防蟻構造および防蟻方法
【課題】長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布することのできる、防蟻構造および防蟻方法を提供すること。
【解決手段】管6などの通路形成部材を設置しておき、施工当初には、固形製剤5を、通路形成部材を埋設して通路7が形成されるように施工し、それから所定期間経過後に、薬剤を通路7に通路形成部材から供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布する。この防蟻構造1および防蟻方法によれば、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初の防蟻効果を再度維持することができる。
【解決手段】管6などの通路形成部材を設置しておき、施工当初には、固形製剤5を、通路形成部材を埋設して通路7が形成されるように施工し、それから所定期間経過後に、薬剤を通路7に通路形成部材から供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布する。この防蟻構造1および防蟻方法によれば、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初の防蟻効果を再度維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蟻構造および防蟻方法、詳しくは、建物、ケーブル、管などを防蟻するための防蟻構造および防蟻方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物をシロアリによる食害から防護するために、種々の対策が検討されている。
【0003】
例えば、噴出孔が設けられたポリブテンからなるパイプを、建築物の床下などに配設し、パイプ内に薬液(液剤)を圧入噴射して、床下を防虫するパイプ構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、側方開口の溝型カバー体の肩部に注薬路を貫設するとともに該注薬路に間隔をおいてカバー体内外に開口する注薬拡散孔を穿設し、カバー体内にはスポンジ状の吸薬マットを装入し、吸薬マットに吸収される薬剤で木質土台を白アリ防除する、白アリ防除装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−3089号公報
【特許文献2】特公昭54−3108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、通常、白アリ防除装置では、施工当初から数年後に、薬剤を再施工する必要があるところ、特許文献1および2に記載の白アリ防除構造(装置)では、薬剤を液剤として施工するので、施工当初から比較的短期間で再施工する必要がある。
【0007】
一方、施工当初において薬剤を粒剤などの固形製剤として施工すれば、長期間にわたる持続性および耐久性を確保できる一方で、再施工時には、施工した固形製剤を一旦除去した後、薬剤を再度散布するため、非常に手間がかかる。
【0008】
本発明の目的は、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布することのできる、防蟻構造および防蟻方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、施工当初においては、固形製剤を施工できながら、再施工時には、薬剤を簡易かつ確実に散布することのできる防蟻構造および防蟻方法について鋭意検討したところ、施工時において通路が形成されるように固形製剤を施工すれば、当初から長期間にわたって持続性および耐久性に優れ、しかも再施工時にはその通路から薬剤を簡易に散布できるという知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 施工された固形製剤と、
前記固形製剤が施工された箇所に配置され、薬剤を前記固形製剤に散布するための通路とを備えていることを特徴とする、防蟻構造、
(2) 水平方向に延びる第1基礎から上方に延びるように配置される第2基礎と接触するように、前記第1基礎に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、前記(1)に記載の防蟻構造、
(3) 前記通路が、前記第2基礎の外側および内側のうち少なくともいずれか一側に配置される断熱材と隣接配置され、
前記第1基礎と前記断熱材との間に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、前記(2)に記載の防蟻構造、
(4) 前記第2基礎の外側および内側のうち少なくともいずれか一側に配置される断熱材と、前記断熱材における前記第2基礎に対する反対側に配置される化粧板とが設けられ、
前記通路が、前記化粧板と隣接配置され、
前記第1基礎と前記化粧板との間に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、前記(2)に記載の防蟻構造、
(5) 前記第2基礎の外側および内側のうち少なくともいずれか一側に配置される断熱材と、前記断熱材における前記第2基礎に対する反対側に、前記断熱材の下部が露出するように配置される化粧板とが設けられ、
前記通路が、前記化粧板の下端部および前記断熱材と隣接配置され、かつ、前記固形製剤と上方に間隔を隔てて配置され、
前記第1基礎と、前記化粧板から露出する前記断熱材との間に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、前記(2)に記載の防蟻構造、
(6) 前記固形製剤が、線状部材または管状部材の周囲に施工されていることを特徴とする、前記(1)に記載の防蟻構造、
(7) 前記通路を形成するための通路形成部材を備えていることを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の防蟻構造、
(8) 前記通路形成部材が、管であって、
前記管の外周壁には、厚み方向に貫通する穴が形成されていることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(9) 前記通路形成部材が、コイル状部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(10) 前記通路形成部材が、帯状部材が一定方向に延びるスパイラル状に巻回されるように形成されるスパイラル状部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(11) 前記通路形成部材が、複数のブロックであって、
前記通路が、複数の前記ブロックが隙間をもって充填されることにより、各前記ブロック間の隙間として形成されていることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(12) 前記通路形成部材が、メッシュであることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(13) 前記通路形成部材が、内部に連通孔を有する海綿状部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(14) 前記通路形成部材が、下方が開放される断面略コ字状部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(15) 前記通路形成部材が、スリットが下部に形成される丸筒部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(16) 前記通路形成部材が、液体と固化成分とを含有する含液材料であり、
前記含液材料が設置されて、前記液体が揮発して、前記固化成分が固化することにより、前記通路が形成されることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(17) 前記通路形成部材が、水溶性または流動性材料からなり、
前記水溶性または流動性材料が設置されて、前記水溶性または流動性材料が水または薬剤によりにより洗い流されることにより、前記通路が形成されることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(18) 前記通路が、前記線状部材または前記管状部材を被覆するように設けられていることを特徴とする、前記(6)に記載の防蟻構造、
(19) 前記通路が、前記線状部材または前記管状部材の周方向において、間隔を隔てて複数設けられていることを特徴とする、前記(6)に記載の防蟻構造、
(20) 固形製剤を、通路が形成されるように施工する工程、および、
薬剤を前記通路に供給することにより、前記薬剤を前記固形製剤に散布する工程を備えていることを特徴とする、防蟻方法、
(21) さらに、固形製剤を固化させる工程、および、
前記通路を形成するための除去部材を除去する工程を備えていることを特徴とする、前記(20)に記載の防蟻方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防蟻構造および防蟻方法では、固形製剤が施工される。そのため、施工当初から、長期間にわたって持続的に防蟻効果を維持することができる。その結果、再施工までの期間を長く確保することができる。
【0012】
一方、再施工時には、通路に薬剤を供給することにより、施工された固形製剤に薬剤を浸透させることができる。その結果、再施工時において、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初からの防蟻効果を再度維持することができる。
【0013】
その結果、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の防蟻構造の一実施形態(べた基礎形式の基礎構造物に適用される態様)を示す斜視図である。
【図2】本発明の防蟻構造の他の実施形態(布基礎形式の基礎構造物に適用され、断熱材が外断熱構造として配置される態様)を示す斜視図である。
【図3】本発明の防蟻構造の他の実施形態(布基礎形式の基礎構造物に適用され、断熱材が内断熱構造として配置される態様)を示す斜視図である。
【図4】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がコイル状部材である態様)を示す斜視図である。
【図5】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がスパイラル状部材である態様)を示す斜視図である。
【図6】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が複数のブロックである態様)を示す斜視図である。
【図7】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がメッシュである態様)を示す斜視図である。
【図8】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が海綿状部材である態様)を示す斜視図である。
【図9】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が断面略コ字状部材である態様)を示す斜視図である。
【図10】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が、スリットが形成される丸筒部材である態様)を示す斜視図である。
【図11】本発明の防蟻構造の他の実施形態(固形製剤が打設コンクリートの下に施工される態様)を示す斜視図である。
【図12】本発明の防蟻構造の他の実施形態(線状部材に適用され、通路が連続する態様)を示す断面図である。
【図13】本発明の防蟻構造の他の実施形態(線状部材に適用され、径方向に間隔を隔てて配置される態様)を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の防蟻構造の一実施形態(べた基礎形式の基礎構造物に適用される態様)を示す斜視図である。
【0016】
図1において、この防蟻構造1は、施工された固形製剤5と、固形製剤5が施工された箇所に配置され、薬剤を固形製剤5に散布するための通路7とを備えている。
【0017】
より具体的には、この防蟻構造1は、べた基礎形式の基礎構造部に適用され、このようなべた基礎形式の基礎構造部としては、水平方向に延びる第1基礎としてのべた基礎2と、そのべた基礎2の上方に延びるように配置される第2基礎としての基礎本体3とを備えている。そして、固形製剤5は、基礎本体3と接触するように、べた基礎2の上に、施工されている。
【0018】
べた基礎2は、厚肉の平板状に形成されている。また、基礎本体3は、厚肉の平板状に形成され、べた基礎2の端部の上面に、べた基礎2から上方に延びるように配置されている。なお、基礎本体3の上面には、木製の土台20が設けられている。
【0019】
固形製剤5は、べた基礎2と基礎本体3とが接触する角に沿う方向(以下、奥行方向という。)に沿って施工され、べた基礎2の上面および基礎本体3の外側(基礎本体3の厚み方向一側、すなわち、図1における左側。)面と接触するように、断面視略三角形状に形成されている。
【0020】
そして、通路7は、固形製剤5に被覆されるように配置されている。より具体的には、通路7は、管6により画成される空間として形成されている。
【0021】
管6は、通路7を形成するための通路形成部材であって、固形製剤5に埋設されるように配置されている。より具体的には、管6は、べた基礎2と基礎本体3とが接触する角に沿って配置されている。また、管6は、奥行方向に沿って延びる丸筒状のパイプ(チューブ)状に形成されている。これによって、管6の内部に通路7が形成されている。
【0022】
管6は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリブテンなどの樹脂(プラスティック)、例えば、ステンレス、鉄などの金属などの材料から形成されている。
【0023】
また、管6の外周壁には、厚み方向に貫通する穴8が形成されている。
【0024】
穴8は、再施工時において通路7に供給される薬剤を固形製剤5に供給するための供給口であって、管6の周方向および奥行方向にわたって、互いに間隔を隔てて複数配置されており、略円柱状に開口形成されている。
【0025】
また、管6の奥行方向途中の上部には、そこから上方に延びる注入管9が接続されており、注入管9の内部空間と、管6の通路7とが、連通している。
【0026】
注入管9は、再施工時において通路7に薬剤を供給するための管であって、略丸筒状のパイプ(チューブ)状に形成されている。この注入管9は、奥行方向において、互いに間隔を隔てて複数配置されている。各注入管9は、その上部が、固形製剤5から突出し、その下部が、固形製剤5に埋設されている。また、各注入管9は、管6と同様の材料から形成されている。
【0027】
管6の寸法は、その内径が、例えば、1〜50mm、好ましくは、5〜20mmであり、厚みが、例えば、0.5〜5mm、好ましくは、1〜3mmである。奥行方向における各穴8間の間隔は、1〜500mm、好ましくは、10〜100mmであり、各穴8の内径は、0.1〜10mm、好ましくは、0.1〜3mmである。
【0028】
次に、この防蟻構造1を用いた、本発明の防蟻方法の一実施形態としての防蟻方法について説明する。
【0029】
まず、この方法では、固形製剤5を、通路7が形成されるように施工する。
【0030】
固形製剤5を通路7が形成されるように施工するには、例えば、まず、管6を設置し、別途、固形製剤5を施工するための混練物を調製し、次いでこれを、上記した箇所に管6を被覆するように施工し、その後、混練物を硬化させる。
【0031】
管6を設置するには、例えば、管6を、べた基礎2の上面において、べた基礎2と基礎本体3との角に奥行方向に沿って載置する。また、管6の設置とともに、各注入管9を管6にそれぞれ接続する。
【0032】
固形製剤5を施工するための混練物は、施工後において硬化される硬化性の混練物であって、このような混練物は、例えば、防蟻組成物および硬化液を含有している。
【0033】
防蟻組成物は、例えば、防蟻成分と、水硬性成分と、土砂成分とを含有している。
【0034】
防蟻成分は、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カルバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾール系化合物、オキサジアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物またはその処理物あるいはその誘導体などが挙げられる。
【0035】
上記した防蟻成分は、単独使用または2種以上を併用することができる。好ましくは、ネオニコチノイド系化合物が挙げられる。
【0036】
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン(一般名:アセタミプリド)などが挙げられる。
【0037】
これらネオニコチノイド系化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。ネオニコチノイド系化合物のうち、好ましくは、クロチアニジンが挙げられる。
【0038】
ピレスロイド系化合物としては、例えば、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、フェンバレレートなどが挙げられ、好ましくは、ペルメトリン、ビフェントリン、シフェノトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェンが挙げられる。
【0039】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
【0040】
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン(MEP)、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
【0041】
カルバメート系化合物としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ(BPMC)、プロポクスルなどが挙げられる。
【0042】
ピロール系化合物としては、例えば、クロルフェナピルなどが挙げられる。
【0043】
フェニルピラゾール系化合物としては、例えば、フィプロニルなどが挙げられる。
【0044】
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
【0045】
セミカルバゾン系化合物としては、例えば、α−(α,α,α−トリフルオロ−m−トルオイル)−p−トリニトリル4−(p−トリフルオロメトキシフェニル)セミカルバゾンなどが挙げられる。
【0046】
植物またはその処理物あるいはその誘導体としては、例えば、特開2002−307406号公報、特開2003−252708号公報、特開2005−74776号公報に記載されたものが挙げられる。
【0047】
また、これら防蟻成分は、粉剤または粒剤として調製される。なお、粉剤としては、粉末状の(溶媒に分散されていない)マイクロカプセル剤を含んでいてもよい。
【0048】
水硬性成分は、防蟻成分と土砂成分とを分散させて、硬化性の防蟻組成物を形成できるものであれば限定されず、モルタルまたはコンクリートの形成材料として用いられている種々の水硬性成分が挙げられる。
【0049】
具体的には、例えば、気硬性セメント(例えば、気硬性単味セメント、気硬性混合セメントなど)や、水硬性セメント(例えば、水硬性単味セメント、水硬性混合コメントなど)が挙げられる。
【0050】
気硬性単味セメントとしては、例えば、焼セッコウ、無水セッコウプラスターなどのセッコウ類、例えば、消石灰、ドロマイトプラスターなどの石灰類などが挙げられる。気硬性混合セメントとしては、例えば、マグネシアセメントなどが挙げられる。
