説明

難燃性ポリオレフィ系樹脂フィルム

【課題】 難燃性、強度、柔軟性、加工性及び耐熱性等に優れるポリオレフィン系樹脂フィルム、特にハーネステープ等の粘着テープ用のフィルムとして好適に用いられる難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルムの提供。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂及び鉱物油系軟化剤を含み、かつ10%モジュラスが2〜10N/10mmであるポリオレフィン系樹脂組成物100重量部及び特定のリン酸塩化合物85〜150重量部からなる難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、強度、柔軟性、加工性及び耐熱性等に優れるポリオレフィン系樹脂フィルム、特にハーネステープ等の粘着テープ用のフィルムとして好適に用いられるポリオレフィン系樹脂フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、電車、バスなどの車両の他、航空機、船舶、家屋、工場などの電気機器に用いられる絶縁テープ等、各種の粘着テープ分野においては、適度な柔軟性と伸長性を有し難燃性、機械的強度、耐熱変形性、電気絶縁性、成形加工性などの点に優れ、さらに、比較的安価なことから、ポリ塩化ビニル製フィルムが使用されていた。特に、自動車などの電気配線に使用されるワイヤーハーネスの結束用粘着テープ(ハーネステープ)には、高度の難燃性、高強度が要求され、かかる要求を満たすものとして、ポリ塩化ビニル系樹脂製フィルムが汎用されてきた。
【0003】
ところが、近年の環境意識の高まりの中で、ポリ塩化ビニル系樹脂を焼却処理した場合にダイオキシンや塩素ガスなどの有毒ガスが発生する恐れがあるということから、その使用を制限し、環境負荷が少ない材料へ転換するという動きがある。
そこでポリ塩化ビニル系樹脂に代わる材料として、ハロゲンを含まないポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を粘着テープ基材に用いることが検討されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂はポリ塩化ビニル系樹脂に比べ燃えやすいという欠点があるため、難燃剤の添加が必須であり、一般に、難燃剤としては環境負荷が少ない金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等)等の無機金属化合物からなる無機系難燃剤が使用されていた(特許文献1)。
また、難燃性のポリオレフィン系樹脂組成物としては、ポリオレフィン系樹脂に特定のリン酸塩化合物を特定量配合したポリオレフィン系樹脂組成物が知られている(特許文献2)。しかしながら該樹脂組成物を用いても、ポリオレフィン系樹脂フィルムとしては充分に満足するだけの難燃性が得られなかった。
【特許文献1】特開2004−35732号公報
【特許文献2】特開2003−26935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、難燃性が良好で、且つ、強度、柔軟性、加工性及び耐熱性等の諸性能に優れるポリオレフィン系樹脂フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明の要旨は、
(1) 下記(A)ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部及び(B)成分85〜150重量部からなる難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(A)ポリオレフィン系樹脂組成物:ポリオレフィン系樹脂及び鉱物油系軟化剤を含み、かつ10%モジュラスが2〜10N/10mm
(B)成分:(b1)下記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物、又は(b2)下記一般式(3)と下記一般式(4)でそれぞれ表されるリン酸塩化合物の組み合わせ
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、nは1〜100の整数であり、Xは〔RN(CHNR〕、ピペラジン又はピペラジン環を含むジアミンであり、R、R、R及びRはそれぞれHもしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、R、R、R及びRは同一の基であっても異なってもよい:mは1〜10の整数であり、また、式中、YはNH基又は下記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体である;但し、0<p≦n+2、0<q≦n+2かつ0<p+q≦n+2)
【0008】
【化2】

(式中、Z及びZは同一でも異なっていてもよく、−NR基〔ここでR、Rは同一又は異なったHもしくは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはメチロール基〕、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルコキシル基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基である)
【0009】
【化3】

