説明

電子部品の放熱構造

【課題】 従来の電子部品の放熱構造は、取付金具で電子部品上に放熱フィンを取り付けていたので、プリント基板1上の部品実装範囲及びパターン敷設範囲を狭めてしまい、部品点数が増加してしまい、放熱フィンの電子部品への実装の作業工程数が増えてしまう。
【解決手段】 電子部品2Aがプリント基板1に半田付けされた状態において、作業者は、電子部品2Aの天面に形成された半田付け用の座27上にアルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aを直接半田付けする。放熱フィン3は、電子部品2の熱を外部に放出するものであり、方形状の板の一面に複数の円柱形状の突起を突出させた構造をしている。天面に半田付け用の座が形成された電子部品の座上に直接放熱フィンが半田付けされるので、十分な伝熱効果を得ることができ、かつ、部品点数を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プリント基板に実装される電子部品の放熱構造に関し、特に、携帯電話などの基地局に使用される通信装置内の電子部品の放熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近の技術の進歩に伴って、携帯電話用基地局に使用される通信装置は、年々小型化が進んでいる。その一方で、通信装置では、単位体積当たりの内部発熱量が増加することになり、以前に増して、内部の電子部品の効率的な放熱が要求されている。
【0003】図4及び図5は、従来の電子部品の放熱構造を示す斜視図であり、ここで、図4は、放熱フィン実装前の状態を示し、また、図5は、放熱フィン実装後の状態を示すものである。図4及び図5において、プリント基板1は、その表面に電子部品2を実装するものである。このプリント基板1には、取付金具4をネジ止めするための一対のネジ穴11が設けられている。電子部品2は、プリント基板1に半田付けされるボール状の足が形成されたBGA(Boll Grid Array ;ボール・グリッド・アレイ)である。電子部品2の構造の一例を図6に示す。
【0004】図6に示すように、電子部品2は、その内部の樹脂基板21がくりぬかれてポッティングレンジ22が形成されている。電子部品2の天面(上面)には、チップ23の熱を逃がす(溜める)ヒートシンク24が形成され、電子部品2の下面には、プリント基板1に半田付けされる複数の半田ボール25が形成されている。チップ23は、ポッティングレンジ22内で、かつヒートシンク24の内面(下面)に接触して配設されている。チップ23から出ているAuワイヤ26は樹脂基板21に接続されている。
【0005】図4及び図5に示すように、放熱フィン3は、電子部品2(のチップ23)の熱を外部に放出するものであり、この放熱フィン3は、方形状の板の一面に複数の円柱形状の突起を突出させた構造をしている。取付金具4は、放熱フィン3を電子部品2(のヒートシンク24)上に取り付ける金具であり、この取付金具4は、折れ曲がった板の一端に、放熱フィン3の突起を引っ掛ける穴が設けられ、他端に、ネジ止め用のネジ穴が設けられている。ネジ5は、取付金具4をプリント基板1に取付け固定するものである。
【0006】シリコン6は、電子部品2の熱を効率よく放熱フィン3に伝えるために、電子部品2と放熱フィン3との間の隙間に充填されるものである。
【0007】次に、放熱フィン3の電子部品2への実装(取付け)動作について説明する。電子部品2がプリント基板1に実装(半田付け)された状態において、作業者は、電子部品2の天面(ヒートシンク24の上面)にシリコン6を塗布し、その後、電子部品2の天面に放熱フィン3を載せる。このように、電子部品2と放熱フィン3の間に伝熱性(熱伝導性)のよいシリコン6を充填させることによって、電子部品2と放熱フィン3との間の隙間がなくなり、効率よく電子部品2の熱を放熱フィン3に伝えることができる。
【0008】次に、作業者は、放熱フィン3の対角位置の端部の突起に、ぞれぞれ一対の取付金具4の穴を引っ掛けるとともに、一対のネジ5をプリント基板1のネジ穴11及び取付金具4のネジ穴に貫通させて、一対の取付金具4をプリント基板1にネジ止めする。これにより、放熱フィン3が電子部品2上に固定される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来の電子部品の放熱構造は、以上のように構成されていたので、プリント基板1には取付金具4をネジ止めするためのネジ穴11が必要であり、このネジ穴11の分だけ、プリント基板1上の部品実装範囲及びパターン敷設範囲を狭めてしまう。また、一対の取付金具4及びネジ5が必要であり、部品点数が増加してしまう。さらに、電子部品2の放熱フィン3への伝熱効果を上げるために、電子部品2と放熱フィン3との間に伝熱性のよいシリコン6を充填させる必要があり、放熱フィン3の電子部品2への実装(取付け)の作業工程数(組立工程数)が増えてしまうなどの課題があった。
