説明

雨水桝に流入した有害物質含有雨水の処理方法

【課題】路面に設置された雨水桝に流入した雨水を、雨水桝に敷設された雨水浸透管を通じて地中に浸透させる際に、雨水に含まれる有害物質を迅速、簡便かつ安価に低減する方法を提供する。
【解決手段】流入した雨水を、雨水浸透管を通じて地中に浸透させる構造の雨水桝において、有害物質を含有する雨水を浄化してから地中に浸透させる雨水処理方法であって、雨水浸透管の内部に、筒状の網体を介して砕石層と吸着層を形成し、該吸着層を、粒状活性炭と重金属およびイオン性放射性物質を吸着する粒状吸着剤とで構成し、雨水桝に流入した雨水を砕石層、吸着層の順に通過させることで、雨水に含まれる油分、COD成分、有害重金属、放射性物質を併せて除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水桝に流入した有害物質を含む雨水の処理方法に関し、詳細には、路面に設置された雨水桝に流入した雨水を、雨水桝に敷設された雨水浸透管を通じて地中に浸透させる際に、雨水に含まれる有害物質(油分、COD成分、有害重金属、放射性物質等)を併せて吸着除去する、雨水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路上に降った雨水は、雨水桝を通して排水溝から河川や下水道に流入するが、降った雨水が一気に流れ込んで河川が氾濫するのを防ぐため、雨水を地中に浸透させることが行われている。そのための装置として、雨水桝の底面から地中に埋設して敷設される雨水浸透管や、雨水桝自体に雨水が浸透する開口部を設けた雨水浸透桝と呼ばれる雨水桝が開発されている。
【0003】
しかしながら、例えば、アスファルトで舗装された道路の場合、アスファルトに含まれるタール中には有害重金属類が含まれることが多く、道路上を走行する車輌によってアスファルト表面が徐々に削り取られてゆくことで、有害重金属を含むアスファルト粉末は道路周辺に飛散し、雨水によって洗い流されることとなる。また、車輌から道路にもたらされる各種の付着物も雨水によって洗い流され、さらに、空気中に飛散している汚濁物質が降雨時に雨水に捕捉されて道路上に落下する。したがって、道路に設置された雨水桝に流入する雨水には油分やCOD成分、鉛や亜鉛、銅などの有害重金属類などの汚濁物質が含まれることとなり、こうした雨水とともに流入した汚濁物質が地中に浸透し、地下水を汚染することとなり、環境汚染の原因の一つとして問題となっている。
【0004】
さらに、東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所の事故で飛散した放射性物質も、いずれは上記雨水浸透管や雨水浸透桝を経由して、雨水とともに地中へ浸透することとなるので、放射性物質による地下水の汚染を防ぐことは、緊急に解決すべき課題である。
【0005】
放射性物質に汚染された排水の処理方法として、特許文献1には、使用済燃料の再処理工場から発生する硝酸ナトリウムを含んだ放射性廃棄物含有廃水を、ランタノイド化合物とリン酸を添加してPu等のTRU核種を取り除く共沈処理と、ゼオライト等をイオン交換体としてCsやRu等のイオン性の放射性核種を取り除くイオン交換処理を併用して処理する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1の方法では、排水中に油分が含まれる場合には、放射性物質を処理する前に、予め活性炭で処理する必要のあることが記載されており、実施例4では油分の吸着に使用した活性炭を濾過によって取り除いてから放射性物質の処理が実施されている。
【0006】
一方、雨水桝に流入した雨水を地中に浸透させる際に雨水に含まれる汚濁物質を除去する方法として、例えば、特許文献2には、雨水浸透管を有する雨水桝であって、この雨水浸透管の内部に、油分、COD成分および有害重金属類を吸着除去できる吸着剤を、フィルターとして充填する方法が開示されている。しかしながら、吸着剤や吸着処理方法の詳細には言及していない。特に、種々の有害物質が混在する場合に、これらを効率よく除去することは容易でない。
【0007】
