説明

電気光学ダイオードデバイス

発光又は光起電力デバイスであって、1つ以上の構成領域を有するとともに電子を注入するためのカソード構造と、1つ以上の構成領域を有するとともに正孔を注入するためのアノード構造と、アノード構造とカソード構造との間に位置する有機発光要素と、第1の電極と有機要素との間に位置するとともに1.85を超える屈折率を有する材料の第1の電荷輸送層とを備え、その構造がデバイス内での光学的ゲインを維持することを特徴とする発光又は光起電力デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学ダイオードデバイスに関する。特に、ポリマ要素及び金属酸化物要素を有する高効率電気光学ダイオードデバイスに関するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
ポリマベースの電子技術は、過去10年間にわたって急速に発展してきている。特に、半導体共役ポリマにおけるエレクトロルミネセンス現象は、当分野で幅広い関心を呼び起こした(J. H. urroughes, D. D. C. Bradley, A. R. Brown, R. N. Marks, K. Mackay, R. H. Friend, P. L. Burns, A. B. Holmes, Nature 1990, 347, 539)。多くの基本的な光電子デバイス(例えば、レーザ、ポリマ発光ダイオード(PLED)、薄膜トランジスタ、光起電力技術(PV)及び光センサ)は、研究所で実現され、一部は既に商業的な用途に組み入れられている。このようなデバイスの例は、R. H. Friend, R. W. Gymer, A. B. Homes, J. H. Burrougher, R. N. Marks, C. Taliani, D. D. C. Bradley, D. A. D. Santos, J. L. Bredas, M. Logdlund, W. R. Salaneck, Nature 2001, 397, 121; M. Muccini, Nat. Mater. 2006, 5, 605; G. Li, V. Shrotriya, J. Huang, Y. Yao, T. Moriarty, K. Emery, Y. Yang, Nat. Mater. 2005, 4, 864及びD. Kabra, Th. B. Singh, K. S. Narayan, Appl. Phys. Lett. 2004, 85, 5073に記載されている。
【0003】
しかし、デバイスの安定性及びLED(発光ダイオード)に選択された電荷注入/輸送層の有効性には、なお改善の余地がある。従来のPLED構造は、低仕事関数金属の電極を使用する。低仕事関数金属の電極は、周囲条件下で動作するために密閉カプセル化を必要とする。比較的安定なMg−Agカソードでさえ、酸化に起因して徐々に分解することが判明している(H. Aziz, Z. Popovic, C. P. Tripp, N-X. Hu, A. -M. Hor, G. Xu, Appl. Phys. Lett. 1998, 72, 2642及びJ. McElvain, H. Antoniadis, M. R. Hueschen, J. N. Miller, D. M. Roitman, J. R. Sheats, R. L. Moon, J. Appl. Phys. 1996, 80, 6002を参照)。
【0004】
従来のPLEDは、正孔注入アノードとしてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)及び電子注入カソードとしてのCa−Al二重層を使用する(J. S. Kim, R. H. Friend, Appl. Phys. Lett. 2005, 87, 023506を参照)。代替的に、金属酸化物半導体は、光起電力ダイオードの電荷収集電極として例示される如く、電荷輸送層及び注入層として使用されてもよい(K. Morii, M. Ishida, T. Takashima, T. Shimoda, Q. Wang, M. K. Nazeeruddin, M. Gratzel, Appl. Phys. Lett. 2006, 89, 183510; K. Lee, J. Y. Kim, S. H. Park, S. H. Kim, S. Cho, A. J. Heeger, Adv. Mat. 2007, 19, 2445及びH. J. Bolink, E. Coronado, D. Repetto, M. Sessolo, Appl. Phys. Lett. 2007, 91, 223501を参照)。これらの金属酸化物は、並外れた安定性、機械的及び電気的なロバスト性、低コスト、可視域での透明性、溶液処理可能な製造並びに金属酸化物の膜のモホロジ及び界面電子構造の制御の可能性という利点を有する。いくつかの詳細な複合酸化物−ポリマベースのダイオードは、デバイスの安定性を改善する目的で研究されている(K. Morii, M. Ishida, T. Takashima, T. Shimoda, Q. Wang, M. K. Nazeeruddin, M. Gratzel, Appl. Phys. Lett. 2006, 89, 183510; K. Lee, J. Y. Kim, S. H. Park, S. H. Kim, S. Cho, A. J. Heeger, Adv. Mat. 2007, 19, 2445及びH. J. Bolink, E. Coronado, D. Repetto, M. Sessolo, Appl. Phys. Lett. 2007, 91, 223501)。これらは、従来のPLED構造と好適に対比可能である。酸化に影響されないことに加えて、金属酸化物は、電荷担体の閉じ込めのための良好な二重ヘテロ接合構造も提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような発光デバイスの主要な性能基準は、発光デバイスの電気及び/又は光学的性能(例えば、効率)を含む。発光デバイスの電気的及び/又は光学的性能の更なる改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の局面によれば、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置する分子半導体材料を含む有機発光又は反応性要素と、前記第1の電極と前記有機発光又は反応性要素との間に配設された1.85を超える屈折率の材料を有し、前記第1の電極と前記有機発光又は反応性要素との間で電荷を輸送する第1の電荷輸送層と、を備えるダイオードデバイスであって、該デバイスの平面内で案内されるモードに対する前記第1電極及び前記第2電極に起因する光学的損失が十分に低く、前記デバイス内での光学的ゲインが維持される構造を有することを特徴とするダイオードデバイスが提供される。
【0007】
デバイスは、上記ルミネセンス要素を備える必要はない。デバイス平面内で案内されるモードに対する電極に起因する光学損失は、十分に低く、ルミネセンス要素が存在するか否かにかかわらず、ルミネセンス要素の存在下でのデバイス内の光学的ゲインは維持される。
【0008】
更に好ましい特徴は、添付の請求の範囲並びに以下の説明及び図面で述べられる。
【0009】
以下の説明及び請求の範囲で言及される材料は、2つ以上の要素を含む材料系であってもよい。
【0010】
電極は、金属電極であってもよい。
【0011】
第1の電荷輸送層及び/又は第1の電荷輸送層を構成する単数又は複数の材料は、1.85、1.9或いは2.0を超える屈折率を独立して有してもよい。このような値を超える屈折率を有する代わりに、第1及び/又は第2の電荷輸送層は独立して、金属酸化物を含む材料であってもよい。
【0012】
本発明は、一例として、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】以下に説明されるデバイスの基本構造形態を示す。
【図2】正孔注入のためのMoO層を備えるデバイス構造の具体的な例を示す。図2(a)は、電子注入のためのメソポーラスTiO層(「m−TiO」)を備えたF8BT単層を示す。図2(b)は、電子注入のためのm−TiOを備えたF8BT/TFB二重層を示す。図2(c)は、電子注入のための高密度金属酸化物層を備えたF8BT単層を示す。図2(d)は、電子注入のための高密度金属酸化物層を備えたF8BT/TFB二重層を示す。
