長尺物繰り出し装置
【課題】針金等の長尺物の端部を自動的に保持でき、長尺物の緩みや、もつれを防止する長尺物繰り出し装置を提供する。
【解決手段】支持部材2に巻芯保持部3と端部保持部材4を取り付けてなり、巻芯5に巻回された長尺物Lを繰り出すための長尺物繰り出し装置であって、端部保持部材4は長尺物Lが挿通される係止孔4aを有することを特徴とする。
【解決手段】支持部材2に巻芯保持部3と端部保持部材4を取り付けてなり、巻芯5に巻回された長尺物Lを繰り出すための長尺物繰り出し装置であって、端部保持部材4は長尺物Lが挿通される係止孔4aを有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は針金、紐、テープ、フィルム等の長尺物が巻回されたロール製品から該長尺物を引き出すための装置に関し、特に長尺物の端部を容易に保持でき、長尺物の緩みによる損傷や、長尺物が線材等の場合のもつれを防止し得る長尺物繰り出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、針金、紐、テープ、フィルム等の長尺物は、中芯の周りに巻回されたロール製品として使用に供されている。
しかしながら、例えば、針金を例に採ると、所定長繰り出して切断して使用されるが、使用後は端部が後退逆行して巻きが緩んで地面や他の物と接触して汚れたり損傷したりするという問題があり、また針金がもつれ、これをほぐすのに手間が掛かり生産性が大巾に低下することになる。更に、ほぐす際に、折れ曲がったり、歪みが残り、外観を低下させるばかりでなく、次の使用の際に支障を来す場合もある。
【0003】
このような問題を解決するために、鋼線材がコイル状に巻回積層される線材コイルの鋼線材にリング状の重錘体を1個又は2個以上遊挿し、該鋼線材を上取り式に引き出す際に前記重錘体の重みで該鋼線材の2巻目以降の持ち上がりが阻止されるようにしたことを特徴とする線材コイルの上取り式給材方法が提案され(例えば、特許文献1参照)、また、線材をコイル状に巻いてなるコイル状塊から引出される引出し線との接触の際に上方へ運動し、引出し線との隔離時に下方へ運動して線材のからみが防止されるようにコイル状塊の上方に配設されたアームを有する複数の線材押さえ部材からなることを特徴とする線材からみ防止装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、これらはいずれも大掛かりなもので、高コストとなるばかりでなく、狭小な作業現場での使用や家庭での小規模の使用には適していない。
【特許文献1】特開2000−190024号公報
【特許文献2】特開平9−175734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の問題点を解決したもので、長尺物の端部が切断され使用された後に後退逆行して巻きが緩んで汚染や損傷したり、また、もつれが生じこれをほぐすのに手間がかかり生産性を低下させたりするのを防止した長尺物繰り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る本発明は、支持部材に巻芯保持部と端部保持部材を取り付けてなり、巻芯に巻回された長尺物を巻芯保持部に回転自在に保持して繰り出すための装置であって、端部保持部材は長尺物が挿通される係止孔を有することを特徴とする長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、端部保持部材が支持部材に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、端部保持部材が重心より上方で支持部材に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項2に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、端部保持部材が基部と蓋部からなり、基部と蓋部に囲まれた空間が係止孔を形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、基部及び/又は蓋部が磁性材料からなることを特徴とする請求項4に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、基部及び蓋部の各内側面に面接合ファスナーが貼着されていることを特徴とする請求項4に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、端部保持部材と支持部材が弾性部材により連結されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の長尺物繰り出し装置は、長尺物が挿通される係止孔を有する端部保持部材を設けたため、その係止孔の内壁と長尺物の間の摩擦力により長尺物の端部が係止孔内に保持され、端部が後退逆行して巻きが緩んで汚染したり損傷したり、更に、もつれたりすることが防止される利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材が支持部材に揺動自在に軸支されているため、巻芯に巻回された長尺物の多少にかかわらず、係止孔の開口方向と長尺物の走行方向を容易に一致させることができ、摩擦力が減少して長尺物を繰り出しやすく、また、上方、下方、横方向等所望の繰り出し方向とすることができるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材が重心より上方で支持部材に揺動自在に軸支されているため、上記請求項2と同じ利点の他に、長尺物を繰り出していないとき端部保持部材は自重により垂れ下がり、長尺物の走行方向と係止孔の開口方向との間に傾きが生じて摩擦力が増大し、自動的に長尺物の端部が保持され、端部が後退逆行して巻きが緩んだり、もつれたりするトラブルが防止されるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材が基部と蓋部からなるため、蓋部と蓋部との間に形成された係止孔に容易に長尺物を挿通(挟み込む場合を含む)することができ、また、長尺物を係止孔から容易に離脱することができるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明の長尺物繰り出し装置は基部及び/又は蓋部が磁性材料からなるため、磁性材料の吸引力を利用して、蓋部と基部間に形成される係止孔への長尺物の挿通又は離脱を容易に行うことができるという利点がある。
【0018】
請求項6に係る発明の長尺物繰り出し装置は基部及び蓋部の各内側面に面接合ファスナーが貼着されているため、上記請求項5と同様、係止孔への長尺物の挿通又は離脱が容易であるという利点がある。
【0019】
