説明

電力消費量予測装置

【課題】電気自動車の走行に伴う電力消費量を高精度で予測することができる電力消費量予測装置を提供する。
【解決手段】電気自動車1の走行用のモータ46にて消費される電力のみでなく、電気自動車1に搭載されたその他の電気機器(ヘッドランプ41〜オーディオ装置45等)にて消費される電力を考慮して、現地点から目的地点までの電気自動車1の予想電力消費量を算出する。外部のサーバ装置9との間で無線通信を行って、例えば天気、温度及び降水量等の環境情報を取得し、環境情報に対して予想される各電気機器の使用状況に基づき記憶部22に電力消費量情報25とした予め記憶した各種のテーブルを用い、取得した環境情報に基づいてテーブルを参照して各電気機器の予想電力消費量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に搭載されたバッテリの電力消費量を予想する電力消費量予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンを搭載せずに、バッテリに蓄積された電力にてモータを駆動することによって走行する電気自動車が普及し始めている。エンジンを搭載していない電気自動車では、バッテリに蓄積された電力を全て消費してしまうと走行不能となるため、電気自動車のユーザはバッテリに蓄積された電力の残量に注意して走行を行う必要がある。またバッテリの充電は、ガソリンの給油と比較して長時間が必要となるため、電気自動車において長距離の走行を行う際には、バッテリの充電時間を考慮して走行計画を立てると共に、バッテリを充電することができる充電ステーションなどの施設の位置なども考慮しておく必要がある。
【0003】
特許文献1においては、走行計画情報として車輌の走行しようとする目的地が入力されるように設定されると共に、目的地までの車輌の予定走行距離及び残容量検出手段で検出されたバッテリの残容量に基づいて、このバッテリの残容量で車輌が目的地まで到達し得るか否かを判定する電気自動車用ナビゲーションシステムが提案されている。
【0004】
特許文献2においては、充電ステーションに関する情報を含んだ道路地図データに基づいて、車載バッテリの補充電を考慮した目的地までの誘導経路を探索することにより、目的地が遠方にあっても電気自動車の航続力を考慮した誘導経路を探索でき、乗員自ら補充電を行いながら目的地へ到達できるかどうかを調査する必要がなく、遠方の目的地へ向かう場合に安心感を与えることができる電気自動車の経路探索装置が提案されている。
【0005】
また特許文献3においては、電気自動車に搭載したバッテリ管理システムの機能が、残電容量から走行可能データを常時演算し、同時にナビゲーションシステム及び通信システムの連動演算により、最新地図情報からバッテリースタンドを自動探索し、運転者にバッテリースタンドを適宜に選択させ、この選択に応じてナビゲーションシステムが再演算を行って誘導案内を行う車輌走行支援システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−240435号公報
【特許文献2】特開平10−170293号公報
【特許文献3】特開2010−25910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に記載の技術は、いずれも電気自動車のバッテリ残量から走行可能距離を算出し、目的地へ到達可能であるかを電気自動車の燃費(電費)に基づいて判断している。しかしながら、近年の車輌には、エアーコンディショナー及びオーディオ装置等の電気機器が多数搭載されている。これらの電気機器が走行用のモータと同じバッテリからの電力供給で動作するものであれば、電気自動車の電費のみから算出される電力消費量に基づいて目的地へ到達可能であると判断した場合であっても、車輌に搭載された電気機器による電力消費量の影響で、目的地まで到達することができなくなる虞がある。即ち、特許文献1〜3に記載の技術のように、電気自動車の電費にのみ基づいて電力消費量を推定する構成では、その推定精度に問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、電気自動車の走行に伴う電力消費量を高精度で予測することができる電力消費量予測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電力消費量予測装置は、電気自動車に搭載されたバッテリの予想電力消費量を算出する電力消費量予測装置において、所在地点から目的地点までの経路を探索する経路探索手段と、該経路探索手段が探索した経路に基づいて、所在地点から目的地点までの前記電気自動車の走行距離を算出する走行距離算出手段と、該走行距離算出手段が算出した走行距離及び前記電気自動車の走行に係る所定距離当たりの電力消費量に基づいて、前記電気自動車の走行に係る予想電力消費量を算出する走行電力消費量算出手段と、所在地点から目的地点までの前記電気自動車外の環境情報を、前記電気自動車の外部から取得する環境情報取得手段と、前記電気自動車に搭載された一又は複数の電気機器について、前記環境情報に応じた電力消費量を取得する電力消費量取得手段と、前記環境情報取得手段が取得した環境情報及び前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に基づいて、所在地点から目的地点までの前記電気機器の予想電力消費量を算出する電気機器電力消費量算出手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電力消費量予測装置は、前記走行距離算出手段が算出した走行距離に基づいて、所在地点から目的地点までの前記電気自動車の予想走行時間を算出する走行時間算出手段を更に備え、前記電気機器電力消費量算出手段は、前記走行時間算出手段が算出した予想走行時間に基づいて、目的地点到着予想時点までの時間を所定時間毎に区分した各時間幅について、前記環境情報に基づく各電気機器の予想電力消費量を算出し、全時間幅の予想電力消費量の合計量を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電力消費量予測装置は、前記バッテリに蓄積された電力量を検知する検知手段と、該検知手段が検知した電力量が、前記走行電力消費量算出手段が算出した予想電力消費量、及び、前記電気機器電力消費量算出手段が算出した前記一又は複数の電気機器の予想電力消費量の合計量より少ない場合に、報知を行う報知手段とを更に備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電力消費量予測装置は、前記電気機器には、空気調和機を含み、前記環境情報取得手段は、目的地までの経路上の予想気温に係る情報を取得し、前記電力消費量取得手段は、前記電気自動車外の気温、前記空気調和機の設定温度及び設定風量に対応付けられた前記空気調和機の電力消費量を取得し、前記電気機器電力消費量算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した予想気