説明

開回路遅延装置、システム、および分析物測定のための方法

【課題】検体測定に使用可能な電気化学的セルの電極間の補償されない電圧降下を低減または除去するためのシステム、回路および方法。
【解決手段】テストストリップ、参照電圧回路、オペレーショナルアンプおよび処理回路を有するシステムが提供される。オペレーショナルアンプは、第1ラインに印加される試験電圧とほぼ等しい参照電圧の所定の一部分を供給するために、参照電圧回路に接続され、第1ラインに対して接続状態または切断状態のいずれかに設定される出力端子を有する。処理回路は、オペレーショナルアンプの出力端子および第1ラインに接続され、出力端子と第1ラインとの間が切断状態中も第1ラインに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的流体中の検体を測定するため開回路遅延装置、システム、および分析物測定のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テストメータは、血液等の生理学的流体中の検体を測定するために、テストストリップを使用する。
例えば、糖尿病患者により、電気化学的テストメータと電気化学的テストストリップが血中グルコースの測定に使用される。
テストメータは、血中グルコースの測定中に、所定の期間、ポイズ遅延(poise delay)または開回路を使用する。
ポイズ遅延または開回路中は、テストメータは、テストストリップに試験電流または試験電圧を印加しない。
米国特許第5,565,085号明細書に図示および記載されているように、開回路を形成するために、1つ以上のスイッチが、テストメータのテストストリップ接点の1つに接続される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のシステムでは、測定精度を改善するという技術的特徴は、これまで認識されておらず、使用できなかったと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に例として記載するさまざまな技術的特徴を利用することで、測定精度を改善するための各種の装置、システムおよび方法が実現されている。
より詳細には、一実施形態では、試料中の検体濃度を測定するためのシステムが提供される。
前記システムは、テストストリップコネクタ、参照電圧回路、オペレーショナルアンプ、およびプロセッサを有する。
前記テストストリップコネクタは、テストストリップの第1電極に接続するように構成された第1ライン、および前記テストストリップの第2電極に接続するように構成された第2ラインを有する。
前記参照電圧回路は出力電圧を供給し、前記オペレーショナルアンプは、前記第1ラインに印加される前記試験電圧とほぼ等しい参照電圧の所定の一部分を供給するために、前記参照電圧回路に接続されている。
前記オペレーショナルアンプは、前記第1ラインに対して接続状態または切断状態のいずれかに設定される出力端子を有する。
前記処理回路は、前記オペレーショナルアンプの前記出力端子および前記第1ラインに接続され、前記出力端子と前記第1ラインとの間が切断状態中も前記第1ラインに接続されている。
【0005】
更に別の実施形態では、検体測定のための回路が提供される。
前記回路は、テストストリップコネクタ、オペレーショナルアンプおよびスイッチを有する。
前記テストストリップコネクタは、テストストリップの第1電極に接続するように構成された第1ライン、および前記テストストリップの第2電極をアースに接続するように構成された第2ラインを有する。
前記オペレーショナルアンプは、参照電圧回路に接続された第1入力端子、および帰還抵抗を介して前記第1ラインと前記オペレーショナルアンプの出力端子との両方に接続された第2入力端子を有する。
前記スイッチは、前記出力端子と前記オペレーショナルアンプの前記第2入力端子との間に配置され、前記スイッチの閉状態において前記出力端子を前記第1ラインに接続し、前記スイッチの開状態において前記出力端子を前記第1ラインから切断する。
【0006】
更に別の実施形態では、検体測定のための回路が提供される。
前記回路は、テストストリップコネクタおよびオペレーショナルアンプを備える。
前記テストストリップコネクタは、テストストリップの第1電極に接続するように構成された第1ライン、および前記テストストリップの第2電極をアースに接続するように構成された第2ラインを有する。
前記オペレーショナルアンプは、参照電圧回路に接続された第1入力端子、および帰還抵抗を介して前記第1ラインと前記オペレーショナルアンプの出力端子との両方に接続された第2入力端子を有する。
前記オペレーショナルアンプは、前記オペレーショナルアンプを遮断モードにするように構成された遮断回路を更に有する。
【0007】
更に別の実施形態では、電気化学的セルの電気化学反応を測定するための方法が提供される。
