介して電気接続され、機械的には相互に分離されているため、従来の自然鍵盤楽器のように、押鍵の際にハンマー9の重さが鍵3に伝達されることがない。このため、鍵盤部7の鍵3を揺動させる力のみにより弦11から音を発生させることができ、押鍵の際にはハンマー9の重さに左右されない鍵3のタッチ感を得ることができる。したがって、小さな力で素早い打鍵操作を容易に行うことができると共に、力の弱い人でも容易に演奏することができる。
【0024】
また、鍵盤部7と発音部13とは機械的に独立して構成されているため、コネクタ15を着脱することで、同一の発音部13に対して鍵盤部7を容易に交換することが可能となり、このように交換することで鍵3のタッチ感を変更しながら同一の発音部13から生の音を発生させることができる。すなわち、演奏者は自身の好みに対応する鍵3のタッチ感を有する鍵盤部7を選択することができる。
なお、上記実施形態においては、メモリ部33及び制御部35が鍵盤部7に設けられるとしたが、センサユニット25から制御部35に押鍵動作信号が出力されるように構成されているため、例えば、メモリ部33及び制御部35は鍵盤部7から機械的に分離して構成されるとしても構わない。また、これらメモリ部33及び制御部35は、例えば発音部13に設けられるとしてもよい。
【0025】
また、上記実施形態の構成に加えて、例えば図4に示すように、鍵盤部7に各鍵3に対応させる発音部13の各弦11を選択するオクターブセレクタ43をさらに設けるとしてもよい。
このオクターブセレクタ43においては、例えばオクターブ単位で鍵3を音源に対応づけて選択するようになっている。すなわち、フルサイズのピアノと同じ7オクターブ分の弦の数(88個)を備える発音部13に対して、鍵盤部7が2オクターブ分の鍵3の数(24個)しか備えていない場合には、オクターブセレクタ43を操作することで、任意の2オクターブ分の弦11が2オクターブ分の鍵3に対応づけられることになる。この構成の場合には、オクターブセレクタ43において選択された弦11がハンマー9によって叩かれるように、制御部35がこれに対応するアクチュエータ27に駆動制御信号を出力すればよい。
【0026】
上記構成の鍵盤楽器41では、オクターブセレクタ43において鍵3に対応づける弦11を適宜選択することで、鍵3の数が弦11の数よりも少なくても発音部13に備える弦11の数を活用した演奏を行うことができる。
また、発音部13に備える弦11の数に対して鍵盤部7に備える鍵3の数を少なくすることができるため、オクターブセレクタ43において選択される弦11を切り換えることで、弦11の数が多くても腕を大きく動かさずに演奏を容易に行うことができる。
【0027】
さらに、この鍵盤楽器41では、例えば、コネクタ15により複数の鍵盤部7を同一の発音部13に接続すると共に、複数の演奏者が自身の鍵盤部7のオクターブセレクタ43において演奏者ごとに異なるオクターブの弦11を選択することで、複数の演奏者により同一の発音部13を用いた連弾演奏を行うことができる。そして、この場合には、複数の演奏者はそれぞれ好みのタッチ感を備えた鍵盤部7を用いて演奏を行うこともできる。
【0028】
また、上記実施形態において、鍵盤部7及び発音部13はコネクタ15を介して電気接続されるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも駆動制御信号を制御部35から各アクチュエータ27に出力できればよい。すなわち、鍵盤部7に無線送信部を設けると共に発音部13に無線受信部を設け、制御部35から出力される駆動制御信号を無線送信部から無線受信部に送信し、無線受信部から各アクチュエータ27に出力するように構成しても構わない。
さらに、各鍵3には、その揺動位置を検出する位置センサ19が設けられるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも鍵3の動作状態を検出できる動作検出センサが設けられていればよい。
【0029】
例えば、鍵3には、例えば図5に示すように、その前端3aの下方に固定されたコイル45と、鍵3の前端3a側の裏面3dに固定されて鍵3の揺動に応じてコイル45内を移動する磁石47とから構成される速度センサ49が動作検出センサとして設けられるとしてもよい。この速度センサ49においては、鍵3の揺動速度に応じた大きさの誘導起電力がコイル45に発生するため、鍵3の揺動速度を直接検出することができる。
