説明

離型用フィルム

【課題】金型や成形品との剥離性に優れ、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写性に優れるとともに、成形品の表面平滑性が得られ、さらには、140℃前後の使用温度における耐熱性も有する離型用フィルムを提供する。
【解決手段】JIS A 硬度が70以上、ビカット軟化温度が100〜180℃であるポリウレタン系エラストマー100質量部に対して、フッ素含有アルコール系化合物とフッ素含有ジオール化合物からなる群から選択される1つ又は複数の化合物を0.1〜5.0質量部の範囲に含有する熱可塑性エラストマー組成物からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子や半導体素子のモールド成形時、特には、LEDレンズのモールド成形時に用いられる離型用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LED、フォトアイソレータ、フォトトランジスター、フォトダイオード、CCD、CMOS等の光半導体素子や、トランジスター、IC、LSI、超LSI等の半導体素子は、シリコーンゴム組成物やエポキシ樹脂組成物を封止材とし、モールド成形により封止されている。
【0003】
上述の光半導体素子や半導体素子の封止にはモールド成形装置が用いられ、シリコーンゴム組成物やエポキシ樹脂組成物が封止材として金型へ充填され、成形される。
【0004】
金型と成形品とを離型する方法としては、例えば、金型と充填される封止材との間に離型用フィルムを介在させる方法が実用化されている(特許文献1参照)。離型用フィルムは、モールド成形装置内でRoll to Rollで供給され、成形加工温度に温調されている金型に入り、真空で吸引されて金型に密着し、その後、封止材が充填される。一定時間後に金型が開かれると、離型用フィルムは金型に吸引された状態で、成形品が離型用フィルムから剥がされる。この離型用フィルムには、例えば、熱可塑性フッ素樹脂の四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE樹脂)や四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP樹脂)からなる単層のフィルムが使用されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、このような離型用フィルムを、シリコーンゴム組成物を封止材とするLEDレンズの成形に用いると、例えば、底面がφ6mm程度で高さが4mm程度の砲弾型レンズ形状に対しては、離型用フィルムが真空で吸引されても伸びないことがあり、伸びても金型に密着せず、設計寸法通りのLEDレンズが得られない不具合がある。また、離型用フィルムの厚さを薄くして伸び易くすると、真空で吸引される際に金型のエッジで離型用フィルムが切れる不具合がある。
【0006】
また、離型用フィルムとして、結晶成分にブチレンテレフタレートを含む結晶性芳香族ポリエステル含有の樹脂組成物からなるフィルムを使用する方法が知られている(特許文献3参照)。
【0007】
しかし、離型用フィルムとして、特許文献3に示すように、ブチレンテレフタレートを含む結晶性芳香族ポリエステル含有の樹脂組成物からなるフィルムをLEDレンズの成形に用いる場合、離型用フィルムが真空で吸引されると金型へ密着はするものの、降伏点を超えて伸ばされるため、離型用フィルムが部分的に薄くなり、成形されたLEDレンズの表面に凹凸や皺が生じる不具合がある。また、シリコーンゴム組成物としては付加型液状シリコーンゴムが用いられるが、離型用フィルム中に存在する化合物が付加型液状シリコーンゴムの触媒毒となって硬化阻害が起こり、離型用フィルムとの接触面が硬化せずにゲル状粘着物が残る不具合がある。このため、付加型液状シリコーンゴムを用いるLEDレンズのモールド成形においては、離型用フィルムとして好適に使用できるフィルムがないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−142105号公報
【特許文献2】特開2001−310336号公報
【特許文献3】特開2007−224311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、付加型液状シリコーンゴムを用いるLEDレンズのモールド成形において、金型や成形品との剥離性に優れる離型用フィルムであって、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写性に優れるとともに、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることなく成形品の表面平滑性が得られ、さらには、140℃前後の使用温度における耐熱性も有する離型用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の離型用フィルムは、JIS A硬度が70以上、ビカット軟化温度が100〜180℃であるポリウレタン系エラストマーに、フッ素含有アルコール系化合物とフッ素含有ジオールからなる群から選択される化合物を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなることを特徴とする。
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
【0012】
(1)JIS A 硬度が70以上、ビカット軟化温度が100〜180℃であるポリウレタン系エラストマー100質量部に対して、フッ素含有アルコール系化合物とフッ素含有ジオール化合物からなる群から選択される1つ又は複数の化合物を0.1〜5.0質量部の範囲に含有する熱可塑性エラストマー組成物であることを特徴とする離型用フィルム。
