説明

電気光学レンズのパワー消費を低減する方法

【課題】消費パワーが低減される電気光学装置を提供する。
【解決手段】一対の向き合った透明基板の間の液晶層と、液晶層と第1の透明基板の内向きの表面との間に配置されるパターン化された電極セットと、液晶層と前記第2の透明基板の内向きの表面との間の導電層と、パターン化された電極セット及び導電層に電圧を印加し、導電層に印加される電圧を閾値電圧(液晶層での光透過性がこれより高い値で変化するRMS電圧差)以下にする手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー消費を低減させる電気光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2006年6月12日に出願された米国仮出願60/804494号の利点を主張する。
【0003】
電気光学装置は、眼鏡(spectacle)レンズ、光学システム、液晶ディスプレイ及びその他の装置を含む多くの応用においての使用のため、発達してきた。多くの利点の中でも特に、装置を駆動するパワーが可能な限り低く、充電前の装置の寿命が長く、より小さい電源が用いられることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
消費パワーが低減される電気光学装置を提供する。特に、一対の向き合った透明基板の間の液晶層と、液晶層と第1の透明基板の内向きの表面との間に配置されるパターン化された電極セットと、液晶層と前記第2の透明基板の内向きの表面との間の導電層と、パターン化された電極セット及び導電層に電圧を印加し、導電層に印加される電圧を閾値電圧(液晶層での光透過性がこれより高い値で変化するRMS電圧差)以下にする手段と、を備える電気光学装置を提供する。1つの特定の実施形態では、パターン化された電極セットに印加される電圧と導電層に印加される電圧との間の電圧差は、液晶において所望の光透過性の変化を実現するのに十分な大きさとなっている。
【0005】
その分野において知られているように、ホモジニアス配向(homogenously aligned)液晶は、表面アンカリング(surface anchoring)エネルギー表面と、閾値レベル(VTh)以下のRMS電圧でダイレクタ再配向(director reorientation)行わせない相当の弾性定数と、を有する。液晶をまたがって(across)印加されるRMS電圧がVThより高い場合、ダイレクタは再配向を行い、飽和状態に到達するまで光透過性は変化する。従前のデザインでは、液晶を再配向するために、導電層をグランドに用いて液晶をまたがって電圧が印加されていた。この印加電圧は、少なくとも閾値電圧と、ダイレクタが所望の程度再配向を行うための電圧の追加量の合計である。本発明では、導電層(パターン化されていない電極)は閾値近くで駆動される(driven)。これにより、パターン化された電極が従前のデザインより低い電圧で駆動される。
【0006】
本発明の1つの例では、閾値電圧は約1.3V RMSである。この場合、1.3V RMS以下の電圧が導電層に印加される。パターン化された電極に印加される電圧は、所望の光透過の実現するため液晶ダイレクタが再配向を行うのに十分な大きさとなっている。この電圧は、従前のデザインより低くなっている。
【0007】
本発明の装置は、人間又は動物の視野の較正又は調整のために用いられるレンズを含む、この分野において知られている様々な応用において用いることができる。この分野において知られているように、レンズは眼鏡に組み込まれる。眼鏡は1つのレンズ又は1つ以上のレンズを有する。当業者に過度の実験を行わずに知られているように、ディスプレイの応用において装置を用いてもよい。本発明のレンズは周知のレンズ及び光学系とともに用いてもよい。
【0008】
本発明の装置は、その他のデザインより優れた多くの利点を提供する。従前の課題(work)は、液晶を駆動する電子駆動装置(driver)が供給されるエネルギーの大部分のパワーを消費することにある。本発明を用いることにより、液晶を駆動する電子装置(electronics)によって消費されるパワーが低減される。本発明を用いることで、より低圧のパワー供給源(supplies)を用いることができる。ここで述べる装置は、パワー供給源がバッテリーであるアイウェアの構成要素として用いてもよいため、より低い電圧パワーの供給によってより小さいバッテリーが使用でき、パワー消費の低減によってバッテリー充電の間の時間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、液晶セル(cell)を示す図。
