説明

電子写真機器用現像ロール

【課題】従来に比べ、ロールへのフィルミング、ブレードへの固着、トナーストレスを抑制可能な電子写真機器用現像ロールを提供すること。
【解決手段】表面に凹凸部20を有する下層16と、下層16の表面を被覆する表層18とを有し、下層16の凸部22が、表層18の表面に実質的に露出されており、下層16の凸部22の硬さが、表層18の硬さよりも硬い電子写真機器用現像ロール10とする。下層16の凸部22のマルテンス硬さは、6以上12以下の範囲内、表層18のマルテンス硬さは、0.5以上6未満の範囲内にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用現像ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されている。これら電子写真機器の内部には、通常、感光ドラムが組み込まれている。そして、この感光ドラムの周囲には、現像ロール、帯電ロール、トナー供給ロール、転写ロールなどが配設されている。
【0003】
上記電子写真機器における現像方式としては、例えば、接触現像方式が知られている。接触現像方式では、トナー層形成用ブレード(以下、単に「ブレード」と略称することがある。)を現像ロール表面に押しつけることにより、現像ロール表面にトナー層が形成される。そして、このロール表面を、感光ドラム表面に接触させることにより、感光ドラム表面の潜像にトナーを付着させる。
【0004】
このように用いられる現像ロールには、良好なトナー搬送性が要求される。そのため、現像ロールは、通常、ロール表面が粗面化されていることが多い。粗面化の方法としては、ウレタン粒子などの粗さ形成用粒子をロール表層中に添加し、表層表面に凹凸部を形成する手法が一般的である。上記凹凸部のうち、凸部にはブレードが当接(摺擦)し、凹部にはトナーが保持される。
【0005】
従来知られる現像ロールとしては、例えば、特許文献1には、芯金の外周に形成した導電性シリコーンゴム層の外周に、ウレタン粒子を添加したウレタン系塗料を塗布、乾燥、熱硬化させて表層を形成した現像ロールが開示されている。
【0006】
また、近年では、低VOC化、省エネ化などの要求から、紫外線硬化樹脂などにより表層を形成することも行われるようになってきている。
【0007】
例えば、特許文献2には、芯金の外周に形成した導電性シリコーンゴム層の外周に、紫外線硬化型導電性組成物を紫外線硬化させて表層を形成した現像ロールが開示されている。
【0008】
上記組成物としては、具体的には、ポリエチレングリコールジアクリレート50重量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート50重量部、イオン導電剤3重量部、および、光開始剤1重量部を含有する組成物が用いられている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−133257号公報
【特許文献2】特開2006−274242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来知られる現像ロールは、以下の点で改良の余地があった。
【0011】
すなわち、トナー層の形成時に、現像ロール表面の凸部は、ブレードにより摺擦される。そのため、摺擦により摩擦熱が発生し、これによりトナーが溶解しやすくなる。トナーが溶解すると、現像ロール表面にトナーが付着する、いわゆるフィルミングが発生しやすくなるといった問題があった。
【0012】
近年、電子写真機器分野では、電子写真機器の高速化、高画質化などに対する需要が急速に高まってきている。そのため、トナーは、低融点化、小径化され、より熱によって溶解しやすくなってきている。したがって、これまで以上に上記フィルミングが発生しやすい状況になっている。
【0013】
上記フィルミングの発生を防ごうとして、表層自体を高硬度化し、ブレードとの摩擦を小さくすることで、摩擦熱の発生を抑制することも考えられる。
【0014】
しかしながら、表層(とりわけ凹部)がトナーに与えるストレスが大きくなるため、やはり上記フィルミングやカブリなどの不具合が発生してしまう。
【0015】
一方、上記とは反対に、表層自体を低硬度化すれば、トナーストレスの問題は回避することができる。しかしながら、ブレードとの摩擦が大きくなって、今度は摩擦熱により溶解したトナーがブレードに固着するといった問題が発生する。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、従来に比べ、ロールへのフィルミング、ブレードへの固着、トナーストレスを抑制可能な電子写真機器用現像ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明者らは、種々の実験を繰り返し、鋭意検討を重ねた。その結果、ロール表層におけるブレードとの摺擦部と、トナーの保持部とを、機能的に分離すれば、摩擦熱およびトナーストレスを抑制でき、ロールへのフィルミング、ブレードへの固着を抑制することができるとの知見を得るに至った。本発明は、主にかかる知見に基づいてなされたものである。
【0018】
すなわち、本発明に係る電子写真機器用現像ロールは、表面に凹凸部を有する下層と、上記下層の表面を被覆する表層とを有し、上記下層の凸部が、上記表層の表面に実質的に露出されており、上記下層の凸部の硬さが、上記表層の硬さよりも硬いことを要旨とする。
【0019】
ここで、上記下層の凸部のマルテンス硬さは、6以上12以下の範囲内、上記表層のマルテンス硬さは、0.5以上6未満の範囲内にあると良い。
【0020】
また、上記下層の凹凸部は、上記下層中に含まれる粗さ形成用粒子により形成されたものである、または、上記凹凸部の凹凸形状に対応する凹凸形状が表面に設けられた型の転写により形成されたものであると良い。
【0021】
上記下層が粗さ形成用粒子を含有する場合、粗さ形成用粒子は、実質的に同一面内に存在していると良い。
【0022】
また、上記下層の表面のうち、少なくとも上記凸部の表面には、さらに、微小凹凸が形成されていると良い。
【0023】
この場合、上記微小凹凸は、電子導電剤および/または充填剤により形成されたものであると良い。
【0024】
また、上記表層は、光硬化型樹脂を主成分とすると良い。
【0025】
この場合、上記表層は、(A)分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されている(メタ)アクリレートモノマーと、(B)ウレタン(メタ)アクリレートとを含有する光硬化型組成物の硬化物より好適に形成することができる。
【0026】
この際、上記(A)成分/前記(B)成分(質量比)は、50/50〜80/20の範囲内にあると良い。
【0027】
また、上記(B)ウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、1〜6個の範囲内であると良い。
【0028】
一方、上記下層は、ウレタン系樹脂、ウレタン系エラストマーおよび(メタ)アクリル系樹脂から選択される1種または2種以上を含有していると良い。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る電子写真機器用現像ロールは、表面に凹凸部を有する下層と、この下層の表面を被覆する表層とを有し、下層の凸部が、表層の表面に実質的に露出されており、下層の凸部の硬さが、表層の硬さよりも硬く設定されている。