【0013】
(2)フッ素含有アルコール系化合物は一般式(A)で表される化合物であり、フッ素含有ジオール化合物は一般式(B)で表される化合物であることを特徴とする(1)に記載の離型用フィルム。
Rf(CH)OH ・・・(A)
(式中Rfは炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し、mは1〜5である。)
Rf(CH)OCHCH(OH)CHOH ・・・(B)
(式中Rfは炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、nは1又は2の整数である。)
【0014】
(3)熱可塑性エラストマー組成物は、滑剤、ブロッキング防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤に属する1つ又は複数の添加剤をさらに含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の離型用フィルム。
【0015】
(4)フィルムの引張弾性率がフィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)ともに10〜500N/mmの範囲であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の離型用フィルム。
【0016】
(5)フィルムの50%モジュラス(50%Mo)におけるフィルム縦方向(MD)とフィルム横方向(TD)との比(MD)/(TD)が0.9〜1.2の範囲であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の離型用フィルム。
【0017】
(6)フィルムの50%モジュラス(50%Mo)と100%モジュラス(100%Mo)との比(100%Mo)/(50%Mo)がフィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)ともに1.0〜1.6の範囲であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の離型用フィルム。
【0018】
(7)フィルムの引張伸びがフィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)ともに350%を超えることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の離型用フィルム。
【発明の効果】
【0019】
本発明の離型用フィルムによれば、金型や成形品との剥離性に優れ、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写性に優れるとともに、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることなく成形品の表面平滑性が得られ、さらには、耐熱性をも備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る砲弾型LEDレンズの側面図である。
【図2】(a)本発明の実施形態に係る砲弾型LEDレンズの金型の上面図である。 (b)本発明の実施形態に係る砲弾型LEDレンズの金型の図2(a)のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る離型用フィルムのフィルム製造装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、図3に示したフィルム製造装置の材料投入ホッパーの周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々検討した結果、ポリウレタン系エラストマーの中でも、JIS
A 硬度が70以上、比重が1.05〜1.30及びビカット軟化温度が100〜180℃であるポリウレタン系エラストマー100質量部に対して、フッ素含有アルコール系化合物とフッ素含有ジオール化合物からなる群から選択される1つ又は複数の化合物を0.1〜5.0質量部の範囲に含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる離型用フィルムは、金型や成形品との剥離性に優れ、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写性に優れるとともに、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることなく成形品の表面平滑性が得られ、さらには、耐熱性をも備えることができることを究明した。
【0022】
本発明におけるポリウレタン系エラストマーは、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の3成分の反応により得られる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーである。
【0023】
上述のポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル等の脂環族ジイソシアネート類、上記イソシアネートのビウレット体、ダイマー体、トリマー体、ダイマー・トリマー体、カルボジイミド体、ウレトンイミン体、2官能以上のポリオール等と上記イソシアネートとの反応で得られるアダクト体等を挙げることができる。また、メタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、フェノール、クレゾールなどの活性水素を分子内に1個有するブロック剤でイソシアネート基の一部を安定化したポリイソシアネートも挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
