説明

離型フィルム

【課題】優れた帯電防止性を有し、離型層の密着性に優れた離型フィルムを提供する。また、接着性を有する異方性導電膜を製造する工程でキャリアフィルム或いは巻き取り時にセパレーターとして使用する場合の特性に優れた離型フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリチオフェン系の導電性ポリマーとシランカップリング剤とバインダー成分とを構成成分として含有する帯電防止層、および離型層がこの順序で積層してなる離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムに関する。更に詳しくは、接着性を有する異方性導電膜(以下、単に異方性導電膜と呼称する場合がある。)を成形する工程でキャリアフィルムとして使用する場合、あるいは、異方性導電膜を成形した後に巻き取る工程でセパレーターとして使用する場合の特性に優れた離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルのガラス基板上のITO端子と、フレキシブル基板やTCP(Tapecarrier psckage)の端子とを接続する場合や、半導体チップをマザーボード上にフリップチップ接合する場合のように、2つの回路素子を接着すると共にその間の端子を電気的に接続するための材料として、接着性を有する異方性導電膜が広く用いられている。
【0003】
かかる異方性導電膜は、絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたものからなり、接続すべき素子の端子間に異方性導電膜を挟み込み、熱圧着することにより、素子同士の接着と端子間の電気的接続とが同時に行われるようにしたものである。異方性導電膜に用いられる導電性粒子は、高分子核体の表面が金属薄層により実質的に被覆された粒子または金属粒子或いは両者を混合した粒子である。
【0004】
異方性導電膜は、通常、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂とカップリング剤、硬化剤、硬化促進剤等を混ぜ合わせた絶縁接着剤中に、導電性粒子を混合・分散して接着剤ワニスとし、それをキャリアフィルム(セパレーター)上に塗布・乾燥して製造される。更に、この表面に導電性粒子を含まない絶縁接着剤ワニスを塗布して複層化してもよい。また、導電性粒子を含まない絶縁接着剤ワニスをキャリアフィルム上に塗布した後に、導電性粒子を散布して製造される異方性導電膜もある。
【0005】
いずれの異方性導電膜においても、ワニスを塗布・乾燥した後は、キャリアフィルムごと巻き取られ、適当な幅にカットされ、前述の使用目的に供される。異方性導電膜は、常態では接着性を有するため、使用されるキャリアフィルムは両面に離型層を有することが多い。更に、使用する際には、キャリアフィルムと異方性導電膜とは、引き出したキャリアフィルムと一緒に引き出される必要があり、すなわちキャリアフィルムの巻内面側と巻外面側とで異方性導電膜を剥離するときの剥離強度に差を付けることが好ましい。キャリアフィルムの両面とも同じ離型処理がなされていると、キャリアフィルムを引き出したときに異方性導電膜が巻き出すロールの方に持っていかれたり、キャリアフィルムと異方性導電膜との間に隙間が生じたりしてスムーズに引き出せない問題が発生する。
【0006】
また、異方性導電膜として使用される時の絶縁接着性ワニスは、キャリアフィルムに塗布したのちの乾燥工程で半硬化の状態(Bステージ)までフィルム硬化を進める。この時、通常、温度100℃〜200℃で1分〜30分の熱がかかるためキャリアフィルムの基材としてはポリエステルフィルムが使用されるが、通常の透明なポリエステルフィルムを用いると、異方性導電膜とキャリアフィルムとの間に巻き込まれた空気が抜けにくいばかりか、異方性導電膜の厚み斑や導電粒子の分散状態を確認しにくいといった問題がある。
【0007】
一方、ポリエステルフィルムをはじめとするプラスチックフィルムは帯電しやすく、導電性粒子を含まない絶縁接着剤ワニスをキャリアフィルム上に塗布したのちに導電性粒子を散布して製造される異方性導電膜の場合、キャリアフィルムの帯電により、絶縁接着剤ワニスの表面にも帯電斑が生じ、導電性粒子を散布した時に均一に散布できないといった不具合を生じる。
このような課題を解決する試みが、例えば特許文献1によりなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−331614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1において開示されている帯電防止層を有する離型フィルムは、基材に対する離型層の密着性に係る近年のさらに高い要求に対しては不十分な場合があることを本発明者は見出した。
そこで、本発明の目的は、優れた帯電防止性を有し、離型層の密着性に優れた離型フィルムを提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、異方性導電膜製造用のキャリアフィルムまたはセパレーターとして用いられる離型フィルムであり、上記従来技術の欠点を改良し、繰り出しや走行の際の帯電が少なく、異方性導電膜を形成する際の帯電障害を生じにくい離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリエステルフィルムの上に、特定の構成を有する帯電防止層と離型層とを積層した離型フィルムによって上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、
(1)ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリチオフェン系の導電性ポリマー(A)と、シランカップリング剤(B)と、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のバインダー成分(C)とを構成成分として含有する帯電防止層、および離型層がこの順序で積層してなる離型フィルム
である。
【0012】
さらに本発明は、
(2)ポリエステルフィルムの一方の面に、離型層Aが積層してなり、他方の面に帯電防止層および離型層Bがこの順序で積層してなる上記(1)に記載の離型フィルム、
(3)ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.1μm以上3μm未満の酸化チタン粒子を0.1質量%以上15質量%以下、平均粒径が3μm以上6μm以下のシリカ粒子を0質量%以上2質量%以下含有する上記(2)に記載の離型フィルム、
(4)異方性導電膜製造用である、上記(2)または(3)に記載の離型フィルム
を包含する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた帯電防止性を有し、離型層の密着性に優れた離型フィルムを提供することができる。また、本発明の離型フィルムは、異方性導電膜製造用として好適に用いることができ、繰り出しや走行の際の帯電が少なく、異方性導電膜を形成する際の帯電障害が生じにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の離型フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止層および離型層がこの順序で積層してなるものである。また、とりわけ異方性導電膜製造用として用いる際には、ポリエステルフィルムの一方の面に、離型層Aが積層してなり、他方の面に帯電防止層および離型層Bがこの順序で積層してなる構成であることが好ましい。かかる構成においては、ポリエステルフィルムと離型層Aとの間にも帯電防止層を有していてもよく、かかる帯電防止層と他方の面に積層される帯電防止層とは、同じであってもよいし異なるものであってもよい。また、離型層Aおよび離型層Bは、後述するような剥離力の態様であることが好ましい。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリエステルフィルム>
(ポリエステル)
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。このポリエステルは実質的に線状で、フィルムに形成可能なものであるが、特に溶融成形によりフィルムに形成可能なポリエステルであることが好ましい。
【0016】
ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0017】
