説明

電子線殺菌装置

【課題】簡易な構成で容器の口部内周面への電子線照射を確実に行うことのできる電子線殺菌装置を提供することを目的とする。
【解決手段】殺菌装置10A、10Bのそれぞれにおいて、容器100の口部100aの近傍に反射板が設けられ、容器100の側方の電子線照射装置20から照射される電子線が反射板で反射して、容器100の口部100aから内部に向けて照射される。容器100を保持するグリッパ12のグリッパ爪72、72に永久磁石73N、73Sが設けられ、永久磁石73Nから永久磁石73Sへと向かう磁力線により、電子線は、電子線の流れ方向および磁力線の方向に直交する方向に偏向される。さらに、電子線は、反射板で反射することによって、その速度が低減し、これによって、電子線の偏向を効率良く行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品・飲料・医薬品等が充填される容器を電子線により殺菌する電子線殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品・飲料・医薬品等の充填物を容器に充填する充填工程においては、容器に充填物を充填するのに先立ち、容器の殺菌が行われる。
容器の殺菌には、過酢酸・過酸化水素といった薬液や紫外線照射が多く用いられているが、近年、紫外線よりも殺菌力に勝る電子線照射による殺菌技術が注目され、鋭意開発が行われている。
【0003】
ここで、殺菌を確実に行うには、容器の全体に電子線を確実に照射することが必要となる。
そこで、容器の周囲に複数の磁場からなる磁場バリアを形成し、この磁場バリアによって、電子線を偏向させて容器の内壁や外壁に電子線を照射させることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)
また、容器の周囲に磁界を形成し、この磁界自体を容器の周囲で回転させたり、磁界を固定し、容器を回転させたりすることで、容器に電子線を確実に照射させることが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0004】
しかし、容器の口部近傍の部分は、キャップをねじ込むためのネジ溝が形成される等、形状が複雑で、肉厚も大きく、また容器内に内容物を充填するときにはグリッパ等と称される保持部材によって容器が保持される部分であるため、上記したような技術を適用しても、容器の口部近傍は、電子線照射による殺菌を行いにくい。
そこで、容器の上方から電子線を照射すると共に偏向器により電子線を偏向して容器の影になる部分に電子線を照射させるものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4516909号公報
【特許文献2】特許第4372741号公報
【特許文献3】特開2002−308229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような従来の技術においては、いずれも構造が複雑となり、装置の大型化、高コスト化に繋がる。
また、電子線を容器の側面から照射する系においては、電子線が最も照射されにくい場所は、グリッパによって保持される容器の口部の内周面であり、この部分に対する電子線の照射については、改善の余地がある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、装置の大型化、高コスト化を招くことなく、簡易な構成で、特に容器の口部内周面への電子線照射を確実に行うことのできる電子線殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもとになされた本発明の電子線殺菌装置は、容器の口部を保持する容器保持具と、容器保持具に保持された容器に電子線を照射して容器を殺菌する電子線殺菌部と、容器保持具に設けられ、容器の口部に容器の軸線方向に直交する方向の磁界を印加し、電子線殺菌部により容器の口部側から容器の軸線方向に向けて照射される電子線を磁界により偏向させる磁石部と、を備えることを特徴とする。
このように、容器保持具に磁石部を設けることで、容器の口部に容器の軸線方向に直交する方向の磁界を印加して、電子線殺菌部により容器の口部側から容器の軸線方向に向けて照射される電子線を磁界により偏向させることができる。これにより、容器の口部に電子線を確実に照射することができる。
【0008】
ここで、磁石部は、容器保持具の表面に設けることができる。また、磁石部は、容器保持具自体が磁石からなることで形成してもよい。さらに、磁石部は、容器保持具に内蔵されていても良い。