【0051】
水硬性単味セメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント類、例えば、アルミナセメント、石灰アルミナセメントなどのアルミナセメント類などが挙げられる。水硬性混合コメントとしては、例えば、石灰スラグセメント、石灰火山灰セメントなどの石灰混合セメント類、例えば、高炉セメント、シリカセメント、ポゾランセメント、フライアッシュセメントなどの混合ポルトランドセメント類、例えば、高硫酸塩スラグセメント類などが挙げられる。
【0052】
これら気硬性セメントおよび水硬性セメントは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0053】
土砂成分としては、例えば、砂類(例えば、けい砂、川砂、海砂、浜砂、山砂など)、土類(例えば、花崗岩の風化により形成された真砂土、例えば、赤土、黒土、しらすなどの火山灰土、例えば、河川の堆積土など)、各種園芸用土(例えば、赤玉土、鹿沼土、荒木田土、腐葉土、桐生砂など)、火成岩(安山岩、花崗岩、流紋岩など)、変成岩(珪岩、晶質石灰岩など)、堆積岩(泥岩、砂岩など)などが挙げられる。
【0054】
上記した土砂成分のうち、取扱い性およびコスト面から、好ましくは、壌質砂土などの砂土類、壌土、砂壌土、微砂質壌土などの壌土類が挙げられ、また、具体的な材質としては、好ましくは、真砂土、けい砂が挙げられる。
【0055】
また、上記した土砂成分は、廃物の破砕物で構成されていてもよく、廃物の破砕物と、上記した土砂成分とで構成されていてもよい。
【0056】
廃物には、人工物および天然物の廃物が含まれる。人工物としては、例えば、人工の建造物または構造物(例えば、レンガ、かわら、コンクリート建材、モルタル建材、コンクリートブロック、コンクリート道路、アスファルト道路、窓ガラスなど)、日用品(植木鉢、コップ、陶器など)などが挙げられる。天然物としては、例えば、貝殻(アサリ、シジミ、ハマグリ、ホタテの貝殻など)、骨類(ウシ、ブタ、ニワトリの骨など)などが挙げられる。また、上記した廃物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0057】
防蟻組成物において、各成分の含有割合は、防蟻組成物の総量に対して、防蟻成分が、例えば、0.001〜50重量%、好ましくは、0.001〜10重量%であり、水硬性成分が、例えば、1〜99重量%、好ましくは、1〜80重量%であり、土砂成分が、例えば、1〜99重量%、好ましくは、20〜99重量%である。
【0058】
なお、防蟻組成物には、必要により、公知の添加剤を添加することができ、そのような添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂、オキシカルボン酸やケイフッ化物などの硬化遅延剤、アルミン酸ナトリウム、カルシウムなどの硬化促進剤、ポリプロピレン、ポリエチレン、アラミド樹脂などのコンクリート補強剤などが挙げられる。
【0059】
硬化液は、防蟻組成物を硬化させるときに用いられる液体であって、具体的には、例えば、水、ポリマーを含有している液体などが挙げられる。
【0060】
ポリマーを含有している液体におけるポリマーとしては、混練物を、上記した箇所に施工した場合に、防蟻組成物とともに硬化し得るポリマーが挙げられる。
【0061】
具体的には、例えば、エチレン−ビニルアルコール(EVA)樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなど。)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。
【0062】
また、ポリマーを含有している液体の溶媒または分散液としては、例えば、水などが挙げられる。なお、ポリマーを含有している液体は、具体的には、上記したポリマーを含有する分散液、懸濁液、乳濁液として、より具体的には、例えば、樹脂エマルションやゴムラテックスとして供給される。なお、樹脂エマルションやゴムラテックスの固形分濃度は、例えば、10〜70重量%、好ましくは、30〜60重量%である。
【0063】
防蟻組成物と硬化液との配合割合は、上記した混練物が硬化して固形製剤5を形成できれば限定されず、例えば、硬化液に含まれる水、溶媒または分散液について、その配合割合は、防蟻組成物100重量部に対して、好ましくは、15〜65重量部であり、より好ましくは、15〜45重量部である。
【0064】
上記した防蟻組成物と硬化液とを混練することにより、固形製剤5を施工するための混練物が調製される。
【0065】
次いで、上記した混練物を、管6が被覆されるように、かつ、べた基礎2と基礎本体3との角に奥行方向に沿って施工する。すなわち、上記した混練物を、べた基礎2の上面と基礎本体3の外側面とに、断面視略三角形状に堆積するように施工する。
【0066】
混練物の施工としては、例えば、上記した混練物の塗布、散布、吹付けなどが挙げられる。 上記した混練物の施工の具体的方法としては、特に限定されず、例えば、鏝、へらなどの用具で上記した混練物などを塗布する方法、噴霧器、散布器、圧送ポンプなどの機械・機器で上記した混練物などを散布する方法、スプレーガンなどの吹付け器で上記した混練物などを吹き付ける方法などが挙げられる。
【0067】
また、この混練物の施工において、混練物の施工量を、防蟻成分の量が、例えば、0.002〜30000g/m2(施工箇所の面積)、好ましくは、0.002〜15000g/m2(施工箇所の面積)となるように設定する。
【0068】
次いで、この方法では、施工された混練物を硬化させる。
【0069】
混練物の硬化では、特に制限されず、例えば、施工された混練物を空気中に放置することにより、固化させる。放置時間は、硬化液に含まれる水などの配合割合に応じて適宜選択され、例えば、1時間〜28日間、好ましくは、3時間〜24時間である。
【0070】
また、固形製剤5として、上記した混練物を硬化させたものに代えて、粉剤または粒剤として製剤された防蟻成分を、固化させず、そのまま施工することもできる。
【0071】
これによって、固形製剤5を、通路7が形成されるように施工することができる。
【0072】
なお、上記した説明では、管6を設置した後、混練物を施工したが、例えば、まず、混練物を施工し、次いで、管6を設置し、その後、さらに混練物、粉剤または粒剤を施工することができる。また、まず、粉剤または粒剤を施工し、次いで、管6を設置し、その後、さらに混練物を施工することもできる。
【0073】
その後、この方法では、固形製剤5の施工から、所定期間経過した時に、薬剤を再施工する。
【0074】
固形製剤5の施工当初から、上記した薬剤の再施工までの期間は、施工箇所および固形製剤5に応じて適宜選択され、例えば、3年以上、好ましくは、固形製剤5が持続性および耐久性を有することから、5年以上、通常、20年以内、好ましくは、10年以内に設定される。
【0075】
再施工は、薬剤を通路7に供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布する。
【0076】
再施工における薬剤は、上記した防蟻成分と同様の防蟻成分が挙げられる。また、この薬剤における防蟻成分は、管6の通路7を流動できる製剤形態であれば、特に限定されず、例えば、フロアブル剤、マイクロカプセル剤(水などの溶媒に分散されたもの)、担体担持剤などの懸濁剤、例えば、油剤、乳剤などの液剤などとして、調製される。好ましくは、これらのうち、防蟻成分を、溶媒に分散されたマイクロカプセル化剤として調製することが好ましい。
【0077】
薬剤において、防蟻成分の配合割合は、例えば、0.01〜50重量%、好ましくは、0.05〜2重量%である。
【0078】
薬剤を通路7に供給するには、各注入管9から薬剤を注入する。薬剤の注入速度は、通常、例えば、50〜2000ml/分、好ましくは、50〜1000ml/分である。また、薬剤の注入速度は、点滴のように極端に小さくして、薬剤を徐々に注入することもでき、より具体的には、薬剤の注入速度が、例えば、10〜600ml/時間、好ましくは、30〜200ml/時間に設定される。
【0079】
また、この薬剤の供給において、公知の発泡剤を薬剤に含有させることもできる。このような発泡剤は、例えば、発泡作用を有する界面活性剤であって、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などが挙げられる。また、発泡剤の配合割合は、薬剤100重量部に対して、例えば、1〜5重量部、好ましくは、1〜3重量部である。発泡剤が含有された薬剤を用いて、これを発泡させながら注入することにより、薬剤の流動性を高めながら、薬剤を通路7に円滑に供給して、固形製剤5に円滑に散布することができる。
【0080】
この再施工によって、各注入管9から注入された薬剤が、管6の通路7に至り、穴8を通過して、固形製剤5に散布され、固形製剤5全体に浸透される。
【0081】
なお、再施工において、薬剤の散布量を、防蟻成分の量が、例えば、0.001〜50重量%、好ましくは、0.01〜2重量%となるように設定する。
【0082】
そして、この防蟻構造1および防蟻方法によれば、固形製剤5が施工される。そのため、施工当初から、長期間にわたって持続的に防蟻効果を維持することができる。その結果、再施工までの期間を長く確保することができる。
【0083】
一方、再施工時には、通路7に薬剤を供給することにより、施工された固形製剤5に薬剤を浸透させることができる。その結果、再施工時において、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初からの防蟻効果を再度維持することができる。
【0084】
その結果、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初の防蟻効果を再度維持することができる。
【0085】
また、この防蟻構造1および防蟻方法では、再施工時には、薬剤を、通路7の穴8から、管6を被覆している固形製剤5に向けて散布するため、薬剤が空気中に飛散しくい。そのため、再施工時において、薬剤を効率的に散布できるとともに、建物の居住者や作業者への影響を低減させることができる。
【0086】
なお、図1において、この防蟻構造1をべた基礎形式の基礎構造部に適用したが、例えば、布基礎形式の基礎構造部に適用することもできる。
【0087】
布基礎形式の基礎構造部は、図2が参照されるように、上方に延びる布基礎33と、布基礎33の側面(両側面、つまり、外側面および内側面)から水平方向(外側および内側の両方)に延びる打設コンクリート32とを備えている(但し、図2は、布基礎33の内側面から内側に延びる打設コンクリート32を、省略している。)。固形製剤5は、布基礎33と打設コンクリート32との角に施工されている。
【0088】
また、上記した図1における説明では、固形製剤5と基礎本体3の外側面とを直接接触させたが、例えば、図示しないが、基礎本体3の外側面に、断熱材および化粧板としての化粧モルタルを、管6が化粧モルタルと隣接配置され、かつ、基礎本体3が断熱材と隣接配置されるように、順次形成することができる。そして、固形製剤5と基礎本体3との間に、断熱材および化粧モルタルを介在させる。この場合には、固形製剤5と化粧モルタルの外側面とが接触している。なお、断熱材としては、例えば、公知の樹脂発泡体などが用いられる。
【0089】
さらに、基礎本体3の外側面に、断熱材および化粧モルタルを順次形成する場合には、化粧モルタルの下端部を、断熱材の上下方向途中まで形成して、断熱材の下端部を露出させることができる。
【0090】
この場合には、化粧モルタルの下端部に管6を形成して、管6を、固形製剤5の上方に間隔を隔てて配置する。また、この場合には、管6を、化粧モルタルの下端部および化粧モルタルから露出する断熱材と隣接配置させる。なお、この場合には、固形製剤5と基礎本体3との間に、断熱材が介在されている。
【0091】
そして、通路7に薬剤を供給することにより、薬剤を管6の下方に浸潤させて、化粧モルタルから露出する断熱材におけるシロアリによる食害を防止するとともに、固形製剤5に薬剤を浸透させて、固形製剤5の防蟻効果を維持することができる。
【0092】
また、上記した説明では、固形製剤5の施工から所定期間経過時に、薬剤を再施工したが、例えば、これに限定されず、固形製剤5の施工直後に、薬剤を再施工することもできる。
【0093】
図2は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(布基礎形式の基礎構造物に適用され、断熱材が外断熱構造として配置される態様)を示す斜視図である。
【0094】
次に、本発明の防蟻構造の他の実施形態について、図2を参照して、説明する。なお、上記した各部に対応する部材については、以降の各図面において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0095】
図2において、この防蟻構造1は、布基礎33および打設コンクリート32とを備える布基礎形式の基礎構造部に適用されている。
【0096】
布基礎33は、上方に延び、厚肉の平板状に形成されている。また、打設コンクリート32は、厚肉の平板状に形成され、布基礎33の両側面に、布基礎33から水平方向に延びるように配置されている。
【0097】
また、この防蟻構造1では、布基礎33の外側において、布基礎33と対向して断熱材10が配置されている。
【0098】
なお、この防蟻構造1が適用される打設コンクリート32および布基礎33では、布基礎33が打設コンクリート32の端部の側面に、この側面から上下方向(下方については、図示せず)に延びるように配置されている。つまり、この布基礎33の外側面と、打設コンクリート32の端部の側面とが接触している。
【0099】
断熱材10は、上記した断熱材と同様の断熱材であって、打設コンクリート32の上に、布基礎33の外側面と接触するように形成され、奥行方向に沿って延びる、厚肉の平板状に形成されている。より具体的には、断熱材10は、打設コンクリート32の端部の上面に形成される固形製剤5の上側であって、管6の上部を被覆するように形成されている。
【0100】
また、固形製剤5は、上下方向において、打設コンクリート32と断熱材10との間に、施工されている。より具体的には、固形製剤5は、打設コンクリート32の上において、管6、断熱材10および後述する化粧モルタル19の下側に、断面視略矩形状に形成されている。
【0101】
管6は、その上部が断熱材10と接触している。これにより、通路7が、断熱材10と隣接配置されている。
【0102】
注入管9は、上方に向かって断熱材10を貫通するように延び、断熱材10を貫通した後、外側に向かって屈曲し、注入管9の上部の口部(端部)が、次に述べる化粧モルタル19よりも外側に配置される断面視略L字状に形成されている。なお、図2の点線で示すように、注入管9の上部の口部と、化粧モルタル19の外側面とが同一平面上(面一)または化粧モルタル19より外に出ないよう配置されるように、注入管9を形成することもできる。
【0103】
また、1点鎖線で示すように、注入管9を、上方に向かって断熱材10の上下方向途中を貫通するように延び、その後、外側に向かって屈曲して化粧モルタル19を貫通して、図示しない地盤(地面)に至り、その後、さらに上方に向かって屈曲して、注入管9の口部が地盤から突出するように形成することもできる。
【0104】
さらにまた、注入管9の設置時には、注入管9の上部を収納し、注入管9の使用時には、注入管9を出すこともできる。より具体的には、仮想線で示すように、予め注入管9の上部を、断熱材10と沿うように配置し、これにより、注入管9の上部を収納する。その後、再施工(使用)時において、注入管9の上部を、注入管9の下部を軸心として、仮想線で示す矢印に沿う水平方向に、約90度回転させて、注入管9の上部を断熱材10と直交させるように配置する。これにより、注入管9の端部を断熱材10から出す。なお、再施工(使用)後には、上記と同様にして、再び注入管9を収納することもできる。
【0105】
また、断熱材10の外側には、化粧モルタル19が設けられている。
【0106】
化粧モルタル19は、断熱材10の外側面を被覆するように、平板状に形成されている。また、化粧モルタル19は、その下端部が、固形製剤5と接触している。
【0107】
次に、この防蟻構造1を用いた防蟻方法について説明する。
【0108】
まず、この方法では、固形製剤5を、通路7が形成されるように施工する。
【0109】
固形製剤5を通路7が形成されるように施工するには、上記と同様の混練物を調製し、この混練物を、打設コンクリート32の上面に塗布、散布または吹付けして、次いで、管6を設置する。
【0110】
管6を設置するには、例えば、施工された混練物の上面に、管6を載置する。
【0111】
また、この方法では、管6および注入管9の外形形状に対応する部分が切り欠かれた断熱材10を用意して、次いで、布基礎33の外側面と接触するように、かつ、管6の上部を被覆するように、断熱材10を上方から配置する。その後、注入管9を断熱材10に貫通させて、注入管9を管6に接続する。
【0112】
なお、管6および断熱材10の配置(設置)によって、混練物は、管6および断熱材10により上方から押し付けられ、断熱材10の底面および管6の下部の形状に対応するように、変形される。つまり、断熱材10に接触する部分が、平面状に形成され、管6の下部に接触する部分が、凹面状に形成される。
【0113】
次いで、施工された混練物を硬化させる。
【0114】
その後、化粧モルタル19を、断熱材10の外側面で、かつ、固形製剤5の上側に、公知の方法で形成する。
【0115】
次いで、この方法では、固形製剤5の施工から、所定期間経過した時に、薬剤を再施工する。
【0116】
再施工は、薬剤を注入管9から注入し、通路7に供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布するとともに、断熱材10にも散布する。これによって、通路7から供給される薬剤が、固形製剤5および断熱材10のいずれにも浸透される。
【0117】
そして、この防蟻構造1および防蟻方法によれば、打設コンクリート32と断熱材10との間に、固形製剤5が施工される。そのため、施工当初から、断熱材10にも、長期間にわたって持続的に防蟻効果を維持することができる。
【0118】
一方、再施工時には、通路7に薬剤を供給することにより、施工された固形製剤5および断熱材10の両方に薬剤を浸透させることができる。その結果、再施工時において、固形製剤5および断熱材10の両方に、簡易かつ確実に薬剤を散布するとともに、施工当初からの防蟻効果を再度維持することができる。
【0119】
一般に、断熱材10についても、木製の土台20と同様に、シロアリによって食害されることがある。しかるに、予め防蟻成分を断熱材10の形成材料とともに配合して発泡形成された断熱材10では、発泡によってその体積が増加することから、断熱材10全体における防蟻成分の濃度が顕著に希薄となる。そのため、防蟻成分が予め配合された断熱材10では、防蟻効果が十分でない場合がある。
【0120】
これに対し、上記した防蟻構造1および防蟻方法では、再施工時において、既に発泡形成された断熱材10に薬剤を改めて処理させるので、十分な防蟻効果を確保することができる。そのため、断熱材10に対するシロアリの食害を、十分に防止することができる。
【0121】
また、上記した説明では、第1基礎として、打設コンクリート32を例示したが、例えば、土間や地盤面であってもよい。
【0122】
また、上記した説明では、管6を1本設けたが、例えば、図2の仮想線で示すように、管6と上下方向において間隔を隔てて対向配置される上管22を、さらに設けることもできる。上管22は、管6と同様の形状に形成されている。
【0123】
このように2本の管(管6および上管22)、すなわち、2本の通路7を設けることにより、再施工時において、薬剤を断熱材10全体、とりわけ、断熱材10の上下方向にわたって十分に浸透させて、断熱材10の防蟻効果を、より一層確実に維持でき、あるいは、向上させることができる。