また、ポリエステルを構成する脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等の如き炭素数2〜10のポリアルキレングリコールあるいは1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。
【0018】
本発明において、ポリエステルとしてはアルキレンテレフタレートまたはアルキレン−2,6−ナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましい。
これらポリエステルの中、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。また、全酸成分の80モル%以上がテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合体であってもよい。その際、全酸成分の20モル%以下はテレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の上記芳香族ジカルボン酸であることができ、また例えばアジピン酸、セバチン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等であることができる。また、全グリコール成分の20モル%以下はエチレングリコール以外の上記グリコールであることができ、また例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の如き芳香族ジオール;1,4−ジヒドロキシジメチルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の如きポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等であることもできる。
【0019】
本発明におけるポリエステルには、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸、ω−ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、上記酸成分とオキシカルボン酸成分との総量に対し20モル%以下で共重合あるいは結合するものも包含される。また、本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸又はポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエリスリトール等を共重合したものも包含される。
【0020】
上記ポリエステルは、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。上記ポリエステルとしては、o−クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が0.4〜0.9dl/gのものが好ましく、0.5〜0.7dl/gのものがさらに好ましく、0.55〜0.65dl/gのものが特に好ましい。
【0021】
(ポリエステルフィルムの特性)
本発明の離型フィルムは、異方性導電膜を製造する際のキャリアフィルム、更には異方性導電膜をロール状にしたときのセパレーターとして使用される場合は、ポリエステルフィルム表面の中心線平均粗さは0.1〜1.0μmであることが好ましい。中心線平均粗さが上記数値範囲にあると、キャリアフィルムやセパレーターとして用いる際の巻き取り性に優れる。中心線平均粗さが0.1μm未満だと、離型層表面の中心線平均粗さRaが0.1μm以上となりにくく、異方性導電膜とキャリアフィルムとの積層体を巻き取ってロール状にする際、積層体間の空気が抜けにくく、外観が悪くなる等巻き取りが困難になる。また、中心線平均粗さが1.0μmを超えると、離型層表面の中心線平均粗さRaが1.0μm以下となりにくく、得られた異方性導電膜に離型層表面の凹凸形状が転写しやすくなる傾向にあり、異方性導電膜と接続する素子の端子間で空隙が発生し、接着不良や導通不良などが発生しやすくなる。
【0022】
また、本発明においてポリエステルフィルムの全光線透過率は0〜80%であることが好ましい。また、ヘーズ値が50%以上であることが好ましい。全光線透過率および/またはヘーズ値が上記数値範囲にあると、キャリアフィルム上に成形した異方性導電膜の厚み斑や分散している導電粒子の分散状態を観察しやすくなり、より品質の優れた異方性導電膜を製造しやすくなる。
【0023】
かかるポリエステルフィルムの中心線平均粗さ、全光線透過率、及びヘーズ値を前述の範囲とするためには、原料のポリエステル中に粒子や顔料を含有させる方法(練り込み法)やポリエステルフィルムの表面に粒子や顔料を含有させた樹脂塗料を塗布する方法や、サンドブラスト法、エンボス法、エッチング法などがある。
【0024】
(ポリエステルフィルムが含有する粒子)
本発明においては、上記中心線平均粗さ、全光線透過率、ヘーズ値の好ましい態様を達成するために、上記の何れの方法を採用してもよいが、コストや品質を考慮すると原料のポリエステル中にあらかじめ、粒子を含有させる練り込み法が好ましい。
【0025】
ポリエステル中に含有させる粒子としては、酸化チタン粒子、酸化ケイ素粒子、硫酸バリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、カオリン粒子、タルク粒子等のような無機粒子、ポリスチレン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等のような有機粒子が挙げられる。有機粒子としては、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、エチレン−プロピレンターポリマー粒子、オレフィン系アイオノマー粒子等のような他の樹脂粒子も挙げられる。これらのうち1種又は2種以上用いてもよい。本発明においては、より好ましい中心線平均粗さ、光線透過率、ヘーズ値が得られるという観点から、無機粒子が好ましい。とりわけ、酸化チタン粒子、シリカ粒子が好ましい。
【0026】
ポリエステル中に含有させる粒子の平均粒径は、0.1μm以上3μm未満の範囲が好ましい。また、含有量は0.1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましい。平均粒径および含有量を上記数値範囲とすることによって、より好ましい中心線平均粗さ、光線透過率、ヘーズ値を得ることができる。このような観点から、平均粒径は0.1μm以上1μm以下がより好ましく、0.2μm以上0.5μm未満がさらに好ましい。また、含有量は、1質量%以上12質量%以下がより好ましく、5質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。かかる粒子の種類としては、酸化チタン粒子が好ましい。
【0027】
また本発明においては、さらに平均粒径3μm以上6μm以下の粒子を含有することが好ましい。かかる粒子の含有量としては0質量%以上2質量%以下が好ましい。このような態様とすることによって、さらに好ましい中心線平均粗さ、光線透過率、ヘーズ値を得ることができる。このような観点から、さらに含有する粒子の平均粒径は4μm以上5μm以下がより好ましい。また、含有量は、0質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。かかる粒子の種類としては、酸化ケイ素粒子が好ましい。
また必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤などを含有することもできる。
【0028】
(ポリエステルフィルムの製造方法)
本発明に用いるポリエステルフィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましく、その厚さは10〜300μm、好ましくは25〜200μmである。かかる二軸配向ポリエステルフィルムは、従来から知られている製造方法で得ることができる。
【0029】