【0024】
上述のポリオールは数平均分子量が500〜10000の高分子ポリオールであり、これらにはポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等がある。これらの高分子ポリオールは1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
【0025】
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、ポリカルボン酸とポリオールとから、場合によりジアミン又はアミノアルコールを併用して、縮合反応により得られるものが挙げられる。
【0026】
このポリカルボン酸としては、例えば、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、フタル酸、フタル酸アルキルエステル類、トリメリット酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等がある。また、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンなどの環状エステル類の開環重合によって得られるものも挙げられる。
【0027】
このポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類が挙げられる。ジアミン又はアミノアルコールとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類が挙げられる。また、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0028】
ポリカーボネートポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるものが挙げられる。
【0029】
ポリエーテルポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及びこれらを共重合したポリエーテルポリオール、さらに、上述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。
【0030】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、上記ポリエステルポリオールを得る際の縮合反応に使用するポリオールの一部あるいは全部にポリエーテルを用いるほかはポリエステルポリオールと同じようにして得られるものが挙げられる。
【0031】
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0032】
上述の鎖延長剤は、数平均分子量が500未満の活性水素含有化合物であり、例えば、上記低分子ポリオール類、上記低分子ポリアミン類、上記低分子アミノアルコール類等が挙げられる。
【0033】
ポリウレタン系エラストマーの製造には、公知の製造方法、例えば、ワンショット法、プレポリマー法、バッチ反応法、連続反応法、ニーダーによる方法、押出機による方法などの方法が採用できる。
【0034】
本発明に用いるポリウレタン系エラストマーの硬度は、JIS K 7311の試験法により測定するJIS A硬度が70以上である。さらに、JIS A硬度で100以上の場合、D硬度を適用し、D硬度の70以下を上限とするのが好ましい。このJIS A硬度は、好ましくは80以上、より好ましくは90以上である。JIS A硬度が60未満では、ゴム性が強くなるため、モールド成形装置内における離型用フィルムの搬送時に、離型用フィルムが伸びて搬送が安定しない不具合がある。他方、D硬度で70を超える場合、押出成形時に原料のポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の3成分に由来するゲルが発生する不具合がある。
【0035】
本発明に用いるポリウレタン系エラストマーのビカット軟化温度は、JIS K7206の試験法により測定され、100〜180℃の範囲である。このビカット軟化温度は、好ましくは110〜180℃、より好ましくは120〜180℃、さらに好ましくは130〜180℃の範囲である。ビカット軟化温度が100℃未満では、使用時に溶融してしまう不具合がある。すなわち、耐熱性が得られない。他方、ビカット軟化温度の上限は180℃であるが、180℃を超えるビカット軟化温度を有するポリウレタン系エラストマーは得られていない。
【0036】
本発明におけるフッ素含有アルコール系化合物とは、一般式(A)としてRf(CH)OH(式中Rfは炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し、mは1〜5である。)で表される化合物である。その具体例としては、C13CHOH、C15CHOH、C17CHOH、C17CHCHOH、C19CHCHOH、C1021CHCHOH、(CF)CF(CF)CHCHOH、CFCFO(CFCFO)1〜5CFCHOH、CFCFCFO(CFCFCFO)1〜3CFCFCHOH等が挙げられ、これらの中では、直鎖状パーフルオロアルキル基を含有するC13CHOH、C15CHOH、C17CHOH、C17CHCHOH、C19CHCHOH、C1021CHCHOHが好ましい。
【0037】
