説明

電気コネクタの接続構造及び電気コネクタの接続方法

【課題】横方向に配置される第一、第二の電気接合物の接続に際し、作業性の悪化やコストの増大を招くことがなく、第一、第二の電気接合物間の距離に制約の生じるおそれが少ない電気コネクタの接続構造及び電気コネクタの接続方法を提供する。
【解決手段】携帯電話のインナーハウジング7にプリント配線板10とスピーカ12を収納してこれらを水平横方向に隣接配置し、プリント配線板10とスピーカ12の電極部11・13間に電気コネクタ20を架設して電気的に導通接続する。インナーハウジング7の内周面に電気コネクタ20用の収納穴9を形成し、電気コネクタ20を、インナーハウジング7の収納穴9に収納されてプリント配線板10とスピーカ12の間に配置される弾性エラストマー21と、弾性エラストマー21の表面に並設されてプリント配線板10とスピーカ12の電極部11・13に接触する複数の導電細線23とにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル機器等の電気接合物の接続に用いられる電気コネクタの接続構造及び電気コネクタの接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話には様々な電子部品が内蔵される(特許文献1、2、3参照)が、例えばプリント配線板や小型のスピーカを内蔵する場合には、従来、図示しない携帯電話のハウジングにプリント配線板と小型のスピーカとを多層構造に積層して収納し、プリント配線板とスピーカとを電気的に接続するようにしている。具体的には、プリント配線板上に単数複数の電気コネクタを配置し、この電気コネクタ上にスピーカを搭載してプリント配線板とスピーカとを接続するようにしている。
【0003】
ところで、近年の携帯電話には、小型軽量化の観点から薄肉化が益々要求されてきているが、この薄肉化という要求を満たすためには、携帯電話のハウジングにプリント配線板とスピーカとを積層して収納する手法は好ましくない。そこでこの点に鑑み、携帯電話のハウジングにプリント配線板とスピーカとを収納して横方向に並べ、これらプリント配線板とスピーカとの間をハンダ付けやワイヤボンディングにより接続する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−248318号公報
【特許文献2】特開2005−347398号公報
【特許文献3】特開2002−16162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリント配線板とスピーカとを横方向に並べれば、携帯電話の薄肉化に資することができるものの、横方向に配列されたプリント配線板とスピーカとをハンダ付けする場合には、作業性の悪化やコストの増大を招くこととなり、又ワイヤボンディングにより接続する場合には、プリント配線板とスピーカとの間の距離に制約の生じるおそれが少なくない。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、横方向に配置される第一、第二の電気接合物の接続に際し、作業性の悪化やコストの増大を招くことがなく、第一、第二の電気接合物間の距離に制約の生じるおそれが少ない電気コネクタの接続構造及び電気コネクタの接続方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、ハウジングに第一、第二の電気接合物を収納してこれらを横方向に配置し、これら第一、第二の電気接合物を電気コネクタにより電気的に接続したものであって、
ハウジングに電気コネクタ用の収納穴を形成し、電気コネクタを、ハウジングの収納穴に収納されて第一、第二の電気接合物の間に配置される弾性体と、この弾性体に設けられて第一、第二の電気接合物の電極部に接触する導電部材とにより構成したことを特徴としている。
【0007】
なお、ハウジングをモバイル機器のハウジングとし、第一、第二の電気接合物のいずれか一方を音響部品とするとともに、他方を配線板とし、電気コネクタの弾性体を絶縁性のエラストマーとしてその表面には複数の導電部材を間隔をおいて並べ設けることが好ましい。
また、ハウジングの収納穴に、電気コネクタを第一、第二の電気接合物の方向に圧する凸部を形成することができる。
【0008】
また、本発明においては上記課題を解決するため、ハウジングに収納されて横方向に配置される第一、第二の電気接合物と、これら第一、第二の電気接合物を電気的に接続する電気コネクタとを備え、ハウジングに収納穴を形成し、電気コネクタを、弾性体に導電部材を設けることにより構成した電気コネクタの接続方法であって、