【0124】
なお、上記した図2における説明では、化粧モルタル19の下端部を固形製剤5と接触させたが、例えば、図示しないが、化粧モルタル19の下端部を固形製剤5と上方に間隔を隔てて配置することができる。この場合には、シロアリの食害から防止するために、化粧モルタル19の下端部から露出する断熱材10の外側面に、薬剤を塗布することができる。
【0125】
図3は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(布基礎形式の基礎構造物に適用され、断熱材が内断熱構造として配置される態様)を示す斜視図である。
【0126】
なお、図3は、布基礎33の内側面から内側に延びる打設コンクリート32を現し、布基礎33の外側面から外側に延びる打設コンクリート32を省略している。
【0127】
上記した説明では、断熱材10を外断熱構造として配置したが、これに限定されず、例えば、図3に示すように、断熱材10を布基礎33の内側に配置する内断熱構造として配置することもできる。
【0128】
この防蟻構造1では、固形製剤5は、布基礎33の内側面と打設コンクリート32の上面とに接触するように、断面視略三角形状に形成されている。
【0129】
また、防蟻構造1は、布基礎33の内側面に沿って配置される第1断熱材(断熱材)10と、打設コンクリート32の上面に沿って配置される第2断熱材35とを備えている。
【0130】
第1断熱材10は、打設コンクリート32の上面と間隔を隔てて配置されている。具体的には、第1断熱材10の下面における内側端部が、第2断熱材35の上面に載置されている。つまり、第1断熱材10は、打設コンクリート32の上面と、第2断熱材35の厚みと同一厚みの間隔を隔てて配置されている。なお、第1断熱材10の下部には、後述する注入管9の上部が埋設されている。
【0131】
第2断熱材35は、布基礎33の内側面と固形製剤5が充填される間隔を隔てて配置されている。すなわち、第2断熱材35では、その上面における外側端部に、第1断熱材10の下面における内側端部が載置されている。
【0132】
第1断熱材10の厚みは、例えば、5〜100mm、好ましくは、10〜50mmである。第2断熱材35の厚みは、例えば、5〜100mm、好ましくは、10〜50mmである。また、第2断熱材35の外側端面と、布基礎33の内側面との間の間隔は、例えば、5〜100mm、好ましくは、5〜50mmである。
【0133】
これにより、第1断熱材10の下面における外側端部から厚み方向途中までの部分と、第2断熱材35の外側端面と、固形製剤5の上面とにより画成される空間が、通路7として形成される。
【0134】
通路7は、奥行方向に延びる断面略三角形状に形成されている。また、通路7の奥行方向途中には、注入管9が接続されており、注入管9の内部空間と、通路7とが連通している。
【0135】
具体的には、注入管9は、例えば、3方管であって、一方側端部である第1口部37と、第1口部37に連続する直管から分岐される分岐管の他方側端部である1対の第2口部38とを備える、略T字パイプ(チューブ)状に形成されている。
【0136】
すなわち、注入管9は、第1口部37が上方斜め内側に向かって開放され、第2口部38が奥行方向に向かって開放されるように配置されている。つまり、注入管9は、第1口部37が第1断熱材10から突出し、第2口部38が、通路7の内部空間に臨むように、配置されている。
【0137】
注入管9の材料、内径および厚みは、図2に示す注入管9と同様である。
【0138】
次に、この防蟻構造1を用いた防蟻方法について説明する。
【0139】
まず、この方法では、固形製剤5を施工する。固形製剤5を施工するには、上記と同様の混練物を上記した形状に施工し、続いて、その混練物を硬化させる。
【0140】
また、第2断熱材35を、布基礎33の内側面と固形製剤5が施工される間隔を隔てて、打設コンクリート32の上面に沿って配置する。なお、第2断熱材35を、必要により、図示しない接着剤層を介して打設コンクリート32の上に配置する。
【0141】
次いで、注入管9を設置する。具体的には、第2口部38の外周壁の下部が、施工された固形製剤5の上面と第2断熱材35の外側端面とに接触するように、注入管9を載置する。
【0142】
次いで、第1断熱材10を、打設コンクリート32の上面と間隔を隔てて、布基礎33の内側面に沿って配置する。
【0143】
具体的には、まず、注入管9の上部の外形形状に対応する部分が切り欠かれた第1断熱材10を用意し、次いで、第1断熱材10を、その下面における内側端部が第2断熱材35の上面における外側端部に載置されるように、上方から配置する。このとき、第1口部37を第1断熱材10の切り欠き部分に貫通させる。なお、第1断熱材10を、必要により、図示しない接着剤層を介して布基礎33の内側に配置する。
【0144】
次いで、この方法では、固形製剤5の施工から、所定期間経過した時に、薬剤を再施工する。
【0145】
再施工は、薬剤を注入管9から注入し、通路7に供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布するとともに、第1断熱材10および第2断熱材35にも散布する。これによって、通路7から供給される薬剤が、固形製剤5と第1断熱材10および第2断熱材35のすべてに浸透される。
【0146】
そして、この防蟻構造1および防蟻方法によれば、第1断熱材10および第2断熱材35により通路7が形成される。そのため、簡単に通路7を形成しながら、第1断熱材10および第2断熱材35を内断熱構造で配置して、固形製剤5と第1断熱材10および第2断熱材35とに、長期間にわたって持続的に防蟻効果を付与することができる。
【0147】
また、上記した説明において、第1断熱材10を、外断熱構造(図2参照)あるいは内断熱構造(図3参照)として配置したが、例えば、図示しないが、第1断熱材10を、布基礎33の外側および内側の両側に配置する、両側断熱構造として配置することもできる。
【0148】
また、上記した説明では、第1断熱材10および第2断熱材35の両方を用いて通路7を形成したが、これに限定されず、例えば、図示しないが、通路7が形成されるように凹状に予め形成された第1断熱材10、より具体的には、下部が断面視略円状、断面視略矩形状または断面視略三角形状に切り欠かれた第1断熱材10を用いることもできる。
【0149】
このように第1断熱材10のみを用いて通路7を形成すれば、通路7の形成のために第2断熱材35を用いる必要がないので、簡単に通路7を形成することができる。
【0150】
なお、上記した図3における説明では、第2断熱材35を、打設コンクリート32の上面のほぼ全面(固形製剤5が形成される部分を除く全面)に配置したが、例えば、図3の仮想線で示すように、打設コンクリート32の上面における内側端部(固形製剤5が形成される部分を除く部分)のみに配置することもできる。すなわち、打設コンクリート32は、その内側端部において第2断熱材35の下面における外側端部を載置できればよく、第2断熱材35の幅(内外方向長さ)が、打設コンクリート32の幅に比べて過度に短く設定されている。
【0151】
また、上記した図3における説明では、注入管9を設けたが、例えば、図3において図示しないが、注入管9を設けず、薬剤を通路7に供給することができる。すなわち、第1断熱材10に切り欠き部分または直管に対応する貫通部分を形成して、薬剤を、これら切り欠き部分または貫通部分から薬剤を注入する。
【0152】
図4は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がコイル状部材である態様)を示す斜視図、図5は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がスパイラル状部材である態様)を示す斜視図、図6は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が複数のブロックである態様)を示す斜視図、図7は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がメッシュである態様)を示す斜視図、図8は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が海綿状部材である態様)を示す斜視図、図9は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が断面略コ字状部材である態様)を示す斜視図、図10は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が、スリットが形成される丸筒部材である態様)を示す斜視図である。なお、図4〜図10では、通路形成部材の形状把握を容易にするために、通路形成部材を実線で現し、固形製剤5を仮想線で現し、注入管9を省略している。
【0153】
上記した説明では、通路形成部材として管6を例示して説明したが、通路形成部材は、薬剤を固形製剤5に散布するための通路7を形成できるもの、つまり、混練物の施工において、通路7を確保できるものであれば限定されない。通路形成部材としては、例えば、図4〜図10に示すように、コイル状部材11(図4)、スパイラル状部材12(図5)、複数のブロック13(図6)、メッシュ14(図7)、海綿状部材24(図8)、断面略コ字状部材15(図9)、または、スリット17が形成される丸筒部材16(図10)を挙げることができる。また、図示しないが、含液材料、水溶性または流動性材料、または、除去部材を挙げることもできる。
【0154】
図4において、コイル状部材11は、例えば、線材が奥行方向に延びる螺旋(スパイラル)状に巻回されるように形成されている。
【0155】
コイル状部材11の寸法は、コイル状部材11の内径が、例えば、1.5〜40mm、好ましくは、5〜20mmであり、線材の直径が、例えば、0.1〜5mm、好ましくは、0.2〜1mmであり、奥行方向における各線材間の間隔(ピッチ幅)が、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.1〜3mmである。
【0156】
このように通路形成部材がコイル状部材11であると、奥行方向に隣接する各線材間に、奥行方向に直交する方向すべてにわたって隙間が連続して形成されている。そのため、再施工時において、通路7に供給された薬剤をその隙間から、奥行方向に直交する方向にわたって均一に散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0157】
図5において、スパイラル状部材12は、帯状部材が奥行方向に延びる螺旋(スパイラル)状に巻回されるように形成されている。
【0158】
スパイラル状部材12の寸法は、スパイラル状部材12の内径が、例えば、1.5〜20mm、好ましくは、5〜20mmであり、帯状部材の幅が、例えば、3〜20mm、好ましくは、10〜15mmであり、帯状部材の厚みが、例えば、0.5〜3mm、好ましくは、1〜2mmであり、奥行方向における各帯状部材間の距離(ピッチ幅)が、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.1〜3mmである。
【0159】
このように通路形成部材がスパイラル状部材12であると、奥行方向に隣接する各帯状部材間に、奥行方向に直交する方向すべてにわたって隙間が連続して形成されている。そのため、再施工時において、通路7に供給された薬剤をその隙間から、奥行方向に直交する方向にわたって均一に散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0160】
図6において、複数のブロック13は、固形製剤5において隙間をもって充填されており、これにより、通路7が、各ブロック13間の隙間として形成されている。
【0161】
各ブロック13の形状は、例えば、中心から外方に向かう複数(4本)の脚部を備える、テトラポッド状に形成されている。
【0162】
各ブロック13の寸法は、例えば、脚部の長さが、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.2〜5mmであり、脚部の直径(幅または厚み)が、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.2〜5mmであり、各脚部の先端部間の距離が、例えば、5mm以下、好ましくは、2mm以下である。
【0163】
このように通路形成部材が複数のブロック13であると、奥行方向に直交する方向すべてにわたって隙間が連続して形成されている。そのため、再施工時において、通路7に供給された薬剤をその隙間から、奥行方向に直交する方向にわたって均一に散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0164】
なお、図6では、各ブロック13の形状をテトラポッド状として説明したが、固形製剤5において隙間をもって充填されれば特に限定されず、例えば、工業用充填塔に用いられる充填物などが挙げられ、より具体的には、ラッシヒリング、レッシングリング、マクマホンパッキン、ディクソンパッキン、ベルルサドル、インタロックスサドル、テラレット、ポールリング、フレキシリング、カスケードミニリングなどが挙げられる。また、ブロック13としては、例えば、上記した砂類、廃物の破砕物(例えば、瓦礫など)なども挙げられる。さらに、例えば、軽石(より具体的には、カガライトシリーズ(例えば、0号、1号、2号、2M号、3M号、4M号など。以上カガライト工業(株)製。)などが挙げられる。軽石としては、好ましくは、カガライト0号、カガライト1号が挙げられる。
【0165】
図7において、メッシュ14は、奥行方向に延びる平板シート状に形成され、奥行方向に沿って配置されている。また、このメッシュ14は、べた基礎2の上面および基礎本体3の外側面に対して斜めに配置されている。これにより、通路7が、メッシュ14の下方、すなわち、下方斜め内側(図2における右側。)に形成されている。なお、このメッシュ14を、上記した樹脂または金属以外に、麻、綿、絹などの天然繊維から形成することもできる。
【0166】
なお、メッシュ14の下側には、必要により、複数の短管21が設けられている。
【0167】
複数の短管21は、メッシュ14を下方から支持して、通路7を確実に形成するための支持部材であって、奥行方向に沿って間隔を隔てて(断続的に)配置されている。
【0168】
メッシュ14の寸法は、開口径が、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、1〜3mmであり、線径が、例えば、0.1〜5mm、好ましくは、0.2〜2mmである。また、必要により配置される複数の短管21の寸法は、各短管21の長さが、例えば、3〜500mm、好ましくは、10〜200mmであり、各短管21間の間隔が、例えば、1〜200mm、好ましくは、10〜100mmであり、内径および厚みは、上記した管6と同様である。
【0169】
このように通路形成部材がメッシュ14であると、再施工時において、通路7に供給された薬剤を、奥行方向に直交する方向(メッシュ14の隙間が形成される上方を含む)すべてにわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0170】
なお、図7では、通路形成部材としてのメッシュ14を、平板シート状として形成したが、例えば、図示しないが、メッシュ14をリング状に巻回させて、略丸筒状に形成することもできる。なお、このパイプ状のメッシュ14の内径は、例えば、5〜50mm、好ましくは、5〜20mmである。
【0171】
図8において、海綿状部材24は、内部に連通孔を有しており、乾燥ヘチマなどの乾燥した海綿状植物である。海綿状部材24は、その連通孔の体積割合が、例えば、90〜約100体積%である。
【0172】
なお、図8では、海綿状部材24を海綿状植物として説明したが、例えば、図示しないが、合成樹脂発泡体からなる海綿(スポンジ)などから形成することもできる。
【0173】
このように通路形成部材が海綿状部材24であると、奥行方向に直交する方向すべてにわたって連通孔が形成されている。そのため、再施工時において、通路7に供給された薬剤をその連通孔から、奥行方向に直交する方向にわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0174】
図9において、断面略コ字状部材15は、角筒部材であって、この角筒部材には、角筒部材の長手方向に沿って、外周壁の下部が開口される開口部34が形成されている。
【0175】
より具体的には、断面略コ字状部材15は、下部が開放される断面視略コ字状に形成され、奥行方向に沿って配置されている。断面略コ字状部材15の寸法は、互いに対向する両側壁間の間隔(開口部34の長さ)が、例えば、5〜50mm、好ましくは、5〜20mmであり、互いに対向する両側壁の上下方向長さが、例えば、5〜30mm、好ましくは、5〜10mmであり、上壁および両側壁の厚みが、例えば、0.5〜5mm、好ましくは、0.5〜3mmである。
【0176】
このように通路形成部材が断面略コ字状部材15であると、通路7に供給された薬剤を、奥行方向に連続する隙間として形成される開口部34から、奥行方向にわたって均一に散布して、薬剤を固形製剤5に奥行方向にわたって均一に浸透させることができる。
【0177】
なお、図9では、通路形成部材を断面略コ字状部材15として説明したが、例えば、図示しないが、下壁の途中が奥行方向に沿ってスリット状に切り欠かれた断面視略矩形枠状に形成することもできる。
【0178】
図10において、丸筒部材16には、丸筒部材16の長手方向に沿って、外周壁の下部が開口される開口部が形成されている。より具体的には、丸筒部材16には、開口部としてのスリット17が下部に形成される断面視略C字状に形成されており、この丸筒部材16は、奥行方向に沿って配置されている。また、スリット17は、奥行方向に連続して形成されている。丸筒部材16の寸法は、スリット17の幅が、例えば、0.1〜50mm、好ましくは、1〜10mmであり、丸筒部材16の内径および厚みは、上記した管6と同様である。
【0179】
このように通路形成部材が丸筒部材16であると、通路7に供給された薬剤を、奥行方向に連続するスリット17から、奥行方向にわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に奥行方向にわたって均一に浸透させることができる。
【0180】
なお、上記した図9および図10における説明では、断面略コ字状部材15および丸筒部材16の開口部を、外周壁の下部に形成したが、例えば、図示しないが、側部(右側部または左側部)に形成することもできる。
【0181】
また、上記した図9および図10における断面略コ字状部材15および丸筒部材16には、必要により、点線で示すように、その上壁および側壁に、厚み方向に貫通する穴8を複数形成することもできる。このような穴8を形成することにより、再施工における薬剤を、開口部34またはスリット17と、穴8とから、断面略コ字状部材15または丸筒部材16の周方向にわたって、均一に散布することができる。
【0182】
また、図示しないが、例えば、通路形成部材を含液材料から形成することもできる。
【0183】
含液材料は、液体と固化成分とを含有する材料であって、含液材料が設置されて、液体が揮発して、固化成分が固化することにより、通路7が形成される材料である。含液材料が、奥行方向に延びるように、形成されている。
【0184】
液体としては、例えば、水、例えば、エタノールなどの有機溶媒が挙げられ、好ましくは、水が挙げられる。
【0185】
固化成分としては、例えば、澱粉などの天然高分子、PVA、アルギン酸ナトリウムなどの合成高分子などが挙げられる。
【0186】
含液材料の固化成分率(固化前)は、例えば、3重量%以上、好ましくは、5重量%以上、通常、50重量%以下である。
【0187】
このような含液材料としては、具体的には、澱粉糊(例えば、洗濯糊、スティック糊など)、PVAゲル(含水ゲル)などが挙げられる。
