説明

電子レンジ用蒸し器

【課題】卵液を充填したカップ容器の電子レンジ庫内への載置における使い勝手に優れ、短時間調理が可能で、電子レンジの機種を選択することなく複数個のゲル化食品を「す」を立てずに同時に蒸し上げることができる電子レンジ用蒸し器を提供する。
【解決手段】電子レンジ用蒸し器1は、底部11とこの底部11の周囲を覆う側壁12とから構成され、これにより上部に開口を有する容器本体10と、この容器本体10内の底部11から離間して配置され、水蒸気が通過可能な貫通孔21を有する食品載置台20と、容器本体10の上部の開口を覆うとともに水蒸気通過手段31を有する蓋30と、から構成される。そして、マイクロ波を吸収して発熱する発熱層41が、容器本体10の側壁12のうち食品載置台20が設けられる位置よりも上部の領域及び蓋30の少なくとも一方に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を利用して調理を行う電子レンジ用蒸し器に関し、詳しくはマイクロ波を利用して茶碗蒸しやプリンなどの加熱によりゲル化するゲル化食品の調理を行う電子レンジ用蒸し器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジは、その普及に伴い短時間で食品の加熱が行える調理機器として簡便調理に利用されている。
【0003】
このような利用のされ方については、例えば、茶碗蒸しやプリンなどのゲル化食品、シュウマイ、肉まんなどの蒸し調理においても、ガスレンジ用蒸し容器の利用による調理に代わり電子レンジ調理が行われるようになった。特に、茶碗蒸しやプリンなどのゲル化食品の電子レンジによる蒸し調理においては、1)ゲル化前のとき卵を含む原料(以降、卵液と称する)をカップ容器に充填して蓋をした後、電子レンジ庫内に収容して電子レンジ加熱調理する方法、2)卵液をカップ容器に充填して蓋をしたものを、水を充填したスノコ付き蒸し容器に入れて蓋をした後、電子レンジ庫内に収容して、電子レンジ加熱して発生した水蒸気で調理する方法の2つがある。
【0004】
しかしながら、単に上記1)又は2)の方法で電子レンジによる蒸し調理をしたのでは、カップ容器内の卵液が均一加熱されないため、食感に斑があり、局部的過加熱により食品の表面等に「す(鬆)」が立ち易く、蒸しあがった食品の見栄えも悪い。そこで、カップ容器内の卵液を均一加熱するための検討が様々なされている。
【0005】
具体的には、上記方法1)を行う際に、例えば、特許文献1には、カップ容器に蓋を、マイクロ波を集める機能を有する材質の突起物を蓋の下に配置させるツールが占めている。また、特許文献2には、耐熱硝子等製のプリンカップとその蓋からなり、蓋には同心円形帯状にアルミニウム等の金属箔を封入又は添付しているものが、それぞれ開示されている。
【0006】
また、上記方法2)を行う際には、特許文献3には、電波透過性材料で構成した有底容器と、該容器内に底部と間隔を設けて収納され、底部に蒸気通孔を有するアルミニウム製内容器と、内容器の上縁に支承され内容器を覆うステンレス製の蓋からなる電子レンジ蒸し容器が開示されている。しかし、電子レンジ加熱時に蓋がスパークすることがあるため取扱い上安全とは言えず、又卵液を充填した複数個のカップ容器全てについて、「す」を立てることなく同時に蒸し上げることができるものの、電子レンジ調理の特長である短時間調理が阻害され、調理に要する時間がかかってしまう。
【0007】
特許文献4には、上記の問題を解決するため、蒸し調理具が、側壁を有するマイクロ波透過性材料から形成されたトレーと、前記トレー内に配置される水蒸気を通過させる貫通孔を有する金属製食品載置台と、マイクロ波不透過性材料から形成された蓋とからなり、トレー外側底部にマイクロ波吸収発熱体を有し、且つトレーを介して蓋と食品載置台との隙間からマイクロ波進入可能としている構成が開示されている。この特許文献4に記載の蒸し調理具は、特許文献3で行っていたマイクロ波加熱により蒸し調理具内で発生した水蒸気による加熱と、トレーを介して蓋と食品載置台との隙間から侵入させたマイクロ波加熱とを併用して、特許文献3の電子レンジ用蒸し器より加熱調理時間の短縮を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−263136号公報