また、特許文献3には、集水した雨水を一旦貯留し、これを地中へ浸透させる機能を有する雨水貯留浸透槽において、その底部に、標準土壌を積層した下層と多孔質ケイ酸カルシウム、炭、ゼオライトから選ばれた少なくとも1種を積層した上層からなる浄化材層を設け、当該浄化層を通過して雨水を地中に浸透させる方法、あるいは多孔質ケイ酸カルシウム、ゼオライトから選ばれた少なくとも1種を積層した浄化材層、あるいは標準土壌を積層した下層と多孔質ケイ酸カルシウム、炭、ゼオライトから選ばれた少なくとも1種を積層した上層からなる浄化材層、透水シート、透水性の敷床層を設け、これらを通過した雨水を地中に浸透させる方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3の方法においては、流入した雨水が直接浄化材層を通過するため、雨水中に油分などが含まれていた場合に、浄化材として用いる多孔質ケイ酸カルシウムや炭、ゼオライトなどが目詰りを起こし易いという問題点がある。また、これらの浄化材は層状に積み上げただけの状態であるため、簡便に交換するのが困難な上、交換の際に周囲にこぼれ落ちる危険性が高く、有害物質を含有する雨水を処理する方法としては不適当である。
【0009】
なお浸透桝ではないが、特許文献4には、雨水を河川に排出する方式の雨水桝で、4つの雨水槽で構成された雨水浄化構築物が開示されている。第1の雨水槽に流入した雨水が第2、第3の雨水槽を経由して第4の雨水槽より河川に排出される構成で、第1雨水槽と第2雨水槽の間に設置された金網で雨水とともに流入したゴミを除去し、第2雨水槽と第3雨水槽の間および第3雨水槽と第4雨水槽の間に設置された活性炭または人工ゼオライトで構成されるフィルター材で、金属ないし金属イオン、カーボン、環境ホルモン物質等を吸着除去することが示されている。そして、当該フィルター材をカートリッジ式とすることで容易に交換できることが記載されている。
【0010】
しかしながら、特許文献4の方法では、各フィルター材は活性炭または人工ゼオライトのどちらか1種で構成することが示されているのみであり、活性炭およびゼオライトで同時に雨水を処理することを示唆するものではない。また、カートリッジがはめ込めるように雨水槽を当初から設計することが必要であり、構造が異なる雨水桝等に簡便に適用できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−271692号公報
【特許文献2】特許第4465029号公報
【特許文献3】特許第4651877号公報
【特許文献4】特開2003−286741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、路面に設置された雨水桝に流入した雨水を、雨水桝に敷設された雨水浸透管を通じて地中に浸透させる際に、雨水に含まれる有害物質を迅速、簡便かつ安価に低減する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は以下の方法をとるものである。
【0014】
(1)流入した雨水を雨水浸透管を通じて地中に浸透させる構造の雨水桝において、有害物質を含有する雨水を浄化してから地中に浸透させる雨水処理方法であって、
雨水浸透管の内部に、網体に入れた状態で、粒状活性炭と重金属およびイオン性放射性物質を吸着する粒状吸着剤との混合吸着剤を挿入して吸着層を形成するとともに、該吸着層の上部に砕石層を形成し、雨水桝に流入した雨水を砕石層、吸着層の順に通過させることで、雨水中の有害物質を除去することを特徴とする雨水処理方法。
(2)吸着層を形成する粒状活性炭と粒状吸着剤の比率が、重量比で、1:0.5〜5の範囲である上記(1)に記載の雨水処理方法。
(3)粒状吸着剤が、ゼオライトである上記(1)または(2)に記載の雨水処理方法。
(4)粒状活性炭が、JIS K−1474による粒度4〜6メッシュの活性炭が95重量%以上、硬度が97%以上、ベンゼン吸着量が32%以上、且つ充填密度が0.43〜0.50g/mlである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の雨水処理方法。
(5)吸着層の充填密度が、0.47〜1.11g/mlである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の雨水処理方法。