【図3】F8BTおよびTFBの化学構造を示す。
【図4(a)】正孔注入層としてのMoO層並びに以下の電子注入金属酸化物層及びポリマ層を有するデバイスにおける電流密度対電圧(J−V)(正方形)及び輝度対電圧(L−V)(丸)に関する特性を表すプロット図である。図4(a)は、F8BTを備えたm−TiOである。
【図4(b)】正孔注入層としてのMoO層並びに以下の電子注入金属酸化物層及びポリマ層を有するデバイスにおける電流密度対電圧(J−V)(正方形)及び輝度対電圧(L−V)(丸)に関する特性を表すプロット図である。図4(b)は、F8BTを備えたc−TiO(高密度TiO)である。
【図4(c)】正孔注入層としてのMoO層並びに以下の電子注入金属酸化物層及びポリマ層を有するデバイスにおける電流密度対電圧(J−V)(正方形)及び輝度対電圧(L−V)(丸)に関する特性を表すプロット図である。図4(c)は、F8BTを備えたc−ZnO(高密度ZnO)である。
【図4(d)】正孔注入層としてのMoO層並びに以下の電子注入金属酸化物層及びポリマ層を有するデバイスにおける電流密度対電圧(J−V)(正方形)及び輝度対電圧(L−V)(丸)に関する特性を表すプロット図である。図4(d)は、TFB:F8BT二重層を備えたm−TiOである。
【図4(e)】正孔注入層としてのMoO層並びに以下の電子注入金属酸化物層及びポリマ層を有するデバイスにおける電流密度対電圧(J−V)(正方形)及び輝度対電圧(L−V)(丸)に関する特性を表すプロット図である。図4(e)は、TFB:F8BT二重層を備えたc−TiOである。
【図4(f)】正孔注入層としてのMoO層並びに以下の電子注入金属酸化物層及びポリマ層を有するデバイスにおける電流密度対電圧(J−V)(正方形)及び輝度対電圧(L−V)(丸)に関する特性を表すプロット図である。図4(f)は、TFB:F8BT二重層である。
【図5】図5(a)は、c−ZnO(丸)及びc−TiO(正方形)の電子注入層を有する単層の複合酸化物−ポリマLED(「COPLED:composite oxide-polymer LED」)からの角度発光パターン並びにシミュレートされたランバート発光(灰色影付き)のプロット図である。図5(b)は、F8BT/MoO/Auを有する構造ITO/c−TiO(正方形)及びc−ZnO(丸)のデバイスにおける暗電流密度(J)対電圧(V)の特徴を示す。図5(b)の挿入図において、光起電力モードでの電荷担体収集の光起電力作用スペクトルは、TFB層を有さない単層COPLED(ITO/c−ZnO又はc−TiO/F8BT(80nm)/MoO(10nm)/Au(50nm))構造に対して、低強度のモノクロメータ及びタングステンランプを使用して得られた。図5(c)及び図5(d)は、原子間力顕微鏡画像である。図5(c)は、石英基板上のc−TiO層にスピンコートされたF8BT膜のタッピングモードの原子間力顕微鏡画像である。図5(d)は、石英基板上のc−ZnO層にスピンコートされたF8BT膜のタッピングモードの原子間力顕微鏡画像である。
【図6】図6(a)は、電流密度対電圧(J−V)(正方形)及び輝度対電圧(L−V)(丸)に関する特性を表すプロット図である。図6(b)は、輝度効率対電圧に関する特性を表すプロット図である。図6(a)及び図6(b)それぞれにおいて、デバイス内の比較的厚いZnO電子注入層は、F8BT/TFB二重層を有する。MoOは、正孔注入層として使用された。ここで、輝度の計算は、補正された非ランバート発光パターンを説明する。
【図7(a)】上述の種類のデバイスを含む一連のデバイスによる推定モード強度のプロットを示す。推定値は、光線行列式を使用してモデル化された。図7(a)のデバイスは、Bolink et al. Appl. Phys. Letts. 91, 223501 (2007)の記載に従う。
【図7(b)】上述の種類のデバイスを含む一連のデバイスによる推定モード強度のプロットを示す。推定値は、光線行列式を使用してモデル化された。図7(b)のデバイスは以下の記載に従い、各図に示される層厚を有するデバイスである。
【図7(c)】上述の種類のデバイスを含む一連のデバイスによる推定モード強度のプロットを示す。推定値は、光線行列式を使用してモデル化された。図7(c)のデバイスは以下の記載に従い、各図に示される層厚を有するデバイスである。
【図7(d)】上述の種類のデバイスを含む一連のデバイスによる推定モード強度のプロットを示す。推定値は、光線行列式を使用してモデル化された。図7(d)のデバイスは以下の記載に従い、各図に示される層厚を有するデバイスである。
【図7(e)】上述の種類のデバイスを含む一連のデバイスによる推定モード強度のプロットを示す。推定値は、光線行列式を使用してモデル化された。図7(e)のデバイスは以下の記載に従い、各図に示される層厚を有するデバイスである。
【図8】ITO/ZnO/F8(Eth=19.1μJcm−2パルス−1)構造を用いたポリマDFBレーザの閾値挙動を示す。ITO/ZnO/F8構造の閾値より下((Eth/x1))並びに閾値より上((Eth×x2)及び(Eth×x3))の一連の発光スペクトルは、FWHM(半値全幅)が1.1nmの複合材の異なる有効屈折率(neff)によって引き起こされたレーザ発振波長の差を示す。
【図9】ITO/ZnO/F8/MoO(Eth=19.1μJcm−2パルス−1)構造を用いたポリマDFBレーザの閾値挙動を示す。ITO/ZnO/F8/MoO構造の閾値より下((Eth/x1))並びに閾値より上((Eth×x2)及び(Eth×x3))の一連の発光スペクトルは、FWHM(半値全幅)が1.1nmの複合材の異なる有効屈折率(neff)によって引き起こされたレーザ発振波長の差を示す。
【図10】ITO/ZnO/F8//MoO/Ag(Eth=27.1μJcm−2パルス−1)構造を用いたポリマDFBレーザの閾値挙動を示す。ITO/ZnO/F8/MoO/Ag構造の閾値より下((Eth/x1))並びに閾値より上((Eth×x2)及び(Eth×x3))の一連の発光スペクトルは、FWHM(半値全幅)が1.1nmの複合材の異なる有効屈折率(neff)によって引き起こされたレーザ発振波長の差を示す。
【図11】波形DFB複合酸化物ポリマレーザをフラットDFB複合酸化物ポリマ発光ダイオード(COPLED)と比較したエレクトロルミネセンス特性を示す。図11(a)は、電流密度対電圧(J−V)(黒正方形)及び発光対電圧(L−V)(白丸)に関する特性を示す。図11(b)は、フラットF8(黒)及び波形F8(赤)発光層を包含するCOPLED構造におけるルミネセンス効率対電圧に関する特性を示す。図11(c)は、パターン化F8を包含するCOPLEDからのエレクトロルミネセンススペクトルの角度依存性を示す。図11(c)は、同じ「波形」デバイス構造で測定されたレーザ発振スペクトル(緑色線)も示す。
【図12】図12(a)は、電子注入層としてZnOナノロッドを備えたCOPLED構造の概略図である。図12(b)は、ZnOナノロッドの走査電子顕微鏡画像(平面図)である。図12(c)は、F8BT膜(500nm厚)とともに長さ110nmのZnOナノロッドより成るデバイスの側面図である。図12(d)は、F8BT膜(500nm厚)とともに長さ380nmのZnOナノロッドより成るデバイスの側面図である。図12(d)は、比較的小さい体積パーセント範囲を有する比較的長いロッドに起因するポリマ浸透を示す。
【図13】電子注入層としてフラットZnO(黒丸)及びZnOナノロッド(中空正方形)(長さ110nm)を備えた反転電子のみのデバイスにおけるJ−V特性を示す。上部接触電極としてAlが使用された。正孔遮断層は、F8BTの層に対して同様の厚さを有する両方のデバイスに使用された。
【図14】図14(a)は、COPLEDベースのF8BT(660nm厚さ)単層を備える110nmの長さの電子注入ZnOナノロッドの電流密度対電圧(J−V)(黒正方形)及び輝度対電圧(L−V)(白丸)に関する特性を示す。図14(b)は、COPLEDベースのF8BT(660nm厚さ)単層を備える200nmの長さの電子注入ZnOナノロッドの電流密度対電圧(J−V)(黒正方形)及び輝度対電圧(L−V)(白丸)に関する特性を示す。図14(c)は、COPLEDベースのF8BT(660nm厚さ)単層を備える380nmの長さの電子注入ZnOナノロッドの電流密度対電圧(J−V)(黒正方形)及び輝度対電圧(L−V)(白丸)に関する特性を示す。図14(d)は、110nm(白丸)、200nm(白正方形)及び380nm(黒三角形)のナノロッド長を有するZnOナノロッド電子注入層の輝度効率対電圧を示す。
