説明

電気式脱イオン水製造装置

【課題】イオン交換膜および陰極の双方におけるスケール生成を防止する。
【解決手段】陰極2が設けられた陰極室E1と、陽極3が設けられた陽極室E2と、陰極室E1と陽極室E2との間に設けられた複数の濃縮室Cおよび少なくとも1つの脱塩室D1とを有し、陰極2と陰極2に対向するアニオン交換膜a1との間に陰極室E1が形成され、アニオン交換膜a1とアニオン交換膜a1に対向するカチオン交換膜c1との間に濃縮室C1が形成され、陽極3と陽極3に対向するアニオン交換膜a2との間に陽極室E2を兼ねる濃縮室C2が形成され、脱塩室D1は、アニオン交換膜a2を介して濃縮室C2に隣接し、脱塩室D1にはアニオン交換体が充填され、濃縮室C2には予めカチオン成分が除去された水が供給され、濃縮室C2を通過した水が電極水として陰極室E1に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式脱イオン水製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イオン交換体に被処理水を通水させて脱イオンを行う脱イオン水製造装置が知られている。このような脱イオン水製造装置では、イオン交換体のイオン交換基が飽和して脱塩性能が低下したときに、薬剤(酸やアルカリ)によってイオン交換基の再生を行う必要がある。具体的には、イオン交換基に吸着した陰イオンや陽イオンを酸またはアルカリ由来のH+やOH-で置換する必要がある。近年、上記のような運転上の不利な点を解消するため、薬剤による再生が不要な電気式脱イオン水製造装置が開発され、実用化されている。以下、電気式脱イオン水製造装置を「EDI」と略称する場合がある。
【0003】
EDIは、電気泳動と電気透析を組み合わせた装置である。一般的なEDIの基本構成は次のとおりである。すなわち、EDIは、対向する陰極室と陽極室の間に配置された一対の濃縮室と、一対の濃縮室の間に配置された脱塩室とを有する。さらに、脱塩室は、対向配置されたアニオン交換膜およびカチオン交換膜と、それら交換膜の間に充填されたイオン交換体(アニオン交換体およびカチオン交換体)とを有する。
【0004】
上記のような構成を有するEDIによって脱イオン水を製造するには、陽極室および陰極室にそれぞれ設けられている電極間に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水を通水させる。脱塩室では、アニオン交換体によってアニオン成分(Cl-、CO32-、HCO3-、SiO2等)が、カチオン交換体によってカチオン成分(Na+、Ca2+、Mg2+等)がそれぞれ吸着(捕捉)される。同時に、脱塩室内のアニオン交換体とカチオン交換体の界面で水の解離反応が起こり、水素イオンと水酸化物イオンが発生する(H2O→H++OH-)。イオン交換体に捕捉されたイオン成分は、これら水素イオンまたは水酸化物イオンと交換されてイオン交換体から遊離する。遊離したイオン成分はイオン交換体を伝ってイオン交換膜(アニオン交換膜またはカチオン交換膜)まで電気泳動し、イオン交換膜で電気透析されて濃縮室へ移動する。濃縮室に移動したイオン成分は、濃縮室を流れる濃縮水と共に系外へ排出される。
【0005】
上記のように、EDIでは、水素イオンおよび水酸化物イオンが、イオン交換体を再生する酸やアルカリの再生剤として連続的に作用する。このため、薬剤による再生が基本的には不要であり、連続運転が可能である。
【0006】
従来のEDIの一構成例を図6に示す。図6に示すEDIは2つの脱塩室D1、D2を備えている。脱塩室D1は、一対の濃縮室C1、C2の間に配置されている。また、脱塩室D2は、一対の濃縮室C2、C3の間に配置されている。なお、図6に示すEDIでは、濃縮室C1が陰極室E1を兼ねており、濃縮室C3が陽極室E2を兼ねている。
【0007】
濃縮室C1(陰極室E1)と脱塩室D1とは、第1のカチオン交換膜c1によって仕切られており、脱塩室D1と濃縮室C2とは、第1のアニオン交換膜a1によって仕切られている。また、濃縮室C2と脱塩室D2とは、第2のカチオン交換膜c2によって仕切られており、脱塩室D2と濃縮室C3(陽極室E2)とは、第2のアニオン交換膜a2によって仕切られている。
【0008】
