説明

電子棚札システム

【課題】電子棚札を配置できる通信可能範囲を容易に把握できる電子棚札システムを提供する。
【解決手段】電子棚札システム1では、配信側装置40から電子棚札5への「売価」の配信には、可視光通信が採用される。可視光が照射される範囲は人間が視認でき、また、この範囲が通信可能範囲となるため、電子棚札5を配置できる通信可能範囲を容易かつ明瞭に把握できることになる。また、可視光通信信号VSを発信する発信手段としての照明装置4は、販売スペース90を照明する照明手段と兼用される。このことから、照明手段とは別に、可視光通信信号VSを発信する専用の発信手段を設ける必要が無いため、設置コストを大幅に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品に対応して配置され、対応する商品に係る商品情報を表示する複数の電子棚札を備える電子棚札システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗では、POSシステム等に記憶される商品マスタによって、店舗内の商品の売価が一元的に管理されている。その一方で、顧客(消費者)への売価の伝達は、商品の位置に配置される紙媒体の棚札によりなされることが多い。このような紙媒体の棚札を採用した場合においては、棚札の管理は人手に頼らざるを得ないことから、売価の間違いなどの人為的ミスが生じやすい。このため、POSシステムのレジスタによる精算時の売価とは異なる誤った売価が、顧客に対して伝達されるおそれがある。
【0003】
このような問題を解決するため、近年、電子棚札システム(ESLシステム/Electronic Shelf Label System)が実用化されている。電子棚札システムにおいては、売価などの商品情報を表示する可搬性の電子棚札が、各商品に対応して配置される。そして、商品マスタに基づく売価を含む通信信号が、情報を配信する配信側装置から各電子棚札に送信され、その売価が各電子棚札に表示される。これにより、電子棚札において精算時の売価と一致する正しい売価が表示され、正しい売価が顧客に伝達されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−287798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子棚札システムにおける配信側装置と電子棚札との間の通信には、一般に、赤外光を利用した赤外線通信が採用され、配信側装置における赤外光の発信にはトランシーバと呼ばれる専用の発信手段が必要とされる。
【0006】
しかしながら、赤外光は人間が視認できるものではないため、トランシーバから発信される赤外光が到達する範囲、すなわち、電子棚札を配置できる通信可能範囲を明確に把握することは非常に困難である。
【0007】
また、トランシーバは店舗内の天井等に固定的に配置されることから、店舗内にてレイアウト変更を行ったときなどには、電子棚札を配置すべき位置が、トランシーバからの赤外光の到達範囲(すなわち、通信可能範囲)の外となることもある。この場合において、赤外光の到達範囲を拡大するには、トランシーバから発信する赤外光の強度を単純に増加させることも考えられるが、赤外光の人体(特に目)への影響を考慮すると好ましいものではない。したがって、この対応にはトランシーバの増設が必要となる。しかしながら、トランシーバの設置には天井工事及びケーブル配線工事等が必要であるため、多大なコストがかかり、また、店舗内の美観を損なう可能性もある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電子棚札を配置できる通信可能範囲を容易に把握できる電子棚札システムを提供することを第1の目的とする。
【0009】
また、本発明は、設置コストを低減できる電子棚札システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、商品に対応して配置され、対応する商品に係る商品データを表示する複数の電子棚札と、電子棚札が表示すべき商品データを当該電子棚札に対して配信する配信手段と、を有する電子棚札システムであって、前記配信手段は、前記電子棚札が表示すべき商品データに基づいて、可視光を変調して可視光通信信号を生成する変調手段と、前記可視光通信信号を発信する発信手段と、を備え、前記複数の電子棚札はそれぞれ、前記発信手段から発信された前記可視光通信信号を受信する受信手段と、前記可視光通信信号を復調して商品データを得る復調手段と、を備えている。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の電子棚札システムにおいて、前記発信手段は、前記複数の電子棚札が配置される空間を照明する照明装置と兼用される。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電子棚札システムにおいて、前記複数の電子棚札はそれぞれ、前記可視光通信信号の受信に応答して返答信号を前記配信手段に返信する返信手段、を備えている。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の電子棚札システムにおいて、前記返答信号は、前記可視光通信信号に係る可視光とは異なる波長帯の電磁波の信号である。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子棚札システムにおいて、前記発信手段は、互いに独立して前記可視光通信信号を発信し、発信した前記可視光通信信号の到達範囲が互いに異なる複数の発信光源から構成され、前記複数の発信光源は、前記到達範囲が互いに重複しないもの同士が同一のグループに区分されており、同一のグループの発信光源は、略同一時間帯に前記可視光通信信号を発信し、異なるグループの発信光源は、異なる時間帯に前記可視光通信信号を発信する。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の電子棚札システムにおいて、前記配信手段は、当該電子棚札システムが配置される空間において利用される可搬性の通信端末へ表示すべき端末用データを入力する入力手段、をさらに備え、前記変調手段は、前記端末用データに基づいて前記可視光を変調して可視光通信信号を生成し、前記発信手段は、前記端末用データに基づいて変調された前記可視光通信信号を発信可能である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし6の発明によれば、可視光を変調した可視光通信信号によって電子棚札への商品データの配信がなされるため、配信手段が通信可能な範囲が目視によって認識でき、電子棚札を配置可能な範囲を容易に把握できる。
