説明

電子部品

【課題】高いQ値を得ることができる電子部品を提供する。
【解決手段】積層体(12)は、複数の絶縁体層(16a〜16j)が積層されて構成されている。コイル(L1)は、積層体(12)に内蔵されているコイルであって、コイル軸(X1)を有し、かつ、コイル軸(X1)の周囲を反時計回りに旋廻しながらz軸方向の正方向側に進行している。コイル(L2)は、コイル(L1)と接続されていると共に、積層体(12)に内蔵されているコイルであって、コイル軸(X2)を有し、かつ、コイル軸(X2)の周囲を反時計回りに旋廻しながらz軸方向の負方向側に進行している。z軸方向から平面視したときに、コイル軸(X1)は、コイル(L2)の内部に位置し、コイル軸(X2)は、コイル(L1)の内部に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、コイルを内蔵している電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の積層型コイル部品が知られている。該積層型コイル部品では、複数の絶縁性グリーンシートが積層されて直方体状の積層体を構成している。前記複数の絶縁性グリーンシートには、コイル用導体が設けられている。該コイル用導体は、ビアホールにより互いに接続されることにより、螺旋状のコイルを構成している。また、積層体の2つの側面を覆うように2つの端子電極が設けられており、該2つの端子電極の間には、該螺旋状のコイルが接続されている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の積層型コイル部品では、端子電極は、積層体の側面を覆うように設けられているので、積層方向に垂直な方向において各コイル用導体と近接して並んでしまう。そのため、コイル用導体と端子電極との間に浮遊容量が発生してしまう。浮遊容量が発生すると、コイルの共振周波数が低下し、コイルを使用する周波数において、Q値が低下するという問題がある。故に、積層型コイル部品において、浮遊容量の発生は、コイルを内蔵している電子部品のQ値を低下させる原因となる。
【0004】
前記のような浮遊容量の発生を抑制することができる電子部品としては、例えば、図7に示すLGA(Land Grid Array)構造を有する電子部品500が挙げられる。図7は、電子部品500の分解斜視図である。以下、電子部品500の積層方向をz軸方向と定義し、電子部品500の長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品500の短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。
【0005】
電子部品500は、積層体502、外部電極506a,506b及びコイルL501,L502を備えている。積層体502は、長方形状の絶縁体層504a〜504iが積層されることにより構成されている。コイルL501は、絶縁体層504d〜504h上に設けられたコイル電極508a〜508eがビアホール導体Bにより接続されることにより構成されている。また、コイルL502は、絶縁体層504d〜504h上に設けられたコイル電極510a〜510eがビアホール導体Bにより接続されることにより構成されている。また、コイルL501とコイルL502とは、コイル電極508aとコイル電極510aとが接続されることにより、接続されている。
【0006】
また、外部電極506a,506bはそれぞれ、積層体502のz軸方向の負方向側の面に形成されており、コイル電極508e,510eとビアホール導体Bを介して接続されている。以上のような構成を有する電子部品500では、外部電極506a,506bは、積層体502のz軸方向の負方向側の面に設けられているので、コイル電極508a〜508d,510a〜510dと近接して並ぶことがない。故に、外部電極506a,506bとコイル電極508a〜508d,510a〜510dとの間に浮遊容量が発生することにより、電子部品500のQ値が低下することが抑制される。
【0007】
しかしながら、図7に示す電子部品500は、高いQ値を得ることが困難であるという問題を有している。より詳細には、電子部品500では、コイル電極508,510は、同じ絶縁体層504上に1つずつ並ぶように設けられている。そのため、電子部品500では、絶縁体層に一つのコイル電極が設けられている場合に比べて、コイル電極508,510の内径が小さくなってしまう。このように、コイル電極508,510の内径が小さくなると、コイル電極508,510内を通過する磁束の数が少なくなり、コイルL501,L502のインダクタンス値は、低下してしまう。このため、所望のインダクタンス値を得るためには、コイル電極508,510の長さを長くする必要があるが、コイル電極508,510の長さが長くなると、抵抗値が大きくなり、Q値が低下する。
【0008】
なお、図7に示すように、2つのコイルが平行に配置されている電子部品としては、例えば、特許文献2に記載の積層インダクタが知られている。しかしながら、該積層インダクタでは、2つのコイルが平行に配置されているので、図7に示す電子部品500と同じ問題を有している。更に、該積層インダクタは、外部電極が積層体の側面に形成されているので、浮遊容量の増加によるQ値の低下の問題も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−270249号公報
