雨水の浸透循環貯留槽。
【課題】集中豪雨災害の緩和と、緊急避難場所における飲料水の確保を提供する。
【解決手段】雨水の浸透循環貯留槽1は、地中に埋設した浸透槽2と、循環貯留槽3と、揚水手段4と、浸透槽と循環貯留槽の内部に充填した多孔質部材7とを備える。
浸透槽2は、透水性部材6で形成され、雨水の流入口9bを備え、流入してきた雨水を地下に浸透させ、循環貯留槽3は、浸透槽2の内部にあって不透水性部材6bで形成されており、貯留している水を揚水手段4でもって上方の排出口4bに搬送し、排出口4bから溢れ出た水が多孔質部材7間を流れ下る間に浄化され、常時、飲料に供する水8aが循環貯留槽内に確保されている雨水の浸透循環貯留槽1を提供する。
【解決手段】雨水の浸透循環貯留槽1は、地中に埋設した浸透槽2と、循環貯留槽3と、揚水手段4と、浸透槽と循環貯留槽の内部に充填した多孔質部材7とを備える。
浸透槽2は、透水性部材6で形成され、雨水の流入口9bを備え、流入してきた雨水を地下に浸透させ、循環貯留槽3は、浸透槽2の内部にあって不透水性部材6bで形成されており、貯留している水を揚水手段4でもって上方の排出口4bに搬送し、排出口4bから溢れ出た水が多孔質部材7間を流れ下る間に浄化され、常時、飲料に供する水8aが循環貯留槽内に確保されている雨水の浸透循環貯留槽1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災エリアに設置し、洪水緩和機能を持つ雨水の浸透循環貯留槽に関する。詳しくは、一時的に貯水した雨水を地中に浸透させ、貯水した雨水の一部を循環浄化させて飲料に供する水が貯留されている、雨水の浸透循環貯留槽に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ビルが林立しライフラインが機能化した大都市は、大規模な自然災害に対して最も危険な地域となる半面が隠されている。たとえば、都市における集中豪雨は、瞬時に下水道や用水路に排水されるため、排水路で急激な増水をもたらし、また大地震ではガス管や水道管が破断し、道路は車が溢れてその機能が失われ、住民や帰宅困難者が公園や広場に避難しても、広場ではライフラインが麻痺しており、飲料水にも事欠く事態が起こり得る。
【0003】
このような豪雨や地震災害に備え、公園などの防災エリアに雨水貯留槽を設け、洪水対策と非常時の水源確保の取組が行われているが、その多くの水源は、静止した嫌気的雰囲気で滞留されており、緊急時に飲料水として利用するに適さない。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、芝生を第一の濾過槽とし、砂や石を敷き詰めて第二の濾過槽とし、第二の濾過槽内に地中散水管を配管し、合併浄化槽からの排水を濾過する排水濾過システムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−080305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された排水濾過システムは、水を縦方向に循環させて浄化する濾過装置であるが、洪水対策がなされていない。
都市部は、ほぼ全域がアスファルトやコンクリートで覆われていて、一時的に降る大量の雨は、瞬時に下水道や用水路に集中し、しばしば災害をもたらしているが、前記技術ではその対策がされていない。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑み創案されたものであり、緊急避難に供される防災エリアにおいて、大量の雨を一時的に貯水する事によって洪水を緩和し、貯水した水を時間差を設けて地下に染み込ませ、同時に貯水した雨水の一部を利用し、湧水のような飲料水が貯留されている防災エリアの提供を課題とする。
【0008】
たとえば、沖縄県宮古島は、平坦な台地状の隆起サンゴ礁の島であって、面積が158平方キロメートルもある大きな島でありながら、また巨大台風が襲う豪雨地帯でありながら河川がない、また、鹿児島県東部の平坦なシラス台地上にも河川がない、この両方の台地に共通する特徴は、雨は素早く地中に染み込み、特定の場所から清らかな湧水として噴出している。
本発明は、これら台地の地形、地質を参考にして創案されたものであり、都市公園の地下を利用する事によって、短時間豪雨による急激な洪水を緩和し、前記台地が持つ浄化システムを応用する事によって清涼な飲料水が常時貯留されている防災エリアの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽であって、前記浸透循環貯留槽は、浸透槽と循環貯留槽によって構成されており、前記浸透槽は、地下の地面に接して所定面積を有する浸透槽床面があり、前記浸透槽床面を取り囲むように周縁部の地層面に接して所定高さの浸透槽側面があり、前記浸透槽床面及び前記浸透槽側面が透水性部材で形成されており、前記循環貯留槽は、前記浸透槽床面の所定面積以内の面積を有する循環貯留槽床材が、前記浸透槽床面から離れた上方に位置して形成され、前記浸透槽側面の所定高さ以内の高さを有する循環貯留槽側壁が、前記循環貯留槽床材の周縁部上方を取り囲むように接続され、前記循環貯留槽側壁は前記浸透槽側面から離れた内側に位置して形成され、前記循環貯留槽床材及び前記循環貯留槽側壁が不透水性部材で形成されており、前記循環貯留槽床材の上面近郊にある吸入口から上方の排出口に向って、水を配水する揚水手段が設けられており、少なくとも前記浸透槽と前記循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が少なくとも充填されている雨水の浸透循環貯留槽を備える。
【0010】
また、本発明は、豪雨災害軽減の課題に対し、浸透槽の内部に貯水された水を素早く地中に浸透させるために、浸透槽床面及び浸透槽側面の少なくとも一部または全部が、透水性部材で形成される事もあり、或いは地下の地面及び地層面をそのまま浸透槽床面及び浸透槽側面として利用する事もあり、両者の透水性能に大きな開きはない。
なお、本発明では、地上の土壌面を地表と表示し、地表下の土壌内部を地中と表示し、周囲の地表より一段下方に下がった部分を地下と表示し、地下にあって略水平方向に広がる面を地下の地面と表示し、地下にあって略鉛直方向に広がる面を地層面と表示し、定義する。
【0011】
また、本発明の循環貯留槽は、外側にある浸透槽よりも小さく、浸透槽の内部にあって浸透槽から独立して設置されている。その理由は、貯水した水を素早く地中に浸透させるために、浸透槽の表面積を最大限に保つためである。
【0012】
また、本発明の浸透槽と循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が充填されている事は、空間を埋める事によって上方の蓋が省略でき、空間が無いのに大量の雨を一時的に貯水する事ができ、貯水した水を時間差を設けて地中に染み込ませるためである。
なぜならば、連続気孔を有する多孔質部材は、粒子内部にある細孔が粒子外にまで繋がっているため細孔内に通水され、細孔内部までが貯水可能な空間となり、粒子間の空隙と合わせて大容量の貯水が可能な容積が確保され、同時に、水が排出される順序として、まず最初に粒子間の空隙に貯水された水が地中に排出され、粒子内部の細孔中に貯水された水がそれよりも遅れて浸透排出されるために時間差が生じ、スムースに地中に浸透させる事ができる。
【0013】
また、本発明の循環貯留槽が不透水性部材で形成されている事は、貯水した雨水の一部を飲料水として利用するためであり、飲料水として適する水にまで浄化させるため、揚水手段を用いて貯留されている雨水を上方に配水し、上方の排出口から溢れ出た水が連続気孔を有する多孔質部材の表面及び細孔内部を通過しながら落下し、多孔質部材に住みついた微生物によって不純物が消費され、不純物が消費除去される事によって水が浄化され、飲料水として利用できる水として貯留される。
なお、本発明では、浸透循環貯留槽内を移動する水を配水と表現し、外部へ排出する水を排水または浸透と表現する。また、配水貯水槽や浸透槽内にあって状況の変化によって水位が変動する水を貯水と表現し、循環する事によってほぼ一定の水位が確保されている水を貯留と表現し、定義する。
【0014】
地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽であって、前記浸透循環貯留槽は、浸透槽と循環貯留槽によって構成されており、前記循環貯留槽は、少なくとも一部が地下の地面に接している循環貯留槽床材があり、前記循環貯留槽床材に接して前記循環貯留槽床材の周縁部上方を取り囲むように循環貯留槽側壁があり、前記循環貯留槽床材及び前記循環貯留槽側壁が不透水性部材で形成されており、前記浸透槽は、前記循環貯留槽の上方及び周囲を取囲むように、地層面に沿って浸透槽側面があり、地下の地面に沿って浸透槽床面があり、少なくとも一部の前記浸透槽側面の下方が前記循環貯留槽床材または前記循環貯留槽側壁に接続され、前記浸透側面または前記浸透槽床面の少なくとも一部は前記循環貯留槽側壁または前記循環貯留槽床材によって代行されており、その他の前記浸透槽側面または前記浸透槽床面が透水性部材で形成され或いは前記地層面または前記地下の地面でもって形成されており、前記循環貯留槽床材の上面近郊にある吸入口から配水用貯水槽を経由して上方の排出口に向って、水を配水する揚水手段が設けられており、少なくとも前記浸透槽と前記循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が少なくとも充填されている雨水の浸透循環貯留槽を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る雨水の浸透循環貯留槽は、シンプルな構造でありながら、豪雨災害を緩和する機能を有し、地下水の減少を補い、湧水のような飲料水が貯留されている防災エリアを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽の透視図であって、浸透槽と、その内部にある循環貯留槽と揚水手段の概略を表示した。(内部に充填されている多孔質部材は表示を省略した)
【図2】本発明の代表的な実施例を示す浸透循環貯留槽の断面図であって、内部に充填されている多孔質部材、濾過材の表示は一部にとどめた。
【図3】図2の浸透循環貯留槽において、集中豪雨などにより、浸透槽及び循環貯留槽が満水になった状態を表した断面図である。
【図4】図2の浸透循環貯留槽において、図3の状態から一定期間降雨がなく、浸透槽の水が地下に浸透し、循環貯留槽内の水が循環している状態を表した。
【図5】揚水手段の排出口が、循環貯留槽内にある浸透循環貯留槽の断面図である。
【図6】浸透槽側面が縦方向に変形した浸透循環貯留槽Aと、浸透槽床面が縦方向に変形した浸透循環貯留槽Bの断面を表した簡略図である。
【図7】大きな浸透槽の内部に独立した4個の循環貯留槽が組合わさった雨水の浸透循環貯留槽の断面を表した簡略図である。
