説明

電位差滴定方法および電位差滴定装置

【課題】指示電位差の変化状態に拘わらず正確に滴定の終点を得ることが出来、自動滴定にも適した電位差滴定方法、および、当該電位差滴定方法に基づいて自動滴定を行う電位差滴定装置を提供する。
【解決手段】電位差滴定方法は、測定値から滴定曲線および微分曲線を仮定し、仮の終点(P)に隣接した滴定曲線上の2測定値を結ぶ直線(D)を演算し、予め設定された滴定曲線上の測定値の数を判定点数(n)として、判定点数(n)を指標として仮の終点(P)から所定レベル離れた滴定曲線上の測定値(d1)〜(d3)及び(d4)〜(d6)に基づき、最小二乗法により第1の推定線(B1)、第2の推定線(B2)を演算し、第1の推定線(B1)と第2の推定線(B2)の中間線(C)を演算し、中間線(C)と直線(D)の交点(A)を演算し、当該交点の横軸の読みを滴定の終点(a)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位差滴定方法および電位差滴定装置に関するものであり、詳しくは、指示電位差の変化状態に拘わらず正確に滴定の終点を得ることが出来る電位差滴定方法、および、当該電位差滴定方法に基づいて自動滴定を行う電位差滴定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電位差滴定分析においては、滴定曲線を使用した変曲点法や交点法、あるいは、滴定曲線の微分曲線を使用した方法が一般的に利用されている。図7は、交点法による従来の電位差滴定分析方法の概念を示すグラフであり、図8は、微分曲線を使用した従来の電位差滴定分析方法の概念を示すグラフである。
【0003】
上記の変曲点法は、滴定操作により指示電位差の値(Y)を縦軸、試料に添加した滴定用溶液の体積の値(X)を横軸にとって滴定曲線を作成し、その変曲点に相当する横軸の値を滴定の終点とする方法であり、明確に変曲点が得られる分析に適している。また、交点法は、図7に示す様に、上記と同様に作成した滴定曲線の極大および極小に向かう各曲線部分に傾き45°の接線(F1)、(F2)を作図し、これら接線から等距離にある平行な中間線(G)を作図し、滴定曲線と中間線(G)の交点(E)の横軸の読みを滴定の終点(e)とするいわゆる作図法であり、変曲点を明確に見出し難いパターンの滴定曲線の解析に有効である。
【0004】
一方、微分曲線を使用した方法は、図8に示す様に、電位差変化率(dY/dX)の絶対値を縦軸、滴定用溶液の体積の値(X)を横軸にとって微分曲線を作成し、電位差変化率(dY/dX)の絶対値が最大となる微分曲線上のピーク(H)の横軸の読みを滴定の終点(h)とする方法であり、滴定装置により自動演算を行う自動滴定に適している。
【非特許文献1】JIS K0113,1997改定板,「電位差・電流・電量・カールフィッシャー 測定方法通則」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、滴定分析では、通常、10〜20点ほどの測定値を利用して曲線を作図し、前述の変曲点、交点あるいはピークを判別しているが、試料の性状や測定感度の問題から、滑らかな滴定曲線が描けなかったり、変曲点を含む曲線の最大傾斜部分が長く連続する等、滴定曲線の変曲点部分で指示電位差が極端に変化する場合、あるいは、微分曲線のピークが不明瞭な場合などは、正確に終点を特定できないと言う問題がある。滴定曲線をグラフ化して手作業により接線を作図する場合は、相当の熟練により分析精度を高めることは可能であるが、特に、滴定装置において自動滴定を行う場合は、滑らかな滴定曲線を推定演算したり、適確な接線を推定演算することが困難である。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、指示電位差の変化状態に拘わらず正確に滴定の終点を得ることが出来、自動滴定にも適した電位差滴定方法、および、当該電位差滴定方法に基づいて自動滴定を行う電位差滴定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、滴定曲線および微分曲線を想定した場合、微分曲線のピークを利用して滴定曲線上で仮の終点を設定し、当該仮の終点から十分に離れた滴定曲線上の測定値、すなわち、滴定曲線の変曲点近傍にはなく且つ指示電位差の変化が緩やかな極大および極小に向かう各曲線部分を構成する3つの測定値を判定点として使用し、判定点の各組毎に一次の推定線を求め、これら推定線の中間線と滴定曲線との交点を滴定の終了点として採用することにより、変曲点近傍における指示電位差の大きな変化による影響を受けることなく且つ自動演算できる様にした。
