説明

防汚性および層間密着性に優れる積層体およびその製造法

プライマー層(II)が設けられた基材(III)と該プライマー層(II)上に直接設けられたトップコート層(I)とからなり、該トップコート層(I)が、(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含む組成物の硬化物で形成されており、該プライマー層(II)が、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンと(F)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とからなるプライマー組成物で形成されていることを特徴とする積層体。このものは、摺動性や透明性、耐磨耗性、防汚性、耐薬品性に優れる塗膜表面を有する積層体、特にシリコーンゴムを基材とする積層体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動性や透明性、耐磨耗性、防汚性、耐薬品性に優れる塗膜表面を有する層間密着性が向上した積層体、特にシリコーンゴムを基材とする積層体およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に摺動性(滑り性)や防汚性が要求される製品は多岐に亘っており、特にシリコーンゴムを基材とする柔軟性基材は携帯電話のキーパッドに代表される携帯端末やOA機器の入力盤面の保護材として広く使用されているが、表面の汚れ防止や滑り性の維持が不充分で、それらの改善が求められている。たとえば、特許文献1ではシリコーンゴム系基材にエポキシ基またはアミノ基含有トリアルコキシシランからなるプライマーを塗布し、ついでエポキシ基含有化合物とアミン系硬化剤と界面活性剤とからなるトップコート用組成物を塗布した積層体を開示しているが、基材に対する密着性に劣り、またトップコートに防汚性が期待できない。
【0003】
特許文献2には、ゴム製の押ボタン表面にフッ化炭化水素化合物を塗布することにより防汚性を付与することが提案されているが、フッ化炭化水素化合物とゴム基材との密着性が殆どなく、効果の持続性に問題がある。
【0004】
特許文献3にエラストマー製のキートップ表面を含フッ素脂肪族ポリマーで被覆して撥水性を付与することが提案されているが、この技術においても含フッ素脂肪族ポリマーとエラストマー基材との密着性が殆どなく、効果の持続性に問題がある。
【0005】
さらに特許文献4にはシリコーンゴム製の弾性ロール上に接着剤を介してポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂を被覆することが開示されている。しかし、フッ素樹脂自体に密着性がないため、密着性を向上させるためにシリコーンゴム表面を化成処理する必要があるほか、高温成形により作製するため、成形加工性に融通性がない。
【0006】
【特許文献1】特開平8−333465号公報
【特許文献2】特開平2−295012号公報
【特許文献3】特開平7−220553号公報
【特許文献4】特開平4−173328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、防汚性や摺動性に優れたトップコート層がシリコーンゴムなどの基材へ強固に密着した積層体およびその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、プライマー層(II)が設けられた基材(III)と該プライマー層(II)上に直接設けられたトップコート層(I)とからなり、
該トップコート層(I)が、(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含むトップコート用組成物の硬化物で形成されており、
該プライマー層(II)が、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンと(F)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とからなるプライマー用組成物から形成されている
ことを特徴とする積層体に関する。
【0009】
本発明はまた、基材(III)上に、直接または他の層を介して、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンと(F)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とからなるプライマー用組成物の被膜を形成する工程、
(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含むトップコート用組成物を塗布して未硬化トップコート層を形成する工程、および
該未硬化トップコート層を硬化させる工程
からなることを特徴とするプライマー層(II)が設けられた基材(III)と該プライマー層(II)上に直接設けられたトップコート層(I)からなる積層体の製造法にも関する。
【0010】
未硬化プライマー層および未硬化トップコート層は上記のように2コート1ベーク法で1回の硬化工程で硬化させてもよいし、2コート2ベーク法で順次硬化工程を施してもよい。
【0011】
前記硬化性フッ素樹脂(A)としては水酸基を硬化性基として有する硬化性フッ素樹脂が、防汚性および摺動性などに優れる点から好ましい。
【0012】
硬化性フッ素樹脂(A)として水酸基を硬化性基として有する硬化性フッ素樹脂を用いる場合、トップコート層(I)はカップリング剤(C)としてイソシアネート基含有シランカップリング剤を含み、またプライマー層(II)はカップリング剤(F)としてアルミキレート化剤および/またはアミノ基含有シランカップリング剤を含むことが、相互の反応性が良好な点から好ましい。
【0013】
また、トップコート層(I)がカップリング剤(C)としてアルミキレート化剤を含むときには、プライマー層(II)はカップリング剤(F)としてアルミキレート化剤および/またはアミノ基含有シランカップリング剤を含んでいることが、相互の反応性が良好な点から好ましい。
【0014】
また、トップコート層(I)の摺動性や防汚性をさらに向上させるために、トップコート層(I)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、たとえば数平均分子量が60万以下のフィブリル化しないPTFE粒子を添加してもよい。
【0015】
基材(III)として特に制限はないが、従来フッ素系のトップコートを形成しにくかったシリコーンゴム基材に対しても充分な密着性のある積層体を提供できる。
【0016】
本発明の積層体は携帯電話のキーパッドとして有用である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、防汚性、摺動性、層間密着性に優れた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の積層体は、プライマー層(II)が設けられた基材(III)と該プライマー層(II)上に直接設けられたトップコート層(I)とからなり、トップコート層(I)とプライマー層(II)にそれぞれ特定のカップリング剤を配合した点に特徴がある。
【0019】
本発明のトップコート層(I)は、(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含むトップコート用組成物の硬化物で形成されている。
【0020】
硬化性フッ素樹脂(A)としては、たとえばつぎのものが例示できる。
(A−I)含フッ素オレフィンと官能基含有非フッ素系単量体との共重合体
(A−II)官能基含有含フッ素オレフィンと官能基を有しない含フッ素オレフィンとの共重合体
(A−III)2種以上の樹脂をブレンドして調製した官能基含有フッ素樹脂ブレンド物
(A−IV)フッ素樹脂粒子にさらに官能基含有非フッ素系単量体をシード重合した複合化樹脂(シード重合体)
含フッ素オレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニルなどがあげられる。
【0021】
硬化性フッ素樹脂が有する官能基としては、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸塩、スルホン酸基、スルホン酸塩、エポキシ基、アミノ基、カルボニル基、ニトリル基および/またはアルコキシシリル基が好ましくあげられる。
【0022】
また、官能基含有含フッ素オレフィンとしてはたとえばつぎのものが例示できる。
【0023】
(i)CF2=CF(CF2a
(ZはSO3MまたはCOOM(MはH、NH4またはアルカリ金属);aは1〜10の整数)
具体例としては、
CF2=CFCF2−COOH
などがあげられる。
【0024】
(ii)CF2=CF(CF2CF(CF3))b−Z
(ZはSO3MまたはCOOM(MはH、NH4またはアルカリ金属);bは1〜5の整数)
具体例としては、
CF2=CFCF2CF(CF3)−COOH、
CF2=CF(CF2CF(CF3))2−COONH4
などがあげられる。
【0025】