ハウジングの収納穴に電気コネクタの弾性体を収納して第一、第二の電気接合物の間に配置し、電気コネクタの導電部材を第一、第二の電気接合物の電極部にそれぞれ接触させることを特徴としている。
【0009】
なお、ハウジングを、略対向する一対のハウジング部により形成して第一、第二の電気接合物を内蔵し、一のハウジング部に収納穴を形成することができる。
また、ハウジングを、略対向する一対のハウジング部により形成し、一方のハウジング部に第一、第二の電気接合物を収納するとともに、他方のハウジング部に収納穴を形成することもできる。
【0010】
さらに、ハウジングを、略対向する一対のインナーハウジング部により形成し、一方のインナーハウジング部に、第一、第二の電気接合物を収納するとともに、他方のインナーハウジング部の内周面に、第一、第二の電気接合物の間付近に位置する収納穴を形成することもできる。
【0011】
ここで、特許請求の範囲におけるハウジングは、モバイル機器等のハウジングを直接構成するものでも良いし、このハウジング内に収納される別体でも良い。第一、第二の電気接合物には、少なくとも小型カメラ、音響部品であるスピーカ、各種の配線板、バッテリー等が含まれる。この第一、第二の電気接合物はその面方向である横方向に配置されて相互に接続されるが、この横方向は、前後左右のいずれの方向でも良い。
【0012】
第一、第二の電気接合物は、横方向に配置されるのであれば、略面一に揃えられるものでも良いし、そうでなくても良い。導電部材としては、例えば絶縁材と導電ゴムとを交互に並べ備えた部材、コイルバネ等のバネにより往復動する導電ピン、金、銀を含有する導電ゴムのベタ体や帯体、単数複数の導電細線、金属ライン等があげられる。さらに、モバイル機器には、少なくとも薄さが要求される携帯電話、PDA、ノートパソコン、携帯型ゲーム機、各種のデジタルカメラが含まれる。
【0013】
本発明によれば、ハウジングに第一、第二の電気接合物を収納してこれらを横方向に配置するとともに、ハウジングの収納穴に電気コネクタの弾性体を収納し、その後、ハウジングを組み立てて第一、第二の電気接合物の電極部に電気コネクタの導電部材をそれぞれ接触させれば、第一、第二の電気接合物を横方向に接続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、横方向に配置される第一、第二の電気接合物の接続に際し、作業性の悪化やコストの増大を招くことが少なく、第一、第二の電気接合物間の距離に制約の生じるおそれが少ないという効果がある。
また、ハウジングの収納穴に、電気コネクタを第一、第二の電気接合物の方向に圧する凸部を形成すれば、この収納穴の凸部が電気コネクタの弾性体を弾圧するので、第一、第二の電気接合物をさらに強固に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における電気コネクタの接続構造は、図1ないし図3に示すように、薄い携帯電話1のインナーハウジング7にプリント配線板10と小型のスピーカ12とを収納してこれら10・12を横方向に隣接配置し、プリント配線板10とスピーカ12の電極部11・13間に電気コネクタ20を架設してプリント配線板10とスピーカ12とを電気的に導通接続するようにしている。
【0016】
携帯電話1は、図1に示すように、複数の操作キー2が配列される第一のハウジング3と、液晶ウインド4やスピーカ12等が配設される第二のハウジング5と、これら第一、第二のハウジング3・5の端部同士を折り畳み可能、回転可能、あるいは揺動可能に連結するヒンジ機構6とを備えて構成される。
【0017】
携帯電話1の第一、第二のハウジング3・5のうち、少なくとも第二のハウジング5には、ポリカーボネート等の成形材料により薄く射出成形された略箱形のインナーハウジング7が収納保護され、このインナーハウジング7は相対向する一対のインナーハウジング部8・8Aが着脱自在に嵌合することにより形成される。インナーハウジング部8の内周面には図2に示すように、プリント配線板10とスピーカ12との間に位置する矩形の収納穴9が一体的に凹み形成され、この収納穴9に電気コネクタ20が嵌入して収納される。
【0018】
プリント配線板10とスピーカ12とは、図2に示すように、インナーハウジング7に収納されて水平横方向(図2の左右方向)に近接し、プリント配線板10のランドからなる電極部11を備えた表面とスピーカ12の電極部13を備えた表面とが略面一に揃えられる。
【0019】