温、前記空気調和機の設定温度及び設定風量、並びに、前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に応じて、前記空気調和機の電力消費量を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る電力消費量予測装置は、前記電気機器には、前記電気自動車のヘッドランプを含み、前記環境情報取得手段は、日付及び時刻に係る情報を取得し、前記電力消費量取得手段は、前記日付及び時刻に対応付けられた前記ヘッドランプの電力消費量を取得し、前記電気機器電力消費量算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した日付及び時刻、並びに、前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に応じて、前記ヘッドランプの電力消費量を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る電力消費量予測装置は、前記電気機器には、前記電気自動車のワイパーを含み、前記環境情報取得手段は、目的地までの経路上の予想降水量に係る情報を取得し、前記電力消費量取得手段は、降水量に対応付けられた前記ワイパーの電力消費量を取得し、前記電気機器電力消費量算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した予想降水量、及び、前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に応じて、前記ワイパーの電力消費量を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る電力消費量予測装置は、前記電気機器には、前記電気自動車のリアデフォッガを含み、前記電気自動車の搭乗者数を検知する検知手段を更に備え、前記環境情報取得手段は、目的地までの経路上の予想気温及び予想降水量に係る情報を取得し、前記電力消費量取得手段は、前記電気自動車の搭乗者数、気温及び降水量に対応付けられた前記リアデフォッガの電力消費量を取得し、前記電気機器電力消費量算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した予想気温及び予想降水量、前記検知手段が検知した搭乗者数、並びに、前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に応じて、前記リアデフォッガの電力消費量を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る電力消費量予測装置は、前記電気機器には、前記電気自動車の車内に搭載されたオーディオ装置を含み、前記電力消費量取得手段は、前記オーディオ装置の最大電力消費量を取得し、前記電気機器電力消費量算出手段は、前記電力消費量取得手段が取得した最大電力消費量に応じて、前記オーディオ装置の電力消費量を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、所在地点(現在位置)から目的地点までの経路を探索して電気自動車の走行距離を算出し、電気自動車の所定距離当たりの電力消費量(電費)に基づく予想電力消費量を算出する。この予想電力消費量は、電気自動車の走行に係るモータでの電力消費量であり、上述の特許文献1〜3に記載の発明と同様に、カーナビゲーションシステムを利用した既存の技術で行うことができる。
更に本発明においては、電気自動車外の環境情報(例えば、天気、温度、季節、時刻など)を、例えば無線通信などによって車外の装置から取得する。取得した環境情報に基づいて、電気自動車に搭載された電気機器(例えば、ヘッドランプ、ワイパー、リアデフォッガ、エアーコンディショナー、オーディオ装置など)の使用状況(使用するか否か、どの程度の強度で使用するかなど)を予測することができる。よって、環境情報に応じた電力消費量を予め測定(又はシミュレーションなどで算出してもよい)し、環境情報に対応付けられた各電気機器の電力消費量を予め記憶しておく(この情報は、電力消費量予測装置が記憶してもよく、車外の装置が記憶して電力消費量予測装置が無線通信などにより取得してもよい)。電力消費量予測装置は、環境情報及びこれに対応付けられた電力消費量を取得することによって、環境情報に応じた各電気機器の予想電力消費量を算出することができる。
このようにして算出した車輌の走行に係る予想電力消費量と、電気機器の予想電力消費量との合計を、この電気自動車が所在地点から目的地点までの走行中にバッテリから消費すると予想される電力とする。これにより、精度の高い予想電力消費量を算出することができ、バッテリの残容量から目的地まで到達可能であるか否かを高精度に判断することが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、算出した走行距離に基づいて、所在地点から目的地点までの予想走行時間を算出することによって、現時点から目的地点到着予測時点を算出することができる。そこで、現時点から目的地点到着予測時点までを例えば10分毎又は30分毎等の時間幅に区分し、各時間幅について電気機器の使用状況を予測する。これにより、時刻による天候、気温、日照量などの変化を考慮して電気機器の使用状況を予測することができ、より精度のよい予想電力消費量を算出することができる。
【0019】
また、本発明においては、電気自動車のバッテリに蓄積された電力量を検知し、バッテリの電力量が予想電力消費量の合計量より少ない場合には報知を行う。これにより電気自動車のユーザは、目的地までに少なくとも一度の充電を行う必要があることを認識できる。
【0020】
また、本発明においては、環境情報として目的地までの経路上の予想気温に係る情報を取得する。車輌のエアーコンディショナー(空気調和機)による電力消費量は、車輌外の気温、エアーコンディショナーの設定温度及び設定風量に応じて変化する。そこで、気温、設定温度及び設定風量に応じたエアーコンディショナーの電力消費量を予め測定し、記憶しておく。なお、エアーコンディショナーの設定温度及び設定風量は、ユーザが設定するものであり、予測することが難しいため、現時点での設定が維持されるものと予測する(又は、最大設定としてもよい)。これにより、予想気温、設定温度及び設定風量に応じてエアーコンディショナーの電力消費量を精度よく予測することができる。
【0021】
また、本発明においては、環境情報として現時点の日付及び時刻に係る情報を取得する。この情報によって、電気自動車が走行する時間帯が昼間又は夜間のいずれであるかを判断することができ、ヘッドランプを点灯するか否か及びヘッドランプの点灯強度などを予測することができる。そこで、日付及び時刻に応じたヘッドランプの電力消費量を予め記憶しておき、電気自動車が走行する時間帯に応じて電力消費量を算出する。これにより、ヘッドランプによる電力消費量を精度よく予測することができる。
【0022】