【0030】
上記現像ロールでは、主にブレードにより摺擦される下層の凸部が、主にトナーを保持する表層(下層の凹部に存在)よりも硬さが硬い。そのため、凸部が低摩擦化され、摩擦熱の発生が抑制される。これにより、トナーが溶解し難くなり、ロールへのフィルミング、ブレードへの固着を抑制することが可能になる。また、凸部の耐摩耗性も向上させることができる。
【0031】
さらに、上記現像ロールでは、主にトナーを保持する表層が、主にブレードにより摺擦される下層の凸部よりも硬さが柔らかい。そのため、ブレードとの摺擦によるトナーストレスを抑制することが可能になる。
【0032】
したがって、上記現像ロールは、長期耐久性に優れる。また、上記現像ロールを組み込めば、電子写真機器の長期耐久性を向上させることが可能になる。
【0033】
ここで、下層の凸部のマルテンス硬さおよび表層のマルテンス硬さが、上記特定の範囲内にある場合には、上記作用効果のバランスに優れる。
【0034】
また、下層の凹凸部が、下層中に含まれる粗さ形成用粒子により形成されたものである場合には、コーティング法などを用い、粒子に起因する隆起を利用して比較的容易に凹凸を付与することができる。そのため、ロールの製造性に優れる。
【0035】
この際、粗さ形成用粒子が実質的に同一面内に存在している場合には、凸部の高さを比較的均一にすることができる。そのため、ブレードとの接触を均一化することが可能となり、偏った摩耗などを抑制しやすくなる。
【0036】
また、下層の凹凸部が、その凹凸部の凹凸形状に対応する凹凸形状が表面に設けられた型の転写により形成されたものである場合には、下層が十分に厚いときでも、凹凸部を安定して形成することができる。
【0037】
また、下層の表面のうち、少なくとも凸部の表面に、微小凹凸が形成されている場合には、凸部とブレードとの接触がより少なくなる。そのため、ブレードの摺擦による摩擦熱の発生を一層抑制しやすくなり、ロールへのフィルミング抑制効果、ブレードへの固着抑制効果に優れる。
【0038】
また、表層が光硬化型樹脂を主成分とする場合、下層表面に塗布した光硬化型組成物に対して光照射を行い、速やかに硬化させて表層を形成することができる。そのため、ロール製造性に優れる。
【0039】
この際、表層が、上記(A)成分と(B)成分とを含有する特定の光硬化型組成物の硬化物よりなる場合には、次の利点がある。
【0040】
すなわち、上記特定の光硬化型組成物は、モノマー成分を含んでいるので、下層表面に塗工した際に、下層の凹部部分に流れ込みやすい。さらに、上記特定の光硬化型組成物は、光照射による速硬化性に優れており、モノマー成分の重合による硬化収縮が比較的大きい。そのため、下層の凸部を表層表面に露出させやすい。
【0041】
また、上記(A)成分/(B)成分(質量比)が特定の範囲内にある場合には、(A)成分に起因する表層のタック性(粘着性)と、(B)成分に起因する表層の耐摩耗性とのバランスに優れる。そのため、フィルミングの抑制、長期耐久性の向上に寄与しやすくなる。
【0042】
また、上記(B)成分のウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数が1〜6個の範囲内である場合には、当該光硬化型組成物の硬化後に表層が硬くなり過ぎず、トナーストレスの低減に寄与しやすくなる。
【0043】
また、上記下層が、上記特定の樹脂を含む場合には、へたりが少ない、粗さ形成用粒子を分散させやすいなどの利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本実施形態に係る電子写真機器用現像ロール(以下、「本現像ロール」ということがある。)について説明する。
【0045】
本現像ロールは、軸体の外周に、ロール層構成として、少なくとも下層と表層とを有している。ここで、本願にいう下層とは、表層よりもロール中心側(内側)に配置されている層であって、表層と直接接している層をいう。
【0046】
本現像ロールは、具体的には、軸体の外周に、下層、表層がこの順に積層された積層構造を有していても良いし、あるいは、軸体の外周に、他の層が1層または2層以上積層されており、これら他の層のうち最も外側に配置されている他の層の外周に、下層、表層がこの順に積層された積層構造を有していても良い。以下、図面を用いてより具体的に説明する。
【0047】
図1は、本現像ロールの一例を模式的に示した周方向断面図である。図2は、本現像ロールの他の例を模式的に示した周方向断面図である。なお、図1および図2では、ロール表面の凹凸状態は省略されている。
【0048】
図1に示す現像ロール10は、軸体12の外周にベース層14が形成され、このベース層14の表面に接して表層18が形成されている。したがって、この場合、ベース層14が、本願にいう下層に該当する。
【0049】
一方、図2に示す現像ロール10は、軸体12の外周にベース層14が形成され、このベース層14の外周に中間層16が形成され、この中間層16の表面に接して表層18が形成されている。したがって、この場合、中間層16が、本願にいう下層に該当する。
【0050】
上記ベース層、中間層は、それぞれ、単層から構成されていても良いし、複数層から構成されていても良い。好ましくは、積層構造の簡略化、ロール生産性の向上などの観点から、ベース層、中間層は、単層から構成されていることが好ましい。
【0051】
本現像ロールとしては、各種のコーティング法を用いて本願の下層を形成しやすいなどの観点から、図2の構造のものを好適に採用することができる。
【0052】
ここで、本現像ロールにおいて、下層は、その表面に凹凸部を有している。そしてこの下層の表面を表層が被覆している。表層は、下層表面を完全に覆っているわけではなく、下層の凸部は、表層の表面に露出されている。以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0053】
図3は、図1に例示した現像ロールの表面近傍の一例を拡大して模式的に示した断面図である。図4は、図2に例示した現像ロールの表面近傍の一例を拡大して模式的に示した断面図である。
【0054】
図3および図4に示すように、下層(図3ではベース層14、図4では中間層16)は凹凸部20を有しており、凸部22は、基本的には、表層18の表面に露出されている。表層18は、下層の凹部24の部分に存在している。つまり、本現像ロール10は、下層の凸部22を島、下層の凹部24に存在する表層18を海とする、いわゆる、海島構造を有しているということができる。
【0055】
もっとも、本現像ロールにおいて、下層の凸部は、表層の表面に実質的に露出されておれば良い。ここにいう「実質的」とは、凸部の表面に極薄い表層がのっていても、ロール使用前に簡単に剥離して凸部を露出させることができる場合や、ロール使用時にすぐに削れて凸部が露出される場合を含む意味である。
【0056】
なお、下層の凸部が露出されているか否かは、レーザー顕微鏡または電子顕微鏡によるロール表面の観察、ロール断面構造の観察などにより判断することができる。
【0057】
