説明

防錆剤組成物

式(1)又は(2)で表される化合物及びその塩の少なくとも1種を有効成分とする防錆剤、これを用いた防錆方法、防錆性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、防錆剤、防錆方法、防錆性組成物に関する。
【背景技術】
ヒドロキシナフトエ酸ヒドラジド化合物は公知であり、例えばヒドロキシナフトエ酸ヒドラジド及びそれらを原料としたメチルイソブチルケトンのヒドラゾン化合物は、タイヤ等のゴムの発熱防止剤(例えば特許文献1,2参照)や天然ゴム又は合成ゴムの老化防止剤(例えば特許文献3参照)として知られている。しかし、これらヒドラジド化合物が金属の防錆効果を有することは知られていない。
[特許文献1] 特公平7−57828号公報
[特許文献2] 特開平11−292834号公報
[特許文献3] WO98/44040号公報
本発明の目的は過酷な環境下においても金属の防錆効果を発揮、維持し、特に銅、亜鉛、鉄金属及びそれらの合金の防錆において有効な防錆剤を提供することにある。
【発明の開示】
本発明は以下の発明に係る。
1.式(1)又は(2)で表される化合物及びその塩の少なくとも1種を有効成分とする防錆剤。

2.式(1)又は式(2)で表される化合物の塩が、アルカリ金属塩である上記1記載の防錆剤。
3.金属又は合金の表面に上記1又は2記載の防錆剤を被覆することを特徴とする金属又は合金の防錆方法。
4.樹脂100重量部に対して、上記1又は2記載の防錆剤を0.001〜10重量部含有してなる防錆性樹脂組成物。
5.樹脂が、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニール系樹脂、アルキド系樹脂、グアナミン系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素プラスチック系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フラン系樹脂、ケイ素系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、ポリテルペン系樹脂、及びそれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種である上記4記載の防錆性樹脂組成物。
6.樹脂がエポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びそれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種である上記4記載の防錆性樹脂組成物。
7.金属又は合金の表面に上記4〜6のいずれかに記載の防錆性樹脂組成物を被覆又は密着することを特徴とする金属又は合金の防錆方法。
8.上記4〜6のいずれかに記載の防錆性樹脂組成物を被覆してなる導体。
9.上記4〜6のいずれかに記載の防錆性樹脂組成物を含有する防錆塗料。
10.金属又は合金が、銅、亜鉛、鉄、及びそれらの少なくとも1種からなる金属又は合金である上記3又は7記載の防錆方法。
本発明においては、特定のヒドロキシナフトエ酸ヒドラジド類が金属及び合金の防錆剤として非常に有用であることを見出した。
本発明の防錆剤は、式(1)又は式(2)で表される化合物及びその塩の少なくとも1種を有効成分とする。