請求項7に係る発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材と支持部材が弾性部材により連結されているため、端部保持部材は弾性部材の張力又は収縮力により回動する。従って、長尺物の走行方向と係止孔の開口方向の間に傾きを生じさせることにより摩擦力を増大して自動的に長尺物の端部を保持させたり、一方、長尺物を繰り出す際には、摩擦力を減じさせ繰り出し易くなる所望の方向とすることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の長尺物繰り出し装置を図面に基づいて説明する。
なお、図1は実施例1の側面図、図2はその正面図、図3はこれを剛性に富む長尺物に対して使用した場合の説明図、図4は可撓性に富む長尺物に対して使用した場合の説明図である。
図5は実施例2の正面図である。
図6は実施例3における端部保持部材の拡大図、図7及び図8はその使用説明図である。
図9は実施例4における端部保持部材の拡大図、図10はその使用説明図である。
図11は実施例5における端部保持部材の拡大図、図12は実施例6における端部保持部材の拡大図、図13は実施例7における基部の拡大図、図14は実施例8における端部保持部材の拡大図である。
図15は実施例9の一部切除側面図、図16はその正面図、図17は端部保持部材の拡大図である。
また、図中、1は本発明の長尺物繰り出し装置を、2は支持部材を、2aは把持部を、3は巻芯を、3aはフランジを、4は端部保持部材を、4aは係止孔を、4bは基部を、4cは蓋部を、4dは面接合ファスナーを、4eは回転軸を、4fは弾性部材を、4gは回転軸孔を、5は巻芯を、6はフランジを、7は溝を、8は隙間を、9は舌片を、10は凹部を、Lは長尺物をそれぞれ表す。
【0021】
本発明は、図1に示す如く、巻芯5に巻回された長尺物Lを繰り出すための長尺物繰り出し装置1であり、支持部材2に巻芯保持部3と端部保持部材4を取り付けたことを特徴とするものである。
【0022】
支持部材2は巻芯保持部3と端部保持部材4を支持する部材である。形状は巻芯保持部3と端部保持部材4を支持できる限り特に限定されないが、図1、図2等で示すような断面L字型の板状部材や、図15、図16で示す2枚の平板の間に棒状部材を介在させたものが例示できる。また、持ち運びやすさを考慮して例えば図15、図16に示すような把持部2aを取り付けてもよい。
【0023】
その材質も特に制限されないが、造形性(成形性)、耐久性の面からプラスチック製、金属製が好ましいが、木製等であってもよい。
本発明に用いられるプラスチックとしては特に制限されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチロール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等が挙げられる。また、巻芯3に巻回される長尺物Lが針金等の重量物である場合は、強化材としてグラスファイバー、炭素繊維などを使用した繊維強化プラスチック等も利用できる。
本発明に用いられる金属としては特に制限されないが、鉄、銅、アルミ、ステンレス等が挙げられる。
【0024】
巻芯保持部3は巻芯5に巻回された長尺物Lを回転自在に保持するためのものである。また、6は長尺物Lが端部から外れるのを防ぐためフランジである。
巻芯保持部3の材質も特に限定されず、上記した支持部材2の材質と同様のものが例示できる。
【0025】
端部保持部材4には係止孔4aが設けられており、ここに長尺物Lを挿通するようになっている。この場合、長尺物Lと係止孔4aの間に摩擦力が生じ、長尺物Lの端部が保持されるように配慮するのが好ましい。。この作用は長尺物Lが針金等の若干剛性を有する物質である場合に特に有効に働く。
例えば、図3に示すように、長尺物Lの巻きぐせを利用して元の巻き径に戻ろうとする性質を利用して、長尺物Lの端部が係止孔4aから後退離脱しないようにすることが好ましい。
【0026】
また、長尺物Lが絹糸等のように可撓性に富む物質である場合は、例えば、図4に示すように、係止孔4aの前端からこの長尺物Lを垂らすと、その重さ分だけ摩擦力が増大し、長尺物Lの端部の後退離脱が防止される。
【0027】
係止孔4aのサイズは特に限定されないが、通常、長尺物Lが通過するサイズとすればよい。係止孔4aの幅は勿論長尺物Lの幅としてもよいが、例えば、幅の小さい針金や紐状物であっても、図2に示すように、巻芯5の幅と同程度としてもよいし、また、図5に示すように、これらが一本通る程度の幅としてもよい。
【0028】
端部保持部材4は、図6に示す通り、揺動自在に支持部材2に軸支することができる。この場合、巻芯5に巻回された長尺物Lが多いとき(図7参照)でも、少ないとき(図8参照)でも係止孔4aの開口方向と長尺物Lの走行方向が一致するように端部保持部材4の向きを変えることができ、よりスムースに長尺物Lを繰り出すことができる。
【0029】
さらに端部保持部材4は、図9に示すように、重心より上方で軸支するのも好ましい態様である。この場合、係止孔4aに長尺物Lが挿通されていない状態では回転軸4eで支持部材2からぶら下がった状態となり、また、長尺物Lが挿通されているが繰り出されていない状態では、やや斜め方向(長尺物側の)に懸垂した状態となる。また長尺物Lを挿通してこれを繰り出している場合には図7、図8の場合と同様に、係止孔4aの開口方向と長尺物Lの走行方向が一致し、スムースに長尺物Lを繰り出すことができる。
【0030】
この端部保持部材4により長尺物Lの端部を保持する場合、長尺物Lが針金等のように、適度の剛性を有する物質であれば、単に係止孔4aの出口付近で長尺物Lを切断するのみでよく、ほとんど手間がかからない。
このようにした場合、図10に示すように、端部保持部材4はぶら下がる方向に回動するが係止孔4aに挿通された長尺物Lに支えられて途中で止まる。長尺物Lは端部保持部材4の後端で押さえられて屈曲し弾性エネルギーを蓄えることになるが、この弾性エネルギーにより長尺物Lの端部が係止孔4aの内壁下面に押し付けられる。この押圧により大きな摩擦力が発生するため長尺物Lの端部が保持され、後退することは防止されるのである。
【0031】
なお、長尺物Lが紐のように、剛性を有しない柔軟な物質である場合は、係止孔4aの出口付近で長尺物Lを切断するのではなく、少々余裕を持たせ出口付近から少し離れた箇所で長尺物Lを切断し、図4に示した方法と同様に、端部を端部保持部材4の前側から垂らせばよい。
【0032】
端部保持部材4は基部4bと蓋部4cに分離できるようにしてもよい。この場合、基部4bと蓋部4cに囲まれた空間が係止孔4aとなるようにする。このようにすると蓋部4cを基部4bから取り外して、長尺物Lを基部4b又は蓋部4cの表面にあてがい、又は溝の中に長尺物Lを入れてから蓋部4cを基部4bに取り付けるようにするだけで係止孔4aに長尺物Lを挿通した状態になる。即ち、小さな孔に細い長尺物Lを通すような細かい作業をする必要がなくなり、万一、長尺物Lが係止孔4aから後退逆行した場合でも容易に挿通させることができる。
【0033】
