電気泳動ゲルチップならびにその製造方法および製造キット
【課題】保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップ、および、そのような電気泳動ゲルチップを好適に製造するための技術を提供する。
【解決手段】電気泳動ゲルチップ50は、絶縁体からなる支持体51と、支持体51に固定されている帯状の電気泳動ゲル53と、電気泳動ゲル53における支持体51とは反対側の面を覆う保護フィルム54と、を備えている。
【解決手段】電気泳動ゲルチップ50は、絶縁体からなる支持体51と、支持体51に固定されている帯状の電気泳動ゲル53と、電気泳動ゲル53における支持体51とは反対側の面を覆う保護フィルム54と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動のために用いる電気泳動ゲルチップおよび当該電気泳動ゲルチップの製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポストゲノムにおける研究対象としてプロテオーム解析が注目を浴びている。プロテオーム解析とは、タンパク質の構造および機能を対象とした大規模な研究である。プロテオームの解析には、通常、まず、試料に含まれるタンパク質を個々のタンパク質に分離することを行う。このとき、タンパク質を分離する手法の一つとして、二次元電気泳動が広く用いられている。
【0003】
二次元電気泳動とは、二段階の電気泳動によってタンパク質を二次元的に分離する手法である。二次元電気泳動では、例えば、等電点電気泳動(IEF:isoelctric focusing)によって、等電点に基づいてタンパク質を一次元目の方向に分離した後、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE:sodium dodecyl sulfate−polyacrylamidegel electrophoresis)によって、分子量等に基づいてタンパク質を二次元目の方向に分離する。このような二次元電気泳動は、分解能が非常に高く、数千種類以上に及ぶタンパク質を、各スポットに分離することができる。
【0004】
一般的には、一次元目電気泳動ゲルとしては、短冊状のストリップゲルが用いられる。このようなストリップゲルは、商品梱包用のパッケージから剥がして使用される。また、二次元目電気泳動ゲルとして用いられるSDS−PAGEゲルは、多くの場合、サンプルを濃縮してスタート地点を合わせるための濃縮ゲルと、サンプルを分子量の違いにより分離するための分離ゲルとから構成される。
【0005】
ここで、二次元電気泳動法を好適に実施するための方法として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載のサンプル分離装置は、板状の絶縁体である第1媒体支持体の側端面に固定された第1媒体中でサンプルを第1方向に分離するための第1方向分離器具と、第1媒体中で第1方向に分離した分離サンプルを第1方向と異なる第2方向にさらに分離するための第2媒体を収納するための絶縁物を有するサンプル分離器具と、該第1媒体支持体を第1媒体が下側になるように保持し、第1方向へのサンプル分離を行った後の第1媒体を自動的に第2媒体に密着させるための手段とを備え、該絶縁物は、第2媒体に通電する第2方向を規定する第1開口部および第2開口部を有し、第1開口部および第2開口部において第2媒体が該絶縁物の外部と接触可能なように第2媒体を収納し、第2開口部は、分離サンプルを含む第1媒体を第1方向に沿って第2媒体と接着させるための形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−64848号公報(2007年3月15日公開)
【特許文献2】特開平5−223780号公報(1993年8月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
支持体に電気泳動ゲルが固定されている電気泳動ゲルチップは、特許文献1に記載されているような、電気泳動ゲルの自動搬送を行う電気泳動装置において好適に使用することができる。そのため、このような電気泳動ゲルチップをユーザに好適に提供するための技術が求められている。特に、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップ、および、そのような電気泳動ゲルチップを好適に製造するための技術は有用である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップ、および、そのような電気泳動ゲルチップを好適に製造するための技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法は、上記課題を解決するために、絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜とを備えている電気泳動ゲルチップの製造方法であって、片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断して、該帯状の電気泳動ゲルを分離する切断工程、および該切断工程において分離した該帯状の電気泳動ゲルを、該支持体に固定する固定工程を包含していることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップを製造することができる。すなわち、上記の方法によって製造された電気泳動ゲルチップは、保護膜を備えているため、加工時、保存時、および納品時(輸送時)における、電気泳動ゲル表面に対する物理的なダメージおよびタンパク質、塩類等のコンタミの発生を防止することができ、電気泳動ゲルの保存性または輸送性を向上させることができる。
【0011】
また、上記の構成によれば、上述した電気泳動ゲルチップを好適に製造することができる。すなわち、片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断し、支持体に固定するという方法により電気泳動ゲルチップを製造することにより、例えば、幅が数mmである非常に細長い電気泳動ゲルを保護膜で覆うという困難な作業を容易に行うことができ、また、大量生産にも寄与することができる。
【0012】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルを刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して刃を相対的に移動させることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、保存性の高い電気泳動ゲルチップを好適に製造することができる。すなわち、加水分解による電気泳動ゲルの劣化を防ぐために、電気泳動ゲルが含有する水分量を低減させる場合がある。このような乾燥した電気泳動ゲルを、例えば、特許文献2のように、一度に押し切った場合、電気泳動ゲルが損傷するおそれがある。ここで、上記の構成によれば、シート状の電気泳動ゲルを刃が横断するように、シート状の電気泳動ゲルに対して刃を相対的に移動させるため、乾燥した電気泳動ゲルを好適に切断することができる。
【0014】
上記電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルから、一つの上記帯状の電気泳動ゲルを分離した後、上記刃が横断する第1方向に垂直な第2方向における、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整し、再度、上記シート状の電気泳動ゲルを上記刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して上記刃を相対的に移動させることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、シート状の電気泳動ゲルを順に送りながら切断していくことができるので、多数の帯状の電気泳動ゲルを首尾よく分離することができる。
【0016】
上記電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、自動送り装置が、第2方向における上記相対位置を調整することが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、例えば、可動ステージ等の自動送り装置によって、第2方向における刃とシート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整することにより、後述する実施例において示すように、得られる帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを抑え、高品質な電気泳動ゲルチップを製造することができる。
【0018】
上記電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとが離間した状態で、第2方向における上記相対位置を調整することが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、刃とシート状の電気泳動ゲルとが離間した状態で、第2方向における刃とシート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整するため、当該相対位置の調整時に、刃がシート状の電気泳動ゲルに触れて、シート状の電気泳動ゲルを損傷することを防止することができ、高品質な電気泳動ゲルチップを製造することができる。
【0020】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、固定器具が上記シート状の電気泳動ゲルを挟んで固定している状態で上記シート状の電気泳動ゲルを切断することが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、固定器具がシート状の電気泳動ゲルを挟んで固定している状態でシート状の電気泳動ゲルを切断することによって、後述する実施例において示すように、得られる帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを抑え、高品質な電気泳動ゲルチップを製造することができる。
【0022】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルに、粘着テープが貼付された状態で、該粘着テープごと上記シート状の電気泳動ゲルを切断するものであってもよい。
【0023】
上記の構成によれば、分離された帯状の電気泳動ゲルに切断された粘着テープが残留するため、当該粘着テープを分離された帯状の電気泳動ゲルの支持体として用いることができるため、それ以降の作業におけるハンドリング性が向上する。また、粘着テープによって、電気泳動ゲルをより好適に固定することもできる。
【0024】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記固定工程では、上記帯状の電気泳動ゲルを固定治具に設けられた溝に挿入した状態で、当該帯状の電気泳動ゲルを上記支持体に固定することが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、固定治具の溝に帯状の電気泳動ゲルを挿入し、さらに、支持体を挿入することにより、当該溝がガイドとして働き、帯状の電気泳動ゲルを支持体の適切な位置に固定することができる。
【0026】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法では、上記支持体は、板状の絶縁体であり、上記固定工程では、上記支持体の側端面に上記帯状の電気泳動ゲルを固定するものであってもよい。
【0027】
上記の構成によれば、例えば、特許文献1に記載の電気泳動装置に好適に適用することができる。
【0028】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法では、上記切断工程において分離した帯状の電気泳動ゲルの長さは、上記支持体において上記帯状の電気泳動ゲルを固定する領域の長さよりも長くなっており、上記固定工程の後、上記帯状の電気泳動ゲルにおける上記支持体からはみ出した部分を除去する除去工程をさらに包含するものであってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、予め支持体に対して長めに帯状の電気泳動ゲルを作製し、支持体に固定後に余分な部分を除去することにより、製造工程におけるバラツキを吸収し、高品質な電気泳動ゲルチップを製造することができる。
【0030】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造キットは、絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜とを備えている電気泳動ゲルチップの製造キットであって、片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断して、該帯状の電気泳動ゲルを分離する切断装置を備えていることを特徴としている。
【0031】
また、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記切断装置は、刃および駆動手段を備えており、該駆動手段は、上記シート状の電気泳動ゲルを該刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して該刃を相対的に移動させることが好ましい。
