説明

防水性スイッチ部材およびそれを備える電子機器

【課題】
高い耐久性と良好な押圧感触を実現する防水性スイッチ部材およびそれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】
本発明は、1または2以上の板状部材4と、板状部材4の少なくとも一方の面を覆う弾性部材5とを少なくとも備える防水性スイッチ部材2であって、板状部材4に、その厚さ方向に貫通する1または2以上の貫通孔10と、それぞれの貫通孔10の内側領域内に配置され、板状部材4の厚さ方向両側に突出する押圧部11と、それぞれの貫通孔10の周囲と押圧部11とをつなぐ1または2以上の可撓性のアーム部12とを備え、弾性部材5によって貫通孔10を塞ぐ防水性スイッチ部材2およびそれを備える電子機器1に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性スイッチ部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、携帯電子端末、カメラ、腕時計等の電子機器に防水構造を備えたものの需要が高くなってきている。電子機器の防水性を高めるには、蓋などの開閉部分および押釦などの駆動部分からの水の浸入を防ぐことが不可欠である。駆動部分の防水を図る代表的な構造としては、例えば、筐体の一部に貫通孔を形成し、その内方にスイッチを、外方に押釦をそれぞれ配置して、押釦とスイッチの間にエラストマー製のカップ部材を介在させて、カップ部材の外周囲と貫通孔とを密着させて防水を図り、かつカップ部材と一体のフランジによってカップ部材を補強する構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−344528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記防水構造を備えるスイッチ部材には、次のような問題がある。上記スイッチ部材は、押釦の押し込みによりエラストマー製のカップ部材の底部が下方に伸び、これによって、スイッチの入力を実現している。このため、カップ部材の底部は、伸縮可能な程度に薄く形成される必要がある。しかし、押釦の押圧およびその解除を繰り返すと、カップ部材の底部の薄い伸縮可能な部分が疲労して損傷する危険性が高い。また、カップ部材の底部が局所的に弾性伸縮するため、押圧感触が悪い。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、高い耐久性と良好な押圧感触を実現する防水性スイッチ部材およびそれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、1または2以上の板状部材と、板状部材の少なくとも一方の面を覆う弾性部材とを少なくとも備える防水性スイッチ部材であって、板状部材に、その厚さ方向に貫通する1または2以上の貫通孔と、それぞれの貫通孔の内側領域内に配置され板状部材の厚さ方向両側に突出する押圧部と、それぞれの貫通孔の周囲と押圧部とをつなぐ1または2以上の可撓性のアーム部とを備え、弾性部材によって貫通孔を塞ぐ防水性スイッチ部材である。
【0007】
本発明の別の形態は、さらに、アーム部の幅を、それと面内にて隣接する弾性部材の幅と同一またはそれより小さくした防水性スイッチ部材である。
【0008】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材の全周囲に板状部材の外周囲より突出する外縁凸部を備えた防水性スイッチ部材である。
【0009】
本発明の別の形態は、さらに、板状部材および弾性部材を、共に透光性部材とした防水性スイッチ部材である。
【0010】
本発明の別の形態は、さらに、アーム部を、押圧部の押圧側に突出するように湾曲または傾斜させた防水性スイッチ部材である。
【0011】
本発明の別の形態は、さらに、押圧部のスイッチ側の端部の一部または全部を弾性部材にて被覆した防水性スイッチ部材である。
【0012】
本発明の別の形態は、さらに、板状部材における貫通孔の外周に、押圧部の押圧側に突出する環状突出部を備え、弾性部材により環状突出部の少なくとも外周を被覆し、その外周の被覆領域に筐体と密着可能なリブを備えた防水性スイッチ部材である。
【0013】
本発明の別の形態は、さらに、前記アーム部に、その厚さ方向に上下する蛇腹部分を備えた防水性スイッチ部材である。
【0014】
本発明の別の形態は、さらに、押圧部のスイッチ側と反対側に、押圧部の端面の面積より大きな底面積を有する押釦を備え、押釦の外周の一部または全部に、その傾斜を規制するフランジを備えた防水性スイッチ部材である。
【0015】