具体的には溝を設けた基部4bに蓋部4cを開閉自在に取り付けることができる(図11参照)。この場合は、蓋部4cを開いた状態で溝7に長尺物Lを入れ、蓋部4cを閉じることにより蓋部4cの裏面と溝7とで係止孔4aが形成される。また、基部4b及び/又は蓋部4cを磁性材料で作成し基部4bに溝7を設けてもよく(図12参照)、この場合は磁性材料の吸着作用を利用して蓋部4cを容易に基部4bと結合し、又は分離することができるという利点がある。さらに基部4b及び蓋部4cの各内側面に面接合ファスナー4dを貼着するようにしてもよく、この場合も外した蓋部を容易に基部と結合させることができるという利点がある(図13参照)。ここで、面接合ファスナー4dとは基布に接合用ループを設けた雌面と、基布に結合用フックを設けた雄面を接触させることにより、該ループに該フックを引っ掛けて雄面と雌面を接合させる布状部材が代表的であるが、特にこれに限られない。
【0034】
なお面接合ファスナー4dを採用する場合、面接合ファスナー4d自体が厚みを有するためこれを利用して係止孔4aを形成することができる。即ち、通常の板状部材に2枚の面接合ファスナー4dを所定の間隔をあけて貼着するだけで基部4b又は蓋部4cを作成でき、両者の面接合ファスナー面を接合することにより係止孔4aを形成することができる(図13参照)。同図右側に示したものを2枚接合すれば、幅の小さい係止孔が形成され、左側に示したものを2枚接合すれば幅の大きい係止孔が形成けされる。
【0035】
端部保持部材4は、図14に示す通り、支持部材2と弾性部材4fで連結させることもできる。このようにすると端部保持部材4は弾性部材4fの伸長力又は収縮力により回動することになる。図示した例においては、長尺物Lを繰り出していないときには、上記した図10の場合と同様、長尺物Lの端部が係止孔4aの内壁に押し付けられることになり、摩擦力が生じて長尺物Lの端部が保持される。長尺物Lを繰り出すときは、実線で示したように、弾性部材4fを伸張させ、摩擦力を減じる方向に端部保持部材4を回動させ、長尺物Lを繰り出すことができる。弾性部材としては、スプリング、コイルバネ、板バネ、ゴム等が挙げられる。
【0036】
端部保持部材4の材質も特に限定されず、上記した支持部材2や巻芯保持部3の材質と同様のものが例示できる。
ただし、図9、図10で示したような端部保持部材4の上方に回転軸4eを設け、自重で剛性を有する長尺物L(金属線など)を押さえるような場合は、金属線の径にもよるが、端部保持部材4も重さの大きい金属製とするほうが適当な場合が多い。
なお、プラスチックなどを使用し、自重が足りないような場合でも、図14で示したような弾性部材4fで補うことができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されないことは云うまでもない。
【0038】
実施例1
図1及び図2に本発明の長尺物繰り出し装置1の実施例1を示す。実施例1は断面L字形のステンレス板を支持部材2とし、その中央付近に巻芯保持部3が設けられ、前側上方に端部保持部材4が取付けられている。そして端部保持部材4には幅広の係止孔4aが設けられている。Lは長尺物で、両側にフランジ6を備えた巻芯5に巻回されている。
【0039】
この長尺物繰り出し装置1は紙テープ、布テープ、紐、金属線等、多様な長尺物Lに対して用いることができるが、金属線等、長尺物Lが剛性を有する場合に最も好適に使用できる。
この長尺物繰り出し装置1を使用して長尺物Lの端部を保持するには、例えば図3及び図4に示したとおりである。
【0040】
実施例2
図5に本発明の実施例2を示す。実施例2は実施例1における端部保持部材4を小さくし、係止孔4aを細長い孔とした例である。実施例2は長尺物Lが紐や金属線など線状部材である場合に適した例である。この例では実施例1とは異なり線状の長尺物Lが横にずれたりせず、一定の場所から繰り出されるため使いやすいという効果がある。
【0041】
実施例3
図6に実施例3における端部保持部材4を示す。この実施例3は実施例1の端部保持部材4を揺動自在に軸支したものである。これを使用すると、巻芯5に巻回された長尺物Lが減少するに従って端部保持部材4が回動し(図7、図8参照)、係止孔4aの開口方向が長尺物Lの走行方向が一致するため摩擦力が増大しない。そのため長尺物Lを繰り出しやすいという効果がある。また、上向き、下向き等、繰り出し方向を所望の方向に自在に調節することも可能である。
【0042】
実施例4
図9に実施例4における端部保持部材4を示す。この実施例4は実施例3の回転軸4eを端部保持部材4の重心より上方に設けたものである。この実施例4から長尺物Lを繰り出すときは、実施例3と同様、巻芯5に巻回された長尺物Lが減少するに従って端部保持部材4が回動し、摩擦力が増大しない。また、実施例3と同様、繰り出し方向を自在に調節することができる。
【0043】
この実施例4は長尺物Lが剛性を有する場合に最も好適に使用することができる。必要な長さを繰り出した後で長尺物Lを切断すると、端部保持部材4は自重により垂れ下がり、長尺物Lの端部に支えられる(図10参照)が、これにより長尺物Lは屈曲し、これに弾性エネルギーが蓄えられる。この弾性エネルギーにより長尺物Lの端部が係止孔4aの内壁に押し付けられ、摩擦力が増大するため長尺物Lの端部が好適に支持される。つまり、長尺物繰り出し装置1の使用者は単に長尺物Lの端部を切断するだけで、自動的に長尺物Lの端部が保持されるという効果がある。
【0044】
実施例5
図11に実施例5における端部保持部材4を示す。この実施例5は実施例1の端部保持部材4を基部4bと蓋部4cからなるようにし、基部4bに溝7を設けて、蓋部4cを基部4bに開閉自在に取り付けた例である。この例において蓋部4cを閉めた状態にすると、蓋部4cの裏面と基部4bに設けた溝7との間に係止孔4aが形成され、長尺物Lを挿通することができる。
【0045】
これを使用するには、蓋部4cが開いた状態で長尺物Lの端部を基部4bの溝の中に入れ、その状態で蓋部4cを閉める。これにより長尺物Lが係止孔4aに挿通された状態になる。すなわち、小さな孔に細い長尺物Lを通すような細かい作業をする必要がなくなるという効果がある。
【0046】
実施例6
図12に実施例6における端部保持部材4を示す。この実施例6は実施例1の端部保持部材4を磁性材料により作成し、かつ基部4bと蓋部4cからなるようにし、基部4bに溝7を設けた例である。この例においては、磁性吸引力により蓋部4cを基部4bにくっ着けた状態にすると基部4bに設けた溝7と蓋部4cの裏面とで係止孔4aが形成され、長尺物Lを挿通できるようになる。
【0047】
これを使用するには、蓋部4cを取り外した状態で長尺物Lの端部を基部4bの溝の中に入れ、その状態で蓋部4cをくっ着けるようにする。これにより長尺物Lが係止孔4aに挿通された状態になる。
この例では磁性吸引力により基部4bと蓋部4cを結合させることができるので、蓋部4cの着脱が容易であるという効果がある。
【0048】
実施例7
図13に実施例7及びその変更例における基部4bを示す。この実施例7は実施例1の端部保持部材4を基部4bと蓋部4cからなるものにし、基部4bに2枚の面接合ファスナー4d(例えば雌面)を貼着した例である。なお、図示していないが、蓋部4cの対応する位置にも面接合ファスナー4d(例えば雄面)を貼着している。
【0049】
