説明

電子装置

【課題】車載用電子装置において筐体内部で発熱する電子部品が、筐体の振動や変形の影響を受けにくく、かつ、放熱量の増大を図れる電子部品の放熱構造を提供する。
【解決手段】発熱する電子部品を基板上に実装し、電子部品と筐体内面とが熱伝導部材で連結された電子装置において、前記発熱する電子部品と筐体内面とを連結する熱伝導部材は、一つの電子部品に対して少なくとも二つ以上の部材で構成され、前記複数の熱伝導部材の片端部を前記発熱電子部品に熱伝導の作用が有効なように接続し、それぞれの前記熱伝導部材の反対側の端部を筐体内面の相異なる面に固定したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーションやカーオーディオ等の電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に発熱する電子部品を実装し放熱する構造として、特許第2930923号公報に示す構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2930923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第2930923号公報には、基板上に実装され発熱する電子部品の熱を携帯型電子機器筐体表面に広げるための技術が開示されている。
【0005】
この文献の構成を説明すると、まず、筐体表面に電子部品とパッケージの外形と大きさがほぼ等しい柔軟な押当部材を貼り付ける。次に、二枚の帯状の熱伝導シートで直角二方向から押当部材と筐体内表面を広く覆い密着させる。最後に、電子基板に実装された発熱する電子部品を、押当部材上に覆った熱伝導シートの上から押し当てる。
【0006】
以上の構成により、電子部品で発生した熱を、二枚の熱伝導シートに伝え筐体の広い面積に広げることができる。上記のように特許文献1は、発熱する電子部品による発熱を筐体面に広げることにより電子部品の最高温度の低減を図るものである。
【0007】
しかしながら、放熱性能についてみると、電子部品で複数に分割した熱伝導シートを密着させた先の筐体は電子部品が搭載された配線基板とほぼ平行に対向する筐体表面である。そのため、複数に分割しない熱伝導シートと比べて放熱面積を増加させることによる放熱量の増大を図れるものではないという課題があった。
【0008】
また、筐体の変形への追従性についてみると、上記の発明においては筐体表面の垂直方向の変形に対しては、柔軟な押当部材の弾性により変位を吸収でき、電子部品への押付力の影響を小さくできる。例えば、携帯電話等の変形では筐体内の比較的広めの背面と平行に配置されるフラットパッケージ等の電子部品への影響は軽減できる。
【0009】
しかしながら、筐体の面と平行な方向の変形に関しては、密着させた熱伝導シートの変形が可能な範囲に限られてしまうという課題があった。
【0010】
本発明の目的は、走行時の変形や振動等が加わっても電子部品に必要以上の押付力を掛けず、接続部の信頼性に優れ、筐体からの放熱面積を増大させることにより放熱性能を高めた電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、筐体内部の基板上に発熱する電子部品を実装し、前記電子部品と筐体内面とが熱伝導部材で連結された電子装置において、発熱する前記電子部品と筐体内面とを連結する前記熱伝導部材は一つの前記電子部品に対して少なくとも二つ以上の部材で構成され、この二つ以上の前記熱伝導部材の片端部は前記発熱電子部品と熱的に接続され、それぞれの前記熱伝導部材の反対側端部は前記筐体内面と熱的に接続固定したものである。
【0012】
これにより、複数の熱伝導部材の片端部を前記発熱電子部品に熱伝導の作用が有効なように接続されて、それぞれの前記熱伝導部材の反対側の端部を筐体内面の相異なる面に固定されるため、筐体内部で発熱する電子部品が筐体の振動や変形の影響を受けにくく、かつ放熱量の増大を図れる電子機器の放熱が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行時の変形や振動等が加わっても電子部品に必要以上の押付力を掛けず、接続部の信頼性に優れ、筐体からの放熱面積を増大させることにより放熱性能を高めた電子装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による第1の実施例のカーナビゲーションの縦断面図である。
【図2】本発明による第1の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
【図3】本発明による第1の実施例を説明する電子部品近傍の横矢視図である。
