説明

開口部の断熱構造及び該断熱構造を用いた開口部の断熱工法

【課題】施工性が良好で、施工後の外観品質も良好なものとすることが出来、開口部の開閉性を損なうことなく、断熱性を向上させることが、出来、既存の建物の改修工事に用いて好適な開口部の断熱構造及び該断熱構造を用いた開口部の断熱工法を提供する。
【解決手段】住宅10の窓開口部12に装着される窓サッシ部材14が、窓開口部12周囲に固着されるサッシ枠体15及び、可動可能に設けられる窓ガラス部材16を有する開口部の断熱構造である。
窓サッシ部材14には、前記窓ガラス部材16の可動範囲を妨げない範囲で、断熱塗装層20が塗布されている。
断熱塗装層20は、複数層の塗布層21,21が重なって構成され、光を反射すると共に、断熱効果を有する中空ビーズ21a…が含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の窓部等の開口部に用いられる開口部の断熱構造に関し、特に、既存の建物の改修工法として用いて好適な開口部の断熱工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等、建物の開口部には、アルミサッシ部材が装着されている。
【0003】
このアルミサッシ部材は、主に、窓ガラス等の周囲に装着されるアルミニウム等の軽金属製の窓枠材で、障子部材を、前記開口周縁部に固着される軽金属製のサッシ枠材によって、開閉可能に支持するように構成されている。
【0004】
また、建物内外の断熱性能を向上させる為、断熱塗料を、建物の内外壁面に塗布するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
更に、建物の耐火目的で、サッシ部材に、耐火塗料を塗布するものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
このようなものでは、耐火塗料が表面に塗布されたサッシ部材の耐火性が向上する。
【特許文献1】特開平10−152648号公報
【特許文献2】特開2004−169454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図8に示すように、耐火目的で、サッシ部材1に、耐火塗料2を塗布したものでは、この耐火塗料2に含まれる一般の顔料2a…が、屋外3からの太陽光等の赤外線4の照射を受けて、加熱されてしまう。
【0008】
このため、前記サッシ部材1を介して、屋外3から、屋内5に伝達される熱量6…が多くなってしまう。
【0009】
また、暖房時等、屋内5の温度が高い場合も、断熱性能を向上させることが困難で、結露及びエネルギーロスが発生してしまう虞があった。
【0010】
更に、一旦、サッシ枠材が、建物の開口部に固着された既存のサッシ構造に、リフォーム等によって、断熱改修工事を行う際には、別途、前記サッシ部材又は、障子部材に適合した断熱部材が、このサッシ部材1に添着若しくは、貼設される。
【0011】
この場合、サッシ部材1の形状に合わせた断熱部材を用いなければ、前記窓ガラスの周囲に設けられたサッシ枠材を開閉動作させる際に、干渉してしまう虞があり、施工現場での断熱材料の加工を必要とすると共に、施工性が良好であるとは言い難かった。
【0012】
更に、断熱部材として用いる断熱材料の種類が限られてしまうので、既存の建物の開口部周縁の色彩に、この断熱部材の色彩を合わせることが困難で、外観品質が良好でなくなってしまう虞もあった。
【0013】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、施工性が良好で、施工後の外観品質も良好なものとすることが出来、開口部の開閉性を損なうことなく、断熱性を向上させることが出来、既存の建物の改修工事に用いて好適な開口部の断熱構造及び該断熱構造を用いた開口部の断熱工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、断熱塗装層が塗布された金属製枠体を有する開口部の断熱構造を特徴としている。