プリント配線板10は、例えば軽薄短小化に資するビルドアップタイプ等からなり、インナーハウジング部8Aに図示しない気密性の基板押さえを介し上げ底状態に位置決めして内蔵固定される。また、スピーカ12は、例えば消費電力の少ない薄い圧電タイプ等からなり、インナーハウジング部8Aに気密性のスピーカ押さえ14やクッションを介し位置決めして内蔵固定される。
【0020】
電気コネクタ20は、図2や図3に示すように、インナーハウジング部8の収納穴9に収納されてプリント配線板10とスピーカ12との間に圧接状態で横架される絶縁性の弾性エラストマー21と、この柔軟な弾性エラストマー21の表面に並設されてプリント配線板10とスピーカ12との電極部11・13にそれぞれ接触する複数の導電細線23とを備えた圧接タイプに構成され、インナーハウジング7の組み立てに伴う圧接により変形してプリント配線板10とスピーカ12とを導通接続するよう機能する。
【0021】
弾性エラストマー21は、例えば弾性変形可能なシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等を使用して収納穴9に対応する横長のブロックに成形され、複数の導電細線23が配列されない裏面には粘着層22が粘着されており、この粘着層22がインナーハウジング7の収納穴9内に粘着する。
【0022】
複数の導電細線23は、弾性エラストマー21の表面に一部が埋没し、表面の幅方向(図2の奥方向)に所定のピッチで配列されており、表面の長手方向(図2の左右方向)に伸長する。各導電細線23は、例えば細長い可撓性のワイヤを使用して形成され、端部がプリント配線板10あるいはスピーカ12の電極部11・13に接触する。この導電細線23の具体例としては、錆びにくく安価なニッケル細線、金、金合金、銅、アルミニウム、ケイ素合金、真鍮、モリブデン、タングステン、ステンレス等の細線があげられる。
【0023】
上記構成において、携帯電話1のインナーハウジング7にプリント配線板10とスピーカ12とを収納してこれら10・12を導通接続するには、インナーハウジング部8Aにプリント配線板10とスピーカ12とを他の電子部品と共に収納してこれら10・12を横方向に位置決め配置するとともに、インナーハウジング部8の収納穴9に電気コネクタ20を粘着層22を介して嵌入収納し、収納穴9から電気コネクタ20の表面とその導電細線23を露出させる。
【0024】
そしてその後、一対のインナーハウジング部8・8Aを相互に嵌合してインナーハウジング7を形成し、プリント配線板10とスピーカ12との電極部11・13上に電気コネクタ20の導電細線23をそれぞれ圧接すれば、プリント配線板10とスピーカ12とを横方向に導通接続することができる。
【0025】
上記構成によれば、プリント配線板10とスピーカ12とを嵩張る上下方向に積層するのではなく、嵩張らない横方向に並べることができるので、携帯電話1の薄肉化に大いに寄与することができる。また、プリント配線板10とスピーカ12とをハンダ付けするのではなく、電気コネクタ20の橋架により接続するので、作業性の悪化やコストの増大を招くことが全くない。また、収納穴9や電気コネクタ20の長さを適宜変更すれば、プリント配線板10とスピーカ12との距離の長短にかかわらず、これらを確実に導通接続することができる。
【0026】
また、インナーハウジング部8に電気コネクタ20の厚さに相当する収納穴9を凹み形成し、この収納穴9に電気コネクタ20を収納してその厚さを吸収するので、電気コネクタ20が不用意に嵩張ることがない。また、インナーハウジング部8の収納穴9に電気コネクタ20を粘着層22を介して嵌着するので、簡易な構成で電気コネクタ20の位置ずれや脱落を確実に防止することが可能になる。
【0027】
また、電気コネクタ20が変形可能であるから、例えプリント配線板10とスピーカ12の高さが不揃いでその間に段差があっても、この段差に電気コネクタ20を追従させてプリント配線板10とスピーカ12とを確実に導通接続することが可能になる。さらに、弾性エラストマー21を単なるシートではなく、1〜1.2mm程度の厚さを有するブロックに成形することができるので、組み込み高さの公差の吸収が大いに期待できる。
【0028】
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、インナーハウジング7の収納穴9内に、電気コネクタ20をプリント配線板10とスピーカ12の方向(図の下方向)に圧接する凸部30を必要数形成するようにしている。
【0029】
