説明

長時間の薬物療法を与える方法および装置

【課題】望ましい治療薬の効果を長期治療期間にわたり維持する方法および装置の提供。
【解決手段】上昇薬物放出速度を示す経口浸透性投薬形態であって、特に、長時間の間、上昇薬物放出速度を与えるのに適した二層または三層の錠剤コアを有する浸透性投薬形態。二層経口浸透性投薬形態には、水和すると、送達可能な薬物組成物を形成するために選択された薬物および賦形剤を含んでなる第一成分層、および半透膜により形成されるコンパートメント内に含まれる、流体膨張可能なオスモポリマーおよび賦形剤を含んでなり、コンパートメントからの薬物放出のための流出方法を有する第二押出層が含まれる。2つの層を二層の錠剤コアへと圧縮した後、半透膜を適用して、それを通じての薬物放出に適当なオリフィスを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、望ましい治療薬の効果を長期治療期間にわたり維持する方法および装置に関する。特に、本発明は、長時間の間、薬物放出を上昇放出速度で胃腸管内で与える方法および装置に関する。この方法では、望ましい治療薬の効果を長期治療期間中ずっと維持するのに十分な薬物投与期間の一部の間、薬物を上昇速度で放出する。
【背景技術】
【0002】
2.37 CFR 1.97および1.98の下に開示された情報が含まれる
関連技術の記載
その薬理学的効果をもたらすために、ある薬物を身体内でのその作用部位にて適当な濃度で利用できるようにしなければならない。この有効性は、投与する薬物の量、その投与部位からのその吸収の程度および速度、組織内でのその分配、結合または局在化、その生体内変化並びにその排泄を含め、多数の因子により影響を受ける。一般に使用される薬物有効性の指標の1つは、薬物投与後に患者の血液もしくは血漿、または他の適当な体液もしくは組織内で得られる薬物の濃度である。便宜上、この濃度を以下に「血漿薬物濃度」と呼び得、これは、いずれの適当な体液または組織において測定された薬物濃度も包括しようとするものである。血漿薬物濃度の測定は、例えば、異なる薬物投薬形態および/または異なる薬物投与経路に関する比較情報を含め、非常に有用な情報を提供する。その上、多くの薬物に関して、望ましい薬理学的効果、すなわち、治療薬の効果、および望ましくない薬理学的効果、すなわち、副作用の両方を含め、種々の薬物効果を特定の血漿薬物濃度または血漿薬物濃度の範囲と関連づけている。
【0003】
経口投与する薬物投薬形態に関して、吸収は、胃腸(「g.i.」)管内で起こり、表面領域、血流および膜特質(g.i.管の様々な部分において著しく異なる)といったような局所ミクロ環境の物理化学的特性、薬物自体の物理化学的特性、薬物濃度、薬物に特異的な輸送機構の存在および活性等を含め、多くの因子により影響を受ける。経口投薬形態として投与する薬物の吸収速度における重要な因子の1つは、薬物が投薬形態から放出される速度である。経口投薬形態に関する薬物放出速度は、典型的には、インビボでの溶解速度、すなわち、単位時間あたりに投薬形態から放出される薬物の量として測定される。
【0004】
従来の経口投薬形態は、通例、投与後、本質的には、全用量の薬物が非常に短い期間、すなわち、数分内に投薬形態から放出されるので、「即時放出型」として記載することができる。このボーラスの放出される薬物が吸収されるにつれて、血漿薬物濃度は、典型的には、最大またはピーク濃度まで迅速に上昇し、その後、薬物が組織内に分配され、結合し、または局在化して、生体内変化を受け、および/または排泄されるにつれて、下降する。この下降に関する期間は、様々な薬物に関して異なり、多くの因子に依存するが、この期間は、ある特定の薬物の特質である。通例、血漿薬物濃度が上昇し、ピークに達して、下降する期間の幾つかの部分の間、薬物は、その治療効果を与える、すなわち、血漿薬物濃度が有効濃度に達する、または有効濃度を超える。そのうえ、この期間の間のある時点で、すなわち、血漿薬物濃度が有効濃度以下のレベルまで下降すると、治療効果が消失する。その上、しばしば、ピーク濃度に達する時間を取り巻くこの時間の一部の間、すなわち、血漿薬物濃度がその最も高い範囲にあると、望ましくない副作用が明らかとなり得る。
【0005】
上記の点から考えて、薬物有効性の継続は、血漿薬物濃度が有効血漿薬物濃度の範囲内にある期間の間に起こることが認識される。しかしながら、血漿薬物濃度は規定時間外では下降するので、複数回用量の即時放出型薬物投薬形態を適当な間隔で投与して、血漿薬物濃度が有効濃度範囲のままとなる、または再び有効濃度範囲まで上昇するようにしなければならない。しかしながら、同時に、血漿薬物濃度が、副作用が明らかとなるより高い範囲まで上昇すること、および/または副作用が明らかとなるより高い範囲内のままであるのが長すぎることを回避する、または最小限とする必要性がある。従って、多くの薬物に関して、複数回の個別用量の即時放出型投薬形態を適当な間隔で投与して、望ましい薬理学的効果と望ましくない薬理学的効果との満足のいく均衡を長期治療期間にわたり維持しなければならない。
【0006】
薬物療法を改善しようとする努力の焦点の1つは、主として、投与形態からの薬物放出速度を変えることにより、薬物の吸収に影響を及ぼす非即時放出型経口薬物投薬形態を提供することに合わせられている。そのような非即時放出型送達システムの例には、遅延放出型および持続放出型システムが含まれる。持続放出型投薬形態は、通例、即時放出型投薬形態に比べて、薬物を長時間放出する。当業界で知られている経口投与形態から薬物の持続放出を得る方法は数多くある。これらの様々な方法には、例えば、リザーバ装置およびマトリックス装置といったような拡散システム、封入溶解システム(例えば、「タイニー・タイム・ピル(tiny time pills)」が含まれる)およびマトリックス溶解システムといったような溶解システム、拡散/溶解システムの組み合わせ、Remington's Pharmaceutical Sciences,1990年版,1682−1685頁に記載されている浸透性システムおよびイオン交換樹脂システムが含まれる。
【0007】
長時間の間、薬物放出を実質的には一定の放出速度で与える持続放出型経口投薬形態を提供することが特に望ましいと考えられる。この方法では、多くの薬物に関して、薬物放出が開始されると、血漿薬物濃度は、最初に、短期間上昇した後、薬物放出が一定速度で続くと、長時間の間、実質的には一定のままとなる。多くの薬物に関して、この実質的には一定の血漿薬物濃度を長期治療期間にわたり実質的には一定の薬物有効性と関連づける。その上、初期の比較的高いピーク血漿薬物濃度は回避されるので、副作用の問題はより少ないものとなり得る。従って、一定放出型投薬形態の利点には、規定時間外に投与する必要性がある薬物の用量数を減少させること、および薬物の望ましい薬理学的効果と望ましくない薬理学的効果とのより良好な均衡を与えることが含まれる。
【0008】
浸透性投薬形態は、特に、長時間の間、薬物の一定放出をとりわけ上手く与える。浸透性投薬形態は、一般に、浸透圧を利用して、流体の自由拡散を可能とするが、存在するならば、薬物または浸透剤の自由拡散は可能としない半透壁(semipermeable wall)により少なくとも一部が形成されたコンパートメントへと流体を吸収するための推進力を発生させる。実質的には一定の薬物放出速度は、比較的一定の浸透圧を与えるためのシステムを設計し、比較的一定の浸透圧の結果として、液体が吸収される速度に対応する速度で放出する薬物製剤を可能とする、薬物製剤に適当な流出(exit)方法を有することにより得ることができる。浸透性システムに対する有意な利点は、操作がpHには依存せず、このことから、投薬形態が胃腸管を通過して、著しく異なったpH値を有する違ったミクロ環境に遭遇しても、浸透性により決定される速度で長時間にわたりずっと続けられることである。
【0009】