【図8】不定形の地面に埋設し、循環貯留槽床材と循環貯留槽側壁が浸透槽床面及び浸透槽側面の一部と合体して共有する浸透循環貯留槽の断面図である。
【図9】複数の循環貯留槽が埋設され、その間に浸透槽床面が、外側に浸透槽側面が形成されて一体化した浸透循環貯留槽の断面を表した簡略図である。
【図10】揚水手段の排出口を表した断面図である。
【図11】浸透槽に至る手前に設置する溜桝であって、流水の変化で土砂が堆積する様子を表した概念図である。
【図12】各種形状の浸透循環貯留槽をC〜Hに表した簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の基となる雨水の浸透循環貯留槽1の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0018】
本発明の基となる雨水の浸透循環貯留槽1は、その概要を図1の透視図で表し、図2は第一の実施態様を表す概略図である。また、図2の浸透循環貯留槽1が集中豪雨によって満水状態となった態様を図3で表し、図3の浸透循環貯留槽1において暫らく降雨がなく、浸透槽2の水が地下に浸透し、循環貯留槽3のみの水が循環し、浸透槽2が再び貯水可能な状態となっている態様を図4で表した。
【0019】
図1は、本発明の基となる雨水の浸透循環貯留槽1であって、雨水の浸透循環貯留槽1を構成する角型の浸透槽2と、浸透槽2の内部にある角型の循環貯留槽3と、揚水手段4の概要を表した透視図であって、簡略化するため多孔質部材7の表示は省略した。
【0020】
図1の浸透槽2は、地中に凹状の穴を掘って地下を形成し、地下の地面17に合成樹脂繊維のネットとシラス(いずれも透水性部材6aの一例である)を平面状に積層して所定面積の浸透槽床面2aを形成し、その浸透槽床面2aの上方を取囲む所定高さの地層面18を、合成樹脂繊維のネットとシラスで積層し、浸透槽側面2bを形成した。
【0021】
しかし、浸透槽床面2a及び浸透槽側面2bは、いずれも透水性部材6aを使用することなく、地下の地面17または地層面18をそのまま利用して浸透槽床面2aまたは浸透槽側面2bとして利用する事もできる。
【0022】
この場合、浸透槽床面2aの所定面積と浸透槽側面2bの所定高さとは、周囲から集めた雨水を貯水するために一定の容積が必要なためであり、地形や周囲の環境によって大きさは異なるが、浸透槽側面2bの上部は略水平である事が好ましい。
【0023】
また本実施例では、透水性部材6aの一例として合成樹脂繊維のネットとシラスを挙げたが、これらに限定されるものではなく、定型或いは不定形を問わず透水性を有する部材であれば良い、しかし、価格或いは工事の簡易性なども考慮し、或いは地震による地殻変動に対して順応できる軟質素材が好ましい。
【0024】
また、図1の循環貯留槽3は、浸透槽床面2a及び浸透槽側面2bから離れた浸透槽の内側にあって、循環貯留槽床材3aと循環貯留槽側壁3bが一体成型されているが、その製法に関しては図2欄で記述する。
【0025】
また図1において、循環貯留槽3が浸透槽2の内部に収まるためには、循環貯留槽床材3aの面積が浸透槽床面2aの所定面積よりも縦横共に小さく、循環貯留槽側壁3bの高さが浸透槽側面2bの所定高さよりも低い位置にある事により、循環貯留槽3は浸透槽2の内部に収容されている。
【0026】
また、循環貯留槽3に貯留されている水が飲料に供される水8aとなるには、多孔質部材7間を流れ下りながら浄化される事が必要であり、水を鉛直方向に循環させるために、上方へ水を配水する揚水手段4が必要になる。
【0027】
この揚水手段4は、多孔質部材7間を流れ落ちてきた水が最後に到達する循環貯留槽床材3aの上面近郊に吸入口4aを設け、浸透槽2の上方に排出口4bを設け、揚水手段4によって水を吸入口4aから排出口4bへ配水し、多孔質部材間を自然落下させる事によって鉛直方向に循環し、多孔質部材7に棲みついた微生物によって浄化され、或いは濾過される事によって、湧水のような飲料に供する水8aが貯留される。
【0028】
図2は、本発明の代表的な実施例として、四角形の逆台形をした雨水の浸透循環貯留槽1の断面を示した側面図である。
【0029】
図2の浸透槽2は、上方が広く、掘り下げるに従って狭くなる逆台形状の地層面18と略平坦な地下の地面17を持ち、この地下の地面17及び地層面18にシラス(透水性部材6aの一例である)を敷詰め、その上から合成樹脂繊維のネット(透水性部材6aの一例である)を敷き、略平坦な浸透槽床面2aと、上方が外側に傾斜した浸透槽側面2bが出来上がった。
【0030】
この場合に、浸透槽床面2aまたは浸透槽側面2bの少なくとも一部が、透水性部材6aを使用する事無く、地下にある地面17または周縁部の地層面18をそのまま利用し、浸透槽床面2aまたは浸透槽側面2bとして使用する事もできる。
【0031】
この、浸透槽側面2bが、上方が外側に傾斜した逆台型の形状をしているのは、浸透槽2に貯水された水8bが、浸透槽側面2bから地下へ浸透するのを助け、外側から浸透槽2内に逆流するのを防止するためである。
なぜならば、水は重力に従って下方へ移動するため、外側の水が重力に逆らって浸透槽2内に流入する可能性は極めて少ない。
【0032】
また、浸透槽側面2b及び浸透槽床面2aを形成する透水性部材6aは、透水性コンクリートなど定型の部材もあるが、透水性の軟質プラスチック部材、或いは透水性を有する土壌などの不定形部材、或いはこれらが積層されて形成される事が好ましい。
なぜならば、これらの透水性部材6aは、地面の凹凸に順応して浸透槽側面2b及び浸透槽床面2aが形成され、浸透槽2内部に充填された多孔質部材7(例えば軽石やスラグ)によって内圧と外圧が均衡した地下構造が成立し、大地震による地殻変動に対しても柔軟に地中と連動できる事が大きな要素である。
【0033】
次に、近郊の建物や道路の雨水を集水した流入口9aを、浸透槽側面2bの上部に接続し、浸透槽2が完成した。
【0034】
続いて、地中にコンクリート杭(固定手段12の一例である)を打ち込み、杭の上端を浸透槽床面2aの上方略1m地点に留め、浸透槽床面2aから杭上端の高さまで軽石(多孔質部材7の一例である)を敷詰めた。
【0035】
次に、敷詰めた軽石の上にプラスチックシートとコンクリート(不透水性部材6bの一例である)でもって循環貯留槽床材3aを成型し、その上方を囲むように循環貯留槽側壁3bを成型して床材と一体化させ、浸透槽2の内部に、独立した(多孔質部材を通じては繋がっているが)箱型の循環貯留槽3が完成した。
【0036】
また、本発明の循環貯留槽3が浸透槽2の内部に独立して設置されている理由は、集中豪雨などによって貯水した大量の水8bを素早く地中に浸透させるために、浸透槽2の表面積を最大限に保つためであり、今一つは、地震に対する防御対策として、循環貯留槽3が独立して固定されている事が好ましい。
【0037】
また、循環貯留槽床材3aは、略3%の傾斜を設けて制作する事によって、揚水手段4の吸入口4aを設置するに適した最下点が出現した。
【0038】
図2に示した揚水手段4は、循環貯留槽3に貯留されている水を循環し浄化させるために、循環貯留槽床材3aの上面近郊にある吸入口4aからいったん地上にある配水用貯水槽5に配水し、貯水した配水用貯水槽5を経由し、浸透槽2の上層部内に埋設した排出口4bから水を溢れさせる役目を担っている。また、図2では排出口4bが1本の線状に描かれているが、この排出口4bは、横方向の縦横に広がり、面状に配列されている。
【0039】
この揚水手段4は、動力として平常時は電動モーターを利用し、(或いは自然エネルギーを利用して水を汲み上げ)配水用貯水槽5内の水面が下限位置に達した時にモーター(揚水手段4の一例である)が稼働し、上限位置で停止し、常時、配水用貯水槽5の水位が一定範囲内にある様に調節されている。
と同時に、災害時に備え、揚水手段4は手動ポンプと併用した複数の揚水システムが好ましい。
【0040】
また、この配水用貯水槽5は、地上に設置する事によって高低差が利用でき、上方に通気口を設ける事によって大気圧が利用でき、配水用貯水槽5の水面表面積を排出口表面積の和よりも大きくし、複数の排出口4bから均等に水を溢れ出させるため、複数の排出口4bの高さ位置を水平にした。
【0041】
また、この配水用貯水槽5は、蛇口を併設する事によって飲料や散水に利用でき、或いは濾過材11を充填して浄水機能を持たせ、或いは専用の浄水器と併設する等、種々の方法と複合した水の有効利用が好ましい。
【0042】
この、排出口4bから溢れ出た水は、連続気孔を有する多孔質部材7の表面或いは細孔内部を通過しながら下方へ移動し、好気性雰囲気中を移動する事によって小川のせせらぎの如く浄化され、常時循環する事によって飲料に供される水8aとなって貯留される。
【0043】
また、本実施例の図2では、各部材の配置位置を明確に表示するため多孔質部材7の表示を右端の一部に留めたが、浸透槽2及び循環貯留槽3の内部に軽石(多孔質部材の一例である)を敷詰めた。
【0044】
また、本実施例では連続気孔を有する多孔質部材7として軽石を使用したが、その他にも連続気孔を有する多孔質部材7としては、本実施例で用いた天然鉱物(軽石やボラ土)、或いは化石(例えば、サンゴ粒)、或いは人工の多孔質部材(例えば、リサイクルされた連続気孔の発砲ガラスやC型シリカゲル)、或いは製造に供された廃材(例えば、スラグや石炭ガラ)などがある。
それらは、火山ガスが噴出した孔(例えば鹿児島産軽石の細孔は、1μ〜3mmまで)であり、サンゴ虫が出入りした孔であって、多くの多孔質部材中にあっても大きな連続気孔を持つ部類であり、その細孔径が大きいが故に気孔率が大きく、半面で保水力が弱く、保水力が弱いが故に上方で放出された水が重力によって細孔内を容易に通過する事ができ、粒子の表面及び内部で好気的雰囲気にさらされ、一般的に無害といわれる好気性微生物によって不純物が消費され、濾過ではなく消費されるが故に浄化作用が持続される。
【0045】
この場合、種々の環境や気象条件によっては、連続気孔を持つ多孔質部材であれば小さな細孔を持つ多孔質部材であっても良い。
【0046】
また、大きな細孔径を持つ多孔質部材といえども、加熱などにより絶乾状態となった多孔質部材内の細孔中には、水は表面張力によって容易に細孔内に入り込めないが、比較的多雨地帯にある日本の土壌中は高湿度状態にあり、浸透循環貯留槽1内にある多孔質部材は絶乾状態にはならない。
【0047】
また、これらの多孔質部材7は、pHがほぼ中性の安定した分子が多く、踏圧で容易に潰れない所定硬度(例えば、鹿児島産軽石のモース硬度は5〜6)を有し、粒径が一定範囲内の所定体積(例えば、粒径3mm〜10mm程度)を有する多孔質部材7が好ましい。
【0048】
しかし、浸透循環貯留槽1の上方が強固な部材で覆われている場合は、多孔質部材7の硬度は重要な要件とはならず、その他の条件があればよい。
【0049】
