説明

開口部装置

【課題】 簡易な構造で断熱性を向上させることができ、外観にも優れ、部材紛失の虞がない開口部装置を提供する。
【解決手段】 縦枠、横枠を有して建物躯体の開口部に沿って設けられる枠体、枠体の縦枠の少なくとも一部を覆う室内側樹脂縦枠、縦枠に取り付けられる縦枠カバー、及び、枠体の見付け方向内側に配置されるとともに、ガラスパネルと框とを有する障子、を備え、縦枠には、少なくとも一つの固定部材と、縦枠カバーを係合するための係合片とが備えられ、縦枠カバーには、見込み方向室外側に設けられる室外側片と、室外側片に設けられて係合片に係合される被係合部と、室外側片から見込み方向に延びる被覆片と、が備えられ、固定部材が、被覆片により室内視で隠蔽され、且つ、框のうち戸先框の少なくとも一部が、室外側片により室内視で隠蔽されている、開口部装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅や公共施設等の建物開口部に好適に用いられる開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に備えられる開口部装置は、建物開口部の縁に沿って配置される枠体と、該枠体の内側に設けられる障子とを備えており、さらに障子はガラスパネルと該ガラスパネルの四辺に沿って配置される框とを有している。
【0003】
建物開口部の縁に沿って配置される枠体を建物開口部に取り付ける際は、ネジ等の固定部材が用いられる。また、枠体は、アルミ等の金属からなる場合が多く、ここから室内外に熱が伝わりやすいので、特許文献1に記載されているように、枠体の室内側を、断熱性の樹脂部材で覆う場合がある。樹脂部材はネジ等の固定部材により枠体に固定され、当該枠体が樹脂部材に覆われることで、室内外の熱伝達が抑制され、断熱性が向上される。
【0004】
一方、ガラスパネルへの框の取り付けは、断面形状略コ字状である框の該コ字状の内側にガラスパネルの端部を差し込むようにして行われるが、従来においては、特許文献1に記載されているように、グレージングチャンネルを介していた。当該グレージングチャンネルにより框をガラスパネルに安定して取り付けできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−188928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
枠体を建物開口部に固定する場合、ネジ等の固定部材が用いられる。また、枠体の断熱確保のため、樹脂部材を枠体に取り付ける場合にも、樹脂部材はネジ等の固定部材により固定される。従って、これら固定部材が室内視において露出することとなり、外観に悪影響を及ぼす。これに対し、特許文献1の図2に示されるように、特許文献1においては、露出した固定部材を室内視で隠蔽するため、別途カバー部材32gを取り付けて、固定部材を隠蔽している。しかしながら、このようなカバー部材32gを別途設けると、室内視で、当該カバー部材32gに起因する二本線が縦枠長手方向に沿って表れてしまう。また、カバー部材32gが別体とされており、且つ、部材自体の大きさが、他の部材と比較して小さく、施工や修理の際、作業中に紛失してしまう虞がある。
【0007】
また、特許文献1のように框の取り付けにグレージングチャンネルやビード材を用いると、その分框を太くせざるを得ない。開口部装置の室内外の熱伝達は、断熱性の高いガラスパネル部分よりも、熱伝達されやすい框を介してなされる割合が大きいため、框を太くすると開口部装置の断熱性を確保し難くなる。そのため、框を介しての室内外の熱伝達を抑え、断熱性が向上された開口部装置が求められている。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、簡易な構造で断熱性を向上させることができ、外観にも優れ、部材紛失の虞がない開口部装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。尚、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。また、本明細書において、「見付け方向」とは、建物開口部に備えられる開口部装置の開口面に沿った方向を意味する。また、「見込み方向」とは開口部装置の開口面と直交する方向(厚さ方向)を意味し、「見込み方向室外側」とは、開口部装置が建物に取り付けられた姿勢で室外側となる方向であり、「見込み方向室内側」は、開口部装置が建物に取り付けられた姿勢で室内側となる方向である。
【0010】