驚いたことに、コンパートメント内に、場合により、浸透性により活性な成分が含まれることのある賦形剤との混合物にて薬物を含んでなる、簡単だが非常に有効な浸透装置が当業界で知られている。多くの薬物に有効であるが、これらの装置での放出速度は、しばしば、規定時間外に下降して、薬物充填の完全な送達は起こり得ない。より高性能なタイプの浸透装置は、半透壁により形成されたコンパートメント内に2つの成分層を含んでなる。第一成分層は、場合により、浸透性により活性な成分が含まれることのある賦形剤との混合物にて薬物を含んでなり、これは、コンパートメント内における送達可能な薬物製剤を形成し、そして第二成分層は、浸透性により活性な成分を含んでなるが、薬物は含まない。第二成分層における浸透性により活性な成分は、典型的には、比較的大きな分子量を有するオスモポリマーを含んでなり、これは、これらの成分の放出が薬物製剤の流出方法によって起こらないよう、流体が吸収されると、「膨潤」を示す。第二成分層は、流体が吸収されると、オスモポリマーが膨潤して、第一成分層の送達可能な薬物製剤を押出し、それによって、薬物製剤の放出を実質的には一定速度で促進することから、「押出」層と呼ぶ。上記の装置は、例えば、Alza Corporationが所有する次の米国特許:第4,327,725号;4,612,008号;4,783,337号;および5,082,668号(これらの米国特許に記載されている内容は各々、本明細書の一部を構成する)から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一定放出型投薬形態は、多くの様々な薬物療法に有効であることが証明されているが、これらが完全に満足のいくものではないという臨床状況がある。幾つかの状態または疾患を一定放出型投薬形態で処置した幾人かの患者に関して、薬物の治療有効性は、実質的には一定の薬物放出の維持が有効性の継続を与えると期待されるにもかかわらず、望ましい治療期間の終了前の期間で減少することが観察されている。従って、時間の間、薬物を実質的には一定速度で放出する持続放出型投薬形態が満足のいくものではない場合には、望ましい治療薬の効果を望ましい長期治療期間にわたり維持する方法および装置を与える必要性があるままである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要約
本発明の一態様は、施した薬物療法の治療有効性が意図する治療期間の終了前の期間で予期せず減少するというそれらの臨床状況に対して、薬物療法の改善を与えることに関する。驚いたことに、例示的な臨床状況において、長時間の間、実質的には一定というよりはむしろ上昇する放出速度での薬物の投与は、長期治療期間の終了前に減少しない治療効力を与えることが発見されている。
【0012】
実質的には上昇する放出速度での薬物の投与は、薬物療法の改善を与えるという発見で、適当な長時間の間、そのような放出速度を与えるのに適した持続放出型経口投薬形態の必要性が生ずる。従って、本発明の他の態様には、長時間の間、上昇薬物放出速度を与える経口持続放出型投薬形態を提供すること、そのような投薬形態を製造する方法、およびそのような投薬形態を使用して、治療有効性を望ましい長期治療期間維持する方法が含まれる。
【0013】
驚いたことに、長時間の間、上昇薬物放出速度を示す経口浸透性投薬形態を得ることができることは発見されている。特に、本発明は、長時間の間、上昇薬物放出速度を与えるのに適した二層または三層の錠剤コアを有する浸透性投薬形態に関する。その上、初期の迅速な薬物作用の開始を与えるために、本発明はまた、ある用量の薬物を即時放出のためにさらに含んでなる投薬形態にも関する。
【0014】
本発明の二層経口浸透性投薬形態には、水和すると、送達可能な薬物組成物を形成するために選択された薬物および賦形剤を含んでなる第一成分層、および半透膜により形成されるコンパートメント内に含まれる、流体膨張可能なオスモポリマーおよび賦形剤を含んでなり、コンパートメントからの薬物放出のための流出方法を有する第二押出層が含まれる。2つの層を二層の錠剤コアへと圧縮した後、半透膜を適用して、それを通じての薬物放出に適当なオリフィスを形成する。重要なことには、2つの成分層を一緒に圧縮して、各々の先細った端に異なる層をもつ「カプセル型」の形状を有する、長手方向に圧縮した錠剤(「LCT」)コアを与えると、本明細書中に記載する二層の錠剤コアが形成される。
【0015】
成分層の浸透性、半透膜の流体流動性および錠剤コアの形状が含まれる特徴の組み合わせは、長時間の間、薬物が上昇速度で放出されることを確実なものとする。好ましい態様において、押出層における十分な活性は、比較的大きな濃度(少なくとも約35%)の浸透性により有効な溶質、または塩化ナトリウムのような浸透剤(osmagent)の使用により得られる。その上、ソルビトールが第一成分層に含まれるのが好ましい。
【0016】
本発明の三層経口浸透性投薬形態には、半透膜により取り巻かれ、その半透膜を通して薬物製剤を放出するのに適当な流出方法を有する、新規の三層の錠剤コアが含まれる。新規の三層の錠剤コアは、第一薬物含有層、第二薬物含有層および第三押出層を有する。操作においては、投薬形態成分の協力によって、薬物を第一薬物含有層から、次いで、第二薬物含有層から上手く放出する。薬物濃度勾配は、上昇薬物放出速度の達成を長時間促進することが発見されている。その結果、薬物含有層における他の賦形剤をより柔軟に変更して、便宜性および薬学的簡潔的確性を生み出すことのような他の目的のために調節し得る。この方法では、長時間の間、望ましい持続および上昇速度を有する、確かな薬物放出を示す投薬形態を確実かつ有効に製造することができる。
【0017】
上記のように、LCTコアの形状を使用して、三層のコアの水和を高めるのが好ましい。その上、流動促進剤が半透壁組成物に含まれるのが好ましい。現在の好ましい態様において、LCT三層コアの形状、第一成分層と第二成分層との間の適当な薬物濃度勾配、成分層の浸透性および半透膜の流体流動性が含まれる特徴の組み合わせは、長時間の間、薬物放出の望ましい上昇速度を達成する。
【0018】
長時間の間、持続および上昇放出速度を与える投薬形態の使用で改善することができる、多数の臨床状況および薬物療法がある。本明細書中に開示するように、例示的な投薬形態は、CNS作用薬および心臓血管作用薬を含んでなる。本発明は、多くの他のタイプの薬物および薬物療法に適用可能であることが当業者により認識される。適当なタイプの薬物の例には、限定されるものではないが、抗感染薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬、抗腫瘍薬、抗パーキンソン薬、止痒薬、抗精神病薬、下熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交換神経作用薬、カルシウムチャンネル遮断薬、β遮断薬、抗不整脈薬、抗高血圧薬、ACE阻害剤、利尿薬、血管拡張薬、充血除去薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、副交感神経刺激薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、鎮静薬および精神安定薬が含まれる。
【0019】
本明細書中に記載する例示的な臨床状況は、メチルフェニデート療法でのADHDの処置を必要とする。従って、本発明はまた、長時間の間、持続および上昇薬物放出速度を与える経口メチルフェニデート持続放出型投薬形態を製造することにも関する。
【0020】
長時間の間、上昇薬物放出速度を与える経口メチルフェニデート持続放出型投薬形態を使用して、ADHDの有効な1日1回療法を与えることができることがさらに発見されている。このように、本発明はまた、複数回の1日用量のメチルフェニデートに対する必要性を排除して、またさらに、複数回用量の即時放出型メチルフェニデートにより与えられる治療効力に匹敵する治療効力を日中ずっと与えることにより、ADHDの薬物療法を改善することにも関する。
【0021】
上記の特徴および利点、さらにはまた、他の事項は、次の本発明の詳細な開示およびそれに伴う請求の範囲から明らかとなる。
【0022】
特定の例示的な薬物を含む例示的な投薬形態、そのような投薬形態を製造する方法およびメチルフェニデート含有投薬形態を使用して、望ましい治療結果を与える方法により、本発明を本明細書中で説明するが、本発明は、例示的な態様により限定されるものではない。本発明は、本明細書中の開示から考えて当業者に明らかであろうように、いずれかの適当な薬物および薬物療法に関して、長時間の間、上昇薬物放出速度を与える経口持続放出型投薬形態、そのような投薬形態を製造する方法、およびそのような投薬形態を使用して、治療有効性を望ましい長期治療期間維持する方法を広く包含する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明による二層浸透性投薬形態の断面図である。
【図2】図2は、即時放出薬保護膜および美的保護膜をさらに含んでなる、本発明による三層浸透性投薬形態の断面図である。
【図3】図3は、実施例6に記載するような、本発明の好ましい態様から規定時間外に放出された薬物量を説明するグラフである。