【0032】
また、上記電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記駆動手段は、上記シート状の電気泳動ゲルから、一つの上記帯状の電気泳動ゲルを分離した後、上記刃が横断する第1方向に垂直な第2方向における、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整し、再度、上記シート状の電気泳動ゲルを上記刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して上記刃を相対的に移動させることが好ましい。
【0033】
また、上記電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記駆動手段は、自動的に、第2方向における上記相対位置を調整することが好ましい。
【0034】
また、上記電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記駆動手段は、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとが離間させた状態で、第2方向における上記相対位置を調整することが好ましい。
【0035】
また、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記切断装置は、上記シート状の電気泳動ゲルを挟んで固定する固定手段をさらに備えていることが好ましい。
【0036】
また、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記帯状の電気泳動ゲルを挿入するための溝を備えている固定治具をさらに備えていることが好ましい。
【0037】
上記の構成によれば、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法のために好適に使用することができ、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法と同等の効果を奏することができる。
【0038】
本発明に係る電気泳動ゲルチップは、絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜を備えていることを特徴としている。
【0039】
上記の構成によれば、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップを提供することができる。すなわち、上記の構成によれば、保護膜を備えているため、加工時、保存時、および納品時(輸送時)における、電気泳動ゲル表面に対する物理的なダメージおよびタンパク質、塩類等のコンタミの発生を防止することができ、電気泳動ゲルの保存性または輸送性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る電気泳動ゲルチップならびにその製造方法および製造キットによれば、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップ、および、そのような電気泳動ゲルチップを好適に製造するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の各工程を説明するの工程斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の切断工程を説明する図である。
【図4】粘着テープが貼付されたシート状の電気泳動ゲルおよび帯状の電気泳動ゲルの様子を示す斜視図である。
【図5】切断工程において、シート状の電気泳動ゲルを固定器具によって固定することの効果を示すグラフであり、(a)は、シート状の電気泳動ゲルを固定器具で固定した状態で切断したときの、分離された帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを示し、(b)は、シート状の電気泳動ゲルを固定器具で固定しない状態で切断したときの、分離された帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを示す。
【図6】切断工程において、シート状の電気泳動ゲルを自動送り装置によって自動送りすることの効果を示すグラフであり、(a)は、シート状の電気泳動ゲルを自動送り装置により自動送りしたときの、分離された帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを示し、(b)は、シート状の電気泳動ゲルを手動送りしたときの、分離された帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを示す。
【図7】本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の固定工程を説明する図である。
【図8】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す模式図である。
【図9】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す断面図である。
【図10】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す断面図である。
【図11】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す上面図である。
【図12】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す断面図である。
【図13】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す断面図である。
【図14】自動化2次元電気泳動装置の構成部材であるサンプル分離器具の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(電気泳動ゲルチップ)
図1は、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップ50の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、電気泳動ゲルチップ50は、支持体(チップ)51、電気泳動ゲル53、接着層52および保護フィルム(保護膜)54がこの順に積層されている。
【0043】
支持体51は、電気泳動ゲルチップ50を任意の場所に自動搬送可能にするための部材であり、電気泳動ゲルチップ50を搬送する際に搬送手段が保持するための部分である。
【0044】
支持体51は、絶縁材料によって構成されていることが好ましい。絶縁材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA;Polymethyl methacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET;polyethylene terephthalate)、ポリカーボネイト(Polycarbonate)等のプラスチック材料、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、無アルカリガラス等のガラス材料、および、アルミナ、低温同時焼成セラミック等のセラミック材料を挙げることができるがこれに限定されない。
【0045】
支持体51の形状は、電気泳動ゲル53の形状および電気泳動ゲルチップ50を利用する電気泳動装置の搬送手段に応じて適宜設計することができる。例えば、板状の支持体を用いることにより、真空吸着手段によって支持体を保持する後述するような自動化2次元電気泳動装置100において好適に使用することができる。一例を挙げれば、支持体51として、大きさ60mm×23mm、厚さ1.2mmのPMMA板を用いることができる。このような支持体51は、例えば、射出成型等の手法を用いることにより製造可能である。
【0046】
電気泳動ゲル2は、電気泳動の媒体として用いられるものであり、一般に電気泳動媒体として用いられるポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル等を用いることができる。特に、二次元電気泳動の一次元目に用いられるゲルは、等電点方向の電気泳動(一次元目の電気泳動)を完了後、等電点電気泳動とは異なる場所に搬送し、分子量方向の電気泳動(二次元目の電気泳動)を行う必要があるため、支持体51を備えた本実施形態に係る電気泳動ゲルチップ51において電気泳動ゲル2として好適に用いることができる。
【0047】
電気泳動ゲル53の形状は、電気泳動ゲルチップ50を利用する電気泳動装置の泳動槽に応じて適宜設計することができる。例えば、二次元電気泳動の一次元目に用いられるゲルとして用いる場合には、1mm以上5mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下の幅の帯状の電気泳動ゲルとして構成することができる。長手方向の長さは特に限定されないが、例えば、50mm以上240mm以下の範囲で適宜設定することができる。一例を挙げれば、長手方向52mm×短手方向(幅)1.2mmの帯状の電気泳動ゲルとすることができる。
【0048】
電気泳動ゲル53を二次元電気泳動の一次元目に用いられるゲルとして用いる場合、電気泳動ゲル53としては、例えば、固定化pH勾配(IPG;Immobilized pH Gradient)ゲルが好適である。IPGゲルは、例えば、ゲル骨格を形成するアクリルアミド/ビスアクリルアミド混合溶液(例えば、混合比:37.5/1)と、ゲル骨格内のpHを規定する数種類のアクリルアミドバッファーと、重合開始剤である過硫酸アンモニウム(APS、Ammonium persulfate)と、重合促進剤であるN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED;N,N,N’,N’−Tetramethylethylenediamine)と、グリセロール(Glycerol)とを用いて製造することができる。
【0049】
接着層52は、支持体51と電気泳動ゲル53とを接着するものである。このような接着層52を用いることにより、支持体51から電気泳動ゲル53が剥離することを抑え、電気泳動ゲルチップ50の信頼性を向上することができる。
【0050】
接着層52としては、例えば、支持体51に被着された表面コート剤であり得る。表面コート剤としては、アクリルアミド誘導体系コート剤、アガロース誘導体系コート剤、PVDC等が好適であるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、好ましくは、図1に示すように、接着層52は、チップ接着層(支持体接着層)52aおよびゲル接着層52bから構成することができる。
【0052】
ゲル接着層52bは、親水性を有する面を備えており、該親水性の面を介して電気泳動ゲル53と接着するものである。ゲル接着層としては、例えば、市販されているゲルボンドフィルム、酸素プラズマ処理または親水性コート剤等のコーティングを施したPETフィルム等を用いることができる。チップ接着層52aは、支持体51とゲル接着層52bとを接着するものであり、絶縁性を有し、耐化学薬品性に優れる素材が好ましく、例えば、接着剤、両面テープ等を用いることができる。また、別の実施形態として、ゲル接着層52bとチップ接着層52aとを同一の部材としても構わない。この場合、PET等の片面にゲル接着層52b、もう一方の面にチップ接着層52aを設ければよい。
【0053】
そして、接着層52を、チップ接着層52aおよびゲル接着層52bから構成することにより、支持体51からの電気泳動ゲル53の剥離をさらに好適に抑制することができ、電気泳動分析の再現性向上が可能となる。
【0054】
保護フィルム54は、電気泳動ゲル53を保護するためのものである。すなわち、従来技術に係るゲルチップでは、電気泳動ゲルが露出する構成となっているため、加工時、保存時、および納品時(輸送時)に、電気泳動ゲル表面に対して、物理的なダメージおよびタンパク質、塩類等のコンタミが生じるおそれがある。本実施形態に係る電気泳動ゲルチップ51は、電気泳動ゲル53の表面を覆う保護フィルム54を備えているため、電気泳動ゲル53に対する物理的なダメージおよびコンタミによりゲル表面の汚染を防止することが可能となる。なお、電気泳動ゲルチップ51の使用時には、保護フィルム54は電気泳動ゲル53から剥離される。
【0055】
保護フィルム54は、例えば、樹脂フィルムを好適に用いることができる。特に限定されないが、樹脂フィルムとしては、市販されているPETフィルムを用いることができる。なお、保護フィルム54における電気泳動ゲル53と接する側の表面に、適切な表面コート、例えば、電気泳動ゲル53に対して易接着/易剥離となるような表面コートを設けることが好ましい。また、保護フィルムとしては、透明のフィルムを設けることが好ましい。
【0056】
(電気泳動ゲルチップの製造方法)
以下、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法および当該製造方法に好適に用いることができる製造キットについて説明する。