電気コネクタ20の粘着層22は、そのまま使用することもできるが、部品点数を削減したい場合には、図4のように省略することもできる。また、凸部30は、電気コネクタ20の裏面に面接触するタイプでも良いし、リブのような点接触するタイプ等でも良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0030】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、収納穴9の凸部30が電気コネクタ20の弾性エラストマー21に絶えず荷重を加えて弾圧付勢するので、プリント配線板10とスピーカ12とをさらに強固に接続することができるのは明らかである。
【0031】
なお、上記実施形態では電気コネクタ20によりプリント配線板10とスピーカ12とを電気的に導通接続したが、プリント配線板10と他の回路基板(例えば、フレキシブル配線板等)とを導通接続しても良い。また、上記実施形態ではインナーハウジング部8Aにプリント配線板10とスピーカ12とをそれぞれ水平に収納したが、プリント配線板10、及び又はスピーカ12をある程度傾斜させて収納し、収納スペースの縮小や収納の便宜を図るようにしても良い。
【0032】
さらに、上記実施形態ではインナーハウジング部8の収納穴9に電気コネクタ20を単に嵌入したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、インナーハウジング部8の収納穴9に電気コネクタ20を接着シートや液状の接着剤により接着しても良いし、電気コネクタ20を斜めに架設しても良く、さらには、収納穴9の少なくとも一部(例えば、収納穴9の周縁部等)に複数の挟持爪や挟持片を形成し、嵌入した電気コネクタ20を挟んで強固に固定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る電気コネクタの接続構造及び電気コネクタの接続方法の実施形態における携帯電話を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る電気コネクタの接続構造及び電気コネクタの接続方法の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る電気コネクタの接続構造及び電気コネクタの接続方法の実施形態における電気コネクタを模式的に示す斜視説明図である。
【図4】本発明に係る電気コネクタの接続構造及び電気コネクタの接続方法の第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 携帯電話(モバイル機器)
3 第一のハウジング(ハウジング)
5 第二のハウジング(ハウジング)
7 インナーハウジング(ハウジング)
8 インナーハウジング部
8A インナーハウジング部
9 収納穴
10 プリント配線板(電気接合物)
11 電極部
12 スピーカ(電気接合物)
13 電極部
20 電気コネクタ
21 弾性エラストマー(弾性体)
22 粘着層
23 導電細線(導電部材)
30 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに第一、第二の電気接合物を収納してこれらを横方向に配置し、これら第一、第二の電気接合物を電気コネクタにより電気的に接続した電気コネクタの接続構造であって、
ハウジングに電気コネクタ用の収納穴を形成し、電気コネクタを、ハウジングの収納穴に収納されて第一、第二の電気接合物の間に配置される弾性体と、この弾性体に設けられて第一、第二の電気接合物の電極部に接触する導電部材とにより構成したことを特徴とする電気コネクタの接続構造。
【請求項2】
ハウジングをモバイル機器のハウジングとし、第一、第二の電気接合物のいずれか一方を音響部品とするとともに、他方を配線板とし、電気コネクタの弾性体を絶縁性のエラストマーとしてその表面には複数の導電部材を間隔をおいて並べ設けた請求項1記載の電気コネクタの接続構造。
【請求項3】
ハウジングの収納穴に、電気コネクタを第一、第二の電気接合物の方向に圧する凸部を形成した請求項1又は2記載の電気コネクタの接続構造。
【請求項4】
ハウジングに収納されて横方向に配置される第一、第二の電気接合物と、これら第一、第二の電気接合物を電気的に接続する電気コネクタとを備え、ハウジングに収納穴を形成し、電気コネクタを、弾性体に導電部材を設けることにより構成した電気コネクタの接続方法であって、
ハウジングの収納穴に電気コネクタの弾性体を収納して第一、第二の電気接合物の間に配置し、電気コネクタの導電部材を第一、第二の電気接合物の電極部にそれぞれ接触させることを特徴とする電気コネクタの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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