図5は、図1に例示した現像ロールの表面近傍の他の例を拡大して模式的に示した断面図である。図6は、図2に例示した現像ロールの表面近傍の他の例を拡大して模式的に示した断面図である。
【0058】
図5、図6に示すように、下層の凹凸部20は、下層中に粗さ形成用粒子26を含有させることにより形成すると良い。図6の場合には、各種コーティング法などを用い、粒子に起因する隆起を利用して比較的容易に凹凸を付与することができる。そのため、ロールの製造性に優れる。
【0059】
この際、粗さ形成用粒子は、実質的に同一面内に存在している、換言すれば、ロール径方向に粒子が積み重なっていないことが好ましい。凸部の高さを比較的均一にすることができるため、ブレードとの接触を均一化することが可能となり、偏った摩耗などを抑制しやすくなるなどの利点があるからである。
【0060】
本現像ロールにおいて、凸部の露出部分の高さ(表層表面から凸部の頂部までの距離)、表層の厚みは、特に限定されるものではない。これらは、トナー搬送性などを考慮して決定することができる。
【0061】
凸部の露出部分の高さの上限は、トナーの搬送量過剰によるカブリ悪化を抑制するなどの観点から、好ましくは、15μm以下、より好ましくは、12μm以下であると良い。
【0062】
一方、凸部の露出部分の高さの下限は、トナーの搬送量不足による画像濃度低下を抑制するなどの観点から、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、8μm以上であると良い。
【0063】
また、表層の厚みの上限は、凸部を露出させやすいなどの観点から、好ましくは、8μm以下、より好ましくは、6μm以下であると良い。
【0064】
一方、表層の厚みの下限は、耐トナー付着性と耐摩耗性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、3μm以上、より好ましくは、4μm以上であると良い。
【0065】
また、本現像ロールにおいて、ロール表面の粗さは、JIS B 0601−1994に準拠して測定される十点平均粗さRzで見た場合、トナー帯電を適度にする、トナー搬送量を適度にする、カブリが生じ難くなるなどの観点から、Rzの上限が、好ましくは、15μm以下、より好ましくは、10μm以下であると良い。
【0066】
一方、上記Rzの下限は、トナー搬送量を適度にするなどの観点から、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、7μm以上であると良い。
【0067】
下層の凹凸部の形成は、下層形成材料の種類、下層の厚みなどを考慮して、適宜最適な方法を選択しうる。
【0068】
例えば、図1に示したように、表層18に対して十分に厚いベース層14が下層に該当する場合には、ロール成形用金型の中空部に軸体を同軸的に設置し、ベース層形成用組成物を注入し、加熱硬化させた後、脱型したり(注型法)、軸体の表面にベース層形成用組成物を押出成形したりする(押出法)などしてベース層を形成し、ベース層の表面に研削加工等を施して凹凸部を形成する方法、上記ベース層形成用組成物中に粗さ形成用粒子を添加し、凹凸部を形成する方法、上記型として、下層の凹凸部の形状に対応する所定の凹凸形状を有する型を用い、型表面の凹凸形状をベース層の表面に転写し、凹凸部を形成する方法などを例示することができる。これら方法では、凹凸部を十分に硬くするなどの観点から、凹凸部を形成した後、ベース層の表面にモノマー成分(アクリレート、イソシアネートなど)を含浸させて硬化させると良い。
【0069】
図1に示すように下層が十分に厚い場合には、凹凸部を安定して形成することができるなどの観点から、型による転写により下層の表面に凹凸部を形成する方法を好適に用いることができる。
【0070】
また例えば、図2に示したように、ベース層14に比較して極めて薄い中間層16が下層に該当する場合には、ベース層の外表面に、中間層形成用組成物、好ましくは、粗さ形成用粒子を添加した中間層形成用組成物を所定の厚みで塗工し、この塗工層を光や熱などで硬化させる方法などを例示することができる。
【0071】
表層を形成する方法としては、下層の外表面に、表層形成用組成物を所定の厚みで塗工し、この塗工層を光や熱などで硬化させる方法などを例示することができる。この際、表層形成用組成物として光硬化型組成物を使用すれば、光照射により速やかに硬化させて表層を形成することができるので、ロール製造性を向上させることができる。なお、凸部の露出量は、表層形成用組成物の種類、塗工層の厚み、塗工液の粘度、固形分量などを調整することにより可変させることができる。
【0072】
本現像ロールは、図7に示すように、下層の凸部22の表面に、微小凹凸28が形成されていると良い。凸部とブレードとの接触がより少なくなるので、ブレードの摺擦による摩擦熱の発生を一層抑制しやすくなり、ロールへのフィルミング抑制効果、ブレードへの固着抑制効果に優れるからである。
【0073】
なお、微小凹凸は、露出している凸部だけに形成されていても良いし、下層の表面全体にわたって形成されていても良い。
【0074】
微小凹凸の粗さは、JIS B 0601−1994に準拠して測定される十点平均粗さRzで見た場合、表層の粗さに影響を及ぼさないようにするなどの観点から、Rzの上限が、好ましくは、3μm以下、より好ましくは、2.5μm以下であると良い。
【0075】
一方、上記Rzの下限は、ブレードなどの当接部材に対し、十分に低摩擦化できるようにするなどの観点から、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、1.5μm以上であると良い。
【0076】
微小凹凸の形成は、下層形成用組成物(ベース層形成用組成物、あるいは、中間層形成用組成物など)中に、電子導電剤や充填剤などを添加することにより形成することができる。なお、電子導電剤、充填剤は、1種または2種以上併用しても良い。また、電子導電剤、充填剤は、本願にいう粗さ形成用粒子よりも十分に小さな粒径を有するものであり、下層の凹凸部を形成するためのものではない。
【0077】
本現像ロールにおいて、下層の凸部の硬さは、表層の硬さよりも硬く設定されている。したがって、本現像ロールでは、相対的に硬度の高い下層の凸部がロール表面に露出され、相対的に硬度の低い表層が下層の凹部に存在することになる。
【0078】
具体的には、下層の凸部の硬さの上限は、凸部の破壊(割れ等)を抑制しやすくなるなどの観点から、好ましくは、12以下、より好ましくは、11以下、さらにより好ましくは、10以下であると良い。下層の凸部の硬さの下限は、摩擦が大きくなることを抑制しやすくなるなどの観点から、好ましくは、6以上、より好ましくは、7以上、さらにより好ましくは8以上であると良い。
【0079】
一方、表層の硬さの上限は、トナーに対するストレスを低減しやすくなるなどの観点から、好ましくは、6未満、より好ましくは5以下、さらにより好ましくは、4以下であると良い。表層の硬さの下限は、トナー付着の防止などの観点から、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、1以上であると良い。
【0080】
なお、上記硬さは、ISO14577−1(A.2 マルテンス硬さHM)に準拠し、微小硬度計にて測定されるマルテンス硬さのことである。