(式中、X、p及びnは上記一般式(1)で表すものと同様である。)
【0010】
【化4】

(式中、Y、q及びnは上記一般式(1)で表すものと同様である。)
(2) (A)ポリオレフィン系樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を75〜95重量%、かつ鉱物油系軟化剤を5〜25重量%含む上記(1)に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(3) (A)ポリオレフィン系樹脂組成物が、(a1)ブロックポリプロピレンを20〜70重量%及び、(a2)メタロセン触媒を用いて重合された、エチレン単独重合体及びエチレンを主体とする共重合体の少なくとも1方を10〜50重量%含む上記(1)に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(4) (A)ポリオレフィン系樹脂組成物がスチレン系熱可塑性エラストマーを含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(5) 鉱物油系軟化剤が、非芳香族系ゴム用鉱物油系軟化剤からなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(6) 鉱物油系軟化剤の40℃での動粘度が50〜400mm/sである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(7) スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレンから主として作られる少なくとも2つの重合体ブロック(A)と、ブタジエンから主として作られる少なくとも1つの重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体及びこれを水素添加して得られるブロック共重合体の少なくとも一方である上記(4)〜(6)のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(8) (b2)リン酸塩化合物が、一般式(3)におけるpが1であり、Xがピペラジンであるポリリン酸ピペラジン塩と、一般式(4)におけるqが2であり、Yがメラミン(ZとZが−NHである)であるポリリン酸メラミン塩との組み合わせである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(9) ポリリン酸ピペラジン塩がピロリン酸ピペラジンで、ポリリン酸メラミン塩がピロリン酸メラミンである上記(8)に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(10) フィルムの厚さが10〜500μmである上記(1)〜(9)のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(11) フィルムの引張破壊強さ(JIS K 7127)が10〜30MPaである上記(1)〜(10)のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム、
(12) 上記(1)〜(11)のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルムを用いてなる粘着テープ用基材
に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、難燃性が良好で、且つ、強度、柔軟性、加工性及び耐熱性等の諸性能に優れるため、粘着テープ用フィルムとして、特にハーネステープ用フィルムとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0013】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主体とする共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン系ポリエチレン)等)及びこれらの2種以上の混合物等が例示できる。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主体とする共重合体及びこれらの2種以上の混合物等が例示できる。
前記プロピレンの共重合体としてはプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、またはブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。前記プロピレンと共重合可能な他のα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。通常、α−オレフィンの混合割合はプロピレンに対して1〜10重量%程度である。
ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂の量は、75〜95重量%であるのが好ましい。
【0015】
本発明において用いられる鉱物油系軟化剤は、加工性の改良や機械的物性を改良する目的で配合される高沸点の石油留分であり、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%のものをナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものを芳香族系鉱物油系軟化剤と呼んでいる。
鉱物油系軟化剤としては、ゴム用として用いられるゴム用鉱物油系軟化剤が好ましい。ゴム用鉱物油系軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であり、芳香族成分が多くなると汚染性が強くなり、また耐候性も低下するので、非芳香族系であるパラフィン系やナフテン系のゴム用鉱物油系軟化剤、特にパラフィン系ゴム用鉱物油系軟化剤が無色透明であるため好ましい。
更に鉱物油系軟化剤としては、40℃での動粘度が50〜400mm/sであるものが好ましい。40℃での動粘度が50mm/s未満だと鉱物油系軟化剤のブリードアウトを生じやすく、400mm/sを超えると樹脂への分散性が劣る恐れがあるので好ましくない。
また、鉱物油系軟化剤とともに液状または低分子量の合成軟化剤を用いることもできる。
【0016】
鉱物油系軟化剤は、ポリオレフィン系樹脂組成物の10%モジュラスが2〜10N/10mmとなる範囲で、量を調製して用いればよいが、ポリオレフィン系樹脂組成物中5〜25重量%であるのが好ましい。配合量が少ない場合は最終製品の柔軟性が失われる恐れがある。配合量が多い場合は鉱物油系軟化剤のブリードアウトを生じやすく、最終製品に粘着性を与える恐れがあり、機械的性質も低下させる恐れがある。
ポリオレフィン系樹脂組成物の10%モジュラスが2N/10mm未満であると、使用時フィルムが伸び過ぎてしまい、またフィルムの強度が劣る傾向となり、10N/10mmを超えるとフィルムの柔軟性が劣る傾向となる。
