説明

離型性フィルム

【課題】
柔軟性に優れかつ生分解性を有し離型フィルムとして好適であり、環境への負荷も低減されるという優れた効果を有する離型性フィルムを提供する。

【解決手段】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35重量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65重量%からなることを特徴とする脂肪族ポリエステル組成物からなる生分解性フィルムの少なくとも片面にシリコーン樹脂層などの離型用樹脂層を積層されてなる多層フィルム。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂などの離型用樹脂による離型性を有した生分解性フィルム及びその用途に関し、積層セラミックコンデンサー製造用の工程フィルムや、包装袋の、例えば規格袋の粘着シール部の離型フィルムなどの種々の用途の離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性のあるフィルム、中でもポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂の剛性を改良する方法として、脂肪族ポリエステルとして、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分を共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(たとえば、特許文献1参照)、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分若しくはラクトンを共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(たとえば、特許文献2)が提案されている。
一方、シリコーン樹脂などの離型性樹脂層が積層されたポリエステルフィルムは、離型フィルムとして粘着フィルム、樹脂シート成形用の工程フィルムなどの用途に用いられている。最近では、積層セラミックコンデンサー製造用の工程フィルムとしても使用されている。
また、ポリエステルフィルムの片面にシリコーン樹脂を積層した離型フィルムにおいて、シリコーン樹脂と基材ポリエステルフィルムとの間の密着性を向上させるため、ポリエステルフィルムの表面に予めシランカップリング剤を架橋させたプライマ層を設けること(たとえば、特許文献3)が知られている。(特開平1−5838)
【0003】
また、ポリエステルフィルムの帯電防止効果を向上させることを目的に、ポリエステルフィルムに予め主鎖にピロリジウム環を有するポリマーからなる塗布液を塗布後にシリコーン樹脂層を積層すること(たとえば、特許文献4)が知られている。(特開平1−171940)
【0004】
【特許文献1】特開平8−239461号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平8−311181号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平1−5838号
【特許文献4】特開平1−171940号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、生分解性フィルムからなる包装袋、例えば規格袋の粘着シール部離型フィルム、またセラミックグリーンシートの成形の際のキャリアフィルム等の離型フィルムにおける環境への負荷を低減するため、生分解性を備えた離型性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35重量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65重量%からなることを特徴とする脂肪族ポリエステル組成物からなる生分解性フィルムの少なくとも片面に離型用樹脂層が積層されてなる離型性フィルムに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の柔軟性に優れかつ生分解性を有する特定の樹脂組成からなる離型性フィルムは、離型フィルムとして好適であり、環境への負荷も低減されるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の生分解性フィルムに用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)について、以下に説明する。
脂肪族ポリエステル共重合体(A)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、融点(Tm)が80〜120℃が好ましく、より好ましくは80〜115℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃が好ましく、より好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃が好ましく、より好ましくは35〜50℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)である。
融点(Tm)が80℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムを基材層として用いるには融点が低過ぎ、包装用フィルムとして用いた場合、ヒートシールする際に、ヒートシールバーにフィルムが融着する虞があり、包装適性に劣る。一方、融点(Tm)が110℃を越える脂肪族ポリエステル共重合体は、結果として2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が少なく、得られるフィルムの柔軟性が損なわれるおそれがある。
結晶化温度(Tc)が35℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、結晶化温度が低過ぎ、かかる共重合体からフィルムを得ようとしても、通常の冷却温度(5〜30℃)では完全に固化せず、得られるフィルムにニップロール等の押し跡が転写したり、冷却ロールから容易に剥がれず、外観に劣るフィルムとなる虞がある。
