説明

電子移動解離プロダクトイオンの電荷を低減する方法

【課題】ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンが有する比較的高い電荷状態を低減する質量分析計を提供する。
【解決手段】親イオンの電子移動解離フラグメンテーションによって生成された高電荷のフラグメントイオンの電荷状態が、当該フラグメントイオンをオクタヒドロピリミドールアゼピンなどの中性超強塩基試薬ガスと反応させることによってプロトン移動反応セル内で低減される質量分析計が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計および質量分析の方法に関する。この質量分析計は、気体状の中性超強塩基性試薬を用いたプロトン移動反応(「PTR」)によって電子移動解離(「ETD」)プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷を低減するかあるいは電荷を剥ぎ取る(charge stripping)ために好ましくは構成される。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスプレーイオン化イオン源は、周知であり、かつHPLCカラムから溶出した中性ペプチドを気相分析種イオンに変換するために使用され得る。酸性水溶液中で、トリプシンペプチドは、アミノ末端およびC−末端アミノ酸の側鎖の両方においてイオン化される。ペプチドイオンが進行して質量分析計に入ると、正電荷のアミノ基が水素結合し、そしてプロトンをペプチドの骨格に沿ってアミド基へ移動させる。
【0003】
ペプチドイオンを衝突ガスに衝突させることによってペプチドイオンの内部エネルギーを増大させて、ペプチドイオンをフラグメンテーションさせることが公知である。ペプチドイオンの内部エネルギーは、内部エネルギーがその分子の骨格に沿ったアミド結合を開裂するために必要な活性化エネルギーを超えるまで増大される。中性衝突ガスと衝突させることによってイオンをフラグメンテーションするこのプロセスは、一般に衝突誘起解離(「CID」)と呼ばれる。衝突誘起解離から得られたフラグメントイオンは、一般にb−タイプおよびy−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンと呼ばれる。ここで、b−タイプフラグメントイオンはアミノ末端+1つ以上のアミノ酸残基を含み、およびy−タイプフラグメントイオンは、カルボキシル末端+1つ以上のアミノ酸残基を含む。
【0004】
ペプチドをフラグメンテーションする他の方法が公知である。ペプチドイオンをフラグメンテーションする別の方法は、電子捕獲解離(「ECD」)として公知のプロセスによってペプチドイオンを熱電子と相互作用させることである。電子捕獲解離は、衝突誘起解離において観測されるフラグメンテーションプロセスとは実質的に異なる方法でペプチドを開裂する。特に、電子捕獲解離は、骨格N−Cα結合またはアミン結合を開裂し、そしてその結果生成されるフラグメントイオンは、一般にc−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンと呼ばれる。電子捕獲解離は、非エルゴ−ド的であると考えられる。すなわち、開裂が発生した後、移動したエネルギーが分子全体に分配される。また、電子捕獲解離の発生は、近傍のアミノ酸の性質への依存がより小さく、かつプロリンのN側のみが電子捕獲解離に対して100%開裂されない。
【0005】
衝突誘起解離ではなく電子捕獲解離によってペプチドイオンをフラグメンテーションする1つの利点は、衝突誘起解離には翻訳後修飾(「PTM」)を開裂する傾向があるので修飾場所を特定することが困難であるという問題があるが、対照的に電子捕獲解離によってペプチドイオンをフラグメンテーションする場合は、例えば、リン酸化およびグリコシル化から生じる翻訳後修飾を保存する傾向があることである。
【0006】
しかし、電子捕獲解離技術には、正イオンおよび電子の両方を熱運動エネルギーの近くで同時に閉じ込める必要があるという大きな問題がある。電子捕獲解離は、超伝導磁石を使用して大きな磁場を生成するフ−リエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FT−ICR」)質量分析部を使用して実証されている。しかし、そのような質量分析計は、非常に大型で、かつ大半の質量分析ユ−ザにとっては高価すぎる。
【0007】
電子捕獲解離の代替として、リニアイオントラップにおいて負電荷の試薬イオンを多価分析種カチオンと反応させることによってペプチドイオンをフラグメンテーションさせることが可能であることが実証されている。正電荷の分析種イオンを負電荷の試薬イオンと反応させるプロセスは、電子移動解離(「ETD」)と呼ばれている。電子移動解離は、電子が負電荷の試薬イオンから正電荷の分析種イオンへ移動するメカニズムである。電子の移動後、電荷が減少したペプチドイオンまたは分析種イオンは、電子捕獲解離によるフラグメンテーションに関与すると考えられているメカニズムと同じメカニズムによって解離する。すなわち、電子移動解離は、電子捕獲解離と同様の方法でアミン結合を開裂すると考えられている。これにより、ペプチド分析種イオンの電子移動解離によって生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのほとんどは、c−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンである。
【0008】
電子移動解離の1つの特に有利な点は、このようなプロセスが翻訳後修飾(「PTM」)の特定に特に適していることである。なぜなら、リン酸化またはグリコシル化のような結合の弱いPTMでも、アミノ酸鎖の骨格の電子誘起フラグメンテーションに耐えられるからである。
【0009】
カチオンおよびアニオンを二次元リニアイオントラップ中に相互に閉じ込めることによって電子移動解離を行うことが知られている。二次元リニアイオントラップは、試薬アニオンと分析種カチオンとの間のイオン−イオン反応を促進するように構成される。カチオンおよびアニオンは、二次元リニア四重極イオントラップの両端に補助的な軸方向の閉じ込めRF擬電位障壁を印加することによって、二次元リニアイオントラップ内に同時にトラップされる。
【0010】
電子移動解離を行う別の方法が知られており、この方法では、固定されたDC軸方向電位を二次元リニア四重極イオントラップの両端に印加して、所定の極性を有するイオン(例えば、試薬アニオン)をそのイオントラップ内に閉じ込める。次いで、イオントラップ内に閉じ込められたイオンとは反対の極性を有するイオン(例えば、分析種カチオン)がイオントラップ中へ導かれる。分析種カチオンは、すでにイオントラップ内に閉じ込められている試薬アニオンと反応する。
【0011】
多価(分析種)カチオンが(試薬)アニオンと混合されると、緩く結合した電子が(試薬)アニオンから多価(分析種)カチオンへ移動し得ることが公知である。エネルギーは、多価カチオン中へ解放され、そして多価カチオンは、解離され得る。しかし、(分析種)カチオンのうちのいくつかは、解離しないで、その代わりに電荷状態が低減され得る。カチオンは、2つのプロセスのうちの1つによって電荷が減少され得る。第一に、カチオンは、電子がアニオンからカチオンへ移動する電子移動(「ET」)によって電荷が減少され得る。第二に、カチオンは、プロトンがカチオンからアニオンへ移動するプロトン移動(「PT」によって電荷が減少され得る。そのプロセスにかかわらず、電荷が減少したプロダクトイオンの存在度が質量スペクトル内に観測され、これはまた、発生しているイオン−イオン反応(ETまたはPTのいずれか)の度合いを示す。
【0012】
ボトムアップまたはトップダウンのプロテオミックスにおいて、電子移動解離の実験は、解離されたプロダクトイオンの存在度を質量スペクトル内で最大化することによって得られる情報を最大化するために行われ得る。電子移動解離によるフラグメンテーションの度合いは、カチオン(およびアニオン)のコンフォーメーションとともに多くの他の機器要因に依存する。LCの結果から各アニオン−カチオン組み合わせに対する最適なパラメータをアプリオリに知ることは困難であり得る。
【0013】
公知の電子移動解離構成の問題の1つは、電子移動解離プロセスによって生じるフラグメントイオンまたはプロダクトイオンが多価イオンになり易く、また、比較的高い電荷状態を有し易いということである。このことは、高電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、質量分析計で分解を行うのが困難となり得るため問題である。電子移動解離によってフラグメンテーションされる親イオンまたは分析種イオンは、例えば、5+,6+,7+,8+,9+、10+またはより高い電荷状態を有する場合があり、得られるフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、例えば、4+,5+,6+,7+,8+、9+またはより高い電荷状態を有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
質量分析計を用いた分解にとって問題となる、ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンが比較的高い電荷状態を有するという問題に対処することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面によると、
第1のイオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気と反応させて、第1のイオンの電荷状態を低減するように構成および適合される第1のデバイスであって、複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを含む質量分析計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、2つの過渡DC電圧または過渡DC電位が好適なPTRデバイスの上流に配置されたETDデバイスの電極に同時に印加され、分析種カチオンおよび試薬アニオンがともにETDデバイスの中心領域に運搬されることを示す。
【図2】図2は、ETDデバイスの電極に印加される進行DC電圧波形を使用して、正イオンおよび負イオンがETDデバイス内で同じ方向に同時に並進され得る様子を例示する。
【図3】図3は、好適なPTRデバイスの上流に配置されるETDデバイスのSIMION(登録商標)シミュレーションの断面図を示す。
【図4】図4は、エレクトロスプレーイオン源を使用して分析種イオンを生成し、かつETD試薬イオンが質量分析計の入力真空チャンバ内に位置するグロー放電領域において生成される本発明の一実施形態に係る質量分析計のイオン源段および最初の真空段を示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。
【図7】図7Aは、高電荷のPEG20Kのイオンを本発明の好適な一実施形態にしたがってプロトン移動反応によって中性超強塩基ガスと反応させて当該イオンの電荷状態を低減した後に得られた質量スペクトルを示し、図7Bは、中性超強塩基ガスを用いた電荷状態の低減を行わなかったPEG20Kのイオンの対応する質量スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記好適な実施形態の1つの利点は、一旦イオンの電荷状態が低減されると、質量分析計が当該イオンを分解することが可能となるという点である。得られる質量スペクトルのスペクトル容量またはスペクトル密度は著しく改善される。
【0018】
第1のデバイスは、プロトン移動反応デバイスを好ましくは含む。
【0019】
一実施形態によると、使用時に、(i)第1のイオンの少なくともいくつかから1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気にプロトンが移動するか、あるいは(ii)1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンを含む第1のイオンのうちの少なくともいくつかから1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気にプロトンが移動し、この時に、多価分析種カチオンまたは正電荷イオンのうちの少なくともいくつかの電荷状態が低減される、のいずれかである。
【0020】
1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基蒸気は、好ましくは、(i)1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、(ii)2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{別名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}、および(iii)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){別名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}からなる群から選択される。
【0021】
第1のイオンは、1つ以上の(i)多価イオン、(ii)2価イオン、(iii)3価イオン、(iv)4価イオン、(v)5個の電荷を有するイオン、(vi)6個の電荷を有するイオン、(vii)7個の電荷を有するイオン、(viii)8個の電荷を有するイオン、(ix)9個の電荷を有するイオン、(x)10個の電荷を有するイオン、または(xi)10個を超える電荷を有するイオンを含むか、または主に含むのが好ましい。
【0022】
第1のイオンは、電子移動解離による親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションから生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを好ましくは含み、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、大多数のc−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはz−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを含む。
【0023】
電子移動解離の過程において、
(a)親イオンまたは分析種イオンが、試薬イオンとの相互作用時にフラグメンテーションされるかまたは解離するように誘導されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(b)電子が、1つ以上の試薬アニオンまたは負電荷イオンから1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(c)親イオンまたは分析種イオンが、中性試薬ガス分子もしくは中性試薬ガス原子または非イオン性試薬ガスとの相互作用時にフラグメンテーションされるかまたは解離するように誘導されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(d)電子が、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の塩基ガスまたは塩基蒸気から1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(e)電子が、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気から1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(f)電子が、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電のアルカリ金属ガスまたはアルカリ金属蒸気から1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(g)電子が、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電のガス、蒸気または原子から1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電のガス、蒸気または原子は、(i)ナトリウム蒸気またはナトリウム原子、(ii)リチウム蒸気またはリチウム原子、(iii)カリウム蒸気またはカリウム原子、(iv)ルビジウム蒸気またはルビジウム原子、(v)セシウム蒸気またはセシウム原子、(vi)フランシウム蒸気またはフランシウム原子、(vii)C60蒸気またはC60原子、および(viii)マグネシウム蒸気またはマグネシウム原子からなる群から選択される、のいずれかである。
【0024】
一実施形態によると、
(a)試薬アニオンまたは負電荷イオンが、ポリ芳香族炭化水素または置換ポリ芳香族炭化水素から得られ、かつ/あるいは
(b)試薬アニオンまたは負電荷イオンが、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニル−アントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリル、および(xviii)アントラキノンからなる群から得られ、かつ/あるいは
(c)試薬イオンまたは負電荷イオンが、アゾベンゼンアニオンまたはアゾベンゼンラジカルアニオンを含む、のいずれかである。
【0025】
多価分析種カチオンまたは正電荷イオンは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を好ましくは含む。
【0026】
第1のイオンは、衝突誘起解離、電子捕獲解離または表面誘起解離による親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションから生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを含み得、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、大多数のb−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはy−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを含む。
【0027】
好ましさが劣る一実施形態によると、第1のイオンは、親イオンまたは分析種イオンと中性のアルカリ金属蒸気またはセシウム蒸気との相互作用による親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションから生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを含み得る。
【0028】
一実施形態によると、第1のイオンは、負電荷の親イオンまたは分析種イオンに電子を照射して親イオンまたは分析種イオンをフラグメンテーションする電子脱離解離による親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションから生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを含み得る。
【0029】
第1のイオンは、好ましくは、多価の親イオンまたは分析種イオンを含み、親イオンまたは分析種イオンの大多数は、質量分析計の真空チャンバ内での電子移動解離、衝突誘起解離、電子捕獲解離または表面誘起解離によるフラグメンテーションを受けていない。
【0030】
一実施形態によると、質量分析計は、第1のデバイスの上流に配置される電子移動解離デバイスをさらに含み、電子移動解離デバイスは、複数の電極を含む第2のイオンガイドを含む。
【0031】
使用時に、少なくともいくつかの親イオンまたは分析種イオンは、親イオンまたは分析種イオンが第2のイオンガイドを通って移送される際に電子移動解離デバイスにおいてフラグメンテーションされるように好ましくは配置され、親イオンまたは分析種イオンは、カチオンまたは正電荷イオンを含む。