【特許文献2】特開2008−13251号公報
【特許文献3】実公昭61−32245号公報
【特許文献4】特許第4033778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のツールは、卵液をカップ容器に充填する際、蒸し上がった茶碗蒸し等のゲル化食品の見栄えをよくするために、いちいちツールが卵液に当らないように留意しなければならない。また、電子レンジ加熱する際、卵液を充填した複数個のカップ容器全てについて、「す」を立てることなく同時に蒸し上げるために、電子レンジの機種ごとに該カップ容器を電子レンジ庫内に置く場所を所望の複数箇所探し出し、その場所に置かなければならないなど使い勝手が悪いという問題がある。
【0010】
特許文献2に記載のプリンカップと蓋は、電子レンジ加熱する際、卵液を充填した複数個のカップ容器全てについて、「す」を立てることなく同時に蒸し上げるために、電子レンジの機種ごとに該カップ容器を電子レンジ庫内に置く場所を所望の複数箇所探し出し、その場所に置かなければならないなど使い勝手が悪いという問題がある。
【0011】
特許文献4に記載の蒸し調理具は、卵液を充填したカップ容器の単品を用いる場合、特許文献3の電子レンジ用蒸し器より加熱時間の短縮を図ることができるものの、卵液を充填した複数個のカップ容器を用いる場合には、マイクロ波加熱により前記トレーの底部で発生し前記貫通孔を介して前記トレーの上方に出てきた水蒸気が凝縮しやすいため、未だに調理時間が長いという問題がある。また、トレーを介して蓋と食品載置台との隙間からマイクロ波が進入するので、卵液を充填した複数個のカップ容器全てについて、「す」を立てることなく同時に蒸し上げるために、電子レンジの機種ごとに該カップ容器を蒸し器内に置く場所を所望の複数箇所探し出し、その場所に置かなければならないという問題もある。
【0012】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであって、卵液などを充填したカップ容器の電子レンジ庫内への載置における使い勝手に優れ、短時間調理が可能で、電子レンジの機種を選択することなく複数個のゲル化食品について「す」を立てずに電子レンジで同時に蒸し上げることができる電子レンジ用蒸し器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の、容器本体と、容器本体内に載置される食品載置台と、容器本体を覆う蓋とを組み合わせることにより、短時間調理が可能で、使い勝手に優れ、電子レンジの機種を選択ことなく複数個のゲル化食品について「す」を立てずに電子レンジで同時に蒸し上げることが実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]に関する。
[1]電子レンジで蒸し調理を行う電子レンジ用蒸し器であって、
底部と側壁とから構成され、上面に開口を有する容器本体、
前記容器本体内部において前記底部から離間して配置され、水蒸気が通過可能な貫通孔を有する食品載置台、及び
前記容器本体の前記開口を覆うと共に水蒸気通過手段を有する蓋
から構成され、マイクロ波を吸収して発熱する発熱層が、前記容器本体の側壁のうち前記食品載置台が設けられる位置よりも上部の領域及び前記蓋の少なくとも一方に設けられている電子レンジ用蒸し器。
[2]前記食品載置台が、マイクロ波反射性材料からなる[1]に記載の電子レンジ用蒸し器。
[3]前記容器本体及び前記蓋の少なくとも一部にマイクロ波反射層を有し、前記マイクロ波反射層は、前記発熱層よりも蒸し器の内面側に位置している、[1]又は[2]に記載の電子レンジ用蒸し器。