例えば、ポリエステルの融点(Tm:℃)〜(Tm+70)℃の温度でポリエステルを溶融押出して未延伸フィルムを得て、この未延伸フィルムを一軸方向(縦方向又は横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(但し、Tg:ポリエステルのガラス転移点温度)で2.5〜6倍、好ましくは3〜4倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向にTg〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜6倍、好ましくは3〜4倍の倍率で延伸するのが好ましい。さらに必要に応じて縦方向および/又は横方向に再度延伸してもよい。このようにして全延伸倍率は、面積延伸倍率として9倍以上が好ましく、12〜35倍がさらに好ましく、14〜20倍が特に好ましい。さらにまた、二軸配向フィルムは、(Tg+70)℃〜(Tm−10)℃の温度で熱固定することができ、例えば180〜250℃で熱固定するのが好ましい。熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0030】
<帯電防止層>
ポリエステルフィルムは帯電しやすく、しばしば問題となる。例えば異方性導電膜製造に用いられるフィルムにおいては、異方性導電膜を成形する工程、さらには異方性導電膜を使用して2つの回路素子間を接続する工程(LCD組立て工程や半導体部品実装工程等)において、静電気の発生は生産物に対して致命的ダメージを与える。また、絶縁性接着剤ワニス上に導電性粒子を散布する方法で異方性導電膜を製造する場合、工程の搬送ロールと離型フィルムとの摩擦で発生した静電気により、散布した導電性粒子が均一に散布されず、帯電模様状に散布されてしまったり、LCD組立て工程や半導体部品実装工程等においロール状の異方性導電膜を引き出した際に発生する剥離帯電により、貼り合せ時の位置がずれたり、半導体素子が破損してしまったりする。このような理由において、本発明の離型フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に帯電防止層を設け、その上に離型層を設ける。本発明における帯電防止層としては、離型層を設けた後の表面固有抵抗値が5×10〜5×1012Ω/□であることが好ましく、5×10〜5×10Ω/□であることが更に好ましい。
【0031】
本発明における帯電防止層は、ポリチオフェン系の導電性ポリマー(A)と、シランカップリング剤(B)と、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のバインダー成分(C)とを構成成分として含有する。
【0032】
(ポリチオフェン系の導電性ポリマー(A))
本発明におけるポリチオフェン系の導電性ポリマー(A)は、主に下記式[化1]で表される単位を主たる繰返し単位とするポリチオフェンからなる導電性ポリマーであって、対アニオンがスチレンスルホン酸を共重合成分として含むポリスルホン酸から誘導されたポリアニオンである導電性ポリマーである。
【0033】
【化1】

(上記式[化1]中、RおよびRは、相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す。)
【0034】
本発明におけるポリチオフェン系の導電性ポリマー(A、ポリカチオン状のポリチオフェンとアニオンとの複合体)としては、例えば特開2005−88389号公報に記載の帯電防止層として用いられているポリチオフェン、特開2006−294532号公報に記載されているポリチオフェンなどをあげることができ、具体的には、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)[チオフェン環の約1/3がカチオン化されたもの]とポリスチレンスルホン酸(スルホン酸の約半分がアニオン化されたもの)との複合体をあげることができる。
【0035】
かかるポリチオフェン系の導電性ポリマー(A)は、帯電防止層中に3質量%以上60質量%以下含有されていることが好ましい。含有量が上記数値範囲にあると、帯電防止性に優れる。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは5質量%以上50質量%以下、特に好ましくは5質量%以上40質量%以下である。含有量が3質量%より少ないと、導電性の向上効果が著しく低下する。他方、60質量%より多いと着色が強くなる傾向にあり、またバインダー成分の含有量が下がることにより、帯電防止層の膜強度が弱くなる傾向にあり、あるいはシランカップリング剤の含有量が下がることにより、離型層(特にシリコーン樹脂を主たる構成成分としてなる離型層)との密着性の向上効果が低くなる。
【0036】
(シランカップリング剤(B))
本発明における帯電防止層は、下記式[化2]で示すシランカップリング剤(B)を構成成分として含有する。
【0037】
【化2】

【0038】
上記式[化2]におけるnは、1以上3以下の整数を表す。特に、nは1であることが好ましい。このような態様であると、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性、および帯電防止層と離型層(特にシリコーン樹脂を主たる構成成分としてなる離型層)との密着性に優れたものとなる。
【0039】
上記式[化2]におけるXは、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基またはメルカプト基等で代表される官能基を有する有機基である。上記式[化2]においては、n個のXがSiに結合していることを表すが、これらのXはそれぞれ同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
【0040】
また、上記式[化2]におけるRは、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲンから選ばれた加水分解可能な基、またはアルキル基を表す。中でもアルコキシ基、アシルオキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。アシルオキシ基としては、炭素数2〜11のアシルオキシ基が好ましく、炭素数2〜7のアシルオキシ基がさらに好ましく、アセトキシ基が特に好ましい。ハロゲンとしては、クロロ基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましい。Rが上記のような態様であることによって、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性、および帯電防止層と離型層との密着性の向上効果を高くすることができる。上記式[化2]においては、(4−n)個のRがSiに結合していることを表すが、これらのRはそれぞれ同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。本発明においては、(4−n)個のRのうち、その少なくとも1つがアルコキシ基またはアシルオキシ基である態様が好ましく、全てのRがアルコキシ基またはアシルオキシ基である態様がさらに好ましい。
【0041】
本発明においては、シランカップリング剤(B)として、異なる2種類以上のシランカップリング剤(B)の混合物を用いることができ、好ましい。特に好ましい態様として、後述するアルケニル基含有シランカップリング剤(B1)とグリシジル基含有シランカップリング剤(B2)との混合物を用いる態様が挙げられ、帯電防止層が、ポリエステルフィルムおよび離型層の両方との密着性を同時により優れたものとすることができる。
【0042】
(アルケニル基含有シランカップリング剤(B1))
本発明において好ましく用いられるアルケニル基含有シランカップリング剤は、下記式[化3]で示すものである。
【0043】
【化3】

【0044】
上記式[化3]におけるaは、1以上3以下の整数を表し、特にaは1であることが好ましく、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性や、特に帯電防止層と離型層(特にシリコーン樹脂を主たる構成成分としてなる離型層)との密着性により優れる。
【0045】
上記式[化3]におけるXは、アルケニル基を表す。かかるアルケニル基としては、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜4のアルケニル基がさらに好ましく、ビニル基が特に好ましく、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性や、特に帯電防止層と離型層との密着性により優れる。上記式[化3]においては、a個のXがSiに結合していることを表すが、これらのXはそれぞれ同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