(Tm)−(Tc)が30℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムは耐衝撃性、耐突刺し性に劣る虞がある。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0009】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、コハク酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(A)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。
【0010】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0011】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。
かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等、かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。
【0012】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)としては、例えば、三菱化学株式会社からGS Pla(商品名)として製造・販売されている。
【0013】
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなるポリエステルである。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)と芳香族ジカルボン酸成分(b2)との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、好ましくは、融点が50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、より好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルムが成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0014】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものである。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、特に、アジピン酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましい。脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の加水分解性や生分解性を向上させ、得られるフィルムを柔軟にする。
【0015】
芳香族ジカルボン酸成分(b2)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である芳香族ジカルボン酸成分(b2)は、特に限定はされないが、通常、8〜12個の炭素原子を有する化合物、とくに8個の炭素原子を有する化合物が挙げられる。
かかる芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸のジ−C1〜C6アルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等を例示できる。
これら芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、特に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(b2)は80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%の範囲にある。芳香族ジカルボン酸成分(b2)を共重合することにより、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の耐熱性を保ちながら、柔軟なポリエステルが得られる。
【0016】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、とくには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
【0017】
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)としては、例えば、BASF社からECOFLEX(商品名)として製造・販売されている。
【0018】
脂肪族ポリエステル組成物
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル組成物は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35重量%、好ましくは95〜40重量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65重量%、好ましくは5〜60重量%からなる。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の量が2重量%未満の組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性等が改良されない虞があり、一方、65重量%を越える組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性、突刺しエネルギー等が低下する虞がある。
これら脂肪族ポリエステル組成物の中でも、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜65重量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜35重量%からなる組成物が、得られるフィルムの耐衝撃性、突刺しエネルギーが共に優れるので好ましい。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル組成物には、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の夫々別個に、あるいは組成物を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0019】
生分解性フィルム