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、卵液を充填したカップ容器の電子レンジ庫内への載置における使い勝手に優れ、短時間調理が可能で、電子レンジの機種を選択することなく複数個のゲル化食品を「す」を立てずに同時に蒸し上げることができる電子レンジ用蒸し器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る電子レンジ用蒸し器の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る電子レンジ用蒸し器の構成を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る電子レンジ用蒸し器1は、底部11とこの底部11の周囲を覆う側壁12とから構成され、これにより上部に開口を有する容器本体10と、この容器本体10内の底部11から離間して配置され、水蒸気が通過可能な貫通孔21を有する食品載置台20と、容器本体10の上部の開口を覆うとともに水蒸気通過手段31を有する蓋30と、から構成される。
【0019】
この電子レンジ用蒸し器1は、食品載置台12を載置した容器本体11の底部に所望の水を入れ、次いで食品載置台12の上に卵液などの食材を充填したカップ容器或いは食材そのものをおき、容器本体10の開口部を蓋30で覆い、電子レンジで蒸し調理を施すものである。
【0020】
次にこの電子レンジ用蒸し器1を構成する各部について説明する。
【0021】
容器本体10は、電子レンジ内で発生するマイクロ波を透過できるマイクロ波透過性材料からなることが好ましい。容器本体10におけるマイクロ波透過性材料としては、例えば、セラミックス、硝子等の無機物や、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリメチルペンテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66やナイロン6などのポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、シンジオタクチックポリスチレンなどの耐熱性樹脂等の単体、或いはその混合物が挙げられ、取り扱い易さの観点から、好ましくはポリプロピレン、ポリメチルペンテン−1、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66やナイロン6などのポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、シンジオタクチックポリスチレンなどの耐熱性樹脂等の単体、或いはその混合物である。
【0022】
容器本体10におけるマイクロ波透過性材料は、電子レンジ加熱時に保温層として働くことで、本体容器10の内側の加熱調理を促進させるとともに、本体容器10の外側が過剰に熱くならずに火傷を防止するなどの効果を有する。
【0023】
容器本体10は、容器本体10の内側側壁周囲部分に、食品載置台20を安定的に載置するための鍔を有してもよい。
【0024】
電子レンジ用蒸し器1に用いられる食品載置台20は、容器本体10内部において底部11から離間して配置され、食品載置面20aに水蒸気が通過可能な貫通孔21を有する。
【0025】
食品載置台20の食品載置面20aに設けられた貫通孔の大きさは、マイクロ波が通過しない程度であれば特に規定しないが、好ましくは直径0.5〜5mmであり、食品載置面20aに対して5〜20%の面積を有するのが好ましい。
【0026】
食品載置台20は、セラミックス、硝子等の無機物や、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリメチルペンテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66やナイロン6などのポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、シンジオタクチックポリスチレンなどの耐熱性樹脂等の単体、或いはその混合物などの電子レンジ内で発生するマイクロ波を透過できるマイクロ波透過性材料及び/又はアルミニウムやステンレスなどの金属基材を表面処理したもの、例えばアルミニウム基材の表面をアルマイト処理したもの、ホーロー、アルミニウム基材と耐熱樹脂とのインサート成形したものなどの電子レンジ内で発生するマイクロ波を反射するマイクロ波反射性材料からなることが好ましい。より好ましくは、食品載置台20は、アルミニウムやステンレスなどの金属基材を表面処理したもの、例えばアルミニウム基材の表面をアルマイト処理したもの、ホーロー、アルミニウム基材と耐熱樹脂とのインサート成形したものなどの電子レンジ内で発生するマイクロ波を反射するマイクロ波反射性材料からなる。マイクロ波反射性材料のマイクロ波反射率は95%以上であることが好ましい。