【図4】図4は、実施例7に記載するような、例示的なレジメ(白抜きの菱形)および標準的なレジメ(黒塗りの丸形)によるメチルフェニデートの投与後に得られる規定時間外の血漿薬物濃度を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
多くの有効な薬物療法は、時間をあけた間隔で投与する即時放出型経口投薬形態を利用し、望ましい治療効果を長期治療期間にわたり与えて、維持する。その上、多くの薬物に関する持続放出型投薬形態が知られており、特に、一定放出型経口投薬形態が知られている。一定放出型経口投薬形態を利用して、望ましい治療効果を長期治療期間にわたり与える、有効な薬物療法の例は数多くある。多くの場合、これらの薬物療法は、時間をあけた間隔で投与する即時放出型経口投薬形態を利用する薬物療法に対して利点を与える。しかしながら、一定放出型投薬形態が望ましい長期治療期間の終了前の期間で治療有効性の減少を予期せず示しているという臨床状況がある。
【0025】
実質的には一定の薬物放出速度を長時間与える持続放出型経口薬物投薬形態での薬物療法が完全に満足のいくものではないという臨床状況の例の1つは、注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥多動障害(ADHD)を含め、種々の状態および障害を処置するための中枢神経系(CNS)刺激薬の使用にある。これらの障害は、子供において一般に診断されるが、成人においてもまた起こり得る。これらの心理学的状態および他の心理学的状態のCNS刺激薬での処置には、長い歴史がある。約25年前、メチルフェニデートが主たる刺激薬としてアンフェタミンに取って代わり、子供におけるADHDを処置するために処方された。
【0026】
ADHDを患う子供におけるメチルフェニデート療法は広範囲にわたって研究されており、この処置の効力および安全性は十分確立されている。メチルフェニデート療法は、ADHDを患う子供における多動、不注意および衝動性の症状を減少させるのに非常に有効であることが示されている。薬物療法の目的は、患者が学校にいる日中の間の行動症状、または症状の制御が患者の学習する能力に利するという活動に関与する他の行動症状、および/または活動に有利に関与する他の行動症状を制御することである。しかしながら、副作用に関係する懸念事項なので、薬物療法は、典型的には、少なくとも夕方の一部の間および一晩中、大部分の患者において中断される。患者の個々の状況により、薬物療法をまた、週末までずっと中断してもよいし、または中断しなくてもよい。
【0027】
処置は、1日の間に2回または3回投与する即時放出型メチルフェニデートを一般に利用する。種々の理由から、患者は、しばしば、この投与スケジュールに従って、困難な目に遭う。濫用の可能性があるので、メチルフェニデートは制御物質であり、このように、薬物投入は特別な懸念事項である。この投薬レジメは、通例、少なくとも1用量を授業日の間に投与することを必要とするが、概して、子供は、薬物を学校で自ら投与しようとはしない。この理由から、認定された学校職員は、通例、授業日の間に薬物を子供に投与する責任を負うが、しかしながら、この方法は、子供の医学的プライバシーの問題および同級生により烙印を押される可能性が増大する。その上、薬物の輸送、保存および供給を、典型的には、記録および/またはモニターしなければならず、そして様々な関係者、すなわち、子供、教師および認定された学校職員のスケジュールを調整して、合わせなければならないことから、コンプライアンスの問題はさらに複雑となる。残念な結果は、用量を与えるのが遅いか、またはすっかり与え損なってしまうと、治療効力の減少をきたし得ることである。
【0028】
上記の全ての理由から、長時間の間、実質的には一定の薬物放出を与え、それによって、授業日の間の用量投与の必要性を排除するメチルフェニデートの持続放出型経口投薬形態は、喜ばしい改善であるらしい。実際、そのような持続放出型投薬形態のメチルフェニデートが数年間市販されている。しかしながら、この投薬形態での臨床経験は、制御放出型投薬形態を服用する患者における行動症状が、複数回用量の即時放出型投薬形態を服用する患者における行動症状に比べて、その日の後半には十分制御されないという点で期待外れとなっている。その上、即時放出型投薬形態に比べて、制御放出型投薬形態の作用のより遅い開始は、多くの患者にとって満足のいくものではない。
【0029】
驚いたことに、長時間にわたり実質的には一定というよりはむしろ実質的に上昇する放出速度でのメチルフェニデートの投与は、複数回用量の即時放出型メチルフェニデート投薬形態で得られる効力と同様の治療効力を与えることが発見されている。この発見の詳細は、1997年7月31日に提出した米国同時係属出願第910,593号に開示しており、本出願は、この米国同時係属出願の一部継続出願である。簡単に再検討するために、ある臨床試験において、3つの異なる放出速度レジメ、すなわち、即時放出、一定放出および上昇放出により投与したプラセボおよびメチルフェニデートの行動、注意、および認識効力の比較を行った。即時放出型メチルフェニデートは、2回に時間をあけた別個の用量として投与した。一定放出レジメは、初期充填用量として投与し、残りの全量は、2回目の即時放出用量の投与時間を過ぎて延長する、時間の詰まった間隔にて、等しく少ない用量で投与した。上昇放出レジメは、初期充填用量として投与し、残りの全量は、2回目の即時放出用量の投与時間を過ぎて延長する、時間の詰まった間隔にて、増加する少ない用量で投与した。
【0030】
この試験において、一定放出レジメは、即時放出レジメに比べて、2回目の即時放出用量の投与後の評価期間で臨床有効性を減少させていることが観察された。他方では、上昇放出レジメは、これらの評価期間の間の即時放出レジメに匹敵可能な臨床効力を実証した。このように、上昇放出レジメは、長期治療期間の間の後半の期間にて一定放出レジメで見られる治療効力の減少を回避した。
【0031】
本発明の作用機構に関して何ら主張していないが、メチルフェニデートに対する急性耐性の発達は、幾つかの場合に観察されている治療有効性の満足のいかない減少に関する説明として提唱していることを述べる。メチルフェニデートの有効性が、一定放出レジメを利用した場合、さらにはまた、非常に時間の詰まった用量の即時放出型メチルフェニデート投薬形態を投与した場合の両方の長期治療期間にわたり見られるという、もう1つの臨床試験において、この理論に対する支持を実証した。しかしながら、上昇放出レジメは、治療効力を長期治療期間中ずっと維持することを示した。
【0032】
長期治療期間にわたる薬物有効性は、幾つかの状況において、長時間の間の上昇放出速度での薬物の投与で改善され得るという発見で、そのような放出速度を与えるのに適した持続放出型経口投薬形態の必要性が生ずる。本発明の一態様において、驚いたことに、二層経口浸透性投薬形態は、この必要性を満たすのに適し得ることが発見されている。別の態様において、驚いたことに、新規の三層コアを有する持続放出型経口浸透性投薬形態を製造することができ、上昇速度での薬物製剤の持続放出を長時間達成することもまた発見されている。
【0033】
当業界で知られているように、圧縮した錠剤コアを含んでなる浸透性投薬形態は、投与後に短期間を必要とし、ここで、薬物を放出し始めるのに十分水和されるようになる。幾つかの薬物療法に関して、初期の薬物放出の僅かな遅延は、満足のいくものではない。この問題は、半透膜の表面上に適用する即時放出型保護膜に供給する、初期用量の薬物の添加で克服される。本発明の好ましい態様において、本明細書中に開示するように、そのような即時放出型薬物保護膜を二層または三層の浸透性投薬形態の表面上に適用する。
【0034】
この開示の目的として、次の定義を適用する。
【0035】
本明細書中での明瞭性および便宜性のために、薬物投与時間を0時間(t=0時間)、適当な時間単位での投与後の時間を、例えば、t=30分またはt=2時間等と呼ぶ慣例を利用する。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「薬物」という用語は、通例、生存する有機体へと送達すると、望ましい、通常、有利な効果をもたらす、薬理学的に活性な物質をいう。薬物組成物は、通例、その薬学的に許容され得る塩の形態で臨床的に利用される。その上、幾つかの薬物組成物は、キラリティーを示し、このことから、1つ以上の光学異性体を有する。異なる光学異性体は、異なる薬理学的効果を示し得るので、ある薬物の1つの光学異性体の実質的には純粋な形態、またはその薬学的に許容され得る塩を利用するのが有利となり得る。従って、「薬物」という用語は、その薬学的に許容され得る塩を含め、そして薬物組成物およびその薬学的に許容され得る塩の実質的には純粋な異性体を含め、薬物組成物の臨床的に有用な形態をいう。限定された数の薬物を本明細書中の例示的な態様に示すが、本発明は、例示的な態様により限定されるものではなく、当業者により理解されるような他の適当な薬物に十分適用可能である。