本発明におけるフッ素含有ジオール化合物とは、一般式(B)としてRf(CH)OCHCH(OH)CHOH(式中Rfは炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、nは1又は2の整数である。)で表される化合物である。その具体例としては、C13CHCHOCHCH(OH)CHOH、C15CHCHOCHCH(OH)CHOH、C17CHCHOCHCH(OH)CHOH、C19CHCHOCHCH(OH)CHOH、C1021CHCHOCHCH(OH)CHOH、(CF)CF(CF)CHCHOCHCH(OH)CHOH等が挙げられ、これらの中では、直鎖状パーフルオロアルキル基を含有するC13CHCHOCHCH(OH)CHOH、C15CHCHOCHCH(OH)CHOH、C17CHCHOCHCH(OH)CHOH、C19CHCHOCHCH(OH)CHOH、C1021CHCHOCHCH(OH)CHOHが好ましい。
【0038】
フッ素含有アルコール系化合物及びフッ素含有ジオール化合物(以下、フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物と省略する)は、離型用フィルムに滑性を付与する目的でポリウレタン系エラストマーに混合する。これらのフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物の混合により、フィルム表面に滑性が付与されるので、モールド成形装置内における離型用フィルムの搬送が滑らかになる効果、金型に接触する際に離型用フィルムの皺を防止する効果、封止材として使用されるシリコーンゴム組成物との剥離性を向上させる効果が得られる。
【0039】
また、ポリウレタン系エラストマーのみからなるフィルムには、その構成成分であるポリイソシアネートが残存しており、これが付加型液状シリコーンゴムの触媒毒となって硬化阻害が起こる。ところが、ポリウレタン系エラストマーにフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を混合すると、ポリイソシアネートと反応して、ポリウレタン系エラストマーの主骨格にパーフルオロアルキル基が結合するとともに、触媒毒を消滅させる。この作用により、ポリウレタン系エラストマーにフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を混合してなるフィルムであれば、付加型液状シリコーンゴム組成物の成形に離型用フィルムとして使用しても、触媒毒による硬化阻害が起こらず、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることがない。
【0040】
フッ素含有アルコール系化合物とフッ素含有ジオール化合物からなる群から選択される1つ又は複数の化合物の混合量は、ポリウレタン系エラストマー100質量部に対して0.1〜5.0質量部の範囲とする。混合量が0.1質量部未満では、混合した効果が発現しない。他方、5.0質量部を超えて混合しても効果が増大せず、また、これらフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物が未反応として残り、フィルム表面にブリードアウトして成形品の表面を汚染する不具合がある。
【0041】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、他の熱可塑性エラストマーを混合することができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0042】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、例えば、アマイド系ワックス等の滑剤、シリカ等のブロッキング防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を混合することができる。
【0043】
本発明における離型用フィルムは、JIS Z 1702に準拠して温度23℃、引張速度100mm/minで測定するフィルムの引張弾性率が、フィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)ともに10.0〜500N/mmの範囲である。この引張弾性率は、好ましくは20.0〜400N/mmの範囲、より好ましくは30.0〜300N/mmの範囲である。引張弾性率が10.0N/mm未満では、モールド成形装置内で離型用フィルムが巻回体から引き出される際に、フィルムの張りが弱く弛みが出る不具合がある。他方、引張弾性率が500N/mmを超える場合、離型用フィルムが金型内において真空で吸引される際、フィルムが伸びずに金型に密着しない不具合がある。
【0044】
本発明における離型用フィルムは、JIS Z 1702に準拠して温度23℃、引張速度100mm/minで測定するフィルムの50%モジュラス(50%Mo)におけるフィルム縦方向(MD)とフィルム横方向(TD)との比(MD)/(TD)が、0.90〜1.20の範囲である。この(MD)/(TD)は、好ましくは0.95〜1.20の範囲である。(MD)/(TD)は、押出成形法により成形されるフィルムでは0.90未満となることはない。他方、(MD)/(TD)が1.20を超える場合、モールド成形装置内で離型用フィルムが金型へ供給される際、フィルムに皺が発生する不具合がある。
【0045】