【0009】
磁石部は、永久磁石からなるものとしても良いし、電磁石からなるものとしても良い。電磁石を用いる場合、電磁石を構成するコイルに供給される電流を変化させることで、偏向の度合いを調整できる。特に、電子線殺菌部で電子線を容器に照射している間に、電磁石を構成するコイルに供給される電流をON/OFFさせたり、または電流の大きさを増減させたりする制御を行うこともできる。これにより、電子線の照射中に電子線の偏向度合いが変化することになり、電子線をスキャンさせることができ、容器口部の照射しにくい部分に対しても広い範囲で確実に照射することが可能となる。
【0010】
磁石部による磁界は、容器の口部を横切るように印加するのが好ましい。これにより、容器の口部の内側を通る電子線を偏向させて容器の口部の内周面に照射させることができる。
また、磁石部による磁界は、容器の口部の外周側に磁力線が位置するよう印加してもよい。これにより、容器の口部の外周側を通る電子線を容器側に偏向させて、容器の口部の外周面に照射させることができる。
【0011】
容器の口部の近傍に配置され、容器の側方に位置する電子線殺菌部から照射される電子線を反射して口部から容器の内部に照射する反射部材をさらに備えることもできる。
これにより、反射部材で反射した電子線を磁石部で発生する磁界によって偏向させ、容器の口部の殺菌を確実に行える。
このとき、反射部材で反射した電子線は、その速度が低減されるため、磁石部による電子線の偏向を効率良く行え、容器の口部内周面に確実に電子線を照射させることができる。
【0012】
また、容器の口部から容器の内部に挿入配置され、導電性材料からなる棒状の電極をさらに備えることもできる。このようにすることで、電子線を照射させることによって容器を形成する材料内に蓄積される電子やイオンを容器外に除去することができ、容器の帯電を抑えることができる。
このような電極を容器の口部から容器内に挿入配置すると、容器の口部において、電子線を均一に照射しにくくなる。そこで、本発明を適用することで、電子線照射の均一化が計れるのである。
【0013】
このような電子線殺菌装置は、容器の一方の側から電子線を照射する第一の電子線殺菌装置と、容器の他方の側から電子線を照射する第二の電子線殺菌装置と、から構成することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器保持部に設けられた磁石部において、容器の口部に容器の軸線方向に直交する方向の磁界を発生することで、容器の口部側から容器の軸線方向に向けて照射される電子線を偏向させ、容器の口部の内周面や外周面に電子線を確実に照射することができる。
しかも、容器保持部に、永久磁石や電磁石からなる磁石部を設けるのみであるため、装置の大型化、高コスト化を招くことなく、簡易な構成で上記効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態における飲料充填設備の概要を示すレイアウト図である。
【図2】本実施形態における殺菌装置の概略構成を示す図である。
【図3】グリッパを示す平面図および斜視図である。
【図4】2台の殺菌装置を備える場合における、一方の殺菌装置のグリッパによる容器の把持方法と、他方の殺菌装置のグリッパによる容器の把持方法を示す図である。
【図5】永久磁石を備えたグリッパを示す平面図である。
【図6】殺菌装置に反射板を備えた構成を示す断面図である。
【図7】磁石により電子線が偏向される様子を示す図である。
【図8】2台の殺菌装置を備える場合における、一方の殺菌装置のグリッパによる電子線の偏向方向と、他方の殺菌装置のグリッパによる電子線の偏向方向を示す図である。
【図9】第二の実施形態におけるグリッパの構成を示す平面図である。
【図10】第三の実施形態におけるグリッパの構成を示す平面図である。
【図11】第四の実施形態におけるグリッパの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本実施の形態における飲料充填設備の概要を示す図である。
図1に示すように、飲料充填設備においては、供給されたPET樹脂からなる容器に対し、殺菌装置10において電子線照射により殺菌する殺菌工程、充填装置30において容器に液体を充填する充填工程、液体が充填された容器にキャッパ40においてキャップを装着するキャッピング工程、を順次経ることで、容器への飲料の充填が行われる。互いに前後する装置間においては、スターホイール50や搬送コンベア60により容器が搬送される。