前記電気化学的セルは、第1電極および第2電極を有する。
前記回路は、電圧源に接続された第1入力端子と、前記第1電極および前記回路の出力端子に接続されたフィードバックに接続された第2入力端子と、を有し、前記回路の出力端子がプロセッサに接続されている。
前記方法は、前記第1電極に試験電圧を印加し、前記第2電極をアースに接続するステップと、前記第1電極を前記回路の前記出力端子から切断する一方、前記第1電極から前記プロセッサへの電気的接続を許可するステップと、補償されない電圧降下を誘起せずに、前記電気化学的セルで発生した試験電流を測定するために、前記第1電極を前記出力端子に接続するステップと、によって実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
これらの実施形態および他の実施形態、特徴および利点は、以下に簡単な説明を示す添付の図面と併せて読めば、以下の詳細な説明から、当業者にとって明らかであろう。
【0009】
明細書に組み込まれて明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好適な実施例を例示し、上記の一般的な説明と以下の詳細な説明と共に、符号で示す素子により発明の特徴を説明するのに役立つであろう。
【0010】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読むべきであり、図面では、異なる図面中の似た要素には同一の符号が付されている。
図面は必ずしも実際の比率どおりではなく、選択した例示的な実施形態を図示しており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
詳細な説明は、限定するためではなく、例証のために、本発明の原則を示すものである。
この説明は、当業者が、明確に本発明を実施および使用できるようにするものであり、現時点で、本発明を実施する最良の形態であると考えられる形態を含め、本発明のいくつかの実施形態、改案、変更、変形および使用について記載している。
【0011】
本明細書で使用するように、数値または範囲に用いる「およそ」または「約」との文言は、構成要素の一部分または集合体が、ここに記載するその使用目的のために機能することを許容する適切な寸法公差を示す。
更に、本明細書で使用するように、「患者」「ホスト」および「被験者」との文言は、ヒトまたは動物の被験者を指し、ヒト患者における本発明の使用が好ましい実施形態であるものの、本システムまたは方法をヒトでの使用に限定することを意図するものではない。
【0012】
図1は、テストメータ200に挿入されるテストストリップ100の概略平面図である。
テストメータおよびテストストリップの例として、商業的に入手可能なOneTouch(登録商標)、Ultra(登録商標)、グルコースメータ、およびOneTouch(登録商標)、Ultra(登録商標)、グルコーステストストリップ(米国カリフォルニア州ミルピタス95035所在)がある。
本発明における例示的な実施形態として使用するのに適切なテストストリップおよびテストメータに関する説明は、国際公開第WO/2004040285 A2号パンフレットおよび米国特許出願第11/252,296号明細書(2005年10月17日出願、代理人事件番号第DDI−5114USNP号)に記載されており、これら文献は、その全てを参照によりここに援用する。
【0013】
図1に示すように、テストメータ200は、イジェクトボタン201、視覚ディスプレイ202、ハウジング204、およびストリップポートコネクタ208を備える。
ストリップポートコネクタ208は、試験の実行時にテストストリップ100を収容するように構成される。
ストリップポートコネクタ208は、略して「コネクタ」と呼ばれることもある。
テストストリップ100は、試料受入室92、先端3および試料導入部90を備える。
図1に示すように、血液試料94が試料導入部90に配されて、試料受入室92に充填され、検体測定が実行可能となる。
また、テストメータ200は、試料受入室92に試料が充填されているかどうかを判定するように構成された適切な回路を備える。
【0014】
図2は、テストメータ200とテストストリップ100の機能ブロック図を示す。
テストメータ200は、ストリップポートコネクタ208、センサインタフェース回路106、A/D変換器107(アナログ−ディジタル変換器)、プロセッサ212、記憶ユニット210、および視覚ディスプレイ202を備える。
プロセッサ212は、A/D変換器107を内蔵の機能ユニットとして備える。
例えば、テキサス・インスツルメンツ社が販売している商業的に入手可能なMSP430などの複合信号マイクロプロセッサには、A/D変換器の機能が搭載されていることがある。
【0015】
テストストリップ100は、作用電極12、参照電極10、作用コンタクトパッド13、および参照コンタクトパッド11を備える。