これら式(1)又は式(2)で表される化合物は、1種単独で又は併用することができる。また、これら式(1)又は式(2)で表される化合物は塩の形態であっても防錆効果を発揮することができる。
塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられ、式(1)又は式(2)で表される化合物と水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等の塩基とを混合することによって容易に得られる。これら塩基は、1種単独で、又は2種以上を使用することができる。式(1)又は式(2)で表される化合物を塩の形態とすることで、水溶液の状態で使用することができるので好ましい。
本発明の防錆剤は、金属又はその合金の表面を被覆することで防錆効果を発揮することができる。本発明の防錆剤によって防錆効果が得られる金属としては、防錆を必要とする金属であれば特に制限されないが、例えば銅、亜鉛、鉄などを挙げることができ、これら金属の1種以上を成分とする合金であってもよい。
本発明の防錆剤の処理は、該防錆剤を適当な溶媒に溶解させて溶液とし、銅、亜鉛、鉄等の金属又はそれらの合金のインゴット、チップ又は各種成型品の表面にスプレーやロールコーター等を用いて噴霧或いは塗布したり、また、溶液中にこれらを浸漬させる等の方法を採用することができる。
溶解させる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等の通常使用し得る有機溶媒及び水が挙げられ、これら溶媒の2種以上を併用してもよい。
溶液中の式(1)及び/又は(2)で表される化合物及びその塩類の使用濃度は適宜設定できるが、通常、合計量で、10ppm以上、好ましくは10〜10000ppm、更に好ましくは100〜1000ppmとすればよい。
防錆処理温度は適宜決定できるが、通常は0〜100℃、好ましくは室温から80℃程度がよい。
本発明の防錆剤の使用量としては、特に制限が無く、被処理物の表面を一様に被覆可能な量を使用すればよく、具体的には処理面積1m当たり0.01〜500g、好ましくは0.1〜50g程度が例示できる。
本発明の防錆剤を用いることで、銅、亜鉛、鉄等の金属又はそれらの合金を成型した成型品表面を処理すれば、塗装前の状態で長時間成型品を流通、保管させることができ、製造工程の合理化に寄与することができる。
また、本発明の防錆剤は、金属又はその合金を被覆する樹脂中に配合して、防錆性樹脂組成物とすることができる。
また本発明の式(1)及び/又は(2)で表される化合物を配合した場合、後記実施例4〜5の防錆効果試験1−2及び2−1より樹脂の劣化も防止されることが明らかである。
本発明で使用する樹脂としては特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を挙げることができ、例えば以下のような樹脂を例示することができる。但し、タイヤ等に使用される天然ゴム、合成ゴムを含まない。
エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、及びそれらの共重合体類等のポリオレフィン系樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニール系樹脂、アルキド系樹脂、グアナミン系樹脂、フェノール系樹脂、テトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンポリプロピレンコポリマー(FEP)等のフッ素プラスチック系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ナイロン6、11、12、46、66、610、612、及びそれらの共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、エチレン−エチルアクリレート共重合体類等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びそれらの共重合体類等のポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フラン系樹脂、ケイ素系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、ポリテルペン系樹脂、及びこれらの共重合体等を挙げることができ、これらの中でもエポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びこれらの共重合体が好ましく、特定の性質を付与するために変性された樹脂であってもよい。また、これら樹脂は単独又は2種以上をブレンドして使用することもできる。
本発明の防錆剤とこれら樹脂との使用割合は、樹脂100重量部に対して本発明の防錆剤を0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜1重量部とすればよい。該使用量が0.001重量部未満では、その効果が十分に発揮されず、10重量部よりも多くても、増量効果があまり見られない。
本発明の防錆性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損わない範囲で、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、加工助剤、安定剤及びその他の添加剤を配合することができる。
本発明の防錆性樹脂組成物は、その配合成分を、バンバリーミキサーや加圧ニーダー、2軸式混練機等の通常使用される混練機を用いて均一に混合することにより、容易に調製することができる。
調製された本発明の防錆性樹脂組成物を、単軸押出機等を用いて導体の周囲を被覆することで自動車用電線、電話用電線、電力用電線、ホットカーペット用ヒーター線等の電線やケーブル等の導体を製造することができる。導体としては、銅金属及びその合金、鉄及びその合金等からなる銅線又は鋼線が挙げられる。
また、射出成形機を用いてプラグ、その他各種の成形体に成形することができ、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形等の成形方法で成形することができる。
本発明の防錆性樹脂組成物は、防錆効果を要求する金属及びその合金に対して適用することができ、建築材料及び建築物用防錆塗料、自動車用防錆塗料、メッキ膜用塗料、重防食塗料等の防錆塗料とすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、参考例、実施例及び試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、下記において特に断らない限り、部は重量部を意味する。
【実施例1】
(銅に対する防錆)
銅板(25×50×1mm)を研磨布で研磨後、アセトン脱脂、乾燥させたものを用いた。
供試化合物は、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物1)、3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物2)、3−ヒドロキシ−N’−イソプロピリデン−2−ナフトエ酸ヒドラジド(比較化合物1)とした。
各化合物をモル当量の水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて、各化合物のナトリウム塩水溶液とし、脱イオン水を加えて100ppm、500ppm、1000ppmとなるように調製して試験液とした。
また、銅の防錆剤であるベンゾトリアゾールの水溶液と、ブランクとして脱イオン水を夫々比較試験液とした。
銅板を各試験液に10分間浸漬し、脱イオン水で洗浄、50℃で乾燥させた後、90℃、湿度90%の恒温恒湿室に静置した。
15日後、四端子四探針方式[定電流印加方式](測定用プローブ:ASPプローブ、測定機器名:ロレスタMP[MCP−T350]、三菱化学株式会社製)で電気抵抗値を測定した。
電気抵抗値は、銅板の片面10箇所の両面を任意の位置で測定し、上位5点及び下位5点を除いた残り10点の値の平均値をとり、ブランクの電気抵抗値を1とした時の相対値で評価した。数値の低いもの程、防錆性に優れる。