【0008】
すなわち、本発明の第1の要旨は、滴定用溶液の滴定量と指示電位差とから滴定を行う電位差滴定方法であって、滴定操作により、指示電位差の値(Y)を縦軸、滴定用溶液の体積の値(X)を横軸にとって得られる連続線を滴定曲線と仮定し、電位差変化率(dY/dX)の絶対値を縦軸、滴定用溶液の体積の値(X)を横軸にとって得られる連続線を微分曲線と仮定し、微分曲線上のピーク(P1)に相当する滴定曲線上の値を仮の終点(P)と仮定し、仮の終点(P)に隣接した滴定曲線上の2測定値を結ぶ直線(D)を演算すると共に、予め設定され且つ終点判定に使用する滴定曲線上の測定値の数(ただし、仮の終点(P)を基準にして横軸の正負の各方向にそれぞれ存在する3点以上とする。)を判定点数(n)として、仮の終点(P)−判定点数(n)から、仮の終点(P)−判定点数(n)+2までの滴定曲線上の測定値(d1),(d2),(d3)に基づいて、最小二乗法により一次の第1の推定線(B1)を演算し、仮の終点(P)+判定点数(n)−2から、仮の終点(P)+判定点数(n)までの滴定曲線上の測定値(d4),(d5),(d6)に基づいて、最小二乗法により一次の第2の推定線(B2)を演算し、次いで、第1の推定線(B1)と第2の推定線(B2)の中間線(C)を演算し、そして、中間線(C)と直線(D)の交点(A)を演算し、当該交点の横軸の読みを滴定の終点(a)とすることを特徴とする電位差滴定方法に存する。
【0009】
また、本発明の第2の要旨は、試料を収容する滴定槽、指示電極と参照電極によって指示電位差を検出する検出器、および、試料に滴定用溶液を添加する滴定剤添加装置から構成された滴定部と、前記検出器で検出した指示電位差に基づいて前記滴定剤添加装置を制御し且つ滴定の終点を演算する制御部とを備え、当該制御部は、上記の電位差滴定方法に基づいて滴定の終点を演算する機能を備えていることを特徴とする電位差滴定装置に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、想定される滴定曲線において、変曲点から十分に離れ且つ指示電位差の変化の緩やかな曲線部分の3つ以上の測定点を判定点として使用し、最小二乗法で各曲線部分における一次の推定線を求め、これら推定線の中間線と滴定曲線の交点を滴定終了点とするため、変曲点近傍における指示電位差の大きな変化による影響を受けることがなく、正確に滴定の終点を得ることが出来る。しかも、予め設定したプログラムにより簡単に演算できるため、自動滴定に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る電位差滴定方法の概念を示すグラフであり、図2及び図3は、複数の反応を含む滴定分析への本発明の適用例を示すグラフである。図4は、本発明に係る電位差滴定装置の基本的構成を示すブロック図である。また、図5及び図6は、本発明の実施例としての滴定分析における表示画像を示す図である。
【0012】
本発明は、検出器の電極の種類および滴定用溶液を選択することにより、中和、酸化還元、沈殿、光度、電導度、分極、石油中和価、スタットなどの滴定に適用することが出来る。先ず、本発明の電位差滴定装置について説明する。本発明の電位差滴定装置は、図4に示す様に、機械的構成要素は従来公知の装置と同様であり、概略、滴定部(1)、制御部(2)及び表示記録部(3)から構成される。
【0013】
滴定部(1)は、試料を収容する滴定槽(4)、指示電極(51)と参照電極(52)によって指示電位差を検出する検出器(5)、および、試料に滴定用溶液を添加する滴定剤添加装置(6)から構成される。滴定槽(4)は、スターラーの上に搭載されたガラス製容器から成る。
【0014】
検出器(5)は、指示電極(51)及び参照電極(52)の少なくとも一対の電極を備えている。指示電極(51)としては、例えば、金属イオン濃度に応答する各種金属電極、膜内外の濃淡を電位に変換する膜電極やガラス電極が使用される。また、電位差の基準となる参照電極(52)としては、通常、塩橋または難溶性金属塩電極が使用される。滴定剤添加装置(6)は、指示電極(51)の検出電圧に比例してパルスモーターによって滴下量を制御可能で且つ滴定槽(4)に挿入されたビュレットチップから滴定用溶液を滴下するビュレットによって構成される。
【0015】