【図15】活性層の光結合の増強を示す複合酸化物ポリマ太陽電池(COPSC)構造の概略図である。
【図16】ソーラー・パネル・アレイの概略的な斜視図及び断面図である。
【図17】COPLEDの2枚の光学画像を示す。図17(a)は、電流が流れていないパターン化ZnOナノロッドを包含するCOPLEDの光学顕微鏡画像である。図17(b)は、同じパターン化ZnOナノロッドベースのデバイスからのエレクトロルミネセンスの光学画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で説明するルミネセンスデバイスは、電子注入のためにメソポーラス形態及び高密度形態の多様な金属酸化物を使用する。このことにより、高ルミネセンスCOPLEDが可能となることが見出されている。特に有効であることが見出されているデバイスの1つの形態において、ZnOは、電子輸送及び注入材料として使用される。また、MoOは、正孔注入材料として使用される。更に、構造に応じて、光子効果を増強するために、材料の選択の範囲及び要素の厚さが考慮される。
【0015】
(デバイスの構造)
以下に説明されるデバイスの基本的な形態が図1に概略的に示される。デバイスは、基板1(例えば、ガラス)を含む。基板1の上には、電子輸送及び注入のためのカソード構造2並びに正孔輸送及び注入のためのアノード構造3が蒸着される。発光構造4は、カソードとアノードとの間に挟まれている。研究されているデバイスでは、カソード、アノード及び発光構造は、層状に形成され、基板への連続蒸着によって1層ずつ構築されている。しかしながら、本発明は、図示されるデバイス又はこのように製造されたデバイスに限定されるものではない。
【0016】
図2は、以下において説明されるCOPLEDのいくつかの特定の形態を概略的に示す。これらは、以下の説明において、デバイスA乃至Dと称される。図2のデバイスの要素は、以下の表にまとめられている。
【0017】
【表1】

【0018】
「m−TiO」は、メソポーラスTiOを意味する。「c−ZnO」は、高密度ZnOを意味する。「c−TiO」は、高密度TiOを意味する。
【0019】
COPLEDは、発光層としてのポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(1,4−ベンゾ−{2,1’−3}−チアジアゾール)](F8BT)のポリマ単層又は金属酸化物電荷輸送層と注入層との間に挟まれたF8BT及びポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−alt−(1,4−フェニレン((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン))(TFB)の二重層のどちらかを用いて製造された。
【0020】
図3は、ポリマF8BT及びTFBの化学構造を示す。TFBは、トリアリールアミンベースのワイドバンドギャップ半導体(E>3.0eV)である。トリアリールアミンベースのワイドバンドギャップ半導体は、低いイオン化電位(〜5.33ev)及び高い正孔移動度を有するので、正孔輸送体として使用されることが多い(J. -S. Kim, P. K. H. Ho, C. E. Murphy, R. H. Friend, Macromolecules 2004, 31, 2861を参照)。
【0021】
デバイスは、以下の如く、製造された。ITO基板は、従来のウェット洗浄プロセスを使用して洗浄された。厚さ約50nmの高密度TiO(c−TiO)層は、ITO基板への450℃でのスプレー熱分解蒸着(SPD)を用いて、無水エタノール溶液中のチタニア前駆体(Aldrich社製のジ−イソ−プロポキシ−チタンビス(アセチルアセトネート))(1:10体積:体積)(L. Kavan, M. Graztel, Electrochim. Acta. 1995, 40, 643)及び無水メタノール中の酢酸亜鉛2水和物(Fluka社製)(80g/l)による高密度ZnO(c−ZnO)層を使用して製造された(P. M. K. Ratheesh, C. S. Kartha, K. P. Vijaykumar, F. Singh, D. K. Avasthi, Mater. Sci. Eng B 2005, 117, 307を参照)。メソポーラスTiO(m−TiO)膜は、全厚が〜120nmの高密度TiO層上のポリママトリクスにおけるナノ粒子のコロイド状懸濁物からのスピンコーティングによって製造された(H. J. Snaith, L. S. -Mende, M. Gratzel, M. Chiesa, Phys. Rev. B 2006, 74, 045306を参照)。その後、450℃でのアニーリングによって粒子を焼結させて、ポリマを燃焼させると、多孔率約60%のメソポーラス膜が残った。F8BTポリマ(Mn=97K)は、濃度14g/lのp−キシレン溶液からスピンコーティングされた(厚さ〜80nm)。
【0022】
F8BT上のTFB二重層(Mn=130K)は、「ウォータ・フロート・オフ」及び積層技法を使用することによって得られた(J. A. Barker, C. M. Ramsdale, N. C. Greenham, Phys. Rev. B 2002, 67, 075205)。TFBポリマ膜(厚さ〜60nm)は、PSS層でコートされたOプラズマ処理ガラス基板上に作製され、水中での浮上離脱が促進された。F8BTコートサンプルは、これらの浮上TFB膜の「乾燥側」に直接的に積層された。全てのサンプルは、150℃にて窒素雰囲気下でアニーリングされ、発光増強に関するF8BTのモホロジが改善された(C. L. Donley, J. Zaumseil, J. W. Andreasen, M. M. Nielsen, H. Sirringhaus, R. H. Friend, J. - S. Kim, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 12890)。
【0023】
最後に、高真空(1×10−6mbar)下でのMoO(10nm)(粉末、99.999%、Testbourne社製)及びAu(50nm)の蒸着のために、サンプルは、熱蒸発チャンバに移された。
【0024】
尚、これらのデバイスの向きは、標準の配置とは反対である。アノード上にデバイスが構築されるのが、より標準的な手法であるが、上述のデバイスは、カソード上に構築される。以下に説明される原理にとって、必須の構成ではないが、この向きによって、以下に説明される種類のポリマ二重層を有するデバイスは、より容易に製造されるので、好都合である。
【0025】
サンプルは、ポリマ膜形態及び光ルミネセンス効率(PLE)を確認するために、高密度層を用いて、及び、高密度層を用いずに、同様の方法で石英基板上にも作製した。
【0026】
F8BT単層並びにF8BT/TFB二重層デバイス内のm−TiO、c−TiO及びC−ZnO電子輸送層の電流密度(Keithley195電位計を使用して測定)及び輝度対印加電圧(Keithley230ソースメータを使用して測定)に関する特性は、校正済みの参照Si光検出器を使用して空気中で測定された。
【0027】
(結果)
図4は、一連のCOPLED A〜DのJ−V−L曲線を示す。これらの結果は、いくつかの特色を示している。
【0028】
まず、図4は、高密度フラット金属酸化物層を有するデバイス(デバイスC及びD)は、メソポーラス構造を有するデバイス(デバイスA及びB)よりも優位に良好に動作することを示す。このことは、最初の未ドープポリマへの効率的な電荷注入には電場が必要であり、電場が平面形状の界面にて最大化されるという事実によることが考えられる。高密度金属酸化物層を包含するデバイス(デバイスC及びD)は、きわめて低い起動電圧を示し、カソード構造に高密度ZnOの層を含むデバイスは1Vにて起動する。これは、デバイスからの発光が緑色であると見なされるときに、特に低い結果である(約2.3eV)。この特別に低い起動電圧は、電極及び/又は二重層デバイスの場合には、F8BT/TFB界面にて生じる熱補助注入メカニズムによって説明され得ることが考えられる。