(6)砕石層と吸着層の比率が、体積比で1:1〜5である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の雨水処理方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、路面等に降った雨を雨水浸透管を通じて地中に浸透させる雨水桝において、雨水浸透管中に、砕石層ならびに粒状活性炭と重金属およびイオン性放射性物質を吸着する粒状吸着剤との混合物で構成された吸着層を設置しているので、流入した雨水が雨水浸透管を通過する際に、雨水中に含まれる油分やCOD成分あるいは有害重金属だけではなく放射性物質も併せて吸着除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】砕石層と吸着層を設置した雨水浸透管が敷設された雨水桝の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の雨水処理方法は、流入した雨水を雨水浸透管を通じて地中に浸透させる構造の雨水桝において、有害物質を含有する雨水を浄化してから地中に浸透させる雨水処理方法である。雨水は、空気中の不純物を捕捉して路面や敷地に降下し、あるいはさらに路面や敷地中に含まれる成分や付着物を洗い出しながら路面に設置された雨水桝に流れ込む。そのため、雨水浸透管の内部に砕石層と吸着層を設置しておけば、雨水浸透管を経由して雨水が地中に浸透して行く際に、雨水に含まれる有害物質を効率よく除去することができる。
【0018】
また、本発明の雨水処理方法は、雨水浸透管を有する雨水桝に適用することができる。本発明において、「雨水浸透管を有する雨水桝」とは、雨水を一旦集水してから下水道や河川に放出する雨水桝において、その底面部に、雨水浸透管と呼ばれる筒状の管を有するものを言う。
【0019】
通常、雨水浸透管は地中に埋設され、その先端付近の周辺部には排水のための貫通孔が穿設されているので、雨水浸透管を通過した雨水は貫通孔から地中に浸透して行くこととなる。こうした雨水浸透管を有する雨水桝は特に限定されるものではなく、公知の構造のものを利用することができ、例えば特許文献2に開示された雨水浸透構造体や、特開2011−32695号公報に開示された雨水地中浸透施設などを挙げることができる。
【0020】
本発明の雨水処理方法においては、雨水浸透管の内部に、網体に入れた状態で、粒状活性炭と重金属およびイオン性放射性物質を吸着する粒状吸着剤との混合吸着剤を挿入して吸着層を形成し、該吸着層の上部に砕石層を形成する。砕石層では、雨水中に含まれる油分や比較的大きな懸濁物質を取り除き、また吸着層では、粒状活性炭により雨水中のCOD成分、ヨウ素131などの非イオン性放射性物質および砕石層で除去できない油分を吸着除去し、粒状吸着剤により雨水中の鉛、亜鉛、銅等の有害重金属とセシウム137などのイオン性放射性物質を吸着除去する。一定期間経過後、混合吸着剤を網体ごと取り出して吸着層を交換する。
【0021】
本発明において、砕石層に用いる砕石としては3〜4号砕石が好ましい。砕石が大きすぎると油分や懸濁物質の除去効果が低下し、逆に砕石が小さすぎると雨水の通過速度が低下し雨水浸透管中を経由して地中に浸透させる雨水の量が減少する。
【0022】
本発明においては、吸着層に用いる吸着剤は、粒状活性炭と重金属およびイオン性放射性物質を吸着する粒状吸着剤とを混合して使用することが好ましい。両者を混合して使用することにより、粒状活性炭からなる吸着層と粒状吸着剤からなる吸着層を直列に設けるよりも、設置コストを削減することができ、しかも、油分、COD成分、有害重金属類ならびに放射性物質を効果的に除去することができる。
【0023】
粒状活性炭と粒状吸着剤の混合割合は、重量比で、1:0.5〜5の範囲が好ましい。粒状活性炭が少なすぎると活性炭によるヨウ素131などの非イオン性放射性物質の除去が不充分になるとともに、活性炭で除去できなかった油分により、粒状吸着剤が有する重金属やイオン性放射性物質除去機能が阻害される恐れがある。一方、粒状吸着剤が少なすぎると、本来の目的であるセシウム137などのイオン性放射性物質の除去や有害重金属類の除去が不充分となる。さらに、有害金属や放射性セシウムが地下水汚染した場合の人体や自然環境に与える影響を考慮すると、粒状活性炭と粒状吸着剤の混合割合を、重量比で、1:1〜4の範囲とすることが好ましい。