【0017】
また、特に請求項2の発明によれば、照明装置と発信手段とが兼用されるため、商品データの配信のために専用の発信手段を設置する必要が無い。このため、発信手段の設置コストを低減でき、また、複数の電子棚札が配置される空間の美観を損なうこともない。
【0018】
また、特に請求項3の発明によれば、配信手段が可視光通信信号が電子棚札に正常に受信されたか否かを確認できる。
【0019】
また、特に請求項4の発明によれば、可視光通信信号と返答信号との混信による通信不良を防止できる。
【0020】
また、特に請求項5の発明によれば、到達範囲の重複による通信不良を防止しつつ、可視光通信信号の送信に係る時間を短縮できる。
【0021】
また、特に請求項6の発明によれば、電子棚札以外の可搬性の通信端末へ端末用データをさらに配信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。なお、以下においては、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗に適用される電子棚札システムを例として説明する。
【0023】
<1.電子棚札の概要>
図1は、本実施の形態に係る電子棚札システムが備える電子棚札が、店舗の商品棚に配置された様子を示す図である。図に示すように、商品棚60はフェース61と呼ばれる空間に区分され、各フェース61には同一種の商品6が集約されて載置される。
【0024】
商品棚60のフレーム62には、各フェース61に対応する位置にそれぞれ、電子棚札5が取り付けられている。すなわち、電子棚札5はそれぞれ一の商品6(正確には、一の商品の種類)に対応づけられ、その対応する商品6の近傍(一般的には、商品6の下側)のフレーム62に配置される。各電子棚札5はそれぞれディスプレイを備えており、ディスプレイには対応する商品6の売価が表示される。当該店舗の顧客(消費者)は、このような電子棚札5の表示により商品6の売価を認識する。
【0025】
電子棚札5は可搬性の装置であり、商品6の配置変更に対応できるように、フレーム62から取り外して別の位置に再配置することも可能とされている。本実施の形態においては、図1に示すような商品棚60が店舗内の販売スペースに複数配置されている。
【0026】
<2.構成>
<2−1.背景システム>
図2は、店舗に適用される、電子棚札システム1を含む店舗情報システムの構成例を示す図である。図に示すように、店舗情報システム100は、電子棚札システム1とともに、ストアコントローラ2及びPOSシステム3を備えている。POSシステム3が備えるPOSサーバ31、及び、電子棚札システム1が備えるESLサーバ10は、LAN21を介してストアコントローラ2に接続されている。これにより、ストアコントローラ2、POSシステム3及び電子棚札システム1の相互間でデータ通信が可能とされている。
【0027】
ストアコントローラ2は一般的なコンピュータで構成され、店舗情報システム100を統括的に管理する装置として機能する。また、ストアコントローラ2はインターネットなどの外部ネットワークに接続されており、外部ネットワークを介して、当該店舗を統括管理する本部センターに配置されたサーバ装置等のコンピュータと通信可能とされている。
【0028】
POSシステム3は、商品の販売に係る情報をその販売時点において収集して分析するシステムであり、POSシステム3を統括的に管理するPOSサーバ31とともに、商品の精算を行う複数のレジスタ32を備えている。POSサーバ31とレジスタ32とは専用の通信ケーブルで接続されている。
【0029】
POSサーバ31は一般的なコンピュータで構成され、そのハードディスクには、売価などの商品に係る各種の情報を示す商品マスタ301が記憶されている。複数のレジスタ32のそれぞれにおいては、商品マスタ301に記載される売価に基づいて商品の精算がなされる。
【0030】
店舗内の全商品に係る情報は、この商品マスタ301により一元的に管理されている。商品マスタ301に記載される情報には、商品の識別情報となる「商品コード」、商品の名称である「商品名」、通常の売価である「通常価格」、特売における売価である「特売価格」、特売を実施する期間である「特売期間」等が含まれている。
【0031】
<2−2.電子棚札システムの概要>
また、電子棚札システム1は、上述した複数の電子棚札5と、電子棚札5に表示すべき商品の「売価」を配信する配信側装置40とに大別される。
【0032】
配信側装置40は、電子棚札システム1を統括的に管理するサーバ装置であるESLサーバ10と、複数の照明装置4とを備えて構成される。ESLサーバ10と複数の照明装置4とは、専用の通信ケーブル22を介して相互に接続されており相互間でデータ通信が可能とされている。また、複数の照明装置4には、外部の電源から電力ケーブル23を介して電力が供給されるようになっている。
【0033】
本実施の形態の電子棚札システム1では、配信側装置40が電子棚札5に「売価」を配信する際の通信において、可視光(波長が約400〜約800nmの電磁波)を利用した無線通信の一である可視光通信が採用されている。配信側装置40に含まれる複数の照明装置4は、この可視光通信に利用する可視光通信信号VSを発信する発信手段として機能する。また、可視光とは文字通り「目に見える光」であることから、複数の照明装置4から発信される可視光は照明光ともなり得る。したがって、複数の照明装置4は、電子棚札5が配置される販売スペース90を照明する照明手段としても機能するようになっている。すなわち、照明装置4は、可視光通信信号VSを発信する発信手段と、照明光を照射する照明手段とに兼用されることになる。
【0034】