実施例7では基部4bには面接合ファスナー4dは狭い隙間8を開けて貼着されている(図13の左側参照)。従って、この例において蓋部4cを基部4bにくっ着けた状態にすると面接合ファスナー4dの隙間8が係止孔4aとなり、金属線などの細長い長尺物Lに対して好適に使用できる端部保持部材4となる。
【0050】
またその変更例(図13の右側参照)では基部4bに2枚の面接合ファスナー4dを広い隙間8をあけて貼着している。これに蓋部4cをくっ着けると紙テープなどの幅広の長尺物Lに対して好適に使用できる端部保持部材4になる。
【0051】
これを使用するには、蓋部4cを取り外した状態で長尺物Lの端部を貼着された2枚の面接合ファスナー4dの隙間8に入れ、その状態で蓋部4cをくっ着けるようにする。これにより長尺物Lが係止孔4aに挿通された状態になる。
この例では面接合ファスナー4dにより基部4bと蓋部4cを結合又は分離させることができるので、蓋部4cの着脱が容易であるという効果がある。
【0052】
実施例8
図14に実施例8における端部保持部材4を示す。この実施例8は実施例3の支持部材2に弾性部材4f取付用の舌片9を設け、これと端部保持部材4を弾性部材4f(図ではばね)で連結したものである。この実施例8から長尺物Lを繰り出すときは、実施例3と同様、巻芯5に巻回された長尺物Lが減少するに従って端部保持部材4の開口方向が長尺物Lの走行方向に一致するように回動し、摩擦力が増大しない。
【0053】
この実施例8は、実施例4と同様、長尺物Lが剛性を有する場合に最も好適に使用することができる。即ち、弾性部材4fを伸長させた状態で必要な長さを繰り出した後で長尺物Lを切断すると、端部保持部材4は弾性部材4fの収縮により回動して破線で示した状態となり、実施例4(図10)の場合と同様に長尺物Lの端部に支えられるが、これにより長尺物Lは屈曲し、弾性エネルギーが蓄えられる。この弾性エネルギーにより長尺物Lの端部が係止孔4aの内壁に押し付けられ、摩擦力が増大するため長尺物Lの端部が好適に支持される。つまり、長尺物繰り出し装置1の使用者は単に長尺物Lの端部を切断するだけで、自動的に長尺物Lの端部が保持されるという効果がある。
【0054】
実施例9
図15乃至図17に実施例9の長尺物繰り出し装置1を示す。この実施例9は平行に並べた2枚の板の間の四角に棒状連結部材11を介在させてなる支持部材2に、巻芯保持部3と、基部4bと蓋部4cからなり各内面側に面接合ファスナー4dが貼着されている端部保持部材4を取り付けた例である。支持部材2の上側中央には棒状部材からなる把持部2aが架設されており、これを把持して長尺物繰り出し装置1を持ち運びすることができる。
ここで端部保持部材4は重心より上方で揺動自在に軸支されている。従って図10に示した実施例4と同様、長尺物Lが剛性を有する場合には、単に係止孔4aの前側でこれを切断するだけでその端部を保持することができる。
【0055】
また面接合ファスナー4dは、実施例7とは異なり、基部4bと蓋部4cにそれぞれ1枚だけ貼着されている。この面接合ファスナー4dは、それぞれ中央部に結合用ループ及び結合用フックを植生していない基布からなる帯状の凹部10を有するが、基部4bと蓋部4cを接合すると、凹部10同士が向かい合って係止孔4aを形成する(図17参照)。
この凹部10からなる係止孔4aは基布とファスナーとで囲まれているため、長尺物が保護され、表面に傷が付いたりするトラブルを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
上記したとおり、本発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材に長尺物が挿通される係止孔を設けることにより、長尺物の端部を容易に保持することができるので、長尺物が緩み後退逆行することにより長尺物が汚れたり、損傷するといったトラブルが防止され、また、線材等の長尺物のもつれを防止することができるものであり、極めて有用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1の側面図である。
【図2】実施例1の正面図である。
【図3】実施例1を剛性に富む長尺物に対して使用した場合の説明図である。
【図4】実施例1を可撓性に富む長尺物に対して使用した場合の説明図である。
【図5】実施例2の正面図である。
【図6】実施例3における端部保持部材の拡大図である。
【図7】実施例3の使用説明図である。
【図8】実施例3の使用説明図である。
【図9】実施例4における端部保持部材の拡大図である。
【図10】実施例4における端部保持部材の拡大図である。
【図11】実施例5における端部保持部材の拡大図である。
【図12】実施例6における基部の拡大図である。
【図13】実施例7における端部保持部材の拡大図である。
【図14】実施例8の使用説明図である。
【図15】実施例9の一部切除側面図である。
【図16】実施例9の正面図である。
【図17】実施例9における端部保持部材の拡大図である。
【符号の説明】
【0058】
1 長尺物繰り出し装置
2 支持部材
2a 把持部
3 巻芯保持部
4 端部保持部材
4a 係止孔
4b 基部
4c 蓋部
4d 面接合ファスナー
4e 回転軸
4f 弾性部材
4g 回転軸孔
5 巻芯
6 フランジ
7 溝
8 隙間
9 舌片
10 凹部
11 棒状連結部材
L 長尺物
【技術分野】
【0001】
本発明は針金、紐、テープ、フィルム等の長尺物が巻回されたロール製品から該長尺物を引き出すための装置に関し、特に長尺物の端部を容易に保持でき、長尺物の緩みによる損傷や、長尺物が線材等の場合のもつれを防止し得る長尺物繰り出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、針金、紐、テープ、フィルム等の長尺物は、中芯の周りに巻回されたロール製品として使用に供されている。
しかしながら、例えば、針金を例に採ると、所定長繰り出して切断して使用されるが、使用後は端部が後退逆行して巻きが緩んで地面や他の物と接触して汚れたり損傷したりするという問題があり、また針金がもつれ、これをほぐすのに手間が掛かり生産性が大巾に低下することになる。更に、ほぐす際に、折れ曲がったり、歪みが残り、外観を低下させるばかりでなく、次の使用の際に支障を来す場合もある。
【0003】
このような問題を解決するために、鋼線材がコイル状に巻回積層される線材コイルの鋼線材にリング状の重錘体を1個又は2個以上遊挿し、該鋼線材を上取り式に引き出す際に前記重錘体の重みで該鋼線材の2巻目以降の持ち上がりが阻止されるようにしたことを特徴とする線材コイルの上取り式給材方法が提案され(例えば、特許文献1参照)、また、線材をコイル状に巻いてなるコイル状塊から引出される引出し線との接触の際に上方へ運動し、引出し線との隔離時に下方へ運動して線材のからみが防止されるようにコイル状塊の上方に配設されたアームを有する複数の線材押さえ部材からなることを特徴とする線材からみ防止装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、これらはいずれも大掛かりなもので、高コストとなるばかりでなく、狭小な作業現場での使用や家庭での小規模の使用には適していない。