【0029】
図4は、二重層デバイス(デバイスA及びB)がポリマ単層を有するデバイス(デバイスC及びD)よりも効率的であるが、図4及び以下の表2に示される如く、起動電圧がわずかに高いことも示す(ポリマ膜全厚:二重層デバイスでは約140nmの増加に注目)。表2は、各種のCOPLED構造の最大輝度、輝度効率及び起動電圧を示す。上付き文字としてのアスタリスク記号は、示される輝度及び効率の値が、非ランバート発光パターンに従って補正されていることを意味する。
【0030】
【表2】

【0031】
二重層デバイスの性能がより良好なのは、TFB層の役割に起因し得る。TFB層は、F8BT/MoO界面での任意のポテンシャル励起消光を低下させると考えられる。ポテンシャル励起消光の低下は、以下の表3に示すPL消光測定値に示される。TFB層は、MoOの価電子帯(〜−5.3eV)(1. L. Kavan, M. Graztel, Electrochim. Acta. 1995, 40, 643及び1. S. Tokito, K. Noda, Y. J. Taga, Phys. D Appl. Phys. 1996, 29, 2750を参照)に非常によく適合したHOMOレベル(約−5.3eV)(Y. Xia, R. H. Friend, macromolecules 2005, 38, 6466を参照)を有する良好な正孔輸送材料としても作用する。対照的に、ポリマ単層デバイスで観察される著しく低い起動電圧によって、MoOからF8BTへの効果的な正孔注入があることが示唆される。
【0032】
表3は、電子及び正孔注入金属酸化物層と組合せてアニーリングしたF8BT膜のフォトルミネセンス効率を示す。F8BT膜のフォトルミネセンス効率は、励起波長が475nmの積分球内部で測定されている。
【0033】
【表3】

【0034】
本明細書において示される結果は、輝度、効率及び起動電圧に関して、電子注入体として高密度TiOを含むデバイスは、電子注入体としてメソポーラスTiOを含むデバイスよりもかなり良好に機能すること、並びに、電子注入体として高密度ZnOを含むデバイスは、メソポーラス又は高密度TiOのどちらかを使用するデバイスよりもかなり良好に機能すること、とを示す。高密度ZnO層を含むデバイスは、試験を行った3つの材料の中で最良であることが見出された。高密度ZnO層を含むデバイスは、実質的な空気安定性という利点を備え、起動電圧及び輝度の両方で(L. Kavan, M. Graztel, Electronchim. Acta. 1995, 40, 643を参照)、従来のITO/PEDOT:PSS及びCa−Alベースの二重層LEDと同じくらい良好に機能することが見出された。高密度ZnOがF8BTベースのLEDへの非常に効果的な電子注入層であるという知見は、Bolink et al.による最近の報告(H. J. Bolink, E. Coronado, D. Repetto, M. Sessolo, Appl. Phys. Lett. 2007, 91, 223501)と一致している。
【0035】
輝度及び起動電圧が略同等であるにもかかわらず、これらのデバイスの効率が従来構造よりも低い理由は、おそらく電流密度がより高いためであると考えられる(1. Y. Xia, R. H. Friend, Adv. Mater. 2006, 18, 1371を参照)。これらの比較的高い電流密度は、金属酸化物高密度層を通じた漏れ電流によると思われる。このような層の形成は、改良された蒸着技法によって抑制できる。改良された蒸着技法は、性能の向上をもたらす。
【0036】
従来のポリマブレンドをベースとするLEDは、標準PEDOT:PSS−Ca/AI構造の「ウォータ・フロート・オフ」技法によって作製したデバイスと比較されると、より高い効率を示す(A. C. Morteani, A. S. Dhoot, J. -S. Kim, C. Silva, N. C. Greenham, R. H. Friend, C. Murphy, E. Moons, S. Cina, J. H. Burroughes, Adv. Mater. 2003, 15, 1708)。このことは、本技法での二重層構造におけるポリマ界面の潜在的な汚染が原因である場合がある。これらのポリマのブレンドからキャストされた膜がTFB濡れ層を有することが観察されている。垂直相分離及び表面エネルギコントラストに起因して、TFB濡れ層の大部分は基板に接触する(Y. Xia, R. H. Friend, Adv. Mater. 2006, 18, 1371を参照)。これは従来の構造にとっては有利であるが、本明細書に記載する「反転」構造にとっては不利である。金属酸化物のF8BT相による濡れを可能にするための表面化学は、本発明の反転LED構造にとって有利である。
【0037】
図5(a)は、上述のように形成されたデバイスからのエレクトロルミネセンス発光の角度パターン(遠視野におけるパターン)を示す。これらのパターンは、従来のPLEDから予想されたランバート発光パターンからかなり逸脱している(N. C. Greenham, R. H. Friend, D. D.C. Bradley, Adv. Mater. 1994, 6, 491及びJ. -S. Kim, P. K. H. Ho, N. C. Greenham, R. H. Friend, J. Appl. Phys. 2000, 88, 1073を参照)。このことは、本明細書において説明されるCOPLEDで使用される金属酸化物層の高い屈折率(n)(550nmにてnr−ZnO≒1.9及びnr−TiO2≒2.4)に起因すると考えられる。この結果、光導波及び非ランバート発光が生ずることとなる。
【0038】
これらの測定値は、基本測定値に補正を行い、これらのCOPLEDの輝度及び輝度効率を正確に推定する必要があることを示している。発明者によって使用された測定値では、Si光検出器を順方向に配置して、ランバート発光を仮定して初期輝度出力を計算した。測定された発光パターンを説明するには、高密度ZnOベースのCOPLEDでは1.3、高密度TiOベースのCOPLEDでは1.06の補正因子を明らかに適用する必要がある。尚、これらの構造では、導波光の一部の再吸収(ポリマ及び金の両方において)に起因して、内部量子効率が通常よりも低い可能性がある。
【0039】
これらの2つの高密度金属酸化物層(TiO対ZnO)のJ−V−L特性に関する我々の比較研究は、F8BTへの電子注入特性において若干の相違が存在することを指し示している。このことは、高密度ZnOの場合に、若干低い起動電圧となることから明らかである。図5(b)に示される如く、COPLED構造のダイオード特性を用いて、これらの高密度層の電子注入特性が更に調査された。これらのJ−V特性は、より低い起動電圧及び良好な整流特性を有する高密度ZnO層と一致している。このことは、それが電子的により良好な選択であることを示唆している。これらの2つの金属酸化物の表面は、極性に関して重要な違いを有する。TiO及びZnOのいずれにおいても、結合は実質的にイオン性である。ZnOの表面は、表面の再構築の代わりに発生する電荷移動に起因して、一般に極性を有する。この結果、単結晶性ZnO表面の金属化が引き起こされる(A. Wander, F. Schedin, P. Steadman, A. Norris, R. McGrath, T. S. Turner, G. Thornton, N. M. Harrison, Phys. Rev. Lett. 2001, 86, 3811)。表面上のZn陽イオンの存在は、エネルギの好ましい移動及び電子注入の改善を引き起こすことができると考えられる。反対に、TiOは、ZnOよりも低い表面極性を有する。表3にまとめたフォトルミネセンス効率(PLE)の測定値は、TiO上のF8BTのPLEが、ZnO上のF8BTのPLEよりもかなり低いことを示す。ZnO上のF8BTのPLEは、ブランクの石英基材上で測定されたF8BTのPLEに類似している。このことは、おそらく、高密度TiO/F8BT界面で生ずる励起消光又は不十分なポリマ膜モホロジに起因し、低い輝度効率に帰結する。
【0040】