【0027】
食品載置台20がマイクロ波反射性材料からなる場合、容器本体10内において、食品載置台20より下方の本体容器10の底部11から側壁12にわたる部分を介して容器本体10内にマイクロ波が容器本体10の外部から進入した後、食品載置台20より下方の容器本体10のスペースに充填した水に直接当たりマイクロ波加熱する以外に、直接該水に当たることなくまず食品載置台20の下方の面に当たって反射され、次に食品載置台20と容器本体10の該水に当たることにより水蒸気発生を効率よく行うと同時に、食品載置台20の下方から上方にマイクロ波が侵入してくるのを防止することで、食品載置台20の貫通孔を通して食品載置台20の上方に出てきた水蒸気で食品載置台の上方の食品を均一加熱する効果を有する。
【0028】
本発明の電子レンジ用蒸し器に用いられる蓋30は、容器本体10の上部の開口を覆い、水蒸気通過手段31を有する。
【0029】
蓋30の水蒸気通過手段31とは、蒸気を蒸し器外に逃がすことのできる蒸気孔、或いは例えば公開実用新案平2−87786号公報のような蒸気弁をいう。水蒸気通過手段は、安全上蒸し器内の水蒸気圧が必要以上に上がらないようにする効果を有する。また、蓋30には、手で掴み易くするために、蓋30の頭頂部に樹脂製等の取手32を設けることが望ましい。
【0030】
蓋30は、電子レンジ内で発生するマイクロ波を透過できるマイクロ波透過性材料からなる。容器本体30におけるマイクロ波透過性材料としては、例えば、セラミックス、硝子等の無機物や、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリメチルペンテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66やナイロン6などのポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、シンジオタクチックポリスチレンなどの耐熱性樹脂等の単体、或いはその混合物が挙げられ、取り扱い易さの観点から、好ましくはポリプロピレン、ポリメチルペンテン−1、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66やナイロン6などのポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、シンジオタクチックポリスチレンなどの耐熱性樹脂等の単体、或いはその混合物である。
【0031】
蓋30におけるマイクロ波透過性材料層は、電子レンジ加熱時に保温層として働くことで、容器本体10の内側の加熱調理を促進させるとともに、蓋30の外側が過剰に熱くならずに火傷を防止するなどの効果を有する。容器本体10と蓋30に用いられるマイクロ波透過材料は、同じであっても異なるものであってもよい。
【0032】
また、本発明の電子レンジ用蒸し器は、マイクロ波を吸収する発熱層41が、食品載置台20よりも上部の容器本体10の側壁12及び蓋30に設置されている。
【0033】
食品載置台20の高さが容器本体10の上部の開口部先端より低い場合には、容器本体10の上部の開口部先端から食品載置台20の高さに至る容器本体10の側壁及び蓋30の内面に発熱層41が設けられる。この場合、容器本体10の上部の開口部先端から食品載置台20の高さに至る容器本体10の側壁12の内面と蓋30の内面の双方に設置されることが好ましい。
【0034】
また、食品載置台20の高さが容器本体10の上部の開口部先端より高い場合には、蓋30の内面に発熱層41が設けられる。この場合、食品載置台20は蓋30の隙間が無いか、或いはその隙間があったとしてもマイクロ波が食品載置台20と蓋との間を通過しないような構造であれば望ましい。
【0035】
さらに、発熱層41は、マイクロ波透過性材料からなる層の内側にあるとより好ましい。
【0036】