【0057】
図2は、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の各工程を説明するの工程斜視図である。
【0058】
まず、図2(a)に示すように、片面にゲル接着層52bが、他方の面に保護フィルム54が設けられたシート状の電気泳動ゲル53を形成する(電気泳動ゲルシート形成工程)。このようなシート状の電気泳動ゲル53は、例えば、ゲル接着層52b上にシート状の電気泳動ゲル53を形成し、その後に保護フィルム54を貼付することにより形成することができる。
【0059】
一例において、電気泳動ゲル53としてIPGゲルを用いる場合の手順について詳細に説明する。まず、アクリルアミド/ビスアクリルアミド混合溶液(混合比:37.5/1)、アクリルアミド誘導体4種(酸解離定数:3.6、6.2、7.0、8.5)、過硫酸アンモニウム(APS;Ammonium persulfate)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED;N,N,N’,N’−Tetramethylethylenediamine)、グリセロールおよび純水を用いて、所望の混合比で調整した酸性側モノマー溶液および塩基性側モノマー溶液を調製する(例えば、P.G.Righetti:Immobilized pH gradients:theory and methodology,Elsevier,Amsterdam,1990を参照のこと)。
【0060】
そして、調製した酸性側モノマー溶液および塩基性側モノマー溶液をミキサーを用いて混合し、得られた混合溶液を、シート状のゲル接着層52b(例えば、ゲルボンドフィルム)が配置されたIPGゲル作製器具に充填し、ゲル化する。電気泳動ゲル53の長さは、例えば、50mm〜240mmまで任意に設計することができる。
【0061】
その後、洗浄、乾燥を行い、電気泳動ゲル53におけるゲル接着層52bとは反対側の面に、保護フィルム54を貼り付ける。保護フィルム54の貼り付けは、気泡、ダスト等の混入を防ぐように、ローラー等を用いて、注意深く行うことが好ましい。
【0062】
次に、図2(b)に示すように、ゲル接着層52b上にチップ接着層52aを設ける(チップ接着層形成工程)。例えば、ゲル接着層52b上に接着剤を塗布してもよいし、両面テープを貼付してもよい。両面テープを貼付する場合、ローラー等の器具を用いて、気泡、ダストが混入しないように注意深く行うことが好ましい。以上により、片面に保護フィルム54が設けられたシート状の電気泳動ゲル55が形成される。
【0063】
なお、接着層52を一つの部材から構成する場合には、チップ接着層形成工程を省略してもよい。また、接着層52を支持体51に被着された表面コート剤とする場合には、上述したチップ接着層形成工程の代わりに、支持体51に表面コートを行う接着層形成工程を行ってもよい。すなわち、接着層52、ゲル接着層52bおよびチップ接着層52aの形成は、後述する固定工程の前に適宜行えばよく、上述した構成に限定されない。
【0064】
(切断工程)
続いて、図2(c)に示すように、シート状の電気泳動ゲル55を切断して、帯状の電気泳動ゲル(ゲルストリップ)55aを分離する(切断工程)。このように、片面が保護フィルム54に覆われているシート状の電気泳動ゲル55を切断することにより、例えば、幅が数mmである非常に細長い電気泳動ゲル53を保護フィルム54で覆うという困難な作業を容易に行うことができ、また、大量生産にも寄与することができる。
【0065】
一実施形態において、切断工程は、図3に示すような切断装置60を用いて実行することができる。図3は、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の切断工程を説明する図であり、(a)は、切断工程において用いる切断装置60の概略構成を示す斜視図であり、(b)は、切断装置60の側面図であり、(c)は、ゲルを切断中の切断装置60の様子を示す図である。
【0066】
図3に示すように、切断装置60は、可動ステージ(駆動手段、自動送り装置、固定器具、固定手段)61、刃駆動部(駆動手段)62、刃62a、フレームおよびストッパー(固定器具、固定手段)63ならびに止着具(固定器具、固定手段)63aを備えている。
【0067】
可動ステージ61は、シート状の電気泳動ゲル55を載置する台であり、刃62aを、シート状の電気泳動ゲル55に対して相対的に図中Y方向(第1方向)およびX方向(第2方向)に駆動する駆動手段である。刃62aは、シート状の電気泳動ゲル55を切断するための切断刃である。刃駆動部62は、刃62aを図3中Z方向に駆動する。フレームおよびストッパー63ならびに止着具63aは、可動ステージ61とともに、シート状の電気泳動ゲル55を挟んで固定する固定器具である。なお、可動ステージ61が、刃62aをシート状の電気泳動ゲル55に対して相対的に駆動するのではなく、刃駆動部62が、刃62aをシート状の電気泳動ゲル55に対して相対的に駆動するように構成してもよい。
【0068】
そして、図3(c)に示すように、シート状の電気泳動ゲル55は、フレームおよびストッパー63ならびに止着具63aによって可動ステージ61に固定され、刃62aが可動ステージ61によってシート状の電気泳動ゲル55を横断するように移動し、シート状の電気泳動ゲル55を短冊状に切断して、帯状の電気泳動ゲル55aを分離する。このように、刃62aをシート状の電気泳動ゲル55を横断させて切断することにより、加水分解による電気泳動ゲル53の劣化を防ぐために、電気泳動ゲル53が含有する水分量が低減されていた(乾燥されていた)場合であっても、好適に切断を行うことができる。
【0069】
なお、図3(b)に示すように、シート状の電気泳動ゲル55は、フレームおよびストッパー63と可動ステージ61との間に挟まれ、止着具63aによって強固に固定される。フレームおよびストッパー63のゲル対向面(ストッパー)は、シート状の電気泳動ゲル55および可動ステージ61に対して高い摩擦力を有する素材によって構成されていることが好ましい。例えば、フレームおよびストッパー63のゲル対向面(ストッパー)の素材としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS;Polydimethylsiloxane)、シリコーン樹脂等が好適である。
【0070】
このようにシート状の電気泳動ゲル55を固定することにより、後述する実施例に示すように、得られる帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを抑えることができる。
【0071】
次に、切断方法について詳細に説明する。まず、可動ステージ61に固定されたシート状の電気泳動ゲル55は、可動ステージ61のX方向、Y方向の駆動により、シート状の電気泳動ゲル55のシート切断線(図2(c)における点線)の第一の切断開始位置に移動する(第1の切断工程)。次に、刃駆動部62が、刃62aをシート状の電気泳動ゲル55表面に接する位置までZ方向に下げた後、一回に切断する深さまでさらに下げる(第2の切断工程)。一回の切断深さは、シート状の電気泳動ゲル55が硬質である場合と軟質である場合とで異なるが、例えば、10μm以上50μm以下に設定することが好ましい。一例において、一回の切断深さは、20μmに設定することができる。
【0072】
その後、可動ステージ61のY方向の駆動により、シート切断線に沿ってシート状の電気泳動ゲル55を切断する(第3の切断工程)。最後に、刃駆動部62が、刃62aを、シート状の電気泳動ゲル55ならびにフレームおよびストッパー63と干渉しない高さまでZ方向に上げ、第一の切断開始位置に移動後、帯状の電気泳動ゲル55aの短手方向の幅X方向に移動する(第二の切断開始場所に移動する。第4の可動工程)。そして、第1〜第4の切断工程を繰り返し、シート状の電気泳動ゲル55を切断する。
【0073】
このように、切断工程では、シート状の電気泳動ゲル55から、一つの帯状の電気泳動ゲル55aを分離した後、X方向における刃62aとシート状の電気泳動ゲル55との相対位置を調整し、再度、シート状の電気泳動ゲル55を刃62aが横断するように、シート状の電気泳動ゲル55に対して刃62aを相対的に移動させることが好ましい。これにより、シート状の電気泳動ゲル55を順に送りながら切断していくことができるので、多数の帯状の電気泳動ゲル55aを首尾よく分離することができる。
【0074】
また、切断工程では、自動送り装置が、X方向における相対位置を調整することが好ましい。これにより、後述する実施例において示すように、得られる帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを抑えることができる。
【0075】
また、切断工程では、刃62aとシート状の電気泳動ゲル55とが離間した状態で、X方向における相対位置を調整することが好ましい。これにより、当該相対位置の調整時に、刃62aがシート状の電気泳動ゲル55に触れて、シート状の電気泳動ゲル55を損傷することを防止することができる。
【0076】
なお、一実施形態において、切断工程は、図4に示すように、シート状の電気泳動ゲル55に粘着テープ64a(例えば、カプトンテープ)を貼付した状態で、粘着テープ64aごとシート状の電気泳動ゲル55を切断するものであってもよい。
【0077】
図4は、粘着テープ64aが貼付されたシート状の電気泳動ゲル55および帯状の電気泳動ゲル55aの様子を示す斜視図である。図4に示すように、粘着テープ64aは、シート状の電気泳動ゲル55における、刃62aが横断する方向(Y方向)の両端に貼付される。そして、切断されると、粘着テープ64aは、帯状の電気泳動ゲル55aの長手方向の両端に残留する。このとき、粘着テープ64aを分離された帯状の電気泳動ゲル55aの搬送のための支持体として用いることができるため、それ以降の作業におけるハンドリング性が向上する。また、粘着テープ64aによって、切断工程において、シート状の電気泳動ゲル55をより好適に固定することもできる。
【0078】
以下、切断工程における各条件による効果について実証した。
【0079】
(固定に関する実施例)
図5は、シート状の電気泳動ゲル55を固定器具(フレームおよびストッパー63ならびに止着具63a)によって固定することの効果を示すグラフであり、(a)は、シート状の電気泳動ゲル55を固定器具で固定した状態で切断したときの、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを示し、(b)は、シート状の電気泳動ゲル55を固定器具で固定しない状態で切断したときの、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを示す。
【0080】
図5(a)および(b)を比較すれば明らかなように、固定器具を用いてシート状の電気泳動ゲル55を固定することにより、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを抑えることができた。
【0081】
(自動送りに関する実施例)
図6は、シート状の電気泳動ゲル55を自動送り装置(可動ステージ61)によって自動送りする(X方向に移動させる)ことの効果を示すグラフであり、(a)は、シート状の電気泳動ゲル55を自動送り装置により自動送りしたときの、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを示し、(b)は、シート状の電気泳動ゲル55を手動送りしたときの、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを示す。
【0082】
図5(a)および(b)を比較すれば明らかなように、固定器具を用いてシート状の電気泳動ゲル55を固定することにより、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを5%以下に抑えることができた(長手方向52mm×短手方向1.2mmの帯状の電気泳動ゲル55aに対し、切断バラツキが1.2mm±0.06mm以内)。
【0083】
(固定工程)
続いて、図2(d)に示すように、切断工程において得られた帯状の電気泳動ゲル55aを、支持体51に固定することにより、電気泳動ゲルチップ50を製造する(固定工程)。上述したように、帯状の電気泳動ゲル55a(または支持体51)には接着層が設けられているため、帯状の電気泳動ゲル55aに対して支持体51を押圧することにより、帯状の電気泳動ゲル55aを、支持体51に固定することができる。
【0084】
ただし、帯状の電気泳動ゲル55aを支持体51に固定するとき、帯状の電気泳動ゲル55aが細長いため、折れ曲がるなどして、適切に固定することができない場合がある。そのため、固定工程では、図7(a)に示すような固定治具70を用いて、帯状の電気泳動ゲル55aを支持体51に固定することが好ましい。
【0085】
図7は、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の固定工程を説明する図である。図7(a)は、固定治具70の概略構成を示す斜視図である。図7(a)に示すように固定治具70には、帯状の電気泳動ゲル55aが挿入可能な幅Dを有する溝70aが設けられている。溝70aは、一例において、幅1.2mm深さ3mmとすることができる。
【0086】