【特許文献1】特開2000−190024号公報
【特許文献2】特開平9−175734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の問題点を解決したもので、長尺物の端部が切断され使用された後に後退逆行して巻きが緩んで汚染や損傷したり、また、もつれが生じこれをほぐすのに手間がかかり生産性を低下させたりするのを防止した長尺物繰り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る本発明は、支持部材に巻芯保持部と端部保持部材を取り付けてなり、巻芯に巻回された長尺物を巻芯保持部に回転自在に保持して繰り出すための装置であって、端部保持部材は長尺物が挿通される係止孔を有することを特徴とする長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、端部保持部材が支持部材に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、端部保持部材が重心より上方で支持部材に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項2に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、端部保持部材が基部と蓋部からなり、基部と蓋部に囲まれた空間が係止孔を形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、基部及び/又は蓋部が磁性材料からなることを特徴とする請求項4に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、基部及び蓋部の各内側面に面接合ファスナーが貼着されていることを特徴とする請求項4に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、端部保持部材と支持部材が弾性部材により連結されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6に記載の長尺物繰り出し装置を内容とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の長尺物繰り出し装置は、長尺物が挿通される係止孔を有する端部保持部材を設けたため、その係止孔の内壁と長尺物の間の摩擦力により長尺物の端部が係止孔内に保持され、端部が後退逆行して巻きが緩んで汚染したり損傷したり、更に、もつれたりすることが防止される利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材が支持部材に揺動自在に軸支されているため、巻芯に巻回された長尺物の多少にかかわらず、係止孔の開口方向と長尺物の走行方向を容易に一致させることができ、摩擦力が減少して長尺物を繰り出しやすく、また、上方、下方、横方向等所望の繰り出し方向とすることができるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材が重心より上方で支持部材に揺動自在に軸支されているため、上記請求項2と同じ利点の他に、長尺物を繰り出していないとき端部保持部材は自重により垂れ下がり、長尺物の走行方向と係止孔の開口方向との間に傾きが生じて摩擦力が増大し、自動的に長尺物の端部が保持され、端部が後退逆行して巻きが緩んだり、もつれたりするトラブルが防止されるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材が基部と蓋部からなるため、蓋部と蓋部との間に形成された係止孔に容易に長尺物を挿通(挟み込む場合を含む)することができ、また、長尺物を係止孔から容易に離脱することができるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明の長尺物繰り出し装置は基部及び/又は蓋部が磁性材料からなるため、磁性材料の吸引力を利用して、蓋部と基部間に形成される係止孔への長尺物の挿通又は離脱を容易に行うことができるという利点がある。
【0018】
請求項6に係る発明の長尺物繰り出し装置は基部及び蓋部の各内側面に面接合ファスナーが貼着されているため、上記請求項5と同様、係止孔への長尺物の挿通又は離脱が容易であるという利点がある。
【0019】
請求項7に係る発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材と支持部材が弾性部材により連結されているため、端部保持部材は弾性部材の張力又は収縮力により回動する。従って、長尺物の走行方向と係止孔の開口方向の間に傾きを生じさせることにより摩擦力を増大して自動的に長尺物の端部を保持させたり、一方、長尺物を繰り出す際には、摩擦力を減じさせ繰り出し易くなる所望の方向とすることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の長尺物繰り出し装置を図面に基づいて説明する。
なお、図1は実施例1の側面図、図2はその正面図、図3はこれを剛性に富む長尺物に対して使用した場合の説明図、図4は可撓性に富む長尺物に対して使用した場合の説明図である。
図5は実施例2の正面図である。
図6は実施例3における端部保持部材の拡大図、図7及び図8はその使用説明図である。
図9は実施例4における端部保持部材の拡大図、図10はその使用説明図である。
図11は実施例5における端部保持部材の拡大図、図12は実施例6における端部保持部材の拡大図、図13は実施例7における基部の拡大図、図14は実施例8における端部保持部材の拡大図である。
図15は実施例9の一部切除側面図、図16はその正面図、図17は端部保持部材の拡大図である。
また、図中、1は本発明の長尺物繰り出し装置を、2は支持部材を、2aは把持部を、3は巻芯を、3aはフランジを、4は端部保持部材を、4aは係止孔を、4bは基部を、4cは蓋部を、4dは面接合ファスナーを、4eは回転軸を、4fは弾性部材を、4gは回転軸孔を、5は巻芯を、6はフランジを、7は溝を、8は隙間を、9は舌片を、10は凹部を、Lは長尺物をそれぞれ表す。
【0021】
本発明は、図1に示す如く、巻芯5に巻回された長尺物Lを繰り出すための長尺物繰り出し装置1であり、支持部材2に巻芯保持部3と端部保持部材4を取り付けたことを特徴とするものである。
【0022】
支持部材2は巻芯保持部3と端部保持部材4を支持する部材である。形状は巻芯保持部3と端部保持部材4を支持できる限り特に限定されないが、図1、図2等で示すような断面L字型の板状部材や、図15、図16で示す2枚の平板の間に棒状部材を介在させたものが例示できる。また、持ち運びやすさを考慮して例えば図15、図16に示すような把持部2aを取り付けてもよい。
【0023】
その材質も特に制限されないが、造形性(成形性)、耐久性の面からプラスチック製、金属製が好ましいが、木製等であってもよい。