さらに、脱塩室D1、D2には、アニオン交換体Aとカチオン交換体Kが充填されており、濃縮室C1(陰極室E1)および濃縮室C2には、アニオン交換体が充填されている。また、濃縮室C3(陽極室E2)には、カチオン交換体が充填されている。
【0009】
図6に示すEDIでは、RO(Revers Osmosis)膜を透過した水(以下「原水」と呼ぶ場合がある。)の一部が被処理水として脱塩室D1、D2にそれぞれ供給される。また、原水の他の一部が濃縮水として濃縮室C1、C2、C3にそれぞれ供給される。濃縮室C1、C3に供給される原水が電極水としても利用されることは勿論である。
【0010】
ここで、陰極室E1内の陰極2と、陽極室E2内の陽極3との間に直流電圧が印加されると、水の電気分解(電極反応)によって陰極室E1内で水酸化物イオンが生成されるので(2H2O+2e-→H2+2OH-)、陰極室E1を流れる水(電極水兼濃縮水)の液性がアルカリ性に傾く。すると、陰極2に引き寄せられた硬度成分と水酸化物イオンが反応し、陰極2の表面においてスケール(主に、水酸化マグネシウム)が生成される。
【0011】
加えて、陰極室E1内で生成された水酸化物イオンは、陽極側に引き寄せられ、カチオン交換膜c1の表面に集まる。一方、濃縮室としても機能する陰極室E1には、隣接する脱塩室D1からカチオン成分が移動してくる。結果、カチオン交換膜c1の陰極側表面においてもスケールが生成される。
【0012】
すなわち、図6に示すような構成のEDIでは、陰極および陰極に最も近接しているカチオン交換膜の双方においてスケールが生成される。スケールが生成されると、生成箇所における電気抵抗が上昇して消費電力が増加するだけでなく、電流分布が不均一となり処理水の水質が低下する。
【0013】
以上のような課題の解決を目的として、図7に示すような構成のEDIが提案されている(特許文献1)。図7に示すEDIでは、陽極室E2を通過した水が電極水兼濃縮水として陰極室E1に供給される。濃縮室としても機能する陽極室E2には、隣接する脱塩室D2からアニオン成分が流入し、濃縮される。よって、陽極室E2を通過した水の液性は酸性に傾く。すなわち、アルカリ性傾向にある陰極室E1に酸性傾向の水を供給することによって液性が中和され、上記スケールの生成が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−058186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、EDIの陰極室内では、水の電気分解によって常に大量の水酸化物イオンが生成されている。図7に示す陰極室E1内でも同様である。よって、陰極室E1に供給される水の液性が酸性であったとしても、陰極2の表面が局所的にアルカリ性になる可能性が高い。酸性の電極水が供給されることでイオン交換膜上のスケールは回避できるものの、陰極表面のアルカリ性を中和するには不十分である。その上、濃縮室としても機能する陰極室E1内では、隣接する脱塩室D1内で捕捉された硬度成分(マグネシウムイオンやカルシウムイオンが高濃度に濃縮される。そのため、陰極2に引き寄せられた硬度成分の一部が水酸化物イオンと反応し、陰極2の表面においてスケールが生成される虞がある。
【0016】
本発明は、イオン交換膜上のみでなく、電極上におけるスケール生成をも確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電気式脱イオン水製造装置は、陰極が設けられた陰極室と、陽極が設けられた陽極室と、陰極室と陽極室との間に設けられた複数の濃縮室および少なくとも1つの脱塩室とを有する。陰極と該陽極との間の空間は複数のイオン交換膜によって複数の空間に区画されている。そして、陰極と該陰極に対向する第1のアニオン交換膜との間の空間によって陰極室が形成されている。また、第1のアニオン交換膜と該第1のアニオン交換膜に対向する第1のカチオン交換膜との間の空間によって、陰極室に隣接する第1の濃縮室が形成されている。また、陽極と該陽極に対向する第2のアニオン交換膜との間の空間によって陽極室を兼ねる第2の濃縮室が形成されている。また、脱塩室は、第2のアニオン交換膜を介して陽極室を兼ねる第2の濃縮室に隣接している。さらに、脱塩室には少なくともアニオン交換体が充填される。