まず、図7(b)に示すように、固定治具70の溝70aに、帯状の電気泳動ゲル55aを挿入する。そして、図7(c)に示すように、固定治具70の溝70aに、帯状の電気泳動ゲル55aを挿入した状態で、さらに、溝70aに支持体51を挿入して押し込むことにより、帯状の電気泳動ゲル55aを支持体51に固定することができる。このとき、溝70aがガイドとして働くので、帯状の電気泳動ゲル55aを支持体51の適切な位置に固定することができる。
【0087】
なお、図7(d)に示すように、帯状の電気泳動ゲル55aが支持体51からはみ出している場合、はみ出し部分を切断する。以上により、図7(e)に示すように、電気泳動ゲルチップ50を製造することができる。
【0088】
なお、図7(d)に示すように、予め、支持体51に対して長めに帯状の電気泳動ゲル55aを作製し、支持体51に固定後に余分な部分を除去するようにすることにより、製造工程におけるバラツキ(例えば、帯状の電気泳動ゲル55aの長さのバラツキ)を吸収し、高品質な電気泳動ゲルチップ50を製造することができる。
【0089】
(2次元電気泳動)
次に、本発明に係る電気泳動ゲルチップ50の使用方法について説明する。一実施形態において、本発明に係る電気泳動ゲルチップ50は、例えば、以下のような自動化2次元電気泳動装置100に適用することができる。但し、電気泳動ゲルチップ50の用途は、自動化2次元電気泳動装置100に適用される場合に限定されず、ゲルの運搬を伴う電気泳動法の実施一般に好適に適用することができる。
【0090】
図8(a)は自動化2次元電気泳動装置100の要部構成を示す斜視図である。図8(b)は、電気泳動ゲルチップ50から保護フィルム54を剥離した電気泳動ゲルチップ56を、保持手段3のアーム31に結合する構成を示す。図8(c)および(d)は、自動化2次元電気泳動装置100において用いられる第2分離部(サンプル分離器具)20の構成を示す断面図および上面図である。
【0091】
すなわち、電気泳動ゲルチップ50は、まず、保護フィルム54を剥離した後に、自動化2次元電気泳動装置100(のアーム31)にセットされる。
【0092】
本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100は、サンプルの2次元目分離を行う第2分離部(サンプル分離器具)20を固定する固定手段1、1次元目の分離を行う電気泳動ゲル53が固定された支持体51を保持するアーム31を備えた保持手段3、固定手段1および/または保持手段3を移動して双方の相対位置を変更させる駆動手段4(41および42)を有している。
【0093】
自動化2次元電気泳動装置100では、第1分離部(示さず)にてサンプルは第1方向(図中Y方向)に分離され、次いで、第2分離部20の第2開口部26へ搬送されかつ接着された後に第2分離部20にて第2方向(図中X方向)に分離される。
【0094】
第2開口部26の形状について、図8(c)および(d)に示すように、第2緩衝液槽28bにおいて上部絶縁板22を貫く開口の幅は、対応する下部絶縁板21の溝幅より広い。この差分によって、電気泳動ゲル53と第2媒体24とを密着させ得、その結果、1次元目分離を終えた電気泳動ゲル53中のサンプルの2次元目分離を首尾よく行い得る。
【0095】
第2媒体24に分離サンプルを含む電気泳動ゲル53を接着させるために、第2媒体24を覆う絶縁物20aは電気泳動ゲル53と第2媒体24とを密着させる部位を有していなければならない。このような部位は第2開口部26であっても、第1開口部25と第2開口部26との間にさらなる開口部(第3開口部)26’が設けられてもよい。第1媒体供給口は、分離サンプルを含む電気泳動ゲル53を、第1方向と垂直な面で第2媒体24に接着させるに適切な大きさおよび形状を有している。
【0096】
第2分離部20が第2媒体24を内包している場合、第1媒体供給部において電気泳動ゲル53と第2媒体24とを密着させるために、第2開口部26から第2媒体24が突出していることが好ましく、密着度を増すためには突出した第2媒体部分に凹凸がないことがより好ましい。なお、第2開口部26から第2媒体24が突出していない場合は、第2開口部26に電気泳動ゲル53と第2媒体24とを密着させるための接着部材(図示せず)が設けられていればよい。好ましい接着部材としては、アガロース、低粘度(1〜3%程度)のアクリルアミドなどのゲル、グリセリン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロースなどの高粘調液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
第1方向(図中Y方向)への分離と第2方向(図中X方向)への分離を規定するパラメータは同じであってもよいが、分離性能を向上させるためにはそれぞれ異なることが好ましい。これら2方向への分離を規定するパラメータとしては、タンパク質の等電点、分子量、単位サイズあたりの表面電荷(ゾーン電気泳動)、ミセルへの分配係数(ミセル動電クロマトグラフィー)、固定相−移動相への分配係数(電気クロマトグラフィー)、相互作用物質との親和定数(親和結合電気泳動)などが挙げられるが、通常の2次元電気泳動では、第1方向への分離が等電点に基づいて、第2方向への分離が分子量に基づいて行われる。
【0098】
図8(a)に示すように、自動化2次元電気泳動装置100においては、駆動手段4は垂直方向用駆動手段41および平行方向用駆動手段42からなり、具体的には、保持手段3(支持アーム31)は垂直方向用駆動手段41の凹部(保持手段連結部)41’を介して垂直方向用駆動手段41によってZ軸方向へ移動可能に保持されている。また、垂直方向用駆動手段41は、平行方向用駆動手段42の凹部(Z軸ステージ連結部)42’を介して平行方向用駆動手段42によってX軸方向へ移動可能に保持されている。よって、固定手段1および/または保持手段3を、第1方向および第2方向からなる平面に対して、垂直方向用駆動手段41によって垂直方向に、平行方向用駆動手段42によって平行方向に移動し得る。
【0099】
用語「サンプル」は当該分野において標本、調製物と同義で用いられ、本明細書中で使用される場合、「生物学的サンプル」またはその等価物が意図される。「生物学的サンプル」は、供給源としての生物材料(例えば、個体、体液、細胞株、組織培養物もしくは組織切片)から得られる、任意の調製物が意図される。生物学的サンプルとしては、体液(例えば、血液、唾液、歯垢、血清、血漿、尿、滑液、および随液)および組織供給源が挙げられる。好ましい生物学的サンプルは、被験体サンプルである。好ましい被験体サンプルは、被験体から得た皮膚病変部、喀痰、咽頭粘液、鼻腔粘液、膿、または分泌物である。本明細書中で使用される場合、用語「組織サンプル」は、組織供給源より得られた生物学的サンプルが意図される。哺乳動物から組織生検および体液を得るための方法は当該分野で周知である。本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」としては、上記生物学的サンプルおよび上記組織サンプル以外に、上記生物学的サンプルおよび上記組織サンプルより抽出したタンパク質サンプル、ゲノムDNAサンプルおよび/または総RNAサンプルも挙げられる。
【0100】
2次元電気泳動について、1次元目をゲル等電点電気泳動にて、2次元目をSDS−PAGEにて行う場合を例に挙げて以下に説明するが、本発明はこの態様に限定されない。
【0101】
自動化2次元電気泳動装置100には、全工程を自動化するために、第1媒体電圧印加手段5および第2媒体電圧印加手段6をそれぞれ第1分離部10および第2分離部20と接続するための配線手段7・8が備えられており、配線手段7はその先端にて第1分離槽11d内に設けられる第3電極14(1対の陽極および陰極)を、配線手段8はその先端にて第1緩衝液槽28a内および第2緩衝液槽28b内にそれぞれ設けられる第1電極29aおよび第2電極29bを有している(図9を参照のこと)。
【0102】
図9は、本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の固定手段1およびその周辺に配置されている部材の断面図を示す。図9において左方から右方に向けて2次元電気泳動が実行される。
【0103】
本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の固定手段1上には、サンプルの1次元目分離を行う第1分離部10とサンプルの2次元目分離を行う第2分離部(サンプル分離器具)20とが真空吸着によって固定されている。第1分離部10には複数の槽が設けられており、そのうちの1つには電極(第3電極)14が設けられている。第2分離部20には2つの槽(第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28b)が設けられており、それぞれに電極(第1電極29aおよび第2電極29b)が設けられている。
【0104】
支持体51は本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の保持手段3(図示せず)の一部であるアーム31によって保持される。アーム31は本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の駆動手段4によって、図中に示すようにX方向および/またはZ方向に移動可能である。
【0105】
アーム31は真空吸着によって電気泳動ゲルチップ56を結合した後、駆動手段4によって図9中の矢印2の方向へ移動される。電気泳動ゲル53は電気泳動ゲルチップ56が駆動手段4によって移動されることにより、第1分離部10に設けられた各槽において所望の処理が施され、引き続き第2分離部20へ搬送される。
【0106】
なお、駆動手段4によるアーム31の移動は、以下のように行われる。平行方向用駆動手段42がアーム31を垂直方向用駆動手段41とともに第1媒体配置槽11aの所望のX位置まで駆動し、次いで駆動手段41がアーム31を所望のZ位置まで下降させる。続いて、第1媒体配置槽11aに配置した電気泳動ゲルチップ56を、制御手段によりアーム31への吸着を制御することにより、駆動手段4により電気泳動ゲル53を移動させることが可能になる。アーム31への吸着の制御は、例えば電磁弁を用いれば自動制御され得る。
【0107】
電気泳動ゲル53は、その幅や長さに比べて非常に薄い形状を有している。よって、ゲルの表裏、pH勾配の方向の識別が困難であるだけでなく、反りや捩れが発生しやすく、形状を一定に保つことが困難である。このことは電気泳動結果の再現性が悪い要因となり得る。さらに、電気泳動の各工程での電気泳動ゲル53の操作もまた容易ではないので、電気泳動ゲル53を移動する際の位置精度を向上させることは困難である。このような不具合を克服して電気泳動ゲル53を自動装置にて安定的に保持しかつ操作するために、本発明者らは、電気泳動ゲル53を支持体51に固定して用いた。
【0108】
図9中の第1分離部10および第2分離部20の構成を、図10および図11により詳細に示す。図10は、サンプルの1次元目分離を行う第1分離部10とサンプルの2次元目分離を行う第2分離部20とが固定された固定手段1の断面図を示し、図11は、その上面図を示す。
【0109】
図10に示すように、本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の固定手段1上には、サンプルの1次元目分離を行う第1分離部10とサンプルの2次元目分離を行う第2分離部20とが固定されている。第1分離部10には複数の試薬槽11(11a〜11d)および12(12a〜12d)が設けられており、第2分離部20には2つの槽(第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28b)が設けられている。なお、図9において、第1分離部10には4つの槽からなる試薬槽11および7つの槽からなる試薬槽12を用いているが、図9〜6では、要部構成の説明を簡略化するために、第1分離部10が4つの槽からなる試薬槽11および4つの槽からなる試薬槽12を有する構成を用いている。
【0110】
第1分離部10では、サンプルを電気泳動ゲル53に導入する工程、電気泳動ゲル53を膨潤させる工程、電気泳動ゲル53に電圧を印加してサンプルを第1方向に分離する工程、電気泳動ゲル53中の分離サンプルを染色する工程、第2分離部20での環境に平衡化する工程が行われる。第1分離部10は、電気泳動ゲル53をこのように処理するに好ましい形状を有している。電気泳動ゲル53へのサンプルの添加と第1媒体の膨潤とを別々に行うことにより、膨潤速度を向上させることができる。
【0111】
また上記染色工程は、従来通りサンプルの第1方向分離前または第2方向分離後に行われてもよいが、染色操作が煩雑でありかつ時間を要し、自動化を試みることが非常に困難であるので、第1方向へのサンプル分離後でありかつ第2方向へのサンプル分離の前に染色を行われるサンプル中のタンパク質(またはDNA)と蛍光物質とを結合させることが好ましい。サンプル中のタンパク質(またはDNA)と蛍光物質との結合様式としては、共有結合、イオン結合、配位結合、インターカレートなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