(iii)CF2=CF−O−(CFRf3c−Z
(Rf3はFまたはCF3;ZはSO3MまたはCOOM(MはH、NH4またはアルカリ金属);cは1〜10の整数)
具体例としては、
CF2=CF−O−CF2CF2CF2COOH
などがあげられる。
【0026】
(iv)CF2=CF−O−(CF2CFRf3O)d−Z
(Rf3はFまたはCF3;ZはSO3MまたはCOOM(MはH、NH4またはアルカリ金属);dは1〜10の整数)
具体例としては、
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)OCF2CF2COOH、
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)OCF2CF2SO3
などがあげられる。
【0027】
(v)CH2=CFCF2−O−(CF(CF3)CF2O)e−CF(CF3)−Z
(ZはSO3MまたはCOOM(MはH、NH4またはアルカリ金属);eは0または1〜10の整数)
具体例としては、
【0028】
【化1】

などがあげられる。
【0029】
(vi)CF2=CFCF2−O−(CF(CF3)CF2O)f−CF(CF3)−Z
(ZはSO3MまたはCOOM(MはH、NH4またはアルカリ金属);fは1〜10の整数)
具体例としては、
CF2=CFCF2O−CF(CF3)CF2O−CF(CF3)COOH、
CF2=CFCF2O−CF(CF3)CF2O−CF(CF3)SO3
などがあげられる。
【0030】
官能基含有非フッ素系単量体のうち水酸基含有非フッ素系単量体としては、式:CH2=CHR1(式中、R1は−OR2または−CH2OR2(ただしR2は水酸基を有するアルキル基)である)で表わされるヒドロキシアルキルビニルエーテルまたはヒドロキシアルキルアリルエーテルがあげられる。R2としては、たとえば炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基に1〜3個、好ましくは1個の水酸基が結合したものである。これらの例としては、たとえば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどがあげられる。そのほか、アリルアルコールなども例示できる。
【0031】
アルコキシシリル基含有の非フッ素系単量体としては、たとえばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニルアルコキシシラン類のほか、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリイソプロペニルオキシシリルエチルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。
【0032】
カルボキシル基含有非フッ素系単量体としては、不飽和基含有有機酸、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸無水物、コハク酸無水物、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、10−ウンデセン酸などのカルボキシル基含有単量体があげられる。
【0033】
その他の官能基含有非フッ素系単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、エポキシビニル、エポキシビニルエーテルなどのエポキシ基含有単量体;ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有単量体;アクロレイン、ビニルエチルケトン、ジアセトンアクリルアミドなどのカルボニル基含有単量体が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
また、官能基を有しない単量体を共単量体として使用してもよい。たとえば、エチレン、プロピレン、イソブテンなどのα−オレフィン類;エチルビニルエーテル(EVE)、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ポリオキシエチレンビニルエーテルなどのビニルエーテル類;ポリオキシエチレンアリルエーテル、エチルアリルエーテル、フェニルアリルエーテルなどのアリルエーテル類;酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ベオバ9やベオバ10(いずれもシェル化学社製の飽和カルボン酸ビニル)などのビニルエステル類;マレイン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸ジエステル類;メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物などが使用できる。
【0035】
前記(A−I)の形態の共重合体のうち水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合体としては、前記含フッ素オレフィンと、前記水酸基および/またはカルボキシル基含有単量体、要すればこれらの単量体と共重合可能な単量体との共重合体があげられる。水酸基含有単量体の代表例はヒドロキシブチルビニルエーテルなどであり、カルボキシル基含有単量体の代表例はマレイン酸などである。他の共単量体としては、アルキルビニルエステル類、アルキルビニルエーテル類、さらにはエチレン、プロピレン、イソブテンなどのオレフィン類、(メタ)アクリレート類、スチレンなどがあげられる。
【0036】
具体的には、たとえば特公昭60−21686号、特開平3−121107号、特開平4−279612号、特開平4−28707号、特開平2−232221号などの各公報に記載されているようなものがあげられる。該共重合体の数平均分子量(GPCによる)は、1,000〜100,000であり、1,500〜30,000が好ましい。前記分子量が1,000未満であれば硬化性、耐候性が不充分になる傾向があり、100,000を超えると作業性、塗装性に問題が生じる傾向がある。
【0037】
より具体的には、TFE/アルキルビニルエーテル/4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)系共重合体、CTFE/アルキルビニルエーテル/HBVE系共重合体、TFE/アルキルビニルエーテル/マレイン酸系共重合体、CTFE/アルキルビニルエーテル/マレイン酸系共重合体、TFE/シクロヘキシルビニルエーテル/ベオバ10/クロトン酸系共重合体などの共重合体があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記共重合体が水酸基を有する場合の水酸基価としては、1〜200(mgKOH/g)であり、1〜150(mgKOH/g)であることが好ましい。前記水酸基価が少なくなると硬化不良になりやすい傾向があり、200(mgKOH/g)を超えると塗膜の可撓性に問題が生じる傾向がある。
【0039】
前記共重合体がカルボキシル基を有する場合の酸価としては、1〜200(mgKOH/g)であり、1〜100(mgKOH/g)であることが好ましい。前記酸価が少なくなると硬化不良となりやすい傾向があり、200(mgKOH/g)を超えると塗膜の可撓性に問題が生じる傾向がある。
【0040】
また、水酸基とカルボキシル基を共に有する共重合体であってもよい。
【0041】
これらの共重合体の市販品としては、たとえばダイキン工業(株)製のゼッフル、旭硝子(株)製のルミフロン、セントラル硝子(株)製のセフラルコート、大日本インキ化学工業(株)製のフルオネート、東亜合成(株)製のザフロン、関東電化工業(株)製のエフクリヤーなどがあげられる。
【0042】
官能基含有含フッ素共重合体(A−I)のうち、官能基としてアルコキシシリル基を有する含フッ素オレフィン樹脂としては、たとえば特開平4−4246号公報などに記載されているようなものがあげられる。該共重合体の数平均分子量(GPCによる)は、1,000〜100,000であり、1,500〜30,000が好ましい。前記分子量が1,000未満であれば硬化性、耐候性が不充分になる傾向があり、100,000を超えると作業性、塗装性に問題が生じる傾向がある。
【0043】
具体的には、TFE/ビニルメトキシシランを含む共重合体、TFE/トリメトキシシリルエチルビニルエーテルを含む共重合体などの共重合体があげられる。
【0044】
前記共重合体のアルコキシシリル基の含有量としては、1〜50モル%、好ましくは5〜40モル%である。前記アルコキシシリル基が少なくなると硬化不良になりやすい傾向があり、多くなりすぎると塗膜の可撓性に問題が生じる傾向がある。
【0045】
共重合体(A−II)の例としては、たとえばTFE/HFP/前記式(i)〜(vi)で示される官能基含有含フッ素単量体系共重合体などがあげられる。
【0046】
ブレンド物(A−III)としては、共重合体(A−I)または(A−II)同士のブレンド物、共重合体(A−I)および/または(A−II)と官能基含有非フッ素系樹脂とのブレンド物、共重合体(A−I)および/または(A−II)と官能基を含有しない非フッ素系樹脂とのブレンド物、官能基含有非フッ素系樹脂と官能基を含有しないフッ素樹脂とのブレンド物などがあげられる。