なお、本実施形態においては、殺菌装置10を2台備え、容器100を一方の側と他方の側とからそれぞれ殺菌する構成を有している。以下の説明においては、2台の殺菌装置10を区別する必要があるときには、殺菌装置10A、10Bと示し、区別する必要のない説明を行う際には、単に殺菌装置10と示す。
【0017】
殺菌工程において用いられる殺菌装置10は、容器を搬送しながら容器に電子線を照射して殺菌を行う。
殺菌装置10は、円盤状の回転体11の外周部に、図2に示すように、供給された容器100を保持するグリッパ(容器保持具)12と、グリッパ12で保持した容器100内に挿入される棒状の電極13とが、周方向に間隔を隔てて複数組配置されている。
さらに、殺菌装置10には、グリッパ12で保持した容器100に対して電子線を照射する電子線照射装置(電子線殺菌部)20が、回転体11の外周側に設けられている。
【0018】
電子線照射装置20は、電子線発生源21と、ホーン22と、コントローラ(図示無し)とを備える。
電子線発生源21としては、いわゆる電子銃を用いることができる。この電子線発生源21では、ビーム状の電子線を発生し、これを、容器100に照射する。このとき、電子線照射装置20には、図示しないスキャン用磁石が備えられている。スキャン用磁石は、それぞれ、印加される電流に応じて発生する磁界が変化するものであり、コントローラの制御により発生する磁界を変化させることで、電子線発生源21で発生した電子線を所定の方向にスキャンさせるようになっている。ここで、電子線は容器100の高さ方向にスキャンするのが望ましい。
ホーン22は、電子線発生源21から離れるに従い、その断面寸法が拡大する筒状で、スキャン用磁石によって電子線のスキャンを行っているときの、電子線の照射領域を取り囲むように設けられる。
【0019】
グリッパ12は、回転体11と等速で回転するスターホイール50等の容器搬送手段から一本ずつ受け渡される空の容器100を、その首部100cを挟み込むことで保持する。
図3に示すように、グリッパ(容器保持具)12A、12Bは、それぞれ、ベース部材70に、軸71を介して回転可能に設けられ、SUS304、SUS316等の非磁性材料からなる一対のグリッパ爪72、72を有し、グリッパ爪72、72が図示しないアクチュエータによって開閉駆動される。
【0020】
ここで、本実施形態においては、前述したように、殺菌装置10を2台備えており、搬送方向上流側の殺菌装置10Aにおいては、容器100に対し、一方の側面側から電子線を照射し、下流側の殺菌装置10Bにおいては、容器100に対し、他方の側面側から電子線を照射する。このため、上流側の殺菌装置10Aと下流側の殺菌装置10Bとの間では、殺菌装置10Aのグリッパ12Aと、殺菌装置10Bのグリッパ12Bは、容器100の受け渡し位置において容器100を挟んで互いに対向するよう設けられている。
さらに、図4(a)に示すように、殺菌装置10Aのグリッパ12Aと殺菌装置10Bのグリッパ12Bとが干渉しないよう、殺菌装置10Aのグリッパ12Aのグリッパ爪72、72は、容器100の首部100cに形成された円環状のフランジ部100fの上側を把持し、図4(b)に示すように、殺菌装置10Bのグリッパ12Bのグリッパ爪72、72はフランジ部100fの下側を把持する。
【0021】
図5に示すように、このようなグリッパ12A、12Bは、それぞれ、グリッパ爪72、72に永久磁石(磁石部)73N、73Sが設けられている。これら永久磁石73N、73Sは、それぞれ、グリッパ爪72において容器100に当たる部分がN極、S極とされ、これによって、グリッパ爪72、72間において、永久磁石73Nから永久磁石73Sへと向かう磁力線M1が形成される。
ここで、グリッパ爪72、72自体を永久磁石73N、73Sで形成してもよいし、グリッパ爪72、72の表面に別体の永久磁石73N、73Sを取り付けるようにしてもよい。グリッパ爪72、72の表面に別体の永久磁石73N、73Sを取り付ける場合は、容器100のフランジ部100fの上側を把持するグリッパ12Aにおいては、永久磁石73N、73Sをグリッパ爪72、72の上面に取り付け、フランジ部100fの下型を把持するグリッパ12Bにおいては、永久磁石73N、73Sをグリッパ爪72、72の下面に取り付ける。
【0022】
図2に示したように、グリッパ12A、12Bで保持された容器100に対し、電極13を、図示しないシリンダ機構等によって挿入する構成とすることもできる。