【0046】
また、上記式[化3]におけるRは、前述のシランカップリング剤(B)におけるRと同様であり、ポリエステルフィルムと帯電防止層、帯電防止層と離型層との密着性により優れる。上記式[化3]においては、(4−a)個のRがSiに結合していることを表すが、これらのRはそれぞれ同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。本発明においては、(4−a)個のRのうち、その少なくとも1つがアルコキシ基またはアシルオキシ基である態様が好ましく、全てのRがアルコキシ基またはアシルオキシ基である態様がさらに好ましい。
【0047】
このようなアルケニル基含有シランカップリング剤(B1)としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルジメトキシモノアセトキシシラン、ビニルモノメトキシジアセトキシシラン、ビニルジエトキシモノアセトキシシラン、ビニルモノエトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等を好ましく例示することができる。
【0048】
本発明においては、アルケニル基含有シランカップリング剤(B1)として、異なる2種類以上のアルケニル基含有シランカップリング剤の混合物を用いることができる。混合物として用いる際は、上記式[化3]におけるRの1つがアセトキシ基であるモノアセトキシ体を含む態様が好ましく、アルケニル基含有シランカップリング剤(B1)の全量を基準として50モル%以上のモノアセトキシ体を含む態様がさらに好ましい。また、上記式[化3]におけるRの3つがメトキシ基であるトリメトキシ体を含む態様が好ましく、アルケニル基含有シランカップリング剤(B1)の全量を基準として20モル%以上のトリメトキシ体を含む態様がさらに好ましい。このような態様の混合物を用いることによって、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性や、特に帯電防止層と離型層との密着性により優れたものとなる。
【0049】
(グリシジル基含有シランカップリング剤(B2))
本発明において好ましく用いられるグリシジル基含有シランカップリング剤は、下記式[化4]で示すものである。
【0050】
【化4】

【0051】
上記式[化4]におけるbは、1以上3以下の整数を表し、特にbは1であることが好ましく、帯電防止層と離型層(特にシリコーン樹脂を主たる構成成分としてなる離型層)との密着性や、特にポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性により優れる。
【0052】
上記式[化4]におけるXは、グリシジル基またはグリシジル基を有する炭化水素基、あるいはグリシドキシ基またはグリシドキシ基を有する炭化水素基を表す。かかる炭化水素基としては、炭素数1以上10以下の炭化水素基が好ましく、炭素数2以上8以下の炭化水素基がさらに好ましく、炭素数3以上6以下の炭化水素基が特に好ましく、帯電防止層と離型層との密着性や、特にポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性により優れる。上記式[化4]においては、b個のXがSiに結合していることを表すが、これらのXはそれぞれ同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
【0053】
また、上記式[化4]におけるRは、前述のシランカップリング剤(B)におけるRと同様であり、ポリエステルフィルムと帯電防止層、帯電防止層と離型層との密着性により優れる。上記式[化4]においては、(4−b)個のRがSiに結合していることを表すが、これらのRはそれぞれ同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。本発明においては、(4−b)個のRのうち、その少なくとも1つがアルコキシ基またはアシルオキシ基である態様が好ましく、全てのRがアルコキシ基またはアシルオキシ基である態様がさらに好ましい。
【0054】
このようなグリシジル基含有シランカップリング剤(B2)としては、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシモノアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルモノメトキシジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエトキシモノアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルモノエトキシジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアセトキシシラン等を好ましく例示することができる。
【0055】
本発明においては、かかるグリシジル基含有シランカップリング剤(B2)として、異なる2種類以上のグリシジル基含有シランカップリング剤の混合物を用いることができる。混合物として用いる際は、上記式[化4]におけるRの1つがアセトキシ基であるモノアセトキシ体を含む態様が好ましく、グリシジル基含有シランカップリング剤(B2)の全量を基準として50モル%以上のモノアセトキシ体を含む態様がさらに好ましい。また、上記式[化4]におけるRの2つがアセトキシ基であるジアセトキシ体を含む態様が好ましく、グリシジル基含有シランカップリング剤(B2)の全量を基準として30モル%以上のジアセトキシ体を含む態様がさらに好ましい。このような態様の混合物を用いることによって、帯電防止層と離型層との密着性や、特にポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性により優れたものとなる。
【0056】
本発明においては、上記アルケニル基含有シランカップリング剤(B1)と上記グリシジル基含有シランカップリング剤(B2)との含有比は下記式を満たすことが好ましい。
:Y=90:10〜30:70
【0057】
上記式におけるYは、帯電防止層中におけるアルケニル基含有シランカップリング剤(B1)由来のX基の総モル数を表し、Yは、帯電防止層中におけるグリシジル基含有シランカップリング剤(B2)由来のX基の総モル数を表す。含有比を上記のようにすることによって、帯電防止層と離型層との密着性に優れ、同時にポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性に優れたものとなる。また、耐熱性により優れたものとなる。帯電防止層中において、YがYに対して多すぎる場合は、帯電防止層と離型層との密着性はより向上する傾向にあるが、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、帯電防止層中において、YがYに対して多すぎる場合は、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性はより向上する傾向にあるが、帯電防止層と離型層との密着性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、YとYの比は、好ましくはY:Y=80:20〜40:60であり、より好ましくはY:Y=70:30〜40:60である。
【0058】
上記のようなシランカップリング剤(B)は、帯電防止層中に20質量%以上70質量%以下含有されていることが好ましい。含有量が上記数値範囲にあると、帯電防止性と離型層との密着性に優れる。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは25質量%以上65質量%以下、特に好ましくは30質量%以上60質量%以下である。
【0059】
(バインダー成分(C))
本発明におけるバインダー成分(C)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。帯電防止層がこのようなバインダー成分(C)を含有することにより、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性、および帯電防止層と離型層との密着性を高くすることができる。
【0060】