【0047】
官能基含有非フッ素系樹脂としては上記官能基含有非フッ素系単量体の(共)重合体が例示でき、具体的にはアクリルポリオール、ウレタンポリオールなどが好ましくあげられる。官能基を含有しない非フッ素系樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、ポリエステルなどが例示できる。また、官能基を含有しないフッ素樹脂としては、たとえばVdF単独重合体、VdF/TFE系共重合体、VdF/HFP系共重合体、VdF/CTFE系共重合体、VdF/TFE/CTFE系共重合体、VdF/TFE/HFP系共重合体などのVdF系重合体;TFE/HFP系共重合体;含フッ素オレフィンと官能基を有しない非フッ素系単量体(たとえばビニルエーテル類やビニルエステル類、α−オレフィン類、ビニル芳香族化合物)との共重合体などが例示できる。
【0048】
ブレンドの比率は、官能基の含有量やフッ素含有量などにより適宜選定すればよいが、通常官能基が硬化剤(B)、さらにはカップリング剤(C)および(F)と充分に反応し得る量となるようにブレンドすることが防汚性の持続効果に優れる点から望ましい。
【0049】
トップコート用組成物には、トップコートの強度や耐久性などの機械的特性を向上させるために硬化剤(B)を配合する。硬化剤(B)は硬化性フッ素樹脂(A)や後述するカップリング剤(C)が有する硬化性官能基との反応性を考慮して選定する。
【0050】
具体例としては、たとえば硬化性官能基が水酸基の場合、イソシアネート化合物、アミノ化合物、エポキシ化合物、有機酸、ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物および/またはSi(OR34(R3は炭素数1〜10の非フッ素アルキル基)、R4Si(OR53(R4およびR5は同じかまたは異なり、炭素数1〜10の非フッ素アルキル基)、これらの単独縮合オリゴマーおよびこれらの共縮合コオリゴマーよりなる群から選ばれた少なくとも1種があげられる。
【0051】
また、硬化性官能基がカルボキシル基の場合、エポキシ樹脂系硬化剤、アミノ樹脂系硬化剤などがあげられる。
【0052】
イソシアネート化合物系硬化剤にはブロックイソシアネート化合物も含まれ、具体例としては、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、これらの三量体、これらのアダクト体やビュウレット体、これらの重合体で2個以上のイソシアネート基を有するもの、さらにブロック化されたイソシアネート類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
イソシアネート化合物に代えて、または加えて、上記Si(OR34および/またはR4Si(OR53、具体的には、たとえばテトラアルコキシシランまたはその部分縮合物、アルキルトリアルコキシシランまたはその部分縮合物などがあげられる。
【0054】
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランまたはそれらの部分縮合物などが例示され、市販品としては、三菱化学(株)製のMS51、MS56、MS57など、コルコート社製のエチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48などが使用できる。
【0055】
アミノ化合物系硬化剤としては、たとえばメラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、アミンアダクト、ポリアミドなどがあげられる。
【0056】
市販品としては、三井サイテック(株)製のサイメル、エアプロダクツ社製のアンカミン、エピリンク、ヘンケル社製のバーサミン、バーサミド、富士化成工業(株)製のトーマイド、フジキュアー、第一ゼネラル(株)製のバーサミド、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピキュアー、三和化学(株)製のサンマイド、味の素(株)製のエポメートなどがあげられる。
【0057】
エポキシ化合物系硬化剤としては、たとえばエポキシ樹脂、エポキシ変性シランカップリング剤などがあげられ、市販品としてはジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート、エピレック、カードライト社製のカードライト、東レ・ダウコーニング(株)製のコートジル1770、A−187などがあげられる。
【0058】
アジリジン化合物系硬化剤としては、BF−グッドリッチ社製のXAMA2、XAMA7などがあげられる。
【0059】
ヒドラジド化合物としては、たとえばコハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、フタル酸、テレフタル酸またはイソフタル酸ジヒドラジドなどがあげられる。
【0060】
カルボジイミド化合物系硬化剤としては、日清紡製のカルボジライト、ユニオンカーバイド社製のUCARLNK Crosslinker XL−29SEなどがあげられる。
【0061】
硬化剤(B)の配合量は、硬化剤の種類によって適宜選択すればよいが、通常、硬化性フッ素樹脂(A)とカップリング剤(C)の合計100質量部に対して1〜200質量部である。好ましい上限は100質量部、さらには80質量部であり、好ましい下限は5質量部、さらには10質量部である。
【0062】
トップコート用組成物には、官能基含有シランカップリング剤(Ca)および/またはアルミキレート化剤(Cb)からなるカップリング剤(C)を配合する。このカップリング剤(C)は、プライマー層(II)中のカップリング剤(F)との相互作用により、フッ素系のトップコート層(I)を強固にプライマー層(II)に密着させる働きを担っていると考えられる。
【0063】
官能基含有シランカップリング剤(Ca)が有する官能基としては、たとえばビニル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、イソシアネート基などが例示できる。
【0064】
具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシランなどのビニル基含有シランカップリング剤;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;OCNC36Si(OCH33、OCNC36Si(OC253などのイソシアネート基含有シランカップリング剤などのほか、(C25O)3SiC36436Si(OC253などがあげられる。
【0065】
硬化性フッ素樹脂(A)が硬化性官能基として水酸基を有している場合、官能基含有シランカップリング剤(Ca)としてはイソシアネート基含有シランカップリング剤が、トップコート用組成物の安定性や塗装性などに優れる点から好ましい。
【0066】
アルミキレート化剤(Cb)としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエトキサイドなどのアルミニウムアルコレート類;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレートなどのアルミニウムキレート化合物類などが例示できる。
【0067】
アルミキレート化剤(Cb)は、硬化性フッ素樹脂の硬化性官能基が水酸基の場合に、有利である。
【0068】
カップリング剤(C)の配合量は、カップリング剤の種類によって適宜選択すればよいが、通常、硬化性フッ素樹脂(A)と硬化剤(B)の合計100質量部に対して0.5〜100質量部である。好ましい上限は50質量部、さらには20質量部であり、好ましい下限は1質量部、さらには5質量部である。
【0069】
トップコート層(I)には、摺動性や防汚性をさらに向上させるためにPTFE粒子を配合してもよい。
【0070】
配合するPTFE粒子は、溶融加工できない特性を有し、摺動性に優れたPTFEの粒子であり、PTFEとしてはTFEの単独重合体および溶融加工できない特性を損なわない範囲で他の共重合モノマーを共重合した変性PTFEが含まれる。
【0071】
また、PTFEは高分子量の場合、剪断力を加えるとフィブリル化(繊維化)するという性質をもっているが、摺動性の改善を目的とする場合は、フィブリル化しない、またはしにくい低分子量のPTFEが有利である。低分子量のPTFEとしては、たとえば数平均分子量が60万以下、好ましくは50万以下であることが好ましい。PTFE粒子の平均粒径は、透明性維持の点から上限は100μm、好ましくは50μm、特に好ましくは15μmであり、分散のし易さの点から0.1μm以上、好ましくは1μm以上、特に好ましくは3μm以上である。
【0072】
PTFE粒子は、硬化性フッ素樹脂(A)100質量部に対して5質量部以上、好ましくは7質量部以上、特に10質量部以上含まれていることが、摺動性の改善効果を奏するために必要である。上限は、透明性の維持や耐磨耗性維持の観点から、30質量部、好ましくは25質量部、特に好ましくは20質量部である。