第1分離部10は、単一の絶縁体に溝(試薬槽)11・12が設けられた構成を有している。第1試薬槽11は、1次元目分離を行うまでの工程に必要な試薬を格納するためのものであり、第2試薬槽12は、1次元目分離後で2次元目分離前に必要な試薬を格納するためのものである。具体的には、第1試薬槽11は、第1媒体配置槽11a、サンプル槽11b、膨潤槽11c、第1分離槽11dからなり、サンプル槽11bはサンプル導入部13を有している。第2試薬槽12は、第1平衡化槽12a、染色槽12b、洗浄槽12c、第2平衡化槽12dからなる。第1分離槽11dは、電気泳動ゲル53での1次元目分離が行われる部位であり、1次元目分離に必要な緩衝液を充填される。ただし、膨潤槽11c内に格納される試薬が1次元目分離に必要な緩衝液を含む場合は、第1分離槽11d内に1次元目分離に必要な緩衝液を充填しなくてもよい。第1分離槽11dでは、第1媒体電圧印加手段5により電圧を印加されることにより、電気泳動ゲル53中のサンプルが分離される。第1平衡化槽12aは、第1方向分離に用いた緩衝液を置換させて、第1方向分離後に行う染色の効率を上げるための緩衝液を格納するために設けられることが好ましい。洗浄槽12cは、蛍光色素を格納した染色槽12bにて付着した過剰な蛍光色素を洗浄する緩衝液を格納するために設けられることが好ましい。第2平衡化槽12dは、第2方向分離を行うために好ましい試薬が格納されており、例えば、電気泳動ゲル53中のタンパク質を還元する試薬、該タンパク質をSDS化する試薬が格納されている。また、第2方向分離の方法に応じて、緩衝液、界面活性剤、酵素、相互作用物質などが格納されてもよい。
【0113】
第2媒体24において、電気泳動ゲル53中で第1方向に分離した分離サンプルが、第1方向と異なる第2方向にさらに分離される。この第2方向へのサンプル分離を実行するために、第2分離部20では、第1方向に分離したサンプルを含む電気泳動ゲル53を第2媒体24に密着させる工程;第2媒体24に電圧を印加してサンプルを第2方向に分離する工程が行われる。自動化2次元電気泳動装置100においては、第2方向への分離中のサンプルを検出する工程もまた行われる。
【0114】
第2分離部20は、下部絶縁板21と上部絶縁板22とを重ね合わせた絶縁部20aに、上部絶縁部22を貫いて下部絶縁部に設けられた2つの溝(第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28b)を有している。また、下部絶縁板21には、上部絶縁板22との間に第2媒体24を覆いかつ収納するための溝(第2媒体収納部)24’が設けられている。第2媒体収納部24’に収納された第2媒体24(図示せず)は下部絶縁板21および上部絶縁板22からなる絶縁部20aに覆われ、第1開口部25および第2開口部26において絶縁部20aの外部と接触可能である。
【0115】
第1開口部25および第2開口部26は、第2分離部20に設けられた第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bにそれぞれ面している。第2方向へのサンプル分離を実行するために、第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bには、第2媒体収納部24’に収納された第2媒体24と第1開口部25および第2開口部26を介して接する第1緩衝液および第2緩衝液がそれぞれ充填される。第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bには第1電極29aおよび第2電極29bが設けられており、第1電極29aおよび第2電極29bを介して第2媒体電圧印加手段6によって第2媒体24に電圧が印加されると、第1開口部25から第2開口部26に向かって電流が流れるとともにサンプルが第2開口部26から第1開口部25に向かって展開/分離される。
【0116】
自動化2次元電気泳動装置100は、2次元電気泳動に必要なサンプル、試薬、分離媒体を所定の位置にセットした後に、上述した各手段を適切に制御しかつ全工程を自動にて実行させるための制御手段を有している。固定手段1または保持手段3の相対位置を検出するための位置センサなどからの情報を制御手段に入力して、制御手段は、自動化を首尾よく行うために、固定手段1、保持手段3(アーム31)、駆動手段4、第1媒体電圧印加手段5、第2媒体電圧印加手段6、第1配線手段7、第2配線手段8の制御信号を出力する。本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100が有する制御手段は、好ましくは、種々の言語を用いて作製されかつROMおよび/またはRAMなどの記録媒体に格納されたプログラムコードを実行するCPUなどの演算手段であり得る。
【0117】
制御を開始することにより駆動手段4が保持手段3を移動(搬送)する。電気泳動ゲルチップ56は、保持手段3の一部であるアーム31に保持されているので、電気泳動ゲル53を固定化した電気泳動ゲルチップ56は、制御手段により駆動される駆動手段4によって間接的に移動(搬送)されて所望の処理を以下のように施される。
【0118】
第1媒体配置槽11aに配置された電気泳動ゲルチップ56がサンプル槽11bまで搬送される。サンプルが電気泳動ゲル53に吸収されるまで電気泳動ゲルチップ56はサンプル槽11b内に維持されている。サンプル吸収に必要な時間は、制御手段の格納部に記録されている。次いで、電気泳動ゲルチップ56は、膨潤槽11cまで搬送され、電気泳動ゲル53が膨潤するまで膨潤槽11c内に維持され、必要に応じて微小振盪される。電気泳動ゲル53が膨潤するに必要な時間および微小振盪動作に関する情報もまた、制御手段の格納部に記録されている。電気泳動ゲルチップ56上で膨潤した電気泳動ゲル53は第1分離槽11dまで搬送され、第1分離槽11d内の第3電極14間に配置される。ここで、第1媒体電圧印加手段5によって電気泳動ゲル53に電圧が印加されて、サンプルが電気泳動ゲル53中にて第1方向に分離される。サンプル分離に必要な時間および必要な電圧に関する情報もまた、制御手段の格納部に記録されている。上述した各情報は、制御手段の格納部に記録されたプログラムによって、用いる電気泳動ゲル53の種類、サンプルの種類、各試薬の種類に従って適宜選定かつ実行される。
【0119】
電気泳動ゲル53中にて第1方向への分離が終了した後、電気泳動ゲル53は、第1平衡化槽12aまで搬送され、必要に応じて微小振盪されることにより、引き続く染色が首尾よく行われるように平衡化される。次いで、平衡化後の電気泳動ゲル53は染色槽12bまで搬送され、必要に応じて微小振盪されて、電気泳動ゲル53中のサンプルが染色される。染色後の電気泳動ゲル53は洗浄槽12cまで搬送され、微小振盪されることにより過剰な色素が適宜洗浄される。次いで、脱色後の電気泳動ゲル53は、第2媒体中での第2方向への分離を首尾よく行うために、第2平衡化槽12dまで搬送され、必要に応じて微小振盪されることにより、引き続く第2媒体中での第2方向への分離が首尾よく行われるように平衡化される。平衡化後の電気泳動ゲル53は第2媒体24の第1媒体供給部26まで搬送され、第2媒体24に密着される。
【0120】
電気泳動ゲル53が第2媒体24に密着された後に第2媒体電圧印加手段6によって第2媒体24に電圧が印加されることにより、サンプルが第2媒体24中にて第2方向に分離される。リアルタイムモニタリングを行う場合は、この第2方向への分離中に検出手段(図示せず)を介して行えばよい。なお、試薬槽12a〜12dおよび第2媒体24での分離において必要な時間などの情報もまた、制御手段の格納部に記録されている。上述した各情報は、制御手段の格納部に記録されたプログラムによって、用いる電気泳動ゲル53および第2媒体24の種類、サンプルの種類、各試薬の種類に従って適宜選定かつ実行される。
【0121】
このように自動化2次元電気泳動装置100において、制御手段による上述したような制御が実行されることにより、2次元電気泳動の工程を全自動にて行い得る。また、自動化2次元電気泳動装置100が、上述したような制御が実行する制御手段を有することにより、種々のプロトコルの選定および/または導入を容易に行って、サンプル分離性能を追求することができる。また、2次元電気泳動の電圧印加プログラムをコンピュータにてフィードバック制御するための2次元用高電圧印加制御システムを導入し、自動ステージと連携して制御することができる。
【0122】
なお、第2媒体24を第2媒体収納部24’にて作製しても、別途作製した第2媒体24を移動して第2媒体収納部24’に固定してもよい。第2分離部20にて第2媒体24を作製しない場合は、第2媒体収納部24’は溝である必要はなく、その場合、第2媒体24の厚みと等しいスペーサ(示さず)を下部絶縁板21の第2媒体24を固定する部位を囲むように配置し、スペーサを介して下部絶縁板21と上部絶縁板22とを接着すればよい。
【0123】
第1開口部25および第2開口部26においてのみ第2媒体24が緩衝液と接していることが好ましいので、第2媒体24を覆う絶縁物20aは防水性が高い物質からなることが好ましい。また、リアルタイムモニタリングなどのように第2媒体24を絶縁物20aから取り外すことなくサンプルを検出するためには、絶縁物20aは光透過性の高い物質からなることが好ましい。このような特性を兼ね備えた物質としては、ガラス、樹脂が挙げられ、樹脂材料としてはPMMA、PDMS、COP、ポリカーボネート、ポリスチレン、PET、塩ビなどが挙げられ、重量や操作性、生産性の観点からアクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)が好ましい。
【0124】
自動化2次元電気泳動装置100においては、電気泳動ゲルチップ56が順次移動されながら、種々の工程が実行される。よって、電気泳動ゲルチップ56の3次元での位置精度が重要である。この場合、電気泳動ゲルチップ56が堅固に固定されるだけでなく、相対的に移動する第1分離部10および第2分離部20もまた堅固に固定される必要がある。
【0125】
第1分離部10、第2分離部20および電気泳動ゲルチップ56を、サンプルごとに交換して用いることを考慮すると、これらの固定化は着脱可能であることが好ましい。第1分離部10、第2分離部20および電気泳動ゲルチップ56を、固定手段1および保持手段3に固定するための機構としては、上述したような真空吸着機構以外に、挟固定機構、磁力固定機構および静電吸着機構が挙げられるが、これらに限定されない。また、真空吸着機構を採用する場合は、真空吸着プレートを介して固定することが好ましい。
【0126】
なお、第1分離部10および第2分離部20を透明なPMMAで作製する場合、サンプルの蛍光検出の際に励起光が第1分離部10および第2分離部20の下のステージ(固定手段)1にまで照射される。ステージ(固定手段)1に凹凸がある場合は励起光および/または蛍光波長が不均一に反射することにより検出時のバックグラウンドが上がり、首尾よい検出が妨げられてしまう。よって、真空吸着プレートは、反射の少ない色調であること、凹凸のない平面に処理してあること、真空吸着のために設ける吸引穴を第2分離部20の検出部直下以外の部位に設けることが好ましい。
【0127】
第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bにそれぞれ設けられる第1電極29aおよび第2電極29b、ならびに第1分離槽11dに設けられる第3電極14は、固定されていてもされていなくてもよい。固定されている場合は、電極28a、28bおよび14は、それぞれ各槽28a、28bおよび14にパターニング形成された導電体であってもよい。また、電極の搬送/着脱を自動化にて行う場合は、図12に示すように、アーム31が電極29a、29bおよび14をそれぞれ槽28a、28bおよび11dに搬送し、各槽に設けられた電極固定部(図示せず)に着脱し得る。また、電極29a、29bおよび14をそれぞれ第1緩衝液槽28a、第2緩衝液槽28b、第1分離槽11dに固定せず、充填された緩衝液に浸す形態であってもよい。電極29a、29bおよび14を搬送可能な形態で用いる場合は、図12に示すように、電極洗浄槽40を設けることにより各電極を首尾よく洗浄し得る。なお、電極洗浄槽40の設置部位は図12に示す部位に限られず、第1分離部10の任意の部位に設けられ得る。
【0128】
上述したように、第1分離部10は複数の槽(試薬槽)11・12を有する。この複数の試薬槽は、電気泳動ゲル53におけるサンプル分離に必要な試薬、および分離後の電気泳動ゲル53(または電気泳動ゲル53中のサンプル)の染色に必要な試薬を充填することが好ましいが、充填される試薬は必要に応じて適宜選択され得る。また、複数の試薬槽11・12の数は、必要な処理工程に応じて増減させればよい。
【0129】
特定の実施形態において、複数の試薬槽11・12は、充填された試薬を封止するための剥離除去可能なシート状封止材が設けられている(図13を参照のこと)。シート状封止材を設けることにより、内包する試薬の飛散を避けることができ、かつ試薬を内包した第1分離部10を容易に保存することができる。
【0130】
1つの局面において、シート状封止材は、自動化2次元電気泳動装置100が備えているシート剥離手段(図示せず)によって剥離除去され得る。シート剥離手段は駆動手段4によって駆動されることが好ましい。この場合、シート状封止材を設けたまま第1分離部10を自動化2次元電気泳動装置100に設置しても、制御手段の制御下にて首尾よく剥離除去され得る。なお、図13では、保持手段3のアーム31がシート剥離手段である形態を示している。
【0131】