【図2】図2は、液晶セルをまたがって電圧が印加される従前のデザインを示す図。
【図3】図3は、パターン化された電極セットの1つの例を示す図。
【図4】図4は、逆位相の方形波駆動装置の使用を示す図。
【発明の詳細な説明】
【0010】
以下の記述では、本発明の電気光学レンズを構成する制限のない詳細を提供する。本発明は、電場において再配列(realigned)することができる液晶材料で満たされる電気光学レンズを提供する。レンズは回折光学要素(DOE)として機能する。DOEは薄い液晶層にまたがって印加される電圧の効果であり、液晶膜はダイレクタ配向(orientation)領域を変えることによって応答し、セル(cell)の表面(face)にまたがって不均一な位相導電性関数(PTF)を導く不均一な屈折率が生じている。所望のDEOを生じさせるためのPTFの正確な制御は、パターン化された電極セット及び導電層を駆動することによってセルにまたがって正確に制御される電圧差を印加することにより、達成される。
【0011】
本発明で用いられる電気光学レンズは、レンズをゾーンプレートレンズとして機能させる所望の位相遅れ(retardations)分布を引き起こすため、パターン化された電極セットが用いられる回折レンズである。この分野において、回折レンズは知られている。回折レンズの機能は、フレネルゾーンパターンによる近接領域回折に基づいている。構成から明らかになるそれぞれの点は、球面波のエミッターとして役立つ。特定の観察点における光学領域は、全体の構成にわたり放射される球面波の寄与の合計である。様々な点から来る球面波の強め合う(constructive)干渉は、観察点において高い強度を引き起こし、これは高い回折効率に対応する。
【0012】
この分野において液晶セルは知られている。すべての公知のセルの構成及び操作が、ここでの開示と矛盾しない範囲で本明細書の一部に組み込まれる。1つの例として、図1に示すような、電場応答性液晶セルを考える。ここでは、液晶部材(20)が、導電性のある内面(40,30)を有する2つの基板(100,10)の間に挟まれている。この分野において知られているように、基板は、石英、ガラス、プラスチックのような、所望の光透過性を実現し、ここで述べる装置及び方法を機能させることができる材料で形成されている。所望の回折パターンを提供するため、導電層30には、パターン化された電極セットのパターンが描かれている。他の文献(例えば、ここで引用される後述の参照文献及び米国特許出願公開第2004/0223113号明細書)で述べられるように、パターンされた電極は、半径が所望の焦点距離によって決定される円周状に配列されるリングから構成されている。この分野において知られているように、パターン化された電極は、基板上に配置される導電フィルムのフォトリソグラフ工程又はその他の技術によって形成される。図3は、電極パターンの1つの例のレイアウトを示す図である。隣接するゾーンはグレイ及び黒色によって認識される。バイア(vias)(点で示す)を伴う電気的絶縁層を追加することによって、それぞれのリング電極は独立して処理可能となる。導電層40はパターン化されていない。導電層で用いられる導電材料は、特にここで述べられるものを含む適切な材料、及び、この分野において知られているその他の材料であればよい。導電材料は、イジウム酸化物、スズ酸化物、又は、イジウムスズ酸化物(ITO)のように透明であることが好ましい。それぞれの導電層の厚さは、一般的に30nmと200nmの間である。層は十分な導電を実現するのに十分な厚さとしなければならないが、レンズ構成全体が過度に厚くなるような厚さではない。基板は、スペーサー(60)、又は、この分野において知られているその他の手段によって所望の距離が保たれている。スペーサーは、マイラー、ガラス又は石英、又は、所望のスペースを提供するのに役立つその他の材料のように所望の材料で形成されていればよい。効率の良い回折を達成するため、液晶層は遅れて応答する1つの波を提供するのに十分な厚さでなければならないが(d>λ/δn〜2.5μm,ここでδnは液晶媒体の複屈折である)、より厚い液晶層は飽和現象を避けることを補助する。より厚い層の欠点には、長いスイッチ時間(dによって変化する)及び電気光学特性の鮮明度の損失が含まれる。特定の実施形態では、透明な基板は3ミクロンと20ミクロンの間の距離だけ離れていて、すべての個々の値及び範囲がこの中にある。現在における好ましい例の1つでは空間は5ミクロンである。基板の表面はポリビニルアルコール(PVA)又はナイロン6,6のような配向層(50)でコーティングされ、ホモジニアスダイレクタ配向を与えるようにすり込む(rubbing)ことによって処理される。一方の基板上の配向層は、図2で矢印によって示すように他方の基板上の配向層から逆平行(antiparallel)にすり込まれることが好ましい。この分野において知られているように、これにより液晶が適切に配列される。