【特許文献2】特開平9−63848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、高いインダクタンス値及び高いQ値を得ることができる電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、 複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、前記積層体に内蔵されているコイルであって、第1のコイル軸を有し、かつ、該第1のコイル軸の周囲を所定方向に旋廻しながら第1の方向に進行している第1のコイルと、前記第1のコイルと接続されていると共に、前記積層体に内蔵されているコイルであって、第2のコイル軸を有し、かつ、該第2のコイル軸の周囲を前記所定方向に旋廻しながら前記第1の方向に対して反対方向である第2の方向に進行している第2のコイルと、前記第1の方向から平面視したときに、前記第1のコイル軸は、前記第2のコイルの内部に位置し、前記第2の方向から平面視したときに、前記第2のコイル軸は、前記第1のコイルの内部に位置し、前記第1のコイルは、前記絶縁体層上に設けられている複数の第1のコイル電極が接続されることにより構成されており、前記第2のコイルは、前記絶縁体層上に設けられている複数の第2のコイル電極が接続されることにより構成されており、前記第1のコイル電極及び前記第2のコイル電極は、互いに異なる前記絶縁体層上に設けられていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高いインダクタンス値及び高いQ値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態ないし第5の実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る電子部品の分解斜視図である。
【図3】第2の実施形態に係る電子部品の分解斜視図である。
【図4】第3の実施形態に係る電子部品の分解斜視図である。
【図5】第4の実施形態に係る電子部品の分解斜視図である。
【図6】第5の実施形態に係る電子部品の分解斜視図である。
【図7】従来の電子部品の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
(電子部品の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品10aの外観斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る電子部品10aの分解斜視図である。以下、電子部品10aの積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10aの長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10aの短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。
【0016】
電子部品10aは、図1に示すように、積層体12及び外部電極14a,14bを備えている。積層体12は、直方体状を有しており、コイルL1,L2を内蔵している。外部電極14aは、コイルL1の一端に電気的に接続されており、z軸方向の負方向側を向く積層体12の底面(表面)に形成されている。外部電極14bは、コイルL2の一端に電気的に接続されており、z軸方向の負方向側に位置する積層体12の底面(表面)に形成されている。
【0017】
積層体12は、図2に示すように、複数の絶縁体層16a〜16jがz軸方向の上からこの順に並ぶように積層されて構成されている。絶縁体層16a〜16jは、強磁性のフェライト(例えば、Ni−Zn−Cuフェライト又はNi−Znフェライト等)からなる長方形状の絶縁体層である。なお、絶縁体層16a〜16jとして、誘電体層を用いてもよい。
【0018】
コイルL1は、図2に示すように、コイル電極18a〜18e及びビアホール導体b2〜b6により構成されており、z軸と平行であってかつ絶縁体層16a〜16jの中心(対角線の交点)を通過するコイル軸X1を有する螺旋状のコイルである。コイルL1は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル軸X1の周囲を反時計回りに旋廻しながら、z軸方向の負方向側から正方向側へと進行している。
【0019】
コイル電極18a〜18eはそれぞれ、図2に示すように、絶縁体層16d〜16iの主面上にAg又はCu等からなる導電性材料により形成されている。各コイル電極18a〜18eは、3/4ターン分の長さを有しており、z軸方向から平面視したときに、互いに重なり合って長方形状の領域を形成している。
【0020】