ここで、可視光通信信号VSとは、搬送波としての可視光を、送信すべきデータ(電子棚札システム1では主として「売価」)を示す信号(ベースバンド信号)に基づいて変調することで得られる信号である。換言すれば、可視光通信信号VSは、送信すべきデータが乗った可視光であるともいえる。この可視光通信信号VSが示すデータは、具体的には可視光の強弱変化(点滅)として現われるが、この変化速度は人間には認識できない程に高速である。このため、人間は、可視光通信信号VSを視認することはもちろん可能であるが、視認したとしても可視光通信信号VSとデータが乗っていない通常の可視光とを識別することはできない。
【0035】
照明装置4は、照明光としての可視光を常時に発光しており、送信すべき「売価」が存在するときには、この「売価」が乗った可視光たる可視光通信信号VSを発信することになる。上述したように、可視光通信信号VSと通常の可視光との識別は人間にはできないため、店舗内に存在する顧客には、照明装置4からは単なる照明光が常時に発光されているとしか認識されないことになる。
【0036】
複数の照明装置4は、照明手段として有効に機能させるため、販売スペース90の全体をくまなく照明するように、販売スペースの天井に分散して配置されている。これらの照明装置4による照明光たる可視光の到達範囲は、すなわち、可視光通信における通信可能範囲となる。つまり、照明装置4からの照明光が照射されている範囲は、可視光通信信号が到達する範囲となり、電子棚札5はこの範囲に配置されていれば配信側装置40からの「売価」の配信を受けることができる。したがって、本実施の形態の電子棚札システム1では、照明装置4からの照明光が照射されている範囲を把握することで、電子棚札5を配置できる通信可能範囲を容易かつ明瞭に把握できるわけである。
【0037】
<2−3.ESLサーバ>
次に、ESLサーバ10の構成について説明する。ESLサーバ10のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。図3は、ESLサーバ10の構成を示す図である。ESLサーバ10は、各種演算処理を行うCPU11、基本プログラムを記憶するROM12、演算処理の作業領域となるRAM13、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク14、各種表示を行うディスプレイ15、キーボード及びマウスなどで構成される入力部16、LAN21を介したデータ通信機能を有するデータ通信部17、並びに、照明装置4と通信するためのインターフェイス18を備えている。電子棚札5に送信すべき「売価」を示す信号はインターフェイス18を介して照明装置4に伝達される。
【0038】
ESLサーバ10のハードディスク14には、専用のプログラムが予め記憶されており、このプログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより、ESLサーバ10としての各種機能が実現される。また、ESLサーバ10のハードディスク14には、商品に係る各種の情報(商品データ)を示すデータファイルである商品ファイル101が記憶されている。
【0039】
図4は、商品ファイル101の例を示す図である。図に示すように商品ファイル101はテーブル形式となっており、レコード102のそれぞれが一の商品に係る情報を示している。具体的には、各レコード102ごとに「商品コード」、「商品名」、「通常価格」、「特売価格」及び「特売期間」等が登録されている。これらの情報は、上述したPOSシステム3に記憶された商品マスタ301と同様の情報であり、ESLサーバ10とPOSシステム3との通信により商品マスタ301の情報に基づいて登録される。このため、商品ファイル101の情報と商品マスタ301の情報とは内容が一致される。
【0040】
商品ファイル101の各レコード102には、さらに、電子棚札システム1が備える複数の電子棚札5のそれぞれに固有のハードウェアIDである一の「装置コード」が登録される。これにより、商品と電子棚札5とが一対一の関係でデータ的に対応付けられる(リンク付けされる)。この「装置コード」が利用されることにより、ある商品の「売価」が、その商品に対応する電子棚札5に対して送信されるようになっている。
【0041】
<2−4.照明装置>
次に、照明装置4の構成について説明する。図5は、照明装置4の構成を示す図である。図に示すように、照明装置4は、可視光通信信号VSあるいは照明光となる可視光の発信光源としてのLED光源42と、LED光源42を制御する制御部41とを備えている。
【0042】
LED光源42は、例えば、照明に最適な白色のLED(発光ダイオード/Light Emitting Diode)で構成される。LEDは、蛍光灯と同程度に発光効率が高く、また、高速に点滅駆動させ得るという特徴を有している。このため、LEDは、可視光通信信号VSの発信手段と照明光の照明手段とに兼用される本実施の形態の照明装置4の発信光源として好適に利用可能である。また、LEDは、半導体であるために、電球や蛍光灯と比較して寿命が非常に長いという特徴も有している。
【0043】
制御部41は、ESLサーバ10との間でデータ通信を行う機能と、LED光源42が発信する可視光を変調して可視光通信信号を生成する変調機能とを有している。可視光通信信号VSは、制御部41の変調機能により、ESLサーバ10から与えられる「売価」を示す信号に基づいて、搬送波としての可視光が変調されることによって生成される。これにより、電子棚札5が表示すべき「売価」が乗った可視光としての可視光通信信号VSが生成される。生成された可視光通信信号VSは、LED光源42から電子棚札5に向けて発信されることになる。
【0044】
<2−5.電子棚札>
次に、電子棚札5について説明する。図6は、電子棚札5の構成を示す図である。図に示すように電子棚札5の前面には、商品の「売価」を表示するためのディスプレイ51と、配信側装置40との通信を担う通信部54とが配置されている。ディスプレイ51は、例えば4桁の数値を表示可能なセグメント方式の液晶ディスプレイで構成されている。
【0045】
また、通信部54は、可視光通信信号VSを受信するためのフォトダイオードなどの受光素子53を備えている。なお、この受光素子53の前面には、可視光通信信号VSを効率的に受光可能なように、可視光通信信号VSに係る可視光の波長帯のみを透過するフィルタなどを設けてもよい。
【0046】
ディスプレイ51の下方には、電子棚札5が対応付けられた商品に係る「商品名」及び「商品コード」を示すバーコードが印刷されたオーバレイラベル55が貼付される。ラベル類が貼付されていない電子棚札5のままでは、電子棚札5がいずれの商品に対応付けられているかの把握は困難であるが、このオーバレイラベル55により電子棚札5と商品とが視覚的に対応付けられる。