また、陽極室を兼ねる第2の濃縮室には予めカチオン成分が除去された水が供給される。そして、陽極室を兼ねる第2の濃縮室を通過した水が電極水として陰極室に供給される。陽極室を兼ねる第2の濃縮室に供給された水は、該室を通過する過程で、脱塩室から移動してきたアニオン成分を取り込む。よって、陰極室には、アニオン成分を多く含んだ酸性の水が供給される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、イオン交換膜および電極の双方におけるスケール生成が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のEDIの実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明のEDIの実施形態の他例を示す概略構成図である。
【図3】実施例1に係るEDIの概略構成図である。
【図4】実施例2、比較例2に係るEDIの概略構成図である。
【図5】比較例1に係るEDIの概略構成図である。
【図6】従来のEDIの一例を示す概略構成図である。
【図7】特許文献1に記載されているEDIの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下、図面を参照して、本発明のEDIの実施形態の一例について説明する。図1は、本実施形態に係るEDIの概略構成図である。本実施形態に係るEDIでは、対向する陰極2と陽極3の間に、一対の濃縮室C1、C2と、濃縮室C1、C2の間に配置された脱塩室D1とからなる脱塩処理部が設けられている。
【0021】
ここで、陽極3は濃縮室C2内に設けられている。すなわち、濃縮室C2は陽極室E2を兼ねている。一方、陰極2は濃縮室C1とは独立している陰極室E1内に設けられている。
【0022】
上記の各部屋は、枠体1の内部を複数のイオン交換膜によって多数の空間に仕切ることによって形成されており、イオン交換膜を介して隣接している。各部屋の配列状況を陰極室E1の側から順に説明すると、次の通りである。すなわち、陰極室E1は、第1のアニオン交換膜a1を介して濃縮室C1に隣接し、濃縮室C1は、カチオン交換膜c1を介して脱塩室D1と隣接している。脱塩室D1は、第2のアニオン交換膜a2を介して濃縮室C2(陽極室E2)と隣接している。
【0023】
陰極室E1内に設けられている陰極2は、金属の網状体あるいは板状体であり、例えばステンレス製の網状体あるいは板状体である。
【0024】
陽極室E2内に設けられている陽極3は、金属の網状体あるいは板状体である。被処理水にCl-を含む場合、陽極上おいて塩素が発生する。このため、陽極には耐塩素性能を有する材料を用いることが望ましく、一例として、白金、パラジウム、イリジウム等の金属、あるいはチタンをこれらの金属で被覆した材料が挙げられる。
【0025】
陰極室E1には、アニオン交換体Aが単床形態で充填されている。一方、陽極室E2(濃縮室C2)には、カチオン交換体Kが単床形態で充填されている。すなわち、陰極室E1には、アニオン交換体Aの層(以下「アニオン層A」)が設けられている。一方、陽極室E2には、カチオン交換体Kの層(以下「カチオン層K」)が設けられている。
【0026】
脱塩室D1には、アニオン交換体Aとカチオン交換体Kが混床形態で充填されている。
【0027】
なお、図1では、枠体1が一体的に示されている。しかし、実際には各部屋ごとに別々の枠体(セル)を備え、それら枠体同士が互いに密着している。枠体1の素材は、絶縁性を有し、液体が漏洩しない素材であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル)等の樹脂を挙げることができる。
【0028】
次に、図1に示すEDIにおける被処理水、処理水、濃縮水および電極水の主な流れについて概説する。なお、本実施形態に係るEDIにおいても、RO膜を透過した水、すなわち原水が使用される。
【0029】
原水の一部は、被処理水として脱塩室D1に供給され、原水の他の一部は、濃縮水として濃縮室C1に供給される。脱塩室D1を通過した水の一部は、処理水として系外へ排出され、他の一部は電極水兼濃縮水として陽極室E2に供給される。
【0030】