【0032】
電子移動解離デバイスは、一動作モードにおいて、分析種イオンまたは親イオンが第2のイオンガイドを通過する際に親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションを最適化および/または最大化するように構成および適合される制御システムを好ましくはさらに含む。
【0033】
質量分析計は、第1のデバイスの上流かつ電子移動解離デバイスの下流に配置されるイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータを好ましくはさらに含み、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータは、複数の電極を含む第3のイオンガイドを含む。
【0034】
質量分析計は、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドを含む複数の電極の少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかのイオンを第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/またはこれを通って駆動または推進するように構成および適合されるDC電圧デバイスを好ましくはさらに含む。
【0035】
質量分析計は、第1の周波数および第1の振幅を有する第1のAC電圧またはRF電圧を第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドの複数の電極の少なくともいくつかに印加して、使用時にイオンが第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイド内に半径方向に閉じ込められるように構成および適合されるRF電圧デバイスを好ましくはさらに含み、
(a)第1の周波数が、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択され、かつ/あるいは
(b)第1の振幅が、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択され、かつ/あるいは
(c)一動作モードにおいて、隣接または近接する電極には、反対の位相の第1のAC電圧またはRF電圧が供給され、かつ/あるいは
(d)第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドが、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100または>100グループの電極を含み、各グループの電極が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極を含み、かつ各グループにおける少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極には、同じ位相の第1のAC電圧またはRF電圧が供給される、のいずれかである。
【0036】
第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドは、使用時にイオンが移送される少なくとも1つの開口を有する複数の電極を好ましくは含み、
(a)電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に円形、矩形、正方形または楕円形の開口を有し、かつ/あるいは
(b)電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に同じ第1のサイズを有するか、または実質的に同じ第1の面積を有する開口を有し、かつ/または電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に同じ第2の異なるサイズを有するか、または実質的に同じ第2の異なる面積を有する開口を有し、かつ/あるいは
(c)電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、サイズまたは面積がイオンガイドの軸に沿った方向へいくにつれ順次より大きくおよび/またはより小さくなる開口を有し、かつ/あるいは
(d)電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または内寸法を有する開口を有し、かつ/あるいは
(e)電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに離間し、かつ/あるいは
(f)複数の電極のうちの少なくともいくつかが、開口を含み、かつ開口の内径または内寸法の隣接する電極間の中心−中心軸方向間隔に対する比が、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択され、かつ/あるいは
(g)複数の電極の開口の内径が、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドの長軸に沿って1回以上順次増大または低減し、そして次いで順次低減または増大し、かつ/あるいは
(h)複数の電極が、幾何体積を規定し、幾何体積が、(i)1つ以上の球、(ii)1つ以上の扁平楕円体、(iii)1つ以上の扁長楕円体、(iv)1つ以上の楕円体、および(v)1つ以上の不等辺楕円体(scalene ellipsoid)からなる群から選択され、かつ/あるいは
(i)第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドが、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有し、かつ/あるいは
(j)第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドが、少なくとも(i)1〜10個の電極、(ii)10〜20個の電極、(iii)20〜30個の電極、(iv)30〜40個の電極、(v)40〜50個の電極、(vi)50〜60個の電極、(vii)60〜70個の電極、(viii)70〜80個の電極、(ix)80〜90個の電極、(x)90〜100個の電極、(xi)100〜110個の電極、(xii)110〜120個の電極、(xiii)120〜130個の電極、(xiv)130〜140個の電極、(xv)140〜150個の電極、(xvi)150〜160個の電極、(xvii)160〜170個の電極、(xviii)170〜180個の電極、(xix)180〜190個の電極、(xx)190〜200個の電極、および(xxi)>200個の電極を含み、かつ/あるいは
(k)複数の電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さまたは軸方向長さを有し、かつ/あるいは
(l)複数の電極のピッチまたは軸方向間隔が、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドの長軸に沿って1回以上順次低減または増大する、のいずれかである。
【0037】
第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドは、
(a)複数のセグメント化ロッド電極、または
(b)1つ以上の第1の電極、1つ以上の第2の電極、および使用時にイオンが進行する平面に配置される1つ以上の層の中間電極であって、1つ以上の層の中間電極は1つ以上の第1の電極と1つ以上の第2の電極との間に配置され、1つ以上の層の中間電極は1つ以上の層の平面電極またはプレート電極を含み、1つ以上の第1の電極は最上部の電極であり、1つ以上の第2の電極は最下部の電極である、1つ以上の第1の電極、1つ以上の第2の電極、および1つ以上の層の中間電極
のいずれかを好ましくは含む。
【0038】
一実施形態によると、
(a)静的なイオン−中性ガス反応領域またはイオン−中性ガス反応体積が第1のイオンガイドにおいて形成または生成されるか、あるいは
(b)動的なまたは時変のイオン−中性ガス反応領域またはイオン−中性ガス反応体積が第1のイオンガイドにおいて形成または生成される。
【0039】
質量分析計は、
(a)第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドを、一動作モードにおいて、(i)<100mbar、(ii)<10mbar、(iii)<1mbar、(iv)<0.1mbar、(v)<0.01mbar、(vi)<0.001mbar、(vii)<0.0001mbar、および(viii)<0.00001mbarからなる群から選択される圧力に維持し、かつ/あるいは
(b)第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドを、一動作モードにおいて、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>0.01mbar、(vi)>0.001mbar、および(vii)>0.0001mbarからなる群から選択される圧力に維持し、かつ/あるいは
(c)第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドを、一動作モードにおいて、(i)0.0001〜0.001mbar、(ii)0.001〜0.01mbar、(iii)0.01〜0.1mbar、(iv)0.1〜1mbar、(v)1〜10mbar、(vi)10〜100mbar、および(vii)100〜1000mbarからなる群から選択される圧力に維持する
のいずれかに構成および適合されるデバイスを好ましくはさらに含む。
【0040】
一実施形態によると、
(a)第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイド内のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留時間、過渡時間または反応時間は、(i)<1ms、(ii)1〜5ms、(iii)5〜10ms、(iv)10〜15ms、(v)15〜20ms、(vi)20〜25ms、(vii)25〜30ms、(viii)30〜35ms、(ix)35〜40ms、(x)40〜45ms、(xi)45〜50ms、(xii)50〜55ms、(xiii)55〜60ms、(xiv)60〜65ms、(xv)65〜70ms、(xvi)70〜75ms、(xvii)75〜80ms、(xviii)80〜85ms、(xix)85〜90ms、(xx)90〜95ms、(xxi)95〜100ms、(xxii)100〜105ms、(xxiii)105〜110ms、(xxiv)110〜115ms、(xxv)115〜120ms、(xxvi)120〜125ms、(xxvii)125〜130ms、(xxviii)130〜135ms、(xxix)135〜140ms、(xxx)140〜145ms、(xxxi)145〜150ms、(xxxii)150〜155ms、(xxxiii)155〜160ms、(xxxiv)160〜165ms、(xxxv)165〜170ms、(xxxvi)170〜175ms、(xxxvii)175〜180ms、(xxxviii)180〜185ms、(xxxix)185〜190ms、(xl)190〜195ms、(xli)195〜200ms、および(xlii)>200msからなる群から選択され、かつ/あるいは
(b)第2のイオンガイド内で生成または形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留時間、過渡時間または反応時間は、(i)<1ms、(ii)1〜5ms、(iii)5〜10ms、(iv)10〜15ms、(v)15〜20ms、(vi)20〜25ms、(vii)25〜30ms、(viii)30〜35ms、(ix)35〜40ms、(x)40〜45ms、(xi)45〜50ms、(xii)50〜55ms、(xiii)55〜60ms、(xiv)60〜65ms、(xv)65〜70ms、(xvi)70〜75ms、(xvii)75〜80ms、(xviii)80〜85ms、(xix)85〜90ms、(xx)90〜95ms、(xxi)95〜100ms、(xxii)100〜105ms、(xxiii)105〜110ms、(xxiv)110〜115ms、(xxv)115〜120ms、(xxvi)120〜125ms、(xxvii)125〜130ms、(xxviii)130〜135ms、(xxix)135〜140ms、(xxx)140〜145ms、(xxxi)145〜150ms、(xxxii)150〜155ms、(xxxiii)155〜160ms、(xxxiv)160〜165ms、(xxxv)165〜170ms、(xxxvi)170〜175ms、(xxxvii)175〜180ms、(xxxviii)180〜185ms、(xxxix)185〜190ms、(xl)190〜195ms、(xli)195〜200ms、および(xlii)>200msからなる群から選択され、かつ/あるいは
(c)第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドは、(i)<1ms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択されるサイクル時間を有する。
【0041】
一実施形態によると、
(a)一動作モードにおいて、イオンは、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイド内でトラップされるが、実質的にフラグメンテーションおよび/または反応および/または電荷減少がされないように配置および適合され、かつ/あるいは
(b)一動作モードにおいて、イオンは、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイド内で衝突により冷却されるか、または実質的に熱化されるように配置および適合され、かつ/あるいは
(c)一動作モードにおいて、イオンは、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイド内で実質的にフラグメンテーションおよび/または反応および/または電荷減少がされるように配置および適合され、かつ/あるいは
(d)一動作モードにおいて、イオンは、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイドの入口および/または出口に配置される1つ以上の電極によって第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドおよび/または第3のイオンガイド中へおよび/またはそこからパルスとして入射および/または出射されるように配置および適合される。
【0042】
質量分析計は、
(a)第1のデバイスの上流に配置されるイオン源であって、イオン源が、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)熱スプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、および(xx)グロー放電(「GD」)イオン源からなる群から選択されるイオン源、ならびに/あるいは
(b)1つ以上の連続イオン源またはパルスイオン源、ならびに/あるいは
(c)第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオンガイド、ならびに/あるいは
(d)第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン移動度分離デバイスおよび/または1つ以上の電界非対称イオン移動度分光計デバイス、ならびに/あるいは
(e)第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオントラップまたは1つ以上のイオントラッピング領域、ならびに/あるいは
(f)第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の衝突セル、フラグメンテーションセルまたは反応セルであって、1つ以上の衝突セル、フラグメンテーションセルまたは反応セルが、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−準安定イオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−準安定分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−準安定原子反応デバイス、および(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される1つ以上の衝突セル、フラグメンテーションセルまたは反応セル、ならびに/あるいは
(g)質量分析部であって、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元またはリニア四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速式飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部、ならびに/あるいは
(h)第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のエネルギー分析部または静電エネルギー分析部、ならびに/あるいは
(i)第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン検出器、ならびに/あるいは
(j)第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタであって、1つ以上の質量フィルタが、(i)四重極質量フィルタ、(ii)二次元またはリニア四重極イオントラップ、(iii)ポールまたは三次元四重極イオントラップ、(iv)ペニングイオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁場型質量フィルタ、(vii)飛行時間質量フィルタ、および(viii)ウィーンフィルタからなる群から選択される1つ以上の質量フィルタ、ならびに/あるいは
(k)イオンをパルスにして第1のデバイスへ入力するためのデバイスまたはイオンゲート、ならびに/あるいは
(l)実質的に連続なイオンビームをパルスイオンビームに変換するためのデバイス
のいずれかを好ましくはさらに含む。
【0043】
質量分析計は、
(a)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧イオン源、ならびに/あるいは
(b)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のエレクトロスプレーイオン源、ならびに/あるいは
(c)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧化学イオン源、ならびに/あるいは
(d)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のグロー放電イオン源を好ましくはさらに含む。
【0044】
一実施形態によると、分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のグロー放電イオン源が質量分析計の1つ以上の真空チャンバに設けられる。
【0045】
一実施形態によると、質量分析計は、
C−トラップと、
外側樽状電極および同心の内側紡錘状電極を含むオービトラップ質量分析部と
をさらに含み、
第1の動作モードにおいて、イオンは、C−トラップへ移送され、そして次いでオービトラップ質量分析部中へ注入され、かつ
第2の動作モードにおいて、イオンは、C−トラップへ移送され、そして次いで衝突セルまたは電子移動解離デバイスへ移送され、少なくともいくつかのイオンは、フラグメントイオンへフラグメンテーションされ、そして次いでフラグメントイオンは、C−トラップへ移送され、その後オービトラップ質量分析部中へ注入される。