別の局面において、シート状封止材は、電気泳動ゲルチップ56からの押付外力によって穿孔可能であり得る。また、穿孔を容易にするために支持体51は穿孔用補助具を備えていてもよい。この場合、上記シート剥離手段のようなさらなる手段を設けることなく第1分離部における電気泳動ゲルチップ56の通常の動作によってシート状封止材を穿孔し得る。
【0132】
さらなる実施形態において、第1分離部10は、要時調整試薬槽を有し、この要時調整試薬槽は、シート状封止材によって複数の試薬を内包する単一の試薬槽内であり、シート状封止材が剥離除去または穿孔された際に、複数の試薬が混合される。自動化2次元電気泳動装置100が実行する工程において、予め調整することができずに要時調整の必要がある試薬が使用される場合であっても、本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100を用いれば、煩雑な作業を回避し得る。
【0133】
上述したような試薬槽11・12を有する第1分離部10を備えた自動化2次元電気泳動装置100は、試薬槽11・12に試薬を注入するための試薬注入手段(示さず)を備えていることを特徴とすることがなお好ましい。この試薬注入手段は、保持手段および駆動手段と連動して動作する形態であることが好ましい。
【0134】
なお、第2分離部20において、絶縁物20a、第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bが一体形成されている態様を用いて本発明を説明してきたが、これらは別々に構成されていてもよい。
【0135】
第2分離部20の別の実施形態において、図14に示すように、第2分離部20は、第2媒体24を収納する第2媒体収納部24’を挟んで下部絶縁板21および上部絶縁板22から形成される絶縁物20aと、絶縁物20aを受容する絶縁物受容部27、第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bを有する泳動槽30とからなる。絶縁物20aにおいて、下部絶縁板21および上部絶縁板22は、それぞれ第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bにおいて第2媒体24が緩衝液と接するための第1開口部25および第2開口部26を有している。泳動槽30において、絶縁物受容部27は、絶縁物20a(特に下部絶縁板21)を隙間なく受容し得る平面を有している。
【0136】
本実施形態において、絶縁物20aおよび泳動槽30を構成する材料はそれぞれ同一であっても別であってもよい。泳動槽30は、緩衝液が充填されるという観点から防水性が高い物質からなることが好ましい。絶縁物20aと泳動槽30は固定されることが好ましいが真空吸着機構、挟固定機構、磁力固定機構および静電吸着機構等により着脱可能であることがより好ましい。さらに、泳動槽30は、絶縁物受容部27、第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bが別々に設けられてもよく、この場合、充填された緩衝液が漏出することなく第1開口部25および第2開口部26に供給されるように密着し得る形態を有していればよいので、真空吸着機構、挟固定機構、磁力固定機構および静電吸着機構等を採用することができる。
【0137】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0138】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、生体試料等の分析のための電気泳動ゲルチップの製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0140】
50 電気泳動ゲルチップ
51 支持体
52 接着層
52a チップ接着層
52b ゲル接着層
53 電気泳動ゲル
54 保護フィルム(保護膜)
55 シート状の電気泳動ゲル
55a 帯状の電気泳動ゲル
60 切断装置
61 可動ステージ(駆動手段、自動送り装置、固定器具、固定手段)
62 刃駆動部(駆動手段)
62a 刃
63 フレームおよびストッパー(固定器具、固定手段)
63a 止着具(固定器具、固定手段)
64a 粘着テープ
70 固定治具
70a 溝
100 自動化2次元電気泳動装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動のために用いる電気泳動ゲルチップおよび当該電気泳動ゲルチップの製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポストゲノムにおける研究対象としてプロテオーム解析が注目を浴びている。プロテオーム解析とは、タンパク質の構造および機能を対象とした大規模な研究である。プロテオームの解析には、通常、まず、試料に含まれるタンパク質を個々のタンパク質に分離することを行う。このとき、タンパク質を分離する手法の一つとして、二次元電気泳動が広く用いられている。
【0003】
二次元電気泳動とは、二段階の電気泳動によってタンパク質を二次元的に分離する手法である。二次元電気泳動では、例えば、等電点電気泳動(IEF:isoelctric focusing)によって、等電点に基づいてタンパク質を一次元目の方向に分離した後、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE:sodium dodecyl sulfate−polyacrylamidegel electrophoresis)によって、分子量等に基づいてタンパク質を二次元目の方向に分離する。このような二次元電気泳動は、分解能が非常に高く、数千種類以上に及ぶタンパク質を、各スポットに分離することができる。
【0004】
一般的には、一次元目電気泳動ゲルとしては、短冊状のストリップゲルが用いられる。このようなストリップゲルは、商品梱包用のパッケージから剥がして使用される。また、二次元目電気泳動ゲルとして用いられるSDS−PAGEゲルは、多くの場合、サンプルを濃縮してスタート地点を合わせるための濃縮ゲルと、サンプルを分子量の違いにより分離するための分離ゲルとから構成される。
【0005】
ここで、二次元電気泳動法を好適に実施するための方法として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載のサンプル分離装置は、板状の絶縁体である第1媒体支持体の側端面に固定された第1媒体中でサンプルを第1方向に分離するための第1方向分離器具と、第1媒体中で第1方向に分離した分離サンプルを第1方向と異なる第2方向にさらに分離するための第2媒体を収納するための絶縁物を有するサンプル分離器具と、該第1媒体支持体を第1媒体が下側になるように保持し、第1方向へのサンプル分離を行った後の第1媒体を自動的に第2媒体に密着させるための手段とを備え、該絶縁物は、第2媒体に通電する第2方向を規定する第1開口部および第2開口部を有し、第1開口部および第2開口部において第2媒体が該絶縁物の外部と接触可能なように第2媒体を収納し、第2開口部は、分離サンプルを含む第1媒体を第1方向に沿って第2媒体と接着させるための形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−64848号公報(2007年3月15日公開)
【特許文献2】特開平5−223780号公報(1993年8月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
支持体に電気泳動ゲルが固定されている電気泳動ゲルチップは、特許文献1に記載されているような、電気泳動ゲルの自動搬送を行う電気泳動装置において好適に使用することができる。そのため、このような電気泳動ゲルチップをユーザに好適に提供するための技術が求められている。特に、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップ、および、そのような電気泳動ゲルチップを好適に製造するための技術は有用である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップ、および、そのような電気泳動ゲルチップを好適に製造するための技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法は、上記課題を解決するために、絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜とを備えている電気泳動ゲルチップの製造方法であって、片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断して、該帯状の電気泳動ゲルを分離する切断工程、および該切断工程において分離した該帯状の電気泳動ゲルを、該支持体に固定する固定工程を包含していることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップを製造することができる。すなわち、上記の方法によって製造された電気泳動ゲルチップは、保護膜を備えているため、加工時、保存時、および納品時(輸送時)における、電気泳動ゲル表面に対する物理的なダメージおよびタンパク質、塩類等のコンタミの発生を防止することができ、電気泳動ゲルの保存性または輸送性を向上させることができる。
【0011】
また、上記の構成によれば、上述した電気泳動ゲルチップを好適に製造することができる。すなわち、片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断し、支持体に固定するという方法により電気泳動ゲルチップを製造することにより、例えば、幅が数mmである非常に細長い電気泳動ゲルを保護膜で覆うという困難な作業を容易に行うことができ、また、大量生産にも寄与することができる。
【0012】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルを刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して刃を相対的に移動させることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、保存性の高い電気泳動ゲルチップを好適に製造することができる。すなわち、加水分解による電気泳動ゲルの劣化を防ぐために、電気泳動ゲルが含有する水分量を低減させる場合がある。このような乾燥した電気泳動ゲルを、例えば、特許文献2のように、一度に押し切った場合、電気泳動ゲルが損傷するおそれがある。ここで、上記の構成によれば、シート状の電気泳動ゲルを刃が横断するように、シート状の電気泳動ゲルに対して刃を相対的に移動させるため、乾燥した電気泳動ゲルを好適に切断することができる。
【0014】
上記電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルから、一つの上記帯状の電気泳動ゲルを分離した後、上記刃が横断する第1方向に垂直な第2方向における、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整し、再度、上記シート状の電気泳動ゲルを上記刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して上記刃を相対的に移動させることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、シート状の電気泳動ゲルを順に送りながら切断していくことができるので、多数の帯状の電気泳動ゲルを首尾よく分離することができる。
【0016】
上記電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、自動送り装置が、第2方向における上記相対位置を調整することが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、例えば、可動ステージ等の自動送り装置によって、第2方向における刃とシート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整することにより、後述する実施例において示すように、得られる帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを抑え、高品質な電気泳動ゲルチップを製造することができる。
【0018】
上記電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとが離間した状態で、第2方向における上記相対位置を調整することが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、刃とシート状の電気泳動ゲルとが離間した状態で、第2方向における刃とシート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整するため、当該相対位置の調整時に、刃がシート状の電気泳動ゲルに触れて、シート状の電気泳動ゲルを損傷することを防止することができ、高品質な電気泳動ゲルチップを製造することができる。