また、テストストリップ100は、先端3と基端4も更に有する。
作用コンタクトパッド13と参照コンタクトパッド11は、基端4に配置され、それぞれ、作用電極12と参照電極10に電気的に接続する。
作用電極12と参照電極10は、先端3に設けられ、試料受入室92内にも配置される。
【0016】
ストリップポートコネクタ208は、テストストリップ100の基端4を受け容れて、作用電極12および参照電極10との電気的接続を確立するように構成される。
ストリップポートコネクタ208は、作用コネクタ103と参照コネクタ101を有し、これらはそれぞれ、作用コンタクトパッド13と参照コンタクトパッド11に電気的に接続するように構成されている。
作用コネクタ103および参照コネクタ101は、電流を伝達するのに適した導電性材料から作成される。
一実施形態では、このような導電性材料には、金メッキを施した銅ベリリウム合金または金メッキを施したリン青銅などが含まれる。
【0017】
センサインタフェース回路106は、第1の作用電極12と参照電極10との間に試験電圧(例えばV)を印加して、この結果発生した試験電流を測定する(例えば時間tの関数i(t)としてなど)ように構成される。
試験電圧の印加時は、センサインタフェース回路106は、ポテンショスタットとも呼ばれる。
センサインタフェース回路106は、試験電圧の印加により発生した試験電流を、比例する電圧値に変換する(I/Vコンバータなど)ことによって、試験電流の大きさを測定するように構成されており、この電圧値がA/D変換器107に送られる。
【0018】
プロセッサ212は、テストメータ200およびテストストリップ100により生理学的流体に関する測定制御を行い、これを実施させるように構成される。
より詳細には、プロセッサ212は、センサインタフェース回路106、A/D変換器107、視覚ディスプレイ202、オペレーショナルアンプ遮断回路600、および記憶ユニット210の機能を制御するために動作可能に接続される。
【0019】
A/D変換器107は、センサインタフェース回路106からのアナログ電圧値を、測定された試験電流に比例したディジタル値に変換するために使用される。
A/D変換器107は、センサインタフェース回路106およびプロセッサ212と通信する。
【0020】
記憶ユニット210は、当業者に公知の適切な記憶ユニットであればどのようなものであってもよく、例えば、半導体の不揮発性メモリユニットまたは光ディスクを用いた記憶ユニットなどである。
一実施形態では、記憶ユニット210は、揮発性の記憶部と不揮発性の記憶部の両方を備える。
記憶ユニット210は、テストメータ200およびテストストリップ100を用いたグルコース測定を実行するためのソフトウェア命令を格納するように構成される。
記憶ユニット210は、プロセッサ212と通信するように構成される。
【0021】
視覚ディスプレイ202は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)画面など、当業者に公知の適切なディスプレイ画面であれば、どのようなものでもよい。
適切なディスプレイ画面には、静止グラフィックベースの画像(関連するテキストが付属してもしなくてもよい)およびアニメーション付きのグラフィックベースの画像(関連するテキストが付属してもしなくてもよい)などの、チュートリアル画像を表示するように構成されたディスプレイ画面などがあるが、これに限定されない。
視覚ディスプレイ202は、テストメータ200の操作方法をユーザに促すためのユーザインタフェースの表示に使用される。
また、図1に示すように、視覚ディスプレイ202は、日付、時刻、グルコース濃度値の表示など、テストメータ200の動作に関連するほかの機能を実行するためにも使用される。
テストメータ200に内蔵されている測定の実行方法をユーザに指示するためのチュートリアルの例は、米国仮特許出願第60/842,584号明細書(2006年9月5日出願、代理人事件番号第DDI−5135 USNP号)に記載されており、同出願は、その全てを参照によりここに援用する。
【0022】
例示的な実施形態では、グルコースの電気化学的測定において、所定の時間間隔の間、開回路が形成される。
開回路中に、基体(グルコースなど)と試料受入室92内の酵素(グルコースオキシダーゼなど)との反応により、還元された伝達物質(フェロシアニドなど)が生成される。
還元された伝達物質が、検体濃度と比例して生成された後に、試験電圧が印加されて測定が実行される。
以下に、第1の所定の時間間隔の間に開回路を形成し、第2の所定の時間間隔の間に試験電圧を印加することができるセンサインタフェース回路106の各種実施形態について記載する。
【0023】
図3は、低抵抗を有さないが、補償されない電圧降下を誘起しないスイッチS1を使用するセンサインタフェース回路106の実施形態を示す。