【0037】
本発明の投薬形態で取込む薬物の量は、個々の薬物、治療適応症および望ましい投与期間、例えば、12時間毎、24時間毎等により変更する。投与するのが望ましい薬物の用量により、1つ以上の投薬形態を投与し得る。
【0038】
薬物「放出速度」とは、単位時間あたりに投薬形態から放出される薬物の量、例えば、時間あたりに放出される薬物のミリグラム(mg/時間)をいう。薬物放出速度は、当業界で知られているインビトロでの投薬形態の溶解試験条件の下に計算する。本明細書中で使用する場合、「投与後に」指定された時間で得られる薬物放出速度とは、適当な溶解試験の実行後に指定された時間で得られるインビトロでの薬物放出速度をいう。本明細書中に記載する実施例で利用する溶解試験は、USP VII型 浴インデキサー(indexer)に取り付けた金属コイルの試料ホルダーに入れて、37℃にて一定温度の水浴中で平衡化した酸性水(pH=3)約50mlに浸漬した投薬形態で行った。放出速度溶液のアリコートをクロマトグラフシステムに注入して、試験間隔の間に放出された薬物の量を定量した。
【0039】
経口投薬形態からの薬物放出を評価するために一般に使用される標準測定は、投薬形態内の薬物の90%が放出される時間である。この測定を投薬形態に関する「T90」と呼ぶ。
【0040】
ある薬物の「即時放出」用量とは、約1時間以下、好ましくは約30分以下の時間内に実質的には完全に放出される用量をいう。本明細書中で使用する場合、ある投薬形態の表面上にコーティングとして適用する薬物の即時放出用量とは、適当な薬学的に許容され得る担体中で製造して、投与すると迅速に溶解するコーティング溶液を形成し、それによって、薬物の即時放出用量を与える薬物の用量をいう。当業界で知られているように、そのような即時放出型薬物保護膜は、基礎をなす投薬形態内に含まれる薬物と同じ薬物または異なった薬物を含み得る。
【0041】
「周期的放出速度」とは、その指定された周期的間隔の終了時、すなわち、測定を行った場合に各々の周期的間隔で測定される、指定された周期的間隔の間に投薬形態から放出される薬物の量をいい、放出される薬物の量は、その周期的間隔の間の周期的放出速度を示す。例えば、t=1時間で測定される放出された薬物の量は、投与後、最初の1時間の間の投薬形態からの周期的放出速度を示し、t=2時間で測定される放出された薬物の量は、投与後、2回目の1時間の間の周期的放出速度を示す等である。
【0042】
「上昇放出速度」とは、直前の周期的放出速度以上に増加する周期的放出速度をいい、ここで、周期的間隔は同じである。例えば、投薬形態から放出される薬物の量を1時間間隔で測定して、投与後、5回目の1時間の間に放出される(t=5時間で測定される)薬物の量が、投与後、4回目の1時間の間に投薬形態から放出される(t=4時間で測定される)薬物の量より大きい場合、4回目の1時間から5回目の1時間まで上昇放出速度が起こっている。
【0043】
測定される最初の周期的放出速度、例えば、t=1時間(0に等しくない限り)での周期的放出速度は、常に、その前の期間、例えば、投薬形態を投与するより前の時間の間の放出速度より大きく、このことから、最初の周期的放出速度は、常に、上昇放出速度の発生を構成することが認識される。
【0044】
本明細書中に記載する、上昇放出速度とは、薬物の持続放出を与えるのに適した投薬形態からの放出速度をいい、投薬形態に適用し得る、いずれの即時放出型薬物コーティングからの薬物の放出も含まれない。基礎をなす投薬形態上へのコーティングとして適用する薬物の即時放出用量をさらに含んでなる投薬形態の態様において、t=1時間で測定される薬物放出は、通例、即時放出型薬物コーティングから放出される薬物、および基礎をなす投薬形態から放出される、いずれかの薬物の両方を反映するが、しかしながら、t=2時間での薬物放出速度がt=1時間での薬物放出より大きいかどうかを測定する際には、薬物保護膜から放出される薬物の量を無視する。
【0045】
上昇放出速度を与える間の時間に関して本明細書中で使用する場合、「長時間」とは、t=0時間で開始して、投薬形態の関連したT90の少なくとも中間点まで、好ましくは中間点を超えても続く時間をいう。本発明の投薬形態は、薬物の持続放出を与えようとするものであるので、本発明の目的に適当なT90は少なくとも約6時間であり、その結果、上昇放出速度を与える間の「長時間」は、少なくとも3時間である。
【0046】
上に列挙した定義により、「長時間の間の上昇放出速度」とは、投薬形態に関連したT90の中間点まで、好ましくは中間点を超えての投薬形態の投与時間から得られる、薬物の上昇放出速度をいう。説明するために、投薬形態が約8時間のT90を有するという状況を考える。この状況では、「長時間の間の上昇放出速度」は、t=4時間までの各々の時間での放出速度が直前の時間における放出速度より大きい場合に達成される。好ましくは、その放出速度は、t=4時間を超える時間の間にも上昇し続ける。
【0047】
二層経口浸透性投薬形態並びにそのような投薬形態を製造および使用する方法は、当業界で知られており、例えば、Alza Corporationが所有する次の米国特許に記載されて、特許請求されている:第4,327,725号;第4,612,008号;第4,783,337号;および第5,082,688号(これらの米国特許に記載されている内容は各々、本明細書の一部を構成する)。先行技術の二層浸透性投薬形態は、比較的短い初期期間の上昇放出速度の後に、実質的には一定の放出速度が大部分のT90期間にわたり続くという、薬物製剤の持続放出を達成する。T90期間の少なくとも50%の長時間の間の上昇放出速度の達成は、先行技術内で見出されていない。本発明の投薬形態は、長期療法期間の後半部分の間に有効性の減少を示すことなく、連続的で有効な薬物療法を長期療法期間にわたり与えるのに有用である。
【0048】
本発明の二層経口浸透性投薬形態には、水和すると、送達可能な薬物組成物を形成するために選択された薬物および賦形剤を含んでなる第一成分層、および流体膨張可能なオスモポリマーおよび賦形剤を含んでなる第二押出層が含まれ、ここで、2つの層を二層の錠剤コアへと圧縮した後、半透膜を適用して、それを通じての薬物放出に適当なオリフィスを形成する。成分層の浸透性、半透膜の流体流動性および錠剤コアの形状が含まれる特徴の組み合わせは、長時間の間、薬物が上昇速度で放出されることを確実なものとする。
【0049】
重要なことには、各々の成分層が円周幅および上端と下端との間の長さをもつ十字寸法で実質的には円筒形となるよう、本発明の二層錠剤コアを形造る。その結果得られた二層錠剤コアが成分層と同じ円周幅および成分層の長さを合わせた長さを有するよう、2つの層を一緒に長手方向に圧縮する。全体の形状は、二層錠剤コアがその長さより短い円周幅を有し、円筒形の「先細った」上端および円筒型の「先細った」下端を有するという、そして各々の先細った端が異なった成分の錠剤層を含んでなるという、「カプセル型」として記載することができる。
【0050】
この開示の目的として、上記の錠剤コアを長手方向に圧縮した錠剤(「LCT」)コアと呼ぶ。このLCTの形状は、押出層が半透膜により形成されるコンパートメント内で長手方向に膨張すると、半透膜と接触している押出層の表面領域が他の形状を使用する場合より増加することを確実なものとする。
【0051】
好ましい態様において、押出層における十分な活性は、比較的大きな濃度(少なくとも約35%)の浸透性により有効な溶質、または塩化ナトリウムのような浸透剤の使用により得られる。その結果、押出層の大きさは比較的大きく、薬物および賦形剤を含む第一成分層より僅かに大きくなり得る。その上、ある態様に関して、ソルビトールは、第一成分層における有用な賦形剤であることが見出された。驚いたことに、LCTコアの形状、比較的高いパーセントの浸透剤、および幾つかの例示的態様において、賦形剤としてのソルビトールの使用を含め、上記の特徴の組み合わせは、長時間の間、望ましい上昇放出速度を二層経口浸透性投薬形態から与えることが発見されている。そのような二層浸透性投薬形態の例示的な態様を以下の実施例1−3に詳述する。