【0073】
また、PTFE粒子の分散性を改善するためにオルガノポリシロキサンフルイドを添加することが好ましい。使用するオルガノポリシロキサンフルイドは常温で液状のものであり、使用している有機溶媒に相溶性であるものを使用する。具体例としては、たとえばいわゆるストレート型オルガノポリシロキサンフルイドと変性オルガノポリシロキサンフルイドのいずれもが使用できる。
【0074】
ストレート型オルガノポリシロキサンフルイドとしては、たとえばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどが例示できる。特に汎用性に優れる点からはジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0075】
変性オルガノポリシロキサンフルイドとしては、たとえばアミノ基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、カルボキシル基含有オルガノポリシロキサン、メタクリル基含有オルガノポリシロキサン、メルカプト基含有オルガノポリシロキサン、フェノール基含有オルガノポリシロキサンなどがあげられる。また分散性に優れる点からはアミノ基含有オルガノポリシロキサンが好ましく、アミノ基含有オルガノポリシロキサンのアミノ当量は100以上で6,000以下の範囲のものが好ましい。
【0076】
オルガノポリシロキサンフルイドの添加量は、硬化性フッ素樹脂(A)100質量部に対して0.05〜5質量部である。好ましい下限は0.1質量部、特には0.2質量部である。好ましい上限は4質量部、特には3質量部である。なお、PTFE粒子を配合しない場合でも、オルガノポリシロキサンフルイドは防汚性、すべり性を改善するために配合してもよい。
【0077】
また、防汚性をさらに向上させるために官能基含有オルガノポリシロキサンや官能基含有含フッ素ポリエーテルなどの防汚剤を配合してもよい。
【0078】
防汚剤としての官能基含有オルガノポリシロキサンは、同種または異種のアルキル基、アリール基、アラルキル基を含むシロキサン単位を2個以上、好ましくは10個以上、さらには10,000個以下、好ましくは1,000個以下有するオリゴマーまたはコオリゴマーであり、上記アルキル基、アリール基、アラルキル基に含まれる官能基(Y1)としては、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、チオール基、−(C24O)a−(C36O)b20(R20は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基もしくはアシル基、aは1〜40の整数、bは0〜40の整数)および/またはアルコキシシリル基を1個または2個以上、好ましくは1,000個以下含む化合物があげられる。
【0079】
アルコキシシリル基としては、−SiR213-m(OR22m(式中、R21は炭素数1〜18のフッ素原子を含んでいてもよい非加水分解性の炭化水素基;R22は炭素数1〜18の炭化水素基;mは1〜3の整数)で示されるケイ素含有官能基が好ましい。
【0080】
21としては、たとえばメチル、エチル、プロピルなどがあげられる。
【0081】
22としては、たとえばメチル、エチル、プロピルなどがあげられ、特に反応性(加水分解性)に優れる点からメチルが好ましい。mは1〜3の整数であるが、加水分解性に優れる点から3であるのが好ましい。
【0082】
官能基含有オルガノポリシロキサンは具体的には、式(1):
【0083】
【化2】

(式中、R7、R8、R9、R10、R11、R12は同じかまたは異なり、炭素数1〜8のアルキル基、Rf基(Rfは前記官能基Y1を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜18の含フッ素アルキル基。中間に酸素原子および/または窒素原子を含んでいてもよい)または−R13−Y1(R13は炭素数0〜14の酸素原子および/または窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基、Y1は前記官能基)であって、少なくとも1つは官能基Y1を含む;lは1〜10,000の整数;mは1〜1,000の整数;nは0〜10,000の整数)で示される官能基含有オルガノポリシロキサンが例示できる。
【0084】
7、R8、R9、R10、R11、R12は非加水分解性の基である。好ましい具体例としては、CH3、C25、C37などの官能基を有しないアルキル基;Y1−CH2−、Y1−CH2CH2−、Y1−CH2CH2CH2−などの官能基含有アルキル基;−CH2−Rf1、−CH2CH2−Rf1(Rf1は官能基Y1を有しない炭素数1〜18の含フッ素アルキル基または官能基Y1を有しない炭素数1〜25の含フッ素エーテル基)などの官能基を有しない含フッ素アルキル基または含フッ素エーテル基;−CH2−Rf2、−CH2CH2−Rf2、−CH2CH2CH2−Rf2(Rf2は官能基Y1を有する炭素数1〜18の含フッ素アルキル基または官能基Y1を有する炭素数1〜25の含フッ素エーテル基)などの官能基を有する含フッ素アルキル基または含フッ素エーテル基などがあげられる。Rf1の具体例としては、つぎのものがあげられる。
【0085】
(1)官能基Y1を有さない含フッ素アルキル基
4924−、C81724−、C91924−、C49SO2N(CH3)C24−、C4924N(CH3)C39−など
(2)官能基Y1を有しない含フッ素エーテル基
CF3OCF2CF2O−C24−、
CF3(CF2CF2O)2−C24−、
CF3O(CF2O)2(CF2CF2O)2−、
CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)7−、
F−(C36O)6−(C24O)2
などがあげられる。
【0086】
Rf2の具体例としては、
(3)官能基Y1を有する含フッ素アルキル基
HOC24CF2CF2CF2CF224−、
HOOCCF2CF2CF2CF224−など
(4)官能基Y1を有する含フッ素エーテル基
HOCH2CF2O(CF2CF2O)3−C24−、HOOCCF2O(CF2CF2O)3−C24−など
があげられる。
【0087】
これらのうち、少なくとも1つは撥水撥油性に優れることから、官能基Y1を有さない含フッ素アルキル基および含フッ素エーテル基が好ましい。
【0088】
官能基Y1としては前記のものがあげられるが、つぎのような形で結合していることが好ましい。
【0089】
【化3】

(式中、R20、aおよびbは前記と同じ、R14は結合手または炭素数1〜8のアルキレン基、R15は炭素数2〜8のアルキレン基)
【0090】
非限定的な具体例を官能基Y1の種類別に市販品で例示すると、以下のようになる。
【0091】
官能基Y1がOH:
チッソ(株)製:サイラプレーンFM−4421、FM−0421、FM−0411、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21など
信越化学工業(株)製:KF−6001、KF−6002、X−22−4015、X−22−176DXなど
【0092】
官能基Y1がNH2または−R14−NH−R15−NH2
チッソ(株)製:サイラプレーンFM−3321、FM−3311、FM−3325など
信越化学工業(株)製:KF−860、KF−861、KF−865、KF−8002、X−22−161Bなど
東レ・ダウコーニング(株)製:FZ−3501、FZ−3789、FZ−3508、FZ−3705、FZ−4678、FZ−4671、FZ−4658など
【0093】
官能基Y1がエポキシ基:
チッソ(株)製:サイラプレーンFM−0521、FM−5521、FM−0511、FM−0525など
信越化学工業(株)製:KF−101、X−22−163B、X−22−169Bなど
東レ・ダウコーニング(株)製:L−9300、FZ−3736、FZ−3720、LE−9300、FZ−315など
【0094】
官能基Y1がCOOH:
信越化学工業(株)製:X−22−162C、X−22−3701Eなど
東レ・ダウコーニング(株)製:FZ−3703など
【0095】
官能基Y1がSH:
信越化学工業(株)製:KF−2001、X−22−167Bなど
【0096】
官能基Y1が−(C24O)a(C36O)b20
信越化学工業(株)製:KF−353、KF−355A、KF−6015など
【0097】
つぎに防汚剤としての官能基含有含フッ素ポリエーテルについて説明する。
【0098】
官能基含有含フッ素ポリエーテルは、官能基Y2を少なくとも1個有する含フッ素ポリエーテルである。官能基Y2としては、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、チオール基、ニトリル基、ヨウ素原子および/またはアルコキシシリル基があげられる。
【0099】
官能基含有含フッ素ポリエーテルとしては、たとえば式(2):
16−(C36O)l−(C24O)m−(CF2O)n−(C24p−(CH2r−Y2