【0047】
また、電子棚札5はその内部に、駆動電力を供給する小型の電池56と、装置の動作を制御する集積回路で構成された制御部57とを備えている。制御部57は、通信部54において受信された可視光通信信号VSを復調して、「売価」を取得する復調機能を有している。この復調機能は、換言すれば、データ(電子棚札システム1では主として「売価」)が乗った可視光から、その強弱変化(点滅)に基づいて、そのデータを取り出す機能であるともいえる。
【0048】
また、制御部57は、各種の情報を記憶するメモリ58を備えている。このメモリ58には、可視光通信信号VSから得られた「売価」や、自装置の装置コードなどが記憶される。メモリ58に記憶された「売価」は、制御部57の制御により、ディスプレイ51に表示されることになる。
【0049】
<3.動作>
次に、電子棚札システム1の動作について説明する。本実施の形態の電子棚札システム1において、配信側装置40から電子棚札5への「売価」の配信は、システム起動時、及び、電子棚札5に表示させる「売価」を更新する際などに行われる。そして、このような「売価」の配信がなされない時期には、照明装置4からは「売価」の乗っていない可視光である単なる照明光が照射されることになる。ここで「売価」を更新する際とは、商品マスタ301の通常価格が変更されたときや、特売の実施にあたって売価を通常価格から特売価格に変更するときなどが該当する。
【0050】
システム起動時には、店舗内の全ての商品に関して「売価」の配信がなされる。すなわち、全ての電子棚札5に対して、可視光通信信号VSが送信されることになる。一方、「売価」を更新する際には、対象となる商品のみに関して「売価」の配信がなされる。すなわち、対象となる商品に対応する電子棚札5のみに対して、可視光通信信号VSが送信されることになる。このように必要に応じて可視光通信信号VSを送信することにより、電子棚札5に表示される「売価」と、レジスタ32による精算時の「売価」とが常時に一致されることになる。
【0051】
図7は、一の商品に関しての「売価」の配信に係る動作の流れを示す図である。図7において符号S10で示す動作は配信側装置40の動作、符号S20で示す動作は電子棚札5の動作を示している。以下、図7を参照して、この動作を説明する。なお、この説明において、対象となる商品を「対象商品」という。
【0052】
まず、配信側装置40のESLサーバ10において、商品ファイル101のうちの対象商品に係るレコード102が参照され、「通常価格」及び「特売価格」のうちの配信すべき「売価」、及び、「装置コード」が取得される。ここで取得された「装置コード」は、対象商品に対応する電子棚札5の「装置コード」であり、また、取得された「売価」はその電子棚札5が表示すべき「売価」となる(ステップS11)。これらの「売価」及び「装置コード」は、電気的な信号として通信ケーブル22を介して照明装置4に送信される。
【0053】
この「売価」及び「装置コード」を示す信号は、照明装置4の制御部41に入力される。これに応答して、まず、入力された信号に基づいて、LED光源42が発信すべき可視光が制御部41により変調され、「売価」及び「装置コード」を含む可視光通信信号VSが生成される(ステップS12)。そして、生成された可視光通信信号VSが、LED光源42から電子棚札5に向けて発信される(ステップS13)。
【0054】
発信された可視光通信信号VSは、電子棚札5の通信部54によって受信される(ステップS21)。これに応答して、まず、受信された可視光通信信号VSが制御部57によって復調され、「売価」及び「装置コード」が取得される(ステップS22)。
【0055】
次に、復調によって得られた「装置コード」が、メモリ58内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かが制御部57により判定される(ステップS23)。このとき、その「装置コード」が自装置のものと一致しない場合は、受信した可視光通信信号VSは他の電子棚札5のための信号と判断され、そのまま処理が終了する。
【0056】
一方、「装置コード」が自装置のものと一致した場合は、受信した可視光通信信号VSは自装置のための信号と判断され、復調によって得られた「売価」に従ってディスプレイ51の表示が更新されることになる(ステップS24)。
【0057】
以上のような動作によって、配信側装置40から電子棚札5へ「売価」の配信がなされることになる。上述したように、本実施の形態の電子棚札システム1では、この配信に可視光通信が採用されるため、電子棚札5を配置できる通信可能範囲を容易かつ明瞭に把握できることになる。
【0058】
また、可視光通信信号VSを発信する発信手段としての照明装置4は、販売スペース90を照明する照明手段と兼用される。このことから、照明手段とは別に、可視光通信信号VSを発信する専用の発信手段を設ける必要が無い。このため、照明手段とは別の専用の発信手段の設置のために、天井工事や電源ケーブルの配線工事等を行う必要がないため、設置コストを大幅に低減できることになる。また、販売スペース90に照明手段とは別の発信手段が存在しないため、視覚上において余計な装置がない整然とした印象を与えることができ、販売スペース90内の美観を向上できる。
【0059】
また、例えば、販売スペース90内において商品棚60のレイアウト変更などがあった場合であっても、照明手段としての複数の照明装置4は、通常は、販売スペース90の全体をくまなく照明するように配置されることから、電子棚札5を配置すべき位置が、通信可能範囲の外となることはほとんどない。またたとえ、通信可能範囲の外となったとしても、可視光は人体に大きな悪影響を与えることはないため、照明装置4が発信する可視光の強度を単純に増加させることで通信可能範囲を拡大させ、電子棚札5を配置すべき位置を通信可能範囲とすることが容易に可能である。
【0060】
<4.照明装置の駆動制御>
ところで、本実施の形態の電子棚札システム1では、販売スペース90の領域全体を一つの照明装置4ではくまなく照明しきれないため、可視光通信信号VSの到達範囲が互いに異なる複数の照明装置4で照明するようにしている。
【0061】