ここで、バインダー成分は、そのガラス転移点温度が20〜150℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移点温度が20℃未満の場合には、帯電防止層の耐ブロッキング性が悪くなりやすく、他方150℃を超える場合には帯電防止層の耐削れ性が不足しやすくなる。
【0061】
かかるバインダー成分(C)は、帯電防止層中に20質量%以上60質量%以下含有されていることが好ましい。含有量が上記数値範囲にあると、ポリエステルフィルムと帯電防止層との密着性、および帯電防止層と離型層との密着性の向上効果を高くすることができる。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは25質量%以上50質量%以下、特に好ましくは30質量%以上45質量%以下である。
【0062】
(ポリエステル樹脂)
本発明におけるポリエステル樹脂は、主としてジカルボン酸成分とグリコール成分とからなるポリエステル樹脂である。好ましく用いられるポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、5−Kスルホイソフタル酸等、また、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA・アルキレンオキシド付加物等を用いたポリエステルを挙げることができ、なかでもこれらの成分を含有する共重合ポリエステルが好ましい。なお、ガラス転移点温度が20〜150℃のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸を主成分として用い、グリコール成分をガラス転移点温度が上記範囲となるように適宜選択することにより容易に得ることができる。
【0063】
かかるポリエステル樹脂は常法により製造することができ、帯電防止層の耐削れ性および耐ブロッキング性の点からその重量平均分子量は10,000〜50,000の範囲であることが好ましい。
【0064】
(アクリル樹脂)
本発明におけるアクリル樹脂は、特に限定されないが、好ましく用いられるアクリル樹脂としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、クロトン酸エチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル系単量体を含む共重合体を挙げることができる。
【0065】
また、かかるアクリル樹脂は、上記のアクリル酸エステル系単量体の少なくとも1種の他に、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ソーダ、メタクリル酸カリウム、アクリル酸アンモニウム、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド等の他のアクリル系単量体を共重合成分として含んでいてもよく、また、塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、ビニルスルホン酸ソーダ等のアクリル系以外の単量体を共重合成分として含んでいてもよい。
【0066】
なお、このアクリル樹脂には、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリル酸、アクリルアミド、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、N−メチロールアクリルアミド等の親水性単量体が共重合成分として含まれることが、帯電防止層を形成するための塗液を水性塗液とする場合、分散性や溶解性が良好となるので好ましい。また、アクリル樹脂の分子側鎖に種々の官能基を導入した共重合体であってもよい。
【0067】
また、ガラス転移点温度が20〜150℃のアクリル樹脂は、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチルのような硬質成分を主成分として用い、共重合成分としてアクリル酸エステルのような軟質成分をガラス転移点温度が上記の範囲となる割合で共重合させることにより得ることができる。さらにアクリル樹脂のガラス転移点温度は、メチロール基やメトキシメチル基等を有する成分を共重合成分として用い、これらの基を架橋させることにより調整することもできる。
かかるアクリル樹脂の重量平均分子量は、帯電防止層の耐削れ性および耐ブロッキング性の点から10,000〜500,000の範囲であることが好ましい。
【0068】
また、本発明におけるアクリル樹脂は、アクリル変性ポリエステル樹脂であってもよい。好ましく用いられるアクリル変性ポリエステル樹脂としては、前記のポリエステル樹脂に前記のアクリル酸エステル系単量体および/または他のアクリル系単量体を重合して得られるガラス転移点温度が20〜150℃のアクリル変性ポリエステル樹脂を挙げることができる。かかるアクリル変性ポリエステル樹脂は、例えば水性液中のポリエステル樹脂に、前記のアクリル酸エステル系単量体および/または他のアクリル系単量体を、ラジカル重合開始剤を用いてグラフト重合させることにより得ることができる。このアクリル変性ポリエステル樹脂は、分子側鎖に官能基を有するものであってもよい。また、アクリル変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、帯電防止層の耐削れ性および耐ブロッキング性の点から10,000〜500,000の範囲であることが好ましい。
【0069】
なお、ガラス転移点温度が20〜150℃のアクリル変性ポリエステル樹脂は、ガラス転移点温度が20〜150℃の共重合ポリエステル樹脂を用い、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチルのような硬質成分とアクリル酸エステルのような軟質成分とを、得られるアクリル変性ポリエステル樹脂のガラス転移点温度が20〜150℃となる割合でグラフト共重合させることにより得ることができる。
【0070】
(ウレタン樹脂)
本発明におけるウレタン樹脂は、特に限定されないが、好ましく用いられるウレタン樹脂としては、例えば脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステル、ジイソシアネート、ジアミン、グリコール、ジメチロールプロピオン酸塩等から製造される、ガラス転移点温度が20〜150℃のウレタン樹脂を挙げることができる。かかるウレタン樹脂の重量平均分子量は、帯電防止層の耐削れ性および耐ブロッキング性の点から5,000〜50,000の範囲であることが好ましい。
【0071】
なお、ガラス転移点温度が20〜150℃のウレタン樹脂は、前記脂肪族ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルに適宜芳香族成分を含有させるか、芳香族ジイソシアネートを用いるか、ジイソシアネート、アルキレンジアミン、アルキレングリコール、ジメチロールプロピオン酸塩等の使用量を制御することにより容易に得ることができる。
【0072】
以上に説明したバインダー成分は、それぞれ単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても構わない。なお、かかるバインダー成分は、水または水を主成分とする溶液に分散した水分散液または水溶化した水溶液の状態で使用するのが取扱い性の点から好ましい。また、得られる帯電防止層の耐水性と耐ブロッキング性を改善するため、メチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系、尿素系、グリオキザール系、アクリルアミド系などの化合物、エポキシ化合物、ポリイソシアネートから選ばれた少なくとも1種類の架橋剤を含有させても構わない。
【0073】
(帯電防止層の形成方法)
本発明における帯電防止層は、上記の各成分を含有する塗液(以下、帯電防止塗料と呼称する場合がある。)をポリエステルフィルム上に塗布し、塗膜を形成し、乾燥および硬化することによって得られる。かかる塗料には、本発明の目的を損なわない範囲において、例えば塗工性を改善するために界面滑性剤を添加したり、溶媒により適度な濃度に希釈したりすることができる。塗膜を形成するコーティング方法としては、バーコート法、ドクターブレード法、リバースロールコート法またはグラビアロールコート法等の従来から知られている方法が利用できる。
かかる塗膜の乾燥条件としては、温度100℃以上、時間30秒以上とすることが好ましい。乾燥温度が100℃未満及び硬化時間が30秒未満では塗膜の形成が不完全となる傾向にある。