センサインタフェース回路106は、オペレーショナルアンプ300、帰還抵抗Rf、第1の分圧器抵抗R1、第2の分圧器抵抗R2、および参照電圧源VREFを有する。
オペレーショナルアンプ300は、出力端子304、反転入力端子302、第1電力供給ピン309、第2電力供給ピン310、および非反転入力端子301を有する。
なお、センサインタフェース回路106は、相互インピーダンス増幅器とも呼ばれることもあり、抵抗および参照電圧源などの他の電子部品に接続されたオペレーショナルアンプを含む。
図3に示すように、ノイズをフィルタするために、帰還抵抗Rfと並列にキャパシタが任意選択で設置されてもよい。
【0024】
非反転入力端子301は、参照電極10と参照電圧源VREFに接続される。
分圧器は、参照電圧源VREFを、参照電圧回路の出力電圧に分割するために、第1の分圧器抵抗R1と第2の分圧器抵抗R2を使用する。
参照電圧源VREFと分圧器の組み合わせは、参照電圧回路とも呼ばれることがある。
図3に示すように、参照電極10は、第2ラインによってアースに接続される。
【0025】
図3に示すように、帰還抵抗Rfは、反転入力端子302と、スイッチS1の第1端S1aに接続される。
第1端S1aは、図3に示すように、A/D変換器107にも接続される。
スイッチS1の第2端S1bは、図3に示すように、出力端子304に接続される。
スイッチS1は、開閉操作を開始するタイミングを制御するためにプロセッサ212に動作可能に接続される。
このため、スイッチS1が閉じる場合、第1ラインを通る試験電流経路がスイッチS1を通過することがなく、補償されない電圧降下を効果的に防止する。
ここで、第1ラインとは、帰還抵抗Rfを介して、作用電極12からA/D変換器107に流れる電流経路である。
補償されない抵抗が存在しない場合には、第1ラインを介して印加される試験電圧は、出力電圧とほぼ等価となる。
相互インピーダンス増幅器の出力電圧Voは、スイッチの抵抗による試験電流測定の精度低下を防ぐために、帰還抵抗RfとスイッチS1の第1端S1aとの間の接点から採られる。
なお、抵抗が飽和を防ぐのに十分に小さい場合、スイッチS1の抵抗が、相互インピーダンス増幅器の電流−電圧機能を使用した試験電流測定の精度に影響することはない。
【0026】
スイッチS1は、有限の抵抗Rsを有し、作用電極12と参照電極10との間に発生する、補償されない電圧降下を潜在的に誘起する可能性がある。
例えばスイッチS1が第1ライン上に配置されている場合、実効印加試験電圧は、
【数1】

となる。
ここで、i(t)Rsの項は、補償されない電圧降下を表す。
比較的高い抵抗Rsまたは比較的高い電流i(t)あるいはこの両者により、Veffが十分に低くなる(例えば、伝達物質の酸化還元電圧よりも大幅に低いなど)と、発生する試験電流から得られるグルコース濃度の精度が低下する。
【0027】
図4は、補償されない電圧降下を誘起させない開回路を形成することができるセンサインタフェース回路106の別の実施形態を示す。
センサインタフェース回路106は、スイッチS1を使用する代わりに、遮断ピン508を有するオペレーショナルアンプ500と、オペレーショナルアンプに内蔵されている遮断制御回路とを使用して、開回路を形成することができる。同様の制御回路の例が遮断回路600として図5に示す。
オペレーショナルアンプ500は、オペレーショナルアンプ300と同じように、反転入力端子502、非反転入力端子501、第1電力供給ピン509、第2電力供給ピン510、および出力端子504を有する。
遮断回路600が(例えば、遮断ピン508をプロセッサ212の論理Lowに接続することにより)作動されると、作用電極12と参照電極10との間に開回路を形成するためにオペレーショナルアンプ500がオフになる。
さらに、遮断回路600が(例えば、遮断ピン508をプロセッサ212の論理Highに接続することにより)不作動とされると、作用電極12と参照電極10との間に試験電圧を印加するためにオペレーショナルアンプ500がオンになる。
このようなオペレーショナルアンプの例には、テキサス・インスツルメンツ社が販売している、広帯域、超低雑音、電圧帰還オペレーショナルアンプ、シャットダウン付OPA847がある。
オペレーショナルアンプに(図5に示すような)遮断回路を使用することで、図3に示すスイッチS1などのスイッチを使用せずに開回路を形成でき、この開回路は、検体測定回路(またはシステム)に、試験電圧の印加時に補償されない電圧降下を誘起させることがない。
【0028】
図5を参照すると、遮断ピン508が接続されていない場合には、オペレーショナルアンプは遮断機能なしで作動する。
ピン508が論理Lowに接続されると、トランジスタQ1へのベース電流が抵抗Rcに供給される。
遮断ピン508が(プロセッサ212によって)Lowに引き下げられると、ダイオードを作動させるために更に電流が抵抗Raを介して引き出される。