【0015】
また、請求項2に記載されたものは、建物の開口部に取り付けられるサッシ部材が、開口部周囲に固着されるサッシ枠体及び、該サッシ枠体に可動可能に設けられる障子部材を有する開口部の断熱構造であって、前記サッシ部材には、前記障子部材の可動範囲を妨げない範囲で、断熱塗装層が塗布されている請求項1記載の開口部の断熱構造を特徴としている。
【0016】
更に、請求項3に記載されたものは、前記断熱塗装層は、複数層の塗布層が重なって構成される請求項1又は2記載の開口部の断熱構造を特徴としている。
【0017】
そして、請求項4に記載されたものは、前記断熱塗装層は、光を反射すると共に、断熱効果を有する中空ビーズを含有する請求項1乃至3のうち、何れか一項記載の断熱構造を特徴としている。
【0018】
また、請求項5に記載されたものは、前記断熱塗装層の表面側には、色彩を前記開口部周囲の色彩と調整する調整仕上げ塗装層が設けられている請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の開口部の断熱構造を特徴としている。
【0019】
更に、請求項6に記載されたものは、断熱塗装層が、塗布された金属製枠体を有する請求項1乃至5記載の開口部の断熱構造に用いるサッシ部材を特徴としている。
【0020】
そして、請求項7に記載されたものは、建物の開口部に、前記サッシ部材が取り付けられた状態で、断熱塗料を塗布することにより、前記断熱塗装層を形成する請求項1乃至5のうち、何れか一項記載の開口部の断熱工法を特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に記載されたものによれば、開口部に設けられた金属製枠体に、断熱塗装層が塗布されることにより、形成されている。
【0022】
このため、前記サッシ部材が、アルミニウム等の軽金属製によって構成されて、熱伝導率が高くても、内外に伝達される熱量を効率的に減少させることが出来、建物の開口部の断熱性能を向上させることが出来る。
【0023】
また、請求項2に記載されたものは、前記サッシ部材に塗布された断熱塗装層によって、建物の開口部の断熱が行われる。
【0024】
ここで、前記サッシ部材の断熱塗装層が塗布される部分としては、前記サッシ枠体又は、障子部材の窓枠材が含まれる。
【0025】
前記断熱塗装層は、前記障子部材の可動範囲を妨げない範囲で、塗布により、適宜、形成されるので、前記サッシ部材が、アルミニウム等の軽金属製によって構成されて、熱伝導率が高くても、内外に伝達される熱量を効率的に減少させることが出来る。
【0026】
また、塗装により、略施工が完了するので、施工性が良好である。
【0027】
しかも、塗装色を調整するだけで、周囲の色彩と合わせることが出来、断熱性を損なわずに、施工後の外観品質も良好なものとすることが出来る。
【0028】
また、前記障子部材の可動範囲を妨げない範囲で、塗布により断熱塗装層が形成されているので、開口部の開閉性を損なう虞が無い。
【0029】
よって、容易に、断熱性を向上させて、結露及びエネルギーロスの発生を防止出来る。
【0030】
更に、請求項3に記載されたものは、前記断熱塗装層が、複数層の塗布層を重ねて構成できるので、厚さの調整が容易に行えて、必要となる断熱性能を容易に得られる。
【0031】
また、請求項4に記載されたものは、前記断熱塗装層に含有された中空ビーズが、太陽光を反射すると共に、断熱効果を有する。
【0032】
このため、太陽光に含まれる赤外線波長領域の光によって、断熱塗装層内の温度が上昇する虞が無く、前記サッシ部材を介して、建物内外に伝導される熱量を減少させることができる。
【0033】
そして、請求項5に記載されたものは、前記断熱塗装層の表面側に設けられた調整仕上げ塗装層が、色彩を前記開口部周囲の色彩と、例えば、近似するように、或いは、違和感の無いように調整する。
【0034】
このため、断熱塗装層は、如何なる色彩を有していても、表面に設けられた調整仕上げ層に隠れて見えないので外観品質を良好なものとすることができる。