【図4】インダッシュタイプのカーナビゲーションの外観と車体への取付け方法を説明する図である。
【図5】従来の技術での課題を説明する縦断面図である。
【図6】本発明による第2の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
【図7】本発明による第3の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
【図8】本発明による第4の実施例のカーナビゲーションの縦断面図である。
【図9】本発明による第5の実施例の簡易型カーナビゲーションにおける効果を説明する横断面図である。
【図10】本発明による第6の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
【図11】本発明による第7の実施例のカーナビゲーションの縦断面図である。
【図12】本発明による第8の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
【図13】本発明による第9の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
【図14】本発明による第10の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図にしたがって説明する。
【0016】
まず、本発明で対象とする一般的な車載用電子装置の実装形態の一例を図4で説明する。
図4は一般的な車載用電子装置の斜視図である。
図4において、車両のコンソール部のパネルに埋め込み搭載するカーナビゲーション1(通称:インダッシュタイプ)としては、図4に示すような外観構造を採る。前面部分には運転者への道路案内用の地図情報や、停止時にテレビやDVD(ディジタル・ヴァーサタイル・ディスク)の映像等を表示するためのタッチパネル付ディスプレイ11がある。
背面部分には、図示しない電源や車速信号等のセンサを接続する多数の配線を束ねたハーネス用のコネクタがある。側面の12と13には、車両メーカや車体の種類に合わせた取付固定用のブラケット120と130が取付けられる。
【0017】
次に、本発明に関連するインダッシュタイプのカーナビゲーションの車両本体への取付け方法を説明する。図示しない車両側のコンソール部のパネルを取り外すと、カーナビゲーションやカーオーディオを適宜搭載可能な規格寸法(1DIN[ドイツ工業規格:Deut
sches Institut fur Normungの略]の場合:幅180mm,高さ50mm、2DINの場合:幅180mm,高さ100mm)の収納部8がある。
【0018】
車両側から延びた複数のハーネスの大小のコネクタ81を、カーナビゲーション1の背面部のコネクタに接続し、収納部8にカーナビゲーション1を差込む。次に、カーナビゲーション1に前方部分から複数の取付ネジ82で車両本体の取付部83に締め付け固定する。最後に、表面側にディスプレイ11部に穴が空き、車両の意匠性を高めるコンソール部のパネルを取付けることによってカーナビゲーションの車両本体の取付けが完了する。
【0019】
本発明の特徴的な内部構造について、図1と図2を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の一実施例を備えた車載用電子装置であり、図4におけるA−A断面図である。
図2は図1におけるB−B断面図である。
図1,図2において、カーナビゲーション1の筐体内には、例えばDVDドライブ21や地図情報を収めたハードディスクドライブ22、また、多数の電子部品を実装した複数の多層基板3が高密度に実装されている。
【0021】
基板3上には、変化する地図情報等の演算処理を行い発熱量の大きな電子部品4や、その他の電子部品が実装されている。電子部品4は、例えばLSIチップをセラミックスや樹脂製のフラットパッケージに収め、基板3と半田ボール(BGA:ボール・グリッド・アレイ)41で接続して給電と共に信号の入出力を行うものである。
【0022】
次に、本発明の特徴を説明する。電子部品4のパッケージの上面側には、柔軟な熱伝導シート51を介して図1の断面と平行な断面で切った断面形状がL字状の熱伝導部材61が貼り付けられる。熱伝導部材61のさらに上面には、熱伝導シート52が貼り付けられ、熱伝導部材62がこれに接着される。熱伝導部材61と62の電子部品近傍とは反対側の端部610と620は、それぞれ側面13と12の内面側にネジで固定される。
【0023】