また、本発明においては、環境情報として目的地までの経路上の予想降水量に係る情報を取得する。この情報によって、電気自動車が走行する際にワイパーを動作させるか否か、及び、ワイパーの動作強度を予測することができる。そこで、降水量に応じたワイパーの電力消費量を予め記憶しておき、予想降水量に応じてワイパーの電力消費量を算出する。これにより、ワイパーによる電力消費量を精度よく予測することができる。
【0023】
また、本発明においては、環境情報として目的地までの経路上の予想気温及び予想降水量に係る情報を取得すると共に、電気自動車の搭乗者数を検知する手段を備える。車輌のリアデフォッガはリアウインドウに結露が生じた際に使用するものであるが、結露が生じる条件は、車内の湿度が高いこと及び車内の温度とウインドウの温度との差が大きいことである。車内の湿度は、搭乗者数と車外の天候とに依存すると考えられるため、車輌外の気温、降水量及び搭乗者数に応じてリアデフォッガを動作させるか否かを予測することができる。そこで、気温、降水量及び搭乗者数に応じたリアデフォッガの電力消費量を予め記憶しておき、取得した気温及び降水量と、検出した搭乗者数とに応じてリアデフォッガの電力消費量を算出する。これにより、リアデフォッガによる電力消費量を精度よく予測することができる。
【0024】
また、車輌に搭載されるオーディオ装置は、車外の環境とは関係なく、動作させるか否かはユーザの好みに依存する。そこで本発明においては、オーディオ装置は例えば音量最大時などの最大電力消費量で動作させると予測すると共に、オーディオ装置の最大電力消費量を予め記憶しておき、所在地点から目的地点までオーディオ装置を動作させた場合の電力消費量を算出する。最大電力消費量で動作させるとして電力消費量を算出することで、バッテリ上がりを防止する目的には十分に有効な電力消費量を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による場合は、電気自動車の電力消費量を、電気自動車の電費のみでなく、電気自動車に搭載された電気機器による電力消費量を考慮して予測する構成とすることにより、所在地点から目的地点までにバッテリから消費される電力量を精度よく予測することができる。よって、電気自動車のユーザに、バッテリの充電を促す、バッテリの残容量にて到達可能な充電ステーションまでの経路を示すなどを行うことができ、走行途中にバッテリ上がりが発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る電力消費量予測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電気自動車に搭載された電気器の予想電力消費量の算出方法を説明するための模式図である。
【図3】エアコンの予想電力消費量を算出するためのテーブルの一例である。
【図4】昼夜区分を判定するためのテーブルの一例である。
【図5】ヘッドランプの予想電力消費量を算出するためのテーブルの一例である。
【図6】ワイパーの予想電力消費量を算出するためのテーブルの一例である。
【図7】リアデフォッガの予想電力消費量を算出するためのテーブルの一例である。
【図8】予想電力算出処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る電力消費量予測装置の構成を示すブロック図である。図において1は電気自動車であり、バッテリ4に蓄積された電力によってモータ46を駆動し、走行する。なお、図1においては、バッテリ4からの電力供給経路を太実線で示してある。
【0028】
電気自動車1には、バッテリ4に蓄積された電力により動作するヘッドランプ41、ワイパー42、リアデフォッガ43、エアーコンディショナー(エアコン)44、オーディオ装置45及び走行用のモータ46等が搭載されている。また電気自動車1には、ECU(Electronic Control Unit)2及びカーナビゲーション装置3等が搭載されており、ECU2は本発明の電力消費量予測装置に相当するものである。なおECU2及びカーナビゲーション装置3もバッテリ4からの電力供給により動作するものであるが、図1においてバッテリ4からECU2及びカーナビゲーション装置3への電力供給経路は図示を省略してある。
【0029】
バッテリ4の近傍には、バッテリ4に蓄積された電力量(残容量)を検知する残容量検知部5が設けられている。残容量検知部5は、例えばバッテリ4の端子電圧を測定することによって残容量を検知する構成であってよく、また例えばバッテリ4から出入する電流量を検知し、電流量の積分値に基づいてバッテリ4の残容量を検知する構成であってよく、その他の構成であってよい。残容量検知部5は、検知したバッテリ4の残容量をECU2へ通知する。
【0030】
また電気自動車1には、車内に搭乗している乗員の人数を検知する搭乗者数検知部6が設けられている。搭乗者数検知部6は、例えば電気自動車1内の運転席、助手席及び後部座席の各シートに着座センサを設け、各着座センサの検知結果に基づいて搭乗者数を判断する構成とすることができる。搭乗者数検知部6は、検知した電気自動車1の搭乗者数をECU2へ通知する。
【0031】
カーナビゲーション装置3は、GPS(Global Positioning System)及びジャイロセンサ等を利用した現地点(現在の電気自動車1の所在地点)の特定、ユーザが入力した目的地点までの経路探索、並びに、地図表示及び案内音声出力等による現地点から目的地点までの誘導案内等を行う装置であり、センターパネルなどの車内の運転席近傍に配される。カーナビゲーション装置3は、種々の演算処理を行う処理部31、ユーザの操作を受け付ける操作部32、地図データなどを記憶する記憶部33、及び、地図画像の表示などを行う表示部34等を備えている。またカーナビゲーション装置3は、CAN(Controller Area Network)などの車内ネットワークを介してECU2とデータの送受信を行うことができる。
【0032】
カーナビゲーション装置3の処理部31は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置であり、図示しないROM(Read Only Memory)などに予め記憶されたプログラムを実行することによって、種々の処理を行うことができる。処理部31は、GPSの人工衛星から受信した信号、ジャイロセンサ(図示は省略する)の検知結果、電気自動車1の車速等の情報に基づいて、現在位置を特定する処理を行う。また処理部31は、ユーザが操作部32にて入力した目的地点までの経路探索を、記憶部33に記憶された地図データを基に行い、現地点から目的地点まで電気自動車が走行する走行距離及び走行時間を算出する処理を行う。また処理部31は、探索した経路の一部又は全部を地図画像として表示部34に表示すると共に、案内音声を出力することによって、ユーザに対する経路案内を行う。またGPSの信号から現在時刻を取得することが可能であり、処理部31は、現在時刻、走行経路、走行距離及び走行時間等の情報を、車内ネットワークを介してECU2へ通知する。
【0033】