【0052】
二層経口浸透性投薬形態15の態様を図1に断面で示す。成分は、一定の尺度で描かれていない。二層のLCTコアは、薬物および選択された賦形剤を含む第一成分層21、並びに少なくとも1つの流体膨張可能なポリマーを含み、そして場合により、選択された賦形剤と共に、少なくとも1つの浸透剤を含むことのある第二押出層29を含んでなる。適当な賦形剤は、同業界で知られており、希釈剤、担体、結合剤、充填剤および加工助剤が含まれる。半透膜57は、二層錠剤コアを取り巻いて、コンパートメントを形成し、適当な大きさとしたオリフィス55は、半透膜を通して、第一成分層21へと形成されて、薬物製剤がコンパートメント内から放出されるのを可能とする。説明したように、オリフィス55は、第一成分層を含んでなる投薬形態の先細った端に形成するのが好ましい。操作においては、二層浸透性投薬形態成分の協力によって、薬物を第一薬物含有層から上昇放出速度で長時間放出する。図1には示していないが、薬物の即時放出用量は、所望ならば、本明細書中の他の箇所に記載するように、薬物含有保護膜を二層投薬形態に適用することにより与え得る。
【0053】
上記の二層浸透性投薬形態に加えて、驚いたことに、上昇薬物放出速度を長時間示す経口浸透性投薬形態はまた、半透膜により取り巻かれ、その半透膜を通して薬物製剤を放出するのに適当な流出方法を有する、新規の三層の錠剤コアで得ることもできることが発見されている。新規の三層の錠剤コアは、第一薬物含有層、第二薬物含有層および第三押出層を有する。操作においては、投薬形態成分の協力によって、長時間の間、上昇放出速度が達成されるよう、薬物を第一薬物含有層から、次いで、第二薬物含有層から持続および制御方法で上手く放出する。
【0054】
三層コアの第一薬物含有層と第二薬物含有層との間の薬物濃度勾配は、三層浸透性投薬形態からの上昇薬物放出速度の達成を長時間促進することが発見されている。その結果、薬物含有層における他の賦形剤をより柔軟に変更して、便宜性および薬学的簡潔的確性を生み出すことのような他の目的のために調節し得る。例えば、三層浸透性投薬形態は、賦形剤としてのソルビトールの使用を回避するのが好ましい。これは、ソルビトールが非常に水媒和性(hydroscopic)であり、保存の間に水分を吸って、取り扱いおよび製造、さらにはまた、より長期の安定性の懸念事項において困難を提起し得ることから、製造効率および生成物の貯蔵寿命の利点を与える。その上、押出層における十分な活性は、押出層の大きさを2つの薬物含有層の大きさに比べてより小さくすることができるよう、比較的より低い濃度(約25%未満)の浸透性により有効な溶質の使用により得られる。好ましくは、押出層は、第一薬物含有層と第二薬物含有層とを合わせた大きさより小さい。より小さな大きさとした押出層の利点は、所望ならば、投薬形態の全体の大きさが製造課題を引き起こすほど、および/または患者の口に合わないものとなるほど大きくなることなく、より多くの用量の薬物を収容し得ることである。
【0055】
現在の好ましい態様において、三層浸透性投薬形態の水和速度は、半透膜における流動促進剤の包含で改善される。その上、上記のような、長手方向に圧縮した錠剤(「LCT」)コアの形状を三層浸透性投薬形態に使用して、水和を高めるのもまた好ましい。現在の好ましい態様において、LCT三層コアの形状、第一成分層と第二成分層との間の適当な薬物濃度勾配、成分層の浸透性および半透膜の流体流動性が含まれる特徴の組み合わせは、長時間の間、薬物放出の望ましい上昇速度を達成する。有利には、そのような好ましい態様は、首尾一貫した信頼性のある操作を示し、大規模な基盤で有効に製造することができる。
【0056】
保護膜および美的保護膜として適用する薬物の即時放出用量をさらに含んでなる三層経口浸透性投薬形態14の好ましい態様を図2に断面で示す。三層のLCTコアは、選択された賦形剤と共に、選択された薬物を薬学的に許容され得る形態で含む第一成分層20;選択された賦形剤と共に、より高い濃度の薬物を含む第二成分層18;および少なくとも1つのオスモポリマーを含み、そして場合により、選択された賦形剤と共に、少なくとも1つの浸透剤を含むことのある第三押出層28を含んでなる。半透膜56は、三層錠剤コアを取り巻いて、コンパートメントを形成し、適当な大きさとしたオリフィス54は、半透膜を通して、第一成分層へと形成されて、薬物製剤がコンパートメント内から放出されるのを可能とする。説明したように、オリフィス54は、第一成分層を含んでなる投薬形態の先細った端に形成するのが好ましい。操作においては、三層浸透性投薬形態成分の協力によって、薬物を、持続および制御方法で、第一薬物含有層から、次いで、第二薬物含有層から、上昇放出速度で上手く長時間放出する。
【0057】
図2に示すように、好ましい態様はさらに、三層浸透性投薬形態の表面上に適用する保護膜60内に含まれる薬物の即時放出用量を含んでなる。薬物を、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような、適当な賦形剤と混合して、投与後、迅速に溶解して、薬物を放出する、三層浸透性投薬形態の半透膜の表面上をコーティングするための溶液を調製する。
【0058】
図2に示すように、薬物含有保護膜60の表面上に適用する視覚美的保護膜62を与えるのもまた好ましい。当業界で知られているように、そのような美的保護膜は、味覚マスキング、外観、並びに嚥下および印刷、包装等といったような、さらなる処理段階を容易にするための「滑空性(glidability)」の改善が含まれる利点を与える。長時間にわたり実質的には上昇する放出速度を示す、三層浸透性投薬形態の例示的な態様を以下の実施例4−6並びに実施例8および9に詳述する。
【0059】
本発明の長時間の間も上昇放出速度を示す経口浸透性投薬形態の投与による、長期治療期間にわたる治療有効性の連続した維持は実証されている。例示を以下の実施例7に記載する。特に、メチルフェニデートを含む、そのような浸透性投薬形態を使用して、ADHDの有効な1日1回療法を提供することができることが発見されている。この発見は、複数回の1日用量のメチルフェニデートに対する必要性を排除して、またさらに、複数回用量の即時放出型メチルフェニデートにより与えられる治療効力に匹敵する治療効力を日中ずっと与えることにより、ADHDの薬物療法における重要な改善を示す。
【0060】
次の実施例は、本発明を説明するものであって、本発明の開示および付随する特許請求の範囲から考えて、これらの実施例およびその他の対応物は、技術の分野に精通した者に明らかとなることから、その実施例は、本発明の範囲を何ら限定するものとして見なされるべきものではない。
【実施例】
【0061】
実施例1
当業界で知られており、本出願が一部継続出願となる、1997年11月10日に提出した米国同時係属出願第967,606号で詳細に開示している従来の製造方法により、二層経口浸透性投薬形態を製造した。簡単に言えば、塩酸メチルフェニデートおよび選択された賦形剤を含む第一成分層、並びに適当なオスモポリマー、40重量%の浸透剤および選択された賦形剤を含む第二押出層を造粒方法により別々に調製した。次に、第一成分層および第二押出層の造粒調製物を一緒に長手方向に圧縮して、二層のLCTコアを形成した。次いで、選択された半透膜で二層のLCTコアの周囲をコートし、それを通じて、薬物放出に適当な30ミルのオリフィスを第一成分層へと形成した。
【0062】
製造した各々の投薬形態は、次のものを包含していた。
【0063】
第一成分層
14.08 mg 塩酸メチルフェニデート;
90.26 mg ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数200,000);
5.5 mg ポリ(ビニルピロリドン)(平均分子量数40,000);
0.11 mg ステアリン酸マグネシウム;
0.555mg ブチルヒドロキシトルエン。
【0064】
第二押出層
71.032mg ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数7,000,000);
52.8 mg 塩化ナトリウム;
6.6 mg ポリ(ビニルピロリドン)(平均分子量数40,000);
1.32 mg 赤色酸化鉄;
0.132mg ステアリン酸マグネシウム;
0.555mg ブチルヒドロキシトルエン。
【0065】
半透膜
15.3 mg 酢酸セルロース(アセチル含量39.8%);