すなわち、熱伝導部材61と62はそれぞれ側面13,12を支持部とする片持ち梁となる。なお、熱伝導シート51と52は接着シート付で電子部品4と熱伝導部材61、また、熱伝導部材61,62同士を接着することが好ましいが、片面のみ接着シートで、他方の面は面精度が高ければ面接触させるだけの構成であっても良い。さらに、熱伝導シートは熱伝導率の高いフィラーを含有したペースト状の熱伝導グリース等、熱伝導率が比較的高く熱伝導部材よりも弾性が高く柔軟な部材であれば不定形であっても良い。さらには、熱伝導シート類はなく、電子部品4と熱伝導部材61,熱伝導部材62がそれぞれ高い面精度で接触して摺動可能な構造であっても良い。
【0024】
次に、本発明の動作を同じく図1と図2を用いて説明する。
車のエンジンキーをI(ACC)かII(ON)の状態にすることでカーナビゲーションが起動すると、電子部品4は通電され発熱を開始する。また、ユーザの使用によって地図情報の検索等の処理負荷が増えると発熱量が増大し、放熱構造がないと損傷に至るまで温度上昇し続けることとなる。
【0025】
そこで本発明による構成では、電子部品4のパッケージ上面には、熱伝導シート51が貼り付けられており、電子部品で発生した熱は熱伝導部材61に伝わる。熱伝導部材61は、アルミや銅合金等の比較的熱伝導率の高い材料でできており、熱は反対側にある低温側の端部610に導かれる。端部610は、側面13の内面に複数のネジで固定されているため、熱は側面13に伝えられる。一方、電子部品4の上面の熱伝導部材61の上にはさらに別の熱伝導シート52が貼り付けられ熱伝導部材62を接着している。
【0026】
これにより、熱伝導部材62も61と同様に電子部品4からの熱を熱伝導シート52を介して低温側の端部620に導き、側面12の内面に伝えることができる。側面12と13に伝えられた熱は、コンソール部内の空気の対流や低温部への放射によって放熱される。さらに筐体面の熱は、図4で示したブラケット120と130から収納部の取付部83を介して車両シャーシに伝わり、シャーシから最終的に車内外の空気に放熱される。なお、側面12と13の内面と熱伝導部材端部610,620との接触面には熱伝導シートを介在させれば、この部位の接触熱抵抗の低減が図れ、放熱量をさらに増やすことができる。
【0027】
図2はファン9をカーナビゲーション1の背面14側に設けた構造で示す。一般に、高機能のカーナビゲーションはファン付の構造であっても、放熱性能を高めにくい場合がある。具体的には、カーナビゲーション前面部分は、意匠性を高めることや、塵埃の侵入防止の観点から大きな開口部は設けられない。そのため、本体とディスプレイ11等で構成される僅かな隙間111等からのみ空気が筐体本体内に流入可能となる。また、部品の実装密度が高く、空気流路が狭いために風量の確保が難しい場合もある。その結果、電子部品近傍での空気による対流効果が小さく効果的な放熱が難しい。
【0028】
また、DVDドライブ21等ではディスクの出し入れの際に高温になったディスクをユーザが手に触れることを防止するため、電子部品4などから発生した熱によってDVDドライブ21筐体が温度上昇しないように電子部品4から筐体にいたる放熱経路の制約を強いられる場合がある。
【0029】
その点、本発明のように電子部品4で発生する熱を熱伝導部材61,62によって熱伝導でそれぞれ異なった筐体側面に導くことにより、放熱経路を規定でき、さらに、一つの熱伝導部材で筐体の一つの筐体面に放熱するよりも広い放熱面積が有効に生かせ、効果的に電子部品4を冷却できる。
【0030】
また、図1で示した構成の装置で、複数の基板3やDVDドライブ21等を下側から組立てていく場合、電子部品4と平面方向に電子部品の高さから大幅に高めることなく熱伝導部材61,62が構成されるため、DVDドライブ21下面と電子部品4および熱伝導部材61,62は物理的に干渉しない。したがって、熱伝導部材とDVDドライブ底面との隙間の組立精度の管理等の問題が回避できる。
【0031】
次に、図1と図2および図3を用いて、車両が走行を開始した場合の本発明の動作を説明する。
図3は第1の実施例を説明する電子部品近傍の拡大断面図である。
図3において、車両の走行に伴い車両本体コンソール部にはエンジンの動作や路面の状況により振動と変形が生じる。この振動や変形によって、図4中に示したように筐体側面部分を車両コンソール部と締結するカーナビゲーションの側面12と13は、圧縮力や引張力を受けることになる。
【0032】
図5は従来技術の課題を説明するための車載電子機器の縦断面図である。
図5に示すように、図1や図2の発明と同様に放熱面積の増加による性能向上を目的として、電子部品4上に接する熱伝導部材を側面12と13を連結するように一体で設けた、いわゆる両持ち梁の構成を想定してみる。
【0033】