評価基準
◎:0.5未満
○:0.5以上0.7未満
△:0.7以上0.8未満
×:0.8以上
【実施例2】
(亜鉛に対する防錆)
亜鉛板(25×50×1mm)を耐水研磨紙で研磨した後、アセトン脱脂、乾燥して得られたものを用いた。
試験化合物は、供試化合物は、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物1)、3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物2)、サリチル酸ヒドラジド(比較化合物1)、3−ヒドロキシ−N’−イソプロピリデン−2−ナフトエ酸ヒドラジド(比較化合物2)、N’−ベンジリデン−3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド(比較化合物3)、3−ヒドロキシ−N’−(1−フェニルエチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(比較化合物4)とした。
各化合物をモル当量の水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて、各化合物のナトリウム塩水溶液とし、脱イオン水を加えて100ppm、500ppm、1000ppmとなるように調製して試験液とした。
また、亜鉛の防錆剤である1,2,4−トリアゾールの水溶液と、ブランクとして脱イオン水を夫々比較試験液とした。
亜鉛板を各試験液に10分間浸漬し、脱イオン水で洗浄、50℃で乾燥させた後、60℃、湿度90%の恒温恒湿室に静置した。
12日後、電気抵抗値測定を行なった。操作及び評価は上記実施例1と同様とした。結果を表2に示す。

【実施例3】
(鉄に対する防錆)
鉄板(25×50×1mm)を研磨布で研磨したものを用いた。
試験化合物は、3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物2)とした。モル当量の水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてナトリウム塩水溶液とし、脱イオン水を加えて500ppmとなるように調製して試験液とした。
また、鉄の防錆剤である1−ヒドロキシベンゾトリアゾールの500ppm水溶液と、脱イオン水(ブランク)を夫々比較試験液とした。
鉄板を各試験液に10分間浸漬し、脱イオン水で洗浄、50℃で乾燥させた後、60℃、湿度90%の恒温恒湿室に静置した。
2日後、電気抵抗値測定を行なった。操作及び評価は上記実施例1と同様とした。結果を表3に示す。

【実施例4】
(樹脂組成物での防錆効果)
(1)樹脂シートの調製
UBEナイロン3014B(宇部興産製、ポリアミド系樹脂)100部に、供試化合物0.25部、耐熱剤(SimilizerGA80、住友化学社製)1.0部を加え、2軸混練機にて混練(220℃、5分間)し、砕いてペレットを得た。このペレットを真空プレス機で1mm厚の防錆剤含有樹脂シートを作成した。
供試化合物は3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物2)、ベンゾトリアゾール又は1,10−ビス(N−サリチロイルアミノ)ドデカンジアミドとした。
また、供試化合物を含有しない樹脂シート(ブランク)を作製した。
(2)防錆効果試験1−1
銅板(100×5×0.5mm)を、作製した各樹脂シート(100×10×1.0mm)2枚で挟み、該樹脂シートと銅板とが密着するようクリップで固定した後、140℃の恒温槽内に静置した。20日後、樹脂シートから取り外した各銅板の電気抵抗値を測定した。
測定は片面10箇所の両面を任意の位置で行い、上位5点及び下位5点を除いた残り10点の値の平均値をとり、ブランクの電気抵抗値を1とした時の相対値で評価した。結果を表4に示す。

(3)防錆効果試験1−2
防錆効果試験1−1後、銅板を取り外した各樹脂シートを引張り試験機(引張・圧縮両振り負荷フレーム方式/テンシロン万能試験機RTC−1310A[エー・アンド・ディ製])で最大点応力(MPa)を測定した。
測定結果を、上記(1)で調製した各樹脂シートの最大点応力に対する減少率で評価した。結果を表5に示す。

【実施例5】
(樹脂組成物での防錆効果2)
(1)樹脂シートの調製
ポリ塩化ビニルS1001〔(株)カネカ製、重合度1050、塩化ビニル系樹脂〕100部に、フタル酸ジイソノニル50部、炭酸カルシウム30部、クレー#33〔土屋カオリン(株)製〕5部、三塩基性硫酸鉛4部、二塩基性ステアリン酸鉛0.5部、n−ステアリン酸鉛0.5部、ジベンゾイルメタン0.05部、供試化合物0.05部を加え、ロール混練機にて混練(160℃、5分間)後、得られたシートを3cm角に切断した。これを真空プレス機で成形し、1mm厚の防錆剤含有樹脂シートを作成した。
供試化合物を3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物2)、ベンゾトリアゾール又は1,10−ビス(N−サリチロイルアミノ)ドデカンジアミドとした。
また、供試化合物を含有しない樹脂シート(ブランク)を作成した。
(2)防錆効果試験2−1
作製した各樹脂シート(100×10×1.0mm)を銅箔2枚で挟み、真空プレス機で圧着した後、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿室に静置した。2ヶ月後、各樹脂シートの一端の銅箔を一部剥がし、銅箔端にバネ秤を取り付け、バネ秤を引き上げて銅箔をゆっくりと樹脂から剥離させ、その時にバネ秤が示す最高値を剥離強度として読み取った。結果はブランクの値を1とした時の相対値で評価した。数値が低い程、樹脂が銅箔の影響を受けていないことを示している。結果を表6に示す。