図5(b)の挿入図において示される如く、COPLEDは、光起電力モードで試験され、ポリマと金属酸化物層との間での電荷発生の可能性が確認された。全体的に、低い電流収集効率が確認された。しかしながら、電流収集効率は、高密度TiOベースのCOPLEDよりも、高密度ZnOを含むCOPLEDの方が高かった。このことは、PLEにおける変化がポリマモホロジの変化に起因し、ポリマ−金属酸化物界面での過剰な励起消光によるものでないことを示唆している。光誘起吸収及び過渡吸収の測定値によって、ポリマ−金属酸化物界面に無視できるほどの電荷発生があることが確認された。
【0041】
下層の高密度金属酸化物膜の上のF8BT発光層のモホロジを調べるために、図5(c)及び図5(d)に示される如く、原子間力顕微鏡検査(AFM)がタッピングモードで実施された。図5(c)及び図5(d)の挿入図によれば、高密度金属酸化物層は、略同等のドメインサイズ(〜40nm)及び粗さ(〜5nm)を有する多結晶であると考えられる(S. A. Studenikin, N. Golego, M. Cocivera, J. Appl. Phys. 2000, 87, 2413も参照)。これらの2つの金属酸化物表面でのF8BTの膜形成特性は、図5(c)及び図5(d)に示される如く、実際には非常に異なっており、極性及び非極性の酸化物表面でのポリマ溶液の濡れ条件の違いを実証している。高密度TiO上のF8BTのモホロジの不均質性は、図5(b)に示される如く、逆バイアス下でのc−TiO/F8BT/MoOデバイスにおいて漏れ電流がより大きいことと一致している。尚、漏れは、TiOのピンホール又は比較的粗いポリマ膜に起因したMoOとTiOとの間の密接な接触によって生ずる。不十分なポリマモホロジが、励起の非発光再結合を引き起こすということは最も重要である。この結果、低い輝度効率及び非効率的なエレクトロルミネセンスデバイスが得られることとなる(J. Liu, Y. Shi, L. Ma, Y. Yang, J. Appl. Phys. 2000, 88, 605を参照)。このことは、我々の光及びエレクトロルミネセンス測定値と一致している。
【0042】
金属酸化物層の厚さを増加させることによって、輝度は低下し、起動電圧は上昇する。しかしながら、効率は、かなり改善される。図4(a)及び図4(b)並びに表2の下部に示されるデバイスの特定の群に対して、MoO(〜20nm)及び高密度ZnO(〜120nm)層の厚さが修正された。これらのデバイスの効率は、14Vにて2.8Cd/Aでピークに達する。
【0043】
ITOに接触する金属酸化物の蒸着前にOプラズマ処理がITOに実施されないとき、性能の改善、特に、高輝度及び低起動電圧が観察された。この観察結果は、ITO/高密度TiO(c−TiO)又は高密度ZnO(c−ZnO)界面において低減された注入障壁を生じさせるOプラズマ処理の非存在と一致する。Oプラズマエッチングが、ITOの仕事関数を増大させることは既知である(C. C. Wu, C. I. Wu, J. C. Sturm, A. Kahn, Appl. Phys. Lett. 1997, 70, 1348を参照)。
【0044】
上述の結果は、メソポーラスTiO(m−TiO)ベースのデバイスが、起動電圧及び輝度効率の点において、Haque et al.による最近の報告(S. A. Haque, S. Koops, N. Tokmoldin, J. R. Durrant, J. Huang, D. D. C. Bradley, E. Palomares, Adv. Mater. 2007, 19, 683)中で観察されたものと同等又はより良好な性能を発揮するということを示している。電子注入用の高密度ZnO層を使用するポリマLEDは、高密度又はメソポーラスTiOのどちらかを使用するデバイスよりも優れていることが見出された。デバイスは、1V未満の起動電圧及び2.8Cd/Aまでの最大効率を発揮することが見出された。本明細書で説明されるデバイスは、動作中における優れた空気安定性を発揮することが見出された。
【0045】
上述の結果は、高密度TiO層が、メソポーラス電極と比較して、優れたダイオードエレクトロルミネセンス性能及び電子注入特性をもたらすことを示す。また、上述の結果は、高密度ZnOベースのデバイスが、高密度TiOベースのデバイスと比較して、電気及び光学性能の改善をもたらすことを示す。更に、上述の結果は、F8BTとMoOとの間へのTFB中間層の追加が、デバイス性能を改善し、報告された3d/Aに近い記録的なレベルの輝度をもたらすことを示す。高密度TiO表面上でのF8BTのモホロジの均質性を改善することによって(例えば、プロセス経路及び表面処理の制御を改善し、ポリマの濡れ性を改善することによって)、デバイス性能は更に改善される。有効な電荷注入層としてZnOを特定することによって、向上した効率、輝度及び低い起動電圧を提供するLED構造が解明される。このLED構造は、分子又はポリマLED技術の更なる開発のための汎用性の選択肢となる。更に、屈折率の高い金属酸化物層に起因したこれらのデバイス中の大きな導波は、光子構造の導入を伴って、光出力結合及び発光方向に対する制御を著しく向上させる。
【0046】
TEモードでの導波を促進するために、発光を行うデバイスの領域のどちら側も発光領域よりも低い屈折率を有する領域であることが好ましい。
【0047】
デバイス性能の更なる改善は、バルクZnOではなく、ZnOナノロッドの電子注入層の使用によって達成される。ZnOナノロッドは、上述のデバイス構造中のバルクZnOの代わりに使用される。好ましくは、ナノロッドは、デバイス効率を改善するCsCOなどの正孔遮断層によってキャップされる。TFBが正孔輸送層として使用されるならば、ZnOナノロッドは、デバイス性能に関しても有利である。即ち、上述の如く、デバイスの輝度が改善される。
【0048】
図12は、ZnOナノロッド電子注入層を有するCOPLEDの4枚の画像を示す。画像(a)は、電子注入層としてZnOナノロッドを備えたCOPLED構造の概略図である。尚、ナノロッドの長軸は、膜層の平面に対して垂直に向けられている。画像(b)は、ZnOナノロッドの層の走査電子顕微鏡による平面図である。画像(c)及び画像(d)は、長さがそれぞれ110nm及び380nmのZnOナノロッドの側面図であり、当該側面図は、電子顕微鏡を用いて撮像されている。500nm厚さのF8BT膜の層は、ナノロッド上で観察される。比較的低いパーセント体積被覆率を有する長いロッドに起因したポリマ浸透は、特に、画像(d)において観察される。
【0049】
ZnOナノロッドの層は、90℃より低い温度での水熱蒸着技法を使用して作製される。ナノロッドの長さは、適切な前駆体(典型的には、水中の0.025Mの硝酸亜鉛水和物及び0.025Mのヘキサメチレンテトラアミン)の存在下での化学浴中の基板の時間を変化させることによって制御される。ZnOナノロッドを成長させる方法は、当分野において既知である。特に、ZnOナノロッドの水熱成長を説明する更なる詳細事項は、「”A simple low temperature synthesis route for ZnO-MgO core-shell nanowires”, N. O. V. Plank et al., Nanotechnology 19, 465603 (2008)」に記されている。ナノロッドの好ましい最小長は110nmである。最小長のナノロッドは、化学浴での時間を最小限にすることによって生成される。この低温合成プロセスによって、多くの種類の可撓性基材上で使用するのに好適なこのようなPLEDが作製される。
【0050】
水熱蒸着によって成長した結晶性ZnOナノロッドの直径は、典型的には、20〜50nmの範囲であり、中心間の距離は約100nmである(SEM画像から推定)。SEM画像から、ZnOナノロッド間の間隔が不規則であり、隣接するナノロッドが互いに向かって傾斜する傾向を有することがわかる。ナノロッドは、完璧に配列されていないので、ZnOナノロッド層の部分密度は、典型的には、層体積の85〜90%である。
【0051】
図13は、ZnOナノロッド層(白正方形)を電子注入層として使用するときの反転電子のみのデバイスの電流密度の改善を示す。デバイスの電流密度の改善は、バルク(フラット)ZnOの層(黒丸)との比較に基づき説明される。ナノロッドは、長さ110nmであり、上部接触電極としてアルミニウムが使用された。F8BT層と同様の厚さの正孔(hold)遮断層は、ナノロッド及びバルクZnOデバイスの両方に使用された。ZnOナノロッド電子注入層を有するデバイスの電流密度は、バルクZnO電子注入層を有するデバイスよりも約2桁大きい。