また、鍵3には、例えば図6に示すように、鍵3の前端3a側の裏面3dにMEMS(Micro Electro Mechanical System)型の加速度センサ51が動作検出センサとして設けられるとしても構わない。
なお、各鍵3には、これら位置センサ19、速度センサ49、加速度センサ51のいずれか1つのみを設けるとしても良いし、位置センサ19、速度センサ49、加速度センサ51を組み合わせて設けられるとしてもよい。
【0030】
さらに、アクチュエータ27は、ソレノイドコイル29及びプランジャ31により構成されるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも制御部35から出力される駆動制御信号に基づいてハンマー9をD方向に揺動させる構成であればよい。したがって、アクチュエータは、例えば高分子アクチュエータや形状記憶合金、超音波モータ、電磁モータ、表面弾性波モータにより構成されるとしても構わない。
【0031】
高分子アクチュエータとしては、例えば、膜状に形成されたイオン交換樹脂の両面に電極としての金めっき層を形成して構成されたものがある。図7に示すように、この高分子アクチュエータ(アクチュエータ)53を使用する場合には、イオン交換樹脂の面方向の一端53aを発音部55のフレーム57に固定すると共に、他端53bをハンマー9の下側に当接させるように取り付ければよい。この高分子アクチュエータ53においては、駆動制御信号に基づいて電極間に電圧を印加した際にイオン交換樹脂の一方の面にイオンが膨潤するため、一方の面側の体積が膨れることで図示例のように撓ませることができ、この撓み変形によりハンマー9をD方向に駆動することができる。
【0032】
また、形状記憶合金によりアクチュエータを構成する場合には、例えば図8に示すように、形状記憶合金からなる線状の形状記憶ワイヤ(アクチュエータ)59を形成し、形状記憶ワイヤ59の一端59a側を発音部61のフレーム63に固定すると共に、形状記憶ワイヤ59の収縮に伴ってハンマー9がD方向に揺動するように形状記憶ワイヤ59の他端59b側をハンマー9に固定すればよい。この構成の場合には、駆動制御信号に基づいて形状記憶ワイヤ59に通電することで形状記憶ワイヤ59が収縮し、この収縮によりハンマー9をD方向に駆動することができる。
【0033】
さらに、発音部13は、アコースティックピアノと同様の弦11及びハンマー9を備えて構成されるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも作動部材の動作に基づいて音源から生の音を発生させるように構成されていればよい。すなわち、発音部は、例えばチェンバロと同様の弦(音源)及び弦を弾くプレクトラム(作動部材)を備えて構成されるとしても構わない。このように発音部を構成しても、上述したアクチュエータ27,53,59によりプレクトラムを駆動することで弦を弾いて生の音を発生させることができる。
【0034】
また、例えば図9に示すように、発音部71は、パイプオルガンと同様に、不図示の送風機に連結された主空気室73、及び、穴75を介して主空気室73と連通された複数の個室77を形成した風箱79と、各個室77に連通された複数の音管(音源)81と、穴75を開閉可能とするように設けられて音管81への送風を切り換えるパレット(作動部材)83とを備えた構成としてもよい。
ここで、パレット83は不図示のバネによって穴75を塞ぐように付勢されている。また、発音部71には、穴75が開くようにパレット83を駆動するアクチュエータ85が設けられている。このアクチュエータ85は、例えば上記実施形態と同様のソレノイドコイル87及びプランジャ89によって構成されており、プランジャ89の先端がパレット83に固定されている。
【0035】
この構成においては、ソレノイドコイル87に電流が流れていない状態においてバネの付勢力によって穴75が塞がれ、ソレノイドコイル87に電流が流れることでパレット83が駆動されて穴75が開くことになる。なお、このソレノイドコイル87への通電制御は、上記実施形態と同様に、制御部35から出力される駆動制御信号に基づいて行われる。そして、穴75が開いた状態においては、送風機から供給される空気が個室77を介して音管81に送り込まれるため、音管81から生の音が発生することになる。
なお、パレット83の駆動は、上記構成のアクチュエータ85に限らず、例えば上述した高分子アクチュエータ53や形状記憶ワイヤ59、超音波モータ、電磁モータ、表面弾性波モータ等により行うことができる。
【0036】