【0074】
(帯電防止層の特性)
帯電防止層の厚みは特に限定されないが、0.02〜0.8μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.5μm、特に好ましくは0.2〜0.4μmである。厚みが上記数値範囲にあると、ポリエステルフィルムと帯電防止層、帯電防止層と離型層との密着性の向上効果を高くすることができる。また、帯電防止性の向上効果を高くすることができる。厚みがこの範囲より薄くなると帯電防止性能が低下し満足すべき性能が得られないことがあるばかりか、密着性の向上効果が低くなる。逆に厚みがこの範囲より厚くなるとポリエステルフィルムの表面粗さが小さくなり過ぎる傾向が強くなるため好ましくない。
【0075】
<離型層>
本発明における離型層は、特に限定されないが、例えばシリコーン樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂、フッ素オイル、各種ワックスや、ポリエステル樹脂、アルキッド、ポリウレタン、アクリル、メラミン、ポリビニルアセタール等の有機樹脂をシリコーンやフッ素などで変性したものを主たる構成成分としてなる離型層であることが好ましい。或いは、シリコーンオイル、フッ素オイルや各種ワックスを有機樹脂中に添加したものを主たる構成成分としてなる離型層であることが好ましい。ここで「主たる」とは、離型層中において70質量%、好ましくは80質量%、さらに好ましくは90質量%以上であることを示す。
【0076】
(硬化型シリコーン樹脂)
本発明においては、なかでも、硬化型シリコーン樹脂が好ましく、耐熱性に優れる。かかる硬化型シリコーン樹脂としては、例えば縮合反応型、付加反応型、紫外線もしくは電子線硬化型等を用いることができる。硬化型シリコーン樹脂は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
硬化型シリコーン樹脂の硬化反応は、次のように示すことができる。
【0077】
【化5】

【0078】
縮合反応型のシリコーン樹脂としては、例えば末端−OH基を持つポリジメチルシロキサンと末端に−H基を持つポリジメチルシロキサン(ハイドロジェンシラン)を有機錫触媒(例えば有機錫アシレート触媒)を用いて縮合反応させ、三次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0079】
付加反応型のシリコーン樹脂としては、例えば末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシランとを白金触媒を用いて反応させ、三次元架橋構造をつくるものが拳げられる。
【0080】
紫外線硬化型のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、アクリル基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これによりエポキシ環を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が拳げられる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いずともラジカルによる架橋反応が起こる。
【0081】
硬化型シリコーン樹脂としては、その重合度が50〜20万程度、好ましくは千〜10万程度のものが好ましく、これらの具体例としては信越化学工業(株)製のKS−718、−774、−775、−778、−779H、−830、−835、−837、−838、−839、−841、−843、−847、−847H、X−62−2418、−2422、−2125、−2492、−2494、−470、−2366、−630、X−92−140、−128、KS−723A・B、−705F、−708A、−883、−709、−719、東芝シリコーン(株)のTPR−6701、−6702、−6703、−3704、−6705、−6722、−6721、−6700、XSR−7029、YSR−3022、YR−3286、ダウコーニング(株)製のDK−Q3−202、−203、−204、−210、−240、−3003、−205、−3057、SFXF−2560、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSD−7226、−7320、−7229、BY24−900、−171、−312、−374、SRX−375、SYL−OFF23、SRX−244、SEX−290、アイ・シー・アイ・ジャパン(株)製のSILCOLEASE425等を拳げることができる。また、特開昭47−34447号公報、特公昭52−40918号公報等に記載のシリコーン樹脂も用いることができる。
【0082】
(離型層の形成方法)
本発明における離型層は、前記硬化型シリコーン樹脂のごとく離型層を構成する成分を含有する塗液(以下、離型塗料と呼称する場合がある。)をポリエステルフィルムまたは帯電防止層上に塗布し、塗膜を形成し、乾燥および硬化することによって得られる。塗膜を形成するコーティング方法としては、バーコート法、ドクターブレード法、リバースロールコート法またはグラビアロールコート法等の従来から知られている方法が利用できる。
【0083】
かかる塗膜の乾燥及び硬化(熱硬化、紫外線硬化等)は、それぞれ個別又は同時に行なうことができる。乾燥および硬化を個別に行なう場合は、乾燥温度として100℃以上とすることが好ましく、乾燥後に紫外線照射等により硬化する。乾燥および硬化を同時に行なう場合は、乾燥条件として、温度100℃以上、時間30秒以上とすることが好ましい。乾燥温度が100℃未満及び硬化時間が30秒未満では塗膜の硬化が不完全となる傾向にある。
【0084】
(離型層の特性)
離型層の厚みは特に限定されないが、0.05〜0.5μmの範囲が好ましい。厚みがこの範囲より薄くなると離型性能が低下し満足すべき性能が得られないことがある。逆に厚みがこの範囲より厚くなるとキュアリングに時間がかかり生産上不都合を生じることがある。
【0085】
また、本発明における離型層は、接着性を有する異方性導電膜の成形時に用いられるキャリアフィルムや、ロール状に巻き取るときのセパレーターとして使用する場合は、ポリエステルフィルムの両面に離型層を有する態様が好ましい。かかる離型層は、一方の面が剥離力が比較的軽い離型層(離型層A)であり、他方の面が剥離力が比較的重い離型層(離型層B)である態様が好ましい。このとき、離型層A表面の剥離力H(N/25mm)と離型層B表面の剥離力H(N/25mm)とが、下記式(1)、(2)を同時に満たす態様が好ましい。
1.5≦H/H≦100 ・・・(1)
0.15≦H+H≦7 ・・・(2)
【0086】
式(1)は、離型層A表面の剥離力と離型層B表面の剥離力との剥離力比率を規定している。また、式(2)においては、両方の離型層表面における剥離力のレベルを規定している。
【0087】
式(1)のH/Hの値(以下、剥離力比率と呼称する場合がある。)は、より好ましくは2〜70、さらに好ましくは3〜15の範囲である。剥離力比率が1.5未満の場合、ロールから異方性導電膜を引き出すときにスムーズに引き出せず、異方性導電膜の一部または全部がロール側に残ってしまったりする不具合が生じる。一方、剥離力比率が100を超えると、離型層B表面、すなわちロールから異方性導電膜を引き出した後に、異方性導電膜が残存すべき面の剥離力が重くなり過ぎ、その結果、次に異方性導電膜を回路素子に圧着してキャリアフィルム(セパレーター)を剥離したときにきれいに剥離できない(キャリアフィルムに異方性導電膜の一部または全部が残存してしまう)といった不具合が生じる。
【0088】
また、異方性導電膜に用いる樹脂や樹脂の硬化度、更には膜厚によって異方性導電膜の接着力は異なるので、式(2)を満足する範囲に調整することが好ましい。かかる値はより好ましくは0.2〜1である。剥離力のコントロールとしては、前述の離型剤の組み合せや硬化触媒量や塗布厚みによる調整の他に、シリコーン系離型剤については次の4つの方法の少なくとも1つ以上を用いることもできる。
【0089】
(1)ポリジメチルシロキサンポリマー中に下記式[化6]のD単位、T単位及び/又はQ単位の構造を有するシリコーンレジンを配合して、離型層中のメチル基の濃度を調整し表面張力を増加させる方法。尚、このシリコーンレジンの配合割合は固形分濃度で20〜60質量%であることが好ましい。配合割合が20質量%よりも少ないと離型層の濡れ性が不良となることがあり、60質量%を超えると離型層が硬くなりすぎて耐削れ性が不良となることがあるため好ましくない。