制御部(2)は、予めプログラムが書き込まれたマイクロコンピュータ及び滴定部(1)の制御用回路で構成される。具体的には、制御部(2)のマイクロコンピュータは、プロセッサ(CPU)、演算用のメインメモリ(RAM)、プログラム格納用のメモリ、コントローラ、信号の入出力機器(I/O)等が搭載されたロジックボードで構成され、予め書き込まれたプログラムにより、滴定の進行に応じて上記の制御回路を制御する機能を備えている。一方、制御回路は、指示電極(51)及び参照電極(52)の検出信号をモニタリングする回路(電極モニタリング回路)、滴定剤添加装置(6)の滴下速度を制御する回路などから構成される。
【0016】
制御部(2)は、操作盤(図示省略)からの指示により、マイクロコンピュータから制御回路へ制御用の信号出力し、制御回路を通じて滴定部(1)における滴定操作を制御し、また、滴定部(1)で検出された信号を制御回路を通じてマイクロコンピュータを取り込み、滴定データを解析し且つその結果および必要に応じて解析過程を表示記録部(3)に出力する様に構成されている。すなわち、制御部(2)は、検出器(5)で検出した指示電位差に基づいて滴定剤添加装置(6)を制御し且つ後述する様に滴定の終点を演算する機能を備えている。
【0017】
表示記録部(3)は、分析の進行状況や分析結果を表示するためのディスプレイ、および、必要に応じて分析結果を印刷する小型プリンターを備えている。すなわち、表示記録部(3)は、滴定の終点、および、必要に応じて指示電位差や滴定用溶液の添加量を表示または記録する様に構成されている。
【0018】
次に、上記の制御部(2)における機能として、滴定用溶液の滴定量と指示電位差とから電位差滴定を行う本発明の電位差滴定方法について説明する。
【0019】
本発明においては、滴定操作により検出器(5)から得られた指示電位差の値(Y)及び添加した滴定用溶液の体積の値(X)に対して、所定のデータ処理を行って正確な終点を得る。なお、以下の説明については、理解を容易にするためにグラフを参照するが、本発明は、演算処理により滴定の終点を決定するものであり、その処理過程においてグラフを作成する必要はない。
【0020】
本発明においては、図1に示す様に、先ず、指示電位差の値(Y)を縦軸、滴定用溶液の体積の値(X)を横軸にとって得られる連続線(屈曲腺)を滴定曲線と仮定し(図1中の上方のグラフ参照)、更に、電位差変化率(dY/dX)の絶対値を縦軸、滴定用溶液の体積の値(X)を横軸にとって得られる連続線(屈曲腺)を微分曲線と仮定する(図1中の下方のグラフ参照)。そして、微分曲線上のピーク(P1)に相当する滴定曲線上の値を仮の終点(P)と仮定する。
【0021】
滴定分析においては、単一反応の場合には1つの終点を求めるため、微分曲線上の1つのピーク(P1)を決定する。その際、微分曲線上に複数のピークが出現する場合があるため、反応物質に応じて予測される傾向または解析中に得られる傾向に基づき、電位差変化率(dY/dX)の絶対値に対して下限値(L)を設定し、当該下限値を超えて電位差変化率(dY/dX)が最大となる微分曲線上のピーク(P1)を抽出する。そして、上記のピーク(P1)に相当する滴定曲線上の値を仮の終点(P)とする。
【0022】
次に、滴定曲線を構成する測定値を利用して演算処理を行う。具体的には、上記の仮の終点(P)に隣接した滴定曲線上の2測定値を選択し、これらを結ぶ直線(D)(一次関数)を演算する。斯かる直線(D)は、実際に滴定曲線を作成した場合の変曲点を含む直線または変曲点直近の直線である。
【0023】
また、上記の直線(D)を演算すると共に、終点判定に使用する滴定曲線上の測定点を決定し、2つの一次の推定線(B1)及び(B2)(一次関数)を演算する。具体的には、滴定曲線上で使用する測定値の数を判定点数(n)として予め設定しておく。斯かる判定点数(n)は、データ数にもよるが、通常は実用上の観点から、変曲点の前後の5〜10点とされる。ただし、変曲点付近の指示電位差の大きな変化の影響を少なくするため、判定点数(n)として使用する測定値は、仮の終点(P)を基準にして横軸の正負の各方向にそれぞれ存在する3点以上とする。
【0024】
終点判定に使用する滴定曲線上の測定値(判定点)は、仮の終点(P)−判定点数(n)から、仮の終点(P)−判定点数(n)+2までの滴定曲線上の測定値(d1),(d2),(d3)(図1において仮の終点(P)の左側に二重丸で示す3つのに測定点)、ならびに、仮の終点(P)+判定点数(n)−2から、仮の終点(P)+判定点数(n)までの滴定曲線上の測定値(d4),(d5),(d6)(図1において仮の終点(P)の右側に二重丸で示す3つのに測定点)の2組とされる。図1は、判定点数(n)=5の場合を例示したものである。