図5中の矢印で示すように、筐体の両方の側面から圧縮力を受けた場合、金属性の熱伝導部材63は撓み、図中破線で示すような紙面上下方向の弾性変形を生じる。変形力が小さい場合は、熱伝導部材63と電子部品4との間に介在させた断熱層を含む熱伝導シート50で撓んだ変位を吸収できる。しかし、変形量が大きな場合、一部熱伝導シートの弾性変形による外力の吸収はあるものの熱伝導部材63に機械的に接続する電子部品4に過大な外力を与えてしまう。この外力が著しい場合には、微細な半田ボール41を損傷してしまうことや、電子部品パッケージ内部回路の損傷を引き起こしてしまう。また、静止時において、熱伝導部材63が温度変化により伸張した場合も、同様の現象が生じることが考えられる。
【0034】
一方、図1と図2に示した本発明の構造は、以下に述べる構成により外力による筐体の変形が電子部品に及ぼす影響を防ぐことができる。
【0035】
図3に電子部品4と熱伝導部材61および熱伝導部材62の位置関係の詳細を示す。図中の破線が、外力によって変位611,612方向の変位が生じた様子を示す。筐体側面の圧縮力と引張力による変位611と612は、熱伝導部材よりも弾性が高くて柔軟な断熱層を有する熱伝導シート51と52剪断方向の変形によって吸収できる。ここで、本発明で最大の特徴となる点は、二つの熱伝導部材61と62は機械的に剛に締結されていないことである。その結果、相互に相対的な変位を生じることが可能で電子部品4への押付力の増加を防止できる。
【0036】
なお、熱伝導部材61と62による電子部品4への押付力は、材質の縦弾性係数と厚さを選定し、予め所定の位置関係で側面筐体内面に固定することによって任意に設定可能である。
【0037】
さらに、熱伝導部材61の弾性による押付力よりも熱伝導部材62の押付力を高めに設定することで電子部品4への二つの熱伝導部材の安定した押付けが可能となる。
【0038】
このように、本発明の構成によれば車両走行時の振動や変形に影響を受けず発熱する電子部品から効果的に安定に放熱できる。
【実施例2】
【0039】
図6は、第2の実施例を備えたカーナビゲーションの横断面図である。
図6において、図1における発明では、カーナビゲーション筐体の両方の側面への放熱構造で示したが、図6の発明では一方の熱伝導部材62の端部620を背面14側の内面に固定している。このような構成により、背面側の筐体面を放熱面として用いることができると同時に、熱伝導部材62自体をヒートシンク(拡大伝熱面)として放熱ができる。
つまり、ファン9近傍の空気の速い空気の流れ91によって、熱伝導部材62の上下面の熱伝達率を高めることが可能となる。また、筐体外部ではコンソールの収納部8の奥、側面よりも比較的空間容積のある部位を活かした放熱が可能となる。
【0040】
また、図示しないが熱伝導部材62の一方の筐体内面固定側端部を、筐体前面部分のディスプレイ11の背面近くに取付けた場合、筐体の空気の吸込口が近傍にあるため、ファン9の動作によって筐体内に吸い込まれた直後の最も低温の空気の対流による放熱効果を期待できる。
【実施例3】
【0041】
図7は、第3の実施例を備えたカーナビゲーションの横断面図である。
図7において、図6の発明と異なる点は、電子部品4の上面に貼り付けた熱伝導シート53の上面の同一平面上で、熱伝導部材61と62を隙間64だけ空けて接着した構成である。隙間64は、組立性を考慮した上で、想定される筐体の最大の変形時において、熱伝導部材61と62が干渉しない寸法で設定する。このような構成により、図1に示した熱伝導部材が電子部品4の上部で重なり合う構成よりも薄型化が可能である。また、図1と等しい厚さを許容できる場合には、個々の熱伝導部材の厚さを図1のものよりも厚くできるため、熱伝導部材部分の熱抵抗を低減し放熱量の増大を図ることができる。
【0042】
図7では、熱伝導部材61と62は側面13と背面14側に直角方向に固定した構成で示すが、隙間64を確保した上で、両方側面方向、または、前面と背面方向のように対向する方向から配置した構成であっても本発明の効果は達成される。
【実施例4】
【0043】
図8は第4の実施例のカーナビゲーションの縦断面図である。
図8において、熱伝導部材61と62をそれぞれ線膨張率の異なる複数の金属61aと61b、また、62aと62bのように貼り合せたバイメタル構造にしたものである。このような構成により、熱伝導部材61と62の温度上昇を検知して自ら変形し、端部を固定する筐体自体が熱変形した場合等でも、最適な力で電子部品4に熱伝導部材61,62を押付けることが可能となる。例えば、筐体に鉄板を想定した場合、鉄の線膨張率は12(×10-6/K)である。この場合、基板の変形は無視すると、電子部品4の発熱による温度上昇によって、熱伝導部材61と62内には温度分布が生じる。電子部品4側に近い面は温度が高いために伸びが大きく反対側は伸びが小さい。そのため、電子部品4への熱伝導部材の押付力は小さくなる傾向である。