【0046】
質量分析計は、
使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む積層リングイオンガイドであって、電極の間隔が、イオン経路の長さに沿って増大し、かつイオンガイドの上流部分における電極中の開口は、第1の直径を有し、イオンガイドの下流部分における電極中の開口は、第1の直径よりも小さな第2の直径を有し、かつ使用時に反対の位相のAC電圧またはRF電圧が連続した電極に印加される積層リングイオンガイドを好ましくは含む。
【0047】
本発明の一局面によると、複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なコンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムが、制御システムに
第1のイオンを第1のイオンガイド内で1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気と反応させて、第1のイオンの電荷状態を低減させるように構成されるコンピュータプログラムが提供される。
【0048】
本発明の一局面によると、コンピュータによって実行可能な命令が格納されたコンピュータ読み取り可能な媒体であって、命令が、複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能に構成され、コンピュータプログラムが、制御システムに
第1のイオンを第1のイオンガイド内で1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気と反応させて、第1のイオンの電荷状態を低減するように構成されるコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0049】
コンピュ−タ読み取り可能な媒体は、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、(vi)光学ディスク、(vii)ROM、および(viii)ハードディスクドライブからなる群から選択される。
【0050】
本発明の一局面によると、
複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを準備する工程、および
第1のイオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気と反応させて、第1のイオンの電荷状態を低減する工程
を含む質量分析の方法が提供される。
【0051】
本発明の一局面によると、親イオンまたは分析種イオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気と反応させて、親イオンまたは分析種イオンを電子移動解離によってフラグメンテーションさせるように構成および適合される電子移動解離デバイスを含む質量分析計が提供される。
【0052】
中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気は、アルカリ金属蒸気を含み得る。
【0053】
中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気は、セシウム蒸気を含み得る。
【0054】
本発明の一局面によると、
電子移動解離デバイスを準備する工程、および
親イオンまたは分析種イオンを電子移動解離デバイス内で1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気と反応させて、親イオンまたは分析種イオンを電子移動解離によってフラグメンテーションさせる工程を含む質量分析の方法が提供される。
【0055】
中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気は、アルカリ金属蒸気を含み得る。
【0056】
中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気は、セシウム蒸気を含み得る。
【0057】
本発明の一局面によると、
第1のイオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の第1の試薬ガスまたは試薬蒸気と反応させて、第1のイオンの電荷状態を低減するように構成および適合される第1のデバイスであって、複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを含む質量分析計が提供される。
【0058】
第1の試薬ガスまたは試薬蒸気は、揮発性アミンを含み得る。一実施形態によると、第1の試薬ガスまたは試薬蒸気は、トリメチルアミン、トリエチルアミンまたは他のアミンを含み得る。
【0059】
本発明の一局面によると、
複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを準備する工程、および
第1のイオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の第1の試薬ガスまたは試薬蒸気と反応させて、第1のイオンの電荷状態を低減する工程
を含む質量分析の方法が提供される。
【0060】
第1の試薬ガスまたは試薬蒸気は、トリメチルアミンまたはトリエチルアミンを好ましくは含む。
【0061】
超強塩基試薬ガスの使用に関する上述の実施形態の様々な態様は、アミンに関する非強塩基の試薬ガスまたは試薬蒸気に関連する上記実施形態にも同様に当てはまる。
【0062】
上記好適な実施形態によると、電子移動解離(または好ましさが劣るが、別のフラグメンテーションプロセス)によって生じるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを、好ましくは、プロトン移動反応デバイスにおいて非イオン性または非荷電の塩基ガスまたは超強塩基試薬ガスと反応させる。プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを、好ましくは、質量分析計の気相衝突セルにおいて超強塩基試薬ガスと反応させる。超強塩基試薬ガスは、好ましくは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態を低減する効果を有する。このことは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態を低減することが、得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの質量スペクトルデータの質を大幅に単純にして向上させるという効果を有するという点で特に有利である。特に、質量スペクトルデータのスペクトル容量またはスペクトル密度は、著しく改善される。プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態を低減することで、好ましくは、質量分析計の質量分解度要件が低くなる。なぜなら、プロダクトイオンの電荷状態ひいてはプロダクトイオンの質量または質量電荷比を求めるために必要となる分解能が低くなるからである。
【0063】
上記好適な実施形態の別の利点は、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態を低減することにより、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンが、得られる質量スペクトルにおいてより高い質量電荷比値で分布されるようになるということであり、その結果、質量スケールまたは質量電荷比スケールにおいてより大きい分離度が得られ、これにより、質量分解度およびスペクトル密度ひいてはプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの同定が改善される。
【0064】
また、プロトン移動反応によるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷低減を行うために非イオン性または中性の試薬蒸気を使用することも特に有利である。なぜなら、PTR電荷低減プロセスを行うために試薬イオン源が不要であるからである。さらに、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷を低減するために試薬イオンではなく中性試薬ガスを使用することにより、試薬イオンの移動および衝突セルのRF電場内の試薬イオンの閉じ込めに関するあらゆる問題点が解消される。
【0065】
一実施形態によると、親イオンまたは分析種イオンを、中性超強塩基試薬ガスを含む好適なPTRデバイスの上流に好ましくは配置されるETDデバイス内で試薬イオンと相互作用させる。得られるETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、ETDデバイスから好ましくは現れ、かつイオン移動度セパレータまたはイオン移動度分光計を通って移送される際に好ましくは時間的に分離される。ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、次いで、好適な実施形態に係るPTRデバイスに好ましくは送られ、ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、好ましくは、中性試薬ガスと相互作用することによりPTRデバイス内で電荷状態が低減される。
【0066】
上記好適な実施形態に係るETDデバイスおよび/またはPTRデバイスは、2つの隣接するイオントンネル部分を含み得る。第1のイオントンネル部分における電極は、第1の内径を有し、第2の部分における電極は、第2の異なる内径(一実施形態によると、第1の内径よりも小さいかまたは大きいものであり得る)を有し得る。第1および/または第2のイオントンネル部分は、質量分析計の中心長軸全体に対して、傾くか、またはそうでなければ、質量分析計の中心長軸を外れるように配置され得る。これにより、真空チャンバを通って直線的に移動し続ける中性粒子からイオンを分離することが可能となる。
【0067】
異なる種のカチオンおよび/または試薬イオンがETDデバイスの両端からETDデバイス中に入力され得る。
【0068】
上記質量分析計は、デュアルモードイオン源またはツインイオン源を含み得る。例えば、エレクトロスプレーイオン源を使用して正の分析種イオンを生成し、大気圧化学イオン化イオン源を使用して負の試薬イオンを生成し得る。負の試薬イオンは、ETDによって分析種イオンをフラグメンテーションするためにETDデバイスに移動する。また、エレクトロスプレーイオン源、大気圧化学イオン化イオン源またはグロー放電イオン源などの1つのイオン源を使用して、分析種イオンおよび/または次いでETDデバイスに移送される試薬イオンを生成し得る別の実施形態も考えられる。
【0069】
少なくともいくつかの多価分析種カチオンを好ましくはETDデバイス内で少なくともいくつか試薬イオンと相互作用させる。ここで、少なくともいくつかの電子は、好ましくは試薬アニオンから多価分析種カチオンのうちの少なくともいくつかに移動し、この時に、多価分析種カチオンのうちの少なくともいくつかは、好ましくは解離するよう誘起されて、ETDデバイス内でプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成する。得られたETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、比較的高い電荷状態を有し易く、このことは問題となる。なぜなら、質量分析部の分解度が、比較的高い電荷状態を有するETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンを分解するのに不十分となり得るからである。
【0070】
上記好適な実施形態は、ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンの電荷状態を低減するように好ましくは構成されるイオン−中性ガス反応デバイスまたはPTRデバイスに関する。好ましさが劣る実施形態によると、PTRデバイスは、ETD以外のフラグメンテーションプロセスによって生じるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態を低減するように構成され得る。PTRデバイスは、比較的高い電荷状態を有する親イオンまたは分析種イオンの電荷状態を低減するように構成されてもよい。上記好適な実施形態に係るPTRデバイスは、複数の電極を含み、ここで、1つ以上の進行波または静電場がPTRデバイスを好ましくは形成するRFイオンガイドの電極に好ましくは印加され得る。RFイオンガイドは、好ましくは、使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む。1つ以上の進行波または静電場は、上記好適なPTRデバイスを形成するイオンガイドの電極に好ましくは印加される1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を好ましくは含む。
【0071】
一実施形態によると、質量分析計は、互いに反対の電荷を有するイオンを空間的に操作し、好適なPTRデバイスの上流に好ましくは配置されるETDデバイス内でのイオン−イオン反応を容易にし、かつ好ましくは最大化、最適化または最小化するように構成され得る。質量分析計は、好ましくは、イオンの電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションおよび/またはプロトン移動反応(「PTR」)電荷状態低減を行うように構成および適合される。
【0072】
負電荷の試薬イオン(または、中性試薬ガス)が、好適な実施形態に係るPTRデバイスの上流に好ましくは配置されるイオン−イオン反応(またはイオン−中性ガス)ETDデバイス中に装填されるか、またはそうでなければ、提供または配置され得る。負電荷の試薬イオンは、例えば、1つのDC進行波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位をETDデバイスを形成する電極に印加することによって、ETDデバイス中へ移送され得る。
【0073】
一旦試薬アニオン(または、中性試薬ガス)がETDデバイス中へ装填されると、次いで多価分析種カチオンが好ましくは1つ以上の後のまたは独立したDC進行波によってETDデバイスを通ってまたはその中へ駆動または推進され得る。1つ以上のDC進行波は、好ましくはETDデバイスの電極に印加される。試薬イオンは、負電位をイオンガイドの一端または両端に印加することによってETDデバイス内に好ましくは滞留される。
【0074】
ETDデバイスに印加される1つ以上のDC進行波は、好ましくはイオンをETDデバイスの軸方向長さの少なくとも一部に沿って並進または推進させるような1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を好ましくは含む。したがって、イオンは、好ましくはETDデバイスの長さに沿って逐次電極に印加される1つ以上の実電位障壁またはDC電位障壁によって、ETDデバイスの長さに沿って有効に並進される。これにより、DC電位障壁間にトラップされた正電荷の分析種イオンは、好ましくはETDデバイスの長さに沿って並進され、かつ好ましくはETDデバイスデバイス中または内にすでに存在する負電荷の試薬イオン(または、中性試薬ガス)を通ってかつこれに近接して好ましくは駆動または推進される。
【0075】
イオン−イオン反応および/またはイオン−中性ガス反応のための最適な状態が、DC進行波の速さ、速度または振幅を変更することによってETDデバイスデバイス内に実現され得る。試薬アニオン(または、試薬ガス)および分析種カチオンの運動エネルギーを、厳密に一致させ得る。電子移動解離プロセスから得られるETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンの滞留時間は、ETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンが通常のようには中性化されないように慎重に制御され得る。電子移動解離プロセスから得られる正電荷のETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンは、形成された後もETDデバイスに過度に長く残留させると、中性化される可能性が高い。
【0076】
負電位または負電位障壁は、ETDデバイスの前(例えば、上流)端およびまた後(例えば、下流)端に必要に応じて印加され得る。負電位または負電位障壁は、好ましくは、ETDデバイス内に負電荷の試薬イオンを閉じ込めるように働き、同時にETDデバイス内に生成された正電荷のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンがETDデバイスから比較的速く現れるかまたは出射することを可能にするか、またはそうさせる。また、ETDデバイス内で分析種イオンが中性ガス分子と相互作用し、電子移動解離および/またはプロトン移動反応を受け得る他の実施形態も考えられる。ETDデバイス内に中性試薬ガスが提供される場合、ETDデバイスの端部に電位障壁が提供されてもよいし、またはされなくてもよい。
【0077】
負電位または負電位障壁がETDデバイスの前(例えば、上流)端のみに印加され得るかあるいは負電位または負電位障壁がETDデバイスの後(例えば、下流)端のみに印加され得る。1つ以上の負電位または負電位障壁がETDデバイスの長さに沿って異なる位置に維持され得る他の実施形態が考えられる。
【0078】
正の分析種イオンが1つ以上の正電位によってETDデバイス内に滞留され、そして次いで試薬イオンまたは中性試薬ガスがETDデバイス中へ導入され得ることも考えられる。
【0079】
2つの静電進行波またはDC進行波がETDデバイスの電極に実質的に同時に印加され得る。進行波静電場または過渡DC電圧波形は、イオンを、例えば、ETDデバイスの中心領域へ、実質的に同時に互いに反対の方向に移動または並進させるように構成され得る。
【0080】
好ましくは、ETDデバイスおよび好適な実施形態に係るPTFデバイスは、好ましくはAC電圧またはRF電圧が供給される複数の積層リング電極を含む。電極は、好ましくは使用時にイオンが移送される開口を含む。イオンは、好ましくは、反対の位相のAC電圧またはRF電圧を隣接する電極に印加して、半径方向の擬電位障壁を好ましくは生成することによって、ETDデバイス内および好適なPTFデバイス内に半径方向に閉じ込められる。半径方向の擬電位障壁は、好ましくは、イオンがETDデバイスおよび好適なPTFデバイスの中心長軸に沿って半径方向に閉じ込められるようにする。
【0081】
2つの異なる分析種試料がETDデバイスの異なる端から導入され得る。さらに、もしくはあるいは、2つの異なる種の試薬イオンがETDデバイスの異なる端からETDデバイス中へ導入され得る。
【0082】
DC進行波パラメータ(すなわち、電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧または過渡DC電位のパラメータ)は、上記好適な実施形態によると、ETDデバイスにおけるカチオンおよびアニオン(または、分析種カチオンおよび中性試薬ガス)間の相対的なイオン速度ならびに好適なPTRデバイスにおけるETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンと中性試薬ガス分子との間の相対的な速度を制御できるように最適化され得る。ETDデバイスにおけるカチオンおよびアニオンまたはカチオンおよび中性試薬ガス間の相対的なイオン速度は、電子移動解離の実験において反応速度定数を好ましくは決定する重要なパラメータである。また同様に、好適なPTRデバイスにおけるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンと中性試薬ガスとの間の相対的な速度は、PTRデバイスにおいてプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態が低減される度合いを決定する。