以下では、具体例として、販売スペース90が8つの照明装置4で照明される場合を想定して説明する。図8は、この場合における天井側から見た販売スペース90の様子を模式的に示している。図中において、点4a〜4hはそれぞれ互いに独立して可視光通信信号を発信する照明装置4を示している。これらの照明装置4は、各点4a〜4hの位置に配置されているものとする。また、その各点4a〜4hを中心とした円40a〜40hは、各照明装置4からの可視光通信信号VSの到達範囲(以下、「信号到達範囲」という。)を示している。
【0062】
ここで仮に、一の電子棚札5に対して一の「売価」に係る可視光通信信号VSを送信する場合を想定する。なお以下、一の照明装置4が一の「売価」に係る可視光通信信号VSの発信に要する時間を「単位送信時間」という。
【0063】
本実施の形態の電子棚札システム1では、各電子棚札5が販売スペース90内のいずれの位置に存在しているかは配信側装置40は把握していない。このため、ある一の電子棚札(以下、「注目電子棚札」という。)5に可視光通信信号VSを送信する場合においては、8つの照明装置4a〜4hの全てから可視光通信信号VSを送信する必要がある。
【0064】
ここで、一回の単位送信時間のみで注目電子棚札への可視光通信信号VSの送信が完了できるように、8つの照明装置4a〜4hの全てから同時に同一の可視光通信信号VSを発信させた場合について考える。
【0065】
しかしながら、この場合は、信号到達範囲40a〜40hが重なる領域(図8においてハッチングで示す領域)においては、可視光通信信号VSが相互に干渉し、混信により通信不良が発生する可能性がある。すなわち、信号到達範囲40a〜40hが重なる領域に存在する電子棚札5は、可視光通信信号VSを正常に受信することができなくなる可能性があるわけである。
【0066】
したがって、信号到達範囲40a〜40hが重なるような隣接する照明装置4を同時に駆動することは好ましくない。このため、以下では、隣接する照明装置4の同時駆動を伴うことなく、注目電子棚札5に可視光通信信号VSを送信するための照明装置4の制御手法について説明する。
【0067】
<4−1.第1制御手法:順次駆動>
まず、第1制御手法について説明する。この第1制御手法では、複数の照明装置4が、互いに異なる時間帯に可視光通信信号VSを発信するようにしている。
【0068】
図9は、この第1制御手法を採用した場合において、一の可視光通信信号VSを送信するときの前述した8つの照明装置4a〜4hの駆動例を示すタイムチャートである。この図中において、「通信信号」とは当該照明装置4が可視光通信信号VSを発信している状態を示し、「通常照明」とは当該照明装置4が可視光通信信号VSを発信せず単なる照明光を発光している状態を示している。また、図中の時点T0,T1,T2…T10の相互間は、単位送信時間であるものとする(後述する図15に示すタイムチャートでも同様)。
【0069】
図9に示すように、8つの照明装置4a〜4hは、それぞれ一度、可視光通信信号VSを発信する。そして、この発信する時間帯は、8つの照明装置4a〜4hの相互間で異なっており順次に遅延されている。
【0070】
この図9に従って各照明装置4a〜4hが駆動した場合は、図10に示すように、8つの照明装置4a〜4hは、照明装置4a,4b,4c…4hの順に、順次に可視光通信信号VSを発信していくことになる。なお、図10においては、可視光通信信号VSを発信している照明装置4の信号到達範囲をハッチングにて示している。
【0071】
このように第1制御手法では、常に一の照明装置4のみが可視光通信信号VSを発信している状態とし、同一時間帯において複数の照明装置4が並列的に可視光通信信号VSを発信しないようにする。これにより、複数の照明装置4が隣接して、その信号到達範囲が重なる領域においても可視光通信信号VSの混信は発生しないため、この領域における電子棚札5も可視光通信信号VSを正常に受信することができることになる。
【0072】
ただし、この第1制御手法では、複数の照明装置4を順次に遅延させつつ駆動させることになることから、注目電子棚札への可視光通信信号VSの送信が完了するまでに、照明装置と同数の単位送信時間が必要となる。例えば、図9の例では、時点T0〜T8に係る8回の単位送信時間が必要となっている。
【0073】
<4−2.第2制御手法:グループ駆動>
次に第2制御手法について説明する。この第2制御手法では、複数の照明装置4のうちで、その信号到達範囲が互いに重複しないもの同士が同一のグループに区分される。そして、同一のグループの照明装置4が略同一時間帯に可視光通信信号VSを発信し、異なるグループの照明装置4は異なる時間帯に可視光通信信号VSを発信するようにしている。
【0074】
前述した8つの照明装置4a〜4hは、その信号到達範囲が互いに重複しないもの(隣接しないもの)同士のグループとして、図11〜図14に示す4つのグループ(A〜Dグループ)に区分することができる。すなわち、照明装置4a,4gはAグループ(図11参照。)、照明装置4b,4hはBグループ(図12参照。)、照明装置4c,4eはCグループ(図13参照。)、照明装置4d,4fはDグループ(図14参照。)にそれぞれ区分することができる。
【0075】
図15は、このようにグループ分けした場合において、一の可視光通信信号VSを送信するときの8つの照明装置4a〜4hの駆動例を示すタイムチャートである。
【0076】
図15に示すように、8つの照明装置4a〜4hは、それぞれ一度、可視光通信信号VSを発信する。ただし、この発信する時間帯は、同一グループでは同一時間帯である一方で、異なるグループでは異なる時間帯となっている。より具体的には、Aグループの照明装置4a,4gは時点T0〜T1の間、Bグループの照明装置4b,4hは時点T1〜T2の間、Cグループの照明装置4c,4eは時点T2〜T3の間、Dグループの照明装置4d,4fは時点T3〜T4の間にそれぞれ可視光通信信号VSを発信するようになっている。
【0077】
この図15に従って各照明装置4a〜4hが駆動した場合は、図16に示すように、8つの照明装置4a〜4hは、Aグループ,Bグループ,Cグループ,Dグループの順に、グループごとに可視光通信信号VSを発信していくことになる。なお、図16においても、可視光通信信号VSを発信している照明装置4の信号到達範囲をハッチングにて示している。
【0078】