(式中、R16はH、F、炭素数1〜8のアルキル基、Cq2q+1O−(q=1〜15)で示されるパーフルオロアルコキシ基またはY2−(CH2s−Cq2qO−(sは0〜200の整数);Y2は前記のとおり;l、m、n、pおよびrは同じかまたは異なる0または1〜200の整数で、すべてがゼロになることはない)で示される官能基含有含フッ素ポリエーテルが好ましい。
【0100】
16としては、たとえばHまたはF;メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの炭素数1〜8の非フッ素アルキル基;CF3O−、C25O−などの炭素数1〜15のパーフルオロアルコキシ基;Y2−(CH2s−Cq2qO−(sは0〜200の整数)などがあげられ、特に撥水撥油性にすぐれる点からパーフルオロアコキシ基が好ましい。
【0101】
官能基Y2としては前記のものがあげられるが、つぎのような形で結合していることが好ましい。
【0102】
【化4】

(式中、R15は前記と同じ、R17、R18は同じかまたは異なりHまたは炭素数1〜4のアルキル基)
【0103】
非限定的な具体的オリゴマーを官能基Y2の種類別に例示すると、以下のようになる。
【0104】
官能基Y2がOH:
F(C36O)nCF2CF2CH2OH (n=10〜14)、
HOCH2CF2O(CF2CF2O)n−(CFO)m−CF2CH2OH (nの平均は25、mの平均は5)
など。
【0105】
官能基Y2がNH2または−NH−R15−NH2
F(C36O)nCF2CF2CH2NH2 (nの平均は12)など。
【0106】
官能基Y2がエポキシ基:
【0107】
【化5】

(nの平均は16)
など。
【0108】
官能基Y2がCOOH:
F(C36O)nCF2CF2COOH (nの平均は25)など。
【0109】
官能基Y2がI(ヨウ素):
F(C36O)nCF2CF2I (nの平均は10)など。
【0110】
なお、そのほかたとえば米国特許第5,279,820号明細書に記載されたものも使用できる。
【0111】
防汚剤の添加量は、硬化性フッ素樹脂(A)100質量部に対して0.01〜20質量部である。好ましい下限は0.1質量部であり、好ましい上限は10質量部である。
【0112】
トップコート用組成物を溶剤型組成物に調製する場合に用いる有機溶剤としては、特に限定されず、硬化性フッ素樹脂により適宜選定すればよい。限定的でない有機溶媒としては、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒などの極性有機溶媒;芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、石油系溶媒などの非極性有機溶媒などの単独または混合溶媒があげられる。
【0113】
エステル系溶媒としては、たとえば酢酸ブチル、酢酸エステル、酢酸セロソルブ、酢酸メトキシブチルなどが、アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどが、エーテル系溶媒としてはセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルカルビトールなどが、ケトン系溶媒としてはメチルエチルケトン、ジメチルケトン、アセトンなどがあげられる。
【0114】
また、芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが、脂肪族炭化水素系溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが例示できる。
【0115】
トップコート用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲の量で、PTFE粒子以外の公知の固体潤滑剤や溶剤型塗料組成物に配合される通常の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、顔料、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、皮張り防止剤などがあげられる。
【0116】
トップコート用組成物の調製は、サンドミルグラインド分散混合法(混合装置にビーズを入れて均一な混合を達成する方法)やデスパー分散混合法(単に攪拌して分散混合する方法)、ボールミル分散混合法、セントリミル分散混合法、ロールミル分散混合法など従来公知の方法で行うことができる。
【0117】
本発明ではかかるトップコート用組成物を基材(III)に設けられているプライマー層(II)上に塗布したのち硬化させてトップコート層(I)を形成する。
【0118】
本発明の積層体では、プライマー層(II)も、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンとからなる組成物に官能基含有シランカップリング剤(Fa)および/またはアルミキレート化剤(Fb)からなるカップリング剤(F)が配合されている。
【0119】
プライマー層(II)を形成するプライマー用組成物は、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンとに、官能基含有シランカップリング剤(Fa)および/またはアルミキレート化剤(Fb)からなるカップリング剤(F)を添加することにより調製できる。
【0120】
添加する官能基含有シランカップリング剤(Fa)およびアルミキレート化剤(Fb)としては、トップコート用として説明した官能基含有シランカップリング剤(Ca)およびアルミキレート化剤(Cb)が同様に例示できる。
【0121】
ただ、プライマー用のカップリング剤(F)は、硬化性フッ素樹脂(A)の官能基の影響を受けることが少ないので、硬化性フッ素樹脂(A)が水酸基を有していても、官能基含有シランカップリング剤(Fa)としてアミノ基含有シランカップリング剤も使用可能である。
【0122】
また、トップコート用のカップリング剤(C)とプライマー用のカップリング剤(F)とは同一でも異なっていてもよい。
【0123】
該プライマー用組成物の成分である(D)ポリジオルガノシロキサンは、本質的にR2SiO2/2シロキサン単位の繰返し単位からなり、25℃で100mPa・s以上の粘度を有しており、1,000,000mPa・sを超える粘度のもの、典型的にはガム状であることができる。ガム状のポリジオルガノシロキサンは、粘度よりも可塑度(JIS K6249に規定される方法に準じて測定された可塑度:25℃、4.2gの球状試料に1kgfの荷重を3分間かけたときの値)にて表わされ、可塑度が50〜200の範囲内であることが好ましく、特に80〜180の範囲内であることが好ましい。有機基Rとしては、後述のRと同じでよく、メチル、フェニルが好ましい。さらに、末端または側鎖に水酸基またはビニル基のような反応性基を有することが好ましい。
【0124】
該プライマー用組成物の成分である(E)ポリオルガノシロキサンレジンは、本質的にR3SiO1/2シロキサン単位とSiO4/2シロキサン単位からなり、SiO4/2単位に対するR3SiO1/2単位のモル比が0.5〜1.5、好ましくは0.6〜0.9の範囲内であるポリオルガノシロキサンである。他にR2SiO2/2単位やRSiO3/2単位を有していてもよいが、同成分中のR3SiO1/2単位とSiO4/2単位の合計含有量が50質量%以上であることが好ましく、さらに80質量%以上であることが好ましく、特に100質量%、すなわちこれらの2つの単位のみからなることが最も好ましい。
【0125】
上式中、有機基Rは置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチルなどのアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニルなどのアルケニル基;フェニル、トリル、キシリルなどのアリール基;ベンジル、フェネチルなどのアラルキル基;クロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基などの置換もしくは非置換の1価の炭化水素基があげられ、特に、メチル、ビニル、フェニルであることが好ましい。このポリオルガノシロキサンは、その製造工程から通常ケイ素原子に結合する水酸基または加水分解性基を有しており、ケイ素結合水酸基または加水分解性基を少なくとも0.01質量%有するものが好ましい。このときの加水分解性基としては、たとえばメトキシ、エトキシ、プロポキシなどのアルコキシ基;アセトキシ基;イソプロペノキシ基;アミノキシ基があげられる。
【0126】
(D)成分と(E)成分は、単にそれらを配合した混合物として使用することができる。また、それらを部分的に縮合反応させて使用することもできる。(D)成分と(E)成分の質量比は1:9〜9:1の範囲内であり、3:7〜7:3の範囲内であることが好ましい。
【0127】