1.7 mg ポリ(エチレングリコール)(平均分子量数3350)。
【0066】
インビトロでの溶解試験を使用して、投薬形態からの周期的放出速度を1時間毎に10時間測定した。薬物の残量0.72mgが投薬形態に残った。上昇放出速度が発生したかどうかの指標と共に、結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1から分かるように、薬物は、投薬形態から上昇速度で長時間放出され、すなわち、90%より多くの薬物がt=8時間までに放出されて、上昇放出速度がT90の中間点を十分超える長時間であるt=6時間まで発生した。
【0069】
実施例2
当業界で知られており、本出願が一部継続出願となる、1997年11月10日に提出した米国同時係属出願第967,606号で詳細に開示している従来の製造方法により、二層経口浸透性投薬形態を製造した。簡単に言えば、塩酸メチルフェニデート、ソルビトールおよび選択された賦形剤を含む第一成分層、並びに適当なオスモポリマー、40重量%の浸透剤および選択された賦形剤を含む第二押出層を造粒方法により別々に調製した。次に、第一成分層および第二押出層の造粒調製物を一緒に長手方向に圧縮して、二層のLCTコアを形成した。次いで、選択された半透膜で二層のLCTコアの周囲をコートし、それを通じて、薬物放出に適当な30ミルのオリフィスを形成した。
【0070】
製造した各々の投薬形態は、次のものを包含していた。
【0071】
第一成分層(110mg)
12.8 % 塩酸メチルフェニデート;
54.75% ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数200,000);
25.4 % ソルビトール;
5 % ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(平均分子量数11,200);
2 % ステアリン酸マグネシウム;
0.05 % ブチルヒドロキシトルエン。
【0072】
第二押出層(132mg)
53.85% ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数7,000,000);
40 % 塩化ナトリウム;
5 % ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(平均分子量数11,200);
1 % 赤色酸化鉄;
0.1 % ステアリン酸マグネシウム;
0.05% ブチルヒドロキシトルエン。
【0073】
半透膜(42mg)
47.5 % 酢酸セルロース(アセチル含量39.8%);
47.5 % 酢酸セルロース(アセチル含量32%);
5 % ポリ(エチレングリコール)(平均分子量数3350)。
【0074】
投薬形態からの周期的放出速度を1時間毎に12時間測定した。投薬形態に残った薬物の残量は0であった。上昇放出速度の発生の指標と共に、結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2から分かるように、90%より多くの薬物がt=9時間までに放出されて、上昇放出速度がT90の中間点を十分超える長時間であるt=8時間まで発生した。
【0077】
実施例3
当業界で知られており、本出願が一部継続出願となる、1997年11月10日に提出した米国同時係属出願第967,606号で詳細に開示している従来の製造方法により、保護膜として半透膜上に適用する薬物の即時放出用量をさらに含んでなる二層経口浸透性投薬形態を製造した。簡単に言えば、塩酸メチルフェニデート、ソルビトールおよび選択された賦形剤を含む第一成分層、並びに適当なオスモポリマー、39.8重量%の浸透剤および選択された賦形剤を含む第二押出層を造粒方法により別々に調製した。次に、第一成分層および第二押出層の造粒調製物を一緒に長手方向に圧縮して、二層のLCTコアを形成した。次いで、選択された半透膜で二層のLCTコアの周囲をコートし、それを通じて、薬物放出に適当な30ミルのオリフィスを形成した。薬物含有保護膜混合物を調製して、浸透性投薬形態の半透膜上をコートした。場合により、味覚マスキング保護膜をまた適用することもある。
【0078】
製造した各々の浸透性二層投薬形態は、次のものを包含していた。
【0079】
第一成分層
14 mg 塩酸メチルフェニデート;
61 mg ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数2,000,000);
27.5 mg ソルビトール;
5.5 mg ポリビニルピロリドン;
2.2 mg ステアリン酸マグネシウム;
0.055mg ブチルヒドロキシトルエン。
【0080】
第二押出層
72 mg ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数7,000,000);
53 mg 塩化ナトリウム;
6.6 mg ポリビニルピロリドン;
1.3 mg 赤色酸化鉄;
0.132mg ステアリン酸マグネシウム;
0.066mg ブチルヒドロキシトルエン。
【0081】
半透膜
20 mg 酢酸セルロース(アセチル含量39.8%);
20 mg 酢酸セルロース(アセチル含量32%);
2 mg ポリ(エチレングリコール)(平均分子量数4000)。
【0082】
60% ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび40% 塩酸メチルフェニデートを含んでなる即時放出型薬物含有保護膜を調製して、最終溶液10mg(すなわち、メチルフェニデート塩4mgを含む)で浸透性投薬形態の半透膜上をコートする。
【0083】
薬物保護膜および浸透性投薬形態からの周期的放出速度を、30分、1時間、次いで、その後は1時間毎に9時間測定した。薬物保護膜内に含まれるメチルフェニデート4mgは、最初の30分以内に放出され、0.41mgのt=1時間で示された周期的放出速度は、その後30分間隔の間に二層浸透性投薬形態から放出された薬物を構成する。投薬形態に残った薬物の残量は0であった。上昇放出速度の発生の指標と共に、1時間毎の結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
表3から分かるように、即時放出型薬物保護膜を除き、90%より多くの薬物がt=9時間までに放出されて、上昇放出速度がT90の中間点を十分超える長時間であるt=8時間まで発生した。
【0086】
実施例4
当業界で知られており、本出願が一部継続出願となる、1997年8月19日に提出した米国同時係属出願第937,336号で詳細に開示している従来の製造方法により、三層経口浸透性投薬形態を製造した。簡単に言えば、塩酸プソイドエフェドリンおよび選択された賦形剤を含む第一成分層、より高い濃度の塩酸プソイドエフェドリンおよび選択された賦形剤を含む第二成分層、並びに適当なオスモポリマー、浸透剤および選択された賦形剤を含む第三押出層を造粒方法により別々に調製した。次に、第一成分層、第二成分層および第三押出層の造粒調製物を一緒に長手方向に圧縮して、三層のLCTコアを形成した。次いで、選択された半透膜で三層のLCTコアの周囲をコートし、それを通じて、薬物放出に適当な30ミルのオリフィスを形成した。
【0087】
製造した各々の投薬形態は、次のものを包含していた。
【0088】
第一成分層
4.4 mg 塩酸プソイドエフェドリン;
15.3 mg ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数300,000);
1.1 mg ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(平均分子量数9,200);
1.1 mg ポリオキシエチレン 40 ステアレート;
0.11 mg ステアリン酸マグネシウム。
【0089】
第二成分層
13.5 mg 塩酸プソイドエフェドリン;
2.59 mg ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数300,000);
0.9 mg ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(平均分子量数9,200);
0.9 mg ポリオキシエチレン 40 ステアレート;
1.018mg 赤色酸化鉄;
0.09 mg ステアリン酸マグネシウム。
【0090】
第三押出層
22.2 mg ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数7,000,000);