本発明に用いられる生分解生フィルムは、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35重量%、好ましくは95〜40重量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65重量%、好ましくは5〜60重量%との脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルムである。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の含有量が2重量%未満の組成物からなるフィルムは、耐衝撃性等が改良されない虞があり、一方、65重量%を越える組成物からなるフィルムはべたつきが生じる虞がある。
本発明に用いられる生分解性フィルムに用いる脂肪族ポリエステル組成物の構成成分である脂肪族ポリエステル共重合体(A)は前記したように、融点(Tm)が80〜120℃が好ましく、より好ましくは80〜115℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃好ましく、より好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃好ましく、より好ましくは35〜50℃の範囲にあること、即ち、(冷却時の)結晶化温度が低い(結晶化が遅い)共重合体であることが必要であり、例えば、融点(Tm)が上記範囲にある脂肪族ポリエステル共重合体であっても、(Tm)−(Tc)が7〜8℃と結晶化が速い、即ち、(Tm)−(Tc)が35〜50℃の範囲を満たさない共重合体を用いた場合は、得られるフィルムは離型性フィルムとして用いた場合にべたつく虞がある。
生分解性フィルムの厚さは、通常5〜200μmであり、中でも好ましくは20〜100μmである。
本発明に用いられる生分解性フィルムは、印刷性あるいは他のフィルムとの滑り性等を改良するために、一方の表面を、たとえば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
本発明に用いられる生分解性フィルムは、種々公知の方法で製造し得る。例えば、脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を所定の量で配合した後、直接フィルム成形機に投入してT−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムにする方法、予め脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)とを所定の量で混合して押出機等で溶融混練して脂肪族ポリエステル組成物を得た後、T−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムに成形する方法を例示できる。
【0020】
離型用樹脂
本発明に用いられる離型用樹脂には、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂あるいはメラミン樹脂等の離型性に優れる樹脂として一般に使用されている樹脂である。これら離型用樹脂の中でも、シリコーン樹脂がセラミックグリーンシートを比較的容易に剥離せしめることができるので好ましい。
かかるシリコーン樹脂としては、例えば、熱縮合反応型:両末端シラノール官能性ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンあるいはメチルメトキシシロキサンとを有機錫系触媒の存在下で反応させたもの、熱付加反応型:分子鎖両末端あるいは両末端及び側鎖にビニル基を有するメチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させたもの、紫外線硬化型(ラジカル付加型):アルケニル基とメルカプト基を含有するシロキサンに光重合剤を加えたもの、紫外線硬化型(ヒドロシリル型):熱付加反応型と同じ白金系触媒を用いたもの、紫外線硬化型(ラジカル重合型):(メタ)アクリル基を含有するシロキサンに光重合剤を加えたもの、紫外線硬化型(カチオン重合型):エポキシ基を含有するシロキサンにオニウム塩光開始剤を添加したもの、及び電子線硬化型:ラジカル重合性基含有シロキサン(官能基はなくてもよく、また光開始剤がなくてもよい)が挙げられる。また、シリコーン樹脂の形態は、溶剤型、エマルジョン型、無溶剤型等の中から適宜選択して用いることができる。
これらシリコーン樹脂の中でも、熱付加反応型が好ましい。
【0021】
シリコーン樹脂層
シリコーン樹脂層の厚さは通常0.01〜5μmであり、好ましくは0.05〜1μmである。
例えば、この範囲内にあれば、生分解性フィルムへの密着性、離型工程の際の剥離強度の安定性、シリコーン樹脂成分の非移行性の点で性能の調整が可能であり、これにより目的とする優れた離型性フィルムを得ることができる。
シリコーン樹脂層はコーティング法により設けることができるが、その場合、形態的には、溶剤型、エマルジョン型、無溶剤型のいずれかの方法をとり得ることができる。ただし、シリコーン樹脂の薄膜を均一に形成させるためには、溶剤型またはエマルジョン型が望ましく、硬化型シリコーン樹脂成分のポットライフの点からも、溶剤型またはエマルジョン型が望ましい。
シリコーン樹脂の生分解性フィルムへのコーティングの方法は、溶剤型、エマルジョン型、無溶剤のいずれの形態をとるかによっても異なるが、例えば、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、バーコート法、スプレーコート法等何れの方法も採用することができ、中でも、ロールコーティング法は高速度で均一被膜を成形する方法として適している。
【0022】
溶剤型およびエマルジョン型の形態を有する熱硬化型のシリコーン樹脂をコーティングする場合、コーティングされたシリコーン樹脂の溶液または水分散液は乾燥工程へと移されるが、その際の乾燥温度は 50〜120℃の範囲であればよく、60〜110℃の範囲が好ましい。乾燥温度が50℃未満であると、熱硬化時間が長くなり生産性が低下するので好ましくない。一方、120℃を越えると、フィルムが溶融する虞があるため好ましくない。
一方、溶剤型およびエマルジョン型の形態を有する紫外線または電子線硬化型のシリコーン樹脂をコーティングする場合には、乾燥工程の後に紫外線または電子線の照射工程を有しているため、その乾燥は、溶剤または水の乾燥除去に必要な最低温度にて実施しても差し支えない。
【0023】
シリコーン樹脂の生分解性フィルムへの密着性を高めるために、シリコーン樹脂のコーティング前に、生分解性フィルムの面側にコロナ放電処理、フレーム処理、オゾン処理等の表面活性化処理、あるいはアンカー処理剤を用いたアンカーコーティング処理を施してもよい。