【0035】
従って、反射する光の領域、吸熱した熱を放出する光の領域に、対応した色彩を前記断熱塗装層を構成する塗料に与えることが可能となり、更に、断熱性を良好なものとすることができる。
【0036】
更に、請求項6に記載されたものは、既存の建物の開口部に装着されているサッシ部材であっても、断熱塗料が塗布されることにより、前記断熱塗装層が形成される。
【0037】
このため、リフォーム等の既存の建物の改修工事を行う際にも、前記サッシ枠体に、障子部材を装着したまま、断熱塗料を、前記サッシ部材に塗布すれば良く、分解、組立や或いは、他の断熱部材の形状を適合させて、装着する等の工程数を減少させて、容易に、開口部に断熱構造を与えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態の開口部の断熱構造及び該断熱構造を用いた開口部の断熱工法で、断熱塗料が塗布されて、複数の断熱塗装層が形成されたサッシ部材の要部の拡大断面図である。
【図2】実施の形態の開口部の断熱構造が用いられる建物の正面図である。
【図3】実施の形態の実施例1の開口部の断熱構造で、図2中A−A線に相当する位置での断面図である。
【図4】実施の形態の実施例1の開口部の断熱構造で、図2中B−B線に相当する位置での断面図である。
【図5】実施の形態の開口部の断熱構造及び該断熱構造を用いた開口部の断熱工法で、施工順序を説明する流れ図である。
【図6】実施の形態の実施例2の開口部の断熱構造で、図2中A−A線に相当する位置での断面図である。
【図7】実施の形態の実施例1の開口部の断熱構造で、図2中B−B線に相当する位置での断面図である。
【図8】従来例の開口部の耐火構造で、一般の塗料が塗布されて、塗装層が形成されたサッシ部材の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0040】
図1乃至図7は、本実施の形態の開口部の断熱構造及び該断熱構造を用いた開口部の断熱工法を示すものである。
【0041】
なお、従来の間口部構造と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0042】
まず、構成から説明すると、この実施の形態の建物としての住宅10には、図2に示すように、開口部としての玄関開口部11及び、複数の窓開口部12…が設けられている。
【0043】
このうち、前記玄関開口部11については、ドア本体11aが、回動可能に設けられていて、後述する窓開口部12のサッシ枠体12aと略同様の枠体11bを有して構成されているので、説明を省略する。
【0044】
また、前記窓開口部12…には、図3に示すように、住宅10の開口部13に装着されるサッシ部材としての窓サッシ部材14…が、各々設けられている。
【0045】
この窓サッシ部材14は、主に、開口部13の周囲に固着されるアルミニウム等の軽金属製のサッシ枠体15及び、このサッシ枠体15に、スライド可動可能に設けられる障子部材としての窓ガラス部材16,16及び、雨戸部材17…とを有して構成されている。
【0046】
このうち、前記窓ガラス部材16は、板状の窓ガラス本体16aの周囲に、アルミニウム等の軽金属で構成される金属製枠体としての窓枠材16bが、装着されて、主に構成されている。
【0047】
この窓枠材16bは、例えば、図3に示すように、前記サッシ枠体15に突設形成された上下レール部15a,15bの延設方向に沿ってスライド自在に係合されている。
【0048】
そして、各窓ガラス部材16,16が、各々独立摺動可能として相互に引き違い可動することにより、前記開口部13が、開閉塞可能となるように構成されている。
【実施例1】
【0049】
図3乃至図5は、この発明の実施の形態の実施例1の開口部の断熱構造及び該断熱構造を用いた開口部の断熱工法を示したものである。
【0050】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0051】