発熱層41で発生した熱は、容器本体10又は蓋30の内部に伝えられる。これにより、容器本体10の底部で発生し食品載置台20の貫通孔を通って食品載置面20aに出てきた水蒸気の温度低下を防止し、電子レンジ加熱調理の促進効果を高め、結果的に調理時間を短縮する効果を有する。この発熱層41が、容器本体10の側壁12に設けられている場合、食品載置台20の高さより上部の側壁12を覆うように設けられていることが好ましく、これにより、電子レンジ加熱調理時において食品載置面20a上の加熱対象物をより均一に加熱することができる。
【0037】
容器本体10又は蓋30の発熱層41として用いられてマイクロ波を吸収して発熱する材料としては、ポリエチレンテレフタレート等の耐熱性樹脂フィルムにアルミニウムなどの金属やその酸化物蒸着させたサセプターや、フェライト、酸化チタンなどの金属酸化物、カーボンブラック、炭化珪素等の粒子とバインダー等とで構成される塗料、インク、又は樹脂組成物などの混合物が挙げられ、好ましくはフェライト、酸化チタンなどの金属酸化物、カーボンブラック、炭化珪素等の粒子とバインダー等とで構成される塗料、インク、又は樹脂組成物などの混合物であり、更により好ましくは80℃〜150℃のキュリー点領域を有するフェライト粒子とバインダー等とで構成される樹脂組成物である。
【0038】
さらに、本発明の電子レンジ蒸し器は、容器本体10及び/又は蓋30の少なくとも一部にマイクロ波反射層42を有し、且つ、マイクロ波反射層42は、発熱層41よりも内面にあることが好ましい。
【0039】
容器本体10又は蓋30のマイクロ波反射層42として用いられるマイクロ波反射性材料としては、ステンレスやアルミニウムなどの金属の板や箔などが挙げられ、取扱い易さの観点でより好ましくは金属箔である。容器本体10又は蓋30に用いられるマイクロ波反射性材料層は、容器本体10又は蓋30の食品載置台20よりも上部の食品にマイクロ波が当らないようにすることで、食品載置台20の上方のゲル化食品を均一加熱する効果を有する。マイクロ波反射性材料のマイクロ波反射率は95%以上であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の電子レンジ用蒸し器の効果が発揮される範囲であれば、容器本体10において厚み方向外側から内側に向かってマイクロ波透過性材料層の内側にマイクロ波を吸収して発熱する発熱層41、マイクロ波反射性材料層42の順で積層される領域が、容器本体10の開口部先端から食品載置台20より下方の高さまであってもよい。
【0041】
本発明の電子レンジ用蒸し器に用いられ、マイクロ波透過性材料からなり側壁12を有する容器本体10において、容器本体10の開口部先端から食品載置台20の高さまでに達する容器本体10の側壁12において、容器本体10の厚み方向外側から内側に向かってマイクロ波透過性材料層の内側に発熱層41及びマイクロ波反射性材料層42をこの順で介在させる方法としては、特に限定しないが、例えば、まずマイクロ波透過性材料で射出成形、シート成形、プレス成形などの公知の方法で容器本体10のベースを形成させ、次にマイクロ波を吸収して発熱する発熱体材料の粒子とバインダー等とを混ぜて型に入れて硬化させ、所望の幅と長さの発熱体のシートを成形した後、接着剤を介して該シートにこれと同一の幅と長さのマイクロ波反射性材を張り合わせて固定し、更にこの張り合わせシートの発熱体のシート側の面を、接着剤等を介して容器本体10の開口部先端から食品載置台20の食品載置面20aの高さまでに達する容器本体10の内側の側壁12に張りつける方法等が挙げられる。
【0042】
また、内部に発熱層41を有する蓋30の製造方法についても上記と同様の方法で作ることができる。
【0043】
なお本実施形態に係る電子レンジ用蒸し器1は、食品の蒸し調理以外に、冷凍うどん等の冷凍食品の解凍や加熱、及び容器入り調理済み食品の加熱などにも用いることができる。
【実施例1】
【0044】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
実施例及び比較例で用いたもの、及び測定方法は下記のとおりである。
(イ):株式会社東芝製電子レンジ「ER−VS1」(マイクロ波放射面がレンジ庫内の側壁のもの)