本発明における離型用フィルムは、JIS Z 1702に準拠して温度23℃、引張速度100mm/minで測定するフィルムの50%モジュラス(50%Mo)と100%モジュラス(100%Mo)の比(100%Mo)/(50%Mo)が、フィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)についてともに1.00〜1.60の範囲である。この(100%Mo)/(50%Mo)は、好ましくは1.00〜1.50の範囲である。(100%Mo)/(50%Mo)が1.00未満では、フィルムの伸びの増加に伴う応力の増加が発生しないため、均一なフィルムの伸びが得られず、離型用フィルムが金型内において真空で吸引される際に皺が発生する不具合がある。他方、(100%Mo)/(50%Mo)が1.60を超える場合、フィルムの伸びの増加に伴う応力の増加が大きく、離型用フィルムが金型内面に密着するまでフィルムが伸び切らない不具合がある。
【0046】
本発明における離型用フィルムは、JIS Z 1702に準拠して温度23℃、引張速度100mm/minで測定するフィルムの引張伸びが、フィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)ともに350%以上である。この引張伸びは、好ましくは400%以上である。引張伸びが350%未満では、離型用フィルムが金型内において真空で吸引される際に、金型のエッジで切れる不具合がある。
【0047】
本発明におけるポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物の作製は、(1)エラストマーの融点未満の温度でポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とを攪拌混合させた後、ポリウレタン系エラストマーの融点以上の温度で溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を作製する方法と、(2)ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とを分散混合することなしに、ポリウレタン系エラストマーを融点以上の温度で溶融させた中にフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を添加して溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を作製する方法とがあり、適宜選択して用いればよい。
【0048】
以下、(1)の方法を説明する。ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物との攪拌混合は、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーあるいは万能攪拌ミキサー等の公知の混合機を使用して行うことができる。
【0049】
ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物の作製は、上記方法で作製した攪拌混合物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して溶融混練することにより行う。この熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合の押出機の温度は、ポリウレタン系エラストマーの融点以上240℃以下である。
【0050】
以下、(2)の方法を説明する。ポリウレタン系エラストマーを単軸押出機、二軸押出機等の溶融混練機で溶融させた後、フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を添加して溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物を作製する。この熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合の押出機の温度は、ポリウレタン系エラストマーの融点以上240℃以下である。
【0051】
単軸押出機あるいは二軸押出機などの押出機を使用してポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合は、後述のフィルムを成形する場合と同様に、押出機内および組成物間の空隙に存在する空気を不活性ガスで置換した不活性ガス雰囲気下で溶融混練してもよい。
【0052】
通常、熱可塑性エラストマー組成物は、粉砕機あるいは裁断機で粉状、顆粒状あるいはペレット状に加工して使用される。
【0053】
上述の熱可塑性エラストマー組成物からなる離型用フィルムは、例えば、溶融押出法や溶融キャスト法等、従来公知の方法によって成形することができる。
以下の例では、Tダイスを用いた溶融押出法により離型用フィルムを成形する方法を挙げる。
【0054】
このような方法で得られる離型用フィルムは、熱可塑性エラストマー組成物の成形材料を、単軸押出機あるいは二軸押出機等の押出機を使用し、熱可塑性エラストマー組成物の特性に応じて押出機内及び成形材料間の間隙に存在する空気を窒素ガスで置換した雰囲気下において、溶融混練し、押出機先端に配置されたTダイス先端のリップ部から溶融押し出された離型用フィルムを引取機内の圧着ロールと冷却ロールとの間に直接挟んで冷却し、あるいは、圧着ロール側と冷却ロール側の両方もしくは片方からセパレータを挿入して挟んで冷却し、次いで巻取機で巻取管に順次巻取ることにより得られる。
【0055】