【0020】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、固定器具が上記シート状の電気泳動ゲルを挟んで固定している状態で上記シート状の電気泳動ゲルを切断することが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、固定器具がシート状の電気泳動ゲルを挟んで固定している状態でシート状の電気泳動ゲルを切断することによって、後述する実施例において示すように、得られる帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを抑え、高品質な電気泳動ゲルチップを製造することができる。
【0022】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルに、粘着テープが貼付された状態で、該粘着テープごと上記シート状の電気泳動ゲルを切断するものであってもよい。
【0023】
上記の構成によれば、分離された帯状の電気泳動ゲルに切断された粘着テープが残留するため、当該粘着テープを分離された帯状の電気泳動ゲルの支持体として用いることができるため、それ以降の作業におけるハンドリング性が向上する。また、粘着テープによって、電気泳動ゲルをより好適に固定することもできる。
【0024】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法において、上記固定工程では、上記帯状の電気泳動ゲルを固定治具に設けられた溝に挿入した状態で、当該帯状の電気泳動ゲルを上記支持体に固定することが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、固定治具の溝に帯状の電気泳動ゲルを挿入し、さらに、支持体を挿入することにより、当該溝がガイドとして働き、帯状の電気泳動ゲルを支持体の適切な位置に固定することができる。
【0026】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法では、上記支持体は、板状の絶縁体であり、上記固定工程では、上記支持体の側端面に上記帯状の電気泳動ゲルを固定するものであってもよい。
【0027】
上記の構成によれば、例えば、特許文献1に記載の電気泳動装置に好適に適用することができる。
【0028】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法では、上記切断工程において分離した帯状の電気泳動ゲルの長さは、上記支持体において上記帯状の電気泳動ゲルを固定する領域の長さよりも長くなっており、上記固定工程の後、上記帯状の電気泳動ゲルにおける上記支持体からはみ出した部分を除去する除去工程をさらに包含するものであってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、予め支持体に対して長めに帯状の電気泳動ゲルを作製し、支持体に固定後に余分な部分を除去することにより、製造工程におけるバラツキを吸収し、高品質な電気泳動ゲルチップを製造することができる。
【0030】
本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造キットは、絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜とを備えている電気泳動ゲルチップの製造キットであって、片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断して、該帯状の電気泳動ゲルを分離する切断装置を備えていることを特徴としている。
【0031】
また、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記切断装置は、刃および駆動手段を備えており、該駆動手段は、上記シート状の電気泳動ゲルを該刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して該刃を相対的に移動させることが好ましい。
【0032】
また、上記電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記駆動手段は、上記シート状の電気泳動ゲルから、一つの上記帯状の電気泳動ゲルを分離した後、上記刃が横断する第1方向に垂直な第2方向における、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整し、再度、上記シート状の電気泳動ゲルを上記刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して上記刃を相対的に移動させることが好ましい。
【0033】
また、上記電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記駆動手段は、自動的に、第2方向における上記相対位置を調整することが好ましい。
【0034】
また、上記電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記駆動手段は、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとが離間させた状態で、第2方向における上記相対位置を調整することが好ましい。
【0035】
また、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記切断装置は、上記シート状の電気泳動ゲルを挟んで固定する固定手段をさらに備えていることが好ましい。
【0036】
また、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造キットでは、上記帯状の電気泳動ゲルを挿入するための溝を備えている固定治具をさらに備えていることが好ましい。
【0037】
上記の構成によれば、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法のために好適に使用することができ、本発明に係る電気泳動ゲルチップの製造方法と同等の効果を奏することができる。
【0038】
本発明に係る電気泳動ゲルチップは、絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜を備えていることを特徴としている。
【0039】
上記の構成によれば、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップを提供することができる。すなわち、上記の構成によれば、保護膜を備えているため、加工時、保存時、および納品時(輸送時)における、電気泳動ゲル表面に対する物理的なダメージおよびタンパク質、塩類等のコンタミの発生を防止することができ、電気泳動ゲルの保存性または輸送性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る電気泳動ゲルチップならびにその製造方法および製造キットによれば、保存性または輸送性が高い電気泳動ゲルチップ、および、そのような電気泳動ゲルチップを好適に製造するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の各工程を説明するの工程斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の切断工程を説明する図である。
【図4】粘着テープが貼付されたシート状の電気泳動ゲルおよび帯状の電気泳動ゲルの様子を示す斜視図である。
【図5】切断工程において、シート状の電気泳動ゲルを固定器具によって固定することの効果を示すグラフであり、(a)は、シート状の電気泳動ゲルを固定器具で固定した状態で切断したときの、分離された帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを示し、(b)は、シート状の電気泳動ゲルを固定器具で固定しない状態で切断したときの、分離された帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを示す。
【図6】切断工程において、シート状の電気泳動ゲルを自動送り装置によって自動送りすることの効果を示すグラフであり、(a)は、シート状の電気泳動ゲルを自動送り装置により自動送りしたときの、分離された帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを示し、(b)は、シート状の電気泳動ゲルを手動送りしたときの、分離された帯状の電気泳動ゲルの幅のバラツキを示す。
【図7】本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の固定工程を説明する図である。
【図8】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す模式図である。
【図9】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す断面図である。
【図10】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す断面図である。
【図11】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す上面図である。
【図12】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す断面図である。
【図13】自動化2次元電気泳動装置の要部構成を示す断面図である。
【図14】自動化2次元電気泳動装置の構成部材であるサンプル分離器具の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(電気泳動ゲルチップ)
図1は、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップ50の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、電気泳動ゲルチップ50は、支持体(チップ)51、電気泳動ゲル53、接着層52および保護フィルム(保護膜)54がこの順に積層されている。
【0043】
支持体51は、電気泳動ゲルチップ50を任意の場所に自動搬送可能にするための部材であり、電気泳動ゲルチップ50を搬送する際に搬送手段が保持するための部分である。
【0044】
支持体51は、絶縁材料によって構成されていることが好ましい。絶縁材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA;Polymethyl methacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET;polyethylene terephthalate)、ポリカーボネイト(Polycarbonate)等のプラスチック材料、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、無アルカリガラス等のガラス材料、および、アルミナ、低温同時焼成セラミック等のセラミック材料を挙げることができるがこれに限定されない。
【0045】
支持体51の形状は、電気泳動ゲル53の形状および電気泳動ゲルチップ50を利用する電気泳動装置の搬送手段に応じて適宜設計することができる。例えば、板状の支持体を用いることにより、真空吸着手段によって支持体を保持する後述するような自動化2次元電気泳動装置100において好適に使用することができる。一例を挙げれば、支持体51として、大きさ60mm×23mm、厚さ1.2mmのPMMA板を用いることができる。このような支持体51は、例えば、射出成型等の手法を用いることにより製造可能である。
【0046】
電気泳動ゲル2は、電気泳動の媒体として用いられるものであり、一般に電気泳動媒体として用いられるポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル等を用いることができる。特に、二次元電気泳動の一次元目に用いられるゲルは、等電点方向の電気泳動(一次元目の電気泳動)を完了後、等電点電気泳動とは異なる場所に搬送し、分子量方向の電気泳動(二次元目の電気泳動)を行う必要があるため、支持体51を備えた本実施形態に係る電気泳動ゲルチップ51において電気泳動ゲル2として好適に用いることができる。
【0047】
電気泳動ゲル53の形状は、電気泳動ゲルチップ50を利用する電気泳動装置の泳動槽に応じて適宜設計することができる。例えば、二次元電気泳動の一次元目に用いられるゲルとして用いる場合には、1mm以上5mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下の幅の帯状の電気泳動ゲルとして構成することができる。長手方向の長さは特に限定されないが、例えば、50mm以上240mm以下の範囲で適宜設定することができる。一例を挙げれば、長手方向52mm×短手方向(幅)1.2mmの帯状の電気泳動ゲルとすることができる。
【0048】
電気泳動ゲル53を二次元電気泳動の一次元目に用いられるゲルとして用いる場合、電気泳動ゲル53としては、例えば、固定化pH勾配(IPG;Immobilized pH Gradient)ゲルが好適である。IPGゲルは、例えば、ゲル骨格を形成するアクリルアミド/ビスアクリルアミド混合溶液(例えば、混合比:37.5/1)と、ゲル骨格内のpHを規定する数種類のアクリルアミドバッファーと、重合開始剤である過硫酸アンモニウム(APS、Ammonium persulfate)と、重合促進剤であるN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED;N,N,N’,N’−Tetramethylethylenediamine)と、グリセロール(Glycerol)とを用いて製造することができる。