【0081】
以下、本現像ロールの具体的な構成材料等について詳細に説明する。なお、上述したように、本願における下層は、例えば、ベース層であったり、中間層であったりする。そのため、下層形成材料は、ロール層構成によって変化することになる。
【0082】
本現像ロールにおいて、軸体は、導電性を有するものであれば、何れのものでも使用し得る。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。また必要に応じ、軸体の表面には、接着剤、プライマーなどを塗布してもよい。上記接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0083】
本現像ロールにおいて、ベース層を形成する主材料としては、ゴム弾性材料を好適に用いることができる。ゴム弾性材料としては、具体的には、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ヒドリンゴム(ECO、CO)、ウレタン系エラストマー、天然ゴム(NR)などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0084】
上記ゴム弾性材料としては、低硬度で、へたりが少ないなどの観点から、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、ウレタン系エラストマーなどが好ましい。
【0085】
上記ベース層を形成する主材料には、導電性付与、微小凹凸形成(ベース層が下層の場合)などのため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO 、c−ZnO、c−SnO (c−は導電性を意味する。)などの電子導電剤や、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩などのイオン導電剤など、従来公知の導電剤を1種または2種以上添加することができる。
【0086】
また、上記ベース層を形成する主材料には、微小凹凸形成(ベース層が下層の場合)などのため、カーボンブラック、シリカなどの充填剤を1種または2種以上添加することができる。
【0087】
また、上記ベース層を形成する主材料には、凹凸部形成(ベース層が下層の場合)などのため、ウレタン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、アクリル粒子、尿素樹脂粒子、アミド粒子などの樹脂粒子、ゴム粒子、シリカ粒子などの粗さ形成用粒子を1種または2種以上添加することができる。
【0088】
この際、粗さ形成用粒子の平均粒径は、凸部の高さ、層厚などに応じて適宜選択することができるものであり、特に限定されるものではない。好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、5〜30μmの範囲内から選択することができる。
【0089】
その他、上記ベース層を形成する主材料には、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、軟化剤(オイル)等を適宜添加しても良い。
【0090】
軸体の外周にベース層を形成するには、ロール成形用金型の中空部に軸体を同軸的に設置し、ベース層形成用組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型する(注型法)、軸体の表面にベース層形成用組成物を押出成形する(押出法)などすれば良い。ベース層を複数層形成する場合には、上記方法に準じた操作を繰り返し行えば良い。なお、ベース層が下層に該当する場合には、上述した方法にてベース層の表面に凹凸部を付与すれば良い。
【0091】
ベース層の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1〜10mm、より好ましくは、1〜5mmの範囲内から選択することができる。
【0092】
ベース層の体積抵抗率は、好ましくは、10〜1010Ω・cm、より好ましくは、10〜10Ω・cm、さらにより好ましくは、10〜10Ω・cmの範囲内から選択することができる。
【0093】
本現像ロールにおいて、中間層を形成する主材料としては、具体的には、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂、ウレタン系エラストマー、ニトリルゴム(NBR)、水添ニトリルゴム(水添NBR)、エピクロルヒドリンゴムなどのゴム、これら樹脂やゴムなどをシリコーン、フッ素などで変性した変性物などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0094】
上記中間層を形成する主材料としては、へたりが少ない、粒子を分散させやすいなどの観点から、ウレタン系樹脂、ウレタン系エラストマー、(メタ)アクリル系樹脂などが好ましい。
【0095】
上記中間層を形成する主材料には、導電性付与、微小凹凸形成(中間層が下層の場合)などのため、上述した各種の電子導電剤、イオン導電剤など、従来公知の導電剤を1種または2種以上添加することができる。また、微小凹凸形成(中間層が下層の場合)などのため、上述した各種の充填剤を1種または2種以上添加することができる。また、凹凸部形成(中間層が下層の場合)などのため、上述した各種の粗さ形成用粒子を1種または2種以上添加することができる。
【0096】
ベース層の外周に中間層を形成するには、中間層を主に構成するポリマーになりうるモノマー/オリゴマー、あるいは、中間層を主に構成するポリマー自体と、導電剤、充填剤、粗さ形成粒子などを、メチルエチルケトンなどの適当な溶剤とともに混合し、コーティングに適した粘度を有する中間層形成用組成物を調製する。
【0097】
そして、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を用いて、ベース層の外周に中間層形成用組成物を塗工し、乾燥、必要に応じて熱処理を施すなどすれば、中間層を形成することができる。なお、中間層を複数層形成する場合には、上記方法に準じた操作を繰り返し行えば良い。
【0098】
中間層の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは、1〜100μm、より好ましくは、3〜50μmの範囲内から選択することができる。
【0099】
中間層の体積抵抗率は、好ましくは、10〜1010Ω・cm、より好ましくは、10〜10Ω・cmの範囲内から選択することができる。
【0100】
本現像ロールにおいて、表層を形成する主材料としては、紫外線硬化型樹脂などの光硬化型樹脂を好適なものとして例示することができる。
【0101】
上記表層は、未硬化の光硬化型組成物を、紫外線、電子線などの光を照射して硬化物とすることにより形成することができる。
【0102】
ここで、上記光硬化型組成物としては、(A)(メタ)アクリレートモノマーと、(B)ウレタン(メタ)アクリレートとを含有する光硬化型組成物を好適なものとして例示することができる。
【0103】