図3は、上述の方法で離型用フィルムを製造するフィルム製造装置の概略を示した構成図である。また、図4は、図3に示したフィルム製造装置の材料投入ホッパーの周辺の断面図である。図3において、フィルム製造装置は、大略、材料投入ホッパー2、押出機1、Tダイス7、引取機11、巻取機15を備えて構成される。材料投入ホッパー2は、成形材料を投入するようになっており、図4に示すように、材料投入ホッパー2の押出機1に接続される途中において、窒素ガス供給用パイプ3がスペーサー3aを介して挿入されている。また、窒素ガス供給用パイプ3は、材料投入口1cのほぼ中心軸に沿うように屈曲され、その先端は押出機1内の押出スクリュー1aの外周近傍まで延設されている。材料投入ホッパー2から投入される成形材料中あるいは押出機1内に含まれる酸素は、押出機1の押出スクリュー1aで成形材料が混合、撹拌される際に、窒素ガス供給用パイプ3に供給される窒素ガスで置換されるようになる。
【0056】
押出機1は、成形材料を押出スクリュー1aによって混合、撹拌しながら矢印B方向に搬送させ、押出機1のシリンダー1b内に組み込まれた電熱手段によって、成形材料を加熱、溶融する。このように溶融されて搬送される成形材料は、図3に示す接続管4を介してフィルター手段5に送給される。そして、フィルター手段5によって、未溶融の成形材料を分離し、溶融された成形材料をギヤポンプ6へ送給する。ギヤポンプ6では、溶融された成形材料の圧力を高めながらTダイス7に溶融成形材料を押し出す。Tダイス7では、所定圧力で溶融成形材料を押し出し、Tダイス7のリップ部7aから所定厚み、所定幅のフィルム8を成形する。このようにして成形されたフィルム8は、引取機11の冷却ロール10の外周面上に引き取られながら圧着ロール9で所定厚みに調整され、さらに、冷却、固化され、搬送ロール対12、13で巻取機15に搬送される。
【0057】
巻取機15では、フィルム8は、案内ロール15a、15b、15cで案内されて巻取管16によって巻き取られる。なお、搬送ロール対12、13と案内ロール15aとの間には、厚さ測定器14が配設されており、所望の厚さとなるように、厚さ測定器14で測定された厚さに基づいて、冷却ロール10の周速度を調整、制御するようになっている。これにより上記離型用フィルムが形成される。
【0058】
離型用フィルムは、成形品が必要とする表面形状に応じて、フィルムの表面形状を形成すればよい。例えば、LED等でその表面が鏡面となる場合、離型用フィルムの表面を鏡面にした離型用フィルムを用いる。また、ICやLSI等はその表面に微細な凹凸を形成させるので、離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成した離型用フィルムを用いる。
【0059】
離型用フィルムの表面形状を形成する方法としては、表面を鏡面にする場合は、前述した金属製の冷却ロールの表面を鏡面にしておき、該冷却ロールに溶融状態にある離型用フィルムを圧着ロールで圧着し、離型用フィルムの表面を鏡面に整面する方法がある。また、セパレータを用いる場合、セパレータとして鏡面仕上げのPETフィルムやOPPフィルムを使用し、その表面を転写させる方法がある。
【0060】
離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成する場合は、前述した金属製の冷却ロールの外周面に微細な凹凸を形成しておき、該冷却ロールに溶融状態にある離型用フィルムを圧着ロールで圧着する際、冷却ロールの外周面に形成された微細な凹凸を離型用フィルム表面に転写させる方法がある。また、セパレータを用いる場合、セパレータとして表面をマット加工したPETフィルムやOPPフィルムを使用し、その表面を転写させる方法がある。
【0061】
離型用フィルムの表面を鏡面とする場合、その表面粗さが、JIS B0601−2001に準拠し、速度0.6mm/秒、カットオフ値0.8mm、評価長さ8.0mmで測定される算術平均粗さRaが0.10以下、最大高さ粗さRzが1.00以下になるように、表面を適宜形成すればよい。算術平均粗さRaが0.10以下及び最大高さ粗さRzが1.00以下であれば、離型用フィルムの表面が転写される成形品の表面は平滑となる。
【0062】
離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成する場合、その表面粗さが、上記と同様に測定される算術平均粗さRaが0.5以上、最大高さ粗さRzが5.00以上となるように、表面を適宜形成すればよい。
【0063】
本発明の離型用フィルムは、厚さが5μm〜500μmの範囲であり、好ましくは10μm〜400μmの範囲であって、使用する金型の形状に応じて適宜選択すればよい。離型用フィルムの厚さを5μm未満とした場合、使用時に金型に追従した際、離型用フィルムが伸ばされて薄くなって裂けたり、封止材の圧力で破れたりする不具合があるので好ましくない。また、500μmを超える場合、離型用フィルムの厚さが障害になり、微細な構造を有する金型に追従できなくなることや、金型の複雑な形状が成形品に転写されなくなる不具合があるので好ましくない。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の離型用フィルムの実施例を表1ないし表2を用いて説明する。
なお、本発明に係わる離型用フィルムは実施例1ないし実施例8に何ら限定されるものではない。
ここで、表1ないし表2に示すポリウレタン系エラストマー1、フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物1及びフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物2は、次に示す材料が用いられている。
【0065】
(ポリウレタン系エラストマー1)
ミラクトランE598PNAT:商品名、日本ポリウレタン工業社製、JIS
A 硬度98、ビカット軟化温度141℃
(フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物1)