陽極室E2に供給された水は、該陽極室E2を通過した後、電極水として陰極室E1に供給される。陰極室E1に供給された水は、該陰極室E2を通過した後、濃縮室C1を通過した濃縮水と共に系外へ排出される。
【0031】
なお、脱塩室D1における被処理水の通水方向と、濃縮室C1、C2における濃縮水の通水方向とは逆向きである。
【0032】
上記のように被処理水、処理水、濃縮水および電極水を流すためにいくつかの流路が設けられている。図1に示されている流路10は、その一端が原水の供給口に接続され、他端が脱塩室D1の入口に接続されている。流路11は、その一端が脱塩室D1の出口に接続され、他端が処理水の出口に接続されている。
【0033】
流路12は、その一端が流路11に接続され、他端が陽極室E2(濃縮室C2)の入口に接続されている。流路13は、その一端が陽極室E2の出口に接続され、他端が陰極室Eの入口に接続されている。流路14は、その一端が陰極室E1の出口に接続され、他端が濃縮水の排出口に接続されている。
【0034】
流路15は、その一端が原水の入口に接続され、他端が濃縮室C1の入口に接続されている。流路16は、その一端が濃縮室C1の出口に接続され、他端が流路14に接続されている。
【0035】
以上のように、本実施形態に係るEDIでは、処理水の一部が電極水兼濃縮水として陽極室E2(濃縮室C2)に供給される。さらに、陽極室E2(濃縮室C2)を通過した水が電極水として陰極室E1に供給される。換言すれば、電極水兼濃縮水として陽極室E2に供給される水は、イオン成分が除去された水であり、硬度成分を殆ど含まない。そして、陽極室E2に供給された水は、濃縮室としても機能する該陽極室E2を通過する過程で、脱塩室D1から陽極室E2に移動してきたアニオン成分を取り込む。よって、陰極室E1には、アニオン成分を多く含み、かつ、硬度成分を含んでいない水が供給される。換言すれば、陰極室E1に供給される電極水は、硬度成分を含まない酸性の水である。加えて、陰極室E1には濃縮室C1が隣接している。濃縮室C1は脱塩室D1から移動してくる硬度成分を濃縮水とともに系外へ排出する機能を果たす。従って、陰極室E1は、脱塩室から移動してくる硬度成分の影響を受けず、陰極室E1内の硬度成分の濃度は低く保たれる。
【0036】
したがって、陰極2の表面が局所的にアルカリ性になっていたとしても、陰極2の表面におけるスケールの生成が防止または低減される。
【0037】
なお、陰極室E1に供給される電極水中のアニオン成分は、電極水が陰極室E1を通過する過程で該陰極室E1内のアニオン交換体Aにより捕捉される。よって、陰極室E1を通過した水の液性はほぼ中性となる。
(実施形態2)
以下、図面を参照して、本発明のEDIの実施形態の他例について説明する。もっとも、本実施形態に係るEDIは、脱塩室が2つの小脱塩室に区画されている点を除いて、実施形態1に係るEDIと同一の構成を有する。そこで、実施形態1に係るEDIと異なる構成についてのみ以下に説明し、共通する構成についての説明は適宜省略する。
【0038】
図2は、本実施形態に係るEDIの概略構成図である。図2に示すように、本実施形態に係るEDIの脱塩室D1は、イオン交換膜によって二つの小脱塩室に区画されている。具体的には、脱塩室D1は、第2のカチオン交換膜c2によって、濃縮室C1に隣接している小脱塩室D1-1と、濃縮室C2(陽極室E2)に隣接している小脱塩室D1-2とに区画されている。もっとも、脱塩室D1を二つの小脱塩室に区画するイオン交換膜はカチオン交換膜に限られず、アニオン交換膜やバイポーラ膜などであってもよい。
【0039】
小脱塩室D1-1には、カチオン交換体Kが単床形態で充填され、小脱塩室D1-2には、アニオン交換体が単床形態で充填されている。
【0040】
本実施形態に係るEDIでは、原水の一部が被処理水として小脱塩室D1-1に供給される。小脱塩室D1-1に供給された水は、該小脱塩室D1-1を通過した後、中間水として小脱塩室D1-2に供給される。小脱塩室D1-2に供給された水は、該小脱塩室D1-2を通過した後、一部は処理水として系外へ排出され、他の一部は電極水兼濃縮水として陽極室E2(濃縮室C2)に供給される。さらに、陽極室E2(濃縮室C2)を通過した水は、電極水として陰極室E1に供給される。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るEDIにおいても、アニオン成分を多く含み、かつ、硬度成分を含んでいない水が電極水として陰極室E1に供給され、さらに脱塩室から陰極へ向かう硬度成分の移動は濃縮室C1によって妨げられる。よって、陰極2の表面が局所的にアルカリ性になっていたとしても、陰極2の表面におけるスケールの生成が防止または低減される。