【0188】
このような含液材料を設置するには、まず、含液材料をべた基礎2および基礎本体3の角に沿って配置する。次いで、固形製剤5を施工し、所定期間放置することにより、含液材料の液体が蒸発して、固化成分が固化する。これにより、通路7が形成される。
【0189】
また、まず、固形製剤5をべた基礎2および基礎本体3との角に沿って施工し、次いで、含液材料を設置し、その後、さらに固形製剤5を施工して、次いで、固化成分を固化させることにより、通路7を形成することもできる。なお、この設置方法において、さらに施工される固形製剤5は、含液材料の表面のみが固化した状態で、施工されてもよい。
【0190】
このように通路形成部材が含液材料であると、固形製剤5の施工当初には、含液材料の形状を確保できる一方、所定期間経過後には、液体が蒸発して、含液材料の体積が顕著に減少する(またはほとんどなくなる)。そうすると、通路7が、乾燥した固化成分により、奥行方向に延びるように形成される。
【0191】
そして、再施工時には、通路7に供給された薬剤を、その通路7から、奥行方向に直交する方向すべてにわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0192】
また、図示しないが、例えば、通路形成部材を水溶性または流動性材料から形成することもできる。
【0193】
水溶性または流動性材料は、水溶性または流動性材料が設置されて、水や薬剤により溶解されるか、あるいは、水や薬剤により流動され押し出されて、洗い流され、これにより、通路7が形成される材料である。水溶性または流動性材料は、奥行方向に延びるように載置されている。水溶性または流動性材料が水溶性である場合には、その溶解度は、例えば、5g/水100g以上、好ましくは、10g/水100g以上である。
【0194】
このような水溶性または流動性材料としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)などの無機材料、例えば、ショ糖(サッカロース)(固形製剤5が粉剤または粒剤の場合。)、クエン酸ナトリウム(固形製剤5が粉剤または粒剤の場合。)、PVAゲル、澱粉糊などの有機材料などが挙げられる。
【0195】
このような水溶性または流動性材料を設置するには、まず、水溶性または流動性材料を、べた基礎2および基礎本体3との角に沿って連続するように散布する。次いで、固形製剤5をさらに施工し、次いで、散布された水溶性または流動性材料に、給水管の口部を当接(接続)させた後、給水管に水または薬剤を注入する。これにより、通路7が形成される。
【0196】
また、まず、固形製剤5をべた基礎2および基礎本体3との角に沿って施工し、次いで、水溶性または流動性材料を設置し、その後、さらに固形製剤5を施工して、次いで、水または薬剤を注入することにより、通路7を形成することもできる。
【0197】
このように通路形成部材が水溶性または流動性材料であると、固形製剤5の施工当初には、散布された水溶性または流動性材料の配置を確保できる一方、再施工時には、水または薬剤を注入させることにより、水溶性または流動性材料が水により洗い流される。この水溶性または流動性材料の洗浄により、水溶性または流動性材料の配置に対応する、奥行方向に延びる通路7が形成される。
【0198】
そして、再施工時において、水溶性または流動性材料が洗い流された後に、通路7に供給された薬剤を、通路7から、奥行方向に直交する方向すべてにわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0199】
また、図示しないが、例えば、通路形成部材を除去部材から形成することもできる。
【0200】
除去部材は、奥行方向に延びるように配置されている。除去部材は、丸棒状または角棒状に形成されている。除去部材は、例えば、ひもなどの繊維材料、例えば、竹、木材などの木質材料、例えば、プラスティックなどの樹脂材料から形成されている。
【0201】
このような除去部材を設置するには、まず、除去部材を、べた基礎2および基礎本体3との角に沿って連続するように配置する。次いで、固形製剤5を施工して、固形製剤5が固化する前(例えば、直前)、または、固化した後(例えば、直後)に、除去部材を固形製剤5から引き抜くことにより、除去部材を除去する。これにより、通路7が形成される。
【0202】
また、まず、固形製剤5をべた基礎2および基礎本体3との角に沿って施工し、次いで、除去部材を設置し、その後、さらに固形製剤5を施工して、次いで、除去部材を除去することにより、通路7を形成することもできる。
【0203】
このように通路形成部材が除去部材であると、固形製剤5の施工当初には、配置された除去部材の形状を確保できる一方、固形製剤5の固化前または固化後に、除去部材が除去されているので、除去部材の形状に対応する、奥行方向に延びる通路7が形成される。
【0204】
そして、再施工時において、通路7に供給された薬剤を、通路7から、奥行方向に直交する方向すべてにわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0205】
そして、図4〜図10に示すように、通路形成部材が、コイル状部材11、スパイラル状部材12、複数のブロック13、メッシュ14、海綿状部材24、断面略コ字状部材15または丸筒部材16であると、あるいは、図示しない含液材料、水溶性または流動性材料、または、除去部材であると、再施工時において、薬剤を、通路形成部材により形成される比較的広い供給口(隙間)から、効率的に散布することができる。
【0206】
とりわけ、図4〜図8に示すように、通路形成部材が、コイル状部材11、スパイラル状部材12、複数のブロック13、メッシュ14または海綿状部材24であると、あるいは、図示しない含液材料、水溶性または流動性材料、または、除去部材であると、再施工時においては、通路7の供給口(隙間)が、奥行方向に直交する方向すべてにわたって形成されているので、薬剤をより一層効率的に散布することができる。
【0207】
また、図9および図10に示すように、通路形成部材が、断面略コ字状部材15または丸筒部材16であると、上壁および側壁が奥行方向にわたって連続しているので、通路形成部材が確実に補強されるため、施工当初における混練物の施工において、通路形成部材の形状を維持して、通路7を確実に形成することができる。
【0208】
図11は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(固形製剤が打設コンクリートの下に施工される態様)を示す斜視図である。
【0209】
上記した図2における説明では、固形製剤5を、打設コンクリート32の上に施工したが、固形製剤5の配置はこれに限定されず、例えば、図11に示すように、固形製剤5を打設コンクリート32の下に施工することもできる。
【0210】
図11において、この防蟻構造1は、布基礎形式の基礎構造部に適用されており、固形製剤5は、打設コンクリート32の下面に配置され、平板シート状に形成されて、防蟻シートとされている。
【0211】
管6は、打設コンクリート32の端部の下面に設けられており、より具体的には、固形製剤5と打設コンクリート32との間に介在されるように配置されている。
【0212】
注入管9は、図11の実線で示すように、上方に延び、上部が打設コンクリート32から突出するように形成されている。
【0213】
一般に、このような防蟻構造1では、経年劣化や環境変化などによって、打設コンクリート32と布基礎33との間に、隙間23が生じる場合がある。そのような場合には、通路7を備えない防蟻構造1では、この隙間23から布基礎33の外側面に沿って上方に延びる蟻道が形成されるおそれがある。
【0214】
しかし、この防蟻構造1では、管6により形成される通路7を備えているので、隙間が発生した場合でも、薬剤を通路7に供給して再施工することにより、隙間23や固形製剤5に、薬剤を散布することができる。そのため、隙間23が形成された後でも、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初からの防蟻効果を再度維持することができる。
【0215】
なお、固形製剤5は、樹脂に防蟻成分が分散された防湿防蟻シートであってもよく、あるいは、樹脂シート(樹脂層)の上に防蟻成分(防蟻層)が積層された防湿防蟻シートであってもよい。
【0216】
また、例えば、固形製剤5(防湿防蟻シート)の端部を屈曲させることもできる。
【0217】
より具体的には、固形製剤5の配置では、まず、打設コンクリート32より水平方向にやや大きい防湿防蟻シート(固形製剤5および防湿シート)を用意し、これを、その端部が布基礎33の外側面と接触するように、断面視略L字状に配置した後、布基礎33と接触している端部を、外側に向かって屈曲するように、折り畳む。これによって、防湿防蟻シートを、その端部が屈曲するように、配置することができる。
【0218】
その後、管6を、防湿防蟻シートの折り畳まれた部分の上に設置する。
【0219】
この端部が屈曲された防湿防蟻シートおよび管6を設置することにより、管6を、防湿防蟻シートの端部の剥がれ(捲れ)を防止するための重石として利用することができる。
【0220】
また、上記した説明では、注入管9を、上方に延びる直管状に形成したが、例えば、図11の仮想線(2点鎖線)で示すように、水平方向内側に延び、その後、上方に向かって屈曲する断面視略L字状に形成することができる。つまり、注入管9の口部を、建物内に配置することができる。
【0221】
また、図11の1点鎖線で示すように、注入管9を、水平方向内側に延び、その後、上方に向かって一旦屈曲した後、さらに、水平方向外側に延びるように形成することにより、口部が、布基礎33の外側面から突出するように形成することもできる。つまり、注入管9の口部を、建物外に配置することができる。このように注入管9の口部を配置すれば、再施工時には、建物の外部から施工作業ができ、建物の居住者への影響を確実に低減させることができる。
【0222】
また、上記した説明では、注入管9には、口部を1つ形成するように形成したが、例えば、図示しないが、口部を2つ有する略U字状に形成し、その底部を管6に接続させることもできる。
【0223】
このように注入管9を略U字状に形成すると、再施工時において、薬剤を一方の口部から供給したときに、薬剤が他方の口部から溢れた場合には、薬剤が固形製剤5全体に散布されず、薬剤が過度に供給されていることを確認することができる。そのため、再施工時において、薬剤の供給状態を観察しながら、薬剤を固形製剤5全体に、確実に散布することができる。
【0224】
図12は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(線状部材に適用され、通路が連続する態様)を示す断面図、図13は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(線状部材に適用され、径方向に間隔を隔てて配置される態様)を示す断面図である。
【0225】
上記した説明では、防蟻構造1を、建物の基礎構造部(べた基礎形式または布基礎形式)に適用したが、例えば、図12および図13に示すように、線状部材26に適用することもできる。
【0226】
図12において、この防蟻構造1では、固形製剤5が線状部材26の周囲に施工されている。
【0227】
線状部材26としては、例えば、電線ケーブル、光ケーブルなどのケーブルが挙げられる。
【0228】
固形製剤5は、線状部材26を被覆し、線状部材26を囲むように配置されている。つまり、固形製剤5は、線状部材26の周方向において、連続するように形成されている。
【0229】
また、線状部材26と固形製剤5との間には、管6が介在されている。管6は、線状部材26を被覆するように配置されており、より具体的には、径方向において管6と間隔(通路7)を隔てて配置され、かつ、固形製剤5の内周面と接触するように配置されている。
【0230】
この防蟻構造1を用いて線状部材26を防蟻するには、まず、管6を、線状部材26に被せ、次いで、固形製剤5を施工する。
【0231】
その後、再施工時において、薬剤を通路7に供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布する。
【0232】
そして、このように防蟻構造1を線状部材26に適用すると、線状部材26において、長期間にわたって防蟻効果の持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初の防蟻効果を再度維持することができる。
【0233】
とりわけ、管6が、線状部材26の周方向において連続しているため、線状部材26を被覆する固形製剤5に周方向にわたって均一に薬剤を散布することができる。
【0234】
なお、固形製剤5と管6との間には、図示しないが、緩衝用のメッシュを介在させることもできる。
【0235】
また、上記した説明では、管6を、線状部材26を被覆するように設けたが、例えば、図13に示すように、管6を、線状部材26の周方向において、間隔を隔てて複数(4本)配置することもできる。
【0236】
各管6は、線状部材26の周囲に配置されており、線状部材26の延びる方向に沿って配置されている。すなわち、各管6は、線状部材26の径方向において線状部材26と隣接配置されている。
【0237】
また、固形製剤5は、周方向における各管6の間において、線状部材26の外周面と接触している。
【0238】
このように管6を、周方向において、間隔を隔てて複数配置すれば、複数の管6と固形製剤5との接触面積をより広く確保できるので、薬剤を固形製剤5に対して十分に散布することができる。そのため、固形製剤5の防蟻効果を、より一層確実に維持でき、あるいは、向上させることができる。
【0239】
なお、上記した説明では、固形製剤5を線状部材26の外周面と接触させたが、例えば、図13の仮想線で示すように、緩衝用のメッシュ34を、固形製剤5と線状部材26との間に介在させることもできる。
【0240】
メッシュ34は、各管6から露出する線状部材26の表面を被覆しており、より具体的には、線状部材26の周方向において、各管6の間に断続的に配置されている。このようにメッシュ34を配置すれば、固形製剤5と線状部材26とが接触しないので、固形製剤5の固化によっても、施工後における線状部材26(電線ケーブルなど)の点検を容易にすることができる。
【0241】
また、上記した説明では、防蟻構造1を、線状部材26に適用したが、例えば、図12および図13の点線で示すように、筒状部材27に適用することもできる。
【0242】
筒状部材27としては、例えば、ガス管、水道管などの管などが挙げられる。
【0243】
なお、上記した図12および図13の説明において、通路形成部材として、管6を例示して説明したが、通路形成部材としては、例えば、上記したコイル状部材11(図4参照)、スパイラル状部材12(図5参照)、複数のブロック13(図6参照)、メッシュ14(図7参照)、海綿状部材24(図8参照)、断面略コ字状部材15(図9参照)、スリット17が形成される丸筒部材16(図10参照)、含液材料、水溶性または流動性材料、または、除去部材なども挙げられる。
【0244】
さらにまた、本発明の防蟻構造は、通路7が、固形製剤5が施工される箇所に配置されれば、これに限定されず、例えば、通常の建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、地下埋設物、例えば、地盤面なども含まれる。
【0245】
また、上記した図1および図4〜図10における説明では、管6を固形製剤5に埋設させたが、例えば、図示しないが、管6を固形製剤5と接触するように、固形製剤5の上面に設けることもできる。
【0246】
また、上記した説明では、通路形成部材の材料として樹脂や金属などを例示したが、これに代えて、例えば、生分解性樹脂などの生分解性材料を挙げることもできる。
【0247】
このような生分解性材料は、施工当初における混練物の施工時には、管6の形状を維持できる一方、所定期間経過後に混練物が硬化されたときには、生分解材料が生分解されて管6の形状がなくなっても、通路7を確実に確保することができる。そのため、環境への負荷を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の防蟻構造および防蟻方法は、例えば、建物の基礎構造部、あるいは、電線ケーブル、光ケーブルなどのケーブル、または、ガス管、水道管などの管を防蟻するための防蟻構造および防蟻方法であって、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布することのできる防蟻構造および防蟻方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0249】
1 防蟻構造
2 べた基礎
3 基礎本体
5 固形製剤
6 管
7 通路
8 穴
10 断熱材(第1断熱材)
13 ブロック
14 メッシュ
15 断面略コ字状部材
16 丸筒部材
17 スリット
26 線状部材
27 管状部材
32 打設コンクリート
33 布基礎
34 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蟻構造および防蟻方法、詳しくは、建物、ケーブル、管などを防蟻するための防蟻構造および防蟻方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物をシロアリによる食害から防護するために、種々の対策が検討されている。
【0003】
例えば、噴出孔が設けられたポリブテンからなるパイプを、建築物の床下などに配設し、パイプ内に薬液(液剤)を圧入噴射して、床下を防虫するパイプ構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、側方開口の溝型カバー体の肩部に注薬路を貫設するとともに該注薬路に間隔をおいてカバー体内外に開口する注薬拡散孔を穿設し、カバー体内にはスポンジ状の吸薬マットを装入し、吸薬マットに吸収される薬剤で木質土台を白アリ防除する、白アリ防除装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−3089号公報
【特許文献2】特公昭54−3108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、通常、白アリ防除装置では、施工当初から数年後に、薬剤を再施工する必要があるところ、特許文献1および2に記載の白アリ防除構造(装置)では、薬剤を液剤として施工するので、施工当初から比較的短期間で再施工する必要がある。
【0007】
一方、施工当初において薬剤を粒剤などの固形製剤として施工すれば、長期間にわたる持続性および耐久性を確保できる一方で、再施工時には、施工した固形製剤を一旦除去した後、薬剤を再度散布するため、非常に手間がかかる。
【0008】
本発明の目的は、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布することのできる、防蟻構造および防蟻方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、施工当初においては、固形製剤を施工できながら、再施工時には、薬剤を簡易かつ確実に散布することのできる防蟻構造および防蟻方法について鋭意検討したところ、施工時において通路が形成されるように固形製剤を施工すれば、当初から長期間にわたって持続性および耐久性に優れ、しかも再施工時にはその通路から薬剤を簡易に散布できるという知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 施工された固形製剤と、
前記固形製剤が施工された箇所に配置され、薬剤を前記固形製剤に散布するための通路とを備えていることを特徴とする、防蟻構造、
(2) 水平方向に延びる第1基礎から上方に延びるように配置される第2基礎と接触するように、前記第1基礎に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、前記(1)に記載の防蟻構造、