【0010】この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、十分な伝熱効果を得ることができ、かつ、プリント基板上の部品実装範囲及びパターン敷設範囲を狭めることなく、部品点数を削減することができ、さらに放熱フィンの電子部品への実装の作業工程数を削減することができる電子部品の放熱構造を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明に係る電子部品の放熱構造は、天面に半田付け用の座が形成された電子部品と、座上に直接半田付けされた放熱フィンとを備えたものである。
【0012】請求項2記載の発明に係る電子部品の放熱構造は、放熱フィンを、アルミ含浸カーボンで形成したものである。
【0013】請求項3記載の発明に係る電子部品の放熱構造は、座を、アルミまたは銅で形成したものである。
【0014】請求項4記載の発明に係る電子部品の放熱構造は、座の代わりに、電子部品の天面に、半田ボールを形成したものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を説明する。図1及び図2は、この発明の実施の形態1による電子部品の放熱構造を示す斜視図である。ここで、図1は、放熱フィン実装前の状態を示し、また、図2は、放熱フィン実装後の状態を示している。図1及び図2R>2において、プリント基板1は、その表面に電子部品2を実装するものであり、電子部品2Aは、プリント基板1に半田付けされるボール状の足が形成されたBGA(Boll Grid Array ;ボール・グリッド・アレイ)であり、その構造を図3に示す。
【0016】図3に示すように、電子部品2Aは、上記図6に示した電子部品2と同様、その内部の樹脂基板21がくりぬかれてポッティングレンジ22が形成され、電子部品2Aの上部には、チップ23の熱を逃がす(溜める)ヒートシンク24が形成され、電子部品2Aの下面には、プリント基板1に半田付けされる複数の半田ボール25が形成されている。チップ23は、ポッティングレンジ22内で、かつヒートシンク24の内面(下面)に接触して配設されている。チップ23から出ているAuワイヤ26は樹脂基板21に接続されている。
【0017】一方、電子部品2Aは、電子部品2と異なり、その天面(ヒートシンク24の上面、即ち、プリント基板1と半田付けする面と反対側の面)に板状の半田付け用の座27が形成されている。この半田付け用の座27は、アルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aを半田付けするために設けられたものであり、半田付け可能な材料、例えば、アルミ(Al)、銅(Cu)などで形成されている。
【0018】図1及び図2に示すように、アルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aは、電子部品2A(のチップ23)の熱を外部に放出するものであり、半田付け可能なこと、かつ放熱性及び軽量化を考慮して、カーボン素材にアルミを含浸させて形成されている。このアルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aは、上記図4及び図5に示した放熱フィン3と同様に、方形状の板の一面に複数の円柱形状の突起を突出させた構造をしている。
【0019】次に、アルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aの電子部品2Aへの実装(取付け)動作について説明する。電子部品2Aがプリント基板1に実装(半田付け)された状態において、作業者は、電子部品2Aの天面(ヒートシンク24の上面)に形成された半田付け用の座27上にアルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aを直接半田付けする。
【0020】ここで、従来の放熱フィン3は、重量が重かったので、一対の取付金具4をプリント基板1にネジ止めして、放熱フィン3を電子部品2上に取付固定する必要があったが、アルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aは、上記したように、軽量化されているので、半田付けによってアルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aを電子部品2A上に取付固定しても、十分な強度を得ることができる。