(A)(メタ)アクリレートモノマーは、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されていると良い。このエチレンオキシド単位は、光硬化型組成物中に含まれることがあるイオン導電剤との相溶性の向上に寄与するためである。
【0104】
分子構造中に導入されているエチレンオキシド単位の含有量としては、硬化物である表層の電気抵抗を低くしやすくなるなどの観点から、好ましくは、1〜98質量%の範囲内、より好ましくは、20〜98質量%の範囲内、さらに好ましくは、40〜98質量%の範囲内にあると良い。
【0105】
なお、エチレンオキシド単位の含有量は、例えば、NMR(核磁気共鳴装置)などを用いて測定することができる。
【0106】
(A)単官能の(メタ)アクリレートモノマーは、エチレンオキシド単位以外にも、他の単位が1種または2種以上、分子構造中に導入されていても良い。
【0107】
上記他の単位としては、例えば、炭素数3〜20のアルキレンオキシド単位、トリメチロールプロパン単位、ペンタエリスリトール単位、エチルヘキシルカルビトール単位、グリセリン単位などや、ノニルフェノール単位、パラクミルフェノール単位、ビスフェノールA単位、スチレンオキシド単位、イソシアヌル酸単位、ビスフェノールF単位、フタル酸単位、フェノキシ単位などの環状不飽和構造を含む単位などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0108】
また、(A)(メタ)アクリレートモノマーは、単官能であっても良いし、多官能であっても良い。あるいは、単官能の(メタ)アクリレートモノマーと、多官能の(メタ)アクリレートモノマーとが混合されていても良い。好ましくは、ロール抵抗を低くしやすいなどの観点から、(A)(メタ)アクリレートモノマーは、単官能であると良い。
【0109】
なお、「(メタ)アクリレートモノマーが単官能である」とは、(メタ)アクリレートモノマー1分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有していることをいう。また、「(メタ)アクリレートモノマーが多官能である」とは、(メタ)アクリレートモノマー1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有していることをいう。
【0110】
(A)(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的には、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化1等)、ノニルフェノールエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化2等)、メトキシエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化3等)、エトキシエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化4等)、2エチルヘキシルエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化5等)、ブトキシエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化6等)、エチレンオキシド変性クレゾールアクリレート(表1の化7等)などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0111】
【表1】

【0112】
一方、(B)ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを合わせ持つ化合物である。(B)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、イソシアネート化合物に水酸基含有アクリレートが直接付加したタイプ、イソシアヌレートのようなポリイソシアネート化合物に水酸基含有アクリレートが直接付加したタイプ、ポリオールとイソシアネート化合物の反応物に水酸基含有アクリレートが付加したタイプなどのウレタン(メタ)アクリレートを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0113】
上記イソシアネート化合物としては、ピュアMDI、クルードMDI、IPDIなどが挙げられる。また、上記ポリオールとしては、エステル系、エーテル系ポリオールなどが挙げられる。また、上記水酸基含有アクリレートとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。
【0114】
このうち、屈曲性、強度などの観点から、ポリオールとイソシアネート化合物の反応物に水酸基含有アクリレートが付加したタイプのウレタン(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【0115】
また、(B)ウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、当該光硬化型組成物の硬化後に表層が硬くなり過ぎず、トナーストレスの低減に寄与しやすくなるなどの観点から、好ましくは、1個〜6個の範囲内、より好ましくは、2個〜6個の範囲内、さらにより好ましくは、3個〜6個の範囲内にあると良い。
【0116】
上記光硬化型組成物は、(A)成分に起因する表層のタック性(粘着性)と、(B)成分に起因する表層の耐摩耗性とのバランスに優れるなどの観点から、(A)成分/前記(B)成分(質量比)が、好ましくは、50/50〜80/20、より好ましくは、60/40〜70/30の範囲内にあると良い。
【0117】
上記光硬化型組成物は、上記(A)成分、(B)成分以外にも、必要に応じて、他の光重合成分を含有していても良い。
【0118】
なお、他の光重合成分としては、例えば、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されていない、単官能もしくは多官能の(メタ)アクリレートモノマーなどを例示することができる。
【0119】
他の光重合成分としては、具体的には、例えば、ヘキサジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシフェニルモノアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ヒドロキシエチルモノアクリレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合して用いても良い。
【0120】
また、上記光硬化型組成物は、紫外線や電子線などの光照射により光重合して硬化しうるものであり、必要に応じて、光重合開始剤を含んでいても良い。
【0121】
上記光重合開始剤は、特に限定されることなく、通常使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0122】