このように、第2制御手法では、同一のグループの照明装置4は、同一時間帯に並列的に可視光通信信号VSを発信する。一のグループに含まれる照明装置4は隣接せず、その信号到達範囲が互いに重複しないことから、このように同一時間帯に可視光通信信号VSを発信しても、可視光通信信号VSの混信は発生しないことになる。
【0079】
また、同一時間帯に並列的に複数の照明装置4を駆動できるため、第1制御手法と比較して可視光通信信号の送信に係る時間を大幅に短縮できる。例えば、図15の例では、時点T0〜T4に係る4回の単位送信時間のみでよいため、図9の例と比較すると半分の時間のみでよいことになる。
【0080】
なお、この第2制御手法では、一のグループに含まれる照明装置4の相互間で異なるデータが含まれる可視光通信信号VSを発信させるようにしてもよい。
【0081】
<5.他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態(以下、「第1形態」という。)に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような他の実施の形態について説明する。
【0082】
<5−1.第2形態:携帯端末への情報配信>
第1形態の電子棚札システム1は、電子棚札5への商品データ(「売価」)の配信のみを行うものとして説明を行ったが、電子棚札5以外の可搬性の通信端末へ各種のデータをさらに配信できるようになっていてもよい。
【0083】
図17は、この第2形態における販売スペース90内の様子を概念的に説明する図である。図に示すように、販売スペース90内においては、当該店舗の店舗スタッフ70により、業務に用いるハンディターミナルなどの通信端末(以下、「業務端末」という)7が利用されている。また一方で、当該店舗の顧客80により、その顧客80が所有の携帯電話などの通信端末(以下、「顧客端末」という)8が利用されている。そして、配信側装置40からは、電子棚札5に表示すべき「売価」を含む可視光通信信号VSのみならず、業務端末7に表示すべきデータや、顧客端末8に表示すべきデータが含まれる可視光通信信号VSも送信されるようになっている。
【0084】
業務端末7及び顧客端末8はそれぞれ、可視光通信信号VSを受光し、その可視光通信信号VSを復調して可視光通信信号VSに含まれるデータを取得し、取得したデータをディスプレイに表示する機能を有している。したがって、配信側装置40から送信された可視光通信信号VSに含まれるデータは業務端末7や顧客端末8に表示され、これにより店舗スタッフ70や顧客80に対して各種情報が提供されることになる。なお、電子棚札5、業務端末7及び顧客端末8のいずれに対する可視光通信信号VSであるかは、可視光通信信号VS内に所定の識別情報を含ませることで識別すればよい。
【0085】
業務端末7に配信されるデータ(以下、「業務情報」という。)とは、例えば、業務指示や業務予定などである。また、顧客端末8に配信されるデータ(以下、「顧客情報」という。)とは、例えば、店舗内の特売情報や時事ニュースなどである。さらに、地震などの突然の災害が発生した場合は、業務端末7及び顧客端末8の双方にその災害に関する災害情報が配信されてもよい。
【0086】
これらの業務情報及び顧客情報としての端末用データは、キーボードなどの入力部16を介してESLサーバ10に入力される。また、ストアコントローラ2を介して外部ネットワークから、災害情報や時事ニュースなどが端末用データとして自動的にESLサーバ10に入力されるようになっていてもよい。
【0087】
ESLサーバ10に入力された端末用データは、通信ケーブル22を介して、照明装置4に伝達される。そして、照明装置4の制御部41において、端末用データに基づいて可視光が制御部41により変調され、端末用データを含む可視光通信信号VSが生成される。そして、生成された可視光通信信号VSが、LED光源42から販売スペース90に向けて発信されることになる。
【0088】
なお、電子棚札5に表示すべき「売価」(以下、「ESL情報」という。)と、業務情報と、顧客情報とは同時に配信することはできない。このため、図18に示すように、処理時間を分割して、ESL情報、業務情報及び顧客情報のそれぞれの配信のための時間に割り当てればよい。上述したように、電子棚札システム1では、システム起動後においてESL情報の配信が必要となるのは「売価」を更新する際などのみであり、常時の通信が必要となるわけではない。このため、このような時分割制御を行ったとしても、電子棚札システム1の動作に大きな支障が生じることはない。
【0089】
<5−2.第3形態:返答信号>
また、第1形態においては、電子棚札5は受信機能のみを有していたが、電子棚札5が可視光通信信号VSの受信に応答して返答信号を配信側装置40に返信するようにしてもよい。
【0090】
図19は、この第3形態における電子棚札5の構成を示す図である。図19に示す電子棚札5は、図6に示す第1形態のものとほぼ同様であるが、通信部54が、受光素子53とともに、赤外線信号である返答信号を発信する発光素子52を備えている。
【0091】
図20は、第3形態における照明装置4の構成を示す図である。図に示すように、照明装置4は、制御部41及びLED光源42とともに、電子棚札5から発信された返答信号ISを受信するためのフォトダイオードなどで構成される信号受信部43を備えている。信号受信部43で、返答信号ISが受信されると、その旨は制御部41に入力され、さらに、ESLサーバ10に伝達されるようになっている。
【0092】
図21は、第3形態における一の商品に関しての「売価」の配信に係る動作の流れを示す図である。図21においても、符号S10で示す動作は配信側装置40の動作、符号S20で示す動作は電子棚札5の動作を示している。
【0093】
配信側装置40におけるステップS11〜S13の処理、及び、電子棚札5におけるステップS21〜S24の処理は、上述した図7に示した処理と同様である。すなわち、配信側装置40のESLサーバ10において対象商品に係る「売価」及び「装置コード」が取得され(ステップS11)、この「売価」及び「装置コード」を含む可視光通信信号VSが照明装置4の制御部41にて生成され(ステップS12)、生成された可視光通信信号VSがLED光源42から発信される(ステップS13)。
【0094】