この実施例1の窓開口部12に設けられた窓サッシ部材14の屋内5側の各側面には、前記障子部材としての窓ガラス部材16,16の可動範囲を妨げない範囲で、断熱塗料が塗布されて、断熱塗装層20…が形成されている。
【0052】
すなわち、この実施例1では、図3及び図4に示すように、前記断熱塗装層20のうち、一つの断熱塗装層20a…は、前記窓サッシ部材14のサッシ枠体15の屋内5側の内周面15cに、屋内5側に位置する上下レール部15a,15bよりも、更に屋内側の表面を、略一周、覆うように設けられている。
【0053】
また、内,外に位置する各窓ガラス部材16,16の窓枠材16b,16bには、屋内5側側面に、略全周に渡り、他の断熱塗装層20b,20cが、前記断熱塗装層20aと略同一の構成によって形成されている。
【0054】
すなわち、この実施例1の断熱塗装層20は、図1に示すように、サッシ部材1の表面1aに、サンドペーパー等で目荒らしされた塗装面が形成されて、下塗り塗装層1bを形成する下塗り塗料が塗布されることにより、塗料の付着性を向上させている。
【0055】
この下塗り塗装層1bの上からは、この実施例1の前記各断熱塗装層20a,20b,20cを構成する塗布層21…が積層されている。
【0056】
この塗布層21…は、複数回の断熱塗料の塗布により、主に形成されて、乾燥及び塗布を複数回繰り返すことにより、厚さ方向hへ重った状態で、硬化されている。
【0057】
これらの各塗布層21,…を構成する断熱塗料には、光を反射すると共に、断熱効果を有する中空ビーズ21a…が多数含有されていて、乾燥硬化後の各断熱塗装層20a,20b,20cには、厚さ方向hで複数のこれらの中空ビーズ21a…が、重合位置となるように構成されている。
【0058】
この実施例1の中空ビーズ21aは、前記白色系の塗料に含有されることにより、断熱塗装層20a,20b,20c内に含有された状態で、太陽光を約90%反射し、吸収した熱を90%放射すると共に断熱効果を発揮するように、内部に中空部21bが各々形成されている砂粒状を呈している。
【0059】
更に、この実施例1では、前記各断熱塗装層20a,20b,20cの表面側で、最外層の塗布層21の外表面には、色彩を前記開口部周囲の色彩と調整する調整仕上げ塗装層22が設けられている。
【0060】
この実施例1の調整仕上げ塗装層22には、高耐摩耗性、高耐候性を有する塗料が用いられている。
【0061】
そして、これらの各塗布層21は、一回の塗布で、厚さ方向寸法h1(h1=約190〜330μm)を有し、複数回の塗布で、h1×塗布回数の厚さ方向寸法hが、得られるように構成されている。
【0062】
次に、この実施の形態の実施例1の開口部の断熱構造の作用効果について、この断熱構造を用いた開口部の断熱工法の施工順序を示す図5のフローチャートに沿って説明する。
【0063】
この実施例1の既存の住宅10に設けられた窓開口部12では、Step1で、断熱施工を開始すると、Step2で、窓開口部12の周囲に設けられている柱材、床材、壁材等の建材の養生が行われる。
【0064】
Step3では、対象となる窓サッシ部材14のサッシ枠体15が装着されている窓ガラス部材16が、マスキングテープ等を用いて養生される。
【0065】
Step4では、サッシ枠体15の内周面15c及び窓枠材16bの屋内5側側面が、塗料の付着性を向上させる為に、サンドペーパーによって、図1に示されるように、表面1aが微細な凹凸を有する状態となるまで、目荒らし加工される。
【0066】
Step5では、下塗り塗料が塗布されて、下塗り塗装層1bが形成される。
【0067】
Step6では、この下塗り塗料の乾燥により形成された下塗り塗装層1bによって、断熱塗料の付着性が向上される。
【0068】
Step7では、更に、この下塗り塗装層1bの表面が、塗料の付着性を向上させる為に、サンドペーパーによって、図1に示されるように、表面1aが微細な凹凸を有する状態となるまで、目荒らし加工される。
【0069】