本発明の一形態は、上記いずれかの防水性スイッチ部材を備えた電子機器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子機器に備える防水性スイッチ部材の高い耐久性と良好な押圧感触を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電子端末の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す防水性スイッチ部材を部分的に分解した分解斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す防水性スイッチ部材の主要部を裏返した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す防水性スイッチ部材を構成する板状部材のみを示す斜視図である。
【図5】図5は、図3に示す防水性スイッチ部材の主要部のC−C線断面図である。
【図6】図6は、図2に示す防水性スイッチ部材の押圧部近傍を拡大して示す斜視図である。
【図7】図7は、図1に示す防水性スイッチ部材近傍のA−A線断面図である。
【図8】図8は、図1に示す防水性スイッチ部材近傍のB−B線断面図である。
【図9】図9は、第二の実施の形態に係る電子機器の防水性スイッチ部材近傍を、図1に示すB−B線と同様の線にて切断したときの断面図(A)および当該断面図中の領域Xの拡大図(B)である。
【図10】図10は、第三の実施の形態に係る防水性スイッチ部材を構成する板状部材の一部の側面図および当該板状部材の一方の面に弾性部材を被覆した防水性可動体の側面図である。
【図11】図11は、第四の実施の形態に係る防水性スイッチ部材の図7と同一視の断面図である。
【図12】図12は、第五の実施の形態に係る防水性スイッチ部材を構成する板状部材のみを示す斜視図である。
【図13】図13は、第五の実施の形態に係る電子機器の防水性スイッチ部材近傍を、図1に示すB−B線と同様の線にて切断したときの断面図(A)および当該断面図中の領域Yの拡大図(B)である。
【図14】図14は、防水性スイッチ部材のアーム部のいくつかの変形例を示す図である。
【図15】図15は、図14に示す変形例と異なるアーム部の別の変形例を示す図であり、当該変形例の平面図(A)、平面図(A)内のD−D線断面図(B)およびさらなる変形例の断面図(C)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る防水性スイッチ部材および電子機器の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態では、電子機器の各実施の形態の説明の中で、防水性スイッチ部材の各実施の形態を説明する。また、以下、電子機器として携帯電子端末を例に説明するが、電子機器は、それに限定されず、携帯電話機、携帯型音楽再生装置、リモートコントローラーなどでも良い。
【0019】
<第一の実施の形態>
1.防水性スイッチ部材の構成および電子機器の防水構造
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電子端末の正面図である。
【0020】
図1に示すように、この実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電子端末1は、主操作面における表示部の下方に、防水性スイッチ部材2を備える。この防水性スイッチ部材2は、3つの操作用の押釦を備えた構造を有する。
【0021】
図2は、図1に示す防水性スイッチ部材を部分的に分解した分解斜視図である。図3は、図2に示す防水性スイッチ部材の主要部を裏返した状態を示す斜視図である。図4は、図2に示す防水性スイッチ部材を構成する板状部材のみを示す斜視図である。図5は、図3に示す防水性スイッチ部材の主要部のC−C線断面図である。
【0022】
防水性スイッチ部材2は、少なくとも1つの防水性可動体3を備える。防水性可動体3は、外部からの防水を図り、押圧を受けて一部を可動に構成された部材である。防水性可動体3は、一方向に細長い板状部材4と、同じく一方向に細長い弾性部材5とを、それらの厚さ方向に重ね合わせて一体化した構成を有する。この実施の形態では、弾性部材5は、板状部材4の一方の面を覆っている。ただし、板状部材4の両面を弾性部材5にて覆うこともできる。板状部材4は、弾性部材5に比して、剛性が高く、変形しにくい材料から成り、弾性部材5を補強する補強部材として機能する。板状部材4は、例えば、樹脂、金属、セラミックス、ガラス、カーボンから成り、好適には、高強度でかつ高い透明性を兼ね備えた部材とするために、透明性熱可塑性樹脂の一種であるポリカーボネート樹脂(PC樹脂)から成る。弾性部材5は、板状部材4に比して柔らかくて伸縮性に富む材料から成り、防水と、後述の押圧部を駆動容易にする機能を有する。弾性部材5は、例えば、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、天然ゴムから成り、好適には、耐熱性に優れ、かつ透明でもあるシリコーンゴムから成る。