上述したように、アコースティックピアノやチェンバロ、パイプオルガン等の異なる音色の音を発生するものを発音部13,71として構成できるため、コネクタ15を着脱する等して、同一の鍵盤部7に対して様々な種類の発音部13,71を容易に交換することが可能となる。したがって、発音部13,71を交換することで鍵3のタッチ感を変えることなく様々な音色を選択して演奏することが可能となる。
【0037】
また、駆動制御手段37は、押鍵動作信号と駆動制御信号とを対応づけて記憶したメモリ部33を備えるとしたが、これに限ることはなく、少なくともセンサユニット25から出力される押鍵動作信号に基づいてハンマー9やパレット83、プレクトラム等を駆動するように構成されていればよい。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施形態に係る鍵盤楽器を示す概略構成図である。
【図2】図1の鍵盤楽器において、鍵と、これに設けられる感圧センサ及び位置センサとを示す概略側面図である。
【図3】図1の鍵盤楽器の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係る鍵盤楽器の電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の他の実施形態に係る鍵盤楽器において、鍵に設けられる速度センサを示す概略側面図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係る鍵盤楽器において、鍵に設けられる加速度センサを示す概略側面図である。
【図7】この発明の他の実施形態に係る鍵盤楽器において、発音部に設けられる高分子アクチュエータを示す概略側面図である。
【図8】この発明の他の実施形態に係る鍵盤楽器において、発音部に設けられる形状記憶ワイヤを示す概略側面図である。
【図9】この発明の他の実施形態に係る鍵盤楽器の発音部を示す概略側断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,41・・・鍵盤楽器、3・・・鍵、5・・・フレーム、7・・・鍵盤部、9・・・ハンマー(作動部材)、11・・・弦(音源)、13,55,61,71・・・発音部、25・・・センサユニット(押鍵動作検出手段)、27,85・・・アクチュエータ、33・・・メモリ部、35・・・制御部、37・・・駆動制御手段、43・・・オクターブセレクタ、53・・・高分子アクチュエータ(アクチュエータ)、59・・・形状記憶ワイヤ(アクチュエータ)、81・・・音管(音源)、83・・・パレット(作動部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに対して揺動可能に支持された鍵を複数備える鍵盤部と、
作動部材の動作に基づいて音源から生の音を発生させるように構成された発音部と、
各鍵に設けられてその押鍵動作を検出する押鍵動作検出手段と、
該押鍵動作検出手段において前記押鍵動作が検出された際に該押鍵動作検出手段から出力される押鍵動作信号に基づいて、前記作動部材を駆動して前記音源から生の音を発生させる駆動制御手段とを備えることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
前記駆動制御手段が、
前記発音部に設けられて前記作動部材を駆動するアクチュエータと、
前記押鍵動作信号及び前記アクチュエータの動作を制御する駆動制御信号を相互に対応づけて記憶したメモリ部と、
前記押鍵動作が検出された際に出力される前記押鍵動作信号に基づいて、これに対応する前記駆動制御信号を前記メモリ部から前記アクチュエータに出力して、前記アクチュエータの動作を制御する制御部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記鍵盤部の各鍵に対応させる前記発音部の各音源をオクターブ単位で選択するオクターブセレクタを備え、
前記駆動制御手段が、前記オクターブセレクタにおいて選択された前記音源から生の音を発生させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−116814(P2008−116814A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301566(P2006−301566)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)