また、これらの多孔質部材7が一定範囲内の所定体積を持つ事は、粒子と粒子の間に大きな空隙(例えば、粒径3mm〜10mmの軽石の粒子内部を含めた空隙率は70%)が生じ、この大きな空隙によって、シンプルな構造でありながら、安価で大きな貯水力を持つ地下空間が誕生する。
【0050】
また、これらの多孔質部材7は、その成り立ちからして表面が無数の凹凸で覆われているものが多く、大きな体積と表面の凹凸などによって摩擦係数が大きな多孔質部材となっている。
この摩擦係数の大きな多孔質部材7は、地震による液状化現象が起きにくいと同時に、浸透槽内部にある循環貯留槽3を、大地震の衝撃から守る一因でもあり、好ましい。
【0051】
また、水の浄化には多様な環境が存在する方が有利であるため、循環貯留槽3上部と浸透槽2が接する部位に、濾過材11を充填した。
通常、濾過材11としては、木炭、竹炭、ゼオライト等の細孔径の小さな多孔質部材、或いはシュロや麻などの繊維状部材、或いは浸透膜などの人工部材があるが、本実施例では木炭と粒径が小さい(例えば2mm〜4mm)軽石を混合し、循環貯留槽3上方に充填した。
【0052】
また、図2では飲料に供される水8aと地中に浸透する水8bの2種類の水を表示したが、循環貯留槽3の多孔質部材7間の空隙に貯留され飲料に供される水8aは、常時循環されて浄化されている水であり、浸透槽2下方の多孔質部材7間の空隙に貯水された水は、図3に示した満水状態から図4に至るまでの途中にある水位を表している。
【0053】
また、図2に示す浸透循環貯水槽1は、浸透槽2の内部に達した流入口9aの先端と循環貯留槽3との横方向の距離が大きいため、浸透槽内部の多孔質部材7間にシート状或いは板状の水の誘導部材10を設置した。
この水の誘導部材10は、不透水性部材6bからなり、水が流れる勾配(略2%とした)を有して設置される事が好ましい。
【0054】
また、この水の誘導部材10は、揚水手段4の排出口4bから溢れ出た水が浸透槽2の多孔質部材7で拡散して減少するのを防ぎ、その水を効率よく循環貯留槽3に導く役目も担っている。
【0055】
次に、図3について記述する。
図3は、図2に示した雨水の浸透循環貯留槽1において、集中豪雨或いは長期間の大雨によって大量の雨水が流れ込み、浸透槽2及び循環貯留槽3共に満水状態となった様子を表した。
この場合でも、循環貯留槽3内の水は、平常から循環貯留されている水8aであり、浸透槽内に貯水されている水は、地中に浸透する水8bであり、雨が止み雨水の供給が無くなると徐々に地中に染み込んで水位が低下し、図2に記載した8bの水位を経過して最後に無くなる水である。
【0056】
次に、図4について記述する。
図4は、図3で満水状態を示した浸透槽2において、時間の経過とともに多孔質部材7間の空隙に貯水された水8bが地中に浸透して消失し、続いて多孔質部材7内部の水が徐々に下方へ移動しながら地中に浸透し、やがて浸透槽2上方の多孔質部材7b内部の水が失われて半乾燥状態となり、浸透槽2下方にある多孔質部材7aがまだ水を含んだ状態となった時点を表した概略図である。
【0057】
この時、循環貯留槽では、揚水手段4によって循環貯留槽3内の吸入口4aから浸透槽上部の排出口4bまで、たえず配水されており、排出口4bから溢れ出た水が多孔質部材の表面或いは内部を通過しながら流れ下って循環しており、浸透循環貯留槽1内が常時高湿度下に保たれ、循環貯留槽3内には飲料に供される水8aが貯留されている。
【0058】
図5は、大きな循環貯留槽3を有し、集中豪雨と長期間の少雨時期との両方が存在する地域に適した浸透循環貯留槽1であって、揚水手段4の排出口4bに向かうパイプが先端に行くにしたがって下方に傾斜し、排出口4bが循環貯留槽3内に達している浸透循環貯留槽1の一例を表した。
【0059】
また、浸透槽2を埋設する地層が、粘土層などの不透水土壌で覆われている場合は、いくら浸透槽2を透水性部材6aで製作しても水は地中に浸透しない。
従って、図6のA及びBは、浸透槽側面2b或いは浸透槽床面2aの一部を通常の浸透槽床面2a位置より下方へ掘下げ、透水性を示す地層まで延長させる事が好ましい。
【0060】
前記の図6Aは、浸透槽側面2bの一部を地中深くまで延長し、透水性土壌層である2x地点で屈折して上方へ向かい、2y地点で浸透槽床面2aと接続しているが、これは、浸透槽側面2bの一部が地中深くに延長し、2x地点で変形した浸透槽床面2aと接続している、とも表現できる。
また、図6Aの別の片方は、浸透槽側面2bの一部が浸透槽床面2aの位置2xを過ぎて延長し、湾曲して2y地点で浸透槽床面2aに接続しているが、これも、浸透槽側面2bと変形した浸透槽床面2aが2x地点で接続している、とも表現できる。
【0061】
図6Bは、浸透槽床面2aの一部を透水性土壌層まで掘下げ、変形した浸透槽床面2aと浸透槽側面2bが2x地点で接続されている浸透循環貯留槽1である。
【0062】
図7に示す、大きな浸透槽2の内部に独立した複数の循環貯留槽3が組合わさった浸透循環貯留槽1の断面を表す簡略図は、大規模な浸透循環貯留槽1を設置する場合に有効な形状である。
なぜならば、豪雨災害に対しては、浸透槽が大容量であるほど好ましい必修条件であり、地震災害に対しては、小規模或いは中規模の循環貯水槽が独立して設置されている事が安全であり、その両方の利便性を生かした浸透循環貯留槽1であって、被害を最小限に抑える有効な手段である。
【0063】
例えば、図7の浸透循環貯留槽1が、平均直径が100mの略楕円形で深さが6mの浸透槽2であったとすれば、内部空間は略47,100立方メートルであって、内部に4個ある循環貯留槽の体積の合計が30%であれば、浸透槽の内部空間は略33,000立方メートルであり、内部に充填している多孔質部材の空隙率が70%と仮定すれば、計算上は略23,000立方メートルの浸透槽の空間体積が存在する。
しかし、既に吸水している部分なども考慮し、現実的に貯水可能な空間を半分程度と仮定しても、貯水可能な水は略11,500立方メートルである。
この量は、短時間降雨100mmの猛烈な豪雨があった時、その半分が貯水され、半分が排水されたと仮定すると、約2.3平方キロメートル範囲内に降った雨が貯水できた計算になる。
【0064】
また、浸透槽2の内部に4個ある循環貯留槽3に貯留され飲料に供される水8aは、容積略14,100立方メートル×空隙率70%=略10,000立方メートルの水が存在している計算であり、その半分量が即利用可能な水量と仮定すると、略5,000立方メートルの飲料水が貯留されており、一人当たり10リットルが必要だと仮定すれば50万人分の水が確保されている計算になる。
【0065】
また、前記の浸透槽2内部に複数の循環貯留槽3が設けられた浸透循環貯留槽1において、複数の循環貯留槽3の揚水手段4が統合される場合もある。
例えば図7において、中央にある2個の循環貯留槽3から1個の配水用貯水槽5に配水し、1個の配水用貯水槽5から2個の循環貯留槽3上方にある排出口4bに配水する事により、簡略化したシステムが完成する。
【0066】
図8は、循環貯留槽床材3aまたは循環貯留槽側壁3bの一部が浸透槽床面2aまたは浸透槽側面2bの機能を代行している浸透循環貯水槽1であって、浸透槽側面2bの一部が浸透槽床面2aの下方まで延長されて湾曲し、2y地点で浸透槽床面2aに接続されており、別の片方は浸透槽床面2aと浸透槽側面2bの一部が循環貯留槽床材3aと循環貯留槽側壁3bに合体しており、浸透槽の機能が制限されるが簡略化した浸透循環貯留槽1の一例を示した。
【0067】
また、図8に記載した揚水手段4は、配水用貯水槽5から離れるに従って略2%の勾配を有して配水パイプが下降し、その配水パイプに上方に向う排出口4bを接続し、面状に広がる全ての排出口4bは水平方向の同位置になるよう調節した。
【0068】
また、面状に広がる全ての排出口4bから水が均等に噴出される事は、広範囲の多孔質部材7が有効に利用され、広範囲の多孔質部材7が利用される事によって、浄化機能がより多く発揮される。
【0069】
また図9は、複数の循環貯留槽3が略水平方向に設置され、循環貯留槽3と循環貯留槽3の間に浸透槽床面2aが接続され、循環貯留槽3と循環貯留槽3の間及び循環貯留槽3の上方を含む外周部を取囲むように浸透槽側面2bが形成されて、1個の浸透槽2内に複数の循環貯留槽3が形成され、一体化した浸透循環貯留槽が形成されている状態を表した簡略図であって、大規模災害に対する最も簡便かつ有効な防災手段である。
【0070】
図9で表した方法は、防災エリアに巨大な穴を掘り、集水口の要所ごとに循環貯留槽3を設置し、塩ビパイプ(揚水手段4の一例である)を設置しながら軽石(多孔質部材7の一例である)を充填し、循環貯留槽3間及び外周部にも軽石を充填し、実用的な、巨大な雨水の浸透循環貯留槽が完成した。
【0071】
図10は、揚水手段4の排出口4bを表した拡大図であって、配水用貯水槽5からの高低差を利用して複数の排出口4bから均等に水を溢れさせるために、排出口を上方に向って設置し、全ての排出口4bを水平の同位置に保つ事が肝要である。
【0072】
しかし、排出口4bを上方に向って設置すると色々な障害が発生する、即ち、植物の根は水を求めて伸長し、或いは上方から土砂や粒子が入り込み、目詰まりが発生する。
従って、排出口4bに覆いを設け、さらにその上から防草シートで覆った。
【0073】
図11に示した溜桝9は、流入口9aが浸透槽2に至る手前で溜桝9に接続し、その溜桝9から、再び浸透槽に向う流入口9bと外部へ排水する排水管9cを追加し、それぞれを異なる位置と異なる方向に接続した。
【0074】
この、異なる位置と異なる方向に接続する理由は、流入口9aから流れてきた雨水が容積の大きな溜桝9に入って流速が弱まり、出口方向が変わる事によって渦と澱みが生じて土砂16が沈殿し、再び浸透槽に向う流入口9bを低い位置に接続し、排水管9cを高い位置に接続する事によって、浸透槽が満杯になるまでは浸透槽2に供給し、満杯となった時点で排水管9cに導き、浸透槽2のオーバーフローを回避させる。
【0075】
また、溜桝9から再び浸透槽に向う流入口9bは、溜桝9に流入する流入口9aよりも口径面積を広げ、勾配を緩くする事によってさらに流速が弱まり、土砂が沈殿し易くなる。
また集水する周辺の状況に応じて、この溜桝の複数個を接続する方法もあるが、別個の濾過専用の溜桝を設け、その溜桝との組合せが簡単で現実的である。
【0076】
濾過専用の溜桝は、粒形の小さい多孔質部材とシラスを混合した濾過材を通過させ、定期的に濾過材の目詰まり部分を取除き、或いは交換する事によって、浸透槽の機能を長期間にわたって保つ働きがある。
【0077】
図12は、様々な地形や環境に応じて変化する雨水の浸透循環貯留槽1について、多様な種類の一例を表した略図である。
【0078】
図12Cは、雨水の浸透循環貯留槽1が地中深くに設置されている様態を表し、図12Dは、雨水の浸透循環貯留槽1が地表或いは地表近くに設置されている様態を表しているが、傾斜地に設置される場合など、この両方が混在した形も存在する。