【0090】
【化6】

【0091】
但し、D単位およびT単位においてRはメチル基等のアルキル基またはフェニル基等の芳香族炭化水素基を示す。
【0092】
(2)ポリジメチルシロキサンポリマー中にシリカフィラーを配合することにより離型層中の−Si−OH基の濃度が高くなるよう調整して表面張力を増加させる方法。尚、このシリカフィラーは平均粒径が1μm以下のものが好ましい。平均粒径が1μmを超えると、加工工程でフィルムを走行させる際に離型層の削れが発生することがあるため好ましくない。また、シリカフィラーの配合割合は固形分濃度で0.1〜1質量%であることが好ましい。配合割合が0.1質量%よりも少ないと所望の濡れ性が得られないことがあり、1質量%を超えるとシリカフィラーが離型層から削れて脱落することがあるため好ましくない。
【0093】
(3)ポリジメチルシロキサンポリマー中のメチル基の一部を嵩高いフェニル基で置換した変性ポリジメチルシロキサンを用いる方法。フェニル基の立体障害により、例えばポリマー中の−Si−O−Si−結合の回りの回転運動が抑制され、その結果離型層表面のメチル基の濃が減少するため表面張カを増加させることができる。尚、このフェニル基の置換割合は20〜60モル%であることが好ましい。この置換割合が20モル%よりも少ないと所望の離型性が得られないことがあり、60モル%を超えると離型層と各種接着剤や各種シートとの離型性が不良となることがあるため好ましくない。
【0094】
(4)シラノール基やメトキシ基等の反応活性基を比較的高濃度で有するポリジメチルシロキサンポリマーと、分子内に水酸基を有する有機樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等)とを反応させて得られる変性ポリジメチルシロキサンを用いる方法。この変性ポリジメチルシロキサン中のジメチルシロキサン成分の割合は10〜30質量%であることが好ましい。この割合が10質量%よりも少ないと離型性が不良となることがあり、30質量%を超えると所望の離型性が得られないことがあるため好ましくない。
【0095】
付加反応型シリコーンの場合、以上の剥離力制御方法が使用されることが多いが、ポリエステルフィルムや帯電防止層に密着しにくいことが多いため、必要に応じて前記式[化3]で示すアルケニル基含有シランカップリング剤(B1)および/または前記式[化4]で示すグリシジル基含有シランカップリング剤(B2)を添加することが好ましい。
【0096】
<離型フィルム>
本発明の離型フィルムは、下記式(3)および(4)を同時に満足することが好ましい。
0%≦Tt≦80% ・・・(3)
50%≦Hz ・・・(4)
【0097】
但し、式(3)、(4)中、Ttは離型フィルムの全光線透過率(単位:%)、Hzは離型フィルムのヘーズ値(単位:%)をそれぞれ表す。
Ttが式(3)の範囲、かつHzが式(4)の範囲であれば、離型フィルム上に成形した異方性導電膜の厚み斑や分散している導電粒子の分散状態を支障無く観察することができ、それにより品質により優れた異方性導電膜を得ることができる。
【0098】
本発明におけるTt値の上限は、導電粒子の分散状態を更に良好な状態で観察できるようにするため、60%以下であることが好ましく、20%以下であることが特に好ましい。Tt値の下限は、値が小さいほど好ましいが、ポリエステルフィルムの機械的特性や製膜する際の延伸性を良好なものとするため10%以上であることが好ましい。
【0099】
本発明におけるHz値の下限は、導電粒子の分散状態を更に良好な状態で観察できるようにするため、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。Hz値の上限は、値が大きいほど好ましいが、ポリエステルフィルムの機械的特性や製膜する際の延伸性を良好なものとするため99%以上であることが好ましい。
このようなTt値、かつHz値の離型フィルムは、例えば、全光線透過率は0〜80%であり、および/またはヘーズ値が50%以上であるポリエステルフィルムを用いることにより得ることができる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例により詳述する。なお、本発明における物性値および特性値は、下記の方法にて測定した。
【0101】
(1)剥離強度
サンプルフィルムの離型層表面にポリエステル粘着テープ(No.31B、日東電工株式会社製)を貼り合わせ、5kgの圧着ローラーで圧着した後、離型層と粘着テープとの剥離カ(単位:N/25mm)を引張り試験機にて測定した。任意の5箇所の平均値として求めた。
【0102】
(2)残留接着率
ポリエステル粘着テープ(No.31B、日東電工株式会社製)を、JIS G4305に規定する冷間圧延ステンレス板(SUS304)に貼り付けた後、それを剥離して剥離力を測定し、基礎接着力(f)(単位:N/25mm)とした。次に新しいポリエステル粘着テープをサンプルフィルムの離型層表面に5kgの圧着ローラーで圧着し、30秒間維持した後粘着テープを剥がした。そして、この剥がしたポリエステル粘着テープを前記ステンレス板に貼り付け、それを剥離して剥離力を測定し残留接着力(f)(単位:N/25mm)とした。得られた基礎接着力(f)と残留接着カ(f)とから下記式を用いて残留接着率を求めた。
残留接着率(%)=(f/f)×100
残留接着力は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり、離型層からの移行成分が少なく、品質のより優れた(接着性のより安定した)異方性導電膜を得ることができる。
【0103】
(3)密着性
離型フィルムを作成した後、経時処理として、常態経時における密着性を評価するためのサンプルは温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で、湿熱経時における密着性を評価するためのサンプルは温度60℃、相対湿度90%RHの環境下で、それぞれ24時間放置した。次いで、経時処理後のサンプルについて、離型層B表面を親指で10回強く擦り、ラブオフテストを実施した。この時、親指はあらかじめエタノールを含ませたガーゼでよく拭き、脱脂してから上記作業を実施した。得られたラブオフテスト後のサンプルについて、親指で擦った部分における離型層の状態を目視観察し、以下の基準に従って判定した。
○ :目視にて、離型層に曇りが観測されない。(合格)
△ :目視にて、離型層に多少の曇りが観測された。
× :目視にて、離型層に曇りが観測された。
さらに、親指で擦った部分にセロハン粘着テープを貼り付け、それを剥離する際の引っ掛かりの度合いについて、以下の基準に従って評価した。
○ :セロハン粘着テープを剥離する際に、引っ掛かりが無い。(合格)
△ :セロハン粘着テープを剥離する際に、多少の引っ掛かりがある。
× :セロハン粘着テープを剥離する際に、引っ掛かりがある。
××:セロハン粘着テープを剥離する際に、強い引っ掛かり(離型層が無い部分と同等の引っ掛かり)がある。
【0104】
(4)表面固有抵抗値
タケダ理研社製固有抵抗測定器を使用し、測定温度23℃、測定湿度65%RH及び45%RHの条件で、印可電圧500Vで1分後の表面固有抵抗値を測定した。任意の5箇所の平均値として求めた。
【0105】
(5)ガラス転移点温度(Tg)、融点(Tm)
試料10mgをパーキンエルマー社製のDSC装置(示差走査熱量計)にセットし、室温から20℃/分で300℃まで昇温し、試料を300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中で急冷し、この急冷試料を10℃/分で300℃付近まで昇温してガラス転移温度(Tg)(単位:℃)および融点(Tm)(単位:℃)を測定した。
【0106】
(6)全光線透過率、ヘーズ値
日本精密光学製へーズメーター(波長:580nm)を使用し、帯電防止層側を光源に向けて測定した。
【0107】
(7)中心線平均粗さ
JIS B0601に準じ、小坂研究所株式会社製の高精度表面粗さ計SE−3FATを使用して、針の半径2μm、荷重30mgで拡大倍率20万倍、カットオフ0.08mmの条件下にチャートを描かせ、表面粗さ曲線からその中心線方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸として、粗さ曲線をy=f(x)で表わしたとき、下記式で与えられた値をμm単位で表わす。測定は、基準長を1.25mmとして4回測定し、平均値で表わした。