上記光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、2−メチルベンゾイン、ベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ジアセチル、エオシン、チオニン、ミヒラ−ケトン、アントラセン、アントラキノン、アセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−イソプロピルαヒドロキシイソブチルフェノン、α・α´ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルベンゾイルフォルメイト、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]・2・モルフォリノ−プロペン、チオキサントン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−イル)チタニウム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(η5 −2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン]−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0123】
上記光重合開始剤を用いる場合、光重合開始剤の含有量の下限値は、光硬化型組成物中に含まれる重合成分100質量部に対し、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、さらにより好ましくは、1質量部以上であると良い。
【0124】
一方、上記光重合開始剤の含有量の上限値は、光硬化型組成物中に含まれる重合成分100質量部に対し、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、10質量部以下であると良い。
【0125】
また、上記光硬化型組成物は、好ましい添加成分として、(C)イオン導電剤をさらに含んでいると良い。(C)イオン導電剤を含む場合には、表層の電気抵抗の調整を図りやすくなるからである。
【0126】
上記イオン導電剤は、特に限定されることなく、電子写真機器分野で使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0127】
上記イオン導電剤としては、具体的には、例えば、化8で表される4級アンモニウム過塩素酸塩(但し、化8中、R、R、R、Rは、炭素数1〜18のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基などを示す)、化9で表されるホウ酸塩(但し、化9中、R、R、R、Rは、炭素数1〜18のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、キシリル基などを示し、Mn+は、アルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオンであり、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどを示す)などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0128】
(化8)

【0129】
(化9)

【0130】
上記イオン導電剤の含有量の下限値は、光硬化型組成物中に含まれる重合成分100質量部に対し、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、さらにより好ましくは、1質量部以上であると良い。
【0131】
一方、上記イオン導電剤の含有量の上限値は、光硬化型組成物中に含まれる重合成分100質量部に対し、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、10質量部以下であると良い。
【0132】
上記光硬化型組成物は、他にも、必要に応じて光安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、架橋剤、架橋助剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などの各種の添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0133】
以上説明した光硬化型組成物は、下層の凸部を表層表面に露出させやすいなどの観点から、その粘度(25℃)が、好ましくは、10000mPa・s以下、より好ましくは、1000mPa・s以下に調整されていると良い。
【0134】
また、上記光硬化型組成物は、下層の凸部を表層表面に露出させやすいなどの観点から、その固形分量が、全体量に対して、好ましくは、60質量%〜10質量%の範囲内、より好ましくは、50質量%〜20質量%の範囲内、さらにより好ましくは40質量%〜30質量%の範囲内にあると良い。
【0135】
上記光硬化型組成物は、粘度、固形分量を上記範囲に調製するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIDK)、THF、DMFなどの有機溶剤、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などといった溶剤を適宜含んでいても良い。また、無溶剤であっても良い。
【0136】
上述した光硬化型組成物は、各種材料を所望の配合となるように秤量し、これらを攪拌機、サンドミルなどの混合手段により混合するなどして調製することができる。なお、混合中、混合後に脱泡処理などを行っても良い。
【0137】
このような光硬化型組成物を用いて、ベース層や中間層などの下層表面に表層を形成する方法としては、例えば、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。
【0138】
より具体的には、例えば、下層までが形成されたロール体の表面にロールコーティング法などにより、上記光硬化型性組成物を塗工し、紫外線などの光を照射して硬化させる方法、上記ロール体を、上記光硬化型性組成物が貯留された貯留槽内に浸漬し、引き上げた後に紫外線などの光を照射して硬化させる方法などを例示することができる。溶剤を含有する場合、モノマー成分を含有する場合には、光硬化後、熱処理を行っても良い。
【0139】
なお、これらコーティング法は1種または2種以上組み合わせても良い。また、上記コーティング法は、1回または2回以上繰り返し行っても良い。
【0140】
表層の体積抵抗率は、耐電圧確保およびロール抵抗の調整などの観点から、好ましくは1×10〜1×1013Ω・cm、より好ましくは、1×10〜1×1011Ω・cmの範囲内から選択することができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、以下では、軸体の外周に、ベース層、中間層、表層がこの順に積層された3層構造の電子写真機器用現像ロールを作製した。したがって、中間層が下層に該当することになる。
【0142】
1.実施例および比較例に係る現像ロールの作製
(軸体)
外径6mm、長さ250mmの鉄製で、表面にNiめっきが施されている中実円柱状の軸体を準備した。
【0143】
(ベース層形成用組成物の調製)