ビアホール導体b2〜b6はそれぞれ、絶縁体層16e〜16iをz軸方向に貫通するように設けられている。ビアホール導体b2〜b6はそれぞれ、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル電極18a〜18eの反時計回りの上流側に位置する端部に接続されるように設けられている。更に、ビアホール導体b2〜b5は、z軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16f〜16iに設けられているコイル電極18b〜18eの反時計回りの下流側に位置する端部に接続される。以上のような構成を有するコイル電極18a〜18e及びビアホール導体b2〜b6が接続されることにより、コイルL1は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル軸X1の周囲を反時計回りに旋廻しながら、z軸方向の負方向側から正方向側へと進行するようになる。
【0021】
コイルL2は、図2に示すように、コイル電極20a〜20e及びビアホール導体b12〜b16により構成されており、z軸と平行であってかつ絶縁体層16a〜16jの中心(対角線の交点)を通過するコイル軸X2を有する螺旋状のコイルである。コイルL2は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル軸X2の周囲を反時計回りに旋廻しながら、z軸方向の正方向側から負方向側へと進行している。また、コイルL2が延在している領域は、z軸方向において、コイルL1が延在している領域と重なっている。
【0022】
コイル電極20a〜20eはそれぞれ、図2に示すように、コイル電極18a〜18eが形成されている絶縁体層16d〜16iの主面上にAg又はCu等からなる導電性材料により形成されている。各コイル電極20a〜20eは、3/4ターン分の長さを有しており、z軸方向から平面視したときに、コイル電極18a〜18eが形成している長方形状の領域の内側において、互いに重なり合って長方形状の環状の領域内を形成している。これにより、コイルL2は、コイルL1に内包される。更に、z軸方向から平面視したときに、コイルL1のコイル軸X1は、コイルL2の内部に位置し、コイルL2のコイル軸X2は、コイルL1の内部に位置するようになる。また、コイル電極18a〜18eとコイル電極20a〜20eは、絶縁体層16d〜16iの主面上に設けられているので、コイルL2が延在している領域は、z軸方向において、コイルL1が延在している領域と重なるようになる。
【0023】
更に、本実施形態では、コイル電極18a〜18eが形成している長方形状の領域の各辺とコイル電極20a〜20eが形成している長方形状の領域の各辺とは、平行であってかつ等間隔に配置されている。したがって、コイル軸X1の位置とコイル軸X2の位置とは一致している。
【0024】
ビアホール導体b12〜b16はそれぞれ、絶縁体層16e〜16jをz軸方向に貫通するように設けられている。ビアホール導体b12〜b16はそれぞれ、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル電極20a〜20eの反時計回りの下流側に位置する端部に接続されるように設けられている。更に、ビアホール導体b12〜b15は、z軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16f〜16iに設けられているコイル電極20b〜20eの反時計回りの上流側に位置する端部に接続される。以上のような構成を有するコイル電極20a〜20e及びビアホール導体b12〜b16が接続されることにより、コイルL2は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル軸X2の周囲を反時計回りに旋廻しながら、z軸方向の正方向側から負方向側(コイルL1の進行方向の反対方向)へと進行するようになる。
【0025】
また、コイルL1とコイルL2とは、絶縁体層16d上に設けられている接続電極22及びビアホール導体b1,b11により接続されている。具体的には、ビアホール導体b1,b11は、接続電極22の両端に接続されるように設けられている。更に、ビアホール導体b1,b11はそれぞれ、コイル電極18a,20aに接続される。これにより、z軸方向の正方向側に位置するコイルL1の端部と、z軸方向の正方向側に位置するコイルL2の端部とが接続されるようになる。
【0026】
また、外部電極14a,14bは、絶縁体層16jのz軸方向の負方向側の面に設けられている。更に、ビアホール導体b7,b17がそれぞれ、絶縁体層16jをz軸方向に貫通するように設けられており、外部電極14a,14bに接続されている。該ビアホール導体b7,b17はそれぞれ、絶縁体層16i,16jが積層されたときに、ビアホール導体b6,b16に接続される。これにより、z軸方向の負方向側に位置するコイルL1の端部は、外部電極14aに接続され、z軸方向の負方向側に位置するコイルL2の端部は、外部電極14bに接続されるようになる。
【0027】
(効果)