Step8では、前記断熱塗装層20(20a,20b,20c)を構成する塗布層21が、中空ビーズ21a…を多数含有する断熱塗料を、前記サッシ枠体15の内周面15c及び窓枠材16bの屋内5側側面に、塗布することにより形成される。
【0070】
Step9では、この住宅10の断熱性能を満足する窓開口部12となっているかが、前記断熱塗装層20の厚さ方向寸法hによって判定される。
【0071】
すなわち、前記断熱塗装層20の厚さ方向寸法hが、断熱性能を満足する充足厚に到達している場合には、次のStep9に進み、到達していない場合には、Step7で目荒らしを行うか若しくは行わないで、Step8に戻り、再度、断熱塗料を塗布することにより、塗布層21を、前回形成された塗布層21の上から積層するように形成する。
【0072】
断熱性能を満足する充足厚に到達したことを確認した後、Step10では、調整仕上げ塗装層22を形成する仕上げ塗料が、図1に示す最外側面に位置する塗布層21の上から塗布される。
【0073】
Step11では、調整仕上げ塗装層22の養生乾燥後、窓サッシ部材14の周囲に養生が撤去されて、Step12で、リフォームを含む改修施工が終了する。
【0074】
この実施例1の開口部の断熱構造では、前記窓サッシ部材14に塗布された断熱塗装層20によって、住宅10の玄関開口部11及び窓開口部12の断熱が行われる。
【0075】
前記窓開口部12に用いられる断熱塗装層20は、前記ドア本体11a若しくは、窓ガラス部材16,16の可動範囲を妨げない範囲で、断熱塗料を塗布する施工により、適宜、形成される。
【0076】
例えば、図3に示すように、前記窓サッシ部材14が、アルミニウム等の軽金属によって構成されて、熱伝導率が高くても、前記窓ガラス部材16の窓枠材16bに設けられた断熱塗装層20bと重複して位置する部分から、サッシ枠体15の内周面15cの屋内5側の端縁に至るまで、全ての屋内5側に露出する表面を、断熱塗装層20aによって、覆うことが出来、直接、屋内5の空気が、軽金属製の窓サッシ部材14に接触する面積を減少させることができる。
【0077】
このため、断熱塗料の塗布により、断熱塗装層20で覆われた軽金属製の窓サッシ部材14では、軽金属部分を介して、屋内外に伝達される熱量を効率的に減少させることが出来る。
【0078】
更に、この実施例1では、屋外3側の窓ガラス部材16に設けられた窓枠材16bの断熱塗装層20cが塗装により、形成されるので、所望の断熱性能を得られる厚さ寸法hとしても、充分に、屋内5側の窓ガラス部材16と干渉しないように、間隔を設けることが出来る。
【0079】
また、塗装により、略施工が完了するので、別途、断熱材料を、改修施工現場で形状加工して適用するものに比して、施工性が良好である。
【0080】
更に、図1に示すように、各断熱塗装層20a,20b,20cに含まれる複数の中空ビーズ21a…が、厚さ方向hで、多数個、重合位置となっている。しかも、この実施例1では、塗布層21…が、重ね塗りされることにより、乾燥硬化後、厚さ方向hで、多数個の中空ビーズ21a…が、重合位置となる。
【0081】
このため、一層では、塗りムラにより、中空ビーズ21aの分布が偏ってしまう場合でも、略均等に、中空ビーズ21a…の表面密度を整えることが出来、熱及び太陽光を、通過させる確率が少なく、殆どの光を反射すると共に、断熱効果を発揮させることができる。
【0082】
しかも、最も表面側に位置する調整仕上げ塗装層22の塗装色を調整するだけで、開口部の周囲の建具等の色彩と合わせることが出来、施工後の外観品質も良好なものとすることが出来る。
【0083】
また、前記窓ガラス部材16又は、雨戸部材17の可動範囲を妨げない範囲で、塗布により断熱塗装層20a〜20cが、必要充分な厚さ方向寸法hにより、高さを抑えて形成されているので、窓開口部12の開閉性を損なう虞が無い。
【0084】
よって、容易に、断熱性を向上させて、結露及びエネルギーロスの発生を防止出来る。
【0085】
更に、図1に示すように、前記断熱塗装層20が、一回の塗布により、略同一の厚さ寸法h1を有し、同様に塗布を繰り返すことより、複数層の塗布層21,21を重ねて構成できるので、厚さ寸法hの調整が容易に行えて、必要となる断熱性能を容易に得られる。