【0024】
粒状活性炭としては、JIS K−1474による粒度4〜6メッシュの活性炭が95重量%以上、硬度が97%以上、且つベンゼン吸着量が32%以上のものが好ましい。
【0025】
粒状活性炭の充填密度は、0.43〜0.50g/mlの範囲であることが好ましい。粒状活性炭の充填密度が0.43g/mlより小さい場合には、雨水の通過速度が速くなり活性炭との接触時間が不充分となるため、油分やCOD成分あるいはヨウ素131などの非イオン性放射性物質の除去効果が低下する恐れがある。充填密度が0.50g/mlを越える場合は、雨水浸透管中を雨水が通過する速度が低下して地中に浸透する雨水の量が減少するため非効率となるばかりか、放射性物質を含有した雨水が下水道や河川に流出する恐れがある。
【0026】
また、粒状吸着剤としては、粒状ゼオライトが好ましい。粒状ゼオライトの粒子径は約1mm〜20mmが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。また、陽イオン交換容量が100meq/100g以上のものが好ましい。
【0027】
粒状ゼオライトの粒子径が大きすぎると、重金属や放射性物質の除去効果が低下する傾向があり、一方、粒子径が小さすぎると、吸着層の充填密度が大きくなることで、雨水浸透管中を雨水が通過する速度が低下して地中に浸透する雨水の量が減少するため非効率となる。
【0028】
上記観点より、吸着層における、粒状活性炭と粒状吸着剤の混合物の充填密度は、0.47〜1.11g/mlとすることが好ましい。充填密度は、粒状活性炭と粒状吸着剤の比率、粒度を選択して調整すれば良い。
【0029】
本発明では、砕石層および吸着層は、砕石層が地表(入口)側、吸着層が地中(出口)側になるよう、雨水浸透管の内部に設置する円筒状の網体の中に形成する。このように形成することにより、雨水浸透管に流入した雨水は、砕石層で油分や懸濁物質が粗取りされた後に吸着層に流下するので、粒状活性炭に掛かる負荷が低減され、その結果、油分やCOD成分あるいはヨウ素131などの非イオン性放射性物質が効果的に除去されるとともに、粒状吸着剤により有害重金属やセシウム137などのイオン性放射性物質が効果的に除去されることとなる。
【0030】
砕石層と吸着層は、別々の網体の中に形成することが好ましいが、同じ網体の中に順次形成することもできる。網体の素材は、地中に埋設しても腐蝕し難く、かつ砕石や粒状活性炭と粒状吸着剤の混合吸着剤を充填して持ち上げても破れない強度があれば、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの合成繊維や、ステンレスなどの金属繊維を用いることができる。
【0031】
また、網体の形状は特に限定されるものではなく、筒状、袋状の網体を用いることができる。網体の上部および/または下部の余剰部分を、紐やロープ、ワイヤーなどで結束しても良く、折り重ねて紐やロープ、ワイヤーなどで網体の本体部分と結束しても良い。
【0032】
網体の目開きは、粒状活性炭および粒状吸着剤が脱落しない程度の大きさに設定することが望ましい。
【0033】
本発明において、砕石層と吸着層は、体積比で1:1〜5であるのが好ましく、より好ましくは1:1〜3である。通常、砕石層と吸着層の体積比は、雨水浸透管に充填された各層の長さで判定できる。砕石層を前記範囲とすることにより、雨水中の油分や懸濁物質をあらかじめ除去し、吸着層中の活性炭に掛かる負荷を軽減することができ、また粒状活性炭による油分やCOD成分あるいは懸濁物質の除去のみならず粒状吸着剤による有害重金属やイオン性放射性物質の除去効果を高めることができる。
【0034】
図1は、本発明による、砕石層と吸着層を設置した雨水浸透管を敷設した雨水桝の一例を示す断面図である。図1に示すように、雨水桝1の底面の中央部から地中に向かって、雨水浸透管2が垂直に埋設されている。なお、図示していないが雨水浸透管2の地中側の先端付近の周辺部には排水用の貫通孔が穿設されている。また、雨水浸透管2の雨水流入口にはフィルター3が設けられており、雨水とともに流入する大きなゴミは雨水浸透管2に流れ込まないようになっている。