カーナビゲーション装置3の操作部32は、ユーザの操作を受け付けるための複数のスイッチを有し、各スイッチに対する操作の有無を処理部31へ通知する。なお操作部32は、表示部34の表示面に設けたタッチパネルであってもよい。記憶部33は、フラッシュメモリ又はハードディスク等で構成されるものであり、経路探索及び画像表示のために必要な地図データなどの種々のデータが記憶されている。表示部34は、例えば液晶パネルなどであり、処理部31からの指示に従って、地図画像又はメニュー画像等の表示を行う。
【0034】
ECU2は、例えば電気自動車1のドア、ウインドウ及び/又はロック等を制御するボディECUである。ECU2は、種々の演算処理を行う処理部21、この演算処理に用いられる種々のデータを記憶した記憶部22、CANなどの車内ネットワークを介して電気自動車1内の他の装置との間でデータの送受信を行う車内通信部23、及び、公衆の無線通信網を介して車外のサーバ装置9との間で通信を行う無線通信部24等を備えている。
【0035】
ECU2の処理部21は、CPU又はMPU等の演算処理装置であり、記憶部22などに予め記憶されたプログラム(図示は省略する)を実行することによって、種々の処理を行うことができる。処理部21は、ボディECUの機能として、ドアのロック/アンロックの制御、ウインドウの開閉制御、及び、ランプの点灯制御等を行う。また処理部21は、本発明の電力消費量予測装置の機能として、カーナビゲーション装置3、搭乗者数検知部6及びサーバ装置9から与えられた情報と、記憶部22に記憶された電力消費量情報25の情報とに基づいて、現地点から目的地点まで電気自動車1が走行する間にバッテリ4から消費される電力量を予測する処理を行う。処理部21は、予測した電力消費量が、残容量検知部5が検知したバッテリ4の残容量よりも多い場合、カーナビゲーション装置3へ指示を与えることにより、表示部34に警告メッセージの表示などを行うことができる。
【0036】
ECU2の車内通信部23は、電気自動車1内に敷設された通信線が接続され、この通信線により構成された車内ネットワークを介して、電気自動車1内の他の機器との間でデータの送受信を行う。車内通信部23は、例えばCAN又はLIN(Local Interconnect Network)等のプロトコルに従ってデータの送受信を行う。車内通信部23は、カーナビゲーション装置3から与えられた現在時刻、走行経路、走行距離及び走行時間等の情報、残容量検知部5から与えられたバッテリ4の残容量、並びに、搭乗者数検知部6から与えられた搭乗者数に関する情報を受信し、処理部21へ与える。また車内通信部23は、処理部21から与えられたデータ、例えばカーナビゲーション装置3に対する警告メッセージの表示指示などを、車内ネットワークを介して送信する。
【0037】
ECU2の無線通信部24は、携帯電話網又は公衆無線LAN等の無線通信網を介して電気自動車1外のサーバ装置9との間でデータの送受信を行うものであり、無線信号の送受信のためのアンテナ(図示は省略する)が接続されている。無線通信部24は、処理部21から与えられたデータを変調して無線信号として送信すると共に、アンテナにて受信した信号を復調することで得られたデータを処理部21へ与える。例えば無線通信部24は、気象庁又は天気予報会社等のサーバ装置9との通信を行い、天気予報(天気、降水確率、降水量、気温などの予報)情報を受信して処理部21へ与える。また例えば無線通信部24は、道路交通局などのサーバ装置9との通信を行い、道路の渋滞情報及び事故情報等を受信して処理部21へ与える。また例えば無線通信部24は、カーナビゲーション装置3のメーカーのサーバ装置9との通信を行い、最新の地図情報を受信して処理部21へ与え、処理部21がこの地図情報をカーナビゲーション装置3へ与える。このように、無線通信部24が通信を行うサーバ装置9は、1つの装置に限定されるものではなく、電気自動車1外の種々の装置であってよい。
【0038】
ECU2の記憶部22は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子で構成され、処理部21が行う処理に必要な種々のデータが予め記憶されている。特に本実施の形態においては、電気自動車1のヘッドランプ41、ワイパー42…等のようにバッテリ4から電力供給される各種電気機器の電力消費量を算出するための情報が電力消費量情報25として記憶部22に記憶されている。
【0039】
ECU2の処理部21は、カーナビゲーション装置3の操作部32にて目的地点の設定がなされた場合に、且つ、その後は定期的に、現地点から目的地点までの電気自動車1の走行においてバッテリ4から消費される電力量を予測し、予測した電力消費量がバッテリ4の残容量より多い場合にはカーナビゲーション装置3の表示部34に警告メッセージを表示する処理を行う。このとき処理部21は、カーナビゲーション装置3から与えられる情報、搭乗者数検知部6から与えられる搭乗者数、及び、サーバ装置9から与えられる情報等に基づいて、ヘッドランプ41〜オーディオ装置45の電力消費量を予測する。また処理部21は、モータ46の電力消費量を、電気自動車1の電費に基づいて算出する。
【0040】
電気自動車1のバッテリ4から消費される電力は、走行用のモータ46にて消費される電力と、電気自動車1に搭載された各種の電気機器(ヘッドランプ41〜オーディオ装置45等)にて消費される電力とに大きく分けることができる。電気自動車1の走行によってモータ46にて消費される電力は、電気自動車1の走行における所定距離当たりの電力消費量、即ち電費[Wh/km]と、現地点から目的地点までの走行距離[km]とから予測することができる。
モータ46の予想電力消費量[Wh]=電費[Wh/km]×走行距離[km]
【0041】
電気自動車1の電費は、予め測定され、記憶部22の電力消費量情報25として記憶されている。処理部21は、記憶部22の電力消費量情報25から電気自動車1の電費の情報を読み出し、カーナビゲーション装置3から与えられる目的地点までの走行距離との乗算を行うことによって、モータ46の予想電力消費量を算出することができる。なお、モータ46の予想電力消費量を算出する上記の方法は、もっとも簡単な方法であり、例えば現地点から目的地点までの走行経路中の傾斜、電気自動車1の搭乗員数、電気自動車1に積載された荷物の重量などを更に考慮して算出してもよい。ただしこのような走行用のモータ46の予想電力消費量を更に精度よく算出する方法については、本明細書において詳細な説明を省略する。
【0042】
図2は、電気自動車1に搭載された電気器の予想電力消費量の算出方法を説明するための模式図である。カーナビゲーション装置3の操作部32にて目的地点が設定された場合、カーナビゲーション装置3の処理部31は、現地点から目的地点までの経路探索を行う。探索した走行経路から、処理部31は、現地点から目的地点までの走行距離及び走行時間等を算出することができる。処理部31は、走行経路、走行距離及び走行時間等の情報を、ECU2へ与える。
【0043】