以上のように構成された電子部品10aは、以下に説明するように、高いインダクタンス値を得ることができると共に、高いQ値を得ることができる。より詳細には、図2に示すように、コイルL1は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル軸X1の周囲を反時計回りに旋廻しながら、z軸方向の負方向側から正方向側へと進行し、かつ、コイルL2は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル軸X2の周囲を反時計回りに旋廻しながら、z軸方向の正方向側から負方向側へと進行している。そのため、外部電極14aと外部電極14bとの間に電流が流れた場合には、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイルL1を流れる電流が旋廻する方向とコイルL2を流れる電流が旋廻する方向とが一致する。例えば、外部電極14aから外部電極14bへと電流が流れた場合には、z軸方向の正方向側から平面視したときに、コイル電極18a〜18e,20a〜20eでは反時計回りに電流が流れる。この場合、コイルL1の内部において、z軸方向の負方向側から正方向側へと磁束が発生する。同様に、コイルL2の内部においても、z軸方向の負方向側から正方向側へと磁束が発生する。これにより、コイルL1が発生した磁束及びコイルL2が発生した磁束が、コイルL1及びコイルL2のそれぞれの内部を通過するようになる。その結果、本実施形態のコイルL1は、コイルL1が発生した磁束のみがコイルL1の内部を通過している場合に比べて、大きなインダクタンス値を得ることができる。同様に、本実施形態のコイルL2は、コイルL2が発生した磁束のみがコイルL2の内部を通過している場合に比べて、大きなインダクタンス値を得ることができる。その結果、電子部品10aにおいて、高いインダクタンス値を得ることができると共に、高いQ値を得ることができる。
【0028】
また、電子部品10aは、以下に説明するように、高いQ値を得ることができる。より詳細には、電子部品500では、図7に示すように、z軸方向から平面視したときに、コイルL501及びコイルL502が重ならないで並ぶように設けられている。そのため、電子部品500では、コイルL501,L502の内径を大型化することが困難であり、コイルL501,L502の内部を通過する磁束の数を増加することが困難となっていた。その結果、コイルL501,L502においては、高いQ値を得ることは困難であった。
【0029】
一方、電子部品10aでは、コイルL1のコイル軸X1は、コイルL2の内部に位置し、コイルL2のコイル軸X2は、コイルL1の内部に位置している。故に、z軸方向から平面視したときに、コイルL1とコイルL2とが重なっている。これにより、コイル電極18a〜18e,20a〜20eの内径を、電子部品500のコイル電極508a〜508e,510a〜510eの内径よりも大きくできるので、コイルL1,L2の内部を通過する磁束の数を、コイルL501,L502の内部を通過する磁束の数よりも多くできる。その結果、コイルL1,L2では、コイルL501,L502よりも高いインダクタンス値を得ることができると共に、高いQ値を得ることができる。
【0030】
また、電子部品10aでは、z軸方向の負方向側に位置する積層体12の底面に外部電極14a,14bが設けられている。そのため、電子部品10aでは、端子電極が積層体の側面に設けられた特許文献1に記載の積層型コイル部品に比べて、外部電極14a,14bとコイルL1,L2との間に発生する浮遊容量が小さくなる。その結果、電子部品10aのQ値が向上する。
【0031】
また、電子部品10aでは、コイル軸X1とコイル軸X2とが重なっているので、コイルL1内を通過する磁束の分布と、コイルL2内を通過する磁束の分布とを同じ分布に近づけることができる。その結果、コイルL1が発生した磁束とコイルL2が発生した磁束とが打ち消しあうことが低減され、電子部品10aにおいて高いインダクタンス値を得ることが可能となると共に、高いQ値を得ることが可能となる。
【0032】
また、電子部品10aでは、コイル電極18a〜18eとコイル電極20a〜20eとは、同じ絶縁体層16e〜16i上に設けられている。そのため、電子部品10aでは、コイル電極18a〜18eとコイル電極20a〜20eとが別々の絶縁体層16上に設けられた場合に比べて、絶縁体層16の数が少なくなる。その結果、電子部品10aの小型化が図られる。
【0033】
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10aの製造方法について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0034】
まず、絶縁体層16a〜16jとなるセラミックグリーンシートを準備する。絶縁体層16d〜16jとなるセラミックグリーンシートのそれぞれに、ビアホール導体b1〜b7,b11〜b17を形成する。具体的には、図2に示すように、絶縁体層16d〜16jとなるセラミックグリーンシートにレーザビームを照射してビアホールを形成する。次に、このビアホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性ペーストを印刷塗布などの方法により充填する。
【0035】