(3) 前記通路が、前記第2基礎の外側および内側のうち少なくともいずれか一側に配置される断熱材と隣接配置され、
前記第1基礎と前記断熱材との間に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、前記(2)に記載の防蟻構造、
(4) 前記第2基礎の外側および内側のうち少なくともいずれか一側に配置される断熱材と、前記断熱材における前記第2基礎に対する反対側に配置される化粧板とが設けられ、
前記通路が、前記化粧板と隣接配置され、
前記第1基礎と前記化粧板との間に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、前記(2)に記載の防蟻構造、
(5) 前記第2基礎の外側および内側のうち少なくともいずれか一側に配置される断熱材と、前記断熱材における前記第2基礎に対する反対側に、前記断熱材の下部が露出するように配置される化粧板とが設けられ、
前記通路が、前記化粧板の下端部および前記断熱材と隣接配置され、かつ、前記固形製剤と上方に間隔を隔てて配置され、
前記第1基礎と、前記化粧板から露出する前記断熱材との間に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、前記(2)に記載の防蟻構造、
(6) 前記固形製剤が、線状部材または管状部材の周囲に施工されていることを特徴とする、前記(1)に記載の防蟻構造、
(7) 前記通路を形成するための通路形成部材を備えていることを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の防蟻構造、
(8) 前記通路形成部材が、管であって、
前記管の外周壁には、厚み方向に貫通する穴が形成されていることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(9) 前記通路形成部材が、コイル状部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(10) 前記通路形成部材が、帯状部材が一定方向に延びるスパイラル状に巻回されるように形成されるスパイラル状部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(11) 前記通路形成部材が、複数のブロックであって、
前記通路が、複数の前記ブロックが隙間をもって充填されることにより、各前記ブロック間の隙間として形成されていることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(12) 前記通路形成部材が、メッシュであることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(13) 前記通路形成部材が、内部に連通孔を有する海綿状部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(14) 前記通路形成部材が、下方が開放される断面略コ字状部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(15) 前記通路形成部材が、スリットが下部に形成される丸筒部材であることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(16) 前記通路形成部材が、液体と固化成分とを含有する含液材料であり、
前記含液材料が設置されて、前記液体が揮発して、前記固化成分が固化することにより、前記通路が形成されることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(17) 前記通路形成部材が、水溶性または流動性材料からなり、
前記水溶性または流動性材料が設置されて、前記水溶性または流動性材料が水または薬剤によりにより洗い流されることにより、前記通路が形成されることを特徴とする、前記(7)に記載の防蟻構造、
(18) 前記通路が、前記線状部材または前記管状部材を被覆するように設けられていることを特徴とする、前記(6)に記載の防蟻構造、
(19) 前記通路が、前記線状部材または前記管状部材の周方向において、間隔を隔てて複数設けられていることを特徴とする、前記(6)に記載の防蟻構造、
(20) 固形製剤を、通路が形成されるように施工する工程、および、
薬剤を前記通路に供給することにより、前記薬剤を前記固形製剤に散布する工程を備えていることを特徴とする、防蟻方法、
(21) さらに、固形製剤を固化させる工程、および、
前記通路を形成するための除去部材を除去する工程を備えていることを特徴とする、前記(20)に記載の防蟻方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防蟻構造および防蟻方法では、固形製剤が施工される。そのため、施工当初から、長期間にわたって持続的に防蟻効果を維持することができる。その結果、再施工までの期間を長く確保することができる。
【0012】
一方、再施工時には、通路に薬剤を供給することにより、施工された固形製剤に薬剤を浸透させることができる。その結果、再施工時において、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初からの防蟻効果を再度維持することができる。
【0013】
その結果、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の防蟻構造の一実施形態(べた基礎形式の基礎構造物に適用される態様)を示す斜視図である。
【図2】本発明の防蟻構造の他の実施形態(布基礎形式の基礎構造物に適用され、断熱材が外断熱構造として配置される態様)を示す斜視図である。
【図3】本発明の防蟻構造の他の実施形態(布基礎形式の基礎構造物に適用され、断熱材が内断熱構造として配置される態様)を示す斜視図である。
【図4】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がコイル状部材である態様)を示す斜視図である。
【図5】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がスパイラル状部材である態様)を示す斜視図である。
【図6】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が複数のブロックである態様)を示す斜視図である。
【図7】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がメッシュである態様)を示す斜視図である。
【図8】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が海綿状部材である態様)を示す斜視図である。
【図9】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が断面略コ字状部材である態様)を示す斜視図である。
【図10】本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が、スリットが形成される丸筒部材である態様)を示す斜視図である。
【図11】本発明の防蟻構造の他の実施形態(固形製剤が打設コンクリートの下に施工される態様)を示す斜視図である。
【図12】本発明の防蟻構造の他の実施形態(線状部材に適用され、通路が連続する態様)を示す断面図である。
【図13】本発明の防蟻構造の他の実施形態(線状部材に適用され、径方向に間隔を隔てて配置される態様)を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の防蟻構造の一実施形態(べた基礎形式の基礎構造物に適用される態様)を示す斜視図である。
【0016】
図1において、この防蟻構造1は、施工された固形製剤5と、固形製剤5が施工された箇所に配置され、薬剤を固形製剤5に散布するための通路7とを備えている。
【0017】
より具体的には、この防蟻構造1は、べた基礎形式の基礎構造部に適用され、このようなべた基礎形式の基礎構造部としては、水平方向に延びる第1基礎としてのべた基礎2と、そのべた基礎2の上方に延びるように配置される第2基礎としての基礎本体3とを備えている。そして、固形製剤5は、基礎本体3と接触するように、べた基礎2の上に、施工されている。
【0018】
べた基礎2は、厚肉の平板状に形成されている。また、基礎本体3は、厚肉の平板状に形成され、べた基礎2の端部の上面に、べた基礎2から上方に延びるように配置されている。なお、基礎本体3の上面には、木製の土台20が設けられている。
【0019】
固形製剤5は、べた基礎2と基礎本体3とが接触する角に沿う方向(以下、奥行方向という。)に沿って施工され、べた基礎2の上面および基礎本体3の外側(基礎本体3の厚み方向一側、すなわち、図1における左側。)面と接触するように、断面視略三角形状に形成されている。
【0020】
そして、通路7は、固形製剤5に被覆されるように配置されている。より具体的には、通路7は、管6により画成される空間として形成されている。
【0021】
管6は、通路7を形成するための通路形成部材であって、固形製剤5に埋設されるように配置されている。より具体的には、管6は、べた基礎2と基礎本体3とが接触する角に沿って配置されている。また、管6は、奥行方向に沿って延びる丸筒状のパイプ(チューブ)状に形成されている。これによって、管6の内部に通路7が形成されている。
【0022】
管6は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリブテンなどの樹脂(プラスティック)、例えば、ステンレス、鉄などの金属などの材料から形成されている。
【0023】
また、管6の外周壁には、厚み方向に貫通する穴8が形成されている。
【0024】
穴8は、再施工時において通路7に供給される薬剤を固形製剤5に供給するための供給口であって、管6の周方向および奥行方向にわたって、互いに間隔を隔てて複数配置されており、略円柱状に開口形成されている。
【0025】
また、管6の奥行方向途中の上部には、そこから上方に延びる注入管9が接続されており、注入管9の内部空間と、管6の通路7とが、連通している。
【0026】
注入管9は、再施工時において通路7に薬剤を供給するための管であって、略丸筒状のパイプ(チューブ)状に形成されている。この注入管9は、奥行方向において、互いに間隔を隔てて複数配置されている。各注入管9は、その上部が、固形製剤5から突出し、その下部が、固形製剤5に埋設されている。また、各注入管9は、管6と同様の材料から形成されている。
【0027】
管6の寸法は、その内径が、例えば、1〜50mm、好ましくは、5〜20mmであり、厚みが、例えば、0.5〜5mm、好ましくは、1〜3mmである。奥行方向における各穴8間の間隔は、1〜500mm、好ましくは、10〜100mmであり、各穴8の内径は、0.1〜10mm、好ましくは、0.1〜3mmである。
【0028】
次に、この防蟻構造1を用いた、本発明の防蟻方法の一実施形態としての防蟻方法について説明する。
【0029】
まず、この方法では、固形製剤5を、通路7が形成されるように施工する。
【0030】
固形製剤5を通路7が形成されるように施工するには、例えば、まず、管6を設置し、別途、固形製剤5を施工するための混練物を調製し、次いでこれを、上記した箇所に管6を被覆するように施工し、その後、混練物を硬化させる。
【0031】
管6を設置するには、例えば、管6を、べた基礎2の上面において、べた基礎2と基礎本体3との角に奥行方向に沿って載置する。また、管6の設置とともに、各注入管9を管6にそれぞれ接続する。
【0032】
固形製剤5を施工するための混練物は、施工後において硬化される硬化性の混練物であって、このような混練物は、例えば、防蟻組成物および硬化液を含有している。
【0033】
防蟻組成物は、例えば、防蟻成分と、水硬性成分と、土砂成分とを含有している。
【0034】
防蟻成分は、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カルバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾール系化合物、オキサジアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物またはその処理物あるいはその誘導体などが挙げられる。
【0035】
上記した防蟻成分は、単独使用または2種以上を併用することができる。好ましくは、ネオニコチノイド系化合物が挙げられる。
【0036】
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン(一般名:アセタミプリド)などが挙げられる。
【0037】
これらネオニコチノイド系化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。ネオニコチノイド系化合物のうち、好ましくは、クロチアニジンが挙げられる。
【0038】
ピレスロイド系化合物としては、例えば、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、フェンバレレートなどが挙げられ、好ましくは、ペルメトリン、ビフェントリン、シフェノトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェンが挙げられる。
【0039】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
【0040】
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン(MEP)、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
【0041】
カルバメート系化合物としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ(BPMC)、プロポクスルなどが挙げられる。
【0042】
ピロール系化合物としては、例えば、クロルフェナピルなどが挙げられる。
【0043】
フェニルピラゾール系化合物としては、例えば、フィプロニルなどが挙げられる。
【0044】
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
【0045】
セミカルバゾン系化合物としては、例えば、α−(α,α,α−トリフルオロ−m−トルオイル)−p−トリニトリル4−(p−トリフルオロメトキシフェニル)セミカルバゾンなどが挙げられる。
【0046】
植物またはその処理物あるいはその誘導体としては、例えば、特開2002−307406号公報、特開2003−252708号公報、特開2005−74776号公報に記載されたものが挙げられる。
【0047】
また、これら防蟻成分は、粉剤または粒剤として調製される。なお、粉剤としては、粉末状の(溶媒に分散されていない)マイクロカプセル剤を含んでいてもよい。
【0048】
水硬性成分は、防蟻成分と土砂成分とを分散させて、硬化性の防蟻組成物を形成できるものであれば限定されず、モルタルまたはコンクリートの形成材料として用いられている種々の水硬性成分が挙げられる。
【0049】
具体的には、例えば、気硬性セメント(例えば、気硬性単味セメント、気硬性混合セメントなど)や、水硬性セメント(例えば、水硬性単味セメント、水硬性混合コメントなど)が挙げられる。
【0050】
気硬性単味セメントとしては、例えば、焼セッコウ、無水セッコウプラスターなどのセッコウ類、例えば、消石灰、ドロマイトプラスターなどの石灰類などが挙げられる。気硬性混合セメントとしては、例えば、マグネシアセメントなどが挙げられる。
【0051】
水硬性単味セメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント類、例えば、アルミナセメント、石灰アルミナセメントなどのアルミナセメント類などが挙げられる。水硬性混合コメントとしては、例えば、石灰スラグセメント、石灰火山灰セメントなどの石灰混合セメント類、例えば、高炉セメント、シリカセメント、ポゾランセメント、フライアッシュセメントなどの混合ポルトランドセメント類、例えば、高硫酸塩スラグセメント類などが挙げられる。
【0052】
これら気硬性セメントおよび水硬性セメントは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0053】
土砂成分としては、例えば、砂類(例えば、けい砂、川砂、海砂、浜砂、山砂など)、土類(例えば、花崗岩の風化により形成された真砂土、例えば、赤土、黒土、しらすなどの火山灰土、例えば、河川の堆積土など)、各種園芸用土(例えば、赤玉土、鹿沼土、荒木田土、腐葉土、桐生砂など)、火成岩(安山岩、花崗岩、流紋岩など)、変成岩(珪岩、晶質石灰岩など)、堆積岩(泥岩、砂岩など)などが挙げられる。
【0054】
上記した土砂成分のうち、取扱い性およびコスト面から、好ましくは、壌質砂土などの砂土類、壌土、砂壌土、微砂質壌土などの壌土類が挙げられ、また、具体的な材質としては、好ましくは、真砂土、けい砂が挙げられる。
【0055】
また、上記した土砂成分は、廃物の破砕物で構成されていてもよく、廃物の破砕物と、上記した土砂成分とで構成されていてもよい。
【0056】
廃物には、人工物および天然物の廃物が含まれる。人工物としては、例えば、人工の建造物または構造物(例えば、レンガ、かわら、コンクリート建材、モルタル建材、コンクリートブロック、コンクリート道路、アスファルト道路、窓ガラスなど)、日用品(植木鉢、コップ、陶器など)などが挙げられる。天然物としては、例えば、貝殻(アサリ、シジミ、ハマグリ、ホタテの貝殻など)、骨類(ウシ、ブタ、ニワトリの骨など)などが挙げられる。また、上記した廃物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0057】
防蟻組成物において、各成分の含有割合は、防蟻組成物の総量に対して、防蟻成分が、例えば、0.001〜50重量%、好ましくは、0.001〜10重量%であり、水硬性成分が、例えば、1〜99重量%、好ましくは、1〜80重量%であり、土砂成分が、例えば、1〜99重量%、好ましくは、20〜99重量%である。
【0058】
なお、防蟻組成物には、必要により、公知の添加剤を添加することができ、そのような添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂、オキシカルボン酸やケイフッ化物などの硬化遅延剤、アルミン酸ナトリウム、カルシウムなどの硬化促進剤、ポリプロピレン、ポリエチレン、アラミド樹脂などのコンクリート補強剤などが挙げられる。
【0059】
硬化液は、防蟻組成物を硬化させるときに用いられる液体であって、具体的には、例えば、水、ポリマーを含有している液体などが挙げられる。
【0060】
ポリマーを含有している液体におけるポリマーとしては、混練物を、上記した箇所に施工した場合に、防蟻組成物とともに硬化し得るポリマーが挙げられる。
【0061】
具体的には、例えば、エチレン−ビニルアルコール(EVA)樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなど。)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。
【0062】
また、ポリマーを含有している液体の溶媒または分散液としては、例えば、水などが挙げられる。なお、ポリマーを含有している液体は、具体的には、上記したポリマーを含有する分散液、懸濁液、乳濁液として、より具体的には、例えば、樹脂エマルションやゴムラテックスとして供給される。なお、樹脂エマルションやゴムラテックスの固形分濃度は、例えば、10〜70重量%、好ましくは、30〜60重量%である。
【0063】
防蟻組成物と硬化液との配合割合は、上記した混練物が硬化して固形製剤5を形成できれば限定されず、例えば、硬化液に含まれる水、溶媒または分散液について、その配合割合は、防蟻組成物100重量部に対して、好ましくは、15〜65重量部であり、より好ましくは、15〜45重量部である。