(ロ):キュリー点約90℃のフェライト粉末(戸田工業株式会社製「FRX−221」)をシリコーン樹脂A(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「M4648A」)に添加し、攪拌して十分に分散させた状態で、シリコーン樹脂B(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「M4648B」)を添加し、更に良く攪拌した後、型枠内で成形させた厚み2mmのシート(合計仕込み量中のフェライト粉砕粉の仕込み割合50wt%)。
(ハ):キュリー点約160℃のフェライト粉末(FDK株式会社製「NB44」)をシリコーン樹脂A(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「M4648A」に添加し、攪拌して十分に分散させた状態で、シリコーン樹脂B(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「M4648B」)を添加し、更に良く攪拌した後、厚み2mmの型枠内で成形させた厚み2mmのシート(合計仕込み量中のフェライト粉砕粉の仕込み割合50wt%)。
【0046】
<蒸し器(1)>
マイクロ波透過性材料としてシンジオタクチックポリスチレンを用いて、容器(直径18cmφ、高さ10cm、厚み4mm)を射出成形した。次に、マイクロ波吸収発熱体として幅75mm、成形容器の内部円周と同一長さの(ロ)を、成形容器の開口部先端から7cm高さまでに達する成形容器の側壁部全体を覆うように、接着剤(セメダイン株式会社製「スーパーX No.8008」)を介して張り合わせ、容器本体(A1)を用意した。
【0047】
次に、直径2mmの複数の貫通孔を有する食品載置面(食品載置面の面積に対する貫通孔の開口面積割合8%)を有し、更に容器本体(A1)内に安定に配置させるための脚部を有する、シンジオタクチックポリスチレン製の食品載置台(B1)を用意した。なお、食品載置台(B1)を容器本体(A1)内に載置した時の食品載置台(B1)の高さ(底部11の容器内側の面からの距離)は3cmであった。
【0048】
そして、容器本体(A1)の上部の開口部と密接嵌合して覆うことができ、蓋を貫通するように直径2mmの水蒸気用抜け穴2つを有するシンジオタクチックポリスチレンを基材としたドーム型の蓋(C1)を用意した。
【0049】
上記の容器本体(A1)、食品載置台(B1),及び蓋(C1)を組み合わせて蒸し容器(1)とした。なお、蒸し容器(1)の高さを12cmとした。
【0050】
<蒸し容器(2)>
マイクロ波吸収発熱体として<蒸し器(1)>に記載の射出成形容器(直径18cmφ、高さ10cm、厚み4mm)の内部円周と同一長さの(ハ)を用いる以外は、<蒸し器(1)>と同じ操作を繰り返し、容器本体(A2)を用意した。
【0051】
容器本体(A2)、食品載置台(B1),及び蓋(C1)を組み合わせて蒸し容器20とした。なお、蒸し容器(2)の高さを12cmとした。
【0052】
<蒸し容器(3)>
マイクロ波透過性材料としてシンジオタクチックポリスチレンを用いて、容器(直径18cmφ、高さ3cm、厚み2mm)を射出成形し、容器本体(A3)を用意した。
【0053】
次に、容器本体(A3)の上部の開口部と密接嵌合して覆うことができ、蓋を貫通するように直径2mmの水蒸気用抜け穴2つと側壁を有する高さが10cm、厚み2mmの蓋(C2)を用意した。なお、蓋(C2)は、外側から厚み方向にシリコーン樹脂コーティングマイクロ波透過性材料層、マイクロ波吸収発熱体層(ハ)を順に積層したものである。
【0054】
容器本体(A3)、食品載置台(B1),及び蓋(C2)を組み合わせて蒸し容器(3)とした。なお、蒸し容器(3)の高さを12cmとした。
【0055】
<蒸し容器(4)>
容器本体(A1)の上部の開口部と密接嵌合して覆うことができ、蓋を貫通するように直径2mmの水蒸気用抜け穴2つを有するドーム型の蓋(C3)を用意した。尚、蓋(C3)は、外側から厚み方向にシリコーン樹脂コーティングマイクロ波透過性材料層、マイクロ波吸収発熱体層(ハ)を順に積層している。
【0056】