本発明は、縦枠(14、15)、横枠(11、12)を有して建物躯体の開口部に沿って設けられる枠体(10)、枠体の縦枠の少なくとも一部を覆う室内側樹脂縦枠(50、51)、枠体の縦枠に取り付けられる縦枠カバー(70)、及び、枠体の見付け方向内側に配置されるとともに、ガラスパネル(25、35)と框(21〜24、31〜34)とを有する障子(20、30)、を備え、縦枠には、少なくとも一つの固定部材(60)と、縦枠カバーを係合するための係合片(14f)とが備えられ、縦枠カバーには、見込み方向室外側に設けられる室外側片(70c)と、当該室外側片に設けられて係合片に係合される被係合部(70k)と、室外側片から見込み方向に延びる被覆片(70a)と、が備えられ、固定部材が、被覆片により室内視で隠蔽され、且つ、開口部装置閉鎖の姿勢で、框のうち戸先框の少なくとも一部が、室外側片により室内視で隠蔽されている、開口部装置(100)を提供して前記課題を解決するものである。
【0011】
本発明において、被係合部(70k)が係合片(14f)に係合され、係合片を軸として縦枠カバー(70)が回動可能とされていることが好ましい。このようにすれば、縦枠カバーを回動させて、縦枠カバーを縦枠へと容易に取り付けることが可能となり、且つ、縦枠カバーの紛失を防止することができるからである。
【0012】
本発明において、室内側樹脂縦枠(50、51)が、縦枠(14、15)に固定部材(60)により固定されていることが好ましい。室内側樹脂縦枠の固定と、縦枠の固定とを一の固定部材により兼用し、且つ、当該一の固定部材を縦枠カバーにより隠蔽することが可能だからである。従って、製造コストを抑え、外観に優れる開口部装置とすることができる。
【0013】
本発明において、室外側片(70c)が、開口部装置閉鎖の姿勢で、戸先框(23)よりも見付け方向内側に延びていることが好ましい。このことで、戸先框全体を室内視で隠蔽することができ、框を介しての室内外の熱移動が抑制されるため、断熱性に優れる開口部装置とすることができるからである。また、戸先框が外観に与える影響が抑えられるため、シンプルで外観に優れる開口部装置とすることもできる。
【0014】
本発明において、框(21〜24、31〜34)とガラスパネル(25、35)とが接着手段(28、38)により接着されていることが好ましい。框とガラスパネルとが接着手段により接着されることで、グレージングチャンネル等の部材を設ける必要がなくなるので、框を小型化することができ、採光性、断熱性に優れる開口部装置とすることができるからである。
【0015】
本発明において、縦枠カバー(70)の室外側片(70c)の室外側面が縦枠(14)に接触するまで、係合片(14f)を軸として縦枠カバーが回動可能とされており、且つ、縦枠カバーの回動により縦枠カバーの室外側片の室外側面が縦枠に接触している姿勢においても、被係合部(70k)が係合片に係合されていることが好ましい。これにより、例えば、縦枠カバー内部のメンテナンス時において、縦枠カバーを完全に取り外すことなく、縦枠カバーを縦枠に引っ掛けた状態で作業を行うことができる。また、縦枠カバーが容易に脱落してしまうことがないため、現場作業時の縦枠カバーの紛失を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、縦枠カバーが枠体の縦枠に取り付けられて、枠体の固定部材や、戸先框の少なくとも一部が隠蔽される。従って、外観、断熱性に優れる開口部装置とすることができる。また、固定部材を隠蔽するために別途小さな部材を用意する必要がないので、部材の紛失を防ぐことができる。以上のことから、本発明によれば、簡易な構造で断熱性を向上させることができ、外観にも優れ、部材紛失の虞がない開口部装置を提供することが可能となる。
【0017】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。尚、下記実施形態においては、外障子と内障子とを有する、引き違いの開口部装置について説明するが、本発明はこれに限定されず、枠体に固定部材を備える開口部装置であれば、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】開口部装置の室内正面視における概略図である。
【図2】開口部装置の縦断面を概略的に示す図である。
【図3】開口部装置の縦断面を概略的に示す図である。
【図4】開口部装置の横断面を概略的に示す図である。
【図5】縦枠カバー70の形状について説明するための図である。
【図6】縦枠カバー70の取り付けについて説明するための図である。
【図7】従来の構成を備える開口部装置と、開口部装置100との外観を概略的に示す図である。