ECU2の処理部21は、カーナビゲーション装置3からの情報を基に、現地点から目的地点までの走行時間を所定時間幅で区切り、各時間幅での予想電力消費量の算出を行い、これらの合計を算出することで全時間幅(即ち、現地点から目的地点まで)の予想電力消費量を算出する。図2に示す例では、現地点から目的地点までの走行時間を30分毎に区切って処理を行っている。
【0044】
また処理部21は、無線通信部24にて外部のサーバ装置9から受信した情報(例えば天気予報の情報など)を基に、所定時間毎の気温、降水量及び昼夜区分等を調べる。このとき処理部21は、各時間幅にて電気自動車1が走行している場所(市町村など)の気温、降水量及び昼夜区分等を調べる。これらの情報に基づいて、各時間幅における各電気機器の使用状況(各電気機器が使用されるか否か、更にはどの程度の強度で使用されるか)を予測することが可能である。例えば図2においては、経過時間が0〜30分の時間幅では気温30℃、降水量0mm、昼夜区分は昼であり、エアコン44及びオーディオ装置45が使用されると予測できる。また例えば図2においては、経過時間が60〜90分の時間幅では気温26℃、降水量10mm、昼夜区分は夕方であり、ヘッドランプ41、ワイパー42、リアデフォッガ43、エアコン44及びオーディオ装置45が使用されると予測できる。
【0045】
なお、図2の表において電力消費量の項目に示した各電気機器名が記されたブロックは、縦方向の長さが電力消費量[W]を表しており、横方向の長さは30分の時間に対応するとみなすことができるため、各ブロックの合計面積が、現地点から目的地点までの予想電力消費量[Wh]を表している。
【0046】
(1)エアコン44の予想電力消費量
図3は、エアコン44の予想電力消費量を算出するためのテーブルの一例であり、ECU2の記憶部22に電力消費量情報25として記憶されているものである。ただし、図3に示すテーブルはエアコン44の設定温度が28℃のものであり、その他の設定温度に関するテーブルは図示を省略してある。エアコン44の電力消費量は、電気自動車1外の気温と、ユーザによってなされたエアコン44の設定温度及び設定風量とに依存すると考えられる。そこで、ECU2の記憶部22には、電気自動車1外の気温[℃]、エアコン44の設定温度[℃]及び設定風量(弱中強)に対応付けて、エアコン44の電力消費量[W]がテーブルに予め記憶されている。
【0047】
エアコン44の設定温度及び設定風量は、ユーザの操作に基づいてなされるものであり予測することは難しいため、現時点での設定温度及び設定風量が維持されるものとして予想電力消費量の算出を行う(設定が変更された場合には再計算を行えばよい)。ただし、ワーストケースを採用して、冷房であれば設定温度を最低温度(暖房であれば設定温度を最高温度)とし、設定風量を最大風量(強)として予想電力消費量の算出を行ってもよい。なおエアコン44は、外部の気温に関係なく、常に動作させているものとして予想電力消費量の算出を行うが、例えば現時点においてエアコン44が動作していない場合には、エアコン44を動作させないものとし、予想電力消費量を0Whとしてもよい。
【0048】
ECU2の処理部21は、無線通信部24にてサーバ装置9から受信した情報から、走行経路上の予想気温を取得し、取得した気温、設定温度及び設定風量に応じてエアコン44の電力消費量テーブルを参照し、エアコン44の電力消費量を得る。例えば図3において、外部気温30℃、設定温度28℃、設定風量”中”の場合、エアコン44の電力消費量は110Wである。処理部21は、図2に示した30分(=0.5時間)の時間幅にてエアコン44が電力消費量110Wで動作すると判断し、この時間幅におけるエアコン44の予想電力消費量=110W×0.5h=55Whを算出することができる。処理部21は、同様にして各時間幅での予想電力消費量を算出し、これらの合計を算出し、現地点から目的地点までのエアコン44の予想電力消費量を得る。
【0049】
(2)ヘッドランプ41の予想電力消費量
図4は、昼夜区分を判定するためのテーブルの一例である。また図5は、ヘッドランプ41の予想電力消費量を算出するためのテーブルの一例である。これらのテーブルは、ECU2の記憶部22に電力消費量情報25として記憶されているものである。ヘッドランプ41の電力消費量は、ヘッドランプ41を点灯させるか否か、及び、ヘッドランプ41の点灯強度(強弱)に依存すると考えられ、これらは電気自動車1の外部の昼夜区分(昼、夕方、夜、早朝)に依存すると考えられる。そこで、ECU2の記憶部22には、月及び時間帯に対応付けて昼夜区分がテーブルとして予め記憶され(図4参照)、昼夜区分に対応付けてヘッドランプ41の電力消費量[W]がテーブルとして予め記憶されている(図5参照)。
【0050】
ECU2の処理部21は、現在の日付及び時刻を、例えばカーナビゲーション装置3から取得してもよく、外部のサーバ装置9から取得してもよく、時計機能などが備えられている場合には自らで判断してもよい。処理部21は、現在の日付及び時刻に基づいて記憶部22に記憶された昼夜区分テーブルを参照し、昼夜区分を得る。また処理部21は、得られた昼夜区分に基づいてヘッドランプ44の電力消費量テーブルを参照し、ヘッドランプ41の電力消費量を得る。例えば図4において、現在が4月20日の20時35分であれば昼夜区分は”夜”であり、ヘッドランプ41は”強”で点灯され、電力消費量は61Wである。処理部21は、図2に示した30分(=0.5時間)の区間にてヘッドランプ41が電力消費量61Wで動作すると判断し、この区間のヘッドランプ41の予想電力消費量=61W×0.5h=30.5Whを算出することができる。処理部21は、同様にして各区間の予想電力消費量を算出し、これらの合計を算出し、現地点から目的地点までのヘッドランプ41の予想電力消費量を得る。
【0051】
なお、昼夜区分を図4に示したテーブルにて判断するのではなく、例えば外部のサーバ装置9から日の出時刻及び日の入り時刻の情報を取得し、日の出時刻の例えば前後1時間を早朝とし、日の入り時刻の例えば前後1時間を夕方とし、早朝〜夕方を昼とし、夕方〜早朝を夜としてヘッドランプ41の予想電力消費量を算出してもよい。また、現在の日付及び時刻の情報が得られない場合、日の出時刻及び日の入り時刻の情報が得られない場合などには、1年で最も遅い日の出時刻と、1年で最も早い日の入り時刻を用いて昼夜区分を判定することができる。また昼夜区分テーブルは、図4に示すように1カ月毎ではなく、例えば春夏秋冬のように3カ月毎とするなど、その他の構成であってよい。
【0052】
(3)ワイパー42の予想電力消費量
図6は、ワイパー42の予想電力消費量を算出するためのテーブルの一例であり、ECU2の記憶部22に電力消費量情報25として記憶されているものである。ワイパー42の電力消費量は、電気自動車1外の天気(雨が降っているか否か)と、雨が降っている場合にはその降水量とに依存すると考えられる。そこで、ECU2の記憶部22には、降水量[mm/h]に対応付けてワイパー42の電力消費量[W]がテーブルとして予め記憶されている。降水量が0mm/hであれば、ワイパー42は動作させないと予想されるため、ワイパー42の電力消費量は0Wである。降水量が1〜2mm/h程度の極少量であれば、ワイパー42を間欠動作させると予想され、間欠動作でのワイパー42の電力消費量は10Wである。降水量が3〜5mm/hの少量〜中量であれば、ワイパー42は弱動作させると予想され、弱動作でのワイパー42の電力消費量は30Wである。また降水量が6mm/h以上の多量であれば、ワイパー42は強動作させると予想され、強動作でのワイパー42の電力消費量は60Wである。なお本例では、ワイパー42が間欠動作、弱動作、強動作の3段階での動作を行う構成としたが、これに限るものではない。