【0079】
図12Eは、浸透循環貯留槽1の平面図で、浸透槽2が略円形や楕円形であり、内部の循環貯留槽3が四角の形状をしている様態を表し、図12Fは、6角形の浸透槽2と略円形の循環貯留槽3を表している。
【0080】
また、図12Gは、上方が狭い浸透槽2と角型の循環貯留槽3が組合わさった側面を表し、図12Hは、不定形の浸透槽2と不定形の循環貯留槽3の一部が合体した浸透循環貯留槽である。
【0081】
また、本実施例の雨水の浸透循環貯留槽1内部に充填した多孔質部材7は、充分な硬度を有しているため、上方の地上は通常の公園や運動場としての用途に耐えられる。
従って、上方の地上部の少なくとも一部は、シラスや透水性を有する土壌で覆い、或いは舗装して通路として使用し、或いは芝生や花壇や樹木を植栽し、通常の公園や多目的広場としての機能を維持させる事ができる。
【0082】
その場合、本実施例の多孔質部材は、細孔径が大きいが故に保水力が弱い。
この保水力が弱いがために、浸透槽内に充填する素材として好ましい要件を備えているが、半面で、少雨地域にあっては地表が乾燥し、地表植物の生育に適さない場合が生じる。
従って、浸透槽の上部に、細孔径が小さく保水性に優れた多孔質部材(例えば、ゼオライト、珪藻土、木炭など)を、状況に応じて一部に利用する事もできる。
【0083】
現在の大都市は、地表がアスファルトやコンクリートに覆われて透水性を失い、ビルが高層化してヒートアイランド現象が加速し、ここに外的条件が加われば上昇気流によって雷雲が発生し、急激な豪雨災害の危険性が潜んでいます。
また、地球温暖化の影響は、過去に例がなかったほどの集中豪雨や巨大台風の襲来が取りざたされており、その災害予防対策は緊急の課題です。
しかし、この豪雨災害を食い止めるには新たな大容量の排水設備が必要であり、それには膨大な費用と長い時間が必要でありますが、本発明は、至ってシンプルで、安価な費用で、この豪雨災害を緩和する機能があります。
また、巨大地震が発生すれば、地下鉄や電車は運休し、道路は車が渋滞して避難経路になり得ず、人口密度が高い都心の防災エリアは、帰宅困難者や避難者で埋め尽くされ、密集した人々にとって緊急かつ最も重要な要件は、自宅やさらに安全な場所への移動手段と食料(特に飲料水)の確保であり、本発明は、この飲料水が貯留されている防災エリアを提供します。
【符号の説明】
【0084】
1 雨水の浸透循環貯留槽
2 浸透槽
2a 浸透槽床面
2b 浸透槽側面
2x 変形した浸透槽床面と浸透槽側面が接続する箇所
2y 浸透槽の床面より下方に延びた側面が床面と接続する箇所
3 循環貯留槽
3a 循環貯留槽床材
3b 循環貯留槽側壁
4 揚水手段
4a 吸入口
4b 排出口
5 配水用貯水槽
6a 透水性部材
6b 不透水性部材
7 多孔質部材
7a 充分に水を含んだ多孔質部材
7b 半乾燥状態にある多孔質部材
8a (多孔質部材間の空隙に貯留され)飲料に供される水
8b (多孔質部材間の空隙に貯水され)地中に浸透する水
9 溜桝
9a 流入口
9b 再び浸透槽に向う流入口
9c 排水管
10 水の誘導部材
11 濾過材
12 固定手段
13 地表(植物、透水性土壌、透水性舗装、コンクリートなどを含む)
14 地中
15 水が流れる方向
16 土砂
17 地下の地面
18 地層面
A 変形した浸透槽側面を表した浸透循環貯留槽の断面
B 変形した浸透槽床面を表した浸透循環貯留槽の断面
C 地中深くに設置された浸透循環貯留槽の断面
D 地表近くに設置された浸透循環貯留槽の断面
E 浸透循環貯留槽の平面
F 浸透循環貯留槽の平面
G 浸透循環貯留槽の断面
H 浸透循環貯留槽の断面
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災エリアに設置し、洪水緩和機能を持つ雨水の浸透循環貯留槽に関する。詳しくは、一時的に貯水した雨水を地中に浸透させ、貯水した雨水の一部を循環浄化させて飲料に供する水が貯留されている、雨水の浸透循環貯留槽に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ビルが林立しライフラインが機能化した大都市は、大規模な自然災害に対して最も危険な地域となる半面が隠されている。たとえば、都市における集中豪雨は、瞬時に下水道や用水路に排水されるため、排水路で急激な増水をもたらし、また大地震ではガス管や水道管が破断し、道路は車が溢れてその機能が失われ、住民や帰宅困難者が公園や広場に避難しても、広場ではライフラインが麻痺しており、飲料水にも事欠く事態が起こり得る。
【0003】
このような豪雨や地震災害に備え、公園などの防災エリアに雨水貯留槽を設け、洪水対策と非常時の水源確保の取組が行われているが、その多くの水源は、静止した嫌気的雰囲気で滞留されており、緊急時に飲料水として利用するに適さない。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、芝生を第一の濾過槽とし、砂や石を敷き詰めて第二の濾過槽とし、第二の濾過槽内に地中散水管を配管し、合併浄化槽からの排水を濾過する排水濾過システムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−080305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された排水濾過システムは、水を縦方向に循環させて浄化する濾過装置であるが、洪水対策がなされていない。
都市部は、ほぼ全域がアスファルトやコンクリートで覆われていて、一時的に降る大量の雨は、瞬時に下水道や用水路に集中し、しばしば災害をもたらしているが、前記技術ではその対策がされていない。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑み創案されたものであり、緊急避難に供される防災エリアにおいて、大量の雨を一時的に貯水する事によって洪水を緩和し、貯水した水を時間差を設けて地下に染み込ませ、同時に貯水した雨水の一部を利用し、湧水のような飲料水が貯留されている防災エリアの提供を課題とする。
【0008】
たとえば、沖縄県宮古島は、平坦な台地状の隆起サンゴ礁の島であって、面積が158平方キロメートルもある大きな島でありながら、また巨大台風が襲う豪雨地帯でありながら河川がない、また、鹿児島県東部の平坦なシラス台地上にも河川がない、この両方の台地に共通する特徴は、雨は素早く地中に染み込み、特定の場所から清らかな湧水として噴出している。
本発明は、これら台地の地形、地質を参考にして創案されたものであり、都市公園の地下を利用する事によって、短時間豪雨による急激な洪水を緩和し、前記台地が持つ浄化システムを応用する事によって清涼な飲料水が常時貯留されている防災エリアの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽であって、前記浸透循環貯留槽は、浸透槽と循環貯留槽によって構成されており、前記浸透槽は、地下の地面に接して所定面積を有する浸透槽床面があり、前記浸透槽床面を取り囲むように周縁部の地層面に接して所定高さの浸透槽側面があり、前記浸透槽床面及び前記浸透槽側面が透水性部材で形成されており、前記循環貯留槽は、前記浸透槽床面の所定面積以内の面積を有する循環貯留槽床材が、前記浸透槽床面から離れた上方に位置して形成され、前記浸透槽側面の所定高さ以内の高さを有する循環貯留槽側壁が、前記循環貯留槽床材の周縁部上方を取り囲むように接続され、前記循環貯留槽側壁は前記浸透槽側面から離れた内側に位置して形成され、前記循環貯留槽床材及び前記循環貯留槽側壁が不透水性部材で形成されており、前記循環貯留槽床材の上面近郊にある吸入口から上方の排出口に向って、水を配水する揚水手段が設けられており、少なくとも前記浸透槽と前記循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が少なくとも充填されている雨水の浸透循環貯留槽を備える。
【0010】
また、本発明は、豪雨災害軽減の課題に対し、浸透槽の内部に貯水された水を素早く地中に浸透させるために、浸透槽床面及び浸透槽側面の少なくとも一部または全部が、透水性部材で形成される事もあり、或いは地下の地面及び地層面をそのまま浸透槽床面及び浸透槽側面として利用する事もあり、両者の透水性能に大きな開きはない。
なお、本発明では、地上の土壌面を地表と表示し、地表下の土壌内部を地中と表示し、周囲の地表より一段下方に下がった部分を地下と表示し、地下にあって略水平方向に広がる面を地下の地面と表示し、地下にあって略鉛直方向に広がる面を地層面と表示し、定義する。
【0011】
また、本発明の循環貯留槽は、外側にある浸透槽よりも小さく、浸透槽の内部にあって浸透槽から独立して設置されている。その理由は、貯水した水を素早く地中に浸透させるために、浸透槽の表面積を最大限に保つためである。
【0012】
また、本発明の浸透槽と循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が充填されている事は、空間を埋める事によって上方の蓋が省略でき、空間が無いのに大量の雨を一時的に貯水する事ができ、貯水した水を時間差を設けて地中に染み込ませるためである。
なぜならば、連続気孔を有する多孔質部材は、粒子内部にある細孔が粒子外にまで繋がっているため細孔内に通水され、細孔内部までが貯水可能な空間となり、粒子間の空隙と合わせて大容量の貯水が可能な容積が確保され、同時に、水が排出される順序として、まず最初に粒子間の空隙に貯水された水が地中に排出され、粒子内部の細孔中に貯水された水がそれよりも遅れて浸透排出されるために時間差が生じ、スムースに地中に浸透させる事ができる。
【0013】
また、本発明の循環貯留槽が不透水性部材で形成されている事は、貯水した雨水の一部を飲料水として利用するためであり、飲料水として適する水にまで浄化させるため、揚水手段を用いて貯留されている雨水を上方に配水し、上方の排出口から溢れ出た水が連続気孔を有する多孔質部材の表面及び細孔内部を通過しながら落下し、多孔質部材に住みついた微生物によって不純物が消費され、不純物が消費除去される事によって水が浄化され、飲料水として利用できる水として貯留される。
なお、本発明では、浸透循環貯留槽内を移動する水を配水と表現し、外部へ排出する水を排水または浸透と表現する。また、配水貯水槽や浸透槽内にあって状況の変化によって水位が変動する水を貯水と表現し、循環する事によってほぼ一定の水位が確保されている水を貯留と表現し、定義する。
【0014】