【0052】
図14は、ZnOナノロッドの電子注入層を使用するCOPLEDデバイスの性能改善の更なる例を示す。グラフ(a)〜(c)それぞれに、電流密度対電圧(J−V曲線)を黒正方形によって示し、輝度対電圧(L−V曲線)を白円によって示す。グラフ(a)〜(c)は、長さ110nm、200nm及び380nmのZnOナノロッドをそれぞれ含むデバイスの特徴を示す。各デバイスは、厚さ660nmのF8BT単層を有する。グラフ(d)は、同じ3つのデバイスの輝度効率対電圧を示す。図14から、ZnOナノロッドの長さは、380nm未満となるように選択される場合に有利であることがわかる。最も好ましくは、ZnOナノロッドは、長さが200nm未満、理想的には長さが約110nmである。
【0053】
電子注入層としてのZnOナノロッドの使用によって、バルクZnO及びバルクTiOなどのバルク材料より優れたいくつかの利点が提供される。上述の如く、バルクZnOは、全体的に、TiOより優れた改善された特徴を光電子デバイスに与える。ZnOナノロッドの層を電子注入層(特に、約110nmの長さを有するナノロッド)として使用することにより、光電子デバイスの性能が更に改善される。
【0054】
1.特に、長さ110nmのZnOナノロッドの層は、バルクZnOの層を有する同等の電子のみのデバイス(すなわち正孔(hold)遮断層でキャップされたデバイス)よりも、電子注入を約3桁改善する。
【0055】
2.ZnOナノロッドは、低温(約90℃)にて成長することができる。したがって、ZnOナノロッドは、半導体ポリマとの使用に特に適する。
【0056】
3.ZnOナノロッド電子注入層を使用するデバイスは、バルクZnOと比較して、低い電圧にて動作することができる。これは、ナノロッドの磁場増強特性及びポリマ発光層(例えば、F8BT)に対する電子注入障壁の低下の結果である。ZnOナノロッドの開放構造は、ポリマ層がナノロッドに浸透することを可能にする。この結果、再結合ゾーンのサイズが増大し、ポリマ層への電子注入が改善される。
【0057】
(光子構造)
金属酸化物層に関連する光子構造は、エレクトロルミネセンス効率を向上させるために利用される。エレクトロルミネセンス効率は、金属電極による吸収を介した損失及び光出力結合の減少によって向上される。エレクトロルミネセンス効率の向上は、2つの手段(光ポンピング又はレーザ発振のいずれかによる誘導発光並びに構造からの発光を導くための導波)によってなされる。
【0058】
図7は、上述の種類の一連のデバイスによるEMモード強度の推定値を示す。図7(a)は、Bolink et al.に記載されたデバイスを示し、図7の他のデータとの比較に用いられる。このデバイスにおいて、ピークモード強度は、ITO層にある。対照的に、図7(b)、図7(c)及び図7(d)に示されるデバイスにおいて、ピークモード強度は、MoO層からF8BT層に向かって徐々に移動する。ピークモード強度の移動は、以下に説明されるいくつかの機構によって達成される。発光材料に又は発光材料付近にピークモード強度を有することによって、誘導断面積が増大される。また、閉じ込め係数が上昇する。この結果、導波及び/又は誘導発光の可能性が向上する。一般的に、このような特性は、以下の構成要素を有することにより促進される。
【0059】
(a)発光領域及び必要に応じて1以上の他の層を有するデバイスの中央部。尚、中央部の要素は、比較的高い屈折率を有する。
【0060】
(b)中央部の両側のデバイスの外側部分。尚、外側部分は、電荷注入を実行するとともに比較的低い屈折率を有する。
【0061】
第1に、多くの従来のデバイスにおいて、金属電極が発光層に近接していると、金属電極は任意の誘導モードの場を抑制する。MoO層の上部に形成された金属電極(例えば、金電極)からの損失は、発光層をこのような金属層から離間させる層を使用することによって抑制される。図7(b)、図7(c)及び図7(d)の好ましいデバイスにおいて、TFBの層がこの効果を得るために使用される。他の非金属輸送材料の層が、TFBの代わりに使用されてもよい。好ましくは、このような材料は、材料に適切な電荷担体を発光材料に注入させる仕事関数を有し、発光材料よりも低い屈折率を有する。
【0062】
第2に、閉じ込めは、発光層の有効屈折率を上昇させることによって促進することができる。F8BTを例として説明すると、F8BTが配向様式で蒸着されるならば、F8BTは、典型的には、一の方向において1.6の値から垂直方向に2.1の値までの屈折率の異方性を実現することができる。発光層を配向様式で蒸着することによって(例えば、配向を促す(例えば、ラビング処理又は回折格子によって)表面特性を有する表面上に発光層を蒸着することによって)、デバイスの厚さ方向に比較的高い屈折率を有するように発光層が蒸着される。液晶相を有する材料の場合、比較的弱い秩序化力の下でも、長距離規則度が得られる(例えば、F8BTが蒸着される表面上へのナノインプリンティングによって)。この機構の有効性の一例として、図7(c)は、F8BT層が2.1の屈折率を有するデバイスの特性を示す。
【0063】
第3に、層の厚さを選択して、ピークモード強度をデバイス内の所望の位置に存在させることができる。例えば、図7(d)は、図7(c)のデバイスと同じ要素を有するデバイスの特性を示すが、発光(F8BT)及びポリマ電荷輸送(TFB)層の厚さは、発光層での閉じ込めを促進するために変更されている。
【0064】
光子効果は、ピークモード強度が発光領域にあるように、又は、ピークモード強度が電荷注入要素の1つと発光領域との間の界面に存在するように、デバイスを構成することによって、増強される。本デバイスにおいて、本パラメータの最適化のためにTEモードの強度を検討すべきであることが考えられる。例えば、図7(c)のデバイスは、層の厚さの調整を通じて、ZnO電子注入層とF8BT発光層との間の界面にピークを存在させることができる。この後者の場合では、適切な界面に相関構造を設けることによって、効果が更に向上される。尚、我々は、F8BTレーザを調べるための好適な励起源を、現在、有していないが、この目的のためのシステムを構築する過程にある。Nd:YAGレーザの第3高調波(355nm)を使用して励起される活性材料として、F8が使用された。最大のTEモードがF8活性層に閉じ込められる一方で、TEモードの最大モード強度は、ZnOの高屈折率に起因して、ZnO層に位置している。したがって、TEモードは、図7(e)に示される如く、COPLED構造でレーザ発振モードとなる傾向がある。
【0065】
デバイスの層の平面で導波を実現するデバイスにおいて、デバイスの平面から光を導く手段を更に提供することは有利である。これは、デバイスの界面の1つ(例えば、図10に示されるようなMoO/F8界面)に格子構造を押し付けることによって行われる。他のデバイスにおいて、デバイスが基板の平面から光を導くことが望ましい場合がある。これは、導波路を湾曲させ、基板の平面から発光を導くことや、デバイス端部に光散乱構造を導入することによって実現される。
【0066】
上述のデバイスにおいて、各層は略単一の材料から形成される。他の実際のデバイスにおいて、要素(層又は他の形状)は、他の不活性又は活性材料を含んでもよい。上述の1つ又は2つのポリマ層の代わりに、同様のデバイスは、3つ以上のポリマ層を有してもよい。これらのポリマ層は、電荷輸送(正孔及び/又は電子)及び/又は発光を実現してもよい。要素は、別個の材料として、又は、単一の材料の要素によって提供されてもよい。例えば、要素は、ブロックコポリマの別個のブロックとして提供されてもよい。
【0067】
MoOの代替物は、ハフニウム及び酸化バナジウムを含むが、これに限定されるものではない。ZnO及びTiOの代替物は、酸化クロム、酸化スズ及び酸化タングステンを含むが、これに限定されるものではない。
【0068】
図8乃至図10は、光学ポンプレーザ発振を示したデバイスの結果を示す。これらの結果は、デバイスの光出力を分析することによって得られた。デバイスの構造は、各図に示されている形態に従い、光学レーザ光によって活性化された。それぞれの場合で、光学レーザ光による活性化は、パルスレーザ(パルス幅=500ps及びポンピング波長:355nm)を用いて行われた。デバイスのITO−ZnO側は、活性化を吸収するので、サンプルは、デバイスのポリマ側を通じて励起された。これらの構造全てにおいて、活性材料は分散フィードバック形でパターン形成され、ダイオード平面からの増強された出力結合効果が得られた。