なお、それらを部分縮合反応する方法としては、たとえば、これらを加熱して部分縮合反応する方法、これらを水酸化カリウム、水酸化バリウムなどの塩基;アンモニア水;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどのアミン類;テトラブチルチタネート、テトライソブチルチタネートなどのチタン化合物;オクチル錫ジアセテートなどの錫化合物;ヘキサメチルジシラザン;塩酸、スルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸などの触媒の存在下で部分縮合反応する方法があげられる。
【0128】
上記成分(D)と成分(E)のポリマー種類の選択とそれらの配合比を変化させて密着性を上げるというプライマーとしての最適化が得られ、さらに、加えて、上記混合物または部分縮合物を、有機過酸化物を添加して架橋反応をさせることにより、機械的特性を高めることができる。架橋反応用有機過酸化物として具体的には、ジメチルエチルケトンパーオキサイド、ジクロロヘキサノンパーオキサイド、ジメチルクロロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(テトラブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(テトラヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(テトラブチルパーオキシ)シクロドデカン、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、クミルヒドロパーオキサイド、テトラヘキシルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、テトラブチルクミルパーオキサイド、ジテトラブチルパーオキサイド、ジイソブチルパーオイサイド、ジオクタノールパーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ−m−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、テトラブチルパーオキシネオデカノエート、テトラブチルパーオキシイソブチレート、テトラヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、テトラブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、テトラヘキシルパーオキシベンゾエート、テトラブチルパーオキシベンゾエート、テトラブチルパーオキシアセテート、テトラブチルトリメチルシリルパーオキサイドなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
有機過酸化物の添加量は、成分(D)と成分(E)の合計に対して10質量%以下であることが好ましく、さらには、5質量%以下であることが好ましい。
【0130】
また、成分(D)のポリジオルガノシロキサンがビニル基を有するときは、上記有機過酸化物に代えて、架橋剤(1分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するハイドロジェンポリシロキサン)と触媒(白金系触媒)を添加して、架橋反応させて、同様に最適な特性を得ることもできる。架橋剤として使用するハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンであり、成分中の水素原子の結合位置としては、たとえば、分子鎖末端および/または分子鎖側鎖があげられる。水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルなどのアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチルなどのアリール基;ベンジル、フェネチルなどのアラルキル基;クロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基などのアルケニル基を除く置換もしくは非置換の1価炭化水素基があげられ、特に、メチル、フェニルであることが好ましい。このようなポリオルガノシロキサンの分子構造としては、たとえば、直鎖状、分枝鎖状、環状、網状、一部分枝を有する直鎖状があげられ、特に、直鎖状であることが好ましい。また、25℃における粘度は特に限定されないが、0.1〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、1〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。架橋剤としてのハイドロジェンポリシロキサンを添加するときは、成分(D)中のビニル基の合計1モルに対して、架橋剤中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜150.0モルの範囲内となる量であることが好ましく、0.7〜140.0モルの範囲内となる量が特に好ましい。
【0131】
そのときの触媒としては、白金系触媒が好適である。具体的には、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のカルボニル錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のオレフィン錯体が例示され、特に、白金のアルケニルシロキサン錯体が好ましい。この白金のアルケニルシロキサン錯体において、アルケニルシロキサンとしては、たとえば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラビニル−1,3−ジメチルジシロキサンがあげられる。その量は、反応を促進するに充分な量であればよく、白金金属が質量単位で0.1〜1,000ppmの範囲内となる量である、1〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0132】
本発明では、上記部分縮合反応と同じで、有機過酸化物また白金系触媒により架橋反応させることは、必ずしも必要ではない。
【0133】
カップリング剤(F)は、プライマー用組成物の調製中いつでも成分(D)および/または成分(E)に配合してもよいが、ポットライフを長くするため、プライマー用組成物を基材(III)に塗布する前にすみやかに配合することが好ましい。
【0134】
カップリング剤(F)の配合量は、成分(D)および成分(E)100質量部に対し、0.1質量部以上、さらには1質量部以上、特に2質量部以上が好ましく、100質量部以下、さらには70質量部以下、特に50質量部以下が好ましい。この範囲より少ないとトップコート層との密着性が不充分となる傾向にあり、多すぎると粘度が高くなり塗装性が低下したり、密着性が低下する傾向にある。
【0135】
またプライマー用組成物は、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶剤、酸化防止剤、顔料および/または無機粉体、安定剤などを含有してもよい。有機溶剤は、プライマー用組成物の塗布性を容易にすることで、通常用いられる。そのときは、プライマー用組成物塗布後トップ層を形成する前に有機溶剤を蒸発させるための乾燥工程をとることが望ましい。その乾燥工程の際、密着性があがるというプライマーとしての最適化が進むことがある。
【0136】
基材(III)としては特に制限されず、無機基材や有機基材が使用できる。たとえば無機基材としては、金属(アルミニウム、鋼板、ステンレス、亜鉛鋼板、銅、真鍮、クロム、ブリキなど)、セラミック(アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、サイアロンなど)、ガラスなどがあげられる。有機基材としては、プラスチック(ポリカーボネート、硬質塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、FRP、ABS、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド、その他の各種合成樹脂塗膜など)、エラストマー(ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、SBR、天然ゴム、フッ素ゴムなど)、皮(人工皮革、合成皮革、天然皮革)、天然材料(石材、木材、皮革など)などがあげられる。
【0137】
これらの基材(III)は、表面処理されていてもよいし、塗装されていてもよい。さらには文字や模様が印刷されているものでもよい。
【0138】
本発明の積層体は、基材(III)に上記プライマー用組成物の被膜であるプライマー層(II)と該プライマー層(II)に直接形成された上記トップコート用組成物を硬化させたトップコート層(I)からなり、つぎに示す2コート1ベーク法または2コート2ベーク法で製造できる。
【0139】
2コート1ベーク法は、基材(III)上に、直接または他の層を介して、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンと(F)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とからなるプライマー用組成物を塗布して被膜を形成する工程、