【0023】
図4に示すように、板状部材4は、その厚さ方向に貫通する3個の貫通孔10を、板状部材4の長さ方向に所定間隔をあけて備える。板状部材4は、各貫通孔10の内側領域内に、板状部材4の厚さ方向両側に突出する1個の押圧部11と、各貫通孔10の周囲と押圧部11とをつなぐ2本の可撓性のアーム部12とを備える。アーム部12は、各貫通孔10の面内において、板状部材4の面に対してほぼ平坦に延出し、かつ面内で蛇行して押圧部11と接続する。押圧部11を内方に向かって押し込むと、アーム部12は、当該内方に向かって撓み、押圧部11への押圧を解除すると、アーム部12は、元の状態に戻る。アーム部12は、押圧部11の長さ方向にのびる中心軸と垂直な面内にて180度間隔で押圧部11と接続する。このため、押圧部11は、板状部材4に対して垂直を保持したまま上下動可能である。押圧部11とアーム部12とを、板状部材4と同じ材料にて構成しているため、アーム部12に相当する部分をエラストマーなどの柔らかい材料で構成する場合と比して、押し込み操作に対する耐久性が高く、かつ弾性部材5との均一な接着性をも図ることができる。また、組立効率の向上の観点から、押圧部11とアーム部12とを、板状部材4と一体に形成する方が好ましい。なお、板状部材4は、その長さ方向の所望の位置に、インサート成形時に板状部材4を金型に固定するための位置決め用孔13を備える。
【0024】
図2および図5に示すように、押圧部11は、その外側面を弾性部材5にて被覆した第一薄肉部20を備える。押圧部11の天面は、第一薄肉部20にて覆われず、露出している。なお、第一薄肉部20は必須の構成ではない。また、板状部材4の各貫通孔10は、一方の面側(この実施の形態では、携帯電子端末1の内方側)から、弾性部材5によって塞がれている。このため、アーム部12は、その内方側の面および側面を弾性部材5にて覆われている。各貫通孔10内を弾性部材5にて充填して塞ぐ充填領域21は、防水と、押圧部11を上下動させるのに必要な荷重を制御する機能を有している。押圧部11の周囲に占める貫通孔10の充填領域21が広いほど、押圧部11をより低い荷重にて押し込むことができる。
【0025】
図2および図3に示すように、弾性部材5は、各貫通孔10を塞ぐと共に、板状部材4の一方の面側を覆っている。弾性部材5は、板状部材4より大きな面積にて形成されており、弾性部材5の全周囲に、板状部材4の外周囲より突出する外縁凸部22を備える。外縁凸部22は、携帯電子端末1の筐体と密着して防水を図る部分である。防水性可動体3の厚さ方向に特別な防水部分を設けず、外周囲に外縁凸部22を設けて防水を図ることにより、防水性スイッチ部材2の薄型化を促進できる。図3に示すように、押圧部11は、内方側の外側面を弾性部材5にて被覆した第二薄肉部23を備える。押圧部11の底面は、第二薄肉部23にて覆われず、露出している。なお、押圧部11の底面は、第二薄肉部23で覆われていても良い。防水性可動体3の弾性部材5にて覆われた側には、板状部材4を露出する複数の凹部24を備える。当該凹部24は、板状部材4をインサート成形用の金型に固定する金型からの固定ピンと接していた痕である。なお、凹部24は必須の構成ではない。
【0026】
図2に示すように、防水性スイッチ部材2は、携帯電子端末1の外方側に、防水性可動体3の長さ方向に沿って、押圧部11の端面の面積より大きな底面積を有する3個の押釦6を備える。押釦6は、板状部材4と同様、弾性部材5に比して剛性が高く、変形しにくい材料から成り、例えば、樹脂、金属、セラミックス、ガラス、カーボンから成り、好適には、高強度でかつ高い透明性を兼ね備えた部材とするために、透明性熱可塑性樹脂の一種であるポリカーボネート樹脂(PC樹脂)から成る。なお、押釦6は必須の構成ではない。押釦6の外周の一部には、外側に突出する板状のフランジ30,31を備える。フランジ30,31は、押釦6を押し込んだ際に、押釦6が過度に傾かないようにするための規制部分である。押釦6は、それが傾くと、フランジ30,31が筐体内部に接することにより、一定以上傾かない。したがって、押釦6の底面積に対して押圧部11の上端面の面積が過度に小さくても、押釦6をその面の平行を保持しながら安定的に押圧できる。なお、フランジ30,31は、押釦6と筐体の形状に合わせて、押釦6の側面の全周囲に形成することもできる。
【0027】
図6は、図2に示す防水性スイッチ部材の押圧部近傍を拡大して示す斜視図である。
【0028】
アーム部12の幅(W1)は、それと隣接する弾性部材5の幅(W2)と同一またはそれより小さい方が好ましい。アーム部12の幅(W1)が小さく、貫通孔10に占める充填領域21が広いほど、アーム部12の可撓性が大きくなり、より低圧にて押圧部11を押し込みやすくなるからである。このように、押圧部11の所望の可動圧を得るために、アーム部12の幅(W1)と、それと隣接する弾性部材5の幅(W2)とを調整するのが好ましい。