導電性ミラブルシリコーンゴム(東芝シリコーン(株)製、「XE23−A4902」)100質量部と、パーオキサイド系架橋剤(東芝シリコーン(株)製、「TC−8」)1.5質量部とを、ニーダーで混練することにより、ベース層形成用組成物を調製した。なお、各実施例、比較例において、ベース層形成用組成物は、共通である。
【0144】
(中間層形成用組成物の調製)
表2に示す配合割合(単位は質量部)となるように各種材料を配合し、これを分散、混合、撹拌することにより、実施例1〜5、比較例1、2で用いる各中間層形成用組成物を調製した。
【0145】
なお、各中間層形成用組成物の調製時に使用した各種材料は、以下の通りである。
・ポリウレタンエラストマー[坂井化学(株)製、「UN278」]
・アクリルシリコーン[東亞合成(株)製、「サイマックUS270」]
・アクリル樹脂[綜研化学(株)製、「サーモラックEF42」]
・カーボンブラック[電気化学工業(株)製、「デンカブラック」]
・ウレタン粒子[大日本インキ化学工業(株)製、「バーノックCFB100」、平均粒径20μm]
【0146】
(表層形成用組成物の調製)
表2に示す配合割合(単位は質量部)となるように各種材料を配合し、これを攪拌機により撹拌、混合した後、室温にて24時間放置(脱泡のため)することにより、実施例1〜5で用いる各表層形成用組成物を調製した。
【0147】
また、表2に示す配合割合(単位は質量部)となるように各種材料を配合し、これをビーズミルで1時間循環させならが分散することにより、比較例1、2で用いる各表層形成用組成物を調製した。
【0148】
なお、上記表層形成用組成物の調製時に使用した各種材料は、以下の通りである。
【0149】
・ポリエチレングリコールジアクリレート(CH=CHCOO(CO)−COCH=CH、n≒23)[新中村化学工業(株)製、「NKエステル A−1000」]
・ウレタンアクリレート(官能基数f=6)[ダイセルUCB(株)製、「Ebecryl 1290」]
・ポリウレタンエラストマー[坂井化学(株)製、「UN278」]
・アクリルシリコーン[東亞合成(株)製、「サイマックUS270」]
・光重合開始剤[チバスペシャルティケミカルズ(株)製、「イルガキュアー127」]
・イオン導電剤[トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート]
・電子導電剤[カーボンブラック、電気化学工業(株)製、「デンカブラック」]
【0150】
以上準備した、軸体、ベース層形成用組成物、各中間層形成用組成物、各表層形成用組成物を用い、以下の手順により、実施例1〜5、比較例1、2に係る現像ロールを作製した。
【0151】
(実施例1〜5、比較例1、2)
内部に軸体を同軸にセットした円筒状金型内に、上記調製したベース層形成用組成物を注入し、150℃で45分間加熱した後、冷却、脱型した。これにより、芯金の外周に、シリコーンゴム系のベース層(厚み3mm)を備えた各ロール体を作製した。
【0152】
次いで、ロールコート法を用いて、上記各ロール体の表面に上記調製した各中間層形成用組成物を所定の厚みでコーティングし、150℃で30分熱処理することにより、ベース層の外周に中間層を形成した。
【0153】
次いで、同様に、ロールコート法を用いて、上記中間層が形成された各ロール体の中間層表面に、各表層形成用組成物をそれぞれ所定の厚みでコーティングした。
【0154】
次いで、実施例1〜5については、紫外線を照射(紫外線強度100mW/cm、50秒間照射)することにより、各表層形成用組成物を紫外線硬化させ、各中間層の外周に各表層を形成した。これにより、実施例1〜5に係る現像ロールを作製した。
【0155】
一方、比較例1、2については、各表層形成用組成物を150℃で1時間熱処理することにより、各中間層の外周に各表層を形成した。これにより、比較例1、2に係る現像ロールを作製した。
【0156】
2.ロール物性の測定
得られた各現像ロールにつき、表1に示した各種ロール物性を測定した。
【0157】
なお、中間層が有する凹凸部の凸部が、表層へ露出されているか否かは、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、「VK−9510」)によりロール表面を観察することにより行った。この際、凸部が露出されていた場合には、露出凸部の高さ(表層表面から凸部の頂部までの距離)の測定も合わせて行った。
【0158】
また、露出凸部、表層のマルテンス硬さは、ISO14577−1(A.2 マルテンス硬さHM)に準拠し、微小硬度計(Fischer社製、「マイクロスコープHS100」)を用いて測定した。この際、測定条件は、圧子:対面角度136°の四角垂型ダイヤモンド圧子、初期荷重:0mN、押込み最大荷重:20mN(定荷重)、最大荷重到達時間:5sec、最大荷重保持時間:30sec、抜重時間:5secとした。
【0159】
また、各表面粗さRz(十点平均粗さ)は、JIS B 0601−1994に準拠して測定した。
【0160】
また、ロール体積抵抗は、金属ドラム上に各現像ロールを線接触させ、ロールの芯金の両端に各々500gの荷重をかけた状態で金属ドラムを回転駆動し、30rpmで各現像ロールをつれ回り回転させ、100Vdc印加した状態での軸体と金属ドラム間の電気抵抗を測定し、ロール体積抵抗として求めた。
【0161】
3.ロール評価
得られた各現像ロールにつき、表2に示した各種ロール評価行った。
【0162】
(耐摩耗性評価)
各現像ロールを、市販のカラーレーザープリンタ(キヤノン(株)製、「LBP−2510」)のカートリッジ内に組み込み、温度32.5℃、相対湿度80%RHの環境下にて、画像出しを通紙1000枚(A4サイズ)にて行い、その後、ロール表面をレーザー顕微鏡((株)キーエンス製、「VK−9510」)で拡大し、その外観を観察した。
【0163】
上記観察により、ロール表面に存在する中間層の露出凸部(各実施例)、あるいは、ウレタン粒子の頂部位置に対応する表層部分(各比較例)がほとんど削れておらず、画像の乱れがなかった場合を耐摩耗性が良好であるとして「○」、削れが発生し、画像にガサツキが発生した場合を耐摩耗性に劣るとして「×」と評価した。
【0164】
(フィルミング評価)
各現像ロールを、上記カラーレーザープリンタのカートリッジ内に組み込み、温度32.5℃、相対湿度80%RHの環境下にて、画像出しを通紙3000枚(A4サイズ)にて行い、その後、ロール表面を上記顕微鏡で拡大し、その外観を観察した。
【0165】
上記観察により、ロール表面にトナーの付着がなかった、もしくは、軽微で画像に影響がでなかった場合を耐フィルミング性に優れるとして「○」、ロール表面にトナーが付着し、画像にガサツキが発生した場合を耐フィルミング性に劣るとして「×」と評価した。
【0166】
(ブレード固着評価)
上記フィルミング評価と同様の画像出しを行った後、ブレードの現像ロールニップ部を上記顕微鏡で拡大し、その外観を観察した。
【0167】
上記観察により、当該ニップ部にトナーの固着がなかった、もしくは、軽微で画像に影響がでなかった場合を耐ブレード固着性に優れるとして「○」、当該ニップ部にトナーが固着し、縦スジ画像不良(現像スジ)が発生した場合を耐ブレード固着性に劣るとして「×」と評価した。
【0168】
(地汚れ評価)