該プライマー層上に(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含むトップコート用組成物を塗布して未硬化トップコート層を形成する工程、および
該未硬化トップコート層を硬化させる工程
からなることを特徴とする方法である。
【0140】
2コート2ベーク法は、基材(III)上に、直接または他の層を介して、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンと(F)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤からなるプライマー用組成物を塗布して被膜を形成する工程、
該被膜を乾燥または架橋反応させる工程、
該プライマー層上に(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含むトップコート用組成物を塗布して未硬化トップコート層を形成する工程、および
該未硬化トップコート層を硬化させる工程
からなることを特徴とする方法である。
【0141】
いずれの製造法においても、塗布方法としては、従来公知のロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、シャワーコート法、ハケ塗装、ローラー塗装などが採用できる。
【0142】
硬化方法および条件は特に限定されず、硬化剤(B)に好適な条件および方法が採用できる。たとえば加熱硬化法の場合、60〜200℃にて1〜60分間維持すればよい。
【0143】
本発明の積層体は、たとえばつぎのような製品に利用できる。
【0144】
電機製品:
各種家電製品のケーシング;オーディオ機器のCDトレイ;ルームエアコンのダンパー;掃除機の吸い込み口、スライドスイッチなど;携帯電話の外装、キーパッドなど;カメラ・インスタントカメラ・デジタルカメラのシャッター、絞り、ズーム円筒など;ビデオカメラのレリーズレバー、リンク機構など;各種家電製品のボタン、スイッチなど
【0145】
IT機器:
パソコンのフレーム、キーボード、CDトレイ、マウスパッド、ボタン、スイッチなど
【0146】
OA機器:
コピー機、プリンター、FAXのロールや外装など;ペーパーカセット、紙まわり、ソーター部など
【0147】
調理設備:
レンジ表面、天板、シンク、各種収納棚のドア、冷蔵庫ピストン、換気扇のリンク機構、オーブンの滑り軸、ガスコックの閉子、ガスレンジのヒンジ、トースターのポップアップ機構など
【0148】
自動車関連:
ダッシュボード、スラストワッシャー、ポールベアリング、ピストン、ピストンリング、ギア、カーシート、ワイパー、エアバッグなど
【0149】
産業機器関連:
軸受・摺動部品、遠心クラッチ摺動部、ジェットエンジンのタービン可動羽根部品のブッシング、ワッシャー、スラストワッシャー、シールスラストワッシャー、ピストン、ピストンリング、ギアなど
【0150】
家具類:
テーブル、椅子、鏡など
建物関連:テント屋根材、ドーム屋根材、建材用シーリング材など
【0151】
その他:
化粧品ケース、クシ、浴槽、浴室の鏡、トイレの便器、屋外電灯、車両のドア、介護関連器材など
【0152】
これらの製品のなかでも、基材がエラストマー(ゴム)である製品、たとえば各種家電製品のボタン、スイッチなど;電話、電卓、パソコン、デジタルカメラのボタン、キーパッドなど;マウスパッドなど;電子機器基板;コピー機、プリンターのロールなど;自動車ホース、ダッシュボード、カーシート、ワイパー、ワッシャー、スラストワッシャー、シールスラストワッシャーなど;化粧品ケース、くしなど;建材用シーリング材などに特に有用である。
【実施例】
【0153】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「%」および「部」はそれぞれ「質量%」および「質量部」である。
【0154】
実施例および比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
【0155】
[トップコート用組成物]
(硬化性フッ素樹脂(A))
A1:つぎの方法により製造したTFE/IB/VPi/VBz/HBVE(=45/26/9/5/15モル%)の50質量%酢酸ブチル溶液。
【0156】
1000mlのステンレス製オートクレープに酢酸ブチル250gピバリン酸ビニル(VPi)18g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)50g、安息香酸ビニル(VBz)20gおよびイソプロポキシカルボニルパーオキサイド4.0gを仕込み、0℃に水冷したのち減圧下に脱気した。このものにイソブチレン(IB)40gとテトラフルオロエチレン(TFE)142.0gを仕込み、撹拌下に40℃に加熱し、25時間反応させ、反応器内圧が0.44MPaG(4.5kg/cm2G)から0.24MPaG(2.4kg/cm2G)ヘ下がった時点で反応を停止した。えられた硬化性含フッ素共重合体を19F−NMR、1H−NMRおよび元素分析法で分析したところ、TFE45モル%、IB26モル%、VPi9モル%、VBz5モル%およびHBVE15モル%とからなる共重合体であり、GPCで測定した数平均分子量(Mn)は2×104であった。
【0157】
A2:A1と同様にして製造したTFE/HBVE/VBz/バーサチック酸ビニル(VV−9。シェル化学社製のVeoVa−9)共重合体(TFE/HBVE/VBz/VV−9=45/10/5/40モル%。数平均分子量:1.5×104)の50質量%酢酸ブチル溶液。
【0158】
A3:A1と同様にして製造したクロロトリフルオロエチレン(CTFE)/HBVE/IB/VPi共重合体(CTFE/HBVE/IB/VPi=44/7/34/15モル%。数平均分子量:3.5×104)の50質量%酢酸ブチル溶液。
【0159】
A4:比較用。t−ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(90/10質量比)の硬化性アクリル樹脂の固形分50%の酢酸ブチル溶液。
【0160】
(硬化剤(B))
B1:イソシアネート系硬化剤(住友バイエル(株)製のデスモジュールN3800)
【0161】
(硬化触媒)
DBTDL:ジブチルスズジラウレートの1%酢酸ブチル溶液
【0162】
(カップリング剤(C))
Ca:OCNC36Si(OC253
【0163】
(オルガノポリシロキサンフルイド)
アミノ基含有オルガノポリシロキサン(側鎖変性タイプ、粘度1200mm2/s、アミノ当量1800)
【0164】
[プライマー用組成物]
(プライマーベース)
つぎの方法により、プライマーベース(58質量%キシレン溶液)を製造した。
【0165】
還流式冷却管と攪拌機とを備えた500mlのガラス製フラスコに、窒素置換しながらキシレン39.8gを仕込んだ。その中に、分子鎖両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサンの生ゴム(可塑度=135)66.6gを、攪拌しながら徐々に投入し完全に溶解させた。次いで、(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、SiO4/2単位に対する(CH3)3SiO1/2単位のモル比が0.7であるポリメチルシロキサンレジンの70質量%キシレン希釈溶液92.4gを仕込み、均一になってから、触媒であるトリフルオロメタンスルフォン酸1.2gを投入した。攪拌を継続したまま、油浴上で反応容器を還流温度まで加熱し、その状態で180分間縮合反応を行った。その後、加熱を停止して攪拌を継続したまま反応容器内が常温になるまで放冷することにより、反応混合物を得た。
【0166】
(カップリング剤(F))
Fa:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
Fb:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の76%イソプロパノール溶液(通称:アルミキレートD)
【0167】
(プライマー架橋反応用有機過酸化物)
有機過酸化物1:ベンゾイルパーオキサイドの40%トルエン溶液
有機過酸化物2:パーオキサイド系硬化剤(日本油脂(株)製のナイパーBMT)
【0168】
調製例1(プライマー用組成物の調製)
つぎの処方の各成分を充分に混合してそれぞれプライマー用組成物P1〜P5を調製した。
【0169】
プライマー用組成物P1
プライマーベース 16.07部
カップリング剤(Fa) 0.48部
トルエン 83.45部
【0170】
プライマー用組成物P2
プライマーベース 16.07部
有機過酸化物1 0.19部
カップリング剤(Fa) 0.47部
トルエン 83.27部
【0171】
プライマー用組成物P3(比較用)
プライマーベース 16.07部
有機過酸化物1 0.19部
トルエン 83.74部
【0172】
プライマー用組成物P4
プライマーベース 16.07部
有機過酸化物2 0.19部
カップリング剤(Fb) 0.47部
トルエン 83.27部