本発明に用いられるプラスチックとしては特に制限されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチロール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等が挙げられる。また、巻芯3に巻回される長尺物Lが針金等の重量物である場合は、強化材としてグラスファイバー、炭素繊維などを使用した繊維強化プラスチック等も利用できる。
本発明に用いられる金属としては特に制限されないが、鉄、銅、アルミ、ステンレス等が挙げられる。
【0024】
巻芯保持部3は巻芯5に巻回された長尺物Lを回転自在に保持するためのものである。また、6は長尺物Lが端部から外れるのを防ぐためフランジである。
巻芯保持部3の材質も特に限定されず、上記した支持部材2の材質と同様のものが例示できる。
【0025】
端部保持部材4には係止孔4aが設けられており、ここに長尺物Lを挿通するようになっている。この場合、長尺物Lと係止孔4aの間に摩擦力が生じ、長尺物Lの端部が保持されるように配慮するのが好ましい。。この作用は長尺物Lが針金等の若干剛性を有する物質である場合に特に有効に働く。
例えば、図3に示すように、長尺物Lの巻きぐせを利用して元の巻き径に戻ろうとする性質を利用して、長尺物Lの端部が係止孔4aから後退離脱しないようにすることが好ましい。
【0026】
また、長尺物Lが絹糸等のように可撓性に富む物質である場合は、例えば、図4に示すように、係止孔4aの前端からこの長尺物Lを垂らすと、その重さ分だけ摩擦力が増大し、長尺物Lの端部の後退離脱が防止される。
【0027】
係止孔4aのサイズは特に限定されないが、通常、長尺物Lが通過するサイズとすればよい。係止孔4aの幅は勿論長尺物Lの幅としてもよいが、例えば、幅の小さい針金や紐状物であっても、図2に示すように、巻芯5の幅と同程度としてもよいし、また、図5に示すように、これらが一本通る程度の幅としてもよい。
【0028】
端部保持部材4は、図6に示す通り、揺動自在に支持部材2に軸支することができる。この場合、巻芯5に巻回された長尺物Lが多いとき(図7参照)でも、少ないとき(図8参照)でも係止孔4aの開口方向と長尺物Lの走行方向が一致するように端部保持部材4の向きを変えることができ、よりスムースに長尺物Lを繰り出すことができる。
【0029】
さらに端部保持部材4は、図9に示すように、重心より上方で軸支するのも好ましい態様である。この場合、係止孔4aに長尺物Lが挿通されていない状態では回転軸4eで支持部材2からぶら下がった状態となり、また、長尺物Lが挿通されているが繰り出されていない状態では、やや斜め方向(長尺物側の)に懸垂した状態となる。また長尺物Lを挿通してこれを繰り出している場合には図7、図8の場合と同様に、係止孔4aの開口方向と長尺物Lの走行方向が一致し、スムースに長尺物Lを繰り出すことができる。
【0030】
この端部保持部材4により長尺物Lの端部を保持する場合、長尺物Lが針金等のように、適度の剛性を有する物質であれば、単に係止孔4aの出口付近で長尺物Lを切断するのみでよく、ほとんど手間がかからない。
このようにした場合、図10に示すように、端部保持部材4はぶら下がる方向に回動するが係止孔4aに挿通された長尺物Lに支えられて途中で止まる。長尺物Lは端部保持部材4の後端で押さえられて屈曲し弾性エネルギーを蓄えることになるが、この弾性エネルギーにより長尺物Lの端部が係止孔4aの内壁下面に押し付けられる。この押圧により大きな摩擦力が発生するため長尺物Lの端部が保持され、後退することは防止されるのである。
【0031】
なお、長尺物Lが紐のように、剛性を有しない柔軟な物質である場合は、係止孔4aの出口付近で長尺物Lを切断するのではなく、少々余裕を持たせ出口付近から少し離れた箇所で長尺物Lを切断し、図4に示した方法と同様に、端部を端部保持部材4の前側から垂らせばよい。
【0032】
端部保持部材4は基部4bと蓋部4cに分離できるようにしてもよい。この場合、基部4bと蓋部4cに囲まれた空間が係止孔4aとなるようにする。このようにすると蓋部4cを基部4bから取り外して、長尺物Lを基部4b又は蓋部4cの表面にあてがい、又は溝の中に長尺物Lを入れてから蓋部4cを基部4bに取り付けるようにするだけで係止孔4aに長尺物Lを挿通した状態になる。即ち、小さな孔に細い長尺物Lを通すような細かい作業をする必要がなくなり、万一、長尺物Lが係止孔4aから後退逆行した場合でも容易に挿通させることができる。
【0033】
具体的には溝を設けた基部4bに蓋部4cを開閉自在に取り付けることができる(図11参照)。この場合は、蓋部4cを開いた状態で溝7に長尺物Lを入れ、蓋部4cを閉じることにより蓋部4cの裏面と溝7とで係止孔4aが形成される。また、基部4b及び/又は蓋部4cを磁性材料で作成し基部4bに溝7を設けてもよく(図12参照)、この場合は磁性材料の吸着作用を利用して蓋部4cを容易に基部4bと結合し、又は分離することができるという利点がある。さらに基部4b及び蓋部4cの各内側面に面接合ファスナー4dを貼着するようにしてもよく、この場合も外した蓋部を容易に基部と結合させることができるという利点がある(図13参照)。ここで、面接合ファスナー4dとは基布に接合用ループを設けた雌面と、基布に結合用フックを設けた雄面を接触させることにより、該ループに該フックを引っ掛けて雄面と雌面を接合させる布状部材が代表的であるが、特にこれに限られない。
【0034】
なお面接合ファスナー4dを採用する場合、面接合ファスナー4d自体が厚みを有するためこれを利用して係止孔4aを形成することができる。即ち、通常の板状部材に2枚の面接合ファスナー4dを所定の間隔をあけて貼着するだけで基部4b又は蓋部4cを作成でき、両者の面接合ファスナー面を接合することにより係止孔4aを形成することができる(図13参照)。同図右側に示したものを2枚接合すれば、幅の小さい係止孔が形成され、左側に示したものを2枚接合すれば幅の大きい係止孔が形成けされる。
【0035】
端部保持部材4は、図14に示す通り、支持部材2と弾性部材4fで連結させることもできる。このようにすると端部保持部材4は弾性部材4fの伸長力又は収縮力により回動することになる。図示した例においては、長尺物Lを繰り出していないときには、上記した図10の場合と同様、長尺物Lの端部が係止孔4aの内壁に押し付けられることになり、摩擦力が生じて長尺物Lの端部が保持される。長尺物Lを繰り出すときは、実線で示したように、弾性部材4fを伸張させ、摩擦力を減じる方向に端部保持部材4を回動させ、長尺物Lを繰り出すことができる。弾性部材としては、スプリング、コイルバネ、板バネ、ゴム等が挙げられる。
【0036】
端部保持部材4の材質も特に限定されず、上記した支持部材2や巻芯保持部3の材質と同様のものが例示できる。
ただし、図9、図10で示したような端部保持部材4の上方に回転軸4eを設け、自重で剛性を有する長尺物L(金属線など)を押さえるような場合は、金属線の径にもよるが、端部保持部材4も重さの大きい金属製とするほうが適当な場合が多い。