【0029】
図7は、図1に示す防水性スイッチ部材近傍のA−A線断面図である。図8は、図1に示す防水性スイッチ部材近傍のB−B線断面図である。
【0030】
携帯電子端末1は、内方から上方に向かって、内部筐体40、外部筐体50の順に積層した構造を有する。内部筐体40は、その内壁に、防水性スイッチ部材2の防水性可動体3を載置して保持するための突起41を、防水性可動体3の幅方向内側に突出して備える。突起41は、防水性スイッチ部材2が過度に内方に押し込まれないように規制する機能を持つ。外部筐体50は、押釦6のフランジ30,31より上方部分のみを挿入配置可能な大きさの開口部51を備える。また、内部筐体40の内部は、その内壁と防水性可動体3の外縁凸部22とを密着可能な大きさである。このため、開口部51から水が入っても、その水は、外縁凸部22と内部筐体40の内壁との密着部分により阻まれ、防水性可動体3を超えてそれより内方には浸入しない。
【0031】
各押釦6は、その裏面のほぼ中央に1個の凹部32を備える。凹部32は、押圧部11の上部を挿入可能な形態を有する。押釦6は、例えば、押圧部11の上部と接着剤を介して、あるいは嵌め込み等の手法によって固定できる。内部筐体40の突起41より内方には、ドームスイッチあるいはタクトスイッチに代表されるスイッチ61を配置し、かつそれと電気的に接続した回路基板60が組み込まれている。スイッチ61は、各押圧部11の押圧によって入力可能となるように、各押圧部11に対して1個ずつ、各押圧部11の直下に配置されている。押釦6を矢印Fの方向に押圧すると、押圧部11は、アーム部12の撓みを利用して下方に移動してスイッチ61を押す。これによって、スイッチ61が入力状態となる。防水性可動体3の本体は、押圧部11の上下動に対し大きく上下動しないため、内部筐体40の内壁との間で高い防水性を実現できる。なお、凹部32は必須の構成ではなく、例えば、各押釦6の平滑な底面と押圧部11の上部とを接着剤等を介して固定しても良い。
【0032】
2.防水性スイッチ部材の製造方法
図2に示す防水性スイッチ部材は、一例として、以下のような方法にて製造できる。まず、PC樹脂に代表される熱可塑性樹脂の溶融物を射出成形用の金型内に供給して、図4に示す板状部材4を製造する。次に、板状部材4をインサート成形用の金型にセットする。このとき、金型を構成する下金型から突出する位置決めピンを、板状部材4の位置決め用孔13に挿入する。また、上金型からの固定ピンを板状部材4上に当接して、板状部材4を金型内に固定する。次に、金型に形成される供給口から、板状部材4の固定ピンの当接面側に向けて、弾性部材5の硬化用組成物を供給し、これを硬化させる。次に、インサート成形用の金型を開き、防水性可動体3を取り出す。これと並行して、PC樹脂に代表される熱可塑性樹脂の溶融物を射出成形用の金型内に供給して、図2に示す押釦6を製造する。次に、押釦6の裏面、天面および側面の少なくともいずれか1つの面に、加飾を施す。加飾は、印刷、印刷済みのフィルムの貼付などの手法により好適に実現できる。最後に、各押釦6の凹部32と、防水性可動体3の各押圧部11の上端面とを固定し、防水性スイッチ部材2を完成する。
【0033】
<第二の実施の形態>
次に、本発明の第二の実施の形態に係る防水性スイッチ部材および電子機器について説明する。なお、当該第二の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0034】
1.防水性スイッチ部材の構成および電子機器の防水構造
図9は、第二の実施の形態に係る電子機器の防水性スイッチ部材近傍を、図1に示すB−B線と同様の線にて切断したときの断面図(A)および当該断面図中の領域Xの拡大図(B)である。
【0035】
第二の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2は、第一の実施の形態のそれと異なり、照光可能な構成を備える。具体的な構成は、以下のとおりである。回路基板60は、LEDに代表される1または2以上の光源72を、バッテリーと電気的に接続可能に固定する。板状部材4および弾性部材5を、共に、透光性部材から構成する。より具体的には、板状部材4を、PC樹脂、アクリル樹脂等の透光性の高い樹脂材料から構成する。また、弾性部材5を、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の透光性エラストマーから構成する。さらに、防水性スイッチ部材2に押釦6を備える場合には、押釦6を、PC樹脂、アクリル樹脂等の透光性の高い樹脂材料、あるいはガラスから構成する。
【0036】