12 mg 塩化ナトリウム;
2 mg ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(平均分子量数9,200);
2 mg ポリオキシエチレン 40 ステアレート;
1.2 mg 架橋アクリル酸ポリマー;
0.4 mg 赤色酸化鉄;
0.2 mg ステアリン酸マグネシウム;
【0091】
半透膜
11.4 mg 酢酸セルロース(アセチル含量39.8%);
0.6 mg ポリエチレングリコール(平均分子量数3350)。
【0092】
浸透性投薬形態からの周期的放出速度を1時間毎に7間測定して、上昇放出速度の発生の指標と共に、結果を表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
表4から分かるように、約87%の薬物が最初の7時間の間に放出されて、この期間の間ずっと、上昇放出速度が達成された。
【0095】
実施例5
当業界で知られており、本出願が一部継続出願となる、1997年8月19日に提出した米国同時係属出願第937,336号で詳細に開示している従来の製造方法により、第二成分層における薬物濃度が第一成分層より大きいという薬物濃度勾配を有し、また第一成分層の粘度が第二成分層の粘度より少なくて、第二成分層の粘度が第三押出層の粘度より低いという粘度勾配もまた有する、三層経口浸透性投薬形態を製造した。
【0096】
製造した各々の投薬形態は、次のものを包含していた。
【0097】
第一成分層(350mg)
8.6 % ニカルジピン;
54.8 % ソルビトール;
36.8 % ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数200,000)。
【0098】
第二成分層(120mg)
45 % ニカルジピン;
50 % ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数300,000);
5 % ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(平均分子量数9,200)。
【0099】
第三押出層(350mg)
68.75% ポリ(エチレン)オキシド(平均分子量数7,000,000);
20 % 塩化ナトリウム;
5 % ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(平均分子量数9,200);
5 % 架橋アクリル酸ポリマー;
1 % 酸化鉄;
0.25% ステアリン酸マグネシウム。
【0100】
半透膜(43.5mg)
95 % 酢酸セルロース(アセチル含量39.8%);
5 % ポリエチレングリコール(平均分子量数3350)。
【0101】
その投薬形態は、半透膜を通して形成された25ミルの流出オリフィスを有して、コンパートメント内からの薬物製剤の放出を可能とした。約16時間の長時間の上昇放出速度は、実施例5の投薬形態で達成された。
【0102】
実施例6
従来の浸透性錠剤を製造する方法により、図2に示すような、保護膜として適用する薬物の即時放出用量をさらに含んでなる、本発明の三層浸透性投薬形態の好ましい態様を調製した。
【0103】
第一成分層は、次のものを含んでいた(重量%):9.40% 塩酸メチルフェニデート、83.71% ポリエチレンオキシド(Union Carbide,Danbury,CTの商標製品 Polyox N−80)、5% ポリビニルピロリドン(BASF Corp.,Mt. Olive,NJの製品 Kolidon 29−32);1.34% コハク酸;0.5% ステアリン酸;および0.05% ブチルヒドロキシトルエン。
【0104】
第二成分層は、次のものを含む(重量%):13.65% 塩酸メチルフェニデート、78.80% ポリエチレンオキシド(Union Carbide,Danbury,CTの商標製品 Polyox N−80)、5% ポリビニルピロリドン(BASF Corp.,Mt. Olive,NJの製品 Kolidon 29−32);1.95% コハク酸;0.5% ステアリン酸;0.05% ブチルヒドロキシトルエン;および着色剤として、0.05% 黄色酸化鉄。
【0105】
第三押出層は、次のものを含む(重量%):73.7% 高分子量ポリエチレンオキシド(Union Carbide,Danbury,CTの商標製品 Polyox 303)、20% 塩化ナトリウム;5% ポリビニルピロリドン(BASF Corp.,Mt. Olive,NJの商標製品 Kolidon 29−32);0.25% ステアリン酸;0.05% ブチルヒドロキシトルエン;および着色剤として、1% 緑色酸化鉄。
【0106】
第一成分層、第二成分層および第三押出層を各々、流動床造粒機で粒状化組成物へと別々に調製した。次いで、その粒状化組成物を回転錠剤圧縮機で連続して長手方向に圧縮して、三層のLCTコアを製造した。各々の投薬形態に関して、第一成分層造粒物40mgおよび第二成分層造粒物75mgをダイへと100ニュートンで連続的に充填して詰めた。次いで、そのダイに対する第三押出層造粒物90mgをダイに加えて、最終圧縮を1500ニュートンで行った。
【0107】
半透膜の組成物は、83重量%の酢酸セルロース(39.8%のアセチル含量を有する、Eastman Chemical,Kingsport,TNの製品 CA 398−10)および17重量%の酸化エチレンと酸化プロピレンとのコポリマー(流動促進剤として加える、BASF Corp.,Mt. Olive,NJの商標製品 Poloxamer 188)であった。2つの成分を99.5% アセトンと0.5% 水との混合物に溶解して、5% 固溶体を形成した。次いで、パンコーターにおいて、その溶液を三層のLCTコア上に噴霧して、重量25.7mgおよび厚さ4−5ミルとした。
【0108】
半透膜を適用して、三層のLCTコアを含むコンパートメントを形成した後、0.76mm(40ミル)のオリフィスを第一成分層に最も近いコンパートメントの先細った端に半透膜を通して穴を開け、それによって、メチルフェニデート14mgを各々含む、好ましい三層浸透性投薬形態を形成した。各々の投薬形態は、直径約5.3mmをもつ長さ12mmであった。
【0109】
薬物の即時放出初期用量を与える薬物保護膜は、約30重量%の塩酸メチルフェニデート、約70重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(Dow Chemical Co.,Midland,MIの商標名製品 Methocel E3)、および微量のリン酸(すなわち、溶液中、リン酸20mlを薬物87kgに加えた)を含む。成分を溶解して混合し、10% 固体組成物を含む溶液を形成することにより、水性コーティング溶液を調製する。次いで、パンコーターにおいて、その溶液を三層浸透性投薬形態の半透膜上に噴霧して、メチルフェニデート約4mgの即時放出用量を含んでなる重量約14.0mgとした。
【0110】
最終美的保護膜組成物の重量は16.9mgであり、微量のカルナウバロウ、グリダント(glidant)と共に、Opadry II、黄色(Colorcon,West Point,PAの商標名製品)の下層およびOpadry 透明の上層を含んでおり、次のように調製して適用した:最初に、Opadry II(10%)を水(90%)に縣濁させて、薬物で表面をコートした投薬形態上に噴霧し;次に、透明のOpadry(5%)を水(95%)に縣濁させて、薬物で表面をコートした投薬形態およびOpadry IIで表面をコートした投薬形態上に噴霧し;最後に、その投薬形態をコーターでカルナウバロウと共に10分間回転させて、約100ppmのロウが透明のOpadry保護膜上に均等に分配されるようにした。
【0111】