【図8】縦枠カバー70の取り外しについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。図1は、一実施形態にかかる開口部装置100が建物開口部に取り付けられた姿勢における、当該開口部装置100の室内視正面図である。図1において開口部装置100は両戸先側が開放された姿勢にある。図2は、図1にII−IIで示した線(垂直方向)に沿った断面図である。図3は、図1にIII−IIIで示した線(垂直方向)に沿った断面図である。図4は、図1にIV−IVで示した線(水平方向)に沿った断面図である。但し、図4においては、開口部装置100が閉鎖された姿勢にある。図5は、縦枠カバー70について説明するための図である。図6は、縦枠カバー70の縦枠14への取り付けについて説明するための図である。図が煩雑となるのを防ぐため、いずれの図においても、部材の一部を省略して示している。
【0020】
開口部装置100は、建物開口部の四辺に沿って配置される枠体10、及び当該枠体10の見付け方向内側に具備されて引戸式に開閉する障子20、30を備えている。また、施錠装置40が設けられ、障子20、30の施錠及び開錠を可能としている。さらに、障子20、30の戸先框23、33には、引手27が備えられ、ここに手指が引っ掛けられて障子20、30が見付け方向にスライド可能とされている。
【0021】
<枠体10>
枠体10は、上下のそれぞれに水平に配置される長尺部材である横枠11、12、及び当該横枠11、12の端部を渡して設けられる長尺部材である縦枠14、15を備え、これらが枠状に形成されている。
【0022】
横枠11は、枠体10の上横枠に相当する枠材である。横枠11は、図2及び図3に表される断面において、片11a〜11gを有して、紙面奥手前に延在している。横枠11は、見込み方向に延びる片11aを備えており、当該片11aの見込み方向室内側端部には、見付け方向内側に延びる片11bが設けられている。また、片11bの見込み方向室内側面からは、見込み方向室内側に延びる片11cが設けられている。一方、片11aの見付け方向内側面において、見付け方向室内側に延びる片11d〜11fが設けられており、これら片11d〜11fは、障子20、30や任意に備えられる網戸(不図示)をスライドさせるための上部レールとして機能する。また片11aの見付け方向外側面において、見付け方向外側に延びる片11gが備えられ、横枠11を建物躯体に取り付け可能としている。
【0023】
横枠12は、枠体10の下横枠に相当する枠材である。横枠12は、図2及び図3に表される断面において、片12a〜12kを有して、紙面奥手前に延在している。横枠12には、見込み方向に延びる片12aが備えられている。当該片12aは、見込み方向室外側端部において見付け方向内側に延びる片12b、見付け方向外側に延びる片12cを備え、見込み方向室内側端部において見付け方向内側に延びる片12d、見付け方向外側に延びる片12eを備えている。当該片12dと片12eとの間には、見込み方向室内側に延びる片12fが備えられている。また、片12aの見付け方向内側面からは、見付け方向内側に向かって片12g、12hが延びている。一方、片12aの見付け方向外側面からは、見付け方向外側に向かって片12jが延びている。また、片12cと片12jとを渡すように、片12kが設けられている。片12bの見付け方向内側端部は、任意に備えられる網戸(不図示)をスライドさせるための下部レールとして機能する。また、片12g、12hに、障子20、30の下横框22、32内に備えられた戸車28、38が載置されて、障子20、30をスライド可能としている。さらに、片12a、12c、12j、12kによって囲まれる空間は中空とされており、例えば当該空間を介して、下横枠の排水がなされ得る。排水のため、片12a、12c等に、排水口や排水弁が設けられていてもよい。
【0024】
縦枠14、15は、図4に示される断面において、片14a〜14e、15a〜15eを有して、紙面奥手前に延在している。縦枠14、15は、見込み方向に延びる片14a、15aを備えており、縦枠14、15の見込み方向室内側端部、及び見込み方向室外側端部には、片14b、14e、15b、15eが備えられている。また、縦枠14、15の見付け方向内側面からは、見付け方向内側に延びる片14c、15cが備えられており、当該片14c、15cと、障子20、30の戸先框23、33に備えられるフィンとによって、縦縁の水密気密が保たれている。さらに、縦枠14の見付け方向内側面からは、係合片14fが延びており、当該係合片14fが後述する縦枠カバー70の被係合部70k(図5参照)へと挿入されて、ここを軸として回動可能に、縦枠カバー70が縦枠14に取り付けられる。一方、縦枠14、15の見付け方向外側面からは、見付け方向外側に延びる片14d、15dが備えられ、縦枠14、15の建物躯体への固定を可能としている。