また、押釦6の天面における文字、模様、記号等のみから透光したい場合には、押釦6の天面と側面に、透光させる抜き文字領域71を除き、遮光性インク(黒インクなど)を塗布して遮光層70を形成する。また、押釦6同士の隙間、あるいは押釦6と開口部51との隙間からの漏光を防止するため、当該隙間の直下位置にある防水性可動体3の板状部材4の表面に、遮光性インクを塗布した遮光フィルムを貼り、遮光層70を形成する。このような構成によれば、遮光層70以外の構成は、光源72からの光を透過するので、押釦6の天面に形成された抜き文字領域71からの透光を実現できる。
【0037】
2.防水性スイッチ部材の製造方法
第二の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2は、第一の実施の形態に係るそれと同様の方法にて製造できる。第二の実施の形態にて追加される遮光層70は、上述のように、防水性可動体3の製造後に、押釦6同士の隙間、あるいは押釦6と開口部51との隙間の各直下位置に形成される。また、押釦6の製造後、押釦6の天面および側面に、抜き文字領域71を除いて遮光層70を形成する。なお、押釦6の遮光層70の上から、透明インクあるいは透明フィルムを用いた防傷層を形成しても良い。
【0038】
<第三の実施の形態>
次に、本発明の第三の実施の形態に係る防水性スイッチ部材および電子機器について説明する。なお、当該第三の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0039】
1.防水性スイッチ部材の構成および電子機器の防水構造
図10は、第三の実施の形態に係る防水性スイッチ部材を構成する板状部材の一部の側面図および当該板状部材の一方の面に弾性部材を被覆した防水性可動体の側面図である。
【0040】
第三の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2は、第一の実施の形態のそれと異なり、アーム部12を、押圧部11の押圧側に突出するように湾曲させている。押圧部11は、板状部材4の面から上方に突出する長さより、スイッチ61側に突出する長さの方が大きい。このため、押圧部11と押釦6との間のスペースが狭くなり、アーム部12を押圧部11の上方に突出するように湾曲あるいは傾斜させることは難しい。これに対して、板状部材4の面から押圧部11の下端までのスペースは、上方のスペースより広い。また、押圧部11の長さ方向の中心により近い位置にアーム部12を接続する方が、押圧部11を垂直方向に安定して押し込みやすい。同じ目的から、アーム部12をスイッチ61側に突出して平面的に傾斜させても良い。
【0041】
2.防水性スイッチ部材の製造方法
第三の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2は、第一の実施の形態に係るそれと同様の方法にて製造できる。
【0042】
<第四の実施の形態>
次に、本発明の第四の実施の形態に係る防水性スイッチ部材および電子機器について説明する。なお、当該第四の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0043】
1.防水性スイッチ部材の構成および電子機器の防水構造
図11は、第四の実施の形態に係る防水性スイッチ部材の図7と同一視の断面図である。
【0044】
第四の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2は、第一の実施の形態に係るそれと異なり、押圧部11のスイッチ61側の端部の全面を弾性部材5にて被覆している。弾性部材5の被覆により押圧部11の下端に形成される被覆部23aは、押圧部11とスイッチ61との接触に起因して発する音を低減し、また、スイッチ61の耐久性向上にも寄与する。なお、被覆部23aは、押圧部11の下端を完全に被覆せず、一部のみを被覆しても良い。例えば、押圧部11の下端の中央部分のみを露出し、その周囲を弾性部材5にて被覆することによっても、押圧部11の下端とスイッチ61との接触を防止できる。
【0045】
2.防水性スイッチ部材の製造方法
第四の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2は、第一の実施の形態に係るそれと同様の方法にて製造できる。
【0046】
<第五の実施の形態>
次に、本発明の第五の実施の形態に係る防水性スイッチ部材および電子機器について説明する。なお、当該第五の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0047】
1.防水性スイッチ部材の構成および電子機器の防水構造
図12は、第五の実施の形態に係る防水性スイッチ部材を構成する板状部材のみを示す斜視図である。図13は、第五の実施の形態に係る電子機器の防水性スイッチ部材近傍を、図1に示すB−B線と同様の線にて切断したときの断面図(A)および当該断面図中の領域Yの拡大図(B)である。
【0048】