【0083】
また、ETDデバイスおよび/または好適なPTRデバイスのいずれかにおけるイオン−中性衝突の速度が、高速進行波または定在DC波もしくは静的DC波のいずれかを使用して増大され得る他の実施形態も考えられる。また、このような衝突を利用して、衝突誘起解離(「CID」)を促進し得る。特に、電子移動解離またはプロトン移動反応から得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、非共有結合を形成し得る。次いで、これらの非共有結合は、衝突誘起解離によって切断され得る。衝突誘起解離は独立した衝突誘起解離セルにおいてまたは好適なPTRデバイスにおいて電子移動解離のプロセスに対して空間的に逐次行われ、かつ/あるいは同じETDデバイスにおいて電子移動解離プロセスに対して時間的に逐次行われ得る。
【0084】
ETD試薬および分析種イオンは、同じイオン源または2つ以上の独立したイオン源によって生成され得る。
【0085】
一実施形態によると、プロダクトイオンスペクトルにおいて、電荷が減少したカチオンまたは電荷が減少した分析種イオンの強度の電荷の減少のない親カチオンの強度に対する比をリアルタイムに監視するデータ指向分析(「DDA」)が実行され得る。この比を利用して、ETDデバイス内の電子移動解離の度合いおよび/または好適なPTRデバイスにおけるプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンの電荷状態の低減の度合いを調整する機器パラメータを制御し得る。これにより、フラグメントイオン効率は、リアルタイムにかつ液体クロマトグラフィ(LC)のピーク溶出時間スケールと同等の時間スケールで最大化または制御され得る。
【0086】
電荷が減少した分析種カチオンの親分析種カチオンに対する存在度の比にもとづいて、フラグメントイオンおよび/または電荷が減少したイオンの存在度を最大化または変更する機器パラメータのリアルタイムフィードバック制御を実行し得る。
【0087】
ここで、添付の図面を参照し、本発明の種々の実施形態を、あくまで例として、説明する。
【0088】
図1は、2つの過渡DC電圧または過渡DC電位が好適なPTRデバイスの上流に配置されたETDデバイスの電極に同時に印加され、分析種カチオンおよび試薬アニオンがともにETDデバイスの中心領域に運搬されることを示す。
【0089】
図2は、ETDデバイスの電極に印加される進行DC電圧波形を使用して、正イオンおよび負イオンがETDデバイス内で同じ方向に同時に並進され得る様子を例示する。
【0090】
図3は、好適なPTRデバイスの上流に配置されるETDデバイスのSIMION(登録商標)シミュレーションの断面図を示す。ここで、2つの進行DC電圧波形が同時にETDデバイスの電極に印加され、かつ進行DC電圧波形の振幅がETDデバイスの中心に向かって順次低減する。
【0091】
図4は、エレクトロスプレーイオン源を使用して分析種イオンを生成し、かつETD試薬イオンが質量分析計の入力真空チャンバ内に位置するグロー放電領域において生成される本発明の一実施形態に係る質量分析計のイオン源段および最初の真空段を示す。
【0092】
図5は、本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。ここで、ETD試薬アニオンおよび分析種カチオンは、ETD衝突セル内で反応するように構成され、そして次いで、得られたETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、イオン移動度分光計内において時間的に分離された後、本発明の好適な一実施形態に係る中性試薬ガスを含むPTRセルに送られる。
【0093】
図6は、本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。ここで、イオンはトラップセルにおいて電子移動解離によりフラグメンテーションされ、かつ得られたETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、本発明の好適な一実施形態に係る中性試薬ガスを含む下流のPTRセルに移動する。
【0094】
図7Aは、高電荷のPEG20Kのイオンを本発明の好適な一実施形態にしたがってプロトン移動反応によって中性超強塩基ガスと反応させて当該イオンの電荷状態を低減した後に得られた質量スペクトルを示し、図7Bは、中性超強塩基ガスを用いた電荷状態の低減を行わなかったPEG20Kのイオンの対応する質量スペクトルを示す。
【0095】
本発明は、ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンの電荷状態を低減するための中性試薬ガスを含むPTRデバイスに主に関するが、ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンがどのようにして最初に生成されるかを説明するために、上記好適なPTRデバイスの上流に好ましくは配置されるETDデバイスの種々の態様についてまず説明する。
【0096】
図1は、上記本発明の好適な実施形態に係る中性試薬ガスを含むプロトン移動反応(「PTR」)デバイスの上流に好ましくは配置される積層リングイオンガイド電子移動解離(「ETD」)デバイス2を共に構成するレンズ素子またはリング電極1の断面図を示す。
【0097】
ETDデバイス2は、好ましくは、使用時にイオンが移送される1つ以上の開口を有する複数の電極1を含む。デジタル電圧パルスパターンまたは列7が、好ましくは、使用時に電極1に印加される。デジタル電圧パルス7は、好ましくは、電極1に対して、段階的に逐次印加され、かつ好ましくは矢印6で示されるように逐次印加される。以下により詳しく説明される図3にも示されるように、第1のDC進行波8または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列が、ETDデバイス2の第1の(上流)端からETDデバイス2の中央へ向かって時間とともに移動するように構成され得る。同時に、第2のDC進行波9または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列が必要に応じてETDデバイス2の第2の(下流)端からETDデバイス2の中央へ向かって時間とともに移動するように構成され得る。これにより、2つのDC進行波8、9または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列は、ETDデバイス2の両側からETDデバイス2の中央領域または中心領域へ向かって収束するように構成され得る。
【0098】
図1は、好ましくは時間の関数として(例えば、電子タイミングクロックが進行するにつれて)ETDデバイス2の電極1に印加されるデジタル電圧パルス7を示す。デジタル電圧パルス7のETDデバイス2の電極1への時間の関数としての印加が進行する様子は、好ましくは矢印6によって示される。第1の時間T1において、T1によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。後の時間T2において、T2によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。後の時間T3において、T3によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。最後に、後の時間T4において、T4によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。電圧パルス7は、好ましくは、図示のように方形波電位プロフィ−ルを有する。
【0099】
電極1に印加されるデジタルパルス7の強度または振幅は、ETDデバイス2の中央または中心に向かって低減するように構成され得る。これにより、好ましくはETDデバイス2の入力領域または出口領域に近接する電極1に印加されるデジタル電圧パルス7の強度または振幅は、好ましくは、ETDデバイス2の中心領域における電極1に好ましくは印加されるデジタル電圧パルス7の強度または振幅よりも大きい。好ましくは電極1に印加される過渡DC電圧もしくは過渡DC電位またはデジタル電圧パルス7の振幅が、ETDデバイス2の長さに沿って軸方向に離れても低減しない他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、デジタル電圧パルス7の振幅は、ETDデバイス2の長さに沿って軸方向に離れても実質的に一定のままである。
【0100】
好ましくはETDデバイス2のレンズ素子またはリング電極1に印加される電圧パルス7は、好ましくは方形波を含む。ETDデバイス2内の電位は、ETDデバイス2内の波動関数電位が好ましくは滑らかな関数となるように、好ましくは緩和する。
【0101】
一実施形態によると、分析種カチオン(例えば、正電荷の分析種イオン)および/または試薬アニオン(例えば、負電荷の試薬イオン)は、ETDデバイス2の両端からETDデバイス2中へ同時に導入され得る。一旦ETDデバイス2に入ると、正イオン(カチオン)は、好ましくはETDデバイス2の電極1に印加されるDC進行波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の正(山)の電位によって、反発される。静電進行波がETDデバイス2の長さに沿って移動するにつれ、正イオンは、好ましくは、ETDデバイス2に沿って、進行波と同じ方向にかつ実質的に図2に示すように推進される。
【0102】
負電荷の試薬イオン(すなわち、試薬アニオン)は、進行DC電圧または進行DC電位がETDデバイス2の長さに沿って移動するにつれ、進行波の正電位へ向かって引きつけられ、かつ同様に進行波の方向へ牽引、駆動または引きつけられる。これにより、正イオンは、好ましくは図2に示すような進行DC波の負の山(正の谷)において進行する一方、負イオンは、好ましくは、進行DC波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の正の山(負の谷)において進行する。
【0103】
2つの互いに反対方向へ進行するDC波8、9は、ETDデバイス2の両端からETDデバイス2の中央または中心に向かって実質的に同時にイオンを並進させるように構成され得る。進行DC波8、9は、好ましくは、互いに向かって移動するように構成され、かつETDデバイス2の中心領域に有効に収束または併合すると考えられ得る。カチオンおよびアニオンは、好ましくは、ETDデバイス2の中央へ向かって同時に搬送される。分析種カチオンが反応デバイスの異なる端から同時に導入され得る、好ましさが劣る実施形態が考えられる。好ましさが劣るこの実施形態によると、分析種イオンは、反応デバイス内に存在するかまたは後に反応デバイスに付加される中性試薬ガスと反応し得る。別の実施形態によると、2つの異なる種の試薬イオンがETDデバイス2中へETDデバイス2の異なる端から(同時にまたは後で)導入され得る。
【0104】
一実施形態によると、分析種カチオンは、第1の進行DC波8によってETDデバイス2の中心へ向かって並進され得、試薬アニオンは、第2の異なる進行DC波9によってETDデバイス2の中心へ向かって並進され得る。
【0105】
分析種カチオンおよび試薬アニオンの両方が第1のDC進行波8によってETDデバイス2の中心(または他の領域)へ向かって同時に並進され得る他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、他の分析種カチオンおよび/または試薬アニオンが、必要に応じて、任意の第2のDC進行電圧波9によってETDデバイス2の中心(または他の領域)へ向かって同時に並進され得る。そこで、例えば、一実施形態によると、試薬アニオンおよび分析種カチオンは、他の試薬アニオンおよび分析種カチオンが好ましくは第1の方向とは反対の第2の方向に好ましくは移動する第2のDC進行波9によって同時に並進されるのと同時に、第1のDC進行波8によって第1の方向へ同時に並進され得る。
【0106】
イオンがETDデバイス2の中央領域または中心領域に近づくにつれ、進行波8、9の推進力は、低減するようにプログラムされ得、かつETDデバイス2の中心領域における進行波の振幅は、実質的にゼロとなるか、またはそうでなければ少なくとも著しく低減されるように構成され得る。これにより、進行波の谷およびピ−クは、好ましくは、ETD反応デバイス2の中央(中心)において実質的に消失する(または、そうでなければ著しく低減する)ので、反対の極性(または、好ましさが劣るが同じ極性)のイオンを、次いで好ましくはETDデバイス2の中心領域内で併合させかつ相互作用させる。任意のイオンが、例えば、バッファガス分子との多数回衝突または高い空間電荷効果によってETDデバイス2の中央領域または中心領域から離れて軸方向にランダムに迷走すると、これらのイオンは、次いで、好ましくは、イオンをETDデバイス2の中心へ向かって戻るように並進または駆動する効果を有する次の進行DC波を受ける。
【0107】
正の分析種イオンは、第1の方向へ移動するように構成される第1のDC進行波8によってETDデバイス2の中心へ向かって並進され得、負の試薬イオンは、第1の方向とは反対で有り得る第2の方向へ移動するように構成される第2のDC進行波9によってETDデバイス2の中心へ向かって並進されるように構成され得る。
【0108】
特に好適な実施形態によると、2つの互いに反対方向のDC進行波8、9をETDデバイス2の電極1に印加する代わりに、1つのDC進行波がETDデバイス2の電極1に任意の特定の時刻に印加され得る。この実施形態によると、負電荷の試薬イオン(または、好ましさが劣るが正電荷の分析種イオン)が先にETDデバイス2中へ装填または導かれ得る。試薬アニオンは、好ましくは、DC進行波によってETDデバイス2の入口領域からETDデバイスに沿ってまたはこれを通って並進される。試薬アニオンは、ETDデバイス2の反対端または出口端に負電位を印加することによって、ETDデバイス2内に好ましくは滞留される。試薬アニオン(または、好ましさが劣るが分析種カチオン)がETDデバイス2中に装填された後、正電荷の分析種イオン(または、好ましさが劣るが負電荷の試薬イオン)が、次いで、好ましくは、電極1に印加された1つのDC進行波または複数の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位によって、ETDデバイス2に沿ってまたはこれを通って並進される。
【0109】
試薬アニオンおよび分析種カチオンを並進させるDC進行波は、好ましくはETDデバイス2の電極1に印加される1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を好ましくは含む。DC進行波のパラメータおよび、特に、過渡DC電圧または過渡DC電位がETDデバイス2の長さに沿って電極1に印加される速さまたは速度を変更または制御して、負電荷の試薬イオンと正電荷の分析種イオンとの間のイオン−イオン反応を最適化、最大化または最小化し得る。これにより、ETDデバイス2内のETDプロセスを慎重に制御することができる。
【0110】
ETDデバイス2内での分析種カチオンと試薬アニオンとの間のイオン−イオン相互作用から得られるフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、好ましくはDC進行波によって、かつ好ましくは得られたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンが中性化される前に、好ましくはETDデバイス2から掃き出される。また、未反応の分析種イオンおよび/または未反応の試薬イオンは、所望の場合に、ETDデバイス2から好ましくはDC進行波によって取り出され得る。
【0111】
一実施形態によると、負電位を必要に応じてETDデバイス2の一端または両端に印加して、負電荷イオンをETDデバイス2内に滞留させ得る。また、印加される負電位は、好ましくは、ETDデバイス2内において生成または形成された正電荷のETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンを促進または駆動して、ETDデバイス2の一端または両端を介してETDデバイス2から出射させる効果を有する。
【0112】
一実施形態によると、ETD正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、形成されてから約30ms以内にETDデバイス2を出射するように構成されることにより、正電荷のETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンがETDデバイス2内で中性化されることを回避し得る。しかし、ETDデバイス2内で形成されたETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンがETDデバイス2からより短時間で、例えば、0〜10ms、10〜20msまたは20〜30msの時間スケール内で出射するように構成され得る他の実施形態が考えられる。あるいは、ETDデバイス2内で形成されたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、ETDデバイス2からより遅く、例えば、30〜40ms、40〜50ms、50〜60ms、60〜70ms、70〜80ms、80〜90ms、90〜100msまたは>100msの時間スケール内で出射するように構成され得る。
【0113】
ETDデバイス2内におけるイオンの動き、およびETDデバイス2を通るイオンの動きは、SIMION8(登録商標)を使用してモデル化されている。図3は、ETDデバイス2を形成する一列のリング電極1の断面図である。SIMION8(登録商標)を使用して実質的に図3に示すように配置されたETDデバイス2を通るイオンの動きをモデル化した。また、図3は、ETDデバイス2を形成する電極1に順次印加されるものとしてモデル化された2つの収束DC進行波電圧8、9または過渡DC電圧列8、9を示す。DC進行波電圧8、9は、ETDデバイス2の中心へ向かって収束するものとしてモデル化し、かつETDデバイス2の両端からETDデバイス2の中心へ向かってイオンを同時に並進させる効果を有した。
【0114】
一実施形態によると、ETDデバイス2は、ステンレス鋼から形成される複数の積層導電性円形リング電極1を含み得る。リング電極は、例えば、ピッチが1.5mm、厚さが0.5mm、中心開口径が5mmであってもよい。進行波プロフィールは、ETDデバイス2の中央または中心に向かう等価な波の速度が300m/sとなり得るよう、5μs間隔で進行するように構成され得る。アルゴンバッファガスが、ETDデバイス2内に0.1mbarの圧力で提供され得る。ETDデバイス2の長さは、90mmであってもよい。印加される電圧パルスの通常の振幅は、10Vであってもよい。イオンがETDデバイス2内に半径方向にかつ半径方向の擬電位谷内に閉じ込められるように、互いに反対の位相の100VのRF電圧がETDデバイス2を構成する隣接する電極1に印加され得る。
【0115】
任意のイオン−イオン反応(または、好ましさが劣るがイオン−中性ガス反応)がETDデバイス2内で発生するとすぐに、任意の得られたETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンはETDデバイス2の反応体積から遠ざかるように好ましくは比較的短時間で掃き出されるか、またはそうでなければ、並進されるように好ましくは配置される。好適な一実施形態によると、その結果得られたETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、好ましくは、ETDデバイス2から出射され、そして次いで好適な実施形態に係るPTRデバイスへ前方移送され得る。ETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンの電荷状態は、中性超強塩基ガスと相互作用することによって好適なPTRデバイス内で好ましくは低減される。次いで、電荷状態が低減したETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンは、後の質量分析および/または検出のために、好ましくは、好適なPTRデバイスから飛行時間質量分析部などの質量分析部またはイオン検出器へと前方移送される。