発信された可視光通信信号VSは電子棚札5に受信され(ステップS21)、可視光通信信号VSが復調されて「売価」及び「装置コード」が取得され(ステップS22)、その「装置コード」が自装置のものと一致した場合は(ステップS23にてYes)、ディスプレイ51の表示が更新される(ステップS24)。
【0095】
第3形態では、このようにしてディスプレイ51の表示を更新した後に、さらに、可視光通信信号VSを正常に受信して表示を更新したことを示す返答信号ISが、発光素子52から発信される(ステップS25)。この返答信号ISは、照明装置4の信号受信部43に受信され、さらに、その旨がESLサーバ10に伝達されることになる(ステップS14)。
【0096】
これにより、配信側装置40のESLサーバ10は、発信した可視光通信信号VSが電子棚札5に正常に受信されたか否かを確認できる。したがって、例えば、返答信号ISがない場合は、可視光通信信号VSが正常に受信されなかったと判断して、返答信号ISが返答されるまで可視光通信信号VSを繰り返し発信するなどの処理が可能となる。これにより、電子棚札5の表示を確実に更新でき、システムの信頼性を大幅に向上できる。
【0097】
なお、この第3形態では、電子棚札5からの返答信号ISは赤外線信号であると説明したが、電波(波長帯が0.1mm以上)などの光線以外の電磁波の信号であってもよい。また、さらには、可視光通信信号VSに係る可視光とは異なる波長帯の可視光の信号であってもよい。返答信号の波長帯が、可視光通信データに係る可視光の波長帯と異なれば、可視光通信信号と返答信号との混信による通信不良を防止できる。
【0098】
<5−3.第4形態:商品棚への配置>
また、第1形態では、照明装置4は販売スペース90の天井に配置されると説明したがこれに限定されない。例えば、図22に示すように、商品6を照明する照明手段として商品棚60に照明装置4が配置されてもよい。これによれば、照明装置4の設置が容易であるとともに、照明装置4から電子棚札5に対して可視光通信信号VSを確実に送信することができる。
【0099】
<5−4.第5形態:電力線通信>
また、第1形態では、ESLサーバ10と照明装置4との間の通信は専用の通信ケーブル22を介して行われていたが、周知の電力線通信技術を利用し、各照明装置4に電力を供給する電力ケーブル23を介して行われてもよい。これによれば、各照明装置4まで通信ケーブル22を配線する必要がないため、電子棚札システム1の設置コストをさらに低減することができる。
【0100】
<5−5.第6形態:ドットマトリクス>
また、第1形態では、電子棚札5のディスプレイ51としてセグメント方式の液晶ディスプレイが採用されていたが、図23に示すように、ドットマトリクス方式の液晶ディスプレイ59が採用されてもよい。
【0101】
このようなドットマトリクス方式の液晶ディスプレイ59は、商品の「売価」を示す数字59aのみならず、各種の商品データを文字、記号、図形などによって表示することが可能である。例えば、図23の例では、商品名を示す文字列59bや、商品コードを示すQRコード(二次元バーコード)59cが液晶ディスプレイ59に表示された様子を示している。この場合においても、液晶ディスプレイ59に表示すべき各種の商品データを、可視光通信信号VSに含ませて電子棚札5に配信すればよい。
【0102】
また、液晶ディスプレイ59に表示するQRコード59cが示す情報には、対応する商品に係るトレーサビリティ情報(個体識別番号、生産履歴、加工履歴など)を含ませてもよい。この場合においては、QRコード59cをカメラ付き携帯電話などの顧客端末で撮影することで、顧客は電子棚札5に対応する商品に係るトレーサビリティ情報を確認することができることになる。
【0103】
また、このようなトレーサビリティ情報を、外部ネットワークに含まれる所定のサーバ装置からストアコントローラ2を介して所定の時間周期でESLサーバ10が自動的に取得し、その取得した最新情報に基づいて電子棚札5の表示を更新するようにしてもよい。これによれば、店舗スタッフの労力を伴うことなく、最新のトレーサビリティ情報をリアルタイムかつ自動的に顧客に提供することができることになる。
【0104】
<5−6.第7形態:RFIDの利用>
また、各商品に微小な電磁的記録媒体を含ませ、電子棚札5がこの電磁的記録媒体の読取機能や書込機能を有していてもよい。
【0105】
具体的には、図24に示すように、電子棚札5がRFIDリーダライタ500を有している一方で、商品棚60に載置される各商品6にそれぞれRFIDチップ600を含ませるようにする。図24に示すような状態において電子棚札5は、RFIDリーダライタ500により、各商品6に含まれるRFIDチップ600と交信を行うことが可能となる。このような交信を所定の時間周期で定期的に行うことで、電子棚札5は、その時点において、商品棚60に実際に載置された商品6に係る情報をリアルタイムに取得することができることになる。
【0106】
例えば、電子棚札5は、商品棚60に載置された商品6の在庫数をリアルタイムに把握することができる。この場合において、電子棚札5のメモリ58に予め所定の数値を発注閾値として記録させておけば、商品6の在庫数がその発注閾値を下まわった場合に、電子棚札5のディスプレイ51などに所定の発注マークを表示させることなどが可能である。そして、店舗スタッフがこの発注マークを確認し、ハンディターミナル等の業務端末を利用して当該商品6の発注を行うようにすれば、商品6の発注作業を非常に効率的に行うことができることとなる。業務端末への発注情報の入力は、店舗スタッフの手入力によってなされてもよく、電子棚札5との間の通信や電子棚札5に表示されるQRコードの読み取りなどによってなされてもよい。
【0107】
また、第3形態のように電子棚札5が信号の発信機能を有している場合は、商品6の在庫数がその発注閾値を下まわったときに、電子棚札5が自動的に配信側装置40へ発注情報を送信してもよい。これによれば、店舗スタッフによる商品の発注作業そのものを無くすことができるとともに、発注ミスや商品6の売り切れを防止することができる。
【0108】
また、各商品6のRFIDチップ600に当該商品の商品コードを記録させ、電子棚札5がRFIDリーダライタ500によりその商品コードを取得するようにしてもよい。この場合において、第3形態のように電子棚札5が信号の発信機能を有しているときは、電子棚札5が商品コードを取得した際に、その商品コードを配信側装置40に送信させるようにすれば、配信側装置40において電子棚札5と商品6との対応付け(リンク付け)を容易に行うことができる。つまり、電子棚札5を商品6が載置されている商品棚60に配置するのみで、リンク付けを行うことができることになる。