【0025】
<室内側樹脂縦枠50、51>
縦枠14、15の見付け方向内側面には、見込み方向室内側に、室内側樹脂縦枠50、51が取り付けられている。室内側樹脂縦枠50、51は、図4に示される断面において、見付け方向に延びる片50a、51aと、当該片50a、51aの見付け方向外側端部から、見込み方向室外側に延びる片50b、51bと、片50a、51aの見付け方向内側端部から、見込み方向室内側に延びる片50c、51cとを有して、紙面奥手前に延在している。このうち、片50b、51bが、ネジ等の固定部材60、61により、縦枠14、15に取り付けられて、室内側樹脂縦枠50、51が縦枠14、15に固定されている。室内側樹脂縦枠50、51により縦枠14、15の室内側表面が覆われることで、縦枠14、15の室内側露出部分が縮小され、縦枠14、15を介しての室内外の熱伝達が抑制される。従って、断熱性に優れる開口部装置100とすることができる。また、片50aの見込み方向室外側面には、突起50dが設けられており、ここに縦枠カバー70の爪部70d(図5参照)が掛止されて、縦枠カバー70の室内側が固定される。さらに、片50a、51aの見込み方向室内側面には、掛止部50e、51eが設けられ、縦枠14、15の片14e、15eに掛止されている。
【0026】
<縦枠カバー70>
縦枠カバー70は、縦枠14の見付け方向内側であって室内側樹脂縦枠50の見込み方向室外側に取り付けられ、後述する戸先框23を室内視で隠蔽するとともに、固定部材60を隠蔽する部材である。縦枠カバー70の構成及び取り付け方法については、後で詳細に説明する。
【0027】
<障子20>
障子20は、外障子に相当する障子で、上横框21、下横框22、戸先框23、外召し合わせ框24、ガラスパネル25、及び引手27が備えられている。
【0028】
(上横框21)
上横框21は、図2に表される断面において、見込み方向室内側に面する室内側片21aと、見込み方向室外側に面する室外側片21bと、ガラスパネル25の外縁を覆うように略コ字状に形成されたコ字状被覆片21cとを有して、紙面奥手前に延在している。また、コ字状被覆片21cとガラスパネル25とは接着手段28を介して直接接着され、上横框21とガラスパネル25とが一体とされている。上横框21とガラスパネル25とが直接接着されることで、上横框21の見付け幅を縮小することができ、ガラスパネル25の採光面積を拡大することができる。また、外観視において框の与える影響が少なくなり、シンプルで外観に優れた開口部装置とすることができる。さらに、ガラスパネル部分をより大きくとることができるので、断熱性に優れる開口部装置とすることができる。
【0029】
(下横框22)
下横框22は、図2で示される断面において、見込み方向室内側に面する室内側片22aと、見込み方向室外側に面する室外側片22bと、ガラスパネル25の外縁を覆うように略コ字状に形成されたコ字状被覆片22cとを有して、紙面奥手前に延在している。また、コ字状被覆片22cとガラスパネル25とは接着手段28を介して直接接着され、下横框22とガラスパネル25とが一体とされている。下横框22とガラスパネル25とが直接接着されることで、下横框22の見付け幅を縮小することができ、ガラスパネル25の採光面積を拡大することができる。また、外観視において框の与える影響が少なくなり、シンプルで外観に優れた開口部装置とすることができる。さらに、ガラスパネル部分をより大きくとることができるので、断熱性に優れる開口部装置とすることができる。一方、下横框22の、片22a〜22cによって囲まれる空間には戸車28が備えられ、当該戸車28は、下横枠12の片12gに載置されることで障子20がスライド可能とされている。また、片22bの見込み方向室内側面にはフィンが設けられ、下横枠12の片12gと接することで障子20下縁の水密気密が保たれている。
【0030】
(戸先框23)
戸先框23は、図4で示される断面において、室内側片23a、室外側片23b、及び略コ字状に形成されたコ字状被覆片23cを有して、紙面奥手前に延在している。これら片23a〜23cは一体に形成されており、コ字状被覆片23cとガラスパネル25とが、接着剤等の接着手段28により直接接着されることで、戸先框23とガラスパネル25とが一体とされている。戸先框23とガラスパネル25とが直接接着されることで、戸先框23の見付け幅を縮小することができ、ガラスパネル25の採光面積を拡大することができる。また、外観視において框の与える影響が少なくなり、シンプルで外観に優れた開口部装置100とすることができる。戸先框23の片23bの見込み方向室内側面にはフィンが設けられ、縦枠14の片14cと接することで障子20横縁の水密気密が保たれている。また、図1に示されるように、戸先框23の略中央部には引手27が設けられ、障子20を見付け方向に容易にスライド可能としている。