【0086】
しかも、この実施例1では、図1に示すように、塗布層21の表面、及び塗布層21と、塗布により積層された塗布層21との間に形成される硬質反射面21c…が、先に塗布された塗布層21の乾燥養生により、表面を覆う硬質面状の硬化樹脂層を構成している。
【0087】
このため、更に、熱が、これらの各硬質反射面21c,21c…で、各々反射されて、伝導されにくくなり、サッシ部材1へ伝導される熱量6を更に減少させることができる。
【0088】
そして、最も外層の硬質反射面21cで反射された熱量は、下層の塗布層21…及びサッシ部材1へ吸熱及び蓄熱されないので、更に、断熱性能を良好なものとすることが出来る。
【0089】
また、図1に示すように、前記断熱塗装層20に含有された中空ビーズ21a…が、厚さh方向で、多数積層されて、太陽光を反射すると共に、中空部21b内の気体による断熱効果を発揮する。
【0090】
このため、太陽光に含まれる赤外線波長領域の光によって、断熱塗装層20内の温度が上昇する虞が無く、この断熱塗装層20で覆われた前記窓サッシ部材14を介して、建物内外に伝導される熱量を減少させることができる。
【0091】
そして、前記断熱塗装層20の表面側に設けられた調整仕上げ塗装層22には、断熱性を損なわずに、様々な色彩を与えることができる。
【0092】
このため、調整仕上げ塗装層22の色彩を前記窓開口部12の周囲の色彩と、例えば、近似するように、或いは、違和感の無いように調整することが可能である。
【0093】
しかも、前記断熱塗装層20は、如何なる色彩を有していても、表面に設けられた調整仕上げ層22に隠れて見えないので、外観品質を良好なものとすることができる。
【0094】
従って、反射する光の領域、吸熱した熱を放出する光の領域に、対応した色彩を前記断熱塗装層20を構成する塗料に与えることが可能となり、更に、断熱性を良好なものとすることができる。
【0095】
また、この実施の形態では、前記塗布層21,21内に含有される複数の中空ビーズ21a…が、顆粒状であっても、前記表面に設けられた調整仕上げ塗装層22に隠れて見えないので、外観品質を良好なものとすることができる。
【0096】
このため、中空ビーズ21a…の大きさ、形状及び色彩等の自由度を増大させることが出来、外観に関わらず、最も断熱性能の良好な中空ビーズ21a…を用いることができる。
【0097】
しかも、断熱塗装層20を構成する塗布層21,21の塗料色及び、中空ビーズ21a…の色彩は、何れの開口部に用いる場合でも、一色で良く、開口部の色彩に合わせたバリエーションを用意する必要が無い。
【0098】
このため、更に、施工コストの上昇を抑制出来る。
【0099】
更に、この実施例1では、既存の住宅10の窓開口部12に装着されている窓サッシ部材14であっても、断熱塗料が塗布されることにより、容易に前記断熱塗装層20を形成することが出来る。
【0100】
このため、リフォーム等の既存の建物の改修工事を行う際にも、前記サッシ枠体15に、窓ガラス部材16を装着したまま、若しくは、窓ガラス部材16をサッシ枠体15から取り外すだけで、分解する必要が無く、断熱塗料を、これらの窓サッシ部材14の金属表面部分に塗布すれば良い。
【0101】
従って、玄関開口部11或いは、窓開口部12に設けられている玄関ドアや、窓サッシ部材14を分解、組立したり、或いは、他の断熱部材の形状を、これらの玄関ドアや、窓サッシ部材14の形状に適合させて、装着する等の工程数を減少させて、容易に、開口部に断熱構造を与えることが出来る。
【実施例2】
【0102】
図6及び図7は、この実施の形態の実施例2の開口部の断熱構造及び該断熱構造を用いた開口部の断熱工法を示すものである。
【0103】
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0104】