第五の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2は、第一の実施の形態に係るそれと異なり、板状部材4の各貫通孔10の外周に、押圧部11の押圧側に突出する環状突出部80を備える。また、弾性部材5は、環状突出部80の少なくとも外周を被覆し、その外周の被覆領域に、内部筐体40の突起41と密着可能なリブ81を備える。防水性可動体3と内部筐体40との間の防水は、好適に、環状突出部80の外周に弾性部材5から構成されるリブ81によって実現される。このため、防水性可動体3の弾性部材5の外周囲に、外縁凸部22を形成しなくても、防水性を確保できる。ただし、リブ81に加えて、外縁凸部22を形成しても良い。また、リブ81を形成せず、単に、環状突出部80の外周を被覆する弾性部材5の表面を突起41と密着させて、防水を実現しても良い。また、弾性部材5は、環状突出部80の外周に加え、内周を被覆しても良い。
【0049】
2.防水性スイッチ部材の製造方法
第五の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2は、第一の実施の形態に係るそれと同様の方法にて製造できる。
【0050】
<その他の実施の形態>
以上、本発明に係る防水性スイッチ部材およびそれを備える電子機器の各実施の形態について説明したが、本発明は、上述した各実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形して実施可能である。
【0051】
図14は、防水性スイッチ部材のアーム部のいくつかの変形例を示す図である。
【0052】
図14の(A)に示すように、板状部材4から延出するアーム部12を渦巻状に形成し、押圧部11と1箇所でのみ繋げても良い。また、図14の(B)に示すように、アーム部12をクランク状に形成し、押圧部11と2箇所で繋げても良い。2本のアーム部12は、押圧部11を垂直に押し込み可能とする観点から、板状部材4の平面内において押圧部11を中心に180度間隔で押圧部11に接続するのが好ましい。さらに、図14の(C)に示すように、第一の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2と同様にアーム部12を湾曲形状に形成し、押圧部11と3箇所で繋げても良い。3本のアーム部12は、押圧部11を垂直に押し込み可能とする観点から、板状部材4の平面内において押圧部11を中心に120度間隔で押圧部11に接続するのが好ましい。アーム部12が4本以上になっても、同様の趣旨から、略同一中心角間隔にて、アーム部12を押圧部11に接続するのが好ましい。図14の(A)、(B)および(C)のいずれの形態においても、アーム部12の幅は、それと隣接する弾性部材5の幅と同一またはそれより小さく形成する方が好ましい。
【0053】
図15は、図14に示す変形例と異なるアーム部の別の変形例を示す図であり、当該変形例の平面図(A)、平面図(A)内のD−D線断面図(B)およびさらなる変形例の断面図(C)を示す。
【0054】
図15の(A)および(B)に示すように、貫通孔10の内周の1箇所から直線状にアーム部12を延出し、押圧部11と1箇所のみでアーム部12を繋げても良い。かかる構成にすると、押圧部11をスイッチ61に向けて押圧した場合、図14に示す構成と比較して、押圧部11が斜め下方向に傾斜して動きやすくなるが、押圧するストロークが極めて短い場合には支障がない。また、図15の(C)に示すように、アーム部12に、その厚さ方向に上下する蛇腹部分12aを備えても良い。このように、アーム部12の長さ方向の一部または全部に蛇腹部分12aを備えると、貫通孔10の内周の1箇所からアーム部12を延出させて押圧部11と繋げていても、押圧部11の押し下げの際に、蛇腹部分12aの可動距離が長くなる。このため、スイッチ61の押圧感触が向上し、かつ押圧部11の傾斜に伴うスイッチ61からの位置ずれも小さくなる。なお、蛇腹部分12aは、図14に示す各アーム部12の他、第一〜第五の実施の形態におけるアーム部12に形成しても良い。
【0055】
上述のいずれの防水性スイッチ部材2も、1枚のみの板状部材4を備えているが、2枚以上の板状部材4を分離して備えても良い。また、上述のいずれの防水性スイッチ部材2も、板状部材4に3個の貫通孔10を備えているが、1個のみ、2個、あるいは4個以上の貫通孔10を備えても良い。また、板状部材4の形状および弾性部材5の形状は、一方向に長い形状に限定されることなく、円形、正方形、屈曲形状等の如何なる形状でも良い。
【0056】