エフトップMF−100:商品名、三菱マテリアル社製、3−(2−ペルフルオロヘキシルエトキシ)−1,2−ジヒドロキシプロパン(C13CHCHOCHCH(OH)CHOH)
(フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物2)
エフトップPDFOH:商品名、三菱マテリアル社製、ペンタデカフルオロオクタノール(C15CHOH)
【0066】
以下、表1ないし表2に基づき、離型用フィルムの作製、剥離性、耐熱性、型寸法転写性、ゲル状粘着物の有無、表面平滑性及び実使用性について詳述する。なお、表3〜4の比較例1〜5においても同様に適用される内容となっている。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
(離型用フィルムの作製)
熱可塑性エラストマー組成物をφ40mm、L/D=25の単軸押出機(アイ・ケー・ジー社製)に供給し、圧縮比2.5のフルフライト押出スクリューを使用してシリンダー温度180℃〜210℃の条件下で溶融混練し、幅400mmのTダイスからダイス温度210℃〜220℃の条件下で連続的に押し出した。この押し出しした離型用フィルムを、引取機内で、圧着ロール側からマット加工PETフィルムをセパレータとし、冷却ロール側から鏡面加工PETフィルムをセパレータとして供給し、それらを圧着ロール冷却ロールとの間に挟んで冷却し、巻取機において両端部をスリット刃で裁断し、離型用フィルムを巻取管に巻き取ることにより、表1ないし表3に記載の厚さで、幅250mm、長さ50mの離型用フィルムを製造した。これらの離型用フィルムを、80℃の雰囲気下に24時間放置後、次いで40℃の雰囲気下で168時間放置してエージングを行った。エージング終了後、セパレータのマット加工PETフィルム及び鏡面加工PETフィルムを剥がしながら、離型用フィルムを巻き直して、評価用の離型用フィルムを得た。
【0072】
(評価の方法)
図1は、リード線21a、21bを備えた砲弾型LEDレンズ20の側面図である。評価は、図1に示すレンズ形状を具備する、図2(a)、(b)に示す金型を使用し、金型30の表面に複数のレンズ成形凹部31に沿って離型用フィルムを吸着させた後、シリコーンゴム組成物を滴下して熱プレス成形し、剥離性、耐熱性、型寸法転写性、ゲル状粘着物の有無、表面平滑性をそれぞれ評価した。
【0073】
具体的には、金型に対して離型用フィルムのマット面が金型側、鏡面がエアー側になるよう離型用フィルムを張設し、真空で吸引して離型用フィルムを金型に吸着させた。次いで、離型用フィルム上にシリコーンゴム組成物OE−6636(商品名、東レ・ダウコーニング社製)を滴下し、これらに表面がハードクロムメッキされた平板金型を押し当て、二つの金型で挟持させて熱プレス成形した。成形した積層品の、離型用フィルムと硬化したシリコーンゴムとの剥離性、離型用フィルムの耐熱性、硬化したシリコーンゴムについて型寸法転写性、ゲル状粘着物の有無及び表面平滑性を評価した。熱プレス成形は、温度140℃、圧力10kg/cm、5分間の条件で実施した。
【0074】
(剥離性)
剥離性の評価は、成形したシリコーンゴム組成物が離型用フィルム上に残ることなく剥離できた場合は「○」、シリコーンゴム組成物が部分的に破断して離型用フィルム上に残存した場合は「×」として示した。
【0075】
(耐熱性)
耐熱性の評価は、成形したシリコーンゴム組成物を剥離した離型用フィルムを目視で観察し、溶融、溶断がなくフィルム形状を保持していた場合は「○」、離型用フィルムに溶融、溶断があった場合を「×」として示した。
【0076】
(型寸法転写性)
型寸法転写性は、成形したシリコーンゴム組成物の寸法を測定し評価した。レンズ高さの評価基準を、穴深さ4mmについて離型用フィルムの厚さを減じた寸法からさらに−0.1mm以内の範囲、すなわち、((4−離型用フィルムの厚さ)−0.1)mm以上とした。25個のレンズについてすべて基準以内だった場合は「○」、1個でも基準を満たさない形状があった場合を「×」として示した。
【0077】
(ゲル状粘着物の有無)
ゲル状粘着物の有無は、成形したシリコーンゴム組成物の表面を指で触り、粘着感を確認した。シリコーンゴムの表面に粘着感がなく、指を離すと指紋の付着がなかった場合を「○」、表面に粘着感があり、指を離すと指紋が付着した場合を「×」として評価した。
【0078】
(表面平滑性)
表面平滑性は、成形したシリコーンゴム組成物の表面状態を目視で評価した。シリコーンゴムの表面に凹凸や皺の発生がなかった場合を「○」、凹凸や皺の発生があった場合を「×」として示した。
【0079】
(実使用性)
実使用性については、モールド成形装置で樹脂モールド成形することにより確認・評価した。具体的には、モールディング装置として、アピックヤマダ社製のモールド成形装置G-LINE manual press(商品名)において、シリコーンゴム組成物としてOE−6636 (商品名、東レ・ダウコーニング社製)を用い、実使用性を目視により確認した。
【0080】
実使用性の評価は、モールド成形装置内で離型用フィルムが搬送される際にフィルムが弛むことなく供給され、吸着時にはフィルムに皺の発生がなく、熱プレス成形後は、離型用フィルムとシリコーンゴム組成物との剥離性が良好で、硬化したシリコーンゴム組成物の表面は凹凸や皺がなく平滑でゲル状粘着物がなく、離型用フィルムに破れや溶断、シリコーンゴム組成物の残りがなく、金型に汚れがなかった状態を「○」、どれかに不具合があった場合を「×」として示した。
【0081】