【0021】以上のように、この実施の形態によれば、電子部品2Aの天面に形成した半田付け用の座27上に、直接アルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aを半田付した構造であるので、上記図4及び図5に示したような取付金具4を使用する必要がなく、従って、プリント基板1上に取付金具4をネジ止めするためのネジ穴11を設ける必要がなくなり、プリント基板1上の部品実装範囲及びパターン敷設範囲を狭めることがない。また、取付金具4及びネジ5が不要であるので、部品点数を削減することができ、製造コストも削減することができる。
【0022】また、電子部品2Aとアルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aとを直接半田付けしているので、アルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aへの伝熱性(熱伝導性)も十分担保されており、従って、電子部品2A内部(チップ23)の発熱を効率よくアルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aから放出することができる(十分な伝熱効果を得ることができる)。また、電子部品2Aとアルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aとの間に、伝熱性のよいシリコン6を充填させる必要がなく、その結果、作業工程数を削減することができ、組立コストも削減することができる。
【0023】尚、上記実施の形態では、電子部品2Aの天面にアルミ含浸カーボン製放熱フィン3Aを半田付けするための座27を形成していたが、この半田付け用の座27の代わりに、電子部品2Aの下面に設けられた半田ボール25と同様の半田ボールを天面に設けてもよい。
【0024】また、上記実施の形態では、放熱フィンを、アルミ含浸カーボンで形成していたが、これに限るものではなく、半田付け可能で、放熱性も良好で、軽量化が図れる材料であれば、均等な材料に変更することも可能である。
【0025】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によれば、天面に半田付け用の座が形成された電子部品と、座上に直接半田付けされた放熱フィンとを備えたので、十分な伝熱効果を得ることができ、かつ、プリント基板上の部品実装範囲及びパターン敷設範囲を狭めることなく、部品点数を削減することができ、さらに放熱フィンの電子部品への実装の作業工程数を削減することができるという効果を奏する。
【0026】請求項2記載の発明によれば、放熱フィンを、アルミ含浸カーボンで形成したので、電子部品に半田付け可能で、放熱性も良好で、さらに放熱フィンを軽量化することができるという効果を奏する。
【0027】請求項3記載の発明によれば、座を、アルミまたは銅で形成したので、放熱フィンを確実に半田付けすることができるという効果を奏する。
【0028】請求項4記載の発明によれば、座の代わりに、電子部品の天面に、半田ボールを形成したので、放熱フィンを確実に半田付けできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態における、放熱フィン実装前の状態を示した電子部品の放熱構造を示す斜視図である。
【図2】 この発明の実施の形態における、放熱フィン実装後の状態を示した電子部品の放熱構造を示す斜視図である。
【図3】 電子部品の構造を示す断面図である。
【図4】 放熱フィン実装前の状態を示した従来の電子部品の放熱構造を示す斜視図である。
【図5】 放熱フィン実装後の状態を示した従来の電子部品の放熱構造を示す斜視図である。
【図6】 電子部品の構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
2A 電子部品(BGA)
3A アルミ含浸カーボン製放熱フィン(放熱フィン)
27 座

【特許請求の範囲】
【請求項1】 天面に半田付け用の座が形成された電子部品と、前記座上に直接半田付けされた放熱フィンとを備えたことを特徴とする電子部品の放熱構造。
【請求項2】 放熱フィンは、アルミ含浸カーボンで形成されたことを特徴とする請求項1記載の電子部品の放熱構造。
【請求項3】 座は、アルミまたは銅で形成されたことを特徴とする請求項1記載の電子部品の放熱構造。
【請求項4】 座の代わりに、電子部品の天面に、半田ボールを形成したことを特徴とする請求項1記載の電子部品の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−298137(P2001−298137A)
【公開日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−115604(P2000−115604)
【出願日】平成12年4月17日(2000.4.17)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】