【0013】
この分野において知られている手段を用いて、電圧がパターン化された電極セット及び導電層に印加される。従前のレンズ構成では、図2に示すように、電圧は基板の内面導電表面に印加される。図2で用いられる符号は、この分野において慣用的なものである。従前のレンズ構成では、一方の導電層がグランドとなる。本発明の1つの実施形態では、1つの駆動回路が導電層に取り付けられ、別の駆動回路がパターン化された電極セットに取り付けられる。この分野において知られているように、レンズの端の薄いワイヤー又は導電片を用いた電極間で、又は、レンズの下の一連の導電バイアによって、電気的接触が起こりうる。この分野において知られているように、導電層及びパターン化された電極セットに供給される電圧は、用いられる特定の液晶、セルでの液晶の厚さ、所望の光透過性及びその他の要素に依存する。用いられる実際の電圧は、過度の実験を行わず、この分野の知識及びここでの開示を用いて、当業者によって決定される。プロセッサー、マイクロプロセッサー、積分回路及びコンピュータチップを含む、電極に印加される電圧のすべての態様を制御する様々な手段が用いられていることが、この分野において知られている。
【0014】
電圧は絶対的な物理量ではないため、それらは基準(例えば、ローカルグランド、バッテリー電極又はパワー供給端子)に対して規定されなければならない。このように、液晶(LC)フィルムの応力及びひずみを変化させる電圧は、フィルムの反対側の電極での電圧間の差によって実際に決定される。(低周波数では)LCフィルムは、これらの電圧差の高周波変動のRMS平均(<V1/2と表示する)にゆっくり応答することが知られている。このようなフィルムを制御するため、一方の電極は固定電圧V=Vref(例えばローカルグランドでの電圧)に保たれる。この場合、変調(modulating)電圧Vrmsは他方の電極での電圧Vの作用(behavior)によって完全に決定される。Vrefに対して電圧を表すと、次のようになる。
rms=<(V−V1/2=<(V−Vref1/2=<(V1/2
しかし、VがVrefと等しく(held)ない場合、次のことが言える。
rms=<(V−V1/2
この場合、電極駆動電圧の同期(synchronization)により次の範囲にVrmsの値を発生させる。
rms1+Vrms2≧Vrms≧|Vrms1−Vrms2
2つの低電圧の駆動装置から高い変調電圧Vrmsを提供するため、逆位相方形波駆動を使用した重要例が添付した図4で示されている。Vは振幅がVsw2の方形波として一定に保たれ、VはVに対して180°位相遅れの方形波として印加され、所望の制御電圧を達成するために振幅Vsw1は変化する。図4に示すように、この状況では次のようになる。
【0015】
rms=Vrms1+Vrms2=Vsw1+Vsw2
ここで述べたように、Vrms2=Vsw2がLCフィルムの閾値電圧の下でないが近い(near but below)値に設定される場合、より小さい値のVrms1=Vsw1がLC DOEを制御するのに用いられる。(代わりに、次の範囲内で所望のVrmsに到達するため、Vsw1を固定し、方形波間の位相差を変化させてもよい。
sw1+Vsw2≧Vrms≧|Vsw1−Vsw2|)
方形波の使用は実例であるが、1つの例にすぎない。同様のVrmsの制御が、その他の駆動波形状(例えば、サイン波、不完全(imperfect)方形波及びこの分野において知られているその他の方法)での振幅及び位相の制御が達成されてもよい。
【0016】
ここで用いられるように、“層”は完全に均一なフィルムを必要としない。ここで述べるように、層が意図した目的を追行する限りでは、一様でない厚さ、クラック(crack)又はその他の不完全要素が存在してもよい。ここで用いられるように、“パターン化された電極セット”は基板上にパターン化されて配置される1箇所以上の導電材料の領域を意味し、前記基板上の導電材料の前記領域と相補的にパターン化されて配置される1箇所以上の絶縁材料の領域に沿って形成される。
【0017】