【0031】
(外召し合わせ框24)
外召し合わせ框24は、外召し合わせ部に用いられる縦框である。外召し合わせ框24は、図4で示される断面において、略矩形状の矩形部24aと略コ字状のコ字状被覆片24cとを有して、紙面奥手前に延在している。矩形部24aは障子20の見付け方向外側に面して形成されている。また、矩形部24aの見込み方向室内側面には、爪部24eが設けられており、内召し合わせ框34の爪部34eと係合可能とされている。コ字状被覆片24cは、障子20において矩形部24aの見付け方向内側に形成され、当該コ字状内部にガラスパネル25の外縁が挿入されている。これら矩形部24a及びコ字状被覆片24cは一体に形成されており、コ字状被覆片24cとガラスパネル25とが接着剤等の接着手段28により直接接着されることで、外召し合わせ框24とガラスパネル25とが一体とされている。外召し合わせ框24とガラスパネル25とが直接接着されることで、外召し合わせ框24の見付け幅を縮小することができ、ガラスパネル25の採光面積を拡大することができる。また、外観視において框の与える影響が少なくなり、シンプルで外観に優れた開口部装置とすることができる。また、外召し合わせ框24の略中央部には施錠装置40が設けられ、障子20、30の施錠及び開錠を可能としている。
【0032】
(ガラスパネル25)
ガラスパネル25は、いわゆる複層ガラスパネルであり、矩形板状である2枚の板ガラスが室内外方向に所定の間隔を有して並列されている。当該2枚の板ガラスの間隙により形成される空間のうち、その外周端部には該外周端部に沿ってスペーサ26a〜26dが配置されている。スペーサ26a〜26dは、シール部材を備え、これにより、2枚の板ガラスを一体に保持して水密気密を得ることができる。また、スペーサ26a〜26dに乾燥剤を含ませれば、空間内側を適切な湿度に保つことも可能となる。
【0033】
<障子30>
障子30は、内障子であり、上横框31、下横框32、戸先框33、内召し合わせ框34、ガラスパネル35、スペーサ36a〜36d、及び引手37を有している。図3、4に示されるように、障子30は、障子20とほぼ同様の構成を有するため、説明を省略する。但し、障子30においても、上記障子20と同様、框(上横框31、下横框32、戸先框33、内召し合わせ框34)のコ字状被覆片31c〜34cにガラスパネル35が接着剤等の接着手段38により直接接着されている。框とガラスパネル35とを直接接着することで、框の見付け幅を縮小でき、ガラスパネル35の採光面積を拡大することができる。さらに、好ましくは、障子20、30のすべての框とガラスパネルとを直接接着する形態とすることで、開口部装置100全体としての採光面積に与える影響が極めて大きくなるとともに、開口部装置100全体の外観視が極めてシンプルとなるため、従来よりも採光性に優れ、且つ外観にも優れる開口部装置100とすることができる。
【0034】
<縦枠カバー70の詳細>
図5、6を参照しつつ、縦枠カバー70の構成、及び縦枠カバー70の取り付けについて詳述する。縦枠カバー70には、見込み方向に延びる被覆片70aが備えられている。当該片70aの見込み方向室内側端部には室内側片70bが、見込み方向室外側端部には室外側片70cが、見付け方向外側に向かって延びている。また、被覆片70aの、室内側片70bと室外側片70cとの間には、見付け方向外側に向かって片70eが設けられている。
【0035】
室内側片70bの見付け方向外側端部には、爪部70dが設けられており、室内側樹脂縦枠50の突起50dに爪部70dを掛止して、縦枠カバー70の見込み方向室内側が固定される。一方、室外側片70cの見付け方向外側端部には、被係合片70fが設けられており、当該被係合片70fの見込み方向室内側面には突起が設けられている。また、室外側片70cと被係合片70fとの間からは、見込み方向室内側に向かって片70gが立設されており、その先端部が見付け方向外側に折り曲げられている。先端部が折り曲げられた片70gの見付け方向外側端部には、被係合片70hが設けられており、当該被係合片70hの見込み方向室外側面には突起が設けられている。これら被係合片70f、70h、及び片70gによって形成される凹部が被係合部70kとされ、ここに縦枠14の係合片14fが挿入されて、縦枠カバー70が縦枠14へと固定される。さらに、片70g及び被係合片70hと、片70eとを渡すように、片70jが設けられており、縦枠カバー70の強度を向上させている。これら各片により縦枠カバー70が構成されている。縦枠カバー70の材質としては、下記のように断熱性を確保する観点から、断熱性に優れた材料、例えば樹脂であることが好ましい。以下、縦枠カバー70の縦枠14及び室内側樹脂縦枠50への取り付け方法について、図6を参照しつつ詳述する。