【0069】
図8は、ITO/ZnO/F8(Eth=19.1μJcm−2パルス−1)構造を備えるポリマDFBレーザでの閾値挙動を示す。図9は、ITO/ZnO/F8/MoO(Eth=19.1μJcm−2パルス−1)構造を備えるポリマDFBレーザでの閾値挙動を示す。図10は、ITO/ZnO/F8/MoO/Ag(Eth=27.1μJcm−2パルス−1)構造を備えるポリマDFBレーザでの閾値挙動を示す。図8のITO/ZnO/F8構造の閾値より下((Eth/x1))並びに閾値より上((Eth×x2)及び(Eth×x3))の一連の発光スペクトルは、FWHMが1.1nmの複合材の異なる有効屈折率(neff)によって引き起こされたレーザ発振波長の差を示す。図9のITO/ZnO/F8/MoO構造の閾値より下((Eth/x1))並びに閾値より上((Eth×x2)及び(Eth×x3))の一連の発光スペクトルは、FWHMが1.1nmの複合材の異なる有効屈折率(neff)によって引き起こされたレーザ発振波長の差を示す。図10のITO/ZnO/F8/MoO/Ag構造の閾値より下((Eth/x1))並びに閾値より上((Eth×x2)及び(Eth×x3))の一連の発光スペクトルは、FWHMが1.1nmの複合材の異なる有効屈折率(neff)によって引き起こされたレーザ発振波長の差を示す。355nmの光の透過率は、5nm厚MoOに対して93.5%であり、120nm厚ITO/60nm厚ZnO基板に対して33%であるので、入力励起エネルギは、各基板の透過に対する補正因子を用いて、校正された。
【0070】
上述のデバイスは、比較的小さな構造を有する。デバイスは、更に多くの層又は構造を備え、性能の向上が図られてもよい。例えば、図10のデバイスは、1つ以上の低屈折率材料(例えば、TFB)からなる1つ以上の電荷輸送及び光学スペーシング層を備えてもよい。1つ以上の電荷輸送及び光学スペーシング層は、発光層と金属酸化物層の1つとの間配設される。この結果、図10のデバイスの性能は更に向上する。このような輸送及びスペーシング層は、発光層を各酸化物層から離間させる。この結果、酸化物層での光場振幅が低減し、隣接する電極による光学的消光が減少する。別の例として、デバイスの端発光を増強するために、デバイスの上部及び底部に反射層が含められてもよい。
【0071】
設計に応じて、これらのデバイスは、LEDとしても動作する。図11は、フラットF8(黒)及び波形F8(赤)膜を包含するCOPLED構造の電流−電圧−輝度(J−V−L)並びにルミネセンス効率曲線を示す。これらのデバイスにおいて、レーザ発振実験で使用されたデバイスと同様に、F8の活性層は厚さ200nmであり、ZnOは厚さ60nmであった。第1に、光学レーザ発振を示す同じデバイス構造は、エレクトロルミネセンスも示す。尚、このことは、ポリマ注入レーザに向けた重大なステップを表す。J−V曲線は、DFBパターンのF8への導入によって、COPLED構造の輝度及びルミネセンス効率対電圧が増強されることを示す一方で、起動電圧(〜6.0V)及び電流密度は、略同一のままである。ここで、3Cd/A(23)に到達できるF8BT(緑色エミッタ)を包含する我々の最適化されたCOPLEDと比較して、ルミネセンス効率値(0.0181Cd/A)は、低くなっている。これは、予想通りに、半導体ポリマ単層LEDのためのものである。図11(c)に示される如く、出力結合効果は、波形F8膜を包含するCOPLED構造のエレクトロルミネセンススペクトルの角度依存性測定から確認された。順方向の発光は、458nmに最大ピークを有する。しかしながら、このピークは、0°以外の任意の角度にて消失する。このピークは、レーザ発振波長と著しく良好に一致する。このことは、レーザの分散フィードバックを誘発した同じ構造は、LEDにおけるエレクトロルミネセンス出力結合を増強することを示す。我々は、フラットF8膜を包含するCOPLEDでは、その位置から離れる発光スペクトルの突然の変化を観察していない。
【0072】
図8乃至図10に示される構造における光学ポンプレーザ発振の実証は、金属電極による吸収に関連する光学損失が、これらの電極から離れた面内導波モードの設計を通じて、実質的に減少したことの明らかな証拠である。この特性は、他の多くのデバイス構造に幅広く有用である。
【0073】
(i)発光ダイオードの効率改善。順方向での有機半導体LEDの発光の直接出力結合は約25%であり、残存する光が、内部モード中に結合されることが一般的に確認されている。これらが、従来のデバイスのアーキテクチャで吸収されるのは、デバイス内でのその伝搬が急速に減衰されるためである。実質的に改善された出力結合効率は、特に、本明細書中で使用されるDFB構造などの出力結合構造と組合せて、本明細書で示す改善された構造を使用して達成できる。
【0074】
(ii)光起電力電池の効率改善。効率的な発光を与える同じ光学構造は、逆のプロセス(光起電力ダイオードの動作をもたらすためのデバイス内での光吸収)にとっても望ましい。図5(b)に示される如く、光起電力動作は、ポリマ又は分子半導体を含むダイオードで幅広く観察されている。半導体材料の選択には、初めに半導体材料が光を吸収することと、続いて、電極での電荷収集を可能にするために正孔からの電子を完全に分離することとが必要である。電子受容及び正孔受容材料の組合せが必要とされることが一般に見出されている。1つの好ましい選択肢は、一般的な溶媒からの単膜として蒸着される類の材料の混合である(例えば、US 5,670,791, J. J. H. Halls及びR. H. Friend並びにConjugated Polymer-Based Organic Solar Cells, Gunes et al., Chem. Rev., 107, 1324-1338を参照)。このような材料の組合せは、本明細書で例示された光学ポンプレーザ発振のための改良光子構造(図8乃至図10)で使用できる。好適な正孔受容材料は、上部の反射金属電極とともに熱蒸発することができるMoO、WO、Vなどのp型金属酸化物を含む。
【0075】
かくして、デバイスの層の屈折率及び厚さを適切に選択することによって、光電力電池が、図7(a)乃至図7(e)に関連して説明された上述の原理を使用し、光結合の増強を達成することは有利である。例えば、活性発光層(例えば、F8TB)のどちら側の層も、活性層よりも低い屈折率を有することが好ましい。これらの原理の利用によって、図15に示されるような複合酸化物ポリマ太陽電池(COPSC)構造のエネルギ密度曲線が得られる。複合酸化物ポリマ太陽電池(COPSC)構造において、光学的吸収は、活性層にて上昇した最高密度によって増強される。したがって、光生成電荷担体の数が増加する。
【0076】
低い光学導波路損失は、光が領域にて活性光起電力組成物の片側まで吸収され、次にデバイスの平面内から活性光起電力領域まで導波される光起電力デバイスの設計も可能にする。このような構造は、光起電力ダイオードとして直接使用できない光起電力デバイスシステムの領域(例えば、光起電力パネルを形成するために配設された隣接する光起電力電池間の領域)にて光捕捉を可能にするときに有利である。本発明の導波原理の使用により、図16に示される光吸収領域に到達する光は、活性光起電力領域に向けられる。この結果、ソーラー・パネル・アレイの有効効率が向上する。このような構造が、図16に示される。
【0077】
光結合を改善するために、発光又は吸収ポリマ層を物理的に構築することに加えて、電子注入層も構築することができる。この例が、図17に示される。図17(a)は、パターン化ZnOナノロッドを包含するCOPLEDの光学顕微鏡画像を示す。尚、当該COPLEDには、電流は流れていない。図17(b)は、同じパターン化ZnOナノロッドベースのデバイスからのエレクトロルミネセンスの光学画像を示す。
【0078】