【0116】
ETDデバイス2内で形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、種々の方法でETDデバイス2から引き出され得る。2つの互いに反対のDC進行電圧波8、9がETDデバイス2の電極1に印加される実施形態に関して、ETDデバイス2の下流領域または出口領域に印加されるDC進行波9の進行方向は、反転され得る。また、DC進行波の振幅は、ETDデバイス2の長さに沿って正規化され、ETDデバイス2は、次いで従来の進行波イオンガイドとして有効に動作し、すなわち、1つの方向へ移動する1つの一定の振幅DC進行電圧波がETDデバイス2の長さの実質的に全体にわたって提供され得る。
【0117】
同様に、1つのDC進行電圧波がまず試薬アニオンをETDデバイス2に装填し、そして次いでその後に分析種カチオンが同じDC進行電圧波によってETDデバイス2中へ装填されるか、またはそこを通って移送される実施形態に関して、次いでその1つのDC進行電圧波はまた、ETDデバイス2内で生成された正電荷のETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンを引き出すように働く。DC進行電圧波の振幅は、一旦ETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオンがETDデバイス2内で生成されると、ETDデバイス2の長さに沿って正規化され、したがって、次いで、ETDデバイス2は、従来の進行波イオンガイドとして有効に動作する。
【0118】
イオンは、進行波の場によって、十分に高い圧力(例えば、>0.1mbar)に維持されたイオンガイドを通って並進されると、そのイオンの移動度の順に進行波イオンガイドの端から現れ得ることが示されている。比較的高いイオン移動度を有するイオンは、好ましくは比較的低いイオン移動度を有するイオンよりも先にイオンガイドから現れる。したがって、ETDデバイス2の中心領域において生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのイオン移動度分離を活用することによって、感度およびデューティサイクルの向上などのさらなる分析上の利点が得られ得る。
【0119】
一実施形態によると、イオン移動度分光計またはイオン移動度分離段がETDデバイス2の上流および/または下流に設けられ得る。例えば、一実施形態によると、ETDデバイス2内に形成され、そしてその後にETDデバイス2から引き出されたETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、次いで好ましくはETDデバイス2の下流かつ好適な実施形態に係る中性試薬ガスを含むPTRデバイスの上流に配置されたイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータにおいて、そのイオン移動度(または、好ましさが劣るが電場強度とともに変化するイオン移動度の変化率)に応じて分離され得る。
【0120】
一実施形態によると、ETDデバイス2を構成するリング電極1の内部開口の直径は、ETDデバイス2の長さに沿った電極の位置とともに順次増大するように構成され得る。開口径は、例えば、ETDデバイス2の入口部分および出口部分にてより小さく、かつETDデバイス2の中心または中央により近いところで比較的より大きくなるように構成され得る。これは、ETDデバイス2の中心領域内でイオンが受けるDC電位の振幅を低減し、他方上記の種々の電極1に印加されるDC電圧の振幅が実質的に一定に維持され得るという効果を有する。したがって、進行波イオンガイド電位は、ETDデバイス2の中央領域または中心領域で最小となる。
【0121】
別の実施形態によると、リング開口径および電極1に印加される過渡DC電圧または過渡DC電位の振幅はいずれも、ETDデバイス2の長さに沿って変更され得る。
【0122】
リング電極の開口の直径がETDデバイス2の中心に向かって増大する実施形態では、中心軸の近くのRF場も低減する。これにより、ETDデバイス2の中心領域におけるイオンのRFによる加熱が小さくなるという利点がある。この効果は、電子移動解離タイプの反応を最適化し、かつ衝突誘起反応を最小化するのに特に有利であり得る。
【0123】
ETDデバイス2内の焦点または反応領域の位置は、ETDデバイス2の長さに沿って時間の関数として軸方向に移動または変更され得る。これは、イオンがETDデバイス2を通って、中心反応領域内に止まることなく、連続的に流れるか、または通過するように構成され得るという利点がある。これにより、分析種イオンおよび試薬イオンをETDデバイス2の入口に導入し、そしてETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンをETDデバイス2の出口から射出するプロセスを連続的に行うことが可能となる。焦点の並進移動の速度などの種々のパラメータを変更または制御して、ETDイオン−イオン反応効率を最大化または最小化し得る。焦点の動きは、適切なレンズまたはリング電極1に印加される電圧を切り換えまたは制御することによって段階的に電子的に実現または制御され得る。
【0124】
電子移動解離反応から得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、好ましくは、ETDデバイス2の出口から現れ、かつ、次いで、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態が低減される好適な実施形態に係る中性試薬ガスを含むPTRデバイスに移送されるように構成される。次いで、イオンは、例えば、飛行時間質量分析部へ前方移送される。システム全体の感度を上げるために、ETDデバイス2からおよび/または好適なPTRデバイスからイオンを放出するタイミングは、直交加速式飛行時間質量分析部の押し込み電極と同期化され得る。
【0125】
一実施形態によると、ETDデバイス2中に入力される分析種カチオンおよび試薬アニオンは、独立したイオン源または異なるイオン源から生成され得る。カチオンおよびアニオンの両方を別個のイオン源からETDデバイス2中へ効率的に導入するために、さらなるイオンガイドがETDデバイス2の上流(および/または下流)に設けられ得る。このさらなるイオンガイドは、異なる位置の別個のイオン源からの両方の極性を有するイオンを同時にかつ連続的に受け取り、そして移動させ、そして分析種および試薬イオンの両方をETDデバイス2中へ導くように構成され得る。
【0126】
進行DC電圧波を積層リングRFイオンガイドの電極に印加するステップを含む実験によって、進行DC波電圧パルスの振幅を増大するステップおよび/またはイオン反応体積内の進行DC波電圧パルスの速さを増大するステップによって、イオン−イオン反応速度を低減、または必要に応じて停止さえし得るが示されている。これは、進行DC電圧波によって分析種カチオンの試薬アニオンに対する相対速度が局所的に増大し得るという事実に基づく。イオン−イオン反応速度は、カチオンおよびアニオン間の相対速度の3乗に反比例することが示されている。
【0127】
また、進行DC電圧波の振幅および/または速さを増大するステップは、カチオンおよびアニオンのETDデバイス2における滞在時間をともに低減し、かつしたがって反応効率を低減する効果を有し得る。
【0128】
ETDデバイス2内のイオン−イオン反応は、ETD反応デバイス2の電極1に印加される1つ以上のDC進行波の振幅および/または速さを変更することによって制御、最適化、最大化、または最小化され得る。進行DC波の場の振幅を電子的に制御する代わりに、その場の振幅が内径または軸方向間隔が変化する積層リング電極を利用することによって機械的に制御される他の実施形態が考えられる。リングスタックまたはリング電極1の開口の直径が増大するように構成される場合、同じ振幅電圧がすべての電極1に印加されるとすると、イオンが受ける進行波振幅は低減する。
【0129】
1つ以上の進行DC電圧波の振幅がさらに増大され、そして進行DC電圧波の速度が次いで急激にゼロに低減され、定常波が有効に生成され得る。反応体積中のイオンは、ETD反応デバイス2の軸に沿って繰り返し加速され、そして次いで減速され得る。この方法を使用して、ETD反応デバイス2の内部に生成または形成されるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの内部エネルギーを増加させ、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを衝突誘起解離(CID)のプロセスによってさらに分解させ得る。衝突誘起解離のこの方法は、電子移動解離から生じ得る非共有結合されたプロダクトのイオンまたはフラグメントイオンを分離する際にとくに有用である。予め電子移動解離反応させた前駆イオンは、しばしば部分的に分解し(特に、1価および2価前駆イオン)、そして部分的に分解したイオンは、互いに非共有結合したままであり得る。
【0130】
対象の非共有結合されたプロダクトのイオンまたはフラグメントイオンは、進行DC波がイオンを輸送する通常モードにおいて働くことによってETD反応デバイス2から掃き出されている際に、互いに分離され得る。これは、進行波の速度を十分に高い値に設定して、イオン−分子衝突を発生させ、これにより非共有結合されたフラグメントのイオンまたはプロダクトイオンの分離を誘発することによって実現され得る。
【0131】
分析種イオンおよび試薬イオンは、同じイオン源によって、または質量分析計の共通のイオン生成部もしくはイオン源によって生成され得る。例えば、分析種イオンは、エレクトロスプレーイオン源によって生成され得、ETD試薬イオンは、好ましくはエレクトロスプレーイオン源の下流に配置されたグロー放電領域において生成され得る。図4は、分析種イオンがエレクトロスプレーイオン源によって生成される一実施形態を示す。エレクトロスプレーイオン源のキャピラリ14は、好ましくは+3kVに維持される。好ましくは、分析種イオンは、好ましくは0Vに維持された質量分析計の試料コーン15へ向かって牽引される。イオンは、好ましくは試料コーン15を通って、そして好ましくは真空ポンプ17によってポンプされた真空チャンバ16中へ移動する。高電圧源に接続されたグロー放電ピン18は、好ましくは、真空チャンバ16内の試料コーン15の近くかつ下流に配置される。一実施形態によると、グロー放電ピン18は、−750Vに維持され得る。試薬源19からの試薬は、好ましくはグロー放電ピン18の近くに配置された真空チャンバ16中へ流出されるか、またはそうでなければ供給される。これにより、ETD試薬イオンは、好ましくは、真空チャンバ16内のグロー放電領域20において生成される。次いで、ETD試薬イオンは、好ましくは引き出しコーン21を通って引き出され、そしてさらなる下流真空チャンバ22中へ移動する。イオンガイド23が、好ましくはさらなる真空チャンバ22中に配置される。次いで、ETD試薬イオンは、好ましくは質量分析計のさらなる段24へ前方移送され、そしてその後ETD試薬イオンを分析種イオンと反応させて分析種イオンをETDによってフラグメンテーションするETDデバイスに好ましくは移送される。
【0132】
デュアルモードイオン源またはデュアルイオン源が設けられ得る。例えば、エレクトロスプレーイオン源を使用して、分析種(または、ETD試薬)イオンを生成し得、大気圧化学イオン化イオン源を使用してETD試薬(または、分析種)イオンを生成し得る。負電荷のETD試薬イオンは、ETDデバイスの電極に印加される1つ以上の進行DC電圧または過渡DC電圧によって、ETDデバイス中へ渡され得る。負DC電位をETDデバイスに印加して、負電荷の試薬イオンをETDデバイス内に滞留させ得る。次いで、正電荷の分析種イオンは、1つ以上の進行DC電圧または過渡DC電圧をETDデバイスの電極に印加することによって、ETDデバイス中に入力され得る。正電荷の分析種イオンは、好ましくは、滞留されず、かつETDデバイスから出射するのを妨げられないようにされる。ETDデバイスの電極に印加される進行DC電圧または過渡DC電圧の種々のパラメータを最適化または制御して、電子移動解離によって分析種イオンのフラグメンテーションの度合いを最適化、最大化または最小化し得る。
【0133】
グロー放電イオン源を使用してETD試薬イオンおよび/または分析種イオンを生成する場合、イオン源のピン電極18は、±500〜700Vの電位に維持され得る。グロー放電イオン源の電位は、正電位(カチオンを生成するため)と負電位(アニオンを生成するため)との間で比較的急速に切り換えられ得る。
【0134】
デュアルモードイオン源またはデュアルイオン源が設けられる場合、そのイオン源が、約50msごとに、モード間で切り換えられ得る(またはそのイオン源が互いに切り換えられ得る)。イオン源は、<1ms、1〜10ms、10〜20ms、20〜30ms、30〜40ms、40〜50ms、50〜60ms、60〜70ms、70〜80ms、80〜90ms、90〜100ms、100〜200ms、200〜300ms、300〜400ms、400〜500ms、500〜600ms、600〜700ms、700〜800ms、800〜900ms、900〜1000ms、1〜2s、2〜3s、3〜4s、4〜5s、または>5sの時間スケールで、モード間で切り換えられ得る(またはイオン源は互いに切り換えられ得る)。あるいは、1つ以上のイオン源のONおよびOFFを切り換える代わりに、その1つ以上のイオン源が実質的にONのままにされ得、バッフルまたは回転イオンビームブロックなどのイオン源セレクタデバイスが使用され得る。例えば、2つのイオン源がONのままにされ得るが、イオンビームセレクタは、任意の特定の時刻にイオンがイオン源のうちの一方から質量分析計へ移送されることだけを可能にしてもよい。あるイオン源がONのままにされ、別のイオン源が繰り返しONおよびOFFに切り換えられ得る、さらなる実施形態が考えられる。
【0135】
また、デュアルモードイオン源がモード間で切り換えられ得るか、または2つのイオン源が対称または非対称にON/OFFを切り換えられ得る別の実施形態が考えられる。例えば、一実施形態によると、親イオンまたは分析種イオンを生成するイオン源は、デューティサイクルの約90%の間、ONのままにされ得る。デューティサイクルの残りの10%の間、分析種イオンを生成するイオン源は、OFFに切り換えられ得、そしてETD試薬イオンは、ETDデバイス内の試薬イオンを補給するために生成され得る。分析種イオンを生成するイオン源がONに切り換えられる(または、分析種イオンが質量分析計中へ移送される)期間のETD試薬イオンを生成するイオン源がONに切り換えられる(または、ETD試薬イオンが質量分析計中へ移送されるか、または質量分析計内に生成される)期間に対する比が、<1、1〜2、2〜3、3〜4、4〜5、5〜6、6〜7、7〜8、8〜9、9〜10、10〜15〜15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50または>50の範囲に入り得る他の実施形態が考えられる。
【0136】
一実施形態によると、電子移動解離フラグメンテーションは、ETDデバイスの電極に印加される進行DC電圧の速度および/または振幅を制御することによって制御、最大化、最小化、強化、または実質的に防止され得る。進行DC電圧が電極に非常に急速に印加される場合、電子移動解離によってフラグメンテーションする分析種イオンは非常に少なくなり得る。
【0137】
ガスフロー動的効果および/または圧力差効果を利用して、分析種イオンおよび/または試薬イオンをETDデバイスの各部を通るように駆動または推進する、他の好ましさが劣る実施形態が考えられる。ガスフロー動的効果は、ETDデバイスに沿っておよびこれを通ってイオンを駆動または推進する他の方法または手段に加えて利用され得る。
【0138】
好ましさが劣る一実施形態によると、親イオンまたは分析種イオンの電荷状態は、親イオンまたは分析種イオンがETDデバイス2においてETD試薬イオンおよび/または中性試薬ガスと相互作用する前に、まずプロトン移動反応によって低減され得る(分析種イオン−試薬イオン相互作用または分析種イオン−中性超強塩基試薬ガス相互作用により)。
【0139】
好ましさが劣る一実施形態によると、親イオンまたは分析種イオンを、プロトンをETD試薬イオンまたは中性試薬ガスへ移動させることによってフラグメンテーションさせるか、またはそうでなければ、解離させ得る。
【0140】
電子移動解離から得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、ともに非共有結合し得る。非共有結合されたプロダクトのイオンまたはフラグメントイオンが、電子移動解離が行われたETDデバイス、またはETDデバイスの下流に好ましくは配置された独立の反応デバイスもしくは反応セルのいずれかの中で衝突誘起解離、表面誘起解離または他のフラグメンテーションプロセスによってフラグメンテーションされ得る実施形態が考えられる。
【0141】
親イオンまたは分析種イオンをフラグメンテーションまたは解離させた後、キセノン、セシウム、ヘリウムまたは窒素の原子またはイオンなどの準安定原子または準安定イオンと反応または相互作用させ得る好ましさが劣る実施形態が考えられる。
【0142】
一実施形態によると、中性ヘリウムガスが0.01〜0.1mbar、好ましさが劣るが0.001〜1mbar、の範囲の圧力でETDデバイス内に提供され得る。ヘリウムガスは、電子移動解離応を支援する際に特に有用であることがわかっている。窒素およびアルゴンガスは、好ましさが劣るが、電子移動解離ではなく衝突誘起解離によって少なくともいくつかの親イオンまたは分析種イオンをフラグメンテーションさせ得る。
【0143】
本発明の特に好適な一実施形態を図5に示す。この実施形態は、ETD反応セル25、ETD反応セル25の下流に配置されたイオン移動度デバイスまたはイオン移動度分光計もしくはイオン移動度セパレータ26、および中性試薬ガスを含む好適なPTRセル27を含み、好適なPTRセル27は、イオン移動度デバイスまたはイオン移動度分光計もしくはイオン移動度セパレータ26の下流に配置される。
【0144】
ETD反応セル25は、好ましくは、電子移動解離デバイス25を含む。ETD試薬アニオンおよび分析種カチオンは、好ましくは、電子移動解離デバイス25内で反応するように構成される。質量、電荷状態およびイオン移動度の異なる複数のETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンが、好ましくは、電子移動解離プロセスの結果生成され、そしてこれらのETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、好ましくは、ETD反応セル25から現れる。
【0145】
ETD反応セル25から好ましくは現れるETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通される。一動作モードにおいて、ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオン(ETD product of fragment ions)は、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通って移送される際に、それらのイオン移動度に応じて時間的に分離される。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26は、好ましくは、ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンの形状、コンフォーメーションおよび電荷状態についての価値のある情報を提供し、かつ好ましくは、また、好適なPTRセル27の下流に好ましくは配置される飛行時間質量分析部28によって測定されたデータのスペクトルの複雑性を低減する。別の動作モードにおいて、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26は、有効にOFFに切り換えられ、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26がイオンガイドとして動作するようにし得る。ここで、イオンは、フラグメンテーションされることなく、かつ実質的にイオン移動度に応じて時間的に分離されることなく、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通って移送される。