【0036】
図6(a)に示すように、まず、縦枠14の係合片14fを、縦枠カバー70の被係合部70kへと挿入して、縦枠カバー70の縁を引っ掛ける。このとき、縦枠カバー70は、係合片14fを軸として縦枠14に保持されたまま回動可能とされる。従って、縦枠カバー70は、回動時においても、縦枠14から容易に外れることがない。そして、縦枠カバー70の爪部70dを見付け方向外側に向かうように(図6(a)の矢印方向)、縦枠カバー70を室内側樹脂縦枠50の突起50dと対応する位置まで回動させることで、縦枠カバー70の室内側片70bが固定される(図6(b)の状態)。従って、縦枠カバー70を、被係合部70kと爪部70dとの少なくとも二か所でもって、縦枠14又は室内側樹脂縦枠50へと固定することができ、簡易な構成で確実な固定が可能とされている。
【0037】
このとき、縦枠カバー70の室外側片70cは、開口部装置100閉鎖の姿勢で、戸先框23よりも見付け方向内側に延びている(図4参照。)。従って、戸先框23を室内視で隠蔽することができる。また、戸先框23を介しての室内外の熱伝達が抑えられるので、断熱性を向上させることができる。一方、縦枠カバー70の被覆片70aは見込み方向室内側に延びて固定部材60を覆い隠しており、室内視で固定部材60が露出していない。以上のことから、縦枠カバー70によれば、戸先框23を隠蔽することにより意匠性、及び断熱性を向上させることができ、且つ、固定部材60を隠蔽することにより、さらに意匠性を向上させることができる。
【0038】
従来の開口部装置とした場合と、本発明にかかる開口部装置100とした場合とで、縦枠14部分の外観視を比較する。図7は、縦枠14部分の見込み面を概略的に表す図であり、召し合わせ側から戸先側に向かって縦枠14を見た場合における室内視正面図である。図7(a)に示すように、従来においては、縦枠14、室内側樹脂縦枠50、及び被覆部材70’を有する構成とされており、被覆部材70’を用いて固定部材60を隠蔽していたため、縦枠長手方向に沿って、直線Lが複数表れることとなり、これが外観に悪影響を及ぼしていた。これに対して、図7(b)に示すように、縦枠カバー70を用いることで、室内視で確認される直線Lの数を減少させることができる。従って、縦枠カバー70によれば、外観視で確認される不要な線を減少させることで、上記に加えてさらに意匠性を向上させることができる。
【0039】
縦枠カバー70の取り外しについては、図8に示すように、取り付けと同様に縦枠14の係合片14fを回動軸として、被覆片70aを、見付け方向内側であって見込み方向室外側に動くように、縦枠カバー70を係合片14fに保持されたまま回動させることによってなされ得る。このようにすれば、開口部装置100の施工時や、固定部材60の締め直し、又は室内側樹脂縦枠50の交換等、縦枠カバー70内部のメンテナンス時において、縦枠カバー70を完全に取り外すことなく、縦枠カバー70を引っ掛けた状態で作業を行うことができる。特に、図8(b)に示されるように、縦枠14の係合片14fを軸とする縦枠カバー70の回動が、縦枠カバー70の室外側片70cの室外側面が縦枠14の片14cに接触するまで可能とされて、縦枠カバー70の回転の行き過ぎが防止されるとともに、当該片14cと室外側片70cの室外側面が接触している姿勢においても、係合片14fに被係合部70kが係合された状態にあることが好ましい。このようにすれば、縦枠カバー70の取り外し時に、回転の行き過ぎ等によって、縦枠カバー70が容易に脱落してしまうことがなく、現場作業時に、部材を紛失する虞がない。
【0040】
以上より、本発明によれば、簡易な構造で断熱性を向上させることができ、外観にも優れ、部材紛失の虞がない開口部装置100を提供することができる。
【0041】
また、上記説明においては、縦枠カバー70が被係合部70kを有し、ここを軸に回動可能に取り付けられる形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。固定部材60と戸先框23とを効果的に隠蔽することが可能な形態であれば、本発明に適用することができる。但し、部材の紛失を防止するとともに、簡易な構成で縦枠カバー70を取り付けることができる観点から、縦枠カバー70が回動可能に取り付けられる形態が好ましい。
【0042】