次に、絶縁体層16e〜16iとなるセラミックグリーンシート上に、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コイル電極18a〜18e,20a〜20eを形成する。なお、コイル電極18a〜18e,20a〜20eを形成する工程とビアホールに対して導電性ペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
【0036】
次に、絶縁体層16dとなるセラミックグリーンシート上に、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、接続電極22を形成する。なお、接続電極22を形成する工程とビアホールに対して導電性ペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
【0037】
次に、絶縁体層16jとなるセラミックグリーンシート上に、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、外部電極14a,14bとなる銀電極を形成する。なお、外部電極14a,14bとなる銀電極を形成する工程とビアホールに対して導電性ペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
【0038】
次に、図2に示すように、絶縁体層16a〜16jとなるセラミックグリーンシートを積層する。より詳細には、外部電極14a,14bとなる銀電極が形成された面がz軸方向の負方向側に位置するように、絶縁体層16jとなるセラミックグリーンシートを配置する。次に、絶縁体層16jとなるセラミックグリーンシート上に、絶縁体層16iとなるセラミックグリーンシートの配置及び仮圧着を行う。この後、絶縁体層16h,16g,16f,16e,16d,16c,16b,16aとなるセラミックグリーンシートについても同様にこの順番に積層及び仮圧着して、マザー積層体を得る。更に、マザー積層体には、静水圧プレスなどにより本圧着が施される。
【0039】
次に、マザー積層体に分割溝を形成する。この未焼成のマザー積層体には、脱バインダー処理及び焼成がなされる。脱バインダー処理は、例えば、低酸素雰囲気中において500℃で2時間の条件で行う。焼成は、例えば、890℃で2時間の条件で行う。この後、分割溝に沿ってマザー積層体を分割することにより、積層体12を得ることができる。
【0040】
以上の工程により、焼成された積層体12が得られる。積層体12には、バレル加工が施されて、面取りが行われる。最後に、外部電極14a,14bとなる銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施す。以上の工程を経て、図1に示すような電子部品10aが完成する。
【0041】
なお、本実施形態に係る電子部品10aは、逐次圧着法により作製したが、該電子部品10aの作製方法はこれに限らない。電子部品10aは、例えば、薄膜工法により作製されてもよい。この場合、絶縁体層16として、樹脂からなる誘電体層が用いられる。
【0042】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係る電子部品10bについて図面を参照しながら説明する。図3は、第2の実施形態に係る電子部品10bの分解斜視図である。以下、電子部品10bの積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10bの長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10bの短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。なお、電子部品10bの外観斜視図については、図1を援用する。
【0043】
電子部品10bに示すように、接続電極22は、コイル軸X1,X2の周囲を周回していてもよい。このように接続電極22がコイル軸X1,X2が周回することにより、電子部品10bでは、接続電極22が周回していない電子部品10aよりも高いインダクタンス値及び高いQ値を得ることが可能となる。なお、電子部品10bのその他の構成については、電子部品10aと同じであるので説明を省略する。
【0044】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態に係る電子部品10cについて図面を参照しながら説明する。図4は、第3の実施形態に係る電子部品10cの分解斜視図である。以下、電子部品10cの積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10cの長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10cの短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。なお、電子部品10cの外観斜視図については、図1を援用する。
【0045】
電子部品10cに示すように、コイルL2を構成するコイル電極20a〜20eはそれぞれ、複数ターン分の長さを有していてもよい。これにより、電子部品10aのようにコイル電極20a〜20eが3/4ターン分の長さを有している場合に比べて、電子部品10cの各コイル電極20a〜20eにおいて発生する磁束の数が増加し、電子部品10cのコイルL1,L2の内部を通過する磁束の数が増加する。その結果、電子部品10cでは、電子部品10aよりも高いインダクタンス値及び高いQ値を得ることができる。