【0025】
第1の推定線(B1)は、仮の終点(P)−判定点数(n)から、仮の終点(P)−判定点数(n)+2までの滴定曲線上の測定値(d1)〜(d3)に基づいて、最小二乗法により演算する。また、第2の推定線(B2)は、仮の終点(P)+判定点数(n)−2から、仮の終点(P)+判定点数(n)までの滴定曲線上の測定値(d4)〜(d6)に基づいて、最小二乗法により演算する。上記の第1の推定線(B1)及び第2の推定線(B2)は、従来のJIS法における接線に類似する直線であるが、変曲点から十分に離れたデータを使用し且つ最小二乗法によって滴定曲線の変動のない部分の傾向を推定することにより、変曲点の範囲を正確に特定できる。
【0026】
上記の様に、推定線(B1)及び(B2)を演算した後は、第1の推定線(B1)と第2の推定線(B2)の中間線(C)を演算する。中間線(C)は、推定線(B1)及び(B2)から等距離に位置する直線(一次関数)である。そして、中間線(C)と前述の直線(D)の交点(A)を演算し、斯かる交点の横軸の読みを滴定の終点(a)とする。
【0027】
本発明では、微分曲線のピーク(P1)を利用して滴定曲線上で仮の終点(P)を設定し、当該仮の終点から十分に離れた滴定曲線上の測定値、すなわち、滴定曲線の変曲点から離れ且つ指示電位差の変化が緩やかな極大および極小に向かう各曲線部分を構成する3つの測定点(d1)〜(d3)及び(d4)〜(d6)を判定点として使用し、判定点の各組毎に最小二乗法により一次の推定線(B1)及び(B2)を求め、これら推定線の中間線(C)と滴定曲線との交点、すなわち、中間線(C)と直線(D)との交点(A)を滴定の終了点として採用した。従って、本発明によれば、変曲点近傍における指示電位差の大きな変化による影響を受けることがなく、正確に滴定の終点を得ることが出来る。そして、予め設定したプログラムにより簡単に演算できるため、自動滴定に好適である。
【0028】
上記の例は、単一反応を含む滴定の例であるが、図2及び図3に示す様に、本発明は、例えば2段反応を含む滴定に対しても上記の場合と同様に適用できる。図2は、概ね5次の滴定曲線が現れる滴定分析の例を示すものであるが、斯かる分析において、1つの終点を特定する場合には、滴定剤添加装置(6)のビュレットチップからの滴定用溶液の滴定量を所定倍率で増量し、かつ、判定点数(n)を大きくすることにより、滴定曲線を3次の曲線と同様に取り扱うことが出来、1つの終点(a)を得ることが出来る。
【0029】
更に、図3は、図2と同様に5次の滴定曲線が現れる滴定分析の例を示すものであるが、斯かる分析において、2つの終点を特定する場合には、滴定曲線において変曲点が現れると予測される指示電位差の値(Y)の範囲を複数の領域、例えば2つの領域(V1)、(V2)に分割する。そして、各領域(V1)、(V2)において、前述の単一反応の場合と同様の処理を適用する。その際、各処理における判定点数(n)は、前述の単一反応の場合と同様の程度に設定する。これにより、複数の終点、例えば2つの終点(a)、(a)を得ることが出来る。
【0030】
また、前述の本発明の電位差滴定装置においては、制御部(2)の機能として、従来のJIS法(JIS K0113)に定められた滴定方法、すなわち、変曲点法、交点法、微分曲線を使用した方法に基づいて、表示記録部(3)のディスプレイに滴定曲線や微分曲線を表示し、ディスプレイ上での作図を可能にする処理機能を備え、必要に応じてJIS法に切り替えて滴定操作を行う様に構成されてもよい。その場合には、本発明の滴定方法による分析とJIS法による分析とを対比することが出来る。
【0031】
なお、本発明の電位差滴定装置においては、上記のアルゴリズムを実行するに際し、表示記録部(3)のディスプレイにより滴定量や分析結果を数値だけで表示してもよいが、滴定曲線や微分曲線をグラフ化し、各推定線(B1)、(B2)、中間線(C)、交点(A)、終点(a)を表示することにより、滴定の進行状態や分析結果をディスプレイ上で視覚的に表すことも出来る。
【0032】