【0042】
これまでの説明から、硬度成分を含まない酸性の水を電極水として陰極室に供給すること、脱塩室から陰極室に硬度成分が移動しないように陰極室と脱塩室の間に濃縮室を設けることが、本発明の特徴であることが理解できるはずである。よって、上記のような液性を有する水を陰極室に供給し、脱塩室から陰極室へ硬度成分が移動しないようにするために必要な構成が本発明の必須構成であり、その他の構成は適宜変更することができる。例えば、図2に示す小脱塩室D1-1を通過した水(中間水)の一部が陽極室E2に供給されるように流路を変更することができる。また、被処理水を小脱塩室D1-2、小脱塩室D1-1の順で通水させてもよい。この場合、小脱塩室D1-2および小脱塩室D1-1の双方を通過した水を陽極室E2に供給してもよい。また、脱塩処理部の数に特に制限はなく、2以上の脱塩処理部を設けることもできる。さらに、各部屋に充填するイオン交換体の種類や充填形態も適宜変更することができる。イオン交換体の充填形態の変更に伴い、例えば、小脱塩室D1−2にカチオン交換体が充填される場合、小脱塩室D1−2を通過した水(中間水)の一部を陽極室E2に供給してもよい。
(比較試験)
本発明の効果を確認すべく、次のような比較試験を行った。今回の比較試験では、実施例1、2および比較例1、2として、図3〜図5に示す構成のいずれかを有するEDIを4台用意した。なお、各図において、一部の流路の図示を省略してある。
【0043】
実施例1に係るEDIは図3に示す構成を有し、実施例2および比較例2に係るEDIは図4に示す構成を有する。また、比較例1に係るEDIは図5に示す構成を有する。
【0044】
実施例1、2および比較例1、2に係るEDIは、図2に示すEDIと同一の基本構成を有するが、3つの脱塩処理部を備えている点で図2に示すEDIと異なる。もっとも、図3〜図5に示す脱塩室D1〜D3のそれぞれは、図2に示す脱塩室D1と同一の構成を有する。また、図3、図4に示す濃縮室C1〜3のそれぞれは、図2に示す濃縮室C1と同一の構成を有する。さらに、図3〜図5に示す濃縮室C4(陽極室E2)は、図2に示す陽極室E2(濃縮室C2)と同一の構成を有する。但し、図5に示す濃縮室C1は、陰極室E1を兼ねており、この点において図3、図4に示す濃縮室C1とは異なる。
【0045】
実施例1および比較例1に係るEDIでは、処理水の一部が電極水兼濃縮水として陽極室E2(濃縮室C4)に供給される。一方、実施例2に係るEDIでは、不図示の供給源から、二段RO透過水が電極水兼濃縮水として陽極室E2(濃縮室C4)に供給される。比較例2に係るEDIでは、不図示の供給源から、一段RO透過水が電極水兼濃縮水として陽極室E2(濃縮室C4)に供給される。全てのEDIにおいて、陽極室E2(濃縮室C4)を通過した水が電極水として陰極室E1に供給される。
【0046】
今回の比較試験における条件(仕様、通水流量、供給水等)をまとめると以下とおりである。なお、CERはカチオン交換体(カチオン交換樹脂)、AERはアニオン交換体(アニオン交換樹脂)の略である。
・陰極室E1:寸法300×80×4mm AER充填
・陽極室E2(濃縮室C4):寸法300×80×4mm CER充填
・小脱塩室D1-1:寸法300×80×8mm CER充填
・小脱塩室D1-2:寸法300×80×10mm AER充填
・濃縮室C1〜C3:寸法300×80×5mm AER充填
・被処理水流量:150L/h
・濃縮水流量:15L/h(1室あたり)
・電極水流量:10L/h
・脱塩室供給水:一段RO透過水(11±1μS/cm)
・脱塩室供給水硬度:1±0.1mgCaCO3/L
・濃縮室供給水:一段RO透過水(11±1μS/cm)
・陽極室供給水(実施例1、比較例1):処理水(硬度:<0.001mgCaCO3/L)
・陽極室供給水(実施例2):二段RO透過水(硬度:0.2±0.1mgCaCO3/L)
・陽極室供給水(比較例2):一段RO透過水(硬度:1±0.1mgCaCO3/L)