【0053】
ECU2の処理部21は、外部のサーバ装置9から天気予報の情報などとして走行経路における降水量の情報を取得し、取得した降水量に基づいて記憶部22に記憶されたワイパー42の電力消費量テーブルを参照し、ワイパー42の電力消費量を得る。例えば図6において、降水量が3mm/hであれば、ワイパー42の電力消費量は30Wである。処理部21は、図2に示した30分(=0.5時間)の区間にてワイパー42が電力消費量30Wで動作すると判断し、この区間のワイパー42の予想電力消費量=30W×0.5h=15Whを算出することができる。処理部21は、同様にして各区間の予想電力消費量を算出し、これらの合計を算出し、現地点から目的地点までのワイパー42の予想電力消費量を得る。
【0054】
なお、外部のサーバ装置9から降水量の情報を得ることができず、例えば天気予報として雨が降るか否かの情報のみが得られる場合、又は、降水確率が得られる場合には、処理部21は、雨が降る可能性が高い(例えば降水確率50%以上などの)区間にてワイパー42を強動作させ、それ以外の区間ではワイパー42を動作させないとして、予想電力消費量を算出してもよい。
【0055】
(4)リアデフォッガ43の予想電力消費量
図7は、リアデフォッガ43の予想電力消費量を算出するためのテーブルの一例であり、ECU2の記憶部22に電力消費量情報25として記憶されているものである。リアデフォッガ43は、電気自動車1のリアウインドウに結露が生じた場合に使用されるものである。結露が生じる条件は、車内の湿度が高いこと、及び、車内の温度とウインドウの温度との差が大きいことの2つである。また車内の湿度は、電気自動車1の搭乗者数と、車外の天候(降水量)とに依存すると考えられる。そこで、ECU2の記憶部22には、電気自動車1の外部の気温[℃]、降水量[mm/h]、搭乗者数[人]に対応付けて、リアデフォッガ43の電力消費量[W]がテーブルとして予め記憶されている。なお、図7に示したテーブルにおいて、”−”が記載されている箇所は無条件(いわゆるdon't care)である。
【0056】
ECU2の処理部21は、外部のサーバ装置9から気温及び降水量の情報を取得すると共に、搭乗者数検知部6から電気自動車1内の搭乗者数の情報を取得し、取得した気温、降水量及び搭乗者数に基づいて記憶部22に記憶されたリアデフォッガ43の電力消費テーブルを参照し、リアデフォッガ43の電力消費量を得る。例えば図7において、気温が15℃、降水量が1mm/h、搭乗者数が4人であれば、リアウインドウに結露が生じてリアデフォッガ43を動作させると予測され、リアデフォッガ43の電力消費量は148Wである。処理部21は、図2に示した30分(=0.5時間)の区間にてリアデフォッガ43が電力消費量148Wで動作すると判断し、この区間のリアデフォッガ43の予想電力消費量=148W×0.5h=74Whを算出することができる。処理部21は、同様にして各区間の予想電力消費量を算出し、これらの合計を算出し、現地点から目的地点までのリアデフォッガ43の予想電力消費量を得る。
【0057】
なお、電気自動車1に搭乗者数検知部6を備えていない場合(電気自動車1の各座席に着座センサが搭載されていない場合)など、ECU2の処理部21が電気自動車1の搭乗者数を取得することができない構成であれば、処理部21は搭乗者数を電気自動車1の最大搭乗者数としてリアデフォッガ43の予想電力消費量を算出してもよい。
【0058】
(5)オーディオ装置45の予想電力消費量
オーディオ装置45が動作するか否かは、電気自動車1の内外の環境には依存せず、電気自動車1に乗車したユーザの好みに依存するため、オーディオ装置45の動作を予測することは難しい。そこで、ECU2の記憶部22には、オーディオ装置45が例えば最大音量で音声を出力する際の電力消費量(即ち、最大電力消費量[W])を電力消費量情報25として記憶しておき、処理部21は、現地点から目的地点までオーディオ装置45が最大電力消費量での動作を継続するとして、オーディオ装置45の予想電力消費量を算出する。例えばオーディオ装置45の最大電力消費量が50Wであり、現地点から目的地点まで2時間の走行を行う場合、処理部21はオーディオ装置45の予想電力消費量を50W×2h=100Whと算出することができる。
【0059】
なお、現地点から目的地点までオーディオ装置45が最大音量で動作すると仮定して予想電力消費量を算出するのではなく、例えば現時点でのオーディオ装置45の設定(オーディオ装置45が動作しているか否か、動作している場合には音量設定など)が目的地点まで維持されるとして予想電力消費量の算出を行ってもよい。
【0060】
上述のようにして、ECU2の処理部21は、電気自動車1の走行に係るモータ46での予想電力消費量と、その他の電気自動車1に搭載された電気機器(ヘッドランプ41〜オーディオ装置45)での予想電力消費量とを算出し、これらの合計量を算出する。また処理部21は、算出した予想電力消費量(の合計量)と、残容量検知部5が検知するバッテリ4の残容量とを比較し、バッテリ4の残容量が予想電力消費量より少ない場合、カーナビゲーション装置3へ命令を与えることによって表示部34に警告メッセージを表示する。またこのときに、カーナビゲーション装置3にて、バッテリ4の残容量で到達可能な充電ステーションなどを案内する処理を行ってもよい。
【0061】
また処理部21は、カーナビゲーション装置3にて目的地点の設定がなされた場合に予想電力消費量の算出処理を行うと共に、その後は周期的(例えば10分毎又は30分毎等)に予想電力消費量を繰り返し行う。これにより、無線通信部24にて得られるサーバ装置9からの最新の情報に基づいて予想電力消費量の算出結果を更新することができる。
【0062】
図8は、予想電力算出処理の手順を示すフローチャートであり、カーナビゲーション装置3にて目的地点が設定された場合、及び、その後は周期的に、ECU2の処理部21にて行われる処理である。予想電力算出処理において、まずECU2の処理部21は、現地点からユーザが設定した目的地点までの経路探索をカーナビゲーション装置3に行わせる(ステップS1)。なお経路に変更がない場合には、以前に探索した経路を再利用してもよい。更に処理部21は、ステップS1にて探索した経路に基づいて、電気自動車1の走行距離の算出(ステップS2)及び走行時間の算出(ステップS3)をカーナビゲーション装置3に行わせ、これらの処理結果を取得する。
【0063】