【0017】
更に、ポリオレフィン系樹脂組成物にはポリオレフィン系樹脂組成物の10%モジュラスが2〜10N/10mmとなる範囲で他の合成樹脂が混合されていてもよい。混合する他の樹脂として、例えば(i)ジエン系ゴム(エラストマー);イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンーブタジエンゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びアクリロニトリル−イソプレンゴム等、(ii)ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン非共役ジエンゴム等、(iii)スチレン系熱可塑性エラストマー;スチレン−ブタジエンゴム(SBR)やスチレン−ブタジエンブロック共重合体等のスチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン−イソプレンゴム等(これらの水素添加物を含む)、が挙げられる。
これらエラストマー成分は、ポリオレフィン系樹脂100〜40重量部に対し0〜60重量部配合することができる。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂組成物としては、ブロックポリプロピレンを20〜70重量%含むものが耐熱性が良好となるので好ましく、特にブロックポリプロピレン20〜70重量%、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレン単独重合体及びメタロセン触媒を用いて重合されたエチレンを主体とする共重合体の少なくとも一方10〜50重量%を含むものが好ましく、更にブロックポリプロピレン20〜70重量%、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレン単独重合体及びエチレンを主体とする共重合体の少なくとも1方10〜50重量%、スチレン系熱可塑性エラストマー5〜25重量%及び鉱物油系軟化剤5〜25重量%を含むものが、柔軟性、耐熱性が良好となるので好ましい。
ブロックポリプロピレンとしては、特に230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレン単独重合体及び/またはメタロセン触媒を用いて重合されたエチレンを主体とする共重合体としては、特に210℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1〜10/10分のものがカレンダー加工性が良好なので好ましい。
【0019】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が特に好ましい。該スチレン−ブタジエンブロック共重合体としては、スチレンから主として作られる少なくとも2つの重合体ブロック(A)と、ブタジエンから主として作られる少なくとも1つの重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体及び/またはこれを水素添加して得られるブロック共重合体が挙げられ、このようなものとしては、例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−Aなどの構造を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体、あるいはこれらの水素添加されたもの等を挙げることができる。(水添)スチレン−ブタジエンブロック共重合体(以下、(水添)スチレン−ブタジエンブロック共重合体とは、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及び/または水素添加されたスチエレン−ブタジエンブロック共重合体を意味する)は、スチレンを5〜60重量%、特に、20〜50重量%含むのが好ましい。スチレンから主として作られる重合体ブロックは好ましくは、スチレンのみからなる。あるいはスチレン50重量%超、好ましくは70重量%以上と任意成分、例えば(水添)共役ジエン化合物(以下、(水添)共役ジエン化合物とは、共役ジエン化合物及び/または水素添加された共役ジエン化合物を意味する)との共重合体ブロックである。ブタジエンから主として作られる重合体ブロックは好ましくは、ブタジエンのみから成る。あるいはブタジエン50重量%超、好ましくは70重量%以上と任意成分、例えば芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックである。スチレンから主として作られる重合体ブロックまたはブタジエンから主として作られる重合体ブロックが2個以上ある場合には、それぞれが同一または異なる構造であってよい。
【0020】
上記した構造を有する(水添)スチレン−ブタジエンブロック共重合体の重量平均分子量は好ましくは5,000〜1,500,000であり、より好ましくは10,000〜550,000であり、更に好ましくは100,000〜550,000であり、特に好ましくは10,000〜400,000である。分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn))は好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より好ましくは2以下である。
上記(水添)スチレン−ブタジエンブロック共重合体の具体例としては、(水添)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、(水添)スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等を挙げることができる。
【0021】
更にポリオレフィン系樹脂組成物は、10%モジュラスが2〜10N/10mmであれば、上記の樹脂成分、鉱物油系軟化剤の他に、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。前記各種添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、帯電防止剤、充填剤、着色剤、以下に挙げるリン酸塩化合物以外の他の無機リン系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、金属水酸化物、窒素系難燃剤等が挙げられる。
【0022】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、上記のポリオレフィン系樹脂組成物及び下記の(B)成分からなる。
(B)成分:(b1)下記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物、又は(b2)下記一般式(3)と下記一般式(4)でそれぞれ表されるリン酸塩化合物の組み合わせ
【0023】
【化5】