本発明で用いられる液晶には、電場とともに制御される長範囲配向状態(long-range orientational order)を有し、ネマチック、スメクチック、コレステリック相を形成する液晶が含まれる。液晶は、実証された安定性及び信頼できる商業上利用可能性と同様に、広いネマチック相の温度範囲、簡単な配列能力、低い閾値電圧、大きい電気光学応答及び速いスイッチスピードを有することが好ましい。1つの好ましい実施形態では、E7(メルク社(Merck)によって販売されている、シアノビフェニル及びシアノターフェニルのネマチック相液晶混合物)が用いられる。本発明で用いることのできるネマチック相のその他の液晶の例として、ペンチル−シアノ−ビフェニル(5CB)、(オクチルオキシ−)4−シアノビフェニル(80CB)がある。本発明で用いることのできる液晶のその他の例として、4−シアノ−4−n−アルキルビフェニル、4−n−ペンチルオキシービフェニル、4−シアノ−4´´−n−アルキル−p−ターフェニルの化合物のn=3,4,5,6,7,8,9のもの、及び、BDH(ブリティッシュドラッグハウス)のメルク社によって製造されるE36、E46、ZLI−シリーズのような市販の混合物がある。
【0018】
本発明では、電場応答性ポリマーを用いてもよい。電場応答性ポリマーには、参照文献1(“Physical Properties of Polymer Handbook”, J. E. Mark著, American Institute of Physics, Woodburry, N.Y., 1996年発行)で開示されたもののように、透明な光学重合(polymeric)材料が含まれ、これらの材料には、参照文献2(“Organic Nonlinear optical Materials”, Ch. Bosshard他著, Gordon and Breach Publishers社, Amsterdam, 1995年発行)で開示されたもののように、ドナーとアクセプターグループ(発色団(chromophore)として述べられる)との間に非対称の極性のある活性化されたP電子を有する分子が含まれる。ポリマーの例として以下のものがある。ポリスチレン、ポリカーボネイト、ポリメチルメタルクリレート、ポリビニルカルバゾール、ポリイミド、ポリシランがある。発色団の例として、パラニトロアニリン(PNA)、ディスパースレッド1(DR1)、3−メチル−4−メソキシ−4´−ニトロスチルベン、ジエチルアミノニトロスチルベン(DANS)、ジエチル−チオ−バルビツール酸がある。この分野において知られているように、電場応答性ポリマーは、a)ゲスト/ホスト方法(approach)に従うことによって、(b)ポリマー(ペンダントおよびメインチェーン)への発色団の共有結合性混合(covalent incorporation)によって、及び/又は、(c)架橋結合のように格子硬化(lattice hardening )方法によって、製造される。
【0019】
本発明では、ポリマー液晶(PLCs)を用いてもよい。ポリマー液晶は、液晶ポリマー、低分子量液晶、自己強化型(self-reinforcing)ポリマー、イン シチュ複合材料(in situ-composites)及び/又は分子複合材料とも呼ばれている。PLCsは、参照文献3(“Liquid Crystalline Polymers: From Structures to Applications”, W. Brostow; A. A. Collyer編集, Elsevier, New-York-London, 1992, Chapter1)で開示されるもののように、比較的硬い配列(sequence)及び曲がりやすい配列を同時に含むコポリマーである。PLCsの例として、4−シアノフェニルベンゾアート側のグループを備えるポリメタクリレート及びその他の同様の化合物がある。
【0020】
本発明において、ポリマー分散型液晶(PDLCs)を用いてもよい。PDLCsはポリマーマトリックスにおける液晶小滴の分散から構成されている。この分野において知られているように、これらの部材はいくつかの方法で製造され、(i)ネマチック曲線式整列相(NCAP)によるもの、熱誘導相分離法(TIPS)によるもの、溶媒蒸発誘導相分離法(SIPS)によるもの、重合誘導相分離法(PIPS)によるものがある。PDLCsの例として、液晶E7(BDH−メルク社)とNOA65(ノーランド社(Norland)製品,ニュージャージー(NJ)の企業)との混合物、E44(BDH−メルク社)とポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物、E49(BDH−メルク社)とPMMAとの混合物、モノマージペンタエリソルヒドロキシペンタアクリル、液晶E7とN−ビニルピロリドン、N−フェニルグリシン、ダイローズベンガルの混合物がある。
【0021】