【0044】
そこで、熱伝導部材の上面側61bと62bを線膨張率が23(×10-6/K)と比較的大きいアルミで、一方、下面側の熱伝導部材部材61aと62aを線膨張率が17(×10-6/K)の銅で構成することで、電子部品4が貼り付けられる自由端を、温度上昇によって下側に変形させ、電子部品に押付力を発生させることができる。
【実施例5】
【0045】
図9は第5の実施例を備えた簡易型カーナビゲーションの横断面図である。
図9において、本発明の図6に示した構成を簡易型カーナビゲーション等(PND:パーソナル・ナビゲーション・デバイス)に適用した構造を示す。簡易型カーナビゲーションは、DVDドライブ等は搭載しない簡易的な機能のカーナビゲーションであり、小型,軽量が大きな特徴である。そのため、本体は背面の取付穴92に専用取付金具93を用いて車両のダッシュボード上やフロントガラス内面に固定することが多い。
【0046】
図9では、熱伝導部材62を背面14に導いて固定している。この構成により、ディスプレイ11に近いユーザ側から離れた、背面14からの自然対流による放熱を促進できると共に、背面14に伝えた熱を、取付金具93を介して熱伝導によって外部に放熱することが可能となる。この場合においても、振動や変形に対して電子部品4への外力の影響を小さくしつつ効果的な放熱が可能である。
【実施例6】
【0047】
図10は第6の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
図10において、熱伝導部材62を、基板3上に実装した部品高さの高いコンデンサ等の電子部品42と干渉しないように構成したものである。このような構成によって、熱伝導部材62の断面積が部分的に小さくなるため熱伝導特性は若干影響を受けるが、電子部品の実装上の制約を抑えることができ、基板実装設計が放熱構造とある程度分離して可能になることなど設計の自由度が向上する効果がある。
【実施例7】
【0048】
図11は第7の実施例のカーナビゲーションの縦断面図である。
図11において、電子部品4の上面で重なり合う熱伝導部材61と62の所定の部分のみ薄肉化したものである。このような構成により、放熱構造の薄型化が図れ、他部品との干渉が回避でき実装の自由度が向上する。なお、図では熱伝導部材61を一つの部品で構成しているが、板厚の薄い部分と厚い部分の別部品の組合せであっても本発明の効果は達成される。また、熱伝導部材は長手方向に折り曲げ,段差を持ったものでも良い。
【実施例8】
【0049】
図12は第8の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
図12において、熱伝導部材61の端部610と熱伝導部材62の端部620を、それぞれ側面12と13の外表面に取付けられたブラケット120と130の近傍まで延長した構成である。このような構成により、熱伝導部材61と62から伝わる熱を、それぞれのブラケット120と130まで低い熱抵抗で輸送できる。さらに、側面12と13を一部切り欠いて、熱伝導部材端部610とブラケット130がネジによって直接締結される構造であれば、熱伝導部材から車両シャーシ側への、さらに低い熱抵抗の放熱経路が実現できる。
【0050】
以上のように、本発明によれば筐体内部で発熱する電子部品を内蔵した電子装置において、電子部品が車両の走行時のように発生する筐体の振動や変形の影響を受けにくい。また、筐体からの放熱面積を増加することにより放熱量の増大を図った電子部品の放熱構造を提供できる。
【実施例9】
【0051】
図13は第9の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
図13において、図1から図12までの発明においては、熱伝導部材を筐体側面や前面,背面に接続する構造で示した。図13の発明では、筐体上面に接続して放熱面として使用した例である。このような構造により熱伝導部材62の長さが長くなるが、側面部分への接続が困難な場合には有効な放熱が可能となる。また、筐体下面に接続した場合にも本発明は有効である。
【実施例10】
【0052】
図14は第10の実施例のカーナビゲーションの横断面図である。
図14において、図1から図13までの発明においては、熱伝導部材を金属等の剛性の高い材料での構成で示した。本実施例では、図14に示すように熱伝導部材の一部分の61c,62cにグラファイトシートや、カーボンを含有したゴム等の変形が容易で高熱伝導率の材料を介在させたものである。このような構成により、この部分での変形が容易になり、より大きな変形も吸収可能となり電子部品4への外力を小さく抑えることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 カーナビゲーション