(3)防錆効果試験2−2
防錆効果試験2−2で樹脂から剥離させた銅箔の電気抵抗値を測定した。
電気抵抗値の測定は、1枚の銅箔の樹脂接着面10箇所、計20箇所を任意の位置で行い、上位5点及び下位5点を除いた残り10点の値の平均値をとり、ブランクの電気抵抗値を1とした時の相対値で評価した。
結果を表7に示す。

【実施例6】
(樹脂組成物での防錆効果3)
(1)樹脂シートの調製
スミカセンL−430〔住友化学工業(株)製、ポリエチレン系樹脂〕100部に、供試化合物、耐熱剤〔SimilizerGA80、住友化学工業(株)製〕1.0部を加え、ロール混練機にて混練(155℃、5分間)し、得られたシートを砕いてペレットを得た。このペレットを真空プレス機で1mm厚の防錆剤含有樹脂シートを作製した。
供試化合物を3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物2)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンとし、表8に示した添加量とした。
また、供試化合物を含有しない樹脂シート(ブランク)を作製した。
(2)防錆効果試験3−1
作成した各樹脂シート(100×10×1.0mm)を銅箔2枚で挟み、真空プレス機で圧着した後、120℃の恒温槽内に静置した。3ヶ月後に、各樹脂から剥離させた銅箔の電気抵抗値を測定した。
電気抵抗値の測定は、1枚の銅箔の樹脂接着面10箇所、計20箇所を任意の位置で行い、上位5点及び下位5点を除いた残り10点の値の平均値をとり、ブランクの電気抵抗値を1とした時の相対値で評価した。結果を表8に示す。

【実施例7】
(防錆塗料の作製)
固形分であるエバールEP−F101〔(株)クラレ製、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン含量32モル%〕100部及びイソプロピルアルコール:水=2:1(重量比)の混合溶剤400部を四ツ口フラスコ内で混合、75℃/3時間撹拌する事により固形分20%の安定な樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液500部にスノーテックスN〔日産化学工業(株)製、コロイダルシリカの水分散液、固形分20%、シリカの平均粒子径:約20nm〕200部及び3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物1)3部を入れ撹拌し、固形分20%の防錆塗料を作製した。
また、化合物1に替えて3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド(化合物2)用いた以外は同様にして防錆塗料を作製した。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、過酷な環境下においても金属の防錆効果を発揮、維持し、特に銅、亜鉛、鉄金属及びそれら合金の防錆において有効な防錆剤、これを用いた防錆方法、防錆性樹脂組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)又は(2)で表される化合物及びその塩の少なくとも1種を有効成分とする防錆剤。

【請求項2】
式(1)又は式(2)で表される化合物の塩が、アルカリ金属塩である請求の範囲第1項記載の防錆剤。
【請求項3】
金属又は合金の表面に請求の範囲第1又は2項記載の防錆剤を被覆することを特徴とする金属又は合金の防錆方法。
【請求項4】
樹脂100重量部に対して、請求の範囲第1又は2項記載の防錆剤を0.001〜10重量部含有してなる防錆性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂がエポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びそれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第4項記載の防錆性樹脂組成物。
【請求項6】
金属又は合金の表面に請求の範囲第4又は5記載の防錆性樹脂組成物を被覆又は密着することを特徴とする金属又は合金の防錆方法。
【請求項7】
請求の範囲第4又は5項記載の防錆性樹脂組成物を被覆してなる導体。
【請求項8】
請求の範囲第4又は5項記載の防錆性樹脂組成物を含有する防錆塗料。
【請求項9】
金属又は合金が銅、亜鉛、鉄、及びそれらの少なくとも1種からなる金属又は合金である請求の範囲第3又は6項記載の防錆方法。

【国際公開番号】WO2005/078157
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518073(P2005−518073)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002823
【国際出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】