各現像ロールを、上記カラーレーザープリンタのカートリッジ内に組み込み、白紙チャートモードで現像し、感光ドラム(OPC)上にトナーが移動したタイミングで現像を停止させた。次いで、上記感光ドラム上に飛翔したトナーをテープに転写し、白紙に貼り付け、マクベス濃度を測定した。
【0169】
そして、測定したマクベス濃度から白紙濃度を引いた値を地汚れ特性値と定め、この値が0.02以下であった場合を耐地汚れ性に優れるとして「○」、0.02を越えた場合を耐地汚れ性に劣るとして「×」と評価した。
【0170】
なお、地汚れ評価は、各現像ロールによるトナーストレスの影響を調べるための評価である。
【0171】
表2に、中間層、表層の配合割合、各ロール物性、ロール評価結果をまとめて示す。
【0172】
【表2】

【0173】
また、図8に、実施例1に係る現像ロールのロール表面のレーザー顕微鏡写真を示す。また、図9に、図8において、観察方向を変えた際のレーザー顕微鏡写真を示す。なお、特に図示はしないが、残りの実施例についても、実施例1と同様のロール表面構造を有していた。
【0174】
表2、図8、図9から以下のことが分かる。すなわち、比較例1に係る現像ロールは、下層である中間層の凸部が表層表面に露出されておらず、中間層中の粗さ形成用粒子の頂部に対応する表層が、ブレードによる摺擦されて削れが発生した。
【0175】
また、フィルミングやブレード固着が発生した。これは、ブレードとの摩擦が大きく、発生した摩擦熱により、トナーが溶解してしまったことが原因であると考えられる。
【0176】
比較例2に係る現像ロールは、比較例1に係る現像ロールと比較して、表層が硬い。そのため、耐摩耗性、耐フィルミング性、耐ブレード固着性は良好であった。しかし、耐地汚れ性に劣っていた。これは、高硬度な表層によりトナーストレスが大きかったためであると推察される。
【0177】
これらに対し、実施例に係る現像ロールは、図8、図9の写真に示されるように、下層である中間層の凸部が表層表面に露出されている。
【0178】
そして、実施例に係る現像ロールでは、主にブレードにより摺擦される露出凸部が、トナーを保持する表層よりも硬さが硬い。そのため、凸部が低摩擦化され、摩擦熱の発生が抑制され、これにより、トナーが溶解し難くなり、ロールへのフィルミング、ブレードへの固着を抑制することができた。また、凸部の耐摩耗性も向上できた。
【0179】
さらに、実施例に係る現像ロールでは、トナーを保持する表層が、ブレードにより摺擦される露出凸部よりも硬さが柔らかい。そのため、ブレードとの摺擦によるトナーストレスを抑制することができた。
【0180】
したがって、実施例に係る現像ロールを組み込めば、電子写真機器の長期耐久性を向上させることが可能であることが確認できた。
【0181】
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本実施形態に係る現像ロールの一例を模式的に示した周方向断面図である。
【図2】本実施形態に係る現像ロールの他の例を模式的に示した周方向断面図である。
【図3】図1に例示した現像ロールの表面近傍の一例を拡大して模式的に示した断面図である。
【図4】図2に例示した現像ロールの表面近傍の一例を拡大して模式的に示した断面図である。
【図5】図1に例示した現像ロールの表面近傍の他の例を拡大して模式的に示した断面図である。
【図6】図2に例示した現像ロールの表面近傍の他の例を拡大して模式的に示した断面図である。
【図7】微小凹凸が形成された凸部の一例を模式的に示した断面図である。
【図8】実施例1に係る現像ロールのロール表面のレーザー顕微鏡写真である。
【図9】図8において、観察方向を変えた際のレーザー顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0183】
10 現像ロール
12 軸体
14 ベース層
16 中間層
18 表層
20 凹凸部
22 凸部
24 凹部
26 粗さ形成用粒子
28 微小凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸部を有する下層と、前記下層の表面を被覆する表層とを有し、
前記下層の凸部が、前記表層の表面に実質的に露出されており、
前記下層の凸部の硬さが、前記表層の硬さよりも硬いことを特徴とする電子写真機器用現像ロール。
【請求項2】
前記下層の凸部のマルテンス硬さが、6以上12以下の範囲内、
前記表層のマルテンス硬さが、0.5以上6未満の範囲内、
にあることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項3】
前記下層の凹凸部は、
前記下層中に含まれる粗さ形成用粒子により形成されたものである、または、
前記凹凸部の凹凸形状に対応する凹凸形状が表面に設けられた型の転写により形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項4】
前記粗さ形成用粒子は、実質的に同一面内に存在することを特徴とする請求項3に記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項5】
前記下層の表面のうち、少なくとも前記凸部の表面に、さらに、微小凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項6】
前記微小凹凸は、電子導電剤および/または充填剤により形成されたものであることを特徴とする請求項5に記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項7】
前記表層は、光硬化型樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項8】
前記表層は、
(A)分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されている(メタ)アクリレートモノマーと、
(B)ウレタン(メタ)アクリレートと、
を含有する光硬化型組成物の硬化物よりなることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項9】
前記(A)成分/前記(B)成分(質量比)は、50/50〜80/20の範囲内にあることを特徴とする請求項8に記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項10】
前記(B)ウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、1〜6個の範囲内であることを特徴とする請求項8または9に記載の電子写真機器用現像ロール。
【請求項11】
前記下層は、ウレタン系樹脂、ウレタン系エラストマーおよび(メタ)アクリル系樹脂から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の電子写真機器用現像ロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−75497(P2009−75497A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246625(P2007−246625)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】