また、上記の第一〜第五の各実施の形態および図14,図15に示す変形例は、互いに組み合わせできない場合を除き、互いにそれぞれの特徴を一以上組み合わせても良い。例えば、第二、第四および第五の各実施の形態に係る防水性スイッチ部材2に、第三の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2を組み合わせて、押圧部11の押圧側に突出して湾曲あるいは傾斜するアーム部12を設けても良い。また、第二および第五の各実施の形態に係る防水性スイッチ部材2に、第四の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2を組み合わせて、押圧部11の下端を弾性部材5にて部分的あるいは完全に被覆する構造を備えても良い。また、第二の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2に、第五の実施の形態に係る防水性スイッチ部材2を組み合わせて、環状突出部80およびリブ81を設けても良い。これらは、一例に過ぎず、各実施の形態の構成を複数種組み合わせても良い。また、第一の実施の形態において、アーム部12の幅(W1)をそれに隣接する弾性部材5の幅(W2)より大きくし、あるいは外縁凸部22を形成せずに別の防水部分を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電子機器、特に小型の電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 携帯電子端末(電子機器の一例)
2 防水性スイッチ部材
4 板状部材(透光性部材)
5 弾性部材(透光性部材)
6 押釦
10 貫通孔
11 押圧部
12 アーム部
12a 蛇腹部分
22 外縁凸部
30,31 フランジ
40 内部筐体(筐体の一例)
61 スイッチ
80 環状突出部
81 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2以上の板状部材と、
当該板状部材の少なくとも一方の面を覆う弾性部材と、
を少なくとも備える防水性スイッチ部材であって、
上記板状部材は、
その厚さ方向に貫通する1または2以上の貫通孔と、
それぞれの上記貫通孔の内側領域内に配置され、上記板状部材の厚さ方向両側に突出する押圧部と、
それぞれの上記貫通孔の周囲と上記押圧部とをつなぐ1または2以上の可撓性のアーム部と
を備え、
上記弾性部材によって上記貫通孔を塞ぐ防水性スイッチ部材。
【請求項2】
前記アーム部の幅は、それと面内にて隣接する前記弾性部材の幅と同一またはそれより小さいことを特徴とする請求項1に記載の防水性スイッチ部材。
【請求項3】
前記弾性部材は、その全周囲に前記板状部材の外周囲より突出する外縁凸部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防水性スイッチ部材。
【請求項4】
前記板状部材および前記弾性部材は、共に透光性部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防水性スイッチ部材。
【請求項5】
前記アーム部は、前記押圧部の押圧側に突出するように湾曲または傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の防水性スイッチ部材。
【請求項6】
前記押圧部のスイッチ側の端部は、前記弾性部材にて一部または全部を被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の防水性スイッチ部材。
【請求項7】
前記板状部材は、前記貫通孔の外周に、前記押圧部の押圧側に突出する環状突出部を備え、
前記弾性部材は、当該環状突出部の少なくとも外周を被覆し、その外周の被覆領域に、筐体と密着可能なリブを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の防水性スイッチ部材。
【請求項8】
前記アーム部は、その厚さ方向に上下する蛇腹部分を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の防水性スイッチ部材。
【請求項9】
前記押圧部のスイッチ側と反対側に、前記押圧部の端面の面積より大きな底面積を有する押釦を備え、
当該押釦の外周の一部または全部に、その傾斜を規制するフランジを備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の防水性スイッチ部材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の防水性スイッチ部材を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−256520(P2012−256520A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129004(P2011−129004)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】