【0146】
一動作モードにおいて、好適なPTRセル27は、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の出口とPTRセル27の入口との間の電位差を比較的高く維持することによって、衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションセルとして動作され得る。これにより、イオンは、PTRセル27中へ勢いよく加速され得、その結果PTRセル27内でCIDによってフラグメンテーションされる。電子移動解離から得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、非共有結合を形成して、2つ以上のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンが一緒にクラスタを形成し得ることが公知である。したがって、好適なPTRセル27を使用して、ETD反応セル25内に形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンをCIDフラグメンテーションして、プロダクトイオンまたはフラグメントイオン間の任意の非共有結合を効果的に切断し得る。このプロセスは、c−タイプおよびz−タイプのETDフラグメントイオンを生成するためのCIDによる一形態の二次的活性化であると考えられ得る。PTRセル27の下流に配置される飛行時間質量分析部28は、PTRセル27から現れるフラグメントイオンまたはプロダクトイオンの質量分析を行うように好ましくは構成される。上記好適な実施形態の特に有利な態様によると、フラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、PTRセル27内で中性試薬ガスと相互作用することによって電荷状態が低減される。これにより、飛行時間質量分析部28は、電荷状態が低減したプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを分解することができる。
【0147】
電子移動および/またはプロトン移動が衝突セル25、27の両方(および/またはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26)において行われ得る他の実施形態が考えられる。好ましさが劣る一実施形態によると、CIDがETD(または上流)反応セル25において行われ、PTR(または下流)セル27においてETDおよび/またはPTRが好適であり得る。これらの変形例は、CIDによるフラグメンテーションの前のイオンの任意のコンフォーメーション変化の研究に有用であり得る。
【0148】
本発明の上記好適な実施形態によると、ETDセル25内でのETDによって形成されるETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、プロトン移動反応によりPTRデバイスまたはPTR移動セル27内でオクタヒドロピリミドールアゼピン(DBU)などの超強塩基の非荷電の中性蒸気と反応する。ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンの電荷状態は好ましくは低減され、ETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンは、次いで、好ましくは、後の質量電荷比分析のために飛行時間質量分析部へと前方移送される。
【0149】
図6は、分析種スプレー29とロックマス(lockmass)基準スプレー30とを含む本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。この質量分析計は、第1の真空チャンバと、イオンガイド31を収容する第2の真空チャンバと、四重極質量フィルタ32と収容する第3の真空チャンバと、ETDデバイス33を収容する第4の真空チャンバと、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ34と、中性試薬ガスを含むPTRデバイス35とをさらに含む。飛行時間質量分析部36が第4の真空チャンバの下流のさらなる真空チャンバに収容されている。ETD反応デバイスまたはトラップセル33がイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ34の上流に設けられており、好適なPTRデバイスまたは移動セル35がイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ34の下流に設けられている。
【0150】
一実施形態によると、ラジカルアゾベンゼン(またはフルオランテン)イオンといった1価の電子移動解離試薬アニオンが四重極質量フィルタ32によって選択され得、これらはまた、ETD反応デバイスまたはトラップセル33内に蓄積され得る。次いで、多価分析種前駆カチオンが四重極質量フィルタ32によって選択され得、これらはまた、ETD反応デバイスまたはトラップセル33中に好ましくは移送される。多価前駆カチオンまたは多価分析種カチオンは、次いで、ETD反応デバイスまたはトラップセル33内で電子移動解離によってフラグメンテーションされるように好ましくは配置される。得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、次いで、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ34を介して好適なPTRデバイスまたは移動セル35に好ましくは移動する。
【0151】
一実施形態によると、ユニオンコネクタを介してニードル弁に連結されたガラス管(外径6.35mm×内径2.81mm×長さ152.4mm)内に超強塩基試薬(液体)が準備され得る。図6に示すように、ニードル弁は、ステンレス鋼製配管と1つ以上の切り換え弁とを介して移動セルまたはPTRデバイス35に好ましくは連通する移動ガス入口バルクヘッドに連結され得る。ガラス管および蒸気流路は、超強塩基試薬(例えばDBU)の急速な蒸発を確実にし、かつ超強塩基蒸気が液体に再濃縮することを防ぐため、例えば加熱テープを用いて100〜150℃に加熱されるのが好ましい。
【0152】
好ましさが劣る一実施形態によると、電子移動解離およびプロトン移動反応による電荷状態の低減は、同じ反応セルにおいて時間的に順次行われ得る。
【0153】
好ましさが劣る別の実施形態によると、電子移動解離およびプロトン移動反応による電荷状態の低減は、空間的に順次(例えば、独立した反応セルにおいて)行われるのではなく、同じ反応セルにおいて実質的に同時に行われ得る。
【0154】
プロトン移動反応による親イオンまたは分析種イオンの電荷状態の低減が電子移動解離または他のフラグメンテーションプロセスの前に実施され得る好ましさが劣る他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、正の高電荷分析種イオンまたは前駆イオンは、例えば反応セル内の中性超強塩基試薬ガスを用いたプロトン移動反応による反応によってその電荷のいくつかを失うようにまず配置され得る。例えば、図6に示すようなトラップセル33がこの目的で使用され得る。得られた電荷状態が低減した分析種イオンは、次いで、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ34を通過するように好ましくは配置され、次いで、移動セル35に好ましくはトラップされる。四重極質量フィルタ32によって選択された1価の負のETD試薬イオンは、次いで、トラップセル33およびイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ34を通って移送され得る。1価の負のETD試薬イオンは、次いで、移動セル35に存在する電荷状態が低減した分析種イオンを電子移動解離プロセスによってフラグメンテーションするように配置され得る。この実施形態によると、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータは、ONに切り替えられ得る(イオンをその移動度に応じて分離するように)か、あるいはOFFに切り替えら得る(イオンをその移動度に応じて分離することなく単にイオンガイドとして機能するように)。1価の負のETD試薬イオンがトラップセル33を通過することなく直接移動セル35中に入るさらなる実施形態が考えられる。
【0155】
別の実施形態によると、1価の負のETD試薬イオンはトラップセル33を通って移送されるが、中性超強塩基試薬ガスは、負のETD試薬イオンがトラップセル33を通って移送される際に除去されるかあるいは濃度が減少し得る。
【0156】
好ましくは、前駆イオンはETD反応の前に四重極質量フィルタ32によって選択される。
【0157】
反応の第1段階が衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(ECD)または表面誘起解離(SID)といった他のフラグメンテーション方法を含み得る他の実施形態が考えられる。一実施形態によると、フラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、CID、ECDまたはSIDによってトラップセル(例えば、図6に示すようなトラップセル33)において生成され得る。得られたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、次いで、移動セル(例えば、図6に示すような移動セル35)に移送され得る。次いで、フラグメントイオンまたはプロダクトイオンの電荷状態は、フラグメントイオンまたはプロダクトイオンを中性超強塩基試薬ガスと移動セル35内でプロトン移動反応によって反応させることによって好ましくは低減され得る。
【0158】
別の実施形態によると、中性試薬ガスを用いて一次電子移動解離反応を生じさせてもよく、したがって、この実施形態によると、試薬イオンを生成するためアニオン源が不要であるため有利である。アルカリ金属蒸気などの中性試薬ガス、なかでも、セシウム(Cs)を含む蒸気を使用して、分析種イオンのETDを実行し得る。この実施形態によると、試薬分子は、結合が非常に緩いか弱い電子を有する奇数電子ラジカル種と会合するようになる。この実施形態によると、セシウム蒸気との相互作用による分析種イオンのETDフラグメンテーションは、磁場セクター機器といった高エネルギー機器を用いて行われ得る。フラグメンテーションされる分析種イオンは、比較的高い電荷状態を有し得る。
【0159】
図7Aおよび図7Bは、本発明の好適な実施形態に係るPTRデバイスにおけるETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンの電荷状態の低減の様々な有利な側面を示す。好適な実施形態の態様を説明するため、高電荷のポリエチレングリコールイオン(PEG20K)を2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピンと呼ばれる超強塩基試薬(「DBU」として一般に知られる)と質量分析計のPTRセルまたは反応セル内で反応させた。図7Aは、得られたプロトン移動反応後のPEG20Kイオンの質量スペクトルを示し、イオンの電荷状態が低減され、イオンの大部分が4+の電荷状態を有することを示している。これに対し、図7Bは、PEG20Kイオンに対してDBUを用いた電荷状態の低減を行わなかった場合の対応する質量スペクトルを示す。図7Bから明らかであるように、電荷が減少しなかった親イオンは、高電荷状態、したがって低い質量対電荷値を有するイオンの複雑な混合物を含む。質量スペクトルにおいて個々のオリゴマーは識別できず、スペクトルは、電荷状態の重なりによる比較的広いノイズ帯および、高電荷状態による圧縮された質量電荷比範囲を含んでいる。PEG試料は、それぞれが種々の電荷状態を有し得るオリゴマーの混合物からなる。質量20KDaのオリゴマー鎖に28個までの電荷が配置され得ると考えられる。飛行時間質量分析部の分解能では、このような複雑さによってスペクトル輻輳が発生し、したがって、データから分子量情報を抽出することはできない。
【0160】
これに対し、図7Aに示す電荷が減少したイオンの質量スペクトルのピークは飛行時間質量分析部によって解析することが可能であり、これによってイオンの電荷状態および質量に関する情報が得られる。一方、図7Bに示す電荷が減少していないイオンに関する質量スペクトルは解析されず、比較的少ない分析情報しか得られない。したがって、PTRデバイスにおいてETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンをDBUなどの中性試薬ガスと相互作用させることによってETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンの電荷状態を低減することは特に有利であることは明らかである。
【0161】
上記好適な実施形態によると、好適なPTRデバイスに供給される中性超強塩基ガスは、好ましくは、高電荷ETDプロダクトイオンまたは高電荷ETDフラグメントイオンからプロトンを剥ぎ取る。したがって、中性超強塩基試薬ガスは、好ましくはプロトンスポンジとして機能する。
【0162】
一実施形態によると、好適なPTRデバイスに設けられる中性超強塩基試薬ガスは、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{別名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}または7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){別名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}を含み得る。
【0163】
上記好適な実施形態は、イオンが移送される開口を有する複数の電極を含むイオンガイドまたはデバイスにおいてPTRを行うことに関するが、ETDデバイスおよび/または上記好適なPTRデバイスが代わりに複数のロッド電極を含み得る他の実施形態が考えられる。DC電圧勾配が、ロッドセットの軸方向長さの少なくとも一部に沿って印加され得る。制御システムがETDデバイスにおけるETDフラグメンテーションの度合いおよび/またはPTRデバイスにおけるPTR電荷排出の度合いが極端に高いと判定した場合、DC電圧勾配は、ETDデバイスにおける分析種イオンとETD試薬イオンとのイオン−イオン反応時間が低減され、かつ/あるいはPTRデバイスにおけるETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンと中性超強塩基試薬ガスとのイオン−中性ガス反応時間が低減されるように増大され得る。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷排出の度合いが極端に低いと判定した場合、DC電圧勾配は、ETDデバイスにおける分析種イオンと試薬イオンとのイオン−イオン反応時間が増大され、かつ/あるいはPTRデバイスにおけるETDプロダクトイオンまたはETDフラグメントイオンと中性超強塩基試薬ガスとのイオン−中性ガス反応時間が増大するように低減され得る。
【0164】
好ましさが劣る一実施形態によると、ETDデバイスにおいて試薬イオンの代わりに中性試薬ガス(例えば、セシウム蒸気)を使用して、ETDを実行し得る。
【0165】
一実施形態によると、制御システムは、半径方向の擬電位井戸内の半径方向のRF閉じ込めの度合いを変更し得る。例えば、ETDデバイスおよび/または好適なPTRデバイスの電極に印加されるRF電圧が増大すると、これによって生じる擬電位井戸のプロフィールは、より狭くなり、イオン−イオン反応体積またはイオン−中性ガス反応体積が低減する。これにより、例えば、ETDデバイスにおける分析種イオンと試薬イオンとの相互作用はより大きくなり、ETD効果が増大する。制御システムがETDデバイスにおけるETDフラグメンテーションの度合いが極端に高いと判定した場合、制御システムは、ETDデバイスにおける分析種イオンと試薬イオンとの混合が低減するようにRF電圧を低減し得る。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションの度合いが極端に低いと判定した場合、制御システムは、ETDデバイスにおける分析種イオンと試薬イオンとの混合が増大するようにRF電圧を増大させ得る。
【0166】
負の試薬イオンは、負電位をETDデバイスまたはイオンガイドの一端または両端に印加することによって、ETDデバイスまたはイオンガイド内にトラップされ得る。電位障壁が極端に低い場合、ETDデバイスは、ETD試薬イオンが比較的漏洩しやすいと考えられ得る。しかし、負電位障壁は、ETDデバイスに沿っておよびこれを通って正の分析種イオンを加速する効果も有する。したがって、全体としては、負電位障壁が比較的低く設定された場合、ETDデバイスにおけるイオン−イオン反応時間が好ましくは増大され、かつ反応断面が増大されるので、ETDフラグメンテーションが増大される。制御システムがETDフラグメンテーションの度合いが極端に高いと判定した場合、電位障壁は、分析種イオンとETD試薬イオンとの混合が低減するように増大され得る。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションの度合いが極端に低いと判定した場合、電位障壁は、分析種イオンとETD試薬イオンとの混合が増大するように低減され得る。
【0167】
質量分析計が、例えば、液体クロマトグラフィカラムから溶出しているイオンに対して複数の異なる分析を行い得る本発明の実施形態が考えられる。一実施形態によると、LC溶出ピークの時間スケール内に、分析種イオンは、例えば、親イオンスキャンされ、親イオンまたは前駆イオンの質量電荷比が決定され得る。次いで、親イオンまたは前駆イオンは、四重極または他の質量フィルタによって質量選択され、そして例えばCIDフラグメンテーションされて、b−タイプおよびy−タイプのフラグメントイオンを生成、そして次いで質量分析し得る。次いで、親イオンまたは前駆イオンは、その後四重極または他の質量フィルタによって質量選択され、そして次いでETDフラグメンテーションされて、c−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンを生成、そして次いで質量分析し得る。ETDフラグメントイオンは、質量分析部へと前方移送される前に、中性試薬ガスと相互作用することにより好適なPTRデバイス内で電荷状態が低減されるのが好ましい。さらなる動作モードにおいて、親イオンまたは前駆イオンに対して衝突セルの高/低切り換えが行われ得る。この実施形態によると、親イオンまたは前駆イオンは、2つの異なる動作モードの間で繰り返し切り換えられる。第1の動作モードにおいて、親イオンまたは前駆イオンは、CIDフラグメンテーションまたはETDフラグメンテーションされ得る。第2の動作モードにおいて、親イオンまたは前駆イオンは、実質的にCIDフラグメンテーションまたはETDフラグメンテーションされないのが好ましい。
【0168】