容器本体(A1)、食品載置台(B1),及び蓋(C3)を組み合わせて蒸し容器(4)とした。なお、蒸し容器(4)の高さを12cmとした。
【0057】
<蒸し容器(5)>
マイクロ波透過性材料としてシンジオタクチックポリスチレンを用いて、容器(直径18cmφ、高さ10cm、厚み4mm)を射出成形した。次に、マイクロ波吸収発熱体として幅75mm、成形容器の内部円周と同一長さの(ハ)と、これと同一幅、同一長さで、厚み約10μmのマイクロ波反射性材料としてのアルミニウム箔を接着剤(セメダイン株式会社製「スーパーX No.8008」)を介して張り合わせた。そして、この張り合わせたマイクロ波吸収発熱体側を、成形容器の開口部先端から7cm高さまでに達する成形容器の側壁部全体を覆うように、接着剤(セメダイン株式会社製「スーパーX No.8008」)を介して貼り合わせ、容器本体(A4)を用意した。
【0058】
次に、直径2mmの複数の貫通孔を有する食品載置面(食品載置面の面積に対する貫通孔の開口面積割合8%)を有し、更に容器本体(A4)内に安定に配置させるための脚部を有する、アルミニウム製基材にシリコーン樹脂でコーティングした食品載置台(B2)を用意した。尚、食品載置台(B2)を容器本体(A4)内に載置した時の食品載置台(B2)の高さは3cmであった。
【0059】
そして、容器本体(A4)の上部の開口部と密接嵌合して覆うことができ、直径2mmの水蒸気用抜け穴(貫通穴)2つを有し、マイクロ波反射性材料としてSUS304を基材としたドーム型の蓋(C4)を用意した。なお、基材の両面にはマイクロ波透過性材料としてシリコーン樹脂がコーティングされていた。
【0060】
容器本体(A4)、食品載置台(B2),及び蓋(C4)を組み合わせて蒸し容器(5)とした。なお、蒸し容器(5)の高さを12cmとした。
【0061】
<蒸し容器(6)>
マイクロ波透過性のセラミックスにて一体成形した容器(直径18cmφ、高さ3cm)の外側底部に、マイクロ波吸収発熱体として直径130mmの(ハ)を同心円状に接着剤(セメダイン株式会社製「スーパーX No.8008」で貼り付け、容器本体(E)を用意した。
【0062】
次に、食品載置面と食品載置台の下方から上方にマイクロ波が侵入しないような大きさの複数の貫通孔を有し、更に容器本体(E)内に安定に配置させるための脚部を有する、アルミニウム製基材にシリコーン樹脂でコーティングした食品載置台(F)を用意した。なお、食品載置台(F)は、蓋(G)と食品載置台(F)との間の隙間、及び蓋(G)とマイクロ波吸収発熱体との間の容器本体(E)を介してマイクロ波が容器本体(E)の外側から内部に進入するように容器本体(E)内に載置した。
【0063】
そして、容器本体(E)の上部の開口部と密接嵌合して覆うことができ、直径2mmの水蒸気用抜け穴(貫通穴)2つと側壁を有するとともに、マイクロ波反射性材料としてSUS304を基材とし、高さが10cm、厚み2mmである蓋(G)を用意した。なお、SUS304基材の両面にはシリコーン樹脂がコーティングされている。
【0064】
容器本体(E)、食品載置台(F),及び蓋(G)を組み合わせて蒸し容器(6)とした。なお、蒸し容器(6)の高さを12cmとした。
【0065】
<カップ容器Y、蓋Z>
内径65mmφ、高さ60mm、厚み2mmのポリプロピレン製のカップ容器Yと、このカップ容器の上方の開口部を覆うことのできるプロピレン製蓋(厚み2mm)Zとをそれぞれ3個ずつ用意した。
【0066】
[評価方法]
<蒸し上がり状態>
電子レンジで加熱(600W×7分)したカップ容器Y3個のそれぞれについて、卵液の状態を下記の通りに目視評価し、その結果を以下の4種類に分類した。
◎:「す」がなく、綺麗に蒸しあがっている
○:一応火が通っており、ゆるく固まっているが、許容範囲内
×1:「す」が入っている
×2:流動性があり、全体的に固まっていない状態
【0067】
[実施例1]