(式中、nは1〜100の整数であり、Xは〔RN(CHNR〕、ピペラジン又はピペラジン環を含むジアミンであり、R、R、R及びRはそれぞれHもしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、R、R、R及びRは同一の基であっても異なってもよい:mは1〜10の整数であり、また、式中、YはNH基又は下記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体である;但し、0<p≦n+2、0<q≦n+2かつ0<p+q≦n+2)
【0024】
【化6】

(式中、Z及びZは同一でも異なっていてもよく、−NR基〔ここでR、Rは同一又は異なったHもしくは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはメチロール基〕、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルコキシル基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基である)
【0025】
【化7】

(式中、X、p及びnは上記一般式(1)で表すものと同様である。)
【0026】
【化8】

(式中、Y、q及びnは上記一般式(1)で表すものと同様である。)
上記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物において、式中R、R、R及びRで表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチルが挙げられる。
上記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物としては、ジアミンとトリアジン誘導体及び(ポリ又はピロ)リン酸から得られるリン酸アミン塩が挙げられ、該リン酸アミン塩は、例えば次の方法によって得ることができる。すなわち、反応容器に、不活性溶剤を添加もしくは溶剤を添加することなしに、所定量のリン酸もしくは縮合度約2〜100の縮合リン酸を仕込む。次いで、〔RN(CH)mNR〕で表されるジアミン(ここでR、R、R及びRはそれぞれHもしくは炭素数1〜5の直鎖もしくは分枝のアルキル基であり、 R、R、R及びRは同一の基であっても異なってもよい。また、mは1〜10の整数である)、ピペラジンもしくはピペラジン環を含むジアミンである化合物(以下これらを総称してジアミン類という)を直接あるいは水等に溶解又は溶剤で希釈して添加し、−10〜100℃で反応させる。反応は中和反応であり、速やかに進行する。次にここで生成した反応物を単離し、もしくは単離することなく、アンモニアもしくは上記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体を水等の溶媒で希釈あるいは希釈することなしに添加し、加熱し、反応させることによりリン酸アミン塩が得られる。反応に関与するジアミン類、アンモニア及びトリアジン誘導体の量は、使用するリン酸もしくは縮合リン酸のリン濃度によって変化する。すなわち、ジアミン類は、リン酸もしくは縮合リン酸中に含まれる水酸基の数の2分の1より少ないモル数、好ましくはリン酸もしくは縮合リン酸とほぼ等モル量を添加し、反応させ、中間生成物を得る。次いで該中間生成物に残留している水酸基に相当する量のアンモニアもしくはトリアジン誘導体を添加し、反応させる。
【0027】
上記ジアミン類の具体的な例としては、N,N,N',N'−テトラメチルジアミノメタン、エチレンジジアミン、N,N'−ジメチルエチレンジアミン、N,N'−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−ジエチルエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノへプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9ージアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、ピペラジン、trans−2,5−ジメチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられ、全て市販品を用いることができる。
また、上記トリアジン誘導体の具体的な例としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ノニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−エトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−プロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられ、これらは全て市販品を用いることができる。