遮断ピン508を介して電圧が更に引き出された結果、トランジスタQ1のエミッタベース電圧が0Vとなり、トランジスタQ1からのコレクタ電流が遮断されて、通常は約200ナノ秒でアンプがオフになる。
外部抵抗によってはノード放電に長く要するため、遮断時間が200ナノ秒より長くかかる場合もある。
【0029】
出願人らは、公知の装置において、電極と相互インピーダンス増幅器との間の電流伝達経路の任意の点に設けたスイッチを利用するうえで、従来技術では認識されなかった特定の問題を見つけ出したと考える。
例えば、テストメータが開回路を形成すると、作用電極と参照電極との間に、供給電圧のリミットを超えるガルバーニ電位が発生して、この結果、開回路が破壊される可能性がある。
このような破壊が生じるのは、遮断モードでは、オペレーショナルアンプチップ内部の保護ダイオードが、真に高インピーダンスノードを有さないためである。
破壊されたセンサインタフェース回路106は、開回路ではなく公称電圧または公称電流を印加する。
オペレーショナルアンプ(300または500)が適切に機能するためには、適切な電源電圧が印加される必要があり、第1電力供給ピン(309、509)(例えば+3V)と第2電力供給ピン(310、510)(例えばアースまたは0V)とに印加される必要がある。
リミットが0Vと+3Vの電源電圧は、2個の使い捨てアルカリ電池(例えば2個の単3電池)の組またはリチウム電池を使用して生成できるため、利便性の店から選択される。
【0030】
一般的なグルコーステストストリップで、開回路の時間間隔の間に、テストストリップに、参照電極に対するガルバーニ電位が、供給電圧のリミット(+3Vおよび0V)を越える大きさで発生し、保護ダイオードが正しい開回路を形成できなくなると考えられる。
しかし、不活性の導電性電極とフェリシアン化物伝達物質を使用する一般的なグルコーステストストリップでは、ガルバーニ電位が+3Vを超えたり、0Vを下回る可能性は低いと考えられる。
ガルバーニ電位とは、存在する化学種の濃度および/または化学種の種類の差によって生じる、作用電極および参照電極に対する電圧であり、ネルンスト式を使用して推定することができる。
一般に知られている、ガルバーニ電位を発生させる装置としては、例えばバッテリがある。
【0031】
一実施形態では、−3Vと+3Vのリミットを有する供給電圧を使用して、ストリップ両端に発生する可能性のある電位に対して、開回路の動作範囲を広げることにより、センサインタフェース回路106は、負のガルバーニ電位の発生に耐性のある開回路を提供するように構成される。
なお、−3Vと+3Vのリミットを有する供給電圧は、4個のアルカリ電池か、または高価な電子部品を使用する必要があるため、リミットを0Vと+3Vに設定することよりも、実装が不便となることがある。
【0032】
また、特定の状況において、検体回路に用いるために、単に遮断回路を有するオペレーショナルアンプを選択したとしても、このオペレーショナルアンプは、従来は認識されていなかったと考えられる少なくとも1つの動作パラメータを満たす必要があるため、テストメータでの使用目的に適していない可能性があることを出願人らは見出した。
詳しくは、出願人らは、遮断制御回路を有する各種のオペレーショナルアンプは、遮断制御回路の作動時にリーク電流を示すことを見出した。
このようなリーク電流により、テストメータが開回路を形成しようとしているときに、作用電極と参照電極との間に公称電圧または公称電流が印加される可能性がある。
開回路中、リーク電流が十分大きな場合、検体濃度の精度が低下しかねない。
このため、リーク電流をほぼ含まない開回路を形成するためには、遮断制御回路を有するオペレーショナルアンプは、リーク電流が低くなければならない。
リーク電流は、遮断制御回路を有するオペレーショナルアンプの通常の設計仕様ではないが、テキサス・インスツルメンツ社(米国テキサス州ダラス所在)が販売しているオペレーショナルアンプOPA2334およびTLV2763は、実施形態としての使用に適していることを出願人らは見出した。
遮断回路600が電気化学的グルコーステストメータに使用するために作動される場合には、リーク電流が約1ナノアンペア未満のオペレーショナルアンプ500が選択される。
【0033】
また、オペレーショナルアンプの遮断制御回路は、半導体スイッチよりも、作動および停止に関する応答時間が比較的遅いことをも判明した。
遮断制御回路の通常の応答時間は、ナノ秒のオーダーを要求する半導体スイッチとは異なり、マイクロ秒のオーダーである必要がある。
このため、遮断制御回路は、半導体スイッチの応答時間よりも約1000倍遅くてもよい。
しかし、出願人らは、開回路の形成に遮断制御回路を使用する場合には、遮断制御回路の応答時間が遅くても、一般的なグルコーステストストリップの測定精度に影響しないことを見出した。
【0034】
テストストリップ100を電気化学的に試験する方法の一実施形態では、テストメータ200は、作用電極12と参照電極10に配された生理学的試料の存在を検出する。