なお、プラスチックなどを使用し、自重が足りないような場合でも、図14で示したような弾性部材4fで補うことができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されないことは云うまでもない。
【0038】
実施例1
図1及び図2に本発明の長尺物繰り出し装置1の実施例1を示す。実施例1は断面L字形のステンレス板を支持部材2とし、その中央付近に巻芯保持部3が設けられ、前側上方に端部保持部材4が取付けられている。そして端部保持部材4には幅広の係止孔4aが設けられている。Lは長尺物で、両側にフランジ6を備えた巻芯5に巻回されている。
【0039】
この長尺物繰り出し装置1は紙テープ、布テープ、紐、金属線等、多様な長尺物Lに対して用いることができるが、金属線等、長尺物Lが剛性を有する場合に最も好適に使用できる。
この長尺物繰り出し装置1を使用して長尺物Lの端部を保持するには、例えば図3及び図4に示したとおりである。
【0040】
実施例2
図5に本発明の実施例2を示す。実施例2は実施例1における端部保持部材4を小さくし、係止孔4aを細長い孔とした例である。実施例2は長尺物Lが紐や金属線など線状部材である場合に適した例である。この例では実施例1とは異なり線状の長尺物Lが横にずれたりせず、一定の場所から繰り出されるため使いやすいという効果がある。
【0041】
実施例3
図6に実施例3における端部保持部材4を示す。この実施例3は実施例1の端部保持部材4を揺動自在に軸支したものである。これを使用すると、巻芯5に巻回された長尺物Lが減少するに従って端部保持部材4が回動し(図7、図8参照)、係止孔4aの開口方向が長尺物Lの走行方向が一致するため摩擦力が増大しない。そのため長尺物Lを繰り出しやすいという効果がある。また、上向き、下向き等、繰り出し方向を所望の方向に自在に調節することも可能である。
【0042】
実施例4
図9に実施例4における端部保持部材4を示す。この実施例4は実施例3の回転軸4eを端部保持部材4の重心より上方に設けたものである。この実施例4から長尺物Lを繰り出すときは、実施例3と同様、巻芯5に巻回された長尺物Lが減少するに従って端部保持部材4が回動し、摩擦力が増大しない。また、実施例3と同様、繰り出し方向を自在に調節することができる。
【0043】
この実施例4は長尺物Lが剛性を有する場合に最も好適に使用することができる。必要な長さを繰り出した後で長尺物Lを切断すると、端部保持部材4は自重により垂れ下がり、長尺物Lの端部に支えられる(図10参照)が、これにより長尺物Lは屈曲し、これに弾性エネルギーが蓄えられる。この弾性エネルギーにより長尺物Lの端部が係止孔4aの内壁に押し付けられ、摩擦力が増大するため長尺物Lの端部が好適に支持される。つまり、長尺物繰り出し装置1の使用者は単に長尺物Lの端部を切断するだけで、自動的に長尺物Lの端部が保持されるという効果がある。
【0044】
実施例5
図11に実施例5における端部保持部材4を示す。この実施例5は実施例1の端部保持部材4を基部4bと蓋部4cからなるようにし、基部4bに溝7を設けて、蓋部4cを基部4bに開閉自在に取り付けた例である。この例において蓋部4cを閉めた状態にすると、蓋部4cの裏面と基部4bに設けた溝7との間に係止孔4aが形成され、長尺物Lを挿通することができる。
【0045】
これを使用するには、蓋部4cが開いた状態で長尺物Lの端部を基部4bの溝の中に入れ、その状態で蓋部4cを閉める。これにより長尺物Lが係止孔4aに挿通された状態になる。すなわち、小さな孔に細い長尺物Lを通すような細かい作業をする必要がなくなるという効果がある。
【0046】
実施例6
図12に実施例6における端部保持部材4を示す。この実施例6は実施例1の端部保持部材4を磁性材料により作成し、かつ基部4bと蓋部4cからなるようにし、基部4bに溝7を設けた例である。この例においては、磁性吸引力により蓋部4cを基部4bにくっ着けた状態にすると基部4bに設けた溝7と蓋部4cの裏面とで係止孔4aが形成され、長尺物Lを挿通できるようになる。
【0047】
これを使用するには、蓋部4cを取り外した状態で長尺物Lの端部を基部4bの溝の中に入れ、その状態で蓋部4cをくっ着けるようにする。これにより長尺物Lが係止孔4aに挿通された状態になる。
この例では磁性吸引力により基部4bと蓋部4cを結合させることができるので、蓋部4cの着脱が容易であるという効果がある。
【0048】
実施例7
図13に実施例7及びその変更例における基部4bを示す。この実施例7は実施例1の端部保持部材4を基部4bと蓋部4cからなるものにし、基部4bに2枚の面接合ファスナー4d(例えば雌面)を貼着した例である。なお、図示していないが、蓋部4cの対応する位置にも面接合ファスナー4d(例えば雄面)を貼着している。
【0049】
実施例7では基部4bには面接合ファスナー4dは狭い隙間8を開けて貼着されている(図13の左側参照)。従って、この例において蓋部4cを基部4bにくっ着けた状態にすると面接合ファスナー4dの隙間8が係止孔4aとなり、金属線などの細長い長尺物Lに対して好適に使用できる端部保持部材4となる。
【0050】
またその変更例(図13の右側参照)では基部4bに2枚の面接合ファスナー4dを広い隙間8をあけて貼着している。これに蓋部4cをくっ着けると紙テープなどの幅広の長尺物Lに対して好適に使用できる端部保持部材4になる。
【0051】
これを使用するには、蓋部4cを取り外した状態で長尺物Lの端部を貼着された2枚の面接合ファスナー4dの隙間8に入れ、その状態で蓋部4cをくっ着けるようにする。これにより長尺物Lが係止孔4aに挿通された状態になる。
この例では面接合ファスナー4dにより基部4bと蓋部4cを結合又は分離させることができるので、蓋部4cの着脱が容易であるという効果がある。
【0052】
実施例8
図14に実施例8における端部保持部材4を示す。この実施例8は実施例3の支持部材2に弾性部材4f取付用の舌片9を設け、これと端部保持部材4を弾性部材4f(図ではばね)で連結したものである。この実施例8から長尺物Lを繰り出すときは、実施例3と同様、巻芯5に巻回された長尺物Lが減少するに従って端部保持部材4の開口方向が長尺物Lの走行方向に一致するように回動し、摩擦力が増大しない。
【0053】
この実施例8は、実施例4と同様、長尺物Lが剛性を有する場合に最も好適に使用することができる。即ち、弾性部材4fを伸長させた状態で必要な長さを繰り出した後で長尺物Lを切断すると、端部保持部材4は弾性部材4fの収縮により回動して破線で示した状態となり、実施例4(図10)の場合と同様に長尺物Lの端部に支えられるが、これにより長尺物Lは屈曲し、弾性エネルギーが蓄えられる。この弾性エネルギーにより長尺物Lの端部が係止孔4aの内壁に押し付けられ、摩擦力が増大するため長尺物Lの端部が好適に支持される。つまり、長尺物繰り出し装置1の使用者は単に長尺物Lの端部を切断するだけで、自動的に長尺物Lの端部が保持されるという効果がある。
【0054】
実施例9