3 基板
4,42 電子部品
8 収納部
9 ファン
11 ディスプレイ
12,13 側面
14 背面
21 DVDドライブ
22 ハードディスクドライブ
41 半田ボール
51,52 熱伝導シート
61,62 熱伝導部材
64 隙間
81 コネクタ
82 取付ネジ
83 取付部
91 空気の流れ
92 取付穴
93 取付金具
111 ディスプレイ部隙間
120,130 ブラケット
610,620 端部
611,622 変位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部の基板上に発熱する電子部品を実装し、前記電子部品と筐体内面とが熱伝導部材で連結された電子装置において、
発熱する前記電子部品と筐体内面とを連結する前記熱伝導部材は一つの前記電子部品に対して少なくとも二つ以上の剛体の部材で構成され、前記二つ以上の前記熱伝導部材の端部は発熱する前記電子部品と熱的に接続され、それぞれの前記熱伝導部材の前記端部の反対側に位置する反対側端部は前記筐体内面と熱的に接続固定されていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子装置において、
発熱する前記電子部品は前記二つ以上の前記熱伝導部材を介して前記筐体内面の複数の面に接続されていることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項1記載の電子装置において、
発熱する前記電子部品と前記筐体内面とを連結する前記熱伝導部材は、前記電子部品の上面で互いに重なり合うことを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項1記載の電子装置において、
発熱する前記電子部品と前記筐体内面とを連結する前記熱伝導部材は、前記電子部品の上面で互いに所定の隙間を持って対向して前記電子部品上面と熱的に接続されていることを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項1記載の電子装置において、
前記熱伝導部材は、線膨張率の異なる金属を貼り合せて構成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項6】
請求項1記載の電子装置において、
前記熱伝導部材は前記基板上に実装された電子部品の存在する空間を回避する形状に形成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
請求項1記載の電子装置において、
前記熱伝導部材の前記電子部品と熱的に接続される面と垂直方向の厚さが前記反対側端部より前記端部の方が薄いことを特徴とする電子装置。
【請求項8】
請求項1記載の電子装置において、
前記熱伝導部材の前記反対側端部を、前記筐体外面の取付用金具の取付部分に配設したことを特徴とする電子装置。
【請求項9】
請求項1記載の電子装置において、
前記二つ以上の前記熱伝導部材の前記反対側端部は前記熱伝導部材より柔軟な部材を介して前記筐体内面の異なる面に固定されることを特徴とする電子装置。
【請求項10】
請求項1記載の電子装置において、
前記二つ以上の前記熱伝導部材の前記端部は、前記電子部品上に前記熱伝導部材より柔軟な部材を介して接着されることを特徴とする電子装置。
【請求項11】
請求項9〜10記載の電子装置において、
前記柔軟な部材は熱伝導シートまたは熱伝導性グリースであることを特徴とする電子装置。
【請求項12】
請求項1記載の電子装置において、
前記電子装置は、車載用電子装置であることを特徴とする電子装置。
【請求項13】
請求項1記載の電子装置において、
前記熱伝導部材は、線膨張率の異なる金属を貼り合わされ、発熱する前記電子部品側に近い側の前記金属の線膨張率よりも離れた側の前記金属の線膨張率が大きい材料であることを特徴とする電子装置。
【請求項14】
請求項1記載の電子装置において、
前記熱伝導部材は少なくとも一部分に弾性体を含むことを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−219175(P2010−219175A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62228(P2009−62228)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】