茶碗蒸しに使う卵液は、下記のように調製した。まず、背わたを除き皮をむいて軽く下茹でした海老1尾、3mm幅に切ったかまぼこ1切れ、及び千切りにした椎茸約6gをそれぞれ用意した3個のカップ容器Y入れる。次に、だし汁に薄口醤油とみりんを足して調味したもの(5/4カップ)に、Mサイズ卵2個を溶いて加え、これを茶こしでこしながらカップ容器Yに3等分量流し入れる(卵液の充填)。そして、蒸し器(1)を用いて、容器本体(A1)内に、水200cc、食品載置台(B1)、蓋Zを被せたカップ容器Y3個の順にセットし、容器本体(A1)に蓋(C1)を被せる。更に、これを電子レンジ(イ)の庫内の回転皿に載せ、600Wで加熱した。
【0068】
[実施例2]
蒸し器(2)を用いる以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
【0069】
[実施例3]
蒸し器(3)を用いる以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
【0070】
[実施例4]
蒸し器(4)を用いる以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
【0071】
[実施例5]
蒸し器(5)を用いる以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
【0072】
[比較例]
蒸し器(6)を用いる以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
【0073】
上記で得られた実施例1〜5及び比較例の蒸し容器各3個について、<蒸しあがり状態>の評価方法に従って評価を行った。結果を表1に表示した。
【0074】
表1に示すように、本発明に係る電子レンジ用蒸し器は、卵液を充填したカップ容器の電子レンジ庫内への載置における使い勝手に優れ、短時間調理が可能で、電子レンジの機種を選択することなく複数個のゲル化食品を「す」を立てずに同時に蒸し上げることができることが分かった。
【0075】
また、実施例1〜5の結果から、食品の蒸しあがり状態をより高度にするためには、更に食品載置台20をマイクロ波反射性材料とし、容器本体10及び蓋30の少なくとも一部にマイクロ波反射層を有し、且つ、マイクロ波反射層を発熱層よりも内面にすること(実施例5)がより好ましいことが分かった。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の電子レンジ用蒸し器は、卵液を充填したカップ容器の電子レンジ庫内への載置における使い勝手に優れ、短時間調理が可能で、電子レンジの機種を選択することなく複数個のゲル化食品を「す」を立てずに同時に蒸し上げることができる電子レンジ用蒸し器を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…電子レンジ用蒸し器、10…容器本体、11…底部、12…側壁、20…食品載置台、21…貫通孔、30…蓋、31…水蒸気通過手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジで蒸し調理を行う電子レンジ用蒸し器であって、
底部と側壁とから構成され、上面に開口を有する容器本体、
前記容器本体内部において前記底部から離間して配置され、水蒸気が通過可能な貫通孔を有する食品載置台、及び
前記容器本体の前記開口を覆うと共に水蒸気通過手段を有する蓋
から構成され、マイクロ波を吸収して発熱する発熱層が、前記容器本体の側壁のうち前記食品載置台が設けられる位置よりも上部の領域及び前記蓋の少なくとも一方に設けられている電子レンジ用蒸し器。
【請求項2】
前記食品載置台が、マイクロ波反射性材料からなる請求項1に記載の電子レンジ用蒸し器。
【請求項3】
前記容器本体及び前記蓋の少なくとも一部にマイクロ波反射層を有し、
前記マイクロ波反射層は、前記発熱層よりも蒸し器の内面側に位置している、請求項1又は2に記載の電子レンジ用蒸し器。


【図1】
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【公開番号】特開2012−75586(P2012−75586A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222439(P2010−222439)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】