【0064】
上記した防蟻組成物と硬化液とを混練することにより、固形製剤5を施工するための混練物が調製される。
【0065】
次いで、上記した混練物を、管6が被覆されるように、かつ、べた基礎2と基礎本体3との角に奥行方向に沿って施工する。すなわち、上記した混練物を、べた基礎2の上面と基礎本体3の外側面とに、断面視略三角形状に堆積するように施工する。
【0066】
混練物の施工としては、例えば、上記した混練物の塗布、散布、吹付けなどが挙げられる。 上記した混練物の施工の具体的方法としては、特に限定されず、例えば、鏝、へらなどの用具で上記した混練物などを塗布する方法、噴霧器、散布器、圧送ポンプなどの機械・機器で上記した混練物などを散布する方法、スプレーガンなどの吹付け器で上記した混練物などを吹き付ける方法などが挙げられる。
【0067】
また、この混練物の施工において、混練物の施工量を、防蟻成分の量が、例えば、0.002〜30000g/m2(施工箇所の面積)、好ましくは、0.002〜15000g/m2(施工箇所の面積)となるように設定する。
【0068】
次いで、この方法では、施工された混練物を硬化させる。
【0069】
混練物の硬化では、特に制限されず、例えば、施工された混練物を空気中に放置することにより、固化させる。放置時間は、硬化液に含まれる水などの配合割合に応じて適宜選択され、例えば、1時間〜28日間、好ましくは、3時間〜24時間である。
【0070】
また、固形製剤5として、上記した混練物を硬化させたものに代えて、粉剤または粒剤として製剤された防蟻成分を、固化させず、そのまま施工することもできる。
【0071】
これによって、固形製剤5を、通路7が形成されるように施工することができる。
【0072】
なお、上記した説明では、管6を設置した後、混練物を施工したが、例えば、まず、混練物を施工し、次いで、管6を設置し、その後、さらに混練物、粉剤または粒剤を施工することができる。また、まず、粉剤または粒剤を施工し、次いで、管6を設置し、その後、さらに混練物を施工することもできる。
【0073】
その後、この方法では、固形製剤5の施工から、所定期間経過した時に、薬剤を再施工する。
【0074】
固形製剤5の施工当初から、上記した薬剤の再施工までの期間は、施工箇所および固形製剤5に応じて適宜選択され、例えば、3年以上、好ましくは、固形製剤5が持続性および耐久性を有することから、5年以上、通常、20年以内、好ましくは、10年以内に設定される。
【0075】
再施工は、薬剤を通路7に供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布する。
【0076】
再施工における薬剤は、上記した防蟻成分と同様の防蟻成分が挙げられる。また、この薬剤における防蟻成分は、管6の通路7を流動できる製剤形態であれば、特に限定されず、例えば、フロアブル剤、マイクロカプセル剤(水などの溶媒に分散されたもの)、担体担持剤などの懸濁剤、例えば、油剤、乳剤などの液剤などとして、調製される。好ましくは、これらのうち、防蟻成分を、溶媒に分散されたマイクロカプセル化剤として調製することが好ましい。
【0077】
薬剤において、防蟻成分の配合割合は、例えば、0.01〜50重量%、好ましくは、0.05〜2重量%である。
【0078】
薬剤を通路7に供給するには、各注入管9から薬剤を注入する。薬剤の注入速度は、通常、例えば、50〜2000ml/分、好ましくは、50〜1000ml/分である。また、薬剤の注入速度は、点滴のように極端に小さくして、薬剤を徐々に注入することもでき、より具体的には、薬剤の注入速度が、例えば、10〜600ml/時間、好ましくは、30〜200ml/時間に設定される。
【0079】
また、この薬剤の供給において、公知の発泡剤を薬剤に含有させることもできる。このような発泡剤は、例えば、発泡作用を有する界面活性剤であって、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などが挙げられる。また、発泡剤の配合割合は、薬剤100重量部に対して、例えば、1〜5重量部、好ましくは、1〜3重量部である。発泡剤が含有された薬剤を用いて、これを発泡させながら注入することにより、薬剤の流動性を高めながら、薬剤を通路7に円滑に供給して、固形製剤5に円滑に散布することができる。
【0080】
この再施工によって、各注入管9から注入された薬剤が、管6の通路7に至り、穴8を通過して、固形製剤5に散布され、固形製剤5全体に浸透される。
【0081】
なお、再施工において、薬剤の散布量を、防蟻成分の量が、例えば、0.001〜50重量%、好ましくは、0.01〜2重量%となるように設定する。
【0082】
そして、この防蟻構造1および防蟻方法によれば、固形製剤5が施工される。そのため、施工当初から、長期間にわたって持続的に防蟻効果を維持することができる。その結果、再施工までの期間を長く確保することができる。
【0083】
一方、再施工時には、通路7に薬剤を供給することにより、施工された固形製剤5に薬剤を浸透させることができる。その結果、再施工時において、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初からの防蟻効果を再度維持することができる。
【0084】
その結果、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初の防蟻効果を再度維持することができる。
【0085】
また、この防蟻構造1および防蟻方法では、再施工時には、薬剤を、通路7の穴8から、管6を被覆している固形製剤5に向けて散布するため、薬剤が空気中に飛散しくい。そのため、再施工時において、薬剤を効率的に散布できるとともに、建物の居住者や作業者への影響を低減させることができる。
【0086】
なお、図1において、この防蟻構造1をべた基礎形式の基礎構造部に適用したが、例えば、布基礎形式の基礎構造部に適用することもできる。
【0087】
布基礎形式の基礎構造部は、図2が参照されるように、上方に延びる布基礎33と、布基礎33の側面(両側面、つまり、外側面および内側面)から水平方向(外側および内側の両方)に延びる打設コンクリート32とを備えている(但し、図2は、布基礎33の内側面から内側に延びる打設コンクリート32を、省略している。)。固形製剤5は、布基礎33と打設コンクリート32との角に施工されている。
【0088】
また、上記した図1における説明では、固形製剤5と基礎本体3の外側面とを直接接触させたが、例えば、図示しないが、基礎本体3の外側面に、断熱材および化粧板としての化粧モルタルを、管6が化粧モルタルと隣接配置され、かつ、基礎本体3が断熱材と隣接配置されるように、順次形成することができる。そして、固形製剤5と基礎本体3との間に、断熱材および化粧モルタルを介在させる。この場合には、固形製剤5と化粧モルタルの外側面とが接触している。なお、断熱材としては、例えば、公知の樹脂発泡体などが用いられる。
【0089】
さらに、基礎本体3の外側面に、断熱材および化粧モルタルを順次形成する場合には、化粧モルタルの下端部を、断熱材の上下方向途中まで形成して、断熱材の下端部を露出させることができる。
【0090】
この場合には、化粧モルタルの下端部に管6を形成して、管6を、固形製剤5の上方に間隔を隔てて配置する。また、この場合には、管6を、化粧モルタルの下端部および化粧モルタルから露出する断熱材と隣接配置させる。なお、この場合には、固形製剤5と基礎本体3との間に、断熱材が介在されている。
【0091】
そして、通路7に薬剤を供給することにより、薬剤を管6の下方に浸潤させて、化粧モルタルから露出する断熱材におけるシロアリによる食害を防止するとともに、固形製剤5に薬剤を浸透させて、固形製剤5の防蟻効果を維持することができる。
【0092】
また、上記した説明では、固形製剤5の施工から所定期間経過時に、薬剤を再施工したが、例えば、これに限定されず、固形製剤5の施工直後に、薬剤を再施工することもできる。
【0093】
図2は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(布基礎形式の基礎構造物に適用され、断熱材が外断熱構造として配置される態様)を示す斜視図である。
【0094】
次に、本発明の防蟻構造の他の実施形態について、図2を参照して、説明する。なお、上記した各部に対応する部材については、以降の各図面において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0095】
図2において、この防蟻構造1は、布基礎33および打設コンクリート32とを備える布基礎形式の基礎構造部に適用されている。
【0096】
布基礎33は、上方に延び、厚肉の平板状に形成されている。また、打設コンクリート32は、厚肉の平板状に形成され、布基礎33の両側面に、布基礎33から水平方向に延びるように配置されている。
【0097】
また、この防蟻構造1では、布基礎33の外側において、布基礎33と対向して断熱材10が配置されている。
【0098】
なお、この防蟻構造1が適用される打設コンクリート32および布基礎33では、布基礎33が打設コンクリート32の端部の側面に、この側面から上下方向(下方については、図示せず)に延びるように配置されている。つまり、この布基礎33の外側面と、打設コンクリート32の端部の側面とが接触している。
【0099】
断熱材10は、上記した断熱材と同様の断熱材であって、打設コンクリート32の上に、布基礎33の外側面と接触するように形成され、奥行方向に沿って延びる、厚肉の平板状に形成されている。より具体的には、断熱材10は、打設コンクリート32の端部の上面に形成される固形製剤5の上側であって、管6の上部を被覆するように形成されている。
【0100】
また、固形製剤5は、上下方向において、打設コンクリート32と断熱材10との間に、施工されている。より具体的には、固形製剤5は、打設コンクリート32の上において、管6、断熱材10および後述する化粧モルタル19の下側に、断面視略矩形状に形成されている。
【0101】
管6は、その上部が断熱材10と接触している。これにより、通路7が、断熱材10と隣接配置されている。
【0102】
注入管9は、上方に向かって断熱材10を貫通するように延び、断熱材10を貫通した後、外側に向かって屈曲し、注入管9の上部の口部(端部)が、次に述べる化粧モルタル19よりも外側に配置される断面視略L字状に形成されている。なお、図2の点線で示すように、注入管9の上部の口部と、化粧モルタル19の外側面とが同一平面上(面一)または化粧モルタル19より外に出ないよう配置されるように、注入管9を形成することもできる。
【0103】
また、1点鎖線で示すように、注入管9を、上方に向かって断熱材10の上下方向途中を貫通するように延び、その後、外側に向かって屈曲して化粧モルタル19を貫通して、図示しない地盤(地面)に至り、その後、さらに上方に向かって屈曲して、注入管9の口部が地盤から突出するように形成することもできる。
【0104】
さらにまた、注入管9の設置時には、注入管9の上部を収納し、注入管9の使用時には、注入管9を出すこともできる。より具体的には、仮想線で示すように、予め注入管9の上部を、断熱材10と沿うように配置し、これにより、注入管9の上部を収納する。その後、再施工(使用)時において、注入管9の上部を、注入管9の下部を軸心として、仮想線で示す矢印に沿う水平方向に、約90度回転させて、注入管9の上部を断熱材10と直交させるように配置する。これにより、注入管9の端部を断熱材10から出す。なお、再施工(使用)後には、上記と同様にして、再び注入管9を収納することもできる。
【0105】
また、断熱材10の外側には、化粧モルタル19が設けられている。
【0106】
化粧モルタル19は、断熱材10の外側面を被覆するように、平板状に形成されている。また、化粧モルタル19は、その下端部が、固形製剤5と接触している。
【0107】
次に、この防蟻構造1を用いた防蟻方法について説明する。
【0108】
まず、この方法では、固形製剤5を、通路7が形成されるように施工する。
【0109】
固形製剤5を通路7が形成されるように施工するには、上記と同様の混練物を調製し、この混練物を、打設コンクリート32の上面に塗布、散布または吹付けして、次いで、管6を設置する。
【0110】
管6を設置するには、例えば、施工された混練物の上面に、管6を載置する。
【0111】
また、この方法では、管6および注入管9の外形形状に対応する部分が切り欠かれた断熱材10を用意して、次いで、布基礎33の外側面と接触するように、かつ、管6の上部を被覆するように、断熱材10を上方から配置する。その後、注入管9を断熱材10に貫通させて、注入管9を管6に接続する。
【0112】
なお、管6および断熱材10の配置(設置)によって、混練物は、管6および断熱材10により上方から押し付けられ、断熱材10の底面および管6の下部の形状に対応するように、変形される。つまり、断熱材10に接触する部分が、平面状に形成され、管6の下部に接触する部分が、凹面状に形成される。
【0113】
次いで、施工された混練物を硬化させる。
【0114】
その後、化粧モルタル19を、断熱材10の外側面で、かつ、固形製剤5の上側に、公知の方法で形成する。
【0115】
次いで、この方法では、固形製剤5の施工から、所定期間経過した時に、薬剤を再施工する。
【0116】
再施工は、薬剤を注入管9から注入し、通路7に供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布するとともに、断熱材10にも散布する。これによって、通路7から供給される薬剤が、固形製剤5および断熱材10のいずれにも浸透される。
【0117】
そして、この防蟻構造1および防蟻方法によれば、打設コンクリート32と断熱材10との間に、固形製剤5が施工される。そのため、施工当初から、断熱材10にも、長期間にわたって持続的に防蟻効果を維持することができる。
【0118】
一方、再施工時には、通路7に薬剤を供給することにより、施工された固形製剤5および断熱材10の両方に薬剤を浸透させることができる。その結果、再施工時において、固形製剤5および断熱材10の両方に、簡易かつ確実に薬剤を散布するとともに、施工当初からの防蟻効果を再度維持することができる。
【0119】
一般に、断熱材10についても、木製の土台20と同様に、シロアリによって食害されることがある。しかるに、予め防蟻成分を断熱材10の形成材料とともに配合して発泡形成された断熱材10では、発泡によってその体積が増加することから、断熱材10全体における防蟻成分の濃度が顕著に希薄となる。そのため、防蟻成分が予め配合された断熱材10では、防蟻効果が十分でない場合がある。
【0120】
これに対し、上記した防蟻構造1および防蟻方法では、再施工時において、既に発泡形成された断熱材10に薬剤を改めて処理させるので、十分な防蟻効果を確保することができる。そのため、断熱材10に対するシロアリの食害を、十分に防止することができる。
【0121】
また、上記した説明では、第1基礎として、打設コンクリート32を例示したが、例えば、土間や地盤面であってもよい。
【0122】
また、上記した説明では、管6を1本設けたが、例えば、図2の仮想線で示すように、管6と上下方向において間隔を隔てて対向配置される上管22を、さらに設けることもできる。上管22は、管6と同様の形状に形成されている。
【0123】
このように2本の管(管6および上管22)、すなわち、2本の通路7を設けることにより、再施工時において、薬剤を断熱材10全体、とりわけ、断熱材10の上下方向にわたって十分に浸透させて、断熱材10の防蟻効果を、より一層確実に維持でき、あるいは、向上させることができる。
【0124】
なお、上記した図2における説明では、化粧モルタル19の下端部を固形製剤5と接触させたが、例えば、図示しないが、化粧モルタル19の下端部を固形製剤5と上方に間隔を隔てて配置することができる。この場合には、シロアリの食害から防止するために、化粧モルタル19の下端部から露出する断熱材10の外側面に、薬剤を塗布することができる。
【0125】
図3は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(布基礎形式の基礎構造物に適用され、断熱材が内断熱構造として配置される態様)を示す斜視図である。
【0126】
なお、図3は、布基礎33の内側面から内側に延びる打設コンクリート32を現し、布基礎33の外側面から外側に延びる打設コンクリート32を省略している。
【0127】
上記した説明では、断熱材10を外断熱構造として配置したが、これに限定されず、例えば、図3に示すように、断熱材10を布基礎33の内側に配置する内断熱構造として配置することもできる。
【0128】
この防蟻構造1では、固形製剤5は、布基礎33の内側面と打設コンクリート32の上面とに接触するように、断面視略三角形状に形成されている。
【0129】
また、防蟻構造1は、布基礎33の内側面に沿って配置される第1断熱材(断熱材)10と、打設コンクリート32の上面に沿って配置される第2断熱材35とを備えている。
【0130】
第1断熱材10は、打設コンクリート32の上面と間隔を隔てて配置されている。具体的には、第1断熱材10の下面における内側端部が、第2断熱材35の上面に載置されている。つまり、第1断熱材10は、打設コンクリート32の上面と、第2断熱材35の厚みと同一厚みの間隔を隔てて配置されている。なお、第1断熱材10の下部には、後述する注入管9の上部が埋設されている。
【0131】
第2断熱材35は、布基礎33の内側面と固形製剤5が充填される間隔を隔てて配置されている。すなわち、第2断熱材35では、その上面における外側端部に、第1断熱材10の下面における内側端部が載置されている。
【0132】
第1断熱材10の厚みは、例えば、5〜100mm、好ましくは、10〜50mmである。第2断熱材35の厚みは、例えば、5〜100mm、好ましくは、10〜50mmである。また、第2断熱材35の外側端面と、布基礎33の内側面との間の間隔は、例えば、5〜100mm、好ましくは、5〜50mmである。
【0133】
これにより、第1断熱材10の下面における外側端部から厚み方向途中までの部分と、第2断熱材35の外側端面と、固形製剤5の上面とにより画成される空間が、通路7として形成される。
【0134】
通路7は、奥行方向に延びる断面略三角形状に形成されている。また、通路7の奥行方向途中には、注入管9が接続されており、注入管9の内部空間と、通路7とが連通している。
【0135】
具体的には、注入管9は、例えば、3方管であって、一方側端部である第1口部37と、第1口部37に連続する直管から分岐される分岐管の他方側端部である1対の第2口部38とを備える、略T字パイプ(チューブ)状に形成されている。
【0136】
すなわち、注入管9は、第1口部37が上方斜め内側に向かって開放され、第2口部38が奥行方向に向かって開放されるように配置されている。つまり、注入管9は、第1口部37が第1断熱材10から突出し、第2口部38が、通路7の内部空間に臨むように、配置されている。
【0137】
注入管9の材料、内径および厚みは、図2に示す注入管9と同様である。
【0138】
次に、この防蟻構造1を用いた防蟻方法について説明する。
【0139】
まず、この方法では、固形製剤5を施工する。固形製剤5を施工するには、上記と同様の混練物を上記した形状に施工し、続いて、その混練物を硬化させる。
【0140】
また、第2断熱材35を、布基礎33の内側面と固形製剤5が施工される間隔を隔てて、打設コンクリート32の上面に沿って配置する。なお、第2断熱材35を、必要により、図示しない接着剤層を介して打設コンクリート32の上に配置する。
【0141】
次いで、注入管9を設置する。具体的には、第2口部38の外周壁の下部が、施工された固形製剤5の上面と第2断熱材35の外側端面とに接触するように、注入管9を載置する。
【0142】