生理学的試料の存在の検出の例は、米国特許第6,193,873号明細書、米国特許第5,266,179号明細書、および米国特許第5,366,609号明細書に記載されており、これら文献は、その全てを参照によりここに援用する。
生理学的試料が存在することが検出されると、スイッチS1が開状態となり、第1の所定の時間間隔の間、作用電極12と参照電極10との間に開回路が形成される。
試験中に、オペレーショナルアンプ300は、0Vおよび+3Vのリミットを有する供給電圧を給電される。
次に、第2の所定の時間間隔の間、作用電極12と参照電極10との間に試験電圧が印加されるように、スイッチS1が閉じられる。
第2の所定の時間間隔の間、発生した試験電流値の大きさが測定され、求められた試験電流値が検体の濃度値と相関される。
【0035】
テストストリップ100を電気化学的に試験する方法の別の実施形態では、テストメータ200は、作用電極12と参照電極10に配された生理学的試料の存在を検出する。
生理学的試料の存在が検出されると、遮断回路600が作動されて、オペレーショナルアンプ500がオフになり、第1の所定の時間間隔の間、作用電極12と参照電極10間に開回路が形成される。
試験中に、オペレーショナルアンプ500は、0Vおよび+3Vのリミットを有する供給電圧を給電される。
次に、第2の所定の時間間隔の間、作用電極12と参照電極10との間に試験電圧が印加されるように、遮断回路600が不作動とされて、オペレーショナルアンプ500がオンにされる。
第2の所定の時間間隔の間、発生した試験電流値の大きさが測定され、求められた試験電流値が検体の濃度値と相関される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態を図示し、ここに記載したが、このような実施形態を例示のみを目的として提示したことは当業者にとって明らかであろう。
当業者であれば、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置き換えに想到できるであろう。
本発明を実施する際に、ここに記載した本発明の実施形態のさまざまな変形例を使用してもよいことを理解すべきである。
添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義しており、これによって、これらの請求項およびその均等物の範囲内の方法がカバーされることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】テスト計器に挿入されるテストストリップの簡略化された正面図である。
【図2】テスト計器とテストストリップの機能ブロック図である。
【図3】スイッチの第1側がA/Dコンバータとフィードバック抵抗に接続し、スイッチの第2の側がオペレーショナルアンプの出力端子に接続することを例示する、センサインタフェース回路の簡略化された図である。
【図4】遮断制御回路を有するオペレーショナルアンプを使用しているセンサインタフェース回路の単純化された例の図である。
【図5】図4で使用されるオペレーショナルアンプのために、簡略化された遮断制御回路の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の検体濃度を測定するためのシステムであって、
テストストリップの第1電極に接続するように構成された第1ライン、および前記テストストリップの第2電極に接続するように構成された第2ラインを有するテストストリップコネクタと、
出力電圧を供給する参照電圧回路と、
前記出力電圧とほぼ等しい試験電圧を前記第1ラインに供給するために、前記参照電圧回路に接続され、前記第1ラインに対して接続状態または切断状態のいずれかに設定される出力端子を有するオペレーショナルアンプと、
前記オペレーショナルアンプの前記出力端子および前記第1ラインに接続され、前記出力端子と前記第1ラインとの間が切断状態中も前記第1ラインに接続されている処理回路と、を有するシステム。
【請求項2】
前記テストストリップコネクタが作用電極および参照電極に接続されたときに、閉状態のスイッチの公称抵抗により、前記作用電極と前記参照電極との間に補償されない電圧降下が誘起されないように、前記出力端子と前記第1ラインとの間に配置されたスイッチを更に有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記オペレーショナルアンプは、前記処理回路に接続された遮断論理回路を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
検体測定のための回路であって、
テストストリップの第1電極に接続するように構成された第1ライン、および前記テストストリップの第2電極をアースに接続するように構成された第2ラインを有するテストストリップコネクタと、