まず、構成から説明すると、この実施例2の開口部の断熱構造では、窓開口部12に設けられた窓サッシ部材14の屋外3側の各側面には、前記障子部材としての窓ガラス部材16,16の可動範囲を妨げない範囲で、断熱塗料が塗布されて、断熱塗装層20…が形成されている。
【0105】
すなわち、この実施例2では、図6及び図7に示すように、前記断熱塗装層20のうち、一つの断熱塗装層20d…は、前記窓サッシ部材14のサッシ枠体15の屋外3側外側面15d及び外側内周面15eに渡り、屋外3側に位置する上下レール部15a,15bよりも、更に屋外側の表面を、略一周、覆うように設けられている。
【0106】
また、内,外に位置する各窓ガラス部材16,16の窓枠材16b,16bには、屋外側側面に、略全周に渡り、他の断熱塗装層20e,20fが、前記断熱塗装層20dと略同一の構成によって形成されている。
【0107】
このように構成された実施例2記載の開口部の断熱構造では、前記実施例1の作用効果に加えて、更に、前記調整仕上げ塗装層22に、高耐摩耗性、高耐候性を有する塗料が用いられることにより、前記断熱塗装層20が、保護される。
【0108】
このため、前記塗布層21,21内に含有される複数の中空ビーズ21a…が、耐候性に劣り、劣化しやすかったり、或いは、摩耗性が劣る材質で形成されていても、前記表面に設けられた調整仕上げ塗装層22によって保護される。
【0109】
従って、中空ビーズ21a…の材質や、中空部21bの大きさ、形状等の自由度を増大させることが出来、耐久性に関わらず、最も断熱性能の良好な中空ビーズ21a…を用いることができる。
【0110】
しかも、この実施例2では、図1に示すように、塗布層21の表面、及び塗布層21と、塗布により積層された塗布層21との間に、乾燥養生により、硬質の硬化樹脂層からなる複数の硬質反射面21c…が、形成されている。
【0111】
このため、これらの各硬質反射面21c…によって、太陽光が反射されることにより、熱がサッシ部材1へ伝導されにくくなると共に、下層に積層された塗布層21への汚れ浸透防止及び損傷からの保護を図ることができる。
【0112】
上述してきたように、本願発明は、施工性が良好で、施工後の外観品質も良好なものとすることが出来、また、開口部の開閉性を損なうことなく、断熱性を向上させることが、出来、既存の建物の改修工事に用いて好適な開口部の断熱構造を提供する。
【0113】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【0114】
以上、この発明の実施の形態及び実施例1、2を図示により説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態及び実施例1、2に限らず、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更があっても、この発明に含まれる。
【0115】
例えば、前記実施例1では、前記サッシ部材の断熱塗装層20が形成される部分として、窓サッシ部材14を構成するサッシ枠体15の屋内5側に、また、前記実施例2では、サッシ枠体15の屋外3側に、断熱塗料が塗布されて、各々形成されているが、特にこれに限らず、例えば、サッシ枠体15の屋外3側及び屋内5側の双方に、前記断熱塗装層20,20を各々形成しても、前記窓ガラス部材16の可動範囲を妨げない範囲であればよい。
【0116】
また、前記実施例1では、前記サッシ部材の断熱塗装層20が塗布される部分として、前記窓ガラス部材16,16の窓枠材16b,16bの屋内5側側面に、また、実施例2では、窓枠材16b,16bの屋外3側側面に、各々断熱塗料が塗布されて、前記断熱塗装層20,20が各々形成されているが、特にこれに限らず、例えば、窓枠材16b,16bの屋外3側及び屋内5側の双方に、各々断熱塗料が塗布されて、前記断熱塗装層20,20が形成されていてもよく、前記窓ガラス部材16の可動範囲を妨げない範囲であればよい。
【0117】