・印加電流値:1.1A
・印加電流密度:0.46A/dm2
以上の条件の下で実施例1、2および比較例1、2をそれぞれ2000時間連続運転し、運転電圧および処理水水質(比抵抗)を測定した。測定結果を表1に示す。また、運転終了後、それぞれの装置を解体し、スケールの生成状態を目視により確認した。確認結果を表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【符号の説明】
【0049】
1 枠体
2 陰極
3 陽極
10〜16 流路
A アニオン交換体(アニオン層)
K カチオン交換体(カチオン層)
E1 陰極室
E2 陽極室
C1〜C4 濃縮室
D1〜D3 脱塩室
D1-1、D1-2 小脱塩室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極が設けられた陰極室と、陽極が設けられた陽極室と、前記陰極室と前記陽極室との間に設けられた複数の濃縮室および少なくとも1つの脱塩室と、を有する電気式脱イオン水製造装置であって、
前記陰極と前記陽極との間の空間が、該陰極と該陽極との間に配列された複数のイオン交換膜によって複数の空間に区画され、
前記陰極と該陰極に対向する第1のアニオン交換膜との間の空間によって前記陰極室が形成され、
前記第1のアニオン交換膜と該第1のアニオン交換膜に対向する第1のカチオン交換膜との間の空間によって、前記陰極室に隣接する第1の濃縮室が形成され、
前記陽極と該陽極に対向する第2のアニオン交換膜との間の空間によって前記陽極室を兼ねる第2の濃縮室が形成され、
前記脱塩室は、前記第2のアニオン交換膜を介して前記陽極室を兼ねる前記第2の濃縮室に隣接し、
前記脱塩室には少なくともアニオン交換体が充填され、
前記陽極室を兼ねる前記第2の濃縮室には予めカチオン成分が除去された水が供給され、
前記陽極室を兼ねる前記第2の濃縮室を通過した水が電極水として前記陰極室に供給される電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
前記陰極室に供給される前記電極水中の硬度成分濃度が0.3mgCaCO3/L以下である請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項3】
前記脱塩室を通過した水の少なくとも一部が前記陽極室を兼ねる前記第2の濃縮室に供給される請求項1または請求項2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記脱塩室にアニオン交換体およびカチオン交換体の双方が充填されている請求項
1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項5】
前記脱塩室がイオン交換膜によって2つの小脱塩室に区画され、
第1の小脱塩室には少なくともカチオン交換体が充填され、
第2の小脱塩室には少なくともアニオン交換体が充填され、
第2の小脱塩室は前記第2のアニオン交換膜を介して前記陽極室を兼ねる前記第2の濃縮室に隣接し、
少なくとも前記第1の小脱塩室を通過した水の少なくとも一部が前記陽極室を兼ねる前記第2の濃縮室に供給される請求項4に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項6】
前記第1の小脱塩室を通過した後に前記第2の小脱塩室を通過した水の少なくとも一部が前記陽極室を兼ねる前記第2の濃縮室に供給される請求項5に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項7】
前記陰極室にアニオン交換体が充填されている請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電気式脱イオン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52365(P2013−52365A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193148(P2011−193148)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】