一実施形態によると、フラグメンテーションおよび/または電荷減少されたイオンは、水素−重水素(「H−D」)交換を行ったペプチド由来のペプチドイオンを含む。水素−重水素交換は、共有結合した水素原子が重水素原子に置き換えられる化学反応である。重水素核は、中性子が1つ余分に付加されているので水素よりも重いという事実を考慮すると、いくつかの重水素を含むタンパク質またはペプチドは、すべてが水素のタンパク質またはペプチドよりも重い。これにより、タンパク質またはペプチドの重水素化を進めると、その分子質量は、着実に増大し、かつこの分子質量の増大は、質量分析によって検出され得る。したがって、上記好適な方法が重水素を含むタンパク質またはペプチドの分析に使用され得ることが考えられる。重水素を含むことを利用して、溶液中のタンパク質の構造力学(例えば、水素−交換質量分析によって)ならびにポリペプチドイオンのガス位相構造およびフラグメンテーションメカニズムの両方を研究し得る。ペプチドの電子移動解離の特に有利な効果は、ETDフラグメンテーション(CIDフラグメンテーションと異なり)には、偶数電子前駆イオンを振動によって励起させる際の水素の分子内移動である水素スクランブルという問題が起きないことである。本発明の一実施形態によると、上記好適な装置および方法を使用して、重水素を含むペプチドイオンのETDフラグメンテーションおよび/または後のPTR電荷排出を実施し得る。一実施形態によると、重水素を含むペプチドイオンのETDフラグメンテーションおよび/または後のPTR電荷排出の度合いが制御、最適化、最大化または最小化され得る。同様に、本発明の一実施形態によると、ETDによるイオンのフラグメンテーションおよび/または後のPTRによる電荷排出の前の重水素を含むペプチドイオンにおける水素スクランブルの度合いは、イオンのイオンガイドを通じた移送に影響のある1つ以上のパラメータ(例えば、進行波の速度および/または振幅)を変更、変化、増加または減少することによって、制御、最適化、最大化または最小化され得る。
【0169】
上述の好適な実施形態は超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気の使用に関するが、本発明はまた、非超強塩基試薬ガスまたは非超強塩基試薬の使用および特にトリメチルアミンやトリエチルアミンといった揮発性アミンの使用にも適用される。したがって、上述の実施形態において超強塩基試薬ガスの代わりに揮発性アミン試薬ガスが使用される本発明の実施形態も考えられる。
【0170】
本発明を好適な実施形態を参照して記載したが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が可能であることが当業者に理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のイオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気と反応させて、前記第1のイオンの電荷状態を低減するように構成および適合される第1のデバイスであって、複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイス
を含む質量分析計。
【請求項2】
前記第1のデバイスがプロトン移動反応デバイスを含む、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
使用時に、(i)前記第1のイオンの少なくともいくつかから、前記1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気にプロトンが移動するか、あるいは(ii)1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンを含む前記第1のイオンのうちの少なくともいくつかから、前記1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気にプロトンが移動し、この時に、前記多価分析種カチオンまたは正電荷イオンのうちの少なくともいくつかの電荷状態が低減される、
のいずれかである、請求項1または2に記載の質量分析計。
【請求項4】
前記1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基蒸気が、(i)1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、(ii)2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{別名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}、および(iii)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){別名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}からなる群から選択される、請求項1、2または3に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記第1のイオンが、1つ以上の(i)多価イオン、(ii)2価イオン、(iii)3価イオン、(iv)4価イオン、(v)5個の電荷を有するイオン、(vi)6個の電荷を有するイオン、(vii)7個の電荷を有するイオン、(viii)8個の電荷を有するイオン、(ix)9個の電荷を有するイオン、(x)10個の電荷を有するイオン、または(xi)10個を超える電荷を有するイオンを含むか、または主に含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項6】
前記第1のイオンが、電子移動解離による親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションから生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを含み、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンが、大多数のc−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはz−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項7】
電子移動解離の過程において、
(a)前記親イオンまたは分析種イオンが、試薬イオンとの相互作用時にフラグメンテーションされるかまたは解離するように誘導されて、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(b)電子が、1つ以上の試薬アニオンまたは負電荷イオンから1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、前記多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(c)前記親イオンまたは分析種イオンが、中性試薬ガス分子もしくは中性試薬ガス原子または非イオン性試薬ガスとの相互作用時にフラグメンテーションされるかまたは解離するように誘導されて、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(d)電子が、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の塩基ガスまたは塩基蒸気から1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、前記多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(e)電子が、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気から1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、前記多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(f)電子が、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電のアルカリ金属ガスまたはアルカリ金属蒸気から1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、前記多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、かつ/あるいは
(g)電子が、1つ以上の中性、非イオン性または非荷電のガス、蒸気または原子から1つ以上の多価分析種カチオンまたは正電荷イオンに移動し、この時に、前記多価分析種カチオンまたは正電荷イオンの少なくともいくつかが、解離するように誘導されて、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し、前記1つ以上の中性、非イオン性または非荷電のガス、蒸気または原子は、(i)ナトリウム蒸気またはナトリウム原子、(ii)リチウム蒸気またはリチウム原子、(iii)カリウム蒸気またはカリウム原子、(iv)ルビジウム蒸気またはルビジウム原子、(v)セシウム蒸気またはセシウム原子、(vi)フランシウム蒸気またはフランシウム原子、(vii)C60蒸気またはC60原子、および(viii)マグネシウム蒸気またはマグネシウム原子からなる群から選択される、
のいずれかである、請求項6に記載の質量分析計。
【請求項8】
(a)前記試薬アニオンまたは負電荷イオンが、ポリ芳香族炭化水素または置換ポリ芳香族炭化水素から得られ、かつ/あるいは
(b)前記試薬アニオンまたは負電荷イオンが、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニル−アントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリル、および(xviii)アントラキノンからなる群から得られ、かつ/あるいは
(c)前記試薬イオンまたは負電荷イオンが、アゾベンゼンアニオンまたはアゾベンゼンラジカルアニオンを含む、
のいずれかである、請求項7に記載の質量分析計。
【請求項9】
前記多価分析種カチオンまたは正電荷イオンが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む、請求項7または8に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記第1のイオンが、衝突誘起解離、電子捕獲解離または表面誘起解離による親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションから生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを含み、前記プロダクトイオンまたはフラグメントイオンが、大多数のb−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはy−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項11】
前記第1のイオンが、親イオンまたは分析種イオンと中性のアルカリ金属蒸気またはセシウム蒸気との相互作用による前記親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションから生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項12】
前記第1のイオンが、負電荷の親イオンまたは分析種イオンに電子を照射して前記親イオンまたは分析種イオンをフラグメンテーションする電子脱離解離による前記親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションから生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項13】
前記第1のイオンが多価の親イオンまたは分析種イオンを含み、前記親イオンまたは分析種イオンの大多数が、前記質量分析計の真空チャンバ内での電子移動解離、衝突誘起解離、電子捕獲解離または表面誘起解離によるフラグメンテーションを受けていない、請求項1から5のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項14】
前記第1のデバイスの上流に配置される電子移動解離デバイスをさらに含み、前記電子移動解離デバイスが、複数の電極を含む第2のイオンガイドを含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項15】
使用時に、少なくともいくつかの親イオンまたは分析種イオンが、前記親イオンまたは分析種イオンが前記第2のイオンガイドを通って移送される際に前記電子移動解離デバイスにおいてフラグメンテーションされるように配置され、前記親イオンまたは分析種イオンが、カチオンまたは正電荷イオンを含む、請求項14に記載の質量分析計。
【請求項16】
前記電子移動解離デバイスが、一動作モードにおいて、前記分析種イオンまたは親イオンが前記第2のイオンガイドを通過する際に前記親イオンまたは分析種イオンのフラグメンテーションを最適化および/または最大化するように構成および適合される制御システムをさらに含む、請求項15に記載の質量分析計。
【請求項17】
前記第1のデバイスの上流かつ前記電子移動解離デバイスの下流に配置されるイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータをさらに含み、前記イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータが、複数の電極を含む第3のイオンガイドを含む、請求項14、15または16のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項18】
1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を、前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドを含む前記複数の電極の少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかのイオンを前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/またはこれを通って駆動または推進するように構成および適合されるDC電圧デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項19】
第1の周波数および第1の振幅を有する第1のAC電圧またはRF電圧を、前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドの前記複数の電極の少なくともいくつかに印加して、使用時にイオンが前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイド内に半径方向に閉じ込められるように構成および適合されるRF電圧デバイスをさらに含み、
(a)前記第1の周波数が、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択され、かつ/あるいは
(b)前記第1の振幅が、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択され、かつ/あるいは
(c)一動作モードにおいて、隣接または近接する電極には、反対の位相の前記第1のAC電圧またはRF電圧が供給され、かつ/あるいは
(d)前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドが、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100または>100グループの電極を含み、各グループの電極が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極を含み、かつ各グループにおける少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極には、同じ位相の前記第1のAC電圧またはRF電圧が供給される、
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項20】
前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドが、使用時にイオンが移送される少なくとも1つの開口を有する複数の電極を含み、
(a)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に円形、矩形、正方形または楕円形の開口を有し、かつ/あるいは
(b)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に同じ第1のサイズを有するか、または実質的に同じ第1の面積を有する開口を有し、かつ/または前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に同じ第2の異なるサイズを有するか、または実質的に同じ第2の異なる面積を有する開口を有し、かつ/あるいは
(c)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、サイズまたは面積が前記イオンガイドの軸に沿った方向へいくにつれ順次より大きくおよび/またはより小さくなる開口を有し、かつ/あるいは
(d)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または内寸法を有する開口を有し、かつ/あるいは
(e)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに離間し、かつ/あるいは
(f)前記複数の電極のうちの少なくともいくつかが、開口を含み、かつ前記開口の内径または内寸法の隣接する電極間の中心−中心軸方向間隔に対する比が、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択され、かつ/あるいは
(g)前記複数の電極の開口の内径が、前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドの長軸に沿って1回以上順次増大または低減し、そして次いで順次低減または増大し、かつ/あるいは
(h)前記複数の電極が、幾何体積を規定し、前記幾何体積は、(i)1つ以上の球、(ii)1つ以上の扁平楕円体、(iii)1つ以上の扁長楕円体、(iv)1つ以上の楕円体、および(v)1つ以上の不等辺楕円体からなる群から選択され、かつ/あるいは
(i)前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドが、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有し、かつ/あるいは
(j)前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドが、少なくとも(i)1〜10個の電極、(ii)10〜20個の電極、(iii)20〜30個の電極、(iv)30〜40個の電極、(v)40〜50個の電極、(vi)50〜60個の電極、(vii)60〜70個の電極、(viii)70〜80個の電極、(ix)80〜90個の電極、(x)90〜100個の電極、(xi)100〜110個の電極、(xii)110〜120個の電極、(xiii)120〜130個の電極、(xiv)130〜140個の電極、(xv)140〜150個の電極、(xvi)150〜160個の電極、(xvii)160〜170個の電極、(xviii)170〜180個の電極、(xix)180〜190個の電極、(xx)190〜200個の電極、および(xxi)>200個の電極を含み、かつ/あるいは
(k)前記複数の電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さまたは軸方向長さを有し、かつ/あるいは
(l)前記複数の電極のピッチまたは軸方向間隔が、前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドの長軸に沿って1回以上順次低減または増大する、