電極13は、例えばステンレス、タングステン等からなる導電性材料からなり、棒状で、その長さは、容器100内に挿入されたときに、容器100の口部100aから底部100bの近傍まで位置するよう設定されている。
【0023】
ここで、電極13の構成について示す。
図6に示すように、容器100の口部100aの近傍に、容器100の側方に位置する電子線照射装置20から照射される電子線EBを反射し、容器100の口部100aから内部に向けて照射させる反射板(反射部材)80が設けられている。
そして、電極13は、この反射板80に一体に設けることができる。
【0024】
上記したような電極13は、接地することができる。また、電極13に、直流電源から、電圧を印加した状態とすることもできる。
殺菌装置10においては、グリッパ12で保持した容器100を後工程側のスターホイール50に受け渡すまでの間に、電子線照射装置20の電子線発生源21から電子線EBを容器100の外部から照射することで、容器100を殺菌する。それと同時に、接地、または直流電源からの電圧が印加されて一定電圧とされた電極13が容器100内に挿入されることで、電子線照射を行うことで容器100を形成する材料であるPET膜内に蓄積した電荷を除去し、殺菌と除電を当時に行うことができる。
【0025】
さらに、図2に示したように、電極13には、交流電源(交流電圧印加源)15を接続し、交流の電圧を印加することもできる。
このとき、印加する交流電流は、誘電体である容器100に対して十分な損失作用及び電流通電作用をもたらす周波数が好適であり、100Hz以上は必要であり、kMHz〜MHz程度がより望ましい。
この場合、電子線EBを容器100の外部から照射して容器100を殺菌すると同時に、交流の電圧が印加された電極13が容器100内に挿入される。これにより、電子線照射を行うことで容器100を形成する材料であるPET膜内に蓄積した電荷を除去し、殺菌と除電を当時に行う。
【0026】
上述したような構成によれば、殺菌装置10A、10Bのそれぞれにおいて、容器100の口部100aの近傍に反射板80が設けられているため、容器100の側方の電子線照射装置20から照射される電子線EBは反射板80で反射し、容器100の口部100aから内部に向けて照射される。
このとき、容器100を保持するグリッパ12のグリッパ爪72、72に永久磁石73N、73Sが設けられているため、グリッパ爪72、72間において、永久磁石73Nから永久磁石73Sへと向かう磁力線M1が形成される。すると、フレミングの左手の法則に従って、電子線EBは、電子線EBの流れ方向および磁力線M1の方向に直交する方向に偏向される。
その結果、図7に示すように、電子線EBが、容器100の口部100aの内周面に当たりやすくなり、この部分の殺菌を確実に行うことができる。
さらに、電子線EBは、反射板80で反射することによって、その速度が低減しており、これによって、電子線EBの偏向を効率良く行うことができ、上記効果は一層顕著なものとなっている。
加えて、図8に示すように、2台の殺菌装置10A、10Bにおいて、グリッパ12A、12Bにより、容器100を一方の側と他方の側から保持しているので、殺菌装置10Aのグリッパ12Aにおける電子線EBの偏向方向Haと、殺菌装置10Bのグリッパ12Bにおける電子線EBの偏向方向Hbを相対する方向とすることができる。これによっても、容器100の口部100aの内周面の全周にわたって確実な殺菌が行える。
【0027】
次に、本発明の複数の応用例を示す。ここで、以下に示す各実施形態においては、上記第一の実施形態に対し、グリッパ12A、12Bに備えた磁石の構成が異なるのみであるため、上記第一の実施形態に対する相違点を中心に説明し、上記第一の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
[第二の実施形態]
本実施形態においては、図9に示すように、殺菌装置10A、10Bのグリッパ12A、12Bのグリッパ爪72、72に、電磁石(磁石部)75N、75Sが設けられている。
電磁石75N、75Sは、それぞれ、鉄心にコイルを巻き付けたもので、コイルに所定方向の電流を流すことによって磁界を発生する。
ここで、電磁石75N、75Sは、グリッパ爪72、72に埋め込むように内蔵することもできる。また、電磁石75N、75Sをグリッパ爪72、72に取り付けることもできる。後者の場合、容器100のフランジ部100fの上側を把持するグリッパ12Aにおいては、電磁石75N、75Sをグリッパ爪72、72の上面に取り付け、フランジ部100fの下型を把持するグリッパ12Bにおいては、電磁石75N、75Sをグリッパ爪72、72の下面に取り付ける。