地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽であって、前記浸透循環貯留槽は、浸透槽と循環貯留槽によって構成されており、前記循環貯留槽は、少なくとも一部が地下の地面に接している循環貯留槽床材があり、前記循環貯留槽床材に接して前記循環貯留槽床材の周縁部上方を取り囲むように循環貯留槽側壁があり、前記循環貯留槽床材及び前記循環貯留槽側壁が不透水性部材で形成されており、前記浸透槽は、前記循環貯留槽の上方及び周囲を取囲むように、地層面に沿って浸透槽側面があり、地下の地面に沿って浸透槽床面があり、少なくとも一部の前記浸透槽側面の下方が前記循環貯留槽床材または前記循環貯留槽側壁に接続され、前記浸透側面または前記浸透槽床面の少なくとも一部は前記循環貯留槽側壁または前記循環貯留槽床材によって代行されており、その他の前記浸透槽側面または前記浸透槽床面が透水性部材で形成され或いは前記地層面または前記地下の地面でもって形成されており、前記循環貯留槽床材の上面近郊にある吸入口から配水用貯水槽を経由して上方の排出口に向って、水を配水する揚水手段が設けられており、少なくとも前記浸透槽と前記循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が少なくとも充填されている雨水の浸透循環貯留槽を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る雨水の浸透循環貯留槽は、シンプルな構造でありながら、豪雨災害を緩和する機能を有し、地下水の減少を補い、湧水のような飲料水が貯留されている防災エリアを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽の透視図であって、浸透槽と、その内部にある循環貯留槽と揚水手段の概略を表示した。(内部に充填されている多孔質部材は表示を省略した)
【図2】本発明の代表的な実施例を示す浸透循環貯留槽の断面図であって、内部に充填されている多孔質部材、濾過材の表示は一部にとどめた。
【図3】図2の浸透循環貯留槽において、集中豪雨などにより、浸透槽及び循環貯留槽が満水になった状態を表した断面図である。
【図4】図2の浸透循環貯留槽において、図3の状態から一定期間降雨がなく、浸透槽の水が地下に浸透し、循環貯留槽内の水が循環している状態を表した。
【図5】揚水手段の排出口が、循環貯留槽内にある浸透循環貯留槽の断面図である。
【図6】浸透槽側面が縦方向に変形した浸透循環貯留槽Aと、浸透槽床面が縦方向に変形した浸透循環貯留槽Bの断面を表した簡略図である。
【図7】大きな浸透槽の内部に独立した4個の循環貯留槽が組合わさった雨水の浸透循環貯留槽の断面を表した簡略図である。
【図8】不定形の地面に埋設し、循環貯留槽床材と循環貯留槽側壁が浸透槽床面及び浸透槽側面の一部と合体して共有する浸透循環貯留槽の断面図である。
【図9】複数の循環貯留槽が埋設され、その間に浸透槽床面が、外側に浸透槽側面が形成されて一体化した浸透循環貯留槽の断面を表した簡略図である。
【図10】揚水手段の排出口を表した断面図である。
【図11】浸透槽に至る手前に設置する溜桝であって、流水の変化で土砂が堆積する様子を表した概念図である。
【図12】各種形状の浸透循環貯留槽をC〜Hに表した簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の基となる雨水の浸透循環貯留槽1の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0018】
本発明の基となる雨水の浸透循環貯留槽1は、その概要を図1の透視図で表し、図2は第一の実施態様を表す概略図である。また、図2の浸透循環貯留槽1が集中豪雨によって満水状態となった態様を図3で表し、図3の浸透循環貯留槽1において暫らく降雨がなく、浸透槽2の水が地下に浸透し、循環貯留槽3のみの水が循環し、浸透槽2が再び貯水可能な状態となっている態様を図4で表した。
【0019】
図1は、本発明の基となる雨水の浸透循環貯留槽1であって、雨水の浸透循環貯留槽1を構成する角型の浸透槽2と、浸透槽2の内部にある角型の循環貯留槽3と、揚水手段4の概要を表した透視図であって、簡略化するため多孔質部材7の表示は省略した。
【0020】
図1の浸透槽2は、地中に凹状の穴を掘って地下を形成し、地下の地面17に合成樹脂繊維のネットとシラス(いずれも透水性部材6aの一例である)を平面状に積層して所定面積の浸透槽床面2aを形成し、その浸透槽床面2aの上方を取囲む所定高さの地層面18を、合成樹脂繊維のネットとシラスで積層し、浸透槽側面2bを形成した。
【0021】
しかし、浸透槽床面2a及び浸透槽側面2bは、いずれも透水性部材6aを使用することなく、地下の地面17または地層面18をそのまま利用して浸透槽床面2aまたは浸透槽側面2bとして利用する事もできる。
【0022】
この場合、浸透槽床面2aの所定面積と浸透槽側面2bの所定高さとは、周囲から集めた雨水を貯水するために一定の容積が必要なためであり、地形や周囲の環境によって大きさは異なるが、浸透槽側面2bの上部は略水平である事が好ましい。
【0023】
また本実施例では、透水性部材6aの一例として合成樹脂繊維のネットとシラスを挙げたが、これらに限定されるものではなく、定型或いは不定形を問わず透水性を有する部材であれば良い、しかし、価格或いは工事の簡易性なども考慮し、或いは地震による地殻変動に対して順応できる軟質素材が好ましい。
【0024】
また、図1の循環貯留槽3は、浸透槽床面2a及び浸透槽側面2bから離れた浸透槽の内側にあって、循環貯留槽床材3aと循環貯留槽側壁3bが一体成型されているが、その製法に関しては図2欄で記述する。
【0025】
また図1において、循環貯留槽3が浸透槽2の内部に収まるためには、循環貯留槽床材3aの面積が浸透槽床面2aの所定面積よりも縦横共に小さく、循環貯留槽側壁3bの高さが浸透槽側面2bの所定高さよりも低い位置にある事により、循環貯留槽3は浸透槽2の内部に収容されている。
【0026】
また、循環貯留槽3に貯留されている水が飲料に供される水8aとなるには、多孔質部材7間を流れ下りながら浄化される事が必要であり、水を鉛直方向に循環させるために、上方へ水を配水する揚水手段4が必要になる。
【0027】
この揚水手段4は、多孔質部材7間を流れ落ちてきた水が最後に到達する循環貯留槽床材3aの上面近郊に吸入口4aを設け、浸透槽2の上方に排出口4bを設け、揚水手段4によって水を吸入口4aから排出口4bへ配水し、多孔質部材間を自然落下させる事によって鉛直方向に循環し、多孔質部材7に棲みついた微生物によって浄化され、或いは濾過される事によって、湧水のような飲料に供する水8aが貯留される。
【0028】
図2は、本発明の代表的な実施例として、四角形の逆台形をした雨水の浸透循環貯留槽1の断面を示した側面図である。
【0029】
図2の浸透槽2は、上方が広く、掘り下げるに従って狭くなる逆台形状の地層面18と略平坦な地下の地面17を持ち、この地下の地面17及び地層面18にシラス(透水性部材6aの一例である)を敷詰め、その上から合成樹脂繊維のネット(透水性部材6aの一例である)を敷き、略平坦な浸透槽床面2aと、上方が外側に傾斜した浸透槽側面2bが出来上がった。
【0030】
この場合に、浸透槽床面2aまたは浸透槽側面2bの少なくとも一部が、透水性部材6aを使用する事無く、地下にある地面17または周縁部の地層面18をそのまま利用し、浸透槽床面2aまたは浸透槽側面2bとして使用する事もできる。
【0031】
この、浸透槽側面2bが、上方が外側に傾斜した逆台型の形状をしているのは、浸透槽2に貯水された水8bが、浸透槽側面2bから地下へ浸透するのを助け、外側から浸透槽2内に逆流するのを防止するためである。
なぜならば、水は重力に従って下方へ移動するため、外側の水が重力に逆らって浸透槽2内に流入する可能性は極めて少ない。
【0032】
また、浸透槽側面2b及び浸透槽床面2aを形成する透水性部材6aは、透水性コンクリートなど定型の部材もあるが、透水性の軟質プラスチック部材、或いは透水性を有する土壌などの不定形部材、或いはこれらが積層されて形成される事が好ましい。
なぜならば、これらの透水性部材6aは、地面の凹凸に順応して浸透槽側面2b及び浸透槽床面2aが形成され、浸透槽2内部に充填された多孔質部材7(例えば軽石やスラグ)によって内圧と外圧が均衡した地下構造が成立し、大地震による地殻変動に対しても柔軟に地中と連動できる事が大きな要素である。
【0033】
次に、近郊の建物や道路の雨水を集水した流入口9aを、浸透槽側面2bの上部に接続し、浸透槽2が完成した。
【0034】
続いて、地中にコンクリート杭(固定手段12の一例である)を打ち込み、杭の上端を浸透槽床面2aの上方略1m地点に留め、浸透槽床面2aから杭上端の高さまで軽石(多孔質部材7の一例である)を敷詰めた。
【0035】
次に、敷詰めた軽石の上にプラスチックシートとコンクリート(不透水性部材6bの一例である)でもって循環貯留槽床材3aを成型し、その上方を囲むように循環貯留槽側壁3bを成型して床材と一体化させ、浸透槽2の内部に、独立した(多孔質部材を通じては繋がっているが)箱型の循環貯留槽3が完成した。
【0036】
また、本発明の循環貯留槽3が浸透槽2の内部に独立して設置されている理由は、集中豪雨などによって貯水した大量の水8bを素早く地中に浸透させるために、浸透槽2の表面積を最大限に保つためであり、今一つは、地震に対する防御対策として、循環貯留槽3が独立して固定されている事が好ましい。
【0037】
また、循環貯留槽床材3aは、略3%の傾斜を設けて制作する事によって、揚水手段4の吸入口4aを設置するに適した最下点が出現した。
【0038】
図2に示した揚水手段4は、循環貯留槽3に貯留されている水を循環し浄化させるために、循環貯留槽床材3aの上面近郊にある吸入口4aからいったん地上にある配水用貯水槽5に配水し、貯水した配水用貯水槽5を経由し、浸透槽2の上層部内に埋設した排出口4bから水を溢れさせる役目を担っている。また、図2では排出口4bが1本の線状に描かれているが、この排出口4bは、横方向の縦横に広がり、面状に配列されている。
【0039】
この揚水手段4は、動力として平常時は電動モーターを利用し、(或いは自然エネルギーを利用して水を汲み上げ)配水用貯水槽5内の水面が下限位置に達した時にモーター(揚水手段4の一例である)が稼働し、上限位置で停止し、常時、配水用貯水槽5の水位が一定範囲内にある様に調節されている。
と同時に、災害時に備え、揚水手段4は手動ポンプと併用した複数の揚水システムが好ましい。
【0040】
また、この配水用貯水槽5は、地上に設置する事によって高低差が利用でき、上方に通気口を設ける事によって大気圧が利用でき、配水用貯水槽5の水面表面積を排出口表面積の和よりも大きくし、複数の排出口4bから均等に水を溢れ出させるため、複数の排出口4bの高さ位置を水平にした。
【0041】
また、この配水用貯水槽5は、蛇口を併設する事によって飲料や散水に利用でき、或いは濾過材11を充填して浄水機能を持たせ、或いは専用の浄水器と併設する等、種々の方法と複合した水の有効利用が好ましい。
【0042】