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項21】
前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドが、
(a)複数のセグメント化ロッド電極、または
(b)1つ以上の第1の電極、1つ以上の第2の電極、および使用時にイオンが進行する平面に配置される1つ以上の層の中間電極であって、前記1つ以上の層の中間電極は前記1つ以上の第1の電極と前記1つ以上の第2の電極との間に配置され、前記1つ以上の層の中間電極は1つ以上の層の平面電極またはプレート電極を含み、前記1つ以上の第1の電極は最上部の電極であり、前記1つ以上の第2の電極は最下部の電極である、1つ以上の第1の電極、1つ以上の第2の電極、および1つ以上の層の中間電極
のいずれかを含む、請求項1〜19のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項22】
(a)静的なイオン−中性ガス反応領域またはイオン−中性ガス反応体積が前記第1のイオンガイドにおいて形成または生成されるか、あるいは
(b)動的なまたは時変のイオン−中性ガス反応領域またはイオン−中性ガス反応体積が前記第1のイオンガイドにおいて形成または生成される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項23】
(a)前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドを、一動作モードにおいて、(i)<100mbar、(ii)<10mbar、(iii)<1mbar、(iv)<0.1mbar、(v)<0.01mbar、(vi)<0.001mbar、(vii)<0.0001mbar、および(viii)<0.00001mbarからなる群から選択される圧力に維持し、かつ/あるいは
(b)前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドを、一動作モードにおいて、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>0.01mbar、(vi)>0.001mbar、および(vii)>0.0001mbarからなる群から選択される圧力に維持し、かつ/あるいは
(c)前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドを、一動作モードにおいて、(i)0.0001〜0.001mbar、(ii)0.001〜0.01mbar、(iii)0.01〜0.1mbar、(iv)0.1〜1mbar、(v)1〜10mbar、(vi)10〜100mbar、および(vii)100〜1000mbarからなる群から選択される圧力に維持する
のいずれかに構成および適合されるデバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項24】
(a)前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイド内のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留時間、過渡時間または反応時間が、(i)<1ms、(ii)1〜5ms、(iii)5〜10ms、(iv)10〜15ms、(v)15〜20ms、(vi)20〜25ms、(vii)25〜30ms、(viii)30〜35ms、(ix)35〜40ms、(x)40〜45ms、(xi)45〜50ms、(xii)50〜55ms、(xiii)55〜60ms、(xiv)60〜65ms、(xv)65〜70ms、(xvi)70〜75ms、(xvii)75〜80ms、(xviii)80〜85ms、(xix)85〜90ms、(xx)90〜95ms、(xxi)95〜100ms、(xxii)100〜105ms、(xxiii)105〜110ms、(xxiv)110〜115ms、(xxv)115〜120ms、(xxvi)120〜125ms、(xxvii)125〜130ms、(xxviii)130〜135ms、(xxix)135〜140ms、(xxx)140〜145ms、(xxxi)145〜150ms、(xxxii)150〜155ms、(xxxiii)155〜160ms、(xxxiv)160〜165ms、(xxxv)165〜170ms、(xxxvi)170〜175ms、(xxxvii)175〜180ms、(xxxviii)180〜185ms、(xxxix)185〜190ms、(xl)190〜195ms、(xli)195〜200ms、および(xlii)>200msからなる群から選択され、かつ/あるいは
(b)前記第2のイオンガイド内で生成または形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留時間、過渡時間または反応時間が、(i)<1ms、(ii)1〜5ms、(iii)5〜10ms、(iv)10〜15ms、(v)15〜20ms、(vi)20〜25ms、(vii)25〜30ms、(viii)30〜35ms、(ix)35〜40ms、(x)40〜45ms、(xi)45〜50ms、(xii)50〜55ms、(xiii)55〜60ms、(xiv)60〜65ms、(xv)65〜70ms、(xvi)70〜75ms、(xvii)75〜80ms、(xviii)80〜85ms、(xix)85〜90ms、(xx)90〜95ms、(xxi)95〜100ms、(xxii)100〜105ms、(xxiii)105〜110ms、(xxiv)110〜115ms、(xxv)115〜120ms、(xxvi)120〜125ms、(xxvii)125〜130ms、(xxviii)130〜135ms、(xxix)135〜140ms、(xxx)140〜145ms、(xxxi)145〜150ms、(xxxii)150〜155ms、(xxxiii)155〜160ms、(xxxiv)160〜165ms、(xxxv)165〜170ms、(xxxvi)170〜175ms、(xxxvii)175〜180ms、(xxxviii)180〜185ms、(xxxix)185〜190ms、(xl)190〜195ms、(xli)195〜200ms、および(xlii)>200msからなる群から選択され、かつ/あるいは
(c)前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドが、(i)<1ms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択されるサイクル時間を有する、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項25】
(a)一動作モードにおいて、イオンは、前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイド内でトラップされるが、実質的にフラグメンテーションおよび/または反応および/または電荷減少がされないように配置および適合され、かつ/あるいは
(b)一動作モードにおいて、イオンは、前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイド内で衝突により冷却されるか、または実質的に熱化されるように配置および適合され、かつ/あるいは
(c)一動作モードにおいて、イオンは、前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイド内で実質的にフラグメンテーションおよび/または反応および/または電荷減少がされるように配置および適合され、かつ/あるいは
(d)一動作モードにおいて、イオンは、前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイドの入口および/または出口に配置される1つ以上の電極によって前記第1のイオンガイドおよび/または前記第2のイオンガイドおよび/または前記第3のイオンガイド中へおよび/またはそこからパルスとして入射および/または出射されるように配置および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項26】
(a)前記第1のデバイスの上流に配置されるイオン源であって、前記イオン源が、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)熱スプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、および(xx)グロー放電(「GD」)イオン源からなる群から選択されるイオン源、ならびに/あるいは
(b)1つ以上の連続イオン源またはパルスイオン源、ならびに/あるいは
(c)前記第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオンガイド、ならびに/あるいは
(d)前記第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン移動度分離デバイスおよび/または1つ以上の電界非対称イオン移動度分光計デバイス、ならびに/あるいは
(e)前記第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオントラップまたは1つ以上のイオントラッピング領域、ならびに/あるいは
(f)前記第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の衝突セル、フラグメンテーションセルまたは反応セルであって、前記1つ以上の衝突セル、フラグメンテーションセルまたは反応セルが、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−準安定イオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−準安定分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加イオンまたはプロダクトイオンを形成するためのイオン−準安定原子反応デバイス、および(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される1つ以上の衝突セル、フラグメンテーションセルまたは反応セル、ならびに/あるいは
(g)質量分析部であって、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元またはリニア四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速式飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部、ならびに/あるいは
(h)前記第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のエネルギー分析部または静電エネルギー分析部、ならびに/あるいは
(i)前記第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン検出器、ならびに/あるいは
(j)前記第1のデバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタであって、前記1つ以上の質量フィルタが、(i)四重極質量フィルタ、(ii)二次元またはリニア四重極イオントラップ、(iii)ポールまたは三次元四重極イオントラップ、(iv)ペニングイオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁場型質量フィルタ、(vii)飛行時間質量フィルタ、および(viii)ウィーンフィルタからなる群から選択される1つ以上の質量フィルタ、ならびに/あるいは
(k)イオンをパルスにして前記第1のデバイスへ入力するためのデバイスまたはイオンゲート、ならびに/あるいは
(l)実質的に連続なイオンビームをパルスイオンビームに変換するためのデバイス
のいずれかをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項27】
(a)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧イオン源、ならびに/あるいは
(b)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のエレクトロスプレーイオン源、ならびに/あるいは
(c)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧化学イオン源、ならびに/あるいは
(d)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のグロー放電イオン源をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項28】
分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のグロー放電イオン源が前記質量分析計の1つ以上の真空チャンバに設けられる、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項29】
前記質量分析計が、
C−トラップと、
外側樽状電極および同心の内側紡錘状電極を含むオービトラップ質量分析部と
をさらに含み、
第1の動作モードにおいて、イオンが、前記C−トラップへ移送され、そして次いで前記オービトラップ質量分析部中へ注入され、かつ
第2の動作モードにおいて、イオンが、前記C−トラップへ移送され、そして次いで衝突セルまたは電子移動解離デバイスへ移送され、少なくともいくつかのイオンが、フラグメントイオンへフラグメンテーションされ、そして次いで前記フラグメントイオンが、前記C−トラップへ移送され、その後前記オービトラップ質量分析部中へ注入される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項30】
前記質量分析計が、
使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む積層リングイオンガイドであって、前記電極の間隔が、イオン経路の長さに沿って増大し、かつ前記イオンガイドの上流部分における前記電極中の開口は、第1の直径を有し、前記イオンガイドの下流部分における前記電極中の開口は、前記第1の直径よりも小さな第2の直径を有し、かつ使用時に反対の位相のAC電圧またはRF電圧が連続した電極に印加される積層リングイオンガイドを含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項31】
複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、前記制御システムに
第1のイオンを前記第1のイオンガイド内で1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気と反応させて、前記第1のイオンの電荷状態を低減させるように構成されるコンピュータプログラム。
【請求項32】
コンピュータによって実行可能な命令が格納されたコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記命令が、複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能に構成され、前記コンピュータプログラムが、前記制御システムに
第1のイオンを前記第1のイオンガイド内で1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気と反応させて、前記第1のイオンの電荷状態を低減するように構成されるコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項33】
前記コンピュ−タ読み取り可能な媒体は、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、(vi)光学ディスク、(vii)RAM、および(viii)ハードディスクドライブからなる群から選択される、請求項32に記載のコンピュ−タ読み取り可能な媒体。
【請求項34】
複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを準備する工程、および
第1のイオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の超強塩基試薬ガスまたは超強塩基試薬蒸気と反応させて、前記第1のイオンの電荷状態を低減する工程
を含む質量分析の方法。
【請求項35】
親イオンまたは分析種イオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気と反応させて、前記親イオンまたは分析種イオンを電子移動解離によってフラグメンテーションさせるように構成および適合される電子移動解離デバイス
を含む質量分析計。
【請求項36】
前記中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気が、アルカリ金属蒸気を含む、請求項35に記載の質量分析計。
【請求項37】
前記中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気が、セシウム蒸気を含む、請求項35または36に記載の質量分析計。
【請求項38】
電子移動解離デバイスを準備する工程、および
親イオンまたは分析種イオンを前記電子移動解離デバイス内で1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気と反応させて、前記親イオンまたは分析種イオンを電子移動解離によってフラグメンテーションさせる工程
を含む質量分析の方法。
【請求項39】
前記中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気が、アルカリ金属蒸気を含む、請求項38に記載の質量分析の方法。
【請求項40】
前記中性、非イオン性または非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気が、セシウム蒸気を含む、請求項38または39に記載の質量分析の方法。
【請求項41】
第1のイオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の第1の試薬ガスまたは試薬蒸気と反応させて、前記第1のイオンの電荷状態を低減するように構成および適合される第1のデバイスであって、複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイス
を含む質量分析計。
【請求項42】
前記第1の試薬ガスまたは試薬蒸気が、揮発性アミンを含む、請求項41に記載の質量分析計。
【請求項43】
前記第1の試薬ガスまたは試薬蒸気が、トリメチルアミンまたはトリエチルアミンを含む、請求項41または42に記載の質量分析計。
【請求項44】
複数の電極を含む第1のイオンガイドを含む第1のデバイスを準備する工程、および
第1のイオンを1つ以上の中性、非イオン性または非荷電の第1の試薬ガスまたは試薬蒸気と反応させて、前記第1のイオンの電荷状態を低減する工程
を含む質量分析の方法。
【請求項45】
前記第1の試薬ガスまたは試薬蒸気が、トリメチルアミンまたはトリエチルアミンを含む、請求項44に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−99487(P2012−99487A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264783(P2011−264783)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2011−512203(P2011−512203)の分割
【原出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】