【0028】
また、上記一般式(3)で表されるリン酸塩化合物は、(ポリ又はピロ)リン酸とジアミンの塩であり、任意の反応比率で反応させて得ることができる。例えばピロリン酸ピペラジン塩の場合は、ピペラジン塩酸塩とピロリン酸ナトリウムとを水溶液中で反応させて、水難溶性の沈殿として容易に得られる。本発明で使用される好ましいリン酸・ジアミン塩としては、リン酸ピペラジン塩が挙げられ、具体的にはオルトリン酸ピペラジン塩、ピロリン酸ピペラジン塩、ポリリン酸ピペラジン塩等挙げられる。
【0029】
また、上記一般式(4)で表されるリン酸塩化合物はリン酸・トリアジン誘導体塩であり、次の方法によって得ることができる。例えばリン酸メラミン塩の場合は、リン酸とメラミンを任意の反応比率で反応させて得られる。本発明で好ましく使用されるリン酸メラミン塩の具体的な例としては、例えばオルトリン酸メラミン塩、ピロリン酸メラミン塩、ポリリン酸メラミン塩等が挙げられる。
【0030】
本発明で使用する(B)成分のリン酸塩化合物は、平均粒径40μm以下、さらに好ましくは10μm以下のものが好適である。リン酸塩化合物の平均粒径が40μmより大きい場合には、分散性が悪くなり、高度な難燃性を有するフィルムを得ることができないことがあるばかりか、フィルムの機械的強度の低下をもたらす場合がある。
(B)成分のリン酸塩化合物の配合量は、ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に対して85〜150重量部である。配合量が85重量部未満では十分な難燃化効果が得られない恐れがあり、150重量部を超えて添加するとフィルムに成形する際の成形性に劣り、例えばカレンダー加工性が悪くなる恐れがある。リン酸塩化合物の配合量は、95〜150重量部であるのが難燃性、成形性と加工性のバランスの点で好ましい。
【0031】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、上記の樹脂成分、鉱物油系軟化剤、リン酸塩化合物及びその他必要に応じて上記したポリオレフィン系樹脂組成物の各種添加剤を1軸または2軸押出機、ロール、バンバリーミキサーまたは各種ニーダー等によって溶融混練し、次に前記工程で得られた組成物をカレンダー成形機等によりフィルムに成形することで得られる。該フィルムの厚みは特に限定されないが、通常10〜500μm、好ましくは50〜300μmである。
このようにして得られたフィルムは、引張破壊強さ(JIS K 7127)が10〜30MPaであるのが好ましい。フィルムの引張破壊強さが10MPa未満であると使用上強度が不足する恐れがあり好ましくなく、30MPaを超えると加工性特にカット性が劣る傾向となり好ましくない。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施形態を実施例を用いて詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1、比較例1〜4>
表−1(実施例1、比較例1〜4)に示すポリオレフィン系樹脂組成物及びリン酸塩化合物からなる組成物を溶融混練りし、2本型ロールを使用して、ロール温度180℃にてカレンダー成形を行い0.1mm厚さのフィルムを得た。
【0033】
フィルム成形時の成形性及び得られた各フィルムについて、以下の評価を行った。
<フィルム成形時の成形性の評価>
フィルム成形時のフィルムのロール離れ性、フィルム外観を確認し、良好なものは○、やや劣るものは△、ひどく劣るもの、フィルム化できないものは×で示した。×と△のものは実用的に供することができない。
<フィルムの評価>
(1)難燃性の評価
フィルムから試験片(寸法:長さ130mm、幅65mm)を採取し、この試験片をJIS K 7201の酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法に準じて燃焼させ、試験片の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、または着炎後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な酸素流量とその時の窒素流量を流量計にて測定し、下記式(A)により酸素指数を求め、該酸素指数で難燃性を評価した。なお、酸素指数の値が大きいほど難燃性が高い。
【0034】
酸素指数(O.I.)={[O2]/([O2]+[N2])}×100 ・・・(A)
(式中、[O2]は酸素の流量(l/分)、[N2]は窒素の流量(l/分)である。)
(2)強度の評価
JIS K 7127に従い、フィルムから採取した試験片(1号ダンベル)
を23℃、60%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:300mm/分で引張破壊強さ(MPa)及び引張破壊伸び(%)を測定した。
【0035】
【表1】