本発明では、ポリマー安定化液晶(PSLCs)を用いてもよい。PSLCsは、液晶の質量の10%より小さい質量をポリマーが構成するポリマーネットワークの中の液晶から、構成される材料である。光重合モノマーが液晶及び紫外線重合開始剤(initiator)とともに混合されている。液晶を配向した後、一般に紫外線にさらすことによりモノマーの重合が開始され、生じたポリマーは液晶を安定化するネットワークを作り出す。PSLCsの例は、例えば参照文献4(C. M. Hudson他著, Optical Studies of Anisotropic Networks in Polymer-Stabilized Liquid Crystals, Journal of the Society for Information Display, vol. 5/3, 1-5 (1997))、参照文献5(G. P. Wiederrecht他著, Photorefractivity in Polymer-Stabilized Nematic Liquid Crystals, J. of Am. Chem. Soc., 120, 3231-3236 (1998))で見られる。
【0022】
本発明において、自己組織化非線形超分子構造を用いてもよい。自己組織化非線形超分子構造には、次の方法を用いて製造される電場応答非対称有機フィルムを有する。方法として、ラングミュア−ブロジェットフィルム、水溶解からの交流高分子電解質堆積(陰イオン高分子/陽イオン高分子)、分子線エピタクシー方法、共有結合反応による連続合成(例えば、有機トリクロロシランに基づく自己集合型複数層堆積)がある。一般に、これらの技術により、略1μmより薄い厚さの薄いフィルムが作られる。
【0023】
述べた状態と別の状態でない限り、それぞれの装置、又は、記述され又は例となった構成要素の組み合わせは、本発明の実施に用いられる。電圧の印加に用いられる駆動装置、電圧の制御装置及び追加の必要な光学構成要素のような追加構成要素が当業者に知られており、過度の実験なしで組み込まれる。当業者が同一の化合物を異なるように名付けることがあるので、化合物の特定の名前は典型的なものがつけられている。
【0024】
例えば、式又は化学式で化合物の特定の異性体又は光学体が特定できないように化合物がここで記述されている場合、記述は記載した個々又組み合わせの化合物のそれぞれの異性体及び光学体を含むことを意図している。当業者は、特に例に挙げたものと他の方法、装置構成要素、開始部材及び製造方法を、過度の実験に頼ることなく本発明の実施に正しく適応できる。このような方法、装置構成要素、開始部材及び製造方法として分野的に知られている機能上の相当物すべてが本発明に含まれる。明細書でいかなる範囲が与えられても、与えられた範囲に含まれる個々の値と同様に、例えば、厚さの範囲又は電圧範囲、すべての中間範囲及び部分的範囲は、開示範囲に含まれる。
【0025】
ここで用いられているように、“〜を備える(comprising)”は“〜を含む(including)”、“〜を含む(containing)”、又は、“〜に特徴付けられる(characterized by)”と同義語であり、包括的又は変更可能な(open-ended)意味であり、追加、記述されていない要素又は方法工程を除外するものではない。ここで用いられているように、“〜から構成される(consisting of)”はクレーム構成要素を特定しないいかなる要素、工程、成分を除外する。“〜から必然的に構成される(consisting essentially of)”はクレームの基本的及び通常の特性に材質的に影響を与えない部材又は工程は除外されない。“〜を備える(comprising)”という言葉のここでのいかなる記述は、特に構成の構成要素の記載又は装置の構成要素の記載において、述べられる構成要素(components or elements)から必然的に構成される、及び、これらから構成される構成及び方法をもたらすと理解されている。ここで実例を挙げて適切に述べられている本発明は、ここで特に開示されていない単数又は複数の構成要素、制限がない状態で実施してもよい。
【0026】
使用される言葉及び表現は記載での言葉として制限なく用いられ、この中で示し及び述べた特徴又は部分に相当するものを除外する意図で、このような言葉及び表現を使用しておらず、主張及び記述した範囲内で様々な変形例が可能である。このように、本発明は好ましい実施形態及び選択的な特徴によって特に開示されているが、当業者によってここで開示される概念の変形(modification and variation)が行われてもよく、変形例は本発明の範囲内だと考えられる。
【0027】
一般に、ここで用いられる言葉及びフレーズは分野的に認められている意味を有し、標準テキストの記載、ジャーナルの記載及び当業者に知られている内容によって理解できる。発明の内容において明確な定義は、明確な使用を明らかにする。明細書で述べられるすべての特許及び刊行物は、発明と関連する当業者の技術レベルを示している。