【0108】
【数1】

【0109】
[実施例1]
テレフタル酸及びエチレングリコールからつくられたポリエステル(固有粘度:0.63dl/g、Tg:79℃、Tm:253℃)89質量%と、酸化チタン粒子(平均粒径:0.3μm)10質量%と、シリカ粒子(平均粒径:4μm)1質量%とからなる組成物を、20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出して未延伸フィルムとし、次に機械軸方向に温度95℃で3.6倍延伸した後、引き続き横方向に温度120℃で3.9倍延伸し、次いで225℃で5秒間熱処理を施し、厚さ50μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。ここで、得られた2軸延伸ポリエステルフィルムの中心線平均粗さは、両面とも0.21μmであった。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムの片面に、下記組成の帯電防止塗料Aを乾燥後の厚みが0.2μmとなるように塗布し、120℃で30秒乾燥し、帯電防止層Aを形成した。次いで、その上に下記組成の離型塗料B(硬化後に離型層Bとなる。)を塗布し、更に反対面に下記組成の離型塗料A(硬化後に離型層Aとなる)を順次塗布し、両面に離型層を有する離型フィルムを得た。離型塗料の硬化条件は150℃×30秒、離型層の厚みは離型層A、B共に0.2μmとなるように塗布した。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0110】
<帯電防止塗料A>
バインダー樹脂としてのポリエステル樹脂:プラスコートX450(互応化学工業株式会社、固形分濃度30質量%):25質量部
ポリチオフェン系の導電性ポリマー:バイトロンP(スタルク株式会社、固形分濃度1.3質量%):385質量部
シランカップリング剤:ビニルジメトキシモノアセトキシシラン:2.5質量部、γ−グリシドキシプロピルジメトキシモノアセトキシシラン:5質量部
溶媒:水:433質量部、イソプロピルアルコール:143質量部、ジエチレングリコール:2質量部
界面活性剤:エマルゲン420(花王株式会社):1質量部
<離型塗料A>
硬化型シリコーン樹脂:KS−847H(信越化工業(株)):100質量部
溶剤:トルエン/MEK=1/1混合溶液:1400質量部
白金系触媒:PL−50T:2質量部
<離型塗料B>
硬化型シリコーン樹脂:BY24−400(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)):100質量部
溶剤:トルエン/MEK=1/1混合溶液:1400質量部
白金系触媒:SRX−212(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)):2質量部
【0111】
[実施例2]
離型塗料Bの代わりに下記組成の離型塗料Cを用いて離型層Bを形成した以外は実施例1と同様の方法で両面離型フィルムを作成した。この離型フィルムの特性を表1に示す。
<離型塗料C>
硬化型シリコーン樹脂:KS−847H(信越化工業(株)):100質量部
剥離力コントロール剤としてのシリコーンレジン粒子:KS−3800(信越化工業(株)):25質量部
溶剤:MEK/トルエン=1/1混合溶液:1400質量部
白金系触媒:PL−50T:2質量部
【0112】
[実施例3]
離型塗料Bの代わりに下記組成の離型塗料Dを用いて離型層Bを形成した以外は実施例1と同様の方法で両面離型フィルムを作成した。この離型フィルムの特性を表1に示す。
<離型塗料D>
硬化型シリコーン樹脂:KS−847H(信越化工業(株)):100質量部
剥離力コントロール剤としてのシリコーンレジン粒子:KS−3800(信越化工業(株)):50質量部
溶剤:MEK/トルエン=1/1混合溶液:1400質量部
白金系触媒:PL−50T:2質量部
【0113】
[実施例4]
実施例1において離型塗料Bを塗布する前に、下記組成の帯電防止塗料Bを乾燥後の厚みが0.1μmとなるように塗布し、帯電防止層Bを形成し、次いでその上に離型層Bを形成した以外は実施例1同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表1に示す。
<帯電防止塗料B>
バインダー樹脂としてのアクリル樹脂:N−31−4(日本純薬株式会社、固形分濃度質量35%):21.4質量部
ポリチオフェン系の導電性ポリマー:バイトロンP(スタルク株式会社、固形分濃度1.3質量%):385質量部
シランカップリング剤:ビニルジメトキシモノアセトキシシラン:2.5質量部、γ−グリシドキシプロピルジメトキシモノアセトキシシラン:5質量部
溶媒:水:436質量部、イソプロピルアルコール:144質量部、ジエチレングリコール:2質量部
界面活性剤:エマルゲン420(花王株式会社):1質量部
【0114】
[比較例1]
実施例1において帯電防止塗料Aの代わりに下記組成の帯電防止塗料Cを用いて帯電防止層Cを形成した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。この離型フィルムの性能を表1に示す。
<帯電防止塗料C>
バインダー樹脂としてのポリエステル樹脂:プラスコートX450(互応化学工業株式会社、固形分濃度30質量%):48質量部
ポリチオフェン系の導電性ポリマー:バイトロンP(スタルク株式会社、固形分濃度1.3質量%):385質量部
溶媒:水:433質量部、イソプロピルアルコール:143質量部、ジエチレングリコール:2質量部
界面活性剤:エマルゲン420(花王株式会社):1質量部
【0115】
[比較例2]
実施例1において帯電防止塗料Aの代わりに下記組成の帯電防止塗料Dを用いて帯電防止層Dを形成した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。この離型フィルムの性能を表1に示す。
<帯電防止塗料D>
ポリチオフェン系の導電性ポリマー:バイトロンP(スタルク株式会社、固形分濃度1.3質量%):385質量部
シランカップリング剤:ビニルジメトキシモノアセトキシシラン:5質量部、γ−グリシドキシプロピルジメトキシモノアセトキシシラン:10質量部
溶媒:水:433質量部、イソプロピルアルコール:143質量部、ジエチレングリコール:2質量部
界面活性剤:エマルゲン420(花王株式会社):1質量部
【0116】
【表1】

【0117】
実施例から明らかなように、本発明の離型フィルムは、優れた離型特性を有し、帯電防止層と離型層との密着性に優れ、また帯電防止性に優れるものである。よって、本発明の離型フィルムは、接着性を有する異方性導電膜を成形する工程でキャリアフィルムとして使用する場合、或いは巻き取り時にセパレーターとして使用する場合の特性に優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリチオフェン系の導電性ポリマー(A)と、シランカップリング剤(B)と、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のバインダー成分(C)とを構成成分として含有する帯電防止層、および離型層がこの順序で積層してなる離型フィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムの一方の面に、離型層Aが積層してなり、他方の面に帯電防止層および離型層Bがこの順序で積層してなる請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.1μm以上3μm未満の酸化チタン粒子を0.1質量%以上15質量%以下、平均粒径が3μm以上6μm以下のシリカ粒子を0質量%以上2質量%以下含有する請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
異方性導電膜製造用である、請求項2または3に記載の離型フィルム。

【公開番号】特開2011−201118(P2011−201118A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70181(P2010−70181)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】