そして、この実施の形態及び実施例1、2では、スライド可動する障子部材としての窓ガラス部材16に、塗布により形成される断熱塗装層20を適用したものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、回動軸を有するウイング窓、押し出し窓、回転窓、上下方向スライド窓や或いは、窓ガラス本体16aの周縁が、直接、金属製枠体としてのサッシ枠体15に、固定される所謂嵌め殺し窓等に適用しても良く、嵌め殺し窓の場合、障子部材等の可動部分が存在しないので、可動範囲を妨げることはないが、屋内5側に装着されるブラインド部材やカーテン等の開閉の妨げにならないという実用上有益な効果を発揮する。
【0118】
また、この実施の形態及び実施例1、2では、窓サッシ部材14のうち、開口部13の周囲に固着されるアルミニウム等の軽金属製のサッシ枠体15及び、このサッシ枠体15に、スライド可動可能に設けられる障子部材としての窓ガラス部材16,16に、前記断熱塗装層20,20が各々形成されているが、特にこれに限らず、例えば、前記サッシ枠体15又は、窓ガラス部材16,16のうち、一方若しくは、雨戸部材17…に、断熱塗装層20が形成されていてもよい。
【0119】
このうち、前記窓ガラス部材16は、板状の窓ガラス本体16aの周囲に、アルミニウム等の軽金属で構成される窓枠材16bを装着し更に、実施の形態では、前記白色系の断熱塗料に混合されることにより、断熱塗装層20a,20b,20c内に含有された状態で、太陽光を約90%反射し、吸収した熱を90%放射すると共に断熱効果を発揮するように、前記中空ビーズ21a…が、構成されているが、特にこれに限らず、例えば、黒色系の断熱塗料に混合して、太陽光を39%(赤外線を高反射)するようにしても良く、ベース塗料となる断熱塗料の色彩や、反射、放射、吸熱率等が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0120】
3 屋外
5 屋内
10 住宅(建物)
12 窓開口部
14 窓サッシ部材(サッシ部材)
15 サッシ枠体
16 窓ガラス部材(障子部材)
16a 窓ガラス本体
16b 窓枠材(金属製枠体)
17 雨戸部材(障子部材)
20,20a〜20f 断熱塗装層
21 塗布層
21a… 中空ビーズ
21b… 中空部
22 調整仕上げ塗装層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱塗装層が塗布された金属製枠体を有することを特徴とする開口部の断熱構造。
【請求項2】
建物の開口部に取り付けられるサッシ部材が、開口部周囲に固着されるサッシ枠体及び、該サッシ枠体に可動可能に設けられる障子部材を有する開口部の断熱構造であって、
前記サッシ部材には、前記障子部材の可動範囲を妨げない範囲で、断熱塗装層が塗布されていることを特徴とする請求項1記載の開口部の断熱構造。
【請求項3】
前記断熱塗装層は、複数層の塗布層が重なって構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の開口部の断熱構造。
【請求項4】
前記断熱塗装層は、光を反射すると共に、断熱効果を有する中空ビーズを含有することを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載の断熱構造。
【請求項5】
前記断熱塗装層の表面側には、色彩を前記開口部周囲の色彩と調整する調整仕上げ塗装層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の開口部の断熱構造。
【請求項6】
断熱塗装層が、塗布された金属製枠体を有することを特徴とする請求項1乃至5記載の開口部の断熱構造に用いるサッシ部材。
【請求項7】
建物の開口部に、前記サッシ部材が取り付けられた状態で、断熱塗料を塗布することにより、前記断熱塗装層を形成することを特徴とする請求項1乃至5のうち、何れか一項記載の開口部の断熱工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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