出願人は、本明細書において、本明細書に記載する個々の特徴それぞれを個別に開示する。また、出願人は、2以上のこのような特徴の任意の組み合わせも開示する。出願人は、このような特徴及び特徴の組み合わせが、当業者の共通する一般的な知識に照らして実施可能な程度に本明細書における開示を行っている。本出願人は、このような特徴又は組合せが、本明細書で開示した任意の問題点を解決するか否かにかかわらず、請求の範囲の制限無しに開示を行っている。出願人は、本発明の態様が任意のこのような個々の特徴又は特徴の組合せから構成されることを示している。上述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で各種の変更を行うことができることが当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置する分子半導体材料を含む有機発光又は反応性要素と、
前記第1の電極と前記有機発光又は反応性要素との間に配設された1.85を超える屈折率の材料を有し、前記第1の電極と前記有機発光又は反応性要素との間で電荷を輸送する第1の電荷輸送層と、を備えるダイオードデバイスであって、
該デバイスの平面内で案内されるモードに対する前記第1電極及び前記第2電極に起因する光学的損失が十分に低く、前記デバイス内での光学的ゲインが維持される構造を有することを特徴とするダイオードデバイス。
【請求項2】
前記第1の電荷輸送層と前記有機発光又は反応性要素との間に位置する更なる電荷輸送層を含むことを特徴とする請求項1に記載のダイオードデバイス。
【請求項3】
前記第1の電荷輸送層は、金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のダイオードデバイス。
【請求項4】
金属酸化物は、ZnO、TiO、MoO又はZnOナノロッドであることを特徴とする請求項3に記載のダイオードデバイス。
【請求項5】
前記第2の電極と前記有機発光又は反応性要素との間に配設された1.85を超える屈折率を有する材料を含み、前記第2の電極と前記有機発光又は反応性要素との間で電荷を輸送する第2の電荷輸送層を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項6】
前記第2の電荷輸送層と前記有機発光又は反応性要素との間に位置する更なる電荷輸送層を含むことを特徴とする請求項5に記載のダイオードデバイス。
【請求項7】
前記第2の電荷輸送層が金属酸化物を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のダイオードデバイス。
【請求項8】
前記第2の電荷輸送層に含まれる前記金属酸化物は、ZnO、TiO、MoO又はZnOナノロッドであることを特徴とする請求項7に記載のダイオードデバイス。
【請求項9】
前記更なる電荷輸送層又は前記更なる電荷輸送層それぞれは、有機材料を含むことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項10】
前記更なる電荷輸送層又は前記更なる電荷輸送層それぞれは、1.85未満の屈折率を有することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項11】
前記更なる電荷輸送層又は前記更なる電荷輸送層それぞれは、TFBを含むことを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項12】
前記デバイスの平面内で案内されるモードに対する前記第1電極及び前記第2電極に起因する光学的損失が十分に低く、前記デバイスによるレーザ発振が維持されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項13】
前記有機発光又は反応性要素は、前記デバイスによるレーザ発振を維持することができるルミネセンス特性を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、光学的に励起されたレーザ発振が可能であることを特徴とする請求項13に記載のダイオードデバイス。
【請求項15】
前記デバイスは、電気的に励起されたレーザ発振が可能であることを特徴とする請求項13又は14に記載のダイオードデバイス。
【請求項16】
前記デバイスは、電気的に励起されたレーザ発振が可能であり、
該電気的励起は、前記第1の電極及び前記第2の電極によって、前記デバイスへ電荷担体が導入されることによって生ずることを特徴とする請求項15に記載のダイオードデバイス。
【請求項17】
前記デバイスは、レーザデバイスであることを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項18】
前記有機発光又は反応性要素は、光吸収によって電荷担体の電荷分離を行うことができる材料を含むことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項19】
前記デバイスは、光起電力デバイスであることを特徴とする請求項18に記載のダイオードデバイス。
【請求項20】
前記有機発光要素に入射しない光の少なくとも一部が前記有機発光要素に向けられるような構造を有することを特徴とする請求項19に記載のダイオードデバイス。
【請求項21】
前記デバイスからの光出力結合を増強する手段を含むことを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項22】
前記デバイスからの光出力結合を増強する前記手段は、分散フィードバック構造を有することを特徴とする請求項21に記載のダイオードデバイス。
【請求項23】
前記デバイスからの光出力結合を増強する前記手段は、回折格子を含むことを特徴とする請求項21又は22に記載のダイオードデバイス。
【請求項24】
前記回折格子は、前記デバイスの2つの層の間の界面に設けられることを特徴とする請求項23に記載のダイオードデバイス。
【請求項25】
前記2つの層は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置することを特徴とする請求項24に記載のダイオードデバイス。
【請求項26】
前記デバイスは、端発光デバイスであることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項27】
前記デバイスからの発光の25%超は、デバイスの端からであることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項28】
前記分子半導体材料は、有機材料であることを特徴とする請求項1乃至27のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項29】
前記有機発光又は反応性要素は、層の形状に形成され、前記層の主平面に対して垂直方向において、前記主平面が有する屈折率よりも低い屈折率を有することを特徴とする請求項1乃至29のいずれか1項に記載のダイオードデバイス。
【請求項30】
前記金属酸化物は、ZnOナノロッドの層であり、
該ナノロッドは、前記ZnOナノロッドの層の主平面に対して主に垂直に向けられていることを特徴とする請求項4又は8に記載のダイオードデバイス。
【請求項31】
前記ナノロッドは、400nm未満の長さであることを特徴とする請求項30に記載のダイオードデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図4(e)】
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【図4(f)】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図7(d)】
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【図7(e)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−525049(P2011−525049A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514050(P2011−514050)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057637
【国際公開番号】WO2009/153328
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(303049485)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (2)
【Fターム(参考)】