次いで処理部21は、無線通信部24にて電気自動車1外のサーバ装置9との間で無線通信を行い、天気予報情報などの走行経路上の環境情報を取得する(ステップS4)。また処理部21は、残容量検知部5が検知するバッテリ4の残容量Wr(Wh)を取得し(ステップS5)、搭乗者数検知部6が検知する電気自動車1の搭乗者数を取得する(ステップS6)。
【0064】
次いで処理部21は、電力消費量情報25(電気自動車1の電費、図3〜図7に示した各電気機器の電力消費テーブル、及びオーディオ装置45の最大電力消費量等の情報が含まれる)を記憶部22から読み出すことによって取得する(ステップS7)。処理部21は、ステップS7にて取得した電気自動車1の電費と、ステップS2にて算出した走行距離とに基づいて、電気自動車1の走行に係るモータ46の予想電力消費量W1(Wh)を算出する(ステップS8)。
【0065】
次いで処理部21は、ステップS7にて取得したエアコン44の電力消費量テーブルと、ステップS4にて外部のサーバ装置9から取得した環境情報に含まれる気温と、エアコン44の設定温度及び設定風量とに基づいて、エアコン44の予想電力消費量W2(Wh)を算出する(ステップS9)。また処理部21は、現在の日付及び時刻の情報並びにステップS7にて取得した昼夜区分テーブルに基づいて得られる現地点から目的地点までの昼夜区分と、ステップS7にて取得したヘッドランプ41の電力消費量テーブルとに基づいて、ヘッドランプ41の予想電力消費量W3(Wh)を算出する(ステップS10)。
【0066】
また処理部21は、ステップS7にて取得したワイパー42の電力消費量テーブルと、ステップS4にて外部のサーバ装置9から取得した環境情報に含まれる降水量とに基づいて、ワイパー42の予想電力消費量W4(Wh)を算出する(ステップS11)。また処理部21は、ステップS7にて取得したリアデフォッガ43の電力消費量テーブルと、ステップS4にて外部のサーバ装置9から取得した環境情報に含まれる気温及び降水量と、ステップS6にて取得した電気自動車1の搭乗者数とに基づいて、リアデフォッガ43の予想電力消費量W5(Wh)を算出する(ステップS12)。また処理部21は、ステップS7にて取得したオーディオ装置45の最大電力消費量と、ステップS2にてカーナビゲーション装置3が算出した走行時間とに基づいて、オーディオ装置45の予想電力消費量W6(Wh)を算出する(ステップS13)。
【0067】
処理部21は、ステップS8〜S13にてそれぞれ算出した予想電力消費量W1〜W6の合計を算出することにより、現地点から目的地点までの電気自動車1全体での予想電力消費量W0(Wh)を算出する(ステップS14)。その後、処理部21は、ステップS5にて取得したバッテリ4の残容量Wrに補正係数Aを乗じた値と、ステップS14にて算出した予想電力消費量W0とを比較し、予想電力消費量W0が補正係数Aを乗じた残容量Wrより大きいか否かを判定する(ステップS15)。なお補正係数Aは、バッテリ上がり防止のために、バッテリ4の残容量を少なく見積もるためのものであり、例えばA=0.9などの値を用いることができる。補正係数Aは予め定められ、記憶部22に記憶されている。(ただし、補正係数Aは必ずしも用いなくてもよい。即ち補正係数A=1.0であってもよい。)
【0068】
予想電力消費量W0が補正係数Aを乗じたバッテリ4の残容量Wrより大きい場合(S15:YES)、処理部21は、カーナビゲーション装置3へ指示を与えることによって、表示部34に警告メッセージを表示し(ステップS16)、処理を終了する。また、予想電力消費量W0が補正係数Aを乗じたバッテリ4の残容量Wr以下の場合(S15:NO)、処理部21は、警告メッセージの表示などを行うことなく、処理を終了する。
【0069】
以上の構成の電力消費量予測装置においては、電気自動車1の走行用のモータ46にて消費される電力のみでなく、電気自動車1に搭載されたその他の電気機器(ヘッドランプ41〜オーディオ装置45等)にて消費される電力を考慮して、現地点から目的地点までの電気自動車1の予想電力消費量を算出する構成とすることにより、電気自動車1の電力消費量を精度よく算出することができる。また、外部のサーバ装置9との間で無線通信を行って、例えば天気、温度及び降水量等の環境情報を取得し、環境情報に対して予想される各電気機器の使用状況に基づき記憶部22に電力消費量情報25とした予め記憶した各種のテーブルを用い、取得した環境情報に基づいてテーブルを参照して各電気機器の予想電力消費量を算出する構成とすることにより、各電気機器の電力消費量を精度よく算出することができる。よって、本発明に係る電力消費量予測装置は、電気自動車1の電力消費量を高精度に予測することができ、バッテリ4の残容量によって現地点から目的地点まで到達可能であるか否かを高精度に判断することができる。
【0070】
また、現時刻から目的地点到着予測時刻までを例えば図2に示すように30分毎に区分し、各区間について環境情報などに基づく各電気機器の予想電力消費量の算出を行う構成とすることにより、時刻の変化による天気、温度及び降水量等の環境条件の変化を考慮して電気機器の使用状況を予測することができ、環境条件の変化を考慮した予想電力消費量の算出を行うことができる。また、算出した予想電力消費量がバッテリ4の残容量(に補正を加えた値)より大きい場合に、カーナビゲーション装置3の表示部34に警告メッセージを表示する構成とすることにより、電気自動車1のユーザにバッテリ4の残容量が少ないことを放置でき、バッテリ4の充電を促すことができる。
【0071】
なお、本実施の形態においては、電力消費量予測装置としての処理をECU2が行う構成としたが、これに限るものではなく、カーナビゲーション装置3がこれらの処理を行う構成としてもよい。即ち、本発明の電力消費量予測装置は、ECU2として実現されるものであってよく、カーナビゲーション装置3として実現されるものであってよく、ECU2及びカーナビゲーション装置3を一体化した装置として実現されるものであってよく、電気自動車1に搭載されるその他の装置として実現されるものであってよい。またECU2は、電気自動車1のボディECUとしたが、これに限るものではなく、その他のECUであってよい。
【0072】
また、各電気機器の電力消費量を算出するためのテーブルを記憶部22に電力消費量情報25として記憶しておき、処理部21がこれを読み出して取得する構成としたが、これに限るものではなく、例えば電気自動車1外のサーバ装置9に電力消費量情報25を記憶しておき、無縁通信部24による無線通信を利用して処理部21が電力消費量情報25を取得する構成としてもよく、また例えば各電気機器が自らの情報を記憶しておき、車内通信部23を介した通信によって処理部21が各電気機器から情報を取得する構成としてもよい。また、図2〜図7に示したテーブル中の各種の値及び情報等は、一例であって、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0073】
1 電気自動車
2 ECU(電力消費量予測装置)
3 カーナビゲーション装置(経路探索手段、走行距離算出手段、走行時間算出手段、報知手段)
4 バッテリ
5 残容量検知部(検知手段)