因に、図5及び図6は、本発明の実施例としての滴定分析をディスプレイ上に画像で表したものである。図5の画像は、モール塩をKMnOで滴定した酸化還元反応の表示画像であり、図6の画像は、カフェインの純度分析のために、過塩素酸の酢酸溶液で無水カフェインを滴定した場合の表示画像である。図5に示す例は、滴定曲線を作成した場合に変曲点部分において指示電位差に大きな変化が表れる例である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る電位差滴定方法の概念を視覚的に示したグラフである。
【図2】複数の反応を含む滴定分析への本発明の適用例を示すグラフである。
【図3】複数の反応を含む滴定分析への本発明の他の適用例を示すグラフである。
【図4】本発明に係る電位差滴定装置の基本的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施例としての酸化還元反応における表示画像を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例としてのカフェインの純度分析における表示画像を示す図である。
【図7】交点法による従来の電位差滴定分析方法の概念を示すグラフである。
【図8】微分曲線を使用した従来の電位差滴定分析方法の概念を示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1 :滴定部
2 :制御部
3 :表示記録部
4 :滴定槽
5 :検出器
51:指示電極
52:参照電極
6 :滴定剤添加装置
A :交点
a :終点
B1:第1の推定線
B2:第2の推定線
C :中間線
D :直線
d1〜d6:測定値(判定点)
L :しきい値
P1:ピーク
P :仮の終点
V1,V2:指示電位差の値の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滴定用溶液の滴定量と指示電位差とから滴定を行う電位差滴定方法であって、滴定操作により、指示電位差の値(Y)を縦軸、滴定用溶液の体積の値(X)を横軸にとって得られる連続線を滴定曲線と仮定し、電位差変化率(dY/dX)の絶対値を縦軸、滴定用溶液の体積の値(X)を横軸にとって得られる連続線を微分曲線と仮定し、微分曲線上のピーク(P1)に相当する滴定曲線上の値を仮の終点(P)と仮定し、仮の終点(P)に隣接した滴定曲線上の2測定値を結ぶ直線(D)を演算すると共に、予め設定され且つ終点判定に使用する滴定曲線上の測定値の数(ただし、仮の終点(P)を基準にして横軸の正負の各方向にそれぞれ存在する3点以上とする。)を判定点数(n)として、仮の終点(P)−判定点数(n)から、仮の終点(P)−判定点数(n)+2までの滴定曲線上の測定値(d1),(d2),(d3)に基づいて、最小二乗法により一次の第1の推定線(B1)を演算し、仮の終点(P)+判定点数(n)−2から、仮の終点(P)+判定点数(n)までの滴定曲線上の測定値(d4),(d5),(d6)に基づいて、最小二乗法により一次の第2の推定線(B2)を演算し、次いで、第1の推定線(B1)と第2の推定線(B2)の中間線(C)を演算し、そして、中間線(C)と直線(D)の交点(A)を演算し、当該交点の横軸の読みを滴定の終点(a)とすることを特徴とする電位差滴定方法。
【請求項2】
電位差変化率(dY/dX)が最大となる微分曲線上のピーク(P1)に相当する滴定曲線上の値を仮の終点(P)と仮定する請求項1に記載の電位差滴定方法。
【請求項3】
指示電位差の値(Y)の範囲を複数の領域(V1),(V2)・・・に分割し、各領域(V1),(V2)・・・において、請求項1又は2に記載の方法を適用し、複数の終点(a),(a)・・・を得る電位差滴定方法。
【請求項4】
試料を収容する滴定槽、指示電極と参照電極によって指示電位差を検出する検出器、および、試料に滴定用溶液を添加する滴定剤添加装置から構成された滴定部と、前記検出器で検出した指示電位差に基づいて前記滴定剤添加装置を制御し且つ滴定の終点を演算する制御部とを備え、当該制御部は、請求項1〜3の何れかに記載の電位差滴定方法に基づいて滴定の終点を演算する機能を備えていることを特徴とする電位差滴定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−101724(P2010−101724A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272855(P2008−272855)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(591061208)株式会社三菱化学アナリテック (17)