【0028】
これら電磁石75N、75Sは、それぞれ、グリッパ爪72において容器100に当たる部分がN極、S極とされ、これによって、グリッパ爪72、72間において、電磁石75Nから電磁石75Sへと向かう磁力線M1が形成される。
【0029】
上述したような構成によれば、上記第一の実施形態と同様、電磁石75N、75Sにより発生した磁界により電子線EBを偏向させることにより、電子線EBが、容器100の口部100aの内周面に当たりやすくなり、この部分の殺菌を確実に行うことができる。
【0030】
さらに、上記したような構成においては、電子線EBを照射している間に、電磁石75N、75Sのコイルに供給する電流をON/OFFさせることもできる。これにより、電子線EBが偏向した状態と、偏向していない状態との間で電子線EBをスキャンさせることができ、より均一に電子線EBを照射することができる。
【0031】
また、電子線EBを照射している間に、電磁石75N、75Sのコイルに供給する電圧(交流電圧)の強度を変化させることもできる。これによって、電子線EBを偏向させる曲率を変更させることができ、電子線EBを容器100の高さ方向にスキャンさせ、より均一な電子線照射が行える。
【0032】
加えて、電子線EBを照射している間に、電磁石75N、75Sのコイルに供給する電流の向きを入れ替えることもできる。これによって、電子線EBの偏向方向を180°入れ替えることができ、これによっても、容器100の口部100aの内周面全体に電子線EBを均一に照射できる。
【0033】
[第三の実施形態]
本実施形態においては、図10に示すように、殺菌装置10A、10Bのグリッパ12A、12Bに、容器100を把持する部分よりもベース部材70側に、電磁石(磁石部)76N、76Sが設けられている。
ここで、電磁石76N、76Sを結んだ仮想線Lが、容器100の口部100aの外周側を通るよう、電磁石76N、76Sが設けられている。
【0034】
このような構成によれば、容器100を保持するグリッパ12に電磁石76N、76Sが設けられているため、電磁石76N、76S間において磁力線M2が形成される。すると、フレミングの左手の法則に従って、電子線EBは、電子線EBの流れ方向および磁力線M2の方向に直交する方向Hcに偏向される。
その結果、容器100の口部100aの周囲を通る電子線EBが、容器100の口部100aの外周面に当たりやすくなる。したがって、グリッパ12のグリッパ爪72、72間の電子線EBの当たりにくい部分の殺菌を確実に行うことができる。
この場合も、電子線EBは、反射板80で反射することによって、その速度が低減しており、これによって、電子線EBの偏向を効率良く行うことができ、上記効果は一層顕著なものとなっている。
【0035】
[第四の実施形態]
本実施形態においては、上記第二の実施形態と第三の実施形態を組み合わせた構成を有している。
すなわち、図11(a)に示すように、殺菌装置10A、10Bのグリッパ12A、12Bのグリッパ爪72、72において容器100を把持する部分に電磁石75N、75Sが設けられ、容器100を把持する部分よりもベース部材70側に電磁石76N、76Sが設けられている。ここで、電磁石75N、75Sと、電磁石76N、76Sは、その磁力線M1、M2の向きが反対向きとなるように配置するのが好ましい。
【0036】
このような構成によれば、電磁石75N、75Sにより発生した磁界により電子線EBを偏向させることにより、電子線EBが、容器100の口部100aの内周面に当たりやすくなり、この部分の殺菌を確実に行うことができる。また、電磁石76N、76Sにより、容器100の口部100aの周囲を通る電子線EBが、容器100の口部100aの外周面に当たりやすくなる。したがって、グリッパ12のグリッパ爪72、72間の電子線EBの当たりにくい部分の殺菌を確実に行うことができる。このようにして、容器100の内周面および外周面の殺菌を確実に行うことが可能となる。
この場合も、電子線EBは、反射板80で反射することによって、その速度が低減しており、これによって、電子線EBの偏向を効率良く行うことができ、上記効果は一層顕著なものとなっている。
【0037】
ここで、上記電磁石75N、75S、76N、76Sは、図11(b)に示すように、C字状のヨーク78、79を備えるような構成とすることもできる。これらヨーク78、79により、磁力線が閉ループを構成するので、磁場のロスが少なくなり、容器100内外における磁場を効率よく作用させることができる。