また、上記説明においては、開口部装置100閉鎖の姿勢で、縦枠カバー70の室外側片70cが戸先框23よりも見付け方向内側まで延びている形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。縦枠カバー70により戸先框23の少なくとも一部が室内視で隠蔽されていれば、開口部装置100の断熱性を向上させることができる。ただし、意匠性、断熱性をさらに向上させる観点からは、開口部装置100閉鎖の姿勢で、縦枠カバー70の室外側片70cが戸先框23よりも見付け方向内側まで延びている形態が好ましい。
【0043】
また、上記説明においては、室内側樹脂縦枠50が固定部材60により固定された形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、縦枠14が固定部材60により固定され、且つ、室内側樹脂縦枠50が別の固定部材により固定された形態において、固定部材60と別の固定部材との双方を、縦枠カバー70により隠蔽可能とされた形態であってもよい。但し、部材数を減らして隠蔽必要な箇所を減らし、且つ、製造コストを抑える観点から、一の固定部材60により、室内側樹脂縦枠50の固定と縦枠14の固定とを兼用することが好ましい。
【0044】
尚、上記説明においては、ガラスパネル25、35と框21〜24、31〜34とが、接着手段により接着される形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。但し、採光性及び断熱性に優れる開口部装置とする観点から、ガラスパネル25、35と框21〜24、31〜34とが、接着手段により接着された開口部装置100とすることが好ましい。
【0045】
また、上記説明においては、開口部装置100をいわゆる引き違いの引き戸として説明したが、本発明はこれに限定されない。室内視で固定部材と框とを隠蔽可能な構成を有する開口部装置であれば特に限定されず、本発明を適用することができる。
【0046】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う開口部装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0047】
10 枠体
11 上横枠
12 下横枠
14、15 縦枠
20 障子
21 上横框
22 下横框
23 戸先框
24 外召し合わせ框
25 ガラスパネル
26 スペーサ
27 引手
28 接着手段
30 障子
40 施錠装置
50、51 室内側樹脂縦枠
60 固定手段
70 縦枠カバー
100 開口部装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠、横枠を有して建物躯体の開口部に沿って設けられる枠体、該枠体の前記縦枠の少なくとも一部を覆う室内側樹脂縦枠、前記縦枠に取り付けられる縦枠カバー、及び、前記枠体の見付け方向内側に配置されるとともに、ガラスパネルと框とを有する障子、を備え、
前記縦枠には、少なくとも一つの固定部材と、前記縦枠カバーを係合するための係合片とが備えられ、
前記縦枠カバーには、見込み方向室外側に設けられる室外側片と、該室外側片に設けられて前記係合片に係合される被係合部と、前記室外側片から見込み方向に延びる被覆片と、が備えられ、
前記固定部材が、前記被覆片により室内視で隠蔽され、且つ、開口部装置閉鎖の姿勢で、前記框のうち戸先框の少なくとも一部が、前記室外側片により室内視で隠蔽されている、開口部装置。
【請求項2】
前記被係合部が前記係合片に係合され、該係合片を軸として前記縦枠カバーが回動可能とされている、請求項1に記載の開口部装置。
【請求項3】
前記室内側樹脂縦枠が、前記縦枠に前記固定部材により固定されている、請求項1又は2に記載の開口部装置。
【請求項4】
前記室外側片が、開口部装置閉鎖の姿勢で、前記戸先框よりも見付け方向内側に延びている、請求項1〜3のいずれかに記載の開口部装置。
【請求項5】
前記框と前記ガラスパネルとが接着手段により接着されている、請求項1〜4のいずれかに記載の開口部装置。
【請求項6】
前記縦枠カバーの前記室外側片の室外側面が前記縦枠に接触するまで、前記係合片を軸として前記縦枠カバーが回動可能とされており、且つ、該縦枠カバーの回動により、前記縦枠カバーの室外側片の前記室外側面が前記縦枠に接触している姿勢においても、前記被係合部が前記係合片に係合されている、請求項2〜5のいずれかに記載の開口部装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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