【0028】
当業者は、本来備わっているもの(those inherent)と同様に、目的を実行すること及び記述した目標及び利点を得ることに本発明を容易に適応できる。好ましい実施形態の現在での代表例としてここで述べられる装置及び方法及び付随的方法は、典型的なものであるが、発明の範囲の制限を意図するものではない。当業者が思いつくここでの変形及びその他の使用は、発明の要旨に含まれ、クレームの範囲によって定義される。
【0029】
ここで引用される参照文献のすべてが、本明細書の開示と矛盾のない程度の記述によって組み込まれる。追加の装置の構成要素、追加の液晶セル構成、パターン化された電極の追加のパターン、追加の分析方法及び追加の発明の使用を実現するため、ここで提供される参照文献がここでの記述によって組み込まれる。
【0030】
ここでの記載は多くの特性を含んでいるが、これらは発明の範囲を制限すると解釈するのではなく、本発明の現在での好ましい実施形態のいくらかの例を提供しているにすぎない。本発明は眼鏡への使用に制限されない。当業者に知られているようにむしろ、本発明は遠距離通信、光学スイッチ及び医療機器のようなその他の分野で役立つ。当業者に知られているように、所望の波長で所望の位相伝導機能を実現する液晶及び液晶混合物が、本発明において役立つ。所望の位相伝導機能を生み出すため、適切な電圧を決定し、液晶材料に適切な電圧を印加することが、この分野において知られている。
【0031】
(その他の参照文献)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の向き合った透明基板の間の液晶層と、
前記液晶層と第1の前記透明基板の内向きの表面との間に配置されるパターン化された電極セットと、
前記液晶層と前記第2の前記透明基板の内向きの表面との間に配置され、前記パターン化された電極セットに電気的に接続される導電層と、
前記パターン化された電極セット及び前記導電層に電圧を印加し、前記導電層に印加されるRMS電圧を閾値電圧(前記液晶層での光透過性がこれより高い値で変化するRMS電圧差)以下にするとともに、前記パターン化された電極セットに印加する電圧と前記導電層に印加する電圧との間のRMS電圧差を前記液晶で所望の量の光透過性の変化を実現するのに十分な大きさにする手段と、
を備える電気光学装置。
【請求項2】
前記液晶はE7である請求項1の装置。
【請求項3】
前記透明基板はガラスである請求項1の装置。
【請求項4】
前記透明基板はプラスチックである請求項1の装置。
【請求項5】
前記電極及び前記導電層はイジウム−スズ−酸化物である請求項1の装置。
【請求項6】
さらに、前記液晶層の周辺に配向層を備える請求項1の装置。
【請求項7】
前記配向層はポリビニルアルコールである請求項6の装置。
【請求項8】
前記配向層はナイロン6,6である請求項6の装置。
【請求項9】
前記透明基板は略3ミクロンと略20ミクロンの間の距離だけ離れている請求項1の装置。
【請求項10】
前記透明基板は略3ミクロンと略8ミクロンの間の距離だけ離れている請求項9の装置。
【請求項11】
一対の向き合った透明基板の間の液晶層を提供する工程と、
前記液晶層と第1の前記透明基板の内向きの表面との間にパターン化された電極セットを配置する工程と、
前記液晶層と前記第2の前記透明基板の内向きの表面との間の導電層を前記パターン化された電極セットと電気的に接続する工程と、
前記導電層に、前記液晶層での光透過性がこれより高い値で変化する閾値電圧以下の電圧を印加する工程と、
前記パターン化された電極セットに、前記液晶で所望の量の光透過性の変化を実現するのに十分な電圧を印加する工程と、
を備える光を屈折する方法。
【請求項12】
前記導電層に印加する電圧は前記液晶の閾値電圧より低い請求項11の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−237999(P2012−237999A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−115827(P2012−115827)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2009−515581(P2009−515581)の分割
【原出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(591175675)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】