【0035】
雨水浸透管2の内部には、円筒状の網体4a、5aが設置され、その中にはそれぞれ、粒状活性炭と粒状ゼオライトの混合物、砕石が充填されている。即ち、雨水浸透管2の下部には、粒状活性炭と粒状ゼオライトからなる吸着層4が設置され、吸着層4の上に砕石層5が設置されている。図1では、3mの長さの雨水浸透管2に、砕石層5を1mの長さに設置し、吸着層4を2mの長さに設置した例を示している。
【0036】
本発明の砕石層および吸着層は、円筒状の網体の中に砕石、粒状活性炭および粒状ゼオライトを充填しているので、網体ごと引き上げることで、雨水浸透管から簡単に取り出し可能である。したがって、雨水浸透管中に設置した砕石層と吸着層を、設置後一定期間が経過した段階で網体ごと取り出して、簡単に交換することができる。また、網体の中に充填しているので、雨水浸透管が地中に埋設された構造の雨水桝であれば、雨水浸透管の径や長さが異なっていても、使用する袋の直径や長さを適宜調整することで適用可能である。
【0037】
さらに、有害物質を含有する雨水を処理した後の砕石ならびに粒状活性炭および粒状ゼオライトは、網体に入ったままの状態で扱うことができるので、雨水浸透管からの取り出しの際や別の場所へ移送する際にも周囲にこぼれ落ちる危険性が少なく、安全に移動や保管をすることができる。
【0038】
本発明では、粒状活性炭と粒状ゼオライトの混合吸着剤を充填することによる吸着効果を以下のように推察する。即ち、重金属イオンやイオン性放射性物質など、水中に溶解したイオン性物質との相互作用は、イオン交換作用のあるゼオライトの方が活性炭よりも強く、一方、油分やCOD成分あるいはその他の懸濁物質など、非イオン性物質との相互作用は、活性炭の方がゼオライトよりも強いと考えられる。
【0039】
雨水には、イオン性物質と非イオン性物質が混在しているため、雨水浸透桝では、イオン性物質と非イオン性物質を同時に吸着する必要があるが、本発明では、雨水浸透管の内部に、イオン性物質との相互作用がより強い粒状ゼオライトと、非イオン性物質との相互作用がより強い粒状活性炭とからなる吸着層を形成し、しかも粒状ゼオライトと粒状活性炭を混合して用いることで、雨水浸透管という限定された領域を通過する雨水中の有害物質を効率よく吸着処理することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
粒状活性炭として、表1に示す性状の粒状活性炭(株式会社ノアテック製 「スーパーナミットNAC−11」)を用い、COD成分除去性能を試験した。試験水として、COD成分含有水(CODMn:98.5mg/L)を調製した。
【0042】
なお、CODMnは、100℃における過マンガン酸カリウムの酸素消費量で測定した。
【0043】
粒状活性炭501gを、内径38φのカラムに充填した(充填密度0.48g/ml)。この粒状活性炭充填カラムに、調製した試験水1000mLを、1分30秒(雨水浸透管中の雨水の浸透速度と同等程度の通過速度)で通水し、通水後のCODMnを測定した。その結果、カラム通水後のCODMnは51.0mg/Lとなり、原水のCODMnの約半分に低減した。
【0044】
【表1】

【0045】
粒状吸着剤として、株式会社ノアテック製の粒状のゼオライト(粒径5mm〜10mm、陽イオン交換容量120meq/100g)を用い、銅および亜鉛をモデルとして重金属除去性能を試験した。試験水として、銅:10mg/L、亜鉛:10mg/Lの濃度となるように、硫酸銅および塩化亜鉛を水に溶解して、重金属含有水1000mLを調製した。
【0046】
粒状ゼオライト1190gを、内径38φのカラムに充填した(充填密度1.17g/ml)。この粒状ゼオライト充填カラムに、調製した試験水1000mLを、1分30秒(雨水浸透管中の雨水の浸透速度と同等程度の通過速度)で通水し、通水後の重金属濃度を、原子吸光分析により測定した。その結果、カラム通水後の重金属濃度は、亜鉛:4.0mg/L、銅:4.2mg/Lとなり、原水濃度の約半分に低減した。
【0047】
上記の結果より、粒状活性炭(株式会社ノアテック製「スーパーナミットNAC−11」)は、原水中のCOD成分を吸着し、粒状ゼオライトは、重金属を吸着することが確認できた。