【0038】
なお、上記各実施の形態では、飲料充填設備、殺菌装置10の各部の構成を示したが、本発明の主旨の範囲内であればいかなる構成のものとしても良い。
また、電極13、反射板80の構成も、上記に挙げた構成に限らず、本発明の主旨の範囲内であればいかなる構成のものとしても良い。
また、本発明において反射板80は必須ではなく、反射板80を備えずに、容器100の口部100a側から、容器100の軸線方向に電子線EBを照射する場合にも本発明は適用できる。
例えば、図2では容器100を正立状態とし、図6の例では容器100を倒立状態としているが、そのいずれとしてもよい。
また、図1の例においては、殺菌装置10を2台備え、容器100を一方の側と他方の側とからそれぞれ殺菌する構成を有しているが、これに限るものではない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、適宜組み合わせたり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10、10A、10B 殺菌装置
11 回転体
12、12A、12B グリッパ(容器保持具)
13 電極
20 電子線照射装置(電子線殺菌部)
21 電子線発生源
22 ホーン
30 充填装置
40 キャッパ
50 スターホイール
60 搬送コンベア
70 ベース部材
71 軸
72 グリッパ爪
73N、73S 永久磁石(磁石部)
75N、75S 電磁石(磁石部)
76N、76S 電磁石(磁石部)
78 ヨーク
80 反射板
100 容器
100a 口部
100b 底部
100c 首部
M1、M2 磁力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部を保持する容器保持具と、
前記容器保持具に保持された前記容器に電子線を照射して前記容器を殺菌する電子線殺菌部と、
前記容器保持具に設けられ、前記容器の口部に前記容器の軸線方向に直交する方向の磁界を印加し、前記電子線殺菌部により前記容器の口部側から前記容器の軸線方向に向けて照射される電子線を前記磁界により偏向させる磁石部と、
を備えることを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項2】
前記磁石部は、永久磁石からなることを特徴とする請求項1に記載の電子線殺菌装置。
【請求項3】
前記磁石部は、電磁石からなることを特徴とする請求項1に記載の電子線殺菌装置。
【請求項4】
前記電子線殺菌部で前記電子線を前記容器に照射している間に、前記電磁石を構成するコイルに供給される電流がON/OFFまたは前記電流の大きさが増減制御されることを特徴とする請求項3に記載の電子線殺菌装置。
【請求項5】
前記磁石部による磁界が、前記容器の前記口部を横切るように印加されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電子線殺菌装置。
【請求項6】
前記磁石部による磁界が、前記容器の口部の外周側に磁力線が位置するよう印加されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電子線殺菌装置。
【請求項7】
前記容器の口部の近傍に配置され、前記容器の側方に位置する前記電子線殺菌部から照射される電子線を反射して前記口部から前記容器の内部に照射する反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電子線殺菌装置。
【請求項8】
前記容器の前記口部から前記容器の内部に挿入配置され、導電性材料からなる棒状の電極をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電子線殺菌装置。
【請求項9】
前記電子線殺菌装置は、前記容器の一方の側から前記電子線を照射する第一の電子線殺菌装置と、前記容器の他方の側から前記電子線を照射する第二の電子線殺菌装置と、から構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電子線殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−1411(P2013−1411A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132914(P2011−132914)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】