多くの薬学的投薬形態は、本明細書中で利用するメチルフェニデートの塩酸塩のような塩の形態で薬物を利用する。しかしながら、水溶液中で調製する薬物のそのような塩の形態は分解しやすく、このことから、しばしば、安定性および貯蔵寿命の問題を有する。水溶液への適当なpH調節剤の添加は、望ましくない分解を減少させて、生成物の安定性を改善することが発見されている。特に、好ましい態様である、塩酸メチルフェニデートを含んでなる三層浸透性投薬形態において、適当な抗分解剤、すなわち、第一成分層および第二成分層ではコハク酸、薬物保護膜ではリン酸の添加により、薬物成分の分解を最小限とすることができることが発見されている。他の適当な抗分解剤には、水性媒体に溶解しても、薬学的に許容され得る、すなわち、非毒性でヒトへの経口投与に適当であって、十分なpH調節能力を示す、すなわち、4以下、好ましくは3以下のpHを有する化合物が含まれる。さらなる例には、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フマル酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、塩酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、シュウ酸、乳酸、マロン酸、グリセリン酸およびアスコルビン酸が含まれる。
【0112】
記載したように製造する24の試料投薬形態に関する周期的放出速度を1時間毎に12時間測定して、図3にグラフ形式で表わした。上昇放出速度の発生の指標と共に、各々の時間に放出される平均量を表5に示す。全部で4mgの即時放出用量が、本質的には、最初の1時間以内に放出され、上昇放出速度がt=2時間で発生する、すなわち、t=2時間での平均量を、即時放出用量を表わす4mg未満のt=1時間での平均量に比べる測定に関して、この量は無関係であることを述べる。
【0113】
【表5】

【0114】
表5から分かるように、即時放出型薬物保護膜を除き、90%より多くの薬物がt=8時間までに放出されて、上昇放出速度がT90の中間点を十分超える長時間であるt=6時間まで発生した。
【0115】
実施例7
メチルフェニデート14mgを含み、さらにはまた、メチルフェニデート4mgを含む即時放出型薬物保護膜を含んでなる三層浸透性投薬形態の単回用量の治療的有効性を試験して、即時放出型メチルフェニデートの複数回用量に比べた。異なった日に次のレジメで処置した同じ被験者において、安全性および治療的効力のパラメーターを12時間評価した:三層浸透性投薬形態をt=0時間で1回投与したという例示的なレジメ、および即時放出型メチルフェニデート(Ritalin(商標))をt=0時間、t=4時間、およびt=8時間の3回投与したという標準的なレジメ。被験者は、現時点でのメチルフェニデートの使用者であるので、各々のレジメの間に投与するメチルフェニデートの用量を幾分変更して、各々の被験者が日常的に投与する「通常用量」と出来るだけ厳密に同等となるようにした。比較目的として、実際の用量を三層浸透性投薬の単回用量18mgおよび3回用量5mgとして投与するRitalin(商標)15mgに対して標準化した。
【0116】
各々のレジメに関する試験期間の間、血漿薬物濃度を全ての被験者において同時に測定した。選択された時間は、最初の2回用量の即時放出型メチルフェニデートの投与の直前の時間、および最初の2回用量の即時放出型メチルフェニデートの投与から1.5時間後および2.5時間後の時間(すなわち、t=0時間、t=1.5時間、t=2.5時間、t=4時間、t=5.5時間、t=6.5時間)、並びに3回用量の投与の直前の時間、および3回用量の投与のから1.5時間後および3.5時間後の時間(すなわち、t=8時間、t=9.5時間およびt=11.5時間)に対応した。
【0117】
図4において、例示的なレジメ(白抜きの菱形)で処理する間に、また標準的なレジメ(黒塗りの丸形)で処理する間に、1つのグループの試験参加者(n=16)から得られる血漿薬物濃度をグラフ形式で示す。図3と4との比較は、t=約8時間までのインビトロでの放出速度とt=約9.5時間までのインビボでの血漿薬物濃度との間の相関関係を実証する。
【0118】
図4に示すように、各々の即時放出用量を投与した後の血漿薬物濃度は、比較的迅速に上昇した後、通例、次の用量を投与するまで、特質的な速度で下降する。三層浸透性投薬形態の投与後の血漿薬物濃度もまた、主に即時放出型薬物保護膜からの薬物の放出により、初期の比較的迅速な上昇を示す。しかしながら、その後、血漿薬物濃度は下降せず、9.5時間の期間まで実質的には上昇し続ける(t=5.5時間とt=6.5時間との間の僅かな「一時的減少(dip)」を省く)。2回目および3回目の即時放出用量を投与する約1時間前〜2回目および3回目の即時放出用量を投与してから約1.5時間後以内の期間の間の相違が特に著しい。標準的なレジメでは、これらの期間の間、血漿薬物濃度は、トラフ濃度まで下降した後、ピーク濃度まで再び上昇する。例示的なレジメでは、これらの同じ期間の間に、血漿薬物濃度は、実質的には、緩やかに上昇して、ピークもトラフも示さない。
【0119】
行動、注意、および認識機能を含め、安全性および治療的効力のパラメーターを、試験期間の最初の3時間および最後の3時間の間は1時間毎に、およびその間は2時間間隔で評価した。例示的なレジメの臨床的有効性は、12時間の試験期間中ずっと、標準的なレジメの臨床的有効性に厳密に匹敵可能である。ADHDの有効な1日1回療法は多くの利点を与え、複数回の1日用量のメチルフェニデートに対する必要性を排除する一方で、連続的な治療効力を日中ずっと与えることにより、薬物療法における有意な改善を与える。
【0120】
実施例8
実施例6の製造方法によるが、2倍多くのメチルフェニデートを含んでなる、すなわち、全部で28mgのメチルフェニデートを第一成分層および第二成分層内に含み、8mgのメチルフェニデートを薬物保護膜に含む、三層経口浸透性投薬形態を製造した。残りの成分もまた全て、重量%が実施例6と同じになるよう、2倍とする。第三押出層もまた2倍とする。半透膜は、実施例6と同じ組成を有していたが、約34mgの重量に適用した。
【0121】
これらの投薬形態は、約8mgが直ちに放出されると共に、メチルフェニデート36mgの放出を示し、残りの28mgは、長時間の間、上昇放出速度で放出された。
【0122】
実施例9
実施例6の製造方法によるが、全部で42mgのメチルフェニデートを第一成分層および第二成分層内に含み、12mgのメチルフェニデートを薬物保護膜に含むことを含んでなる、三層経口浸透性投薬形態を製造した。第一成分層は、次のものを含んでいた(重量%):11.5% 塩酸メチルフェニデート、81.6% ポリエチレンオキシド(Union Carbide,Danbury,CTの商標製品 Polyox N−80)、5% ポリビニルピロリドン(BASF Corp.,Mt. Olive,NJの製品 Kolidon 29−32);1.3% コハク酸;0.5% ステアリン酸;0.05% ブチルヒドロキシトルエン;および着色剤として、0.05% 黄色酸化鉄。第二成分層は、次のものを含んでいた(重量%):19.8% 塩酸メチルフェニデート、72.7% ポリエチレンオキシド(Union Carbide,Danbury,CTの商標製品 Polyox N−80)、5% ポリビニルピロリドン(BASF Corp.,Mt. Olive,NJの製品 Kolidon 29−32);1.95% コハク酸;0.5% ステアリン酸;および0.05% ブチルヒドロキシトルエン。第三押出層は、実施例6から2倍として、半透膜は、実施例6と同じ組成を有していたが、約34mgの重量に適用した。
【0123】
これらの投薬形態は、約12mgが直ちに放出されると共に、メチルフェニデート54mgの放出を示し、残りの42mgは、長時間の間、上昇放出速度で放出された。
【0124】
本発明の態様に適用する、本発明の特徴および利点を記載して指摘しているが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなしに、明細書内の記載における様々な修正、変更、付加、および省略がなされ得ることを認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的には、延長時間の間、穏やかに上昇する血漿メチルフェニデート濃度を与える方法であって、延長時間の間、メチルフェニデートを上昇放出速度で放出する投薬形態でメチルフェニデートを投与することを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−82195(P2012−82195A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222079(P2011−222079)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2000−551752(P2000−551752)の分割
【原出願日】平成11年5月27日(1999.5.27)
【出願人】(598158657)アルザ・コーポレーション (23)
【Fターム(参考)】