この、排出口4bから溢れ出た水は、連続気孔を有する多孔質部材7の表面或いは細孔内部を通過しながら下方へ移動し、好気性雰囲気中を移動する事によって小川のせせらぎの如く浄化され、常時循環する事によって飲料に供される水8aとなって貯留される。
【0043】
また、本実施例の図2では、各部材の配置位置を明確に表示するため多孔質部材7の表示を右端の一部に留めたが、浸透槽2及び循環貯留槽3の内部に軽石(多孔質部材の一例である)を敷詰めた。
【0044】
また、本実施例では連続気孔を有する多孔質部材7として軽石を使用したが、その他にも連続気孔を有する多孔質部材7としては、本実施例で用いた天然鉱物(軽石やボラ土)、或いは化石(例えば、サンゴ粒)、或いは人工の多孔質部材(例えば、リサイクルされた連続気孔の発砲ガラスやC型シリカゲル)、或いは製造に供された廃材(例えば、スラグや石炭ガラ)などがある。
それらは、火山ガスが噴出した孔(例えば鹿児島産軽石の細孔は、1μ〜3mmまで)であり、サンゴ虫が出入りした孔であって、多くの多孔質部材中にあっても大きな連続気孔を持つ部類であり、その細孔径が大きいが故に気孔率が大きく、半面で保水力が弱く、保水力が弱いが故に上方で放出された水が重力によって細孔内を容易に通過する事ができ、粒子の表面及び内部で好気的雰囲気にさらされ、一般的に無害といわれる好気性微生物によって不純物が消費され、濾過ではなく消費されるが故に浄化作用が持続される。
【0045】
この場合、種々の環境や気象条件によっては、連続気孔を持つ多孔質部材であれば小さな細孔を持つ多孔質部材であっても良い。
【0046】
また、大きな細孔径を持つ多孔質部材といえども、加熱などにより絶乾状態となった多孔質部材内の細孔中には、水は表面張力によって容易に細孔内に入り込めないが、比較的多雨地帯にある日本の土壌中は高湿度状態にあり、浸透循環貯留槽1内にある多孔質部材は絶乾状態にはならない。
【0047】
また、これらの多孔質部材7は、pHがほぼ中性の安定した分子が多く、踏圧で容易に潰れない所定硬度(例えば、鹿児島産軽石のモース硬度は5〜6)を有し、粒径が一定範囲内の所定体積(例えば、粒径3mm〜10mm程度)を有する多孔質部材7が好ましい。
【0048】
しかし、浸透循環貯留槽1の上方が強固な部材で覆われている場合は、多孔質部材7の硬度は重要な要件とはならず、その他の条件があればよい。
【0049】
また、これらの多孔質部材7が一定範囲内の所定体積を持つ事は、粒子と粒子の間に大きな空隙(例えば、粒径3mm〜10mmの軽石の粒子内部を含めた空隙率は70%)が生じ、この大きな空隙によって、シンプルな構造でありながら、安価で大きな貯水力を持つ地下空間が誕生する。
【0050】
また、これらの多孔質部材7は、その成り立ちからして表面が無数の凹凸で覆われているものが多く、大きな体積と表面の凹凸などによって摩擦係数が大きな多孔質部材となっている。
この摩擦係数の大きな多孔質部材7は、地震による液状化現象が起きにくいと同時に、浸透槽内部にある循環貯留槽3を、大地震の衝撃から守る一因でもあり、好ましい。
【0051】
また、水の浄化には多様な環境が存在する方が有利であるため、循環貯留槽3上部と浸透槽2が接する部位に、濾過材11を充填した。
通常、濾過材11としては、木炭、竹炭、ゼオライト等の細孔径の小さな多孔質部材、或いはシュロや麻などの繊維状部材、或いは浸透膜などの人工部材があるが、本実施例では木炭と粒径が小さい(例えば2mm〜4mm)軽石を混合し、循環貯留槽3上方に充填した。
【0052】
また、図2では飲料に供される水8aと地中に浸透する水8bの2種類の水を表示したが、循環貯留槽3の多孔質部材7間の空隙に貯留され飲料に供される水8aは、常時循環されて浄化されている水であり、浸透槽2下方の多孔質部材7間の空隙に貯水された水は、図3に示した満水状態から図4に至るまでの途中にある水位を表している。
【0053】
また、図2に示す浸透循環貯水槽1は、浸透槽2の内部に達した流入口9aの先端と循環貯留槽3との横方向の距離が大きいため、浸透槽内部の多孔質部材7間にシート状或いは板状の水の誘導部材10を設置した。
この水の誘導部材10は、不透水性部材6bからなり、水が流れる勾配(略2%とした)を有して設置される事が好ましい。
【0054】
また、この水の誘導部材10は、揚水手段4の排出口4bから溢れ出た水が浸透槽2の多孔質部材7で拡散して減少するのを防ぎ、その水を効率よく循環貯留槽3に導く役目も担っている。
【0055】
次に、図3について記述する。
図3は、図2に示した雨水の浸透循環貯留槽1において、集中豪雨或いは長期間の大雨によって大量の雨水が流れ込み、浸透槽2及び循環貯留槽3共に満水状態となった様子を表した。
この場合でも、循環貯留槽3内の水は、平常から循環貯留されている水8aであり、浸透槽内に貯水されている水は、地中に浸透する水8bであり、雨が止み雨水の供給が無くなると徐々に地中に染み込んで水位が低下し、図2に記載した8bの水位を経過して最後に無くなる水である。
【0056】
次に、図4について記述する。
図4は、図3で満水状態を示した浸透槽2において、時間の経過とともに多孔質部材7間の空隙に貯水された水8bが地中に浸透して消失し、続いて多孔質部材7内部の水が徐々に下方へ移動しながら地中に浸透し、やがて浸透槽2上方の多孔質部材7b内部の水が失われて半乾燥状態となり、浸透槽2下方にある多孔質部材7aがまだ水を含んだ状態となった時点を表した概略図である。
【0057】
この時、循環貯留槽では、揚水手段4によって循環貯留槽3内の吸入口4aから浸透槽上部の排出口4bまで、たえず配水されており、排出口4bから溢れ出た水が多孔質部材の表面或いは内部を通過しながら流れ下って循環しており、浸透循環貯留槽1内が常時高湿度下に保たれ、循環貯留槽3内には飲料に供される水8aが貯留されている。
【0058】
図5は、大きな循環貯留槽3を有し、集中豪雨と長期間の少雨時期との両方が存在する地域に適した浸透循環貯留槽1であって、揚水手段4の排出口4bに向かうパイプが先端に行くにしたがって下方に傾斜し、排出口4bが循環貯留槽3内に達している浸透循環貯留槽1の一例を表した。
【0059】
また、浸透槽2を埋設する地層が、粘土層などの不透水土壌で覆われている場合は、いくら浸透槽2を透水性部材6aで製作しても水は地中に浸透しない。
従って、図6のA及びBは、浸透槽側面2b或いは浸透槽床面2aの一部を通常の浸透槽床面2a位置より下方へ掘下げ、透水性を示す地層まで延長させる事が好ましい。
【0060】
前記の図6Aは、浸透槽側面2bの一部を地中深くまで延長し、透水性土壌層である2x地点で屈折して上方へ向かい、2y地点で浸透槽床面2aと接続しているが、これは、浸透槽側面2bの一部が地中深くに延長し、2x地点で変形した浸透槽床面2aと接続している、とも表現できる。
また、図6Aの別の片方は、浸透槽側面2bの一部が浸透槽床面2aの位置2xを過ぎて延長し、湾曲して2y地点で浸透槽床面2aに接続しているが、これも、浸透槽側面2bと変形した浸透槽床面2aが2x地点で接続している、とも表現できる。
【0061】
図6Bは、浸透槽床面2aの一部を透水性土壌層まで掘下げ、変形した浸透槽床面2aと浸透槽側面2bが2x地点で接続されている浸透循環貯留槽1である。
【0062】
図7に示す、大きな浸透槽2の内部に独立した複数の循環貯留槽3が組合わさった浸透循環貯留槽1の断面を表す簡略図は、大規模な浸透循環貯留槽1を設置する場合に有効な形状である。
なぜならば、豪雨災害に対しては、浸透槽が大容量であるほど好ましい必修条件であり、地震災害に対しては、小規模或いは中規模の循環貯水槽が独立して設置されている事が安全であり、その両方の利便性を生かした浸透循環貯留槽1であって、被害を最小限に抑える有効な手段である。
【0063】
例えば、図7の浸透循環貯留槽1が、平均直径が100mの略楕円形で深さが6mの浸透槽2であったとすれば、内部空間は略47,100立方メートルであって、内部に4個ある循環貯留槽の体積の合計が30%であれば、浸透槽の内部空間は略33,000立方メートルであり、内部に充填している多孔質部材の空隙率が70%と仮定すれば、計算上は略23,000立方メートルの浸透槽の空間体積が存在する。
しかし、既に吸水している部分なども考慮し、現実的に貯水可能な空間を半分程度と仮定しても、貯水可能な水は略11,500立方メートルである。
この量は、短時間降雨100mmの猛烈な豪雨があった時、その半分が貯水され、半分が排水されたと仮定すると、約2.3平方キロメートル範囲内に降った雨が貯水できた計算になる。
【0064】
また、浸透槽2の内部に4個ある循環貯留槽3に貯留され飲料に供される水8aは、容積略14,100立方メートル×空隙率70%=略10,000立方メートルの水が存在している計算であり、その半分量が即利用可能な水量と仮定すると、略5,000立方メートルの飲料水が貯留されており、一人当たり10リットルが必要だと仮定すれば50万人分の水が確保されている計算になる。
【0065】
また、前記の浸透槽2内部に複数の循環貯留槽3が設けられた浸透循環貯留槽1において、複数の循環貯留槽3の揚水手段4が統合される場合もある。
例えば図7において、中央にある2個の循環貯留槽3から1個の配水用貯水槽5に配水し、1個の配水用貯水槽5から2個の循環貯留槽3上方にある排出口4bに配水する事により、簡略化したシステムが完成する。
【0066】
図8は、循環貯留槽床材3aまたは循環貯留槽側壁3bの一部が浸透槽床面2aまたは浸透槽側面2bの機能を代行している浸透循環貯水槽1であって、浸透槽側面2bの一部が浸透槽床面2aの下方まで延長されて湾曲し、2y地点で浸透槽床面2aに接続されており、別の片方は浸透槽床面2aと浸透槽側面2bの一部が循環貯留槽床材3aと循環貯留槽側壁3bに合体しており、浸透槽の機能が制限されるが簡略化した浸透循環貯留槽1の一例を示した。
【0067】
また、図8に記載した揚水手段4は、配水用貯水槽5から離れるに従って略2%の勾配を有して配水パイプが下降し、その配水パイプに上方に向う排出口4bを接続し、面状に広がる全ての排出口4bは水平方向の同位置になるよう調節した。
【0068】
また、面状に広がる全ての排出口4bから水が均等に噴出される事は、広範囲の多孔質部材7が有効に利用され、広範囲の多孔質部材7が利用される事によって、浄化機能がより多く発揮される。
【0069】
また図9は、複数の循環貯留槽3が略水平方向に設置され、循環貯留槽3と循環貯留槽3の間に浸透槽床面2aが接続され、循環貯留槽3と循環貯留槽3の間及び循環貯留槽3の上方を含む外周部を取囲むように浸透槽側面2bが形成されて、1個の浸透槽2内に複数の循環貯留槽3が形成され、一体化した浸透循環貯留槽が形成されている状態を表した簡略図であって、大規模災害に対する最も簡便かつ有効な防災手段である。
【0070】
図9で表した方法は、防災エリアに巨大な穴を掘り、集水口の要所ごとに循環貯留槽3を設置し、塩ビパイプ(揚水手段4の一例である)を設置しながら軽石(多孔質部材7の一例である)を充填し、循環貯留槽3間及び外周部にも軽石を充填し、実用的な、巨大な雨水の浸透循環貯留槽が完成した。