【0173】
プライマー用組成物P5(比較用)
カップリング剤(Fa) 10.00部
トルエン 90.00部
【0174】
調製例2(トップコート用組成物の調製)
つぎの処方の各成分を充分に混合してそれぞれトップコート用組成物T1〜T7を調製した。
【0175】
トップコート用組成物T1
硬化性フッ素樹脂(A1) 34.34部
硬化剤(B1) 11.10部
硬化触媒 0.17部
カップリング剤(Ca) 1.72部
オルガノポリシロキサンフルイド 0.17部
酢酸ブチル 46.50部
トルエン 6.00部
【0176】
トップコート用組成物T2
硬化性フッ素樹脂(A1) 34.34部
硬化剤(B1) 11.10部
硬化触媒 0.17部
カップリング剤(Ca) 1.72部
酢酸ブチル 46.67部
トルエン 6.00部
【0177】
トップコート用組成物T3(比較用)
硬化性フッ素樹脂(A1) 34.34部
硬化剤(B1) 11.10部
硬化触媒 0.17部
酢酸ブチル 48.39部
トルエン 6.00部
【0178】
トップコート用組成物T4(比較用)
硬化性アクリル樹脂(A4) 34.34部
硬化剤(B1) 7.00部
硬化触媒 0.17部
カップリング剤(Ca) 1.72部
オルガノポリシロキサンフルイド 0.17部
酢酸ブチル 50.60部
トルエン 6.00部
【0179】
トップコート用組成物T5
硬化性フッ素樹脂(A2) 17.17部
硬化性アクリル樹脂(A4) 17.17部
硬化剤(B1) 7.00部
硬化触媒 0.17部
カップリング剤(Ca) 1.72部
オルガノポリシロキサンフルイド 0.17部
酢酸ブチル 50.60部
トルエン 6.00部
【0180】
トップコート用組成物T6
硬化性フッ素樹脂(A2) 34.34部
硬化剤(B1) 11.10部
硬化触媒 0.17部
カップリング剤(Ca) 1.72部
酢酸ブチル 46.67部
トルエン 6.00部
【0181】
トップコート用組成物T7
硬化性フッ素樹脂(A3) 34.34部
硬化剤(B1) 11.10部
硬化触媒 0.17部
カップリング剤(Ca) 1.72部
酢酸ブチル 46.67部
トルエン 6.00部
【0182】
実施例1〜8
基材1(東レ・ダウコーニング(株)製のシリコーンゴムSH851uから成形したシリコーンゴム。100mm×100mm×2mm)および基材2(シリコーン塗料(東レ・ダウコーニング(株)製のSR2306)が基材1に塗装されたシリコーンゴム基材。100mm×100mm×2mm)に、それぞれ表1に示すプライマー用組成物をエアスプレー法で硬化膜厚が5μmとなるように塗布し、180℃で5分間乾燥し、放冷した。
【0183】
ついで未硬化のプライマー層に、表1に示すトップコート用組成物をエアスプレー法で硬化膜厚が20μmとなるように塗布し、180℃で10分間乾燥後、1昼夜室温に放置してプライマー層およびトップコート層を硬化させ、本発明の積層体を作製した。
【0184】
得られた各積層体について、つぎの試験を行った。結果を表1に示す。
【0185】
(密着性試験)
JIS K5400に従って碁盤目試験を行う。
【0186】
(折曲げ試験)
基材2を用いた積層体について、トップコート層が上になるように積層体を180度折り曲げる処理を3回行った後の塗膜の状態を目視で観察する。
【0187】
(防汚試験)
基材2を用いた積層体について、各種の汚れをトップコート層上に塗り、室温で1昼夜放置した後、紙タオルで拭き取り、拭き取った後の状態を目視で観察し、つぎの基準で評価する。
1:完全に拭き取れ、跡も残っていない。
2:拭き取れるが少し跡が残っている。
3:拭き取れるが全面に跡が残る。
4:部分的に拭き取れない。
5:全く拭き取れない。
【0188】
使用した汚れはつぎのものである。
油性インク:シャチハタ(株)製のアートライン黒
口紅:日本コルマー(株)製のカルフォルニアカラーズ
油性ボールペン:コクヨ(株)製のPR−10
【0189】
【表1】

【0190】
比較例1〜4
表2に記載の処方に従って、実施例1と同様にして積層体を作製し、実施例1と同様にして特性を調べた。結果を表2に示す。
【0191】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマー層(II)が設けられた基材(III)と該プライマー層(II)上に直接設けられたトップコート層(I)とからなり、
該トップコート層(I)が、(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含むトップコート用組成物の硬化物で形成されており、
該プライマー層(II)が、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンと(F)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とからなるプライマー用組成物から形成されている
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記硬化性フッ素樹脂(A)が水酸基を硬化性基として有する請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記トップコート層(I)がカップリング剤(C)としてイソシアネート基含有シランカップリング剤を含む請求項2記載の積層体。
【請求項4】
前記プライマー層(II)が、カップリング剤(F)としてアルミキレート化剤および/またはアミノ基含有シランカップリング剤を含む請求項3記載の積層体。
【請求項5】
前記トップコート層(I)がカップリング剤(C)としてアルミキレート化剤を含む請求項2記載の積層体。
【請求項6】
前記プライマー層(II)が、カップリング剤(F)としてアルミキレート化剤および/またはアミノ基含有シランカップリング剤を含む請求項5記載の積層体。
【請求項7】
前記トップコート層(I)が、ポリテトラフルオロエチレン粒子をさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記基材(III)がシリコーンゴム基材である請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
前記プライマー層(II)のプライマー用組成物において、(D)ポリジオルガノシロキサンがR2SiO2/2シロキサン単位の繰返し単位からなり、25℃で100mPa・s以上の粘度を有しており、および(E)ポリオルガノシロキサンレジンがR3SiO1/2シロキサン単位とSiO4/2シロキサン単位からなるものである請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
基材(III)上に、直接または他の層を介して、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンと(F)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とからなるプライマー用組成物の被膜を形成する工程、
(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含むトップコート用組成物を塗布して未硬化トップコート層を形成する工程、および
該未硬化トップコート層を硬化させる工程
からなることを特徴とするプライマー層(II)が設けられた基材(III)と該プライマー層(II)上に直接設けられたトップコート層(I)からなる積層体の製造法。
【請求項11】
基材(III)上に、直接または他の層を介して、(D)ポリジオルガノシロキサンと(E)ポリオルガノシロキサンレジンと(F)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とからなるプライマー用組成物を塗布して被膜を形成する工程、
該被膜を乾燥または架橋反応させる工程、
(A)硬化性フッ素樹脂と(B)硬化剤と(C)官能基含有シランカップリング剤および/またはアルミキレート化剤からなるカップリング剤とを含むトップコート用組成物を塗布して未硬化トップコート層を形成する工程、および
該未硬化トップコート層を硬化させる工程
からなることを特徴とするプライマー層(II)が設けられた基材(III)と該プライマー層(II)上に直接設けられたトップコート層(I)からなる請求項10記載の積層体の製造法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の積層体から構成される携帯電話のキーパッド。

【公表番号】特表2008−513231(P2008−513231A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511754(P2007−511754)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/JP2005/018717
【国際公開番号】WO2006/038702
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】