【0024】
さらに必要に応じて、生分解性フィルムの表面上(ただし、シリコーン樹脂層と反対面側)に、印刷層や帯電防止剤層を設けたりして使用することができる。

(実施例)
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【実施例】
【0025】
実施例1
<生分解性ポリエステル組成物の原料>
(1)脂肪族ポリエステル共重合体(A)
コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AZ91T MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):108.9℃、結晶化温度(Tc):68.0℃、(Tm)−(Tc):40.9℃、密度:1.25g/cm
(2)脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)
テレフタル酸:46モル%、アジピン酸:54モル%及び1,4−ブタンジオール:100モル%、BASF社製、商品名 ECOFLEX、MFR(190℃、荷重2160g):3g/10分、融点(Tm):112℃、密度:1.26g/cm
【0026】
<生分解性ポリエステル組成物の製造>
生分解性ポリエステル組成物として、コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)及びアジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)を表1に示す組成比で夫々計量し、40mmφの一軸押出機を用いて200℃で溶融混練して生分解性ポリエステル組成物を用意した。
<生分解性フィルムの製造>
先端にリップ幅:300mmのT−ダイを備えた40mmφ1軸押出機を用いシリンダー温度:180〜200℃、ダイ温度:220℃、チルロール温度:15℃、スクリュー回転数:40rpm、引取り速度:13m/分で、各脂肪族ポリエステル組成物を押出し、生分解性フィルムを得た。
<シリコーンコート層の塗布>
シリコーンと触媒のトルエン/メチルエチルケトン(70/30容量比)混合溶媒の溶液を調製し、上記の生分解性フィルムの塗工膜の上に、メーヤーNo.4を用いてシリコーン(:KS−847(信越化学(株)製)および触媒(PL−50T(信越化学(株)製)の塗工液塗工し、100℃のオーブンで20秒乾燥させ、 0.1g/mの塗工膜を形成させ、40℃で数十時間エージングしてサンプルを作成した。
【0027】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)剥離力[N/50mm]
上記の各サンプルを水平台の上に塗工膜を上にして載置し、その塗工膜側に粘着テープ「No.31B」(日東電工(株)製)を貼り付けて200mm×50mmの大きさにカットし、さらにその粘着テープの上から20g/cmとなるように荷重を載せ、70℃で20時間エージングした。
その後、引張試験機にて引張速度300mm/分で180°剥離を行い、剥離が安定した領域における平均剥離荷重を剥離力として求めた。
(2)ヘイズ(HZ)及び平行光線透過率(PLT)
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)及び平行光線透過率(PT:%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(3)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
【0028】
比較例1
実施例1で用いた生分解性フィルムにシリコーンコート層を塗布せずにそのまま評価した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
生分解性フィルムにシリコーンコート層を設けた実施例1は剥離力が0.1(N/50mm幅)とコート層のない比較例1の10(N/50mm幅)に比べて十分小さくなっており、離型性フィルムとしての性能が向上したのは明らかである。また離型性フィルムとしての十分な透明性、柔軟性、引っ張り強度を有している。
【0031】
実施例2
25μm厚みのポリ乳酸2軸延伸フィルム(東セロ株式会社製 パルグリーンLC)を用いてA4大の開口部のある溶断シール袋を作製した。また開口部に粘着テープ「No.31B」(日東電工(株)製)を用いて3mm幅の粘着部分を設け、その離型性フィルムとして実施例1の積層フィルムを用いたところ、離型性フィルムは十分小さい力で剥離し、また開口ふた部分を折り返し粘着部分につけたところ十分な粘着力を有しており内容物を保護できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の多層フィルムは、生分解性を有しまた離型フィルムとしての適性を備えているので、ポリ乳酸等生分解性フィルムからなる包装袋、例えば規格袋等の粘着シール部の離型フィルムなどの多種の用途に用いられる。また、積層セラミックコンデンサー製造用の工程フィルムとしても使用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35重量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65重量%からなることを特徴とする脂肪族ポリエステル組成物からなる生分解性フィルムの少なくとも片面に離型用樹脂層が積層されてなる離型性フィルム。
【請求項2】
生分解性フィルムの厚さが5〜200μm、離型用樹脂層の厚さが0.01〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の離型性フィルム。
【請求項3】
生分解性フィルムからなる包装袋の粘着シール部に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
請求項3記載の生分解性フィルムがポリ乳酸二軸延伸フィルムである請求項3に記載の離型フィルム。
【請求項5】
離型用樹脂がシリコーン樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の離型性フィルム。

【公開番号】特開2007−90652(P2007−90652A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282736(P2005−282736)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】