【0109】
また、各商品6のRFIDチップ600に当該商品の賞味期限を記録させ、電子棚札5がRFIDリーダライタ500によりその賞味期限を取得するようにしてもよい。この場合において、取得した賞味期限がその時点の時刻より前であったとき、すなわち、賞味期限切れの商品6が存在したときに、電子棚札5のディスプレイ51などにその旨を表示させるようにすれば、期限切れの商品6を容易に回収することができることになる。
【0110】
また、電子棚札5が各商品6のRFIDチップ600の内容を書き替えるようにしてもよい。例えば、各商品6のRFIDチップ600に商品の「売価」が記録されている場合においては、特売の実施などで「売価」を変更する際に、電子棚札5が、自装置のディスプレイ51の「売価」の更新と、各商品6のRFIDチップ600の「売価」の書き換えとを同時に行うようにする。これによれば、電子棚札5に表示される「売価」と、商品6のRFIDチップ600内の「売価」とが常時に一致されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】電子棚札システムが備える電子棚札が配置される様子を示す図である。
【図2】電子棚札システムを含む店舗情報システムの構成例を示す図である。
【図3】ESLサーバの構成を示す図である。
【図4】商品ファイルの例を示す図である。
【図5】照明装置の構成を示す図である。
【図6】電子棚札の構成を示す図である。
【図7】売価の配信に係る動作の流れを示す図である。
【図8】販売スペースの様子を示す図である。
【図9】照明装置の駆動例を示すタイムチャート図である。
【図10】照明装置の駆動の様子を示す図である。
【図11】照明装置が区分されるグループの一例を示す図である。
【図12】照明装置が区分されるグループの一例を示す図である。
【図13】照明装置が区分されるグループの一例を示す図である。
【図14】照明装置が区分されるグループの一例を示す図である。
【図15】照明装置の駆動例を示すタイムチャート図である。
【図16】照明装置の駆動の様子を示す図である。
【図17】販売スペースの様子を示す図である。
【図18】処理時間の分割を概念的に示す図である。
【図19】第3形態における電子棚札の構成を示す図である。
【図20】第3形態における照明装置の構成を示す図である。
【図21】第3形態における売価の配信に係る動作の流れを示す図である。
【図22】照明装置が商品棚に配置された様子を示す図である。
【図23】ドットマトリクス方式のディスプレイを有する電子棚札を示す図である。
【図24】RFIDリーダライタを有する電子棚札等を示す図である。
【符号の説明】
【0112】
1 電子棚札システム
4 照明装置
5 電子棚札
6 商品
7 業務端末
8 顧客端末
22 通信ケーブル
23 電力ケーブル
60 商品棚
90 販売スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品に対応して配置され、対応する商品に係る商品データを表示する複数の電子棚札と、電子棚札が表示すべき商品データを当該電子棚札に対して配信する配信手段と、を有する電子棚札システムであって、
前記配信手段は、
前記電子棚札が表示すべき商品データに基づいて、可視光を変調して可視光通信信号を生成する変調手段と、
前記可視光通信信号を発信する発信手段と、
を備え、
前記複数の電子棚札はそれぞれ、
前記発信手段から発信された前記可視光通信信号を受信する受信手段と、
前記可視光通信信号を復調して商品データを得る復調手段と、
を備えることを特徴とする電子棚札システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子棚札システムにおいて、
前記発信手段は、前記複数の電子棚札が配置される空間を照明する照明装置と兼用されることを特徴とする電子棚札システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子棚札システムにおいて、
前記複数の電子棚札はそれぞれ、
前記可視光通信信号の受信に応答して返答信号を前記配信手段に返信する返信手段、
を備えることを特徴とする電子棚札システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電子棚札システムにおいて、
前記返答信号は、前記可視光通信信号に係る可視光とは異なる波長帯の電磁波の信号であることを特徴とする電子棚札システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の電子棚札システムにおいて、
前記発信手段は、互いに独立して前記可視光通信信号を発信し、発信した前記可視光通信信号の到達範囲が互いに異なる複数の発信光源から構成され、
前記複数の発信光源は、前記到達範囲が互いに重複しないもの同士が同一のグループに区分されており、
同一のグループの発信光源は、略同一時間帯に前記可視光通信信号を発信し、
異なるグループの発信光源は、異なる時間帯に前記可視光通信信号を発信することを特徴とする電子棚札システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の電子棚札システムにおいて、
前記配信手段は、当該電子棚札システムが配置される空間において利用される可搬性の通信端末へ表示すべき端末用データを入力する入力手段、
をさらに備え、
前記変調手段は、前記端末用データに基づいて前記可視光を変調して可視光通信信号を生成し、
前記発信手段は、前記端末用データに基づいて変調された前記可視光通信信号を発信可能であることを特徴とする電子棚札システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−212333(P2006−212333A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30666(P2005−30666)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】