このような結果から、比較例1では、熱可塑性エラストマー組成物のフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物の混合量を本発明の混合量未満としたが、成形品の表面にゲル状粘着物が残る不具合があった。比較例2では、熱可塑性エラストマー組成物のフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を本発明の混合量を超えて混合したが、成形品の表面に離型用フィルムからブリードアウトしたオイルが付着する不具合があった。比較例3では、旭硝子社製ETFEフィルム、アフレックス(商品名)の厚さ100μmのものを比較対象としたが、型寸法転写性が劣り、実使用性が得られなかった。比較例4では、旭硝子社製ETFEフィルム、アフレックス(商品名)の厚さ25μmのものを比較対象としたが、金型内で吸着される際にフィルムが破れ、実使用性が得られなかった。比較例5では、東レ・デュポン社製のハイトレル5577(商品名)、ポリエステル・ポリエーテル共重合体、D
硬度55、ビカット軟化温度192℃の熱可塑性エラストマー組成物からなる厚さ50μmの離型用フィルムを比較対象とした。シリコーンゴム組成物からなる成形品の表面に皺が発生し、表面平滑性が劣り、また、ゲル状粘着物もあり、実使用性が得られなかった。
【0082】
これに対し、本発明による各実施例の離型用フィルムは、剥離性が得られていることに加え耐熱性を有し、型寸法転写性に優れ、ゲル状粘着物が残ることなく表面平滑性が得られ、さらに、実使用性が付与されていることが明らかとなる。このことから、本発明によれば、封止材を成形加工して得られる成形品との剥離性に優れ、しかも、形状と表面性に優れる成形品を得られる離型用フィルムを得ることができる。
【0083】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0084】
1 押出機
2 材料投入ホッパー
3 窒素ガス供給用パイプ
4 接続管
5 フィルター
6 ギヤポンプ
7 Tダイス
7a リップ部
8 フィルム
9 圧着ロール
10 冷却ロール
11 引取機
12、13 搬送ロール対
14 厚さ測定器
16 巻取管
17a、17b 送り出しロール
18a、18b セパレータ
20 砲弾型LEDレンズ
21a、21b リード線
30 モールド金型
31 レンズ成形凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS A 硬度が70以上、ビカット軟化温度が100〜180℃であるポリウレタン系エラストマー100質量部に対して、フッ素含有アルコール系化合物とフッ素含有ジオール化合物からなる群から選択される1つ又は複数の化合物を0.1〜5.0質量部の範囲に含有する熱可塑性エラストマー組成物からなることを特徴とする離型用フィルム。
【請求項2】
前記フッ素含有アルコール系化合物は一般式(A)で表される化合物であり、前記フッ素含有ジオール化合物は一般式(B)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の離型用フィルム。
Rf(CH)OH ・・・(A)
(式中Rf1は炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し、mは1〜5である。)
Rf(CH)OCHCH(OH)CHOH ・・・(B)
(式中Rfは炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、nは1又は2の整数である。)
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマー組成物は、滑剤、ブロッキング防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤に属する1つ又は複数の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の離型用フィルム。
【請求項4】
フィルムの引張弾性率がフィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)ともに10〜500N/mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の離型用フィルム。
【請求項5】
フィルムの50%モジュラス(50%Mo)におけるフィルム縦方向(MD)とフィルム横方向(TD)との比(MD)/(TD)が0.9〜1.2の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の離型用フィルム。
【請求項6】
フィルムの50%モジュラス(50%Mo)と100%モジュラス(100%Mo)との比(100%Mo)/(50%Mo)がフィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)ともに1.0〜1.6の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の離型用フィルム。
【請求項7】
フィルムの引張伸びがフィルム縦方向(MD)及びフィルム横方向(TD)ともに350%を超えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の離型用フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71381(P2013−71381A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213444(P2011−213444)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】