6 搭乗者数検知部(検知手段)
9 サーバ装置
21 処理部(走行電力消費量算出手段、電力消費量取得手段、電気機器電力消費量算出手段)
22 記憶部
23 車内通信部
24 無線通信部(環境情報取得手段)
25 電力消費量情報
31 処理部
32 操作部
33 記憶部
34 表示部
41 ヘッドランプ(電気機器)
42 ワイパー(電気機器)
43 リアデフォッガ(電気機器)
44 エアーコンディショナー(電気機器、空気調和機)
45 オーディオ装置(電気機器)
46 モータ(電気機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車に搭載されたバッテリの予想電力消費量を算出する電力消費量予測装置において、
所在地点から目的地点までの経路を探索する経路探索手段と、
該経路探索手段が探索した経路に基づいて、所在地点から目的地点までの前記電気自動車の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
該走行距離算出手段が算出した走行距離及び前記電気自動車の走行に係る所定距離当たりの電力消費量に基づいて、前記電気自動車の走行に係る予想電力消費量を算出する走行電力消費量算出手段と、
所在地点から目的地点までの前記電気自動車外の環境情報を、前記電気自動車の外部から取得する環境情報取得手段と、
前記電気自動車に搭載された一又は複数の電気機器について、前記環境情報に応じた電力消費量を取得する電力消費量取得手段と、
前記環境情報取得手段が取得した環境情報及び前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に基づいて、所在地点から目的地点までの前記電気機器の予想電力消費量を算出する電気機器電力消費量算出手段と
を備えること
を特徴とする電力消費量予測装置。
【請求項2】
前記走行距離算出手段が算出した走行距離に基づいて、所在地点から目的地点までの前記電気自動車の予想走行時間を算出する走行時間算出手段を更に備え、
前記電気機器電力消費量算出手段は、前記走行時間算出手段が算出した予想走行時間に基づいて、目的地点到着予想時点までの時間を所定時間毎に区分した各時間幅について、前記環境情報に基づく各電気機器の予想電力消費量を算出し、全時間幅の予想電力消費量の合計量を算出するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の電力消費量予測装置。
【請求項3】
前記バッテリに蓄積された電力量を検知する検知手段と、
該検知手段が検知した電力量が、前記走行電力消費量算出手段が算出した予想電力消費量、及び、前記電気機器電力消費量算出手段が算出した前記一又は複数の電気機器の予想電力消費量の合計量より少ない場合に、報知を行う報知手段と
を更に備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力消費量予測装置。
【請求項4】
前記電気機器には、空気調和機を含み、
前記環境情報取得手段は、目的地までの経路上の予想気温に係る情報を取得し、
前記電力消費量取得手段は、前記電気自動車外の気温、前記空気調和機の設定温度及び設定風量に対応付けられた前記空気調和機の電力消費量を取得し、
前記電気機器電力消費量算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した予想気温、前記空気調和機の設定温度及び設定風量、並びに、前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に応じて、前記空気調和機の電力消費量を算出するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の電力消費量予測装置。
【請求項5】
前記電気機器には、前記電気自動車のヘッドランプを含み、
前記環境情報取得手段は、日付及び時刻に係る情報を取得し、
前記電力消費量取得手段は、前記日付及び時刻に対応付けられた前記ヘッドランプの電力消費量を取得し、
前記電気機器電力消費量算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した日付及び時刻、並びに、前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に応じて、前記ヘッドランプの電力消費量を算出するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の電力消費量予測装置。
【請求項6】
前記電気機器には、前記電気自動車のワイパーを含み、
前記環境情報取得手段は、目的地までの経路上の予想降水量に係る情報を取得し、
前記電力消費量取得手段は、降水量に対応付けられた前記ワイパーの電力消費量を取得し、
前記電気機器電力消費量算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した予想降水量、及び、前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に応じて、前記ワイパーの電力消費量を算出するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の電力消費量予測装置。
【請求項7】
前記電気機器には、前記電気自動車のリアデフォッガを含み、
前記電気自動車の搭乗者数を検知する検知手段を更に備え、
前記環境情報取得手段は、目的地までの経路上の予想気温及び予想降水量に係る情報を取得し、
前記電力消費量取得手段は、前記電気自動車の搭乗者数、気温及び降水量に対応付けられた前記リアデフォッガの電力消費量を取得し、
前記電気機器電力消費量算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した予想気温及び予想降水量、前記検知手段が検知した搭乗者数、並びに、前記電力消費量取得手段が取得した電力消費量に応じて、前記リアデフォッガの電力消費量を算出するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の電力消費量予測装置。
【請求項8】
前記電気機器には、前記電気自動車の車内に搭載されたオーディオ装置を含み、
前記電力消費量取得手段は、前記オーディオ装置の最大電力消費量を取得し、
前記電気機器電力消費量算出手段は、前記電力消費量取得手段が取得した最大電力消費量に応じて、前記オーディオ装置の電力消費量を算出するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電力消費量予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−34323(P2013−34323A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169472(P2011−169472)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】