【0046】
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態に係る電子部品10dについて図面を参照しながら説明する。図5は、第4の実施形態に係る電子部品10dの分解斜視図である。以下、電子部品10dの積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10dの長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10dの短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。なお、電子部品10dの外観斜視図については、図1を援用する。
【0047】
電子部品10dに示すように、コイルL2を構成するコイル電極20a〜20eに加えて、コイルL1を構成するコイル電極18a〜18eも、複数ターン分の長さを有していてもよい。これにより、電子部品10dでは、電子部品10cよりも更に高いインダクタンス値及び高いQ値を得ることができる。
【0048】
(第5の実施形態)
図6は、第5の実施形態に係る電子部品10eの分解斜視図である。以下、電子部品10eの積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10eの長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10eの短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。なお、電子部品10eの外観斜視図については、図1を援用する。
【0049】
電子部品10a〜10dでは、コイル電極18a〜18eは、コイル電極20a〜20eが設けられている絶縁体層16e〜16i上に設けられていた。しかしながら、コイル電極の配置の方法はこれに限らない。
【0050】
そこで、電子部品10eでは、コイル電極118a〜118cは、コイル電極120a〜120cが設けられている絶縁体層16f,16h,16jとは異なる絶縁体層16e,16g,16iに設けられている。また、コイル電極118a〜118cとコイル電極120a〜120cとは、同じ内径を有しているので、z軸方向から平面視したときに、z軸方向に互いに対向して重なっている。
【0051】
また、コイル電極118a〜118cは、ビアホール導体b22〜b27により接続されてコイルL1を構成している。コイル電極120a〜120cは、ビアホール導体b33〜b37により接続されてコイルL2を構成している。
【0052】
また、コイルL1とコイルL2とは、接続電極22及びビアホール導体b21,b31,b32により接続されている。更に、コイルL1,L2はそれぞれ、ビアホール導体b28,b38により外部電極14a,14bに接続されている。以上のような構成により、図6に示す電子部品10eは、図2に示す電子部品10aと同様に、外部電極14a,14bの間にコイルL1,L2が直列接続された回路構成を有するようになる。
【0053】
電子部品10eによれば、コイル電極118a〜118cが、コイル電極120a〜120cが設けられている絶縁体層16f,16h,16jとは異なる絶縁体層16e,16g,16iとに設けられている。よって、コイル電極118a〜118cとコイル電極120a〜120cとが交差することがなくなるので、図6に示すように、コイルL2の内径の大きさをコイルL1の内径の大きさと同じにすることができる。その結果、電子部品10eでは、コイルL2内を通過する磁束の数を増加させることができるので、電子部品10eにおいて高いインダクタンス値及び高いQ値を得ることができるようになる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態に係る電子部品は、電子部品10a〜10eに示したものに限らない。したがって、該電子部品は、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0055】
電子部品10a〜10eでは、コイル電極18,20,118,120は、全て同じ線幅を有しているが、これらは異なる線幅を有していてもよい。例えば、コイル電極18の線幅とコイル電極20の線幅とを異ならせてもよいし、z軸方向の負方向側から正方向側にいくにしたがって、コイル電極18,20の線幅が太くなっていく又は細くなっていくようにしてもよい。また、線幅の太いコイル電極18,20と線幅の細いコイル電極18,20とがz軸方向に交互に並ぶようにしてもよい。なお、コイル電極118,120の線幅に関しても、コイル電極18,20と同様に変化させることができる。
【0056】
また、電子部品10a〜10eでは、コイル電極18,20,118,120は、z軸方向において等間隔に配置されているが、等間隔に配置されていなくてもよい。
【0057】