【0048】
実際の雨水に含まれるCOD成分と重金属は微量と考えられるので、粒状活性炭と粒状ゼオライトを吸着剤として雨水浸透管に設置することで、雨水に含まれる有害物質を吸着処理することが可能である。
【0049】
(実施例2)
粒状吸着剤として、株式会社ノアテック製の粒状のゼオライト(粒径5mm〜10mm、陽イオン交換容量120meq/100g)を用い、セシウムをモデルとしてイオン性放射性物質除去性能を試験した。試験水として、セシウム濃度が150mg/Lとなるように、塩化セシウムを水に溶解して、セシウム含有水を調製した。
セシウム含有水100mLをビーカーに量り採り、上記粒状ゼオライト1gを添加して、マグネティックスターラーで10分間撹拌した後、ICP−MSによりセシウム濃度を測定した。その結果、セシウム濃度は68mg/Lに低下しており、54.7%のセシウムが吸着除去されていた。
【0050】
上記の結果より、粒状ゼオライトによりセシウムが吸着されることが確認できた。実際の雨水に含まれる放射性セシウムは微量と考えられるので、粒状ゼオライトを吸着剤として雨水浸透管に設置することで、雨水に含まれる有害物質を吸着処理することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の雨水処理方法は、雨水浸透管の内径や長さなどに応じて、砕石層や吸着層を調整することができるので、雨水浸透管を有する構造の雨水桝であれば、新設の雨水桝のみならず既設の雨水桝にも広く適用することができる。また、油分やCOD成分だけではなく有害重金属や放射性物質も併せて除去することができるので、道路に設置された雨水桝のみならず、工場や事業所あるいは家庭の雨水処理にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 雨水桝
2 雨水浸透管
3 フィルター
4 粒状ゼオライトと粒状活性炭の混合物からなる吸着層
5 砕石層
4a 網状体
5a 網状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入した雨水を雨水浸透管を通じて地中に浸透させる構造の雨水桝において、有害物質を含有する雨水を浄化してから地中に浸透させる雨水処理方法であって、
雨水浸透管の内部に、網体に入れた状態で、粒状活性炭と重金属およびイオン性放射性物質を吸着する粒状吸着剤との混合吸着剤を挿入して吸着層を形成するとともに、該吸着層の上部に砕石層を形成し、雨水桝に流入した雨水を砕石層、吸着層の順に通過させることで、雨水中の有害物質を除去することを特徴とする雨水処理方法。
【請求項2】
吸着層を形成する粒状活性炭と粒状吸着剤の比率が、重量比で、1:0.5〜5の範囲である請求項1に記載の雨水処理方法。
【請求項3】
粒状吸着剤が、ゼオライトである請求項1または2に記載の雨水処理方法。
【請求項4】
粒状活性炭が、JIS K−1474による粒度4〜6メッシュの活性炭が95重量%以上、硬度が97%以上、ベンゼン吸着量が32%以上、且つ充填密度が0.43〜0.50g/mlである請求項1〜3のいずれかに記載の雨水処理方法。
【請求項5】
吸着層の充填密度が、0.47〜1.11g/mlである請求項1〜4のいずれかに記載の雨水処理方法。
【請求項6】
砕石層と吸着層の比率が、体積比で1:1〜5である請求項1〜5のいずれかに記載の雨水処理方法。


【図1】
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【公開番号】特開2013−104222(P2013−104222A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248669(P2011−248669)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(509198907)株式会社ノアテック (9)
【出願人】(504231243)株式会社ホウショウEG (11)
【出願人】(509199100)有限会社モグラ研究所 (7)
【出願人】(509199111)スピーダーレンタル株式会社 (7)
【出願人】(511237265)株式会社テクノブレインズ (4)
【Fターム(参考)】