次いで、第1断熱材10を、打設コンクリート32の上面と間隔を隔てて、布基礎33の内側面に沿って配置する。
【0143】
具体的には、まず、注入管9の上部の外形形状に対応する部分が切り欠かれた第1断熱材10を用意し、次いで、第1断熱材10を、その下面における内側端部が第2断熱材35の上面における外側端部に載置されるように、上方から配置する。このとき、第1口部37を第1断熱材10の切り欠き部分に貫通させる。なお、第1断熱材10を、必要により、図示しない接着剤層を介して布基礎33の内側に配置する。
【0144】
次いで、この方法では、固形製剤5の施工から、所定期間経過した時に、薬剤を再施工する。
【0145】
再施工は、薬剤を注入管9から注入し、通路7に供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布するとともに、第1断熱材10および第2断熱材35にも散布する。これによって、通路7から供給される薬剤が、固形製剤5と第1断熱材10および第2断熱材35のすべてに浸透される。
【0146】
そして、この防蟻構造1および防蟻方法によれば、第1断熱材10および第2断熱材35により通路7が形成される。そのため、簡単に通路7を形成しながら、第1断熱材10および第2断熱材35を内断熱構造で配置して、固形製剤5と第1断熱材10および第2断熱材35とに、長期間にわたって持続的に防蟻効果を付与することができる。
【0147】
また、上記した説明において、第1断熱材10を、外断熱構造(図2参照)あるいは内断熱構造(図3参照)として配置したが、例えば、図示しないが、第1断熱材10を、布基礎33の外側および内側の両側に配置する、両側断熱構造として配置することもできる。
【0148】
また、上記した説明では、第1断熱材10および第2断熱材35の両方を用いて通路7を形成したが、これに限定されず、例えば、図示しないが、通路7が形成されるように凹状に予め形成された第1断熱材10、より具体的には、下部が断面視略円状、断面視略矩形状または断面視略三角形状に切り欠かれた第1断熱材10を用いることもできる。
【0149】
このように第1断熱材10のみを用いて通路7を形成すれば、通路7の形成のために第2断熱材35を用いる必要がないので、簡単に通路7を形成することができる。
【0150】
なお、上記した図3における説明では、第2断熱材35を、打設コンクリート32の上面のほぼ全面(固形製剤5が形成される部分を除く全面)に配置したが、例えば、図3の仮想線で示すように、打設コンクリート32の上面における内側端部(固形製剤5が形成される部分を除く部分)のみに配置することもできる。すなわち、打設コンクリート32は、その内側端部において第2断熱材35の下面における外側端部を載置できればよく、第2断熱材35の幅(内外方向長さ)が、打設コンクリート32の幅に比べて過度に短く設定されている。
【0151】
また、上記した図3における説明では、注入管9を設けたが、例えば、図3において図示しないが、注入管9を設けず、薬剤を通路7に供給することができる。すなわち、第1断熱材10に切り欠き部分または直管に対応する貫通部分を形成して、薬剤を、これら切り欠き部分または貫通部分から薬剤を注入する。
【0152】
図4は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がコイル状部材である態様)を示す斜視図、図5は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がスパイラル状部材である態様)を示す斜視図、図6は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が複数のブロックである態様)を示す斜視図、図7は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材がメッシュである態様)を示す斜視図、図8は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が海綿状部材である態様)を示す斜視図、図9は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が断面略コ字状部材である態様)を示す斜視図、図10は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(通路形成部材が、スリットが形成される丸筒部材である態様)を示す斜視図である。なお、図4〜図10では、通路形成部材の形状把握を容易にするために、通路形成部材を実線で現し、固形製剤5を仮想線で現し、注入管9を省略している。
【0153】
上記した説明では、通路形成部材として管6を例示して説明したが、通路形成部材は、薬剤を固形製剤5に散布するための通路7を形成できるもの、つまり、混練物の施工において、通路7を確保できるものであれば限定されない。通路形成部材としては、例えば、図4〜図10に示すように、コイル状部材11(図4)、スパイラル状部材12(図5)、複数のブロック13(図6)、メッシュ14(図7)、海綿状部材24(図8)、断面略コ字状部材15(図9)、または、スリット17が形成される丸筒部材16(図10)を挙げることができる。また、図示しないが、含液材料、水溶性または流動性材料、または、除去部材を挙げることもできる。
【0154】
図4において、コイル状部材11は、例えば、線材が奥行方向に延びる螺旋(スパイラル)状に巻回されるように形成されている。
【0155】
コイル状部材11の寸法は、コイル状部材11の内径が、例えば、1.5〜40mm、好ましくは、5〜20mmであり、線材の直径が、例えば、0.1〜5mm、好ましくは、0.2〜1mmであり、奥行方向における各線材間の間隔(ピッチ幅)が、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.1〜3mmである。
【0156】
このように通路形成部材がコイル状部材11であると、奥行方向に隣接する各線材間に、奥行方向に直交する方向すべてにわたって隙間が連続して形成されている。そのため、再施工時において、通路7に供給された薬剤をその隙間から、奥行方向に直交する方向にわたって均一に散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0157】
図5において、スパイラル状部材12は、帯状部材が奥行方向に延びる螺旋(スパイラル)状に巻回されるように形成されている。
【0158】
スパイラル状部材12の寸法は、スパイラル状部材12の内径が、例えば、1.5〜20mm、好ましくは、5〜20mmであり、帯状部材の幅が、例えば、3〜20mm、好ましくは、10〜15mmであり、帯状部材の厚みが、例えば、0.5〜3mm、好ましくは、1〜2mmであり、奥行方向における各帯状部材間の距離(ピッチ幅)が、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.1〜3mmである。
【0159】
このように通路形成部材がスパイラル状部材12であると、奥行方向に隣接する各帯状部材間に、奥行方向に直交する方向すべてにわたって隙間が連続して形成されている。そのため、再施工時において、通路7に供給された薬剤をその隙間から、奥行方向に直交する方向にわたって均一に散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0160】
図6において、複数のブロック13は、固形製剤5において隙間をもって充填されており、これにより、通路7が、各ブロック13間の隙間として形成されている。
【0161】
各ブロック13の形状は、例えば、中心から外方に向かう複数(4本)の脚部を備える、テトラポッド状に形成されている。
【0162】
各ブロック13の寸法は、例えば、脚部の長さが、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.2〜5mmであり、脚部の直径(幅または厚み)が、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.2〜5mmであり、各脚部の先端部間の距離が、例えば、5mm以下、好ましくは、2mm以下である。
【0163】
このように通路形成部材が複数のブロック13であると、奥行方向に直交する方向すべてにわたって隙間が連続して形成されている。そのため、再施工時において、通路7に供給された薬剤をその隙間から、奥行方向に直交する方向にわたって均一に散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0164】
なお、図6では、各ブロック13の形状をテトラポッド状として説明したが、固形製剤5において隙間をもって充填されれば特に限定されず、例えば、工業用充填塔に用いられる充填物などが挙げられ、より具体的には、ラッシヒリング、レッシングリング、マクマホンパッキン、ディクソンパッキン、ベルルサドル、インタロックスサドル、テラレット、ポールリング、フレキシリング、カスケードミニリングなどが挙げられる。また、ブロック13としては、例えば、上記した砂類、廃物の破砕物(例えば、瓦礫など)なども挙げられる。さらに、例えば、軽石(より具体的には、カガライトシリーズ(例えば、0号、1号、2号、2M号、3M号、4M号など。以上カガライト工業(株)製。)などが挙げられる。軽石としては、好ましくは、カガライト0号、カガライト1号が挙げられる。
【0165】
図7において、メッシュ14は、奥行方向に延びる平板シート状に形成され、奥行方向に沿って配置されている。また、このメッシュ14は、べた基礎2の上面および基礎本体3の外側面に対して斜めに配置されている。これにより、通路7が、メッシュ14の下方、すなわち、下方斜め内側(図2における右側。)に形成されている。なお、このメッシュ14を、上記した樹脂または金属以外に、麻、綿、絹などの天然繊維から形成することもできる。
【0166】
なお、メッシュ14の下側には、必要により、複数の短管21が設けられている。
【0167】
複数の短管21は、メッシュ14を下方から支持して、通路7を確実に形成するための支持部材であって、奥行方向に沿って間隔を隔てて(断続的に)配置されている。
【0168】
メッシュ14の寸法は、開口径が、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、1〜3mmであり、線径が、例えば、0.1〜5mm、好ましくは、0.2〜2mmである。また、必要により配置される複数の短管21の寸法は、各短管21の長さが、例えば、3〜500mm、好ましくは、10〜200mmであり、各短管21間の間隔が、例えば、1〜200mm、好ましくは、10〜100mmであり、内径および厚みは、上記した管6と同様である。
【0169】
このように通路形成部材がメッシュ14であると、再施工時において、通路7に供給された薬剤を、奥行方向に直交する方向(メッシュ14の隙間が形成される上方を含む)すべてにわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0170】
なお、図7では、通路形成部材としてのメッシュ14を、平板シート状として形成したが、例えば、図示しないが、メッシュ14をリング状に巻回させて、略丸筒状に形成することもできる。なお、このパイプ状のメッシュ14の内径は、例えば、5〜50mm、好ましくは、5〜20mmである。
【0171】
図8において、海綿状部材24は、内部に連通孔を有しており、乾燥ヘチマなどの乾燥した海綿状植物である。海綿状部材24は、その連通孔の体積割合が、例えば、90〜約100体積%である。
【0172】
なお、図8では、海綿状部材24を海綿状植物として説明したが、例えば、図示しないが、合成樹脂発泡体からなる海綿(スポンジ)などから形成することもできる。
【0173】
このように通路形成部材が海綿状部材24であると、奥行方向に直交する方向すべてにわたって連通孔が形成されている。そのため、再施工時において、通路7に供給された薬剤をその連通孔から、奥行方向に直交する方向にわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0174】
図9において、断面略コ字状部材15は、角筒部材であって、この角筒部材には、角筒部材の長手方向に沿って、外周壁の下部が開口される開口部34が形成されている。
【0175】
より具体的には、断面略コ字状部材15は、下部が開放される断面視略コ字状に形成され、奥行方向に沿って配置されている。断面略コ字状部材15の寸法は、互いに対向する両側壁間の間隔(開口部34の長さ)が、例えば、5〜50mm、好ましくは、5〜20mmであり、互いに対向する両側壁の上下方向長さが、例えば、5〜30mm、好ましくは、5〜10mmであり、上壁および両側壁の厚みが、例えば、0.5〜5mm、好ましくは、0.5〜3mmである。
【0176】
このように通路形成部材が断面略コ字状部材15であると、通路7に供給された薬剤を、奥行方向に連続する隙間として形成される開口部34から、奥行方向にわたって均一に散布して、薬剤を固形製剤5に奥行方向にわたって均一に浸透させることができる。
【0177】
なお、図9では、通路形成部材を断面略コ字状部材15として説明したが、例えば、図示しないが、下壁の途中が奥行方向に沿ってスリット状に切り欠かれた断面視略矩形枠状に形成することもできる。
【0178】
図10において、丸筒部材16には、丸筒部材16の長手方向に沿って、外周壁の下部が開口される開口部が形成されている。より具体的には、丸筒部材16には、開口部としてのスリット17が下部に形成される断面視略C字状に形成されており、この丸筒部材16は、奥行方向に沿って配置されている。また、スリット17は、奥行方向に連続して形成されている。丸筒部材16の寸法は、スリット17の幅が、例えば、0.1〜50mm、好ましくは、1〜10mmであり、丸筒部材16の内径および厚みは、上記した管6と同様である。
【0179】
このように通路形成部材が丸筒部材16であると、通路7に供給された薬剤を、奥行方向に連続するスリット17から、奥行方向にわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に奥行方向にわたって均一に浸透させることができる。
【0180】
なお、上記した図9および図10における説明では、断面略コ字状部材15および丸筒部材16の開口部を、外周壁の下部に形成したが、例えば、図示しないが、側部(右側部または左側部)に形成することもできる。
【0181】
また、上記した図9および図10における断面略コ字状部材15および丸筒部材16には、必要により、点線で示すように、その上壁および側壁に、厚み方向に貫通する穴8を複数形成することもできる。このような穴8を形成することにより、再施工における薬剤を、開口部34またはスリット17と、穴8とから、断面略コ字状部材15または丸筒部材16の周方向にわたって、均一に散布することができる。
【0182】
また、図示しないが、例えば、通路形成部材を含液材料から形成することもできる。
【0183】
含液材料は、液体と固化成分とを含有する材料であって、含液材料が設置されて、液体が揮発して、固化成分が固化することにより、通路7が形成される材料である。含液材料が、奥行方向に延びるように、形成されている。
【0184】
液体としては、例えば、水、例えば、エタノールなどの有機溶媒が挙げられ、好ましくは、水が挙げられる。
【0185】
固化成分としては、例えば、澱粉などの天然高分子、PVA、アルギン酸ナトリウムなどの合成高分子などが挙げられる。
【0186】
含液材料の固化成分率(固化前)は、例えば、3重量%以上、好ましくは、5重量%以上、通常、50重量%以下である。
【0187】
このような含液材料としては、具体的には、澱粉糊(例えば、洗濯糊、スティック糊など)、PVAゲル(含水ゲル)などが挙げられる。
【0188】
このような含液材料を設置するには、まず、含液材料をべた基礎2および基礎本体3の角に沿って配置する。次いで、固形製剤5を施工し、所定期間放置することにより、含液材料の液体が蒸発して、固化成分が固化する。これにより、通路7が形成される。
【0189】
また、まず、固形製剤5をべた基礎2および基礎本体3との角に沿って施工し、次いで、含液材料を設置し、その後、さらに固形製剤5を施工して、次いで、固化成分を固化させることにより、通路7を形成することもできる。なお、この設置方法において、さらに施工される固形製剤5は、含液材料の表面のみが固化した状態で、施工されてもよい。
【0190】
このように通路形成部材が含液材料であると、固形製剤5の施工当初には、含液材料の形状を確保できる一方、所定期間経過後には、液体が蒸発して、含液材料の体積が顕著に減少する(またはほとんどなくなる)。そうすると、通路7が、乾燥した固化成分により、奥行方向に延びるように形成される。
【0191】
そして、再施工時には、通路7に供給された薬剤を、その通路7から、奥行方向に直交する方向すべてにわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0192】
また、図示しないが、例えば、通路形成部材を水溶性または流動性材料から形成することもできる。
【0193】
水溶性または流動性材料は、水溶性または流動性材料が設置されて、水や薬剤により溶解されるか、あるいは、水や薬剤により流動され押し出されて、洗い流され、これにより、通路7が形成される材料である。水溶性または流動性材料は、奥行方向に延びるように載置されている。水溶性または流動性材料が水溶性である場合には、その溶解度は、例えば、5g/水100g以上、好ましくは、10g/水100g以上である。
【0194】
このような水溶性または流動性材料としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)などの無機材料、例えば、ショ糖(サッカロース)(固形製剤5が粉剤または粒剤の場合。)、クエン酸ナトリウム(固形製剤5が粉剤または粒剤の場合。)、PVAゲル、澱粉糊などの有機材料などが挙げられる。
【0195】
このような水溶性または流動性材料を設置するには、まず、水溶性または流動性材料を、べた基礎2および基礎本体3との角に沿って連続するように散布する。次いで、固形製剤5をさらに施工し、次いで、散布された水溶性または流動性材料に、給水管の口部を当接(接続)させた後、給水管に水または薬剤を注入する。これにより、通路7が形成される。
【0196】
また、まず、固形製剤5をべた基礎2および基礎本体3との角に沿って施工し、次いで、水溶性または流動性材料を設置し、その後、さらに固形製剤5を施工して、次いで、水または薬剤を注入することにより、通路7を形成することもできる。
【0197】
このように通路形成部材が水溶性または流動性材料であると、固形製剤5の施工当初には、散布された水溶性または流動性材料の配置を確保できる一方、再施工時には、水または薬剤を注入させることにより、水溶性または流動性材料が水により洗い流される。この水溶性または流動性材料の洗浄により、水溶性または流動性材料の配置に対応する、奥行方向に延びる通路7が形成される。
【0198】
そして、再施工時において、水溶性または流動性材料が洗い流された後に、通路7に供給された薬剤を、通路7から、奥行方向に直交する方向すべてにわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0199】
また、図示しないが、例えば、通路形成部材を除去部材から形成することもできる。
【0200】
除去部材は、奥行方向に延びるように配置されている。除去部材は、丸棒状または角棒状に形成されている。除去部材は、例えば、ひもなどの繊維材料、例えば、竹、木材などの木質材料、例えば、プラスティックなどの樹脂材料から形成されている。
【0201】
このような除去部材を設置するには、まず、除去部材を、べた基礎2および基礎本体3との角に沿って連続するように配置する。次いで、固形製剤5を施工して、固形製剤5が固化する前(例えば、直前)、または、固化した後(例えば、直後)に、除去部材を固形製剤5から引き抜くことにより、除去部材を除去する。これにより、通路7が形成される。