【0071】
図10は、揚水手段4の排出口4bを表した拡大図であって、配水用貯水槽5からの高低差を利用して複数の排出口4bから均等に水を溢れさせるために、排出口を上方に向って設置し、全ての排出口4bを水平の同位置に保つ事が肝要である。
【0072】
しかし、排出口4bを上方に向って設置すると色々な障害が発生する、即ち、植物の根は水を求めて伸長し、或いは上方から土砂や粒子が入り込み、目詰まりが発生する。
従って、排出口4bに覆いを設け、さらにその上から防草シートで覆った。
【0073】
図11に示した溜桝9は、流入口9aが浸透槽2に至る手前で溜桝9に接続し、その溜桝9から、再び浸透槽に向う流入口9bと外部へ排水する排水管9cを追加し、それぞれを異なる位置と異なる方向に接続した。
【0074】
この、異なる位置と異なる方向に接続する理由は、流入口9aから流れてきた雨水が容積の大きな溜桝9に入って流速が弱まり、出口方向が変わる事によって渦と澱みが生じて土砂16が沈殿し、再び浸透槽に向う流入口9bを低い位置に接続し、排水管9cを高い位置に接続する事によって、浸透槽が満杯になるまでは浸透槽2に供給し、満杯となった時点で排水管9cに導き、浸透槽2のオーバーフローを回避させる。
【0075】
また、溜桝9から再び浸透槽に向う流入口9bは、溜桝9に流入する流入口9aよりも口径面積を広げ、勾配を緩くする事によってさらに流速が弱まり、土砂が沈殿し易くなる。
また集水する周辺の状況に応じて、この溜桝の複数個を接続する方法もあるが、別個の濾過専用の溜桝を設け、その溜桝との組合せが簡単で現実的である。
【0076】
濾過専用の溜桝は、粒形の小さい多孔質部材とシラスを混合した濾過材を通過させ、定期的に濾過材の目詰まり部分を取除き、或いは交換する事によって、浸透槽の機能を長期間にわたって保つ働きがある。
【0077】
図12は、様々な地形や環境に応じて変化する雨水の浸透循環貯留槽1について、多様な種類の一例を表した略図である。
【0078】
図12Cは、雨水の浸透循環貯留槽1が地中深くに設置されている様態を表し、図12Dは、雨水の浸透循環貯留槽1が地表或いは地表近くに設置されている様態を表しているが、傾斜地に設置される場合など、この両方が混在した形も存在する。
【0079】
図12Eは、浸透循環貯留槽1の平面図で、浸透槽2が略円形や楕円形であり、内部の循環貯留槽3が四角の形状をしている様態を表し、図12Fは、6角形の浸透槽2と略円形の循環貯留槽3を表している。
【0080】
また、図12Gは、上方が狭い浸透槽2と角型の循環貯留槽3が組合わさった側面を表し、図12Hは、不定形の浸透槽2と不定形の循環貯留槽3の一部が合体した浸透循環貯留槽である。
【0081】
また、本実施例の雨水の浸透循環貯留槽1内部に充填した多孔質部材7は、充分な硬度を有しているため、上方の地上は通常の公園や運動場としての用途に耐えられる。
従って、上方の地上部の少なくとも一部は、シラスや透水性を有する土壌で覆い、或いは舗装して通路として使用し、或いは芝生や花壇や樹木を植栽し、通常の公園や多目的広場としての機能を維持させる事ができる。
【0082】
その場合、本実施例の多孔質部材は、細孔径が大きいが故に保水力が弱い。
この保水力が弱いがために、浸透槽内に充填する素材として好ましい要件を備えているが、半面で、少雨地域にあっては地表が乾燥し、地表植物の生育に適さない場合が生じる。
従って、浸透槽の上部に、細孔径が小さく保水性に優れた多孔質部材(例えば、ゼオライト、珪藻土、木炭など)を、状況に応じて一部に利用する事もできる。
【0083】
現在の大都市は、地表がアスファルトやコンクリートに覆われて透水性を失い、ビルが高層化してヒートアイランド現象が加速し、ここに外的条件が加われば上昇気流によって雷雲が発生し、急激な豪雨災害の危険性が潜んでいます。
また、地球温暖化の影響は、過去に例がなかったほどの集中豪雨や巨大台風の襲来が取りざたされており、その災害予防対策は緊急の課題です。
しかし、この豪雨災害を食い止めるには新たな大容量の排水設備が必要であり、それには膨大な費用と長い時間が必要でありますが、本発明は、至ってシンプルで、安価な費用で、この豪雨災害を緩和する機能があります。
また、巨大地震が発生すれば、地下鉄や電車は運休し、道路は車が渋滞して避難経路になり得ず、人口密度が高い都心の防災エリアは、帰宅困難者や避難者で埋め尽くされ、密集した人々にとって緊急かつ最も重要な要件は、自宅やさらに安全な場所への移動手段と食料(特に飲料水)の確保であり、本発明は、この飲料水が貯留されている防災エリアを提供します。
【符号の説明】
【0084】
1 雨水の浸透循環貯留槽
2 浸透槽
2a 浸透槽床面
2b 浸透槽側面
2x 変形した浸透槽床面と浸透槽側面が接続する箇所
2y 浸透槽の床面より下方に延びた側面が床面と接続する箇所
3 循環貯留槽
3a 循環貯留槽床材
3b 循環貯留槽側壁
4 揚水手段
4a 吸入口
4b 排出口
5 配水用貯水槽
6a 透水性部材
6b 不透水性部材
7 多孔質部材
7a 充分に水を含んだ多孔質部材
7b 半乾燥状態にある多孔質部材
8a (多孔質部材間の空隙に貯留され)飲料に供される水
8b (多孔質部材間の空隙に貯水され)地中に浸透する水
9 溜桝
9a 流入口
9b 再び浸透槽に向う流入口
9c 排水管
10 水の誘導部材
11 濾過材
12 固定手段
13 地表(植物、透水性土壌、透水性舗装、コンクリートなどを含む)
14 地中
15 水が流れる方向
16 土砂
17 地下の地面
18 地層面
A 変形した浸透槽側面を表した浸透循環貯留槽の断面
B 変形した浸透槽床面を表した浸透循環貯留槽の断面
C 地中深くに設置された浸透循環貯留槽の断面
D 地表近くに設置された浸透循環貯留槽の断面
E 浸透循環貯留槽の平面
F 浸透循環貯留槽の平面
G 浸透循環貯留槽の断面
H 浸透循環貯留槽の断面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽であって、
前記浸透循環貯留槽は、浸透槽と循環貯留槽によって構成されており、
前記浸透槽は、地下の地面に接して所定面積を有する浸透槽床面があり、前記浸透槽床面を取り囲むように周縁部の地層面に接して所定高さの浸透槽側面があり、前記浸透槽床面及び前記浸透槽側面の少なくとも一部が透水性部材で形成され、或いは前記浸透槽床面及び前記浸透槽側面の少なくとも一部が前記
地下の地面または前記地層面でもって形成されており、
前記循環貯留槽は、前記浸透槽床面の所定面積以内の面積を有する循環貯留槽床材が、前記浸透槽床面から離れた上方に位置して形成され、前記浸透槽側面の所定高さ以内の高さを有する循環貯留槽側壁が、前記循環貯留槽床材の周縁部上方を取り囲むように接続され、前記循環貯留槽側壁は前記浸透槽側面から離れた内側に位置して形成され、前記循環貯留槽床材及び前記循環貯留槽側壁が不透水性部材で形成されており、
前記循環貯留槽床材の上面近郊にある吸入口から上方の排出口に向って、水を配水する揚水手段が設けられており、
少なくとも前記浸透槽と前記循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が少なくとも充填されている
雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項2】
前記浸透槽側面の少なくとも一部が、前記浸透槽床面から上方に離れるに従って外側に傾斜している
請求項1に記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項3】
前記浸透槽の上面または前記浸透槽側面に、少なくとも1個の雨水の流入口が接続されている
請求項1、請求項2のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項4】
前記循環貯留槽床材または前記循環貯留槽側壁の少なくとも一部が、前記浸透槽床面または前記浸透槽側面の少なくとも一部に接している、或いは前記浸透槽床面または前記浸透槽側面の少なくとも一部と合体している
請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項5】
前記揚水手段に配水用貯水槽が追加され、前記配水用貯水槽は、前記循環貯留槽床材の上面近郊にある前記吸入口と、前記排出口との間に接続されている
請求項1に記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項6】
前記浸透槽において、前記浸透槽側面の少なくとも一部が前記浸透槽床面の下方に延長され屈折または湾曲して前記浸透槽床面と接続されている、或いは前記浸透槽側面の少なくとも一部が前記浸透槽床面の下方に延長され少なくとも一部が変形した前記浸透槽床面と接続されている、或いは前記浸透槽床面の少なくとも一部が鉛直方向に凹凸を有して変形している
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項7】
前記浸透槽または前記循環貯留槽の内部に、濾過材が少なくとも充填されている
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項8】
前記浸透槽の内部に、水の誘導部材が設けられている
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項9】
前記浸透槽の内部に、複数の独立した前記循環貯留槽が設けられている
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項10】
前記の浸透槽内部に複数の循環貯留槽が設けられた浸透循環貯留槽において、複数の循環貯留槽の揚水手段が統合されている
請求項1、請求項5、請求項9のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項11】
地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽であって、
前記浸透循環貯留槽は、浸透槽と循環貯留槽によって構成されており、
前記循環貯留槽は、少なくとも一部が地下の地面に接している循環貯留槽床材があり、前記循環貯留槽床材に接して前記循環貯留槽床材の周縁部上方を取り囲むように循環貯留槽側壁があり、前記循環貯留槽床材及び前記循環貯留槽側壁が不透水性部材で形成されており、
前記浸透槽は、前記循環貯留槽の上方及び周囲を取囲むように、地層面に沿って浸透槽側面があり、地下の地面に沿って浸透槽床面があり、少なくとも一部の前記浸透槽側面の下方が前記循環貯留槽床材または前記循環貯留槽側壁に接続され、前記浸透側面または前記浸透槽床面の少なくとも一部は前記循環貯留槽側壁または前記循環貯留槽床材によって代行されており、その他の前記浸透槽側面または前記浸透槽床面が透水性部材で形成され或いは前記地層面または前記地下の地面でもって形成されており、