オペレーショナルアンプであって、参照電圧回路に接続された第1入力端子、および帰還抵抗を介して前記第1ラインと前記オペレーショナルアンプの出力端子との両方に接続された第2入力端子を有するオペレーショナルアンプと、
前記出力端子と前記オペレーショナルアンプの前記第2入力端子との間に配置されたスイッチと、を有し、
前記スイッチは、前記スイッチの閉状態において前記出力端子を前記第1ラインに接続し、前記スイッチの開状態において前記出力端子を前記第1ラインから切断する回路。
【請求項5】
前記参照電圧回路は、参照電圧源および分圧器を有する請求項4に記載の回路。
【請求項6】
前記オペレーショナルアンプの前記出力端子および前記第1ラインはフィルタに接続されている請求項5に記載の回路。
【請求項7】
前記フィルタはコンデンサを有する請求項6に記載の回路。
【請求項8】
検体測定のための回路であって、
テストストリップの第1電極に接続するように構成された第1ライン、および前記テストストリップの第2電極をアースに接続するように構成された第2ラインを有するテストストリップコネクタと、
オペレーショナルアンプと、を有し、
前記オペレーショナルアンプは、参照電圧回路に接続された第1入力端子、および帰還抵抗を介して前記第1ラインと前記オペレーショナルアンプの出力端子との両方に接続された第2入力端子を有し、前記オペレーショナルアンプは、前記オペレーショナルアンプを遮断モードにするように構成された遮断回路を更に有する回路。
【請求項9】
前記オペレーショナルアンプは、前記遮断回路の作動時のリーク電流が約1ナノアンペア未満のオペレーショナルアンプを有する請求項8に記載の回路。
【請求項10】
前記参照電圧回路は、参照電圧源および分圧器を有する請求項8に記載の回路。
【請求項11】
前記オペレーショナルアンプの前記出力端子および前記第1ラインはフィルタに接続されている請求項10に記載の回路。
【請求項12】
前記フィルタはコンデンサを有する請求項11に記載の回路。
【請求項13】
第1電極および第2電極と回路と、を有し、前記回路は、電圧源に接続された第1入力端子と、前記第1電極および前記回路の出力端子に接続されたフィードバックに接続された第2入力端子と、を有し、前記回路の出力端子がプロセッサに接続されている電気化学的セルの電気化学反応を測定するための方法であって、
前記第1電極に試験電圧を印加し、前記第2電極をアースに接続するステップと、
前記第1電極を前記回路の前記出力端子から切断する一方、前記第1電極から前記プロセッサへの電気的接続を許可するステップと、
補償されない電圧降下を誘起せずに、前記電気化学的セルで発生した試験電流を測定するために、前記第1電極を前記出力端子に接続するステップと、を有する方法。
【請求項14】
前記切断するステップは、作用電極と参照電極との間に開回路を形成できるように、第1の所定の時間間隔の間、オペレーショナルアンプの遮断制御回路を作動させるステップを有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記接続するステップは、前記作用電極と前記参照電極との間に試験電圧を印加できるように、第2の所定の時間間隔の間、前記オペレーショナルアンプの前記遮断制御回路を不作動とするステップを有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の所定の時間間隔中に試験電流値の大きさを測定するステップと、
前記試験電流値を検体濃度に相関させるステップと、を更に有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記測定するステップは、前記試験電流の前記大きさを比例する電圧値に変換するステップを有する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記作用電極および前記参照電極に配された生理学的試料の存在を検出する初期ステップを更に有する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記印加するステップは、前記オペレーショナルアンプに約0Vおよび約+3Vの電圧を供給するステップを有する請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記印加するステップは、前記オペレーショナルアンプに約−3Vおよび約+3Vの電圧を供給するステップを有する請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39526(P2009−39526A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−189849(P2008−189849)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】