【0202】
また、まず、固形製剤5をべた基礎2および基礎本体3との角に沿って施工し、次いで、除去部材を設置し、その後、さらに固形製剤5を施工して、次いで、除去部材を除去することにより、通路7を形成することもできる。
【0203】
このように通路形成部材が除去部材であると、固形製剤5の施工当初には、配置された除去部材の形状を確保できる一方、固形製剤5の固化前または固化後に、除去部材が除去されているので、除去部材の形状に対応する、奥行方向に延びる通路7が形成される。
【0204】
そして、再施工時において、通路7に供給された薬剤を、通路7から、奥行方向に直交する方向すべてにわたって均一に薬剤を散布して、薬剤を固形製剤5に均一に浸透させることができる。
【0205】
そして、図4〜図10に示すように、通路形成部材が、コイル状部材11、スパイラル状部材12、複数のブロック13、メッシュ14、海綿状部材24、断面略コ字状部材15または丸筒部材16であると、あるいは、図示しない含液材料、水溶性または流動性材料、または、除去部材であると、再施工時において、薬剤を、通路形成部材により形成される比較的広い供給口(隙間)から、効率的に散布することができる。
【0206】
とりわけ、図4〜図8に示すように、通路形成部材が、コイル状部材11、スパイラル状部材12、複数のブロック13、メッシュ14または海綿状部材24であると、あるいは、図示しない含液材料、水溶性または流動性材料、または、除去部材であると、再施工時においては、通路7の供給口(隙間)が、奥行方向に直交する方向すべてにわたって形成されているので、薬剤をより一層効率的に散布することができる。
【0207】
また、図9および図10に示すように、通路形成部材が、断面略コ字状部材15または丸筒部材16であると、上壁および側壁が奥行方向にわたって連続しているので、通路形成部材が確実に補強されるため、施工当初における混練物の施工において、通路形成部材の形状を維持して、通路7を確実に形成することができる。
【0208】
図11は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(固形製剤が打設コンクリートの下に施工される態様)を示す斜視図である。
【0209】
上記した図2における説明では、固形製剤5を、打設コンクリート32の上に施工したが、固形製剤5の配置はこれに限定されず、例えば、図11に示すように、固形製剤5を打設コンクリート32の下に施工することもできる。
【0210】
図11において、この防蟻構造1は、布基礎形式の基礎構造部に適用されており、固形製剤5は、打設コンクリート32の下面に配置され、平板シート状に形成されて、防蟻シートとされている。
【0211】
管6は、打設コンクリート32の端部の下面に設けられており、より具体的には、固形製剤5と打設コンクリート32との間に介在されるように配置されている。
【0212】
注入管9は、図11の実線で示すように、上方に延び、上部が打設コンクリート32から突出するように形成されている。
【0213】
一般に、このような防蟻構造1では、経年劣化や環境変化などによって、打設コンクリート32と布基礎33との間に、隙間23が生じる場合がある。そのような場合には、通路7を備えない防蟻構造1では、この隙間23から布基礎33の外側面に沿って上方に延びる蟻道が形成されるおそれがある。
【0214】
しかし、この防蟻構造1では、管6により形成される通路7を備えているので、隙間が発生した場合でも、薬剤を通路7に供給して再施工することにより、隙間23や固形製剤5に、薬剤を散布することができる。そのため、隙間23が形成された後でも、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初からの防蟻効果を再度維持することができる。
【0215】
なお、固形製剤5は、樹脂に防蟻成分が分散された防湿防蟻シートであってもよく、あるいは、樹脂シート(樹脂層)の上に防蟻成分(防蟻層)が積層された防湿防蟻シートであってもよい。
【0216】
また、例えば、固形製剤5(防湿防蟻シート)の端部を屈曲させることもできる。
【0217】
より具体的には、固形製剤5の配置では、まず、打設コンクリート32より水平方向にやや大きい防湿防蟻シート(固形製剤5および防湿シート)を用意し、これを、その端部が布基礎33の外側面と接触するように、断面視略L字状に配置した後、布基礎33と接触している端部を、外側に向かって屈曲するように、折り畳む。これによって、防湿防蟻シートを、その端部が屈曲するように、配置することができる。
【0218】
その後、管6を、防湿防蟻シートの折り畳まれた部分の上に設置する。
【0219】
この端部が屈曲された防湿防蟻シートおよび管6を設置することにより、管6を、防湿防蟻シートの端部の剥がれ(捲れ)を防止するための重石として利用することができる。
【0220】
また、上記した説明では、注入管9を、上方に延びる直管状に形成したが、例えば、図11の仮想線(2点鎖線)で示すように、水平方向内側に延び、その後、上方に向かって屈曲する断面視略L字状に形成することができる。つまり、注入管9の口部を、建物内に配置することができる。
【0221】
また、図11の1点鎖線で示すように、注入管9を、水平方向内側に延び、その後、上方に向かって一旦屈曲した後、さらに、水平方向外側に延びるように形成することにより、口部が、布基礎33の外側面から突出するように形成することもできる。つまり、注入管9の口部を、建物外に配置することができる。このように注入管9の口部を配置すれば、再施工時には、建物の外部から施工作業ができ、建物の居住者への影響を確実に低減させることができる。
【0222】
また、上記した説明では、注入管9には、口部を1つ形成するように形成したが、例えば、図示しないが、口部を2つ有する略U字状に形成し、その底部を管6に接続させることもできる。
【0223】
このように注入管9を略U字状に形成すると、再施工時において、薬剤を一方の口部から供給したときに、薬剤が他方の口部から溢れた場合には、薬剤が固形製剤5全体に散布されず、薬剤が過度に供給されていることを確認することができる。そのため、再施工時において、薬剤の供給状態を観察しながら、薬剤を固形製剤5全体に、確実に散布することができる。
【0224】
図12は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(線状部材に適用され、通路が連続する態様)を示す断面図、図13は、本発明の防蟻構造の他の実施形態(線状部材に適用され、径方向に間隔を隔てて配置される態様)を示す断面図である。
【0225】
上記した説明では、防蟻構造1を、建物の基礎構造部(べた基礎形式または布基礎形式)に適用したが、例えば、図12および図13に示すように、線状部材26に適用することもできる。
【0226】
図12において、この防蟻構造1では、固形製剤5が線状部材26の周囲に施工されている。
【0227】
線状部材26としては、例えば、電線ケーブル、光ケーブルなどのケーブルが挙げられる。
【0228】
固形製剤5は、線状部材26を被覆し、線状部材26を囲むように配置されている。つまり、固形製剤5は、線状部材26の周方向において、連続するように形成されている。
【0229】
また、線状部材26と固形製剤5との間には、管6が介在されている。管6は、線状部材26を被覆するように配置されており、より具体的には、径方向において管6と間隔(通路7)を隔てて配置され、かつ、固形製剤5の内周面と接触するように配置されている。
【0230】
この防蟻構造1を用いて線状部材26を防蟻するには、まず、管6を、線状部材26に被せ、次いで、固形製剤5を施工する。
【0231】
その後、再施工時において、薬剤を通路7に供給することにより、薬剤を固形製剤5に散布する。
【0232】
そして、このように防蟻構造1を線状部材26に適用すると、線状部材26において、長期間にわたって防蟻効果の持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布して、施工当初の防蟻効果を再度維持することができる。
【0233】
とりわけ、管6が、線状部材26の周方向において連続しているため、線状部材26を被覆する固形製剤5に周方向にわたって均一に薬剤を散布することができる。
【0234】
なお、固形製剤5と管6との間には、図示しないが、緩衝用のメッシュを介在させることもできる。
【0235】
また、上記した説明では、管6を、線状部材26を被覆するように設けたが、例えば、図13に示すように、管6を、線状部材26の周方向において、間隔を隔てて複数(4本)配置することもできる。
【0236】
各管6は、線状部材26の周囲に配置されており、線状部材26の延びる方向に沿って配置されている。すなわち、各管6は、線状部材26の径方向において線状部材26と隣接配置されている。
【0237】
また、固形製剤5は、周方向における各管6の間において、線状部材26の外周面と接触している。
【0238】
このように管6を、周方向において、間隔を隔てて複数配置すれば、複数の管6と固形製剤5との接触面積をより広く確保できるので、薬剤を固形製剤5に対して十分に散布することができる。そのため、固形製剤5の防蟻効果を、より一層確実に維持でき、あるいは、向上させることができる。
【0239】
なお、上記した説明では、固形製剤5を線状部材26の外周面と接触させたが、例えば、図13の仮想線で示すように、緩衝用のメッシュ34を、固形製剤5と線状部材26との間に介在させることもできる。
【0240】
メッシュ34は、各管6から露出する線状部材26の表面を被覆しており、より具体的には、線状部材26の周方向において、各管6の間に断続的に配置されている。このようにメッシュ34を配置すれば、固形製剤5と線状部材26とが接触しないので、固形製剤5の固化によっても、施工後における線状部材26(電線ケーブルなど)の点検を容易にすることができる。
【0241】
また、上記した説明では、防蟻構造1を、線状部材26に適用したが、例えば、図12および図13の点線で示すように、筒状部材27に適用することもできる。
【0242】
筒状部材27としては、例えば、ガス管、水道管などの管などが挙げられる。
【0243】
なお、上記した図12および図13の説明において、通路形成部材として、管6を例示して説明したが、通路形成部材としては、例えば、上記したコイル状部材11(図4参照)、スパイラル状部材12(図5参照)、複数のブロック13(図6参照)、メッシュ14(図7参照)、海綿状部材24(図8参照)、断面略コ字状部材15(図9参照)、スリット17が形成される丸筒部材16(図10参照)、含液材料、水溶性または流動性材料、または、除去部材なども挙げられる。
【0244】
さらにまた、本発明の防蟻構造は、通路7が、固形製剤5が施工される箇所に配置されれば、これに限定されず、例えば、通常の建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、地下埋設物、例えば、地盤面なども含まれる。
【0245】
また、上記した図1および図4〜図10における説明では、管6を固形製剤5に埋設させたが、例えば、図示しないが、管6を固形製剤5と接触するように、固形製剤5の上面に設けることもできる。
【0246】
また、上記した説明では、通路形成部材の材料として樹脂や金属などを例示したが、これに代えて、例えば、生分解性樹脂などの生分解性材料を挙げることもできる。
【0247】
このような生分解性材料は、施工当初における混練物の施工時には、管6の形状を維持できる一方、所定期間経過後に混練物が硬化されたときには、生分解材料が生分解されて管6の形状がなくなっても、通路7を確実に確保することができる。そのため、環境への負荷を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の防蟻構造および防蟻方法は、例えば、建物の基礎構造部、あるいは、電線ケーブル、光ケーブルなどのケーブル、または、ガス管、水道管などの管を防蟻するための防蟻構造および防蟻方法であって、長期間にわたって持続性および耐久性に優れながら、再施工時には、簡易かつ確実に薬剤を散布することのできる防蟻構造および防蟻方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0249】
1 防蟻構造
2 べた基礎
3 基礎本体
5 固形製剤
6 管
7 通路
8 穴
10 断熱材(第1断熱材)
13 ブロック
14 メッシュ
15 断面略コ字状部材
16 丸筒部材
17 スリット
26 線状部材
27 管状部材
32 打設コンクリート
33 布基礎
34 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工された固形製剤と、
前記固形製剤が施工された箇所に配置され、薬剤を前記固形製剤に散布するための通路と、
前記固形製剤に埋設され、前記通路を形成するための通路形成部材と
を備えていることを特徴とする、防蟻構造。
【請求項2】
水平方向に延びる第1基礎から上方に延びるように配置される第2基礎と接触するように、前記第1基礎に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、請求項1に記載の防蟻構造。
【請求項3】
前記固形製剤が、線状部材または管状部材の周囲に施工されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項4】
前記通路形成部材が、管であって、
前記管の外周壁には、厚み方向に貫通する穴が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項5】
前記通路形成部材が、複数のブロックであって、
前記通路が、複数の前記ブロックが隙間をもって充填されることにより、各前記ブロック間の隙間として形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項6】
前記通路形成部材が、メッシュであることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項7】
前記通路形成部材が、筒部材であって、
前記筒部材には、前記筒部材の長手方向に沿って、外周壁の一部が開口される開口部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項8】
前記通路形成部材が、液体と固化成分とを含有する含液材料であり、
前記含液材料が設置されて、前記液体が揮発して、前記固化成分が固化することにより、前記通路が形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項9】
前記通路形成部材が、水溶性または流動性材料からなり、
前記水溶性または流動性材料が設置されて、前記水溶性または流動性材料が水または薬剤により洗い流されることにより、前記通路が形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項10】
前記通路が、前記線状部材または前記管状部材を被覆するように設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の防蟻構造。
【請求項11】
前記通路が、前記線状部材または前記管状部材の周方向において、間隔を隔てて複数設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の防蟻構造。
【請求項12】
通路形成部材を設置する工程、
固形製剤を、前記通路形成部材を埋設して通路が形成されるように、施工する工程、および、
薬剤を前記通路に供給することにより、前記薬剤を前記固形製剤に散布する工程を備えていることを特徴とする、防蟻方法。
【請求項13】
さらに、固形製剤を固化させる工程、および、
前記通路を形成するための除去部材を除去する工程を備えていることを特徴とする、請求項12に記載の防蟻方法。
【請求項1】
施工された固形製剤と、
前記固形製剤が施工された箇所に配置され、薬剤を前記固形製剤に散布するための通路と、
前記固形製剤に埋設され、前記通路を形成するための通路形成部材と
を備えていることを特徴とする、防蟻構造。
【請求項2】
水平方向に延びる第1基礎から上方に延びるように配置される第2基礎と接触するように、前記第1基礎に、前記固形製剤が施工されていることを特徴とする、請求項1に記載の防蟻構造。
【請求項3】
前記固形製剤が、線状部材または管状部材の周囲に施工されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項4】
前記通路形成部材が、管であって、
前記管の外周壁には、厚み方向に貫通する穴が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項5】
前記通路形成部材が、複数のブロックであって、
前記通路が、複数の前記ブロックが隙間をもって充填されることにより、各前記ブロック間の隙間として形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項6】
前記通路形成部材が、メッシュであることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項7】
前記通路形成部材が、筒部材であって、
前記筒部材には、前記筒部材の長手方向に沿って、外周壁の一部が開口される開口部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項8】
前記通路形成部材が、液体と固化成分とを含有する含液材料であり、
前記含液材料が設置されて、前記液体が揮発して、前記固化成分が固化することにより、前記通路が形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項9】
前記通路形成部材が、水溶性または流動性材料からなり、
前記水溶性または流動性材料が設置されて、前記水溶性または流動性材料が水または薬剤により洗い流されることにより、前記通路が形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項10】
前記通路が、前記線状部材または前記管状部材を被覆するように設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の防蟻構造。
【請求項11】
前記通路が、前記線状部材または前記管状部材の周方向において、間隔を隔てて複数設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の防蟻構造。
【請求項12】
通路形成部材を設置する工程、
固形製剤を、前記通路形成部材を埋設して通路が形成されるように、施工する工程、および、
薬剤を前記通路に供給することにより、前記薬剤を前記固形製剤に散布する工程を備えていることを特徴とする、防蟻方法。
【請求項13】
さらに、固形製剤を固化させる工程、および、
前記通路を形成するための除去部材を除去する工程を備えていることを特徴とする、請求項12に記載の防蟻方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−229620(P2012−229620A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191309(P2012−191309)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【分割の表示】特願2007−336700(P2007−336700)の分割
【原出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【分割の表示】特願2007−336700(P2007−336700)の分割
【原出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
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