また、電子部品10a〜10dにおいて、全てのコイル電極18は、コイル電極20が設けられている絶縁体層16に設けられている。しかしながら、コイル電極18の少なくとも一部が、コイル電極20が設けられている絶縁体層16に設けられていればよい。
【0058】
また、電子部品10eにおいて、全てのコイル電極118は、コイル電極120が設けられている絶縁体層16とは異なる絶縁体層16に設けられている。しかしながら、コイル電極118の少なくとも一部が、コイル電極120が設けられている絶縁体層16に設けられていればよい。
【0059】
なお、コイル電極18,20,118,120のターン数は、3/4ターン以外であってもよい。また、コイル電極18,20,118,120の旋廻方向も、説明した方向と逆方向であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電子部品に有用であり、特に、高いインダクタンス値及び高いQ値を得ることができる点において優れている。
【符号の説明】
【0061】
L1,L2 コイル
X1,X2 コイル軸
b1〜b7,b11〜b17,b21〜b28,b31〜b38 ビアホール導体
10a〜10e 電子部品
12 積層体
14a,14b 外部電極
16a〜16k 絶縁体層
18a〜18e,20a〜20e,118a〜118c,120a〜120c コイル電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、
前記積層体に内蔵されているコイルであって、第1のコイル軸を有し、かつ、該第1のコイル軸の周囲を所定方向に旋廻しながら第1の方向に進行している第1のコイルと、
前記第1のコイルと接続されていると共に、前記積層体に内蔵されているコイルであって、第2のコイル軸を有し、かつ、該第2のコイル軸の周囲を前記所定方向に旋廻しながら前記第1の方向に対して反対方向である第2の方向に進行している第2のコイルと、
を備え、
前記第1の方向から平面視したときに、前記第1のコイル軸は、前記第2のコイルの内部に位置し、
前記第2の方向から平面視したときに、前記第2のコイル軸は、前記第1のコイルの内部に位置し、
前記第1のコイルは、前記絶縁体層上に設けられている複数の第1のコイル電極が接続されることにより構成されており、
前記第2のコイルは、前記絶縁体層上に設けられている複数の第2のコイル電極が接続されることにより構成されており、
前記第1のコイル電極及び前記第2のコイル電極は、互いに異なる前記絶縁体層上に設けられていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1のコイル電極と前記第2のコイル電極とは、積層方向に交互に並んでいること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1のコイルは、前記複数の前記第1のコイル電極を接続する複数の第1のビアホール導体を含み、
前記第1のビアホール導体は、該第1のビアホール導体が設けられている前記絶縁体層上に設けられている前記第2のコイル電極よりも前記絶縁体層の角の近くに設けられていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2のコイルは、前記複数の前記第2のコイル電極を接続する複数の第2のビアホール導体を含み、
前記第2のビアホール導体は、該第2のビアホール導体が設けられている前記絶縁体層上に設けられている前記第1のコイル電極よりも前記絶縁体層の角の近くに設けられていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記第2の方向側に位置している前記積層体の表面に設けられている外部電極であって、前記第1のコイルの一方の端部と接続されている第1の外部電極と、
前記第2の方向側に位置している前記積層体の表面に設けられている外部電極であって、前記第2のコイルの一方の端部と接続されている第2の外部電極と、
を更に備え、
前記第1のコイルの前記第1の方向側に位置する他方の端部と前記第2のコイルの該第1の方向側に位置する他方の端部とは、接続されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1の外部電極と前記第2の外部電極との間に電流が流れた場合に、積層方向から平面視したときに、前記第1のコイルを流れる電流の方向と、前記第2のコイルを流れる電流の方向とは、一致していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記第1のコイル軸の位置と前記第2のコイル軸の位置とは、一致していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−77849(P2013−77849A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−15328(P2013−15328)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2010−520810(P2010−520810)の分割
【原出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】