前記循環貯留槽床材の上面近郊にある吸入口から配水用貯水槽を経由して上方の排出口に向って、水を配水する揚水手段が設けられており、
少なくとも前記浸透槽と前記循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が少なくとも充填されている
雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項12】
前記浸透槽側面の少なくとも一部が、前記浸透槽床面から上方に離れるに従って外側に傾斜している
請求項11に記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項13】
前記浸透槽の上面または前記浸透槽側面に、少なくとも1個の雨水の流入口が接続されている
請求項11、請求項12のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項14】
前記浸透槽または前記循環貯留槽の内部に、濾過材が少なくとも充填されている
請求項11、請求項12、請求項13のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項15】
前記浸透槽の内部に、水の誘導部材が設けられている
請求項11、請求項12、請求項13のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項16】
前記揚水手段において、前記配水用貯水槽を経由して水を配水する複数の排出口があり、複数の前記排出口が、前記配水用貯水槽から離れるに従って下方へ向かう排水パイプから上向きに接続され、水平方向の略同位置に設けられている
請求項11、請求項12、請求項13のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項17】
複数の前記循環貯留槽が略水平方向に設置され、前記循環貯留槽と前記循環貯留槽の間に前記浸透槽床面が接続され、前記循環貯留槽と前記循環貯留槽の間及び前記循環貯留槽の上方を含む外周部を取囲むように前記浸透槽側面が形成されて、1個の浸透槽内に複数の循環貯留槽が形成されている
請求項11、請求項12、請求項13、請求項14、請求項15、請求項16のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項1】
地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽であって、
前記浸透循環貯留槽は、浸透槽と循環貯留槽によって構成されており、
前記浸透槽は、地下の地面に接して所定面積を有する浸透槽床面があり、前記浸透槽床面を取り囲むように周縁部の地層面に接して所定高さの浸透槽側面があり、前記浸透槽床面及び前記浸透槽側面の少なくとも一部が透水性部材で形成され、或いは前記浸透槽床面及び前記浸透槽側面の少なくとも一部が前記
地下の地面または前記地層面でもって形成されており、
前記循環貯留槽は、前記浸透槽床面の所定面積以内の面積を有する循環貯留槽床材が、前記浸透槽床面から離れた上方に位置して形成され、前記浸透槽側面の所定高さ以内の高さを有する循環貯留槽側壁が、前記循環貯留槽床材の周縁部上方を取り囲むように接続され、前記循環貯留槽側壁は前記浸透槽側面から離れた内側に位置して形成され、前記循環貯留槽床材及び前記循環貯留槽側壁が不透水性部材で形成されており、
前記循環貯留槽床材の上面近郊にある吸入口から上方の排出口に向って、水を配水する揚水手段が設けられており、
少なくとも前記浸透槽と前記循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が少なくとも充填されている
雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項2】
前記浸透槽側面の少なくとも一部が、前記浸透槽床面から上方に離れるに従って外側に傾斜している
請求項1に記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項3】
前記浸透槽の上面または前記浸透槽側面に、少なくとも1個の雨水の流入口が接続されている
請求項1、請求項2のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項4】
前記循環貯留槽床材または前記循環貯留槽側壁の少なくとも一部が、前記浸透槽床面または前記浸透槽側面の少なくとも一部に接している、或いは前記浸透槽床面または前記浸透槽側面の少なくとも一部と合体している
請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項5】
前記揚水手段に配水用貯水槽が追加され、前記配水用貯水槽は、前記循環貯留槽床材の上面近郊にある前記吸入口と、前記排出口との間に接続されている
請求項1に記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項6】
前記浸透槽において、前記浸透槽側面の少なくとも一部が前記浸透槽床面の下方に延長され屈折または湾曲して前記浸透槽床面と接続されている、或いは前記浸透槽側面の少なくとも一部が前記浸透槽床面の下方に延長され少なくとも一部が変形した前記浸透槽床面と接続されている、或いは前記浸透槽床面の少なくとも一部が鉛直方向に凹凸を有して変形している
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項7】
前記浸透槽または前記循環貯留槽の内部に、濾過材が少なくとも充填されている
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項8】
前記浸透槽の内部に、水の誘導部材が設けられている
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項9】
前記浸透槽の内部に、複数の独立した前記循環貯留槽が設けられている
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項10】
前記の浸透槽内部に複数の循環貯留槽が設けられた浸透循環貯留槽において、複数の循環貯留槽の揚水手段が統合されている
請求項1、請求項5、請求項9のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項11】
地中に埋設されている雨水の浸透循環貯留槽であって、
前記浸透循環貯留槽は、浸透槽と循環貯留槽によって構成されており、
前記循環貯留槽は、少なくとも一部が地下の地面に接している循環貯留槽床材があり、前記循環貯留槽床材に接して前記循環貯留槽床材の周縁部上方を取り囲むように循環貯留槽側壁があり、前記循環貯留槽床材及び前記循環貯留槽側壁が不透水性部材で形成されており、
前記浸透槽は、前記循環貯留槽の上方及び周囲を取囲むように、地層面に沿って浸透槽側面があり、地下の地面に沿って浸透槽床面があり、少なくとも一部の前記浸透槽側面の下方が前記循環貯留槽床材または前記循環貯留槽側壁に接続され、前記浸透側面または前記浸透槽床面の少なくとも一部は前記循環貯留槽側壁または前記循環貯留槽床材によって代行されており、その他の前記浸透槽側面または前記浸透槽床面が透水性部材で形成され或いは前記地層面または前記地下の地面でもって形成されており、
前記循環貯留槽床材の上面近郊にある吸入口から配水用貯水槽を経由して上方の排出口に向って、水を配水する揚水手段が設けられており、
少なくとも前記浸透槽と前記循環貯留槽の内部に、連続気孔を有する多孔質部材が少なくとも充填されている
雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項12】
前記浸透槽側面の少なくとも一部が、前記浸透槽床面から上方に離れるに従って外側に傾斜している
請求項11に記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項13】
前記浸透槽の上面または前記浸透槽側面に、少なくとも1個の雨水の流入口が接続されている
請求項11、請求項12のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項14】
前記浸透槽または前記循環貯留槽の内部に、濾過材が少なくとも充填されている
請求項11、請求項12、請求項13のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項15】
前記浸透槽の内部に、水の誘導部材が設けられている
請求項11、請求項12、請求項13のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項16】
前記揚水手段において、前記配水用貯水槽を経由して水を配水する複数の排出口があり、複数の前記排出口が、前記配水用貯水槽から離れるに従って下方へ向かう排水パイプから上向きに接続され、水平方向の略同位置に設けられている
請求項11、請求項12、請求項13のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【請求項17】
複数の前記循環貯留槽が略水平方向に設置され、前記循環貯留槽と前記循環貯留槽の間に前記浸透槽床面が接続され、前記循環貯留槽と前記循環貯留槽の間及び前記循環貯留槽の上方を含む外周部を取囲むように前記浸透槽側面が形成されて、1個の浸透槽内に複数の循環貯留槽が形成されている
請求項11、請求項12、請求項13、請求項14、請求項15、請求項16のいずれかに記載されている雨水の浸透循環貯留槽。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−207510(P2012−207510A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81375(P2011−81375)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【特許番号】特許第4826975号(P4826975)
【特許公報発行日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(304049248)株式会社 宮田エンジニアリング (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【特許番号】特許第4826975号(P4826975)
【特許公報発行日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(304049248)株式会社 宮田エンジニアリング (10)
【Fターム(参考)】
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