図15乃至図17に実施例9の長尺物繰り出し装置1を示す。この実施例9は平行に並べた2枚の板の間の四角に棒状連結部材11を介在させてなる支持部材2に、巻芯保持部3と、基部4bと蓋部4cからなり各内面側に面接合ファスナー4dが貼着されている端部保持部材4を取り付けた例である。支持部材2の上側中央には棒状部材からなる把持部2aが架設されており、これを把持して長尺物繰り出し装置1を持ち運びすることができる。
ここで端部保持部材4は重心より上方で揺動自在に軸支されている。従って図10に示した実施例4と同様、長尺物Lが剛性を有する場合には、単に係止孔4aの前側でこれを切断するだけでその端部を保持することができる。
【0055】
また面接合ファスナー4dは、実施例7とは異なり、基部4bと蓋部4cにそれぞれ1枚だけ貼着されている。この面接合ファスナー4dは、それぞれ中央部に結合用ループ及び結合用フックを植生していない基布からなる帯状の凹部10を有するが、基部4bと蓋部4cを接合すると、凹部10同士が向かい合って係止孔4aを形成する(図17参照)。
この凹部10からなる係止孔4aは基布とファスナーとで囲まれているため、長尺物が保護され、表面に傷が付いたりするトラブルを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
上記したとおり、本発明の長尺物繰り出し装置は端部保持部材に長尺物が挿通される係止孔を設けることにより、長尺物の端部を容易に保持することができるので、長尺物が緩み後退逆行することにより長尺物が汚れたり、損傷するといったトラブルが防止され、また、線材等の長尺物のもつれを防止することができるものであり、極めて有用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1の側面図である。
【図2】実施例1の正面図である。
【図3】実施例1を剛性に富む長尺物に対して使用した場合の説明図である。
【図4】実施例1を可撓性に富む長尺物に対して使用した場合の説明図である。
【図5】実施例2の正面図である。
【図6】実施例3における端部保持部材の拡大図である。
【図7】実施例3の使用説明図である。
【図8】実施例3の使用説明図である。
【図9】実施例4における端部保持部材の拡大図である。
【図10】実施例4における端部保持部材の拡大図である。
【図11】実施例5における端部保持部材の拡大図である。
【図12】実施例6における基部の拡大図である。
【図13】実施例7における端部保持部材の拡大図である。
【図14】実施例8の使用説明図である。
【図15】実施例9の一部切除側面図である。
【図16】実施例9の正面図である。
【図17】実施例9における端部保持部材の拡大図である。
【符号の説明】
【0058】
1 長尺物繰り出し装置
2 支持部材
2a 把持部
3 巻芯保持部
4 端部保持部材
4a 係止孔
4b 基部
4c 蓋部
4d 面接合ファスナー
4e 回転軸
4f 弾性部材
4g 回転軸孔
5 巻芯
6 フランジ
7 溝
8 隙間
9 舌片
10 凹部
11 棒状連結部材
L 長尺物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に巻芯保持部と端部保持部材を取り付けてなり、巻芯に巻回された長尺物を巻芯保持部に回転自在に保持して繰り出すための装置であって、端部保持部材は長尺物が挿通される係止孔を有することを特徴とする長尺物繰り出し装置。
【請求項2】
端部保持部材が支持部材に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項3】
端部保持部材が重心より上方で支持部材に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項2に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項4】
端部保持部材が基部と蓋部からなり、基部と蓋部に囲まれた空間が係止孔を形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項5】
基部及び/又は蓋部が磁性材料からなることを特徴とする請求項4に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項6】
基部及び蓋部の各内側面に面接合ファスナーが貼着されていることを特徴とする請求項4に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項7】
端部保持部材と支持部材が弾性部材により連結されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項1】
支持部材に巻芯保持部と端部保持部材を取り付けてなり、巻芯に巻回された長尺物を巻芯保持部に回転自在に保持して繰り出すための装置であって、端部保持部材は長尺物が挿通される係止孔を有することを特徴とする長尺物繰り出し装置。
【請求項2】
端部保持部材が支持部材に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項3】
端部保持部材が重心より上方で支持部材に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項2に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項4】
端部保持部材が基部と蓋部からなり、基部と蓋部に囲まれた空間が係止孔を形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項5】
基部及び/又は蓋部が磁性材料からなることを特徴とする請求項4に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項6】
基部及び蓋部の各内側面に面接合ファスナーが貼着されていることを特徴とする請求項4に記載の長尺物繰り出し装置。
【請求項7】
端部保持部材と支持部材が弾性部材により連結されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6に記載の長尺物繰り出し装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−320672(P2007−320672A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149609(P2006−149609)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(592159955)テクノファースト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(592159955)テクノファースト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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