本発明に係る組成物はカレンダー成形により外観の良好なフィルムを作成することができ、得られた本発明のフィルムは、難燃性、引張破壊強さ及び引張破壊伸びが優れ機械的強度に優れる(実施例1)。
これに対し比較例1のフィルムは、機械的物性は優れるものの、難燃性が劣る。また、比較例2においては、比較例2の組成物を用いてカレンダー成形によりフィルムを成形することができなかった。比較例3においては、難燃性は優れるものの、引張破壊強さが劣り、粘着テープとして実際使用する際問題がある。比較例4においては、難燃性、機械的物性は優れるものの、フィルムの外観が劣るため、粘着テープとして実際使用する際問題がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部及び(B)成分85〜150重量部からなる難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
(A)ポリオレフィン系樹脂組成物:ポリオレフィン系樹脂及び鉱物油系軟化剤を含み、かつ10%モジュラスが2〜10N/10mm
(B)成分:(b1)下記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物、又は(b2)下記一般式(3)と下記一般式(4)でそれぞれ表されるリン酸塩化合物の組み合わせ
【化1】

(式中、nは1〜100の整数であり、Xは〔RN(CHNR〕、ピペラジン又はピペラジン環を含むジアミンであり、R、R、R及びRはそれぞれHもしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、R、R、R及びRは同一の基であっても異なってもよい:mは1〜10の整数であり、また、式中、YはNH基又は下記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体である;但し、0<p≦n+2、0<q≦n+2かつ0<p+q≦n+2)
【化2】

(式中、Z及びZは同一でも異なっていてもよく、−NR基〔ここでR、Rは同一又は異なったHもしくは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはメチロール基〕、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルコキシル基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基である)
【化3】

(式中、X、p及びnは上記一般式(1)で表すものと同様である。)
【化4】

(式中、Y、q及びnは上記一般式(1)で表すものと同様である。)
【請求項2】
(A)ポリオレフィン系樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を75〜95重量%、かつ鉱物油系軟化剤を5〜25重量%含む請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項3】
(A)ポリオレフィン系樹脂組成物が、(a1)ブロックポリプロピレンを20〜70重量%及び、(a2)メタロセン触媒を用いて重合された、エチレン単独重合体及びエチレンを主体とする共重合体の少なくとも1方を10〜50重量%含む請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項4】
(A)ポリオレフィン系樹脂組成物がスチレン系熱可塑性エラストマーを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項5】
鉱物油系軟化剤が、非芳香族系ゴム用鉱物油系軟化剤からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項6】
鉱物油系軟化剤の40℃での動粘度が50〜400mm/sである請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項7】
スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレンから主として作られる少なくとも2つの重合体ブロック(A)と、ブタジエンから主として作られる少なくとも1つの重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体及びこれを水素添加して得られるブロック共重合体の少なくとも一方である請求項4〜6のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項8】
(b2)リン酸塩化合物が、一般式(3)におけるpが1であり、Xがピペラジンであるポリリン酸ピペラジン塩と、一般式(4)におけるqが2であり、Yがメラミン(ZとZが−NHである)であるポリリン酸メラミン塩との組み合わせである請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項9】
ポリリン酸ピペラジン塩がピロリン酸ピペラジンで、ポリリン酸メラミン塩がピロリン酸メラミンである請求項8に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項10】
フィルムの厚さが10〜500μmである請求項1〜9のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項11】
フィルムの引張破壊強さ(JIS K 7127)が10〜30MPaである請求項1〜10のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂フィルムを用いてなる粘着テープ用基材。

【公開番号】特開2007−84681(P2007−84681A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274877(P2005−274877)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000176774)三菱化学エムケーブイ株式会社 (29)
【Fターム(参考)】