【0049】
接着層52は、支持体51と電気泳動ゲル53とを接着するものである。このような接着層52を用いることにより、支持体51から電気泳動ゲル53が剥離することを抑え、電気泳動ゲルチップ50の信頼性を向上することができる。
【0050】
接着層52としては、例えば、支持体51に被着された表面コート剤であり得る。表面コート剤としては、アクリルアミド誘導体系コート剤、アガロース誘導体系コート剤、PVDC等が好適であるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、好ましくは、図1に示すように、接着層52は、チップ接着層(支持体接着層)52aおよびゲル接着層52bから構成することができる。
【0052】
ゲル接着層52bは、親水性を有する面を備えており、該親水性の面を介して電気泳動ゲル53と接着するものである。ゲル接着層としては、例えば、市販されているゲルボンドフィルム、酸素プラズマ処理または親水性コート剤等のコーティングを施したPETフィルム等を用いることができる。チップ接着層52aは、支持体51とゲル接着層52bとを接着するものであり、絶縁性を有し、耐化学薬品性に優れる素材が好ましく、例えば、接着剤、両面テープ等を用いることができる。また、別の実施形態として、ゲル接着層52bとチップ接着層52aとを同一の部材としても構わない。この場合、PET等の片面にゲル接着層52b、もう一方の面にチップ接着層52aを設ければよい。
【0053】
そして、接着層52を、チップ接着層52aおよびゲル接着層52bから構成することにより、支持体51からの電気泳動ゲル53の剥離をさらに好適に抑制することができ、電気泳動分析の再現性向上が可能となる。
【0054】
保護フィルム54は、電気泳動ゲル53を保護するためのものである。すなわち、従来技術に係るゲルチップでは、電気泳動ゲルが露出する構成となっているため、加工時、保存時、および納品時(輸送時)に、電気泳動ゲル表面に対して、物理的なダメージおよびタンパク質、塩類等のコンタミが生じるおそれがある。本実施形態に係る電気泳動ゲルチップ51は、電気泳動ゲル53の表面を覆う保護フィルム54を備えているため、電気泳動ゲル53に対する物理的なダメージおよびコンタミによりゲル表面の汚染を防止することが可能となる。なお、電気泳動ゲルチップ51の使用時には、保護フィルム54は電気泳動ゲル53から剥離される。
【0055】
保護フィルム54は、例えば、樹脂フィルムを好適に用いることができる。特に限定されないが、樹脂フィルムとしては、市販されているPETフィルムを用いることができる。なお、保護フィルム54における電気泳動ゲル53と接する側の表面に、適切な表面コート、例えば、電気泳動ゲル53に対して易接着/易剥離となるような表面コートを設けることが好ましい。また、保護フィルムとしては、透明のフィルムを設けることが好ましい。
【0056】
(電気泳動ゲルチップの製造方法)
以下、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法および当該製造方法に好適に用いることができる製造キットについて説明する。
【0057】
図2は、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の各工程を説明するの工程斜視図である。
【0058】
まず、図2(a)に示すように、片面にゲル接着層52bが、他方の面に保護フィルム54が設けられたシート状の電気泳動ゲル53を形成する(電気泳動ゲルシート形成工程)。このようなシート状の電気泳動ゲル53は、例えば、ゲル接着層52b上にシート状の電気泳動ゲル53を形成し、その後に保護フィルム54を貼付することにより形成することができる。
【0059】
一例において、電気泳動ゲル53としてIPGゲルを用いる場合の手順について詳細に説明する。まず、アクリルアミド/ビスアクリルアミド混合溶液(混合比:37.5/1)、アクリルアミド誘導体4種(酸解離定数:3.6、6.2、7.0、8.5)、過硫酸アンモニウム(APS;Ammonium persulfate)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED;N,N,N’,N’−Tetramethylethylenediamine)、グリセロールおよび純水を用いて、所望の混合比で調整した酸性側モノマー溶液および塩基性側モノマー溶液を調製する(例えば、P.G.Righetti:Immobilized pH gradients:theory and methodology,Elsevier,Amsterdam,1990を参照のこと)。
【0060】
そして、調製した酸性側モノマー溶液および塩基性側モノマー溶液をミキサーを用いて混合し、得られた混合溶液を、シート状のゲル接着層52b(例えば、ゲルボンドフィルム)が配置されたIPGゲル作製器具に充填し、ゲル化する。電気泳動ゲル53の長さは、例えば、50mm〜240mmまで任意に設計することができる。
【0061】
その後、洗浄、乾燥を行い、電気泳動ゲル53におけるゲル接着層52bとは反対側の面に、保護フィルム54を貼り付ける。保護フィルム54の貼り付けは、気泡、ダスト等の混入を防ぐように、ローラー等を用いて、注意深く行うことが好ましい。
【0062】
次に、図2(b)に示すように、ゲル接着層52b上にチップ接着層52aを設ける(チップ接着層形成工程)。例えば、ゲル接着層52b上に接着剤を塗布してもよいし、両面テープを貼付してもよい。両面テープを貼付する場合、ローラー等の器具を用いて、気泡、ダストが混入しないように注意深く行うことが好ましい。以上により、片面に保護フィルム54が設けられたシート状の電気泳動ゲル55が形成される。
【0063】
なお、接着層52を一つの部材から構成する場合には、チップ接着層形成工程を省略してもよい。また、接着層52を支持体51に被着された表面コート剤とする場合には、上述したチップ接着層形成工程の代わりに、支持体51に表面コートを行う接着層形成工程を行ってもよい。すなわち、接着層52、ゲル接着層52bおよびチップ接着層52aの形成は、後述する固定工程の前に適宜行えばよく、上述した構成に限定されない。
【0064】
(切断工程)
続いて、図2(c)に示すように、シート状の電気泳動ゲル55を切断して、帯状の電気泳動ゲル(ゲルストリップ)55aを分離する(切断工程)。このように、片面が保護フィルム54に覆われているシート状の電気泳動ゲル55を切断することにより、例えば、幅が数mmである非常に細長い電気泳動ゲル53を保護フィルム54で覆うという困難な作業を容易に行うことができ、また、大量生産にも寄与することができる。
【0065】
一実施形態において、切断工程は、図3に示すような切断装置60を用いて実行することができる。図3は、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の切断工程を説明する図であり、(a)は、切断工程において用いる切断装置60の概略構成を示す斜視図であり、(b)は、切断装置60の側面図であり、(c)は、ゲルを切断中の切断装置60の様子を示す図である。
【0066】
図3に示すように、切断装置60は、可動ステージ(駆動手段、自動送り装置、固定器具、固定手段)61、刃駆動部(駆動手段)62、刃62a、フレームおよびストッパー(固定器具、固定手段)63ならびに止着具(固定器具、固定手段)63aを備えている。
【0067】
可動ステージ61は、シート状の電気泳動ゲル55を載置する台であり、刃62aを、シート状の電気泳動ゲル55に対して相対的に図中Y方向(第1方向)およびX方向(第2方向)に駆動する駆動手段である。刃62aは、シート状の電気泳動ゲル55を切断するための切断刃である。刃駆動部62は、刃62aを図3中Z方向に駆動する。フレームおよびストッパー63ならびに止着具63aは、可動ステージ61とともに、シート状の電気泳動ゲル55を挟んで固定する固定器具である。なお、可動ステージ61が、刃62aをシート状の電気泳動ゲル55に対して相対的に駆動するのではなく、刃駆動部62が、刃62aをシート状の電気泳動ゲル55に対して相対的に駆動するように構成してもよい。
【0068】
そして、図3(c)に示すように、シート状の電気泳動ゲル55は、フレームおよびストッパー63ならびに止着具63aによって可動ステージ61に固定され、刃62aが可動ステージ61によってシート状の電気泳動ゲル55を横断するように移動し、シート状の電気泳動ゲル55を短冊状に切断して、帯状の電気泳動ゲル55aを分離する。このように、刃62aをシート状の電気泳動ゲル55を横断させて切断することにより、加水分解による電気泳動ゲル53の劣化を防ぐために、電気泳動ゲル53が含有する水分量が低減されていた(乾燥されていた)場合であっても、好適に切断を行うことができる。
【0069】
なお、図3(b)に示すように、シート状の電気泳動ゲル55は、フレームおよびストッパー63と可動ステージ61との間に挟まれ、止着具63aによって強固に固定される。フレームおよびストッパー63のゲル対向面(ストッパー)は、シート状の電気泳動ゲル55および可動ステージ61に対して高い摩擦力を有する素材によって構成されていることが好ましい。例えば、フレームおよびストッパー63のゲル対向面(ストッパー)の素材としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS;Polydimethylsiloxane)、シリコーン樹脂等が好適である。
【0070】
このようにシート状の電気泳動ゲル55を固定することにより、後述する実施例に示すように、得られる帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを抑えることができる。
【0071】
次に、切断方法について詳細に説明する。まず、可動ステージ61に固定されたシート状の電気泳動ゲル55は、可動ステージ61のX方向、Y方向の駆動により、シート状の電気泳動ゲル55のシート切断線(図2(c)における点線)の第一の切断開始位置に移動する(第1の切断工程)。次に、刃駆動部62が、刃62aをシート状の電気泳動ゲル55表面に接する位置までZ方向に下げた後、一回に切断する深さまでさらに下げる(第2の切断工程)。一回の切断深さは、シート状の電気泳動ゲル55が硬質である場合と軟質である場合とで異なるが、例えば、10μm以上50μm以下に設定することが好ましい。一例において、一回の切断深さは、20μmに設定することができる。
【0072】
その後、可動ステージ61のY方向の駆動により、シート切断線に沿ってシート状の電気泳動ゲル55を切断する(第3の切断工程)。最後に、刃駆動部62が、刃62aを、シート状の電気泳動ゲル55ならびにフレームおよびストッパー63と干渉しない高さまでZ方向に上げ、第一の切断開始位置に移動後、帯状の電気泳動ゲル55aの短手方向の幅X方向に移動する(第二の切断開始場所に移動する。第4の可動工程)。そして、第1〜第4の切断工程を繰り返し、シート状の電気泳動ゲル55を切断する。
【0073】
このように、切断工程では、シート状の電気泳動ゲル55から、一つの帯状の電気泳動ゲル55aを分離した後、X方向における刃62aとシート状の電気泳動ゲル55との相対位置を調整し、再度、シート状の電気泳動ゲル55を刃62aが横断するように、シート状の電気泳動ゲル55に対して刃62aを相対的に移動させることが好ましい。これにより、シート状の電気泳動ゲル55を順に送りながら切断していくことができるので、多数の帯状の電気泳動ゲル55aを首尾よく分離することができる。
【0074】
また、切断工程では、自動送り装置が、X方向における相対位置を調整することが好ましい。これにより、後述する実施例において示すように、得られる帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを抑えることができる。
【0075】
また、切断工程では、刃62aとシート状の電気泳動ゲル55とが離間した状態で、X方向における相対位置を調整することが好ましい。これにより、当該相対位置の調整時に、刃62aがシート状の電気泳動ゲル55に触れて、シート状の電気泳動ゲル55を損傷することを防止することができる。
【0076】
なお、一実施形態において、切断工程は、図4に示すように、シート状の電気泳動ゲル55に粘着テープ64a(例えば、カプトンテープ)を貼付した状態で、粘着テープ64aごとシート状の電気泳動ゲル55を切断するものであってもよい。
【0077】
図4は、粘着テープ64aが貼付されたシート状の電気泳動ゲル55および帯状の電気泳動ゲル55aの様子を示す斜視図である。図4に示すように、粘着テープ64aは、シート状の電気泳動ゲル55における、刃62aが横断する方向(Y方向)の両端に貼付される。そして、切断されると、粘着テープ64aは、帯状の電気泳動ゲル55aの長手方向の両端に残留する。このとき、粘着テープ64aを分離された帯状の電気泳動ゲル55aの搬送のための支持体として用いることができるため、それ以降の作業におけるハンドリング性が向上する。また、粘着テープ64aによって、切断工程において、シート状の電気泳動ゲル55をより好適に固定することもできる。
【0078】
以下、切断工程における各条件による効果について実証した。
【0079】
(固定に関する実施例)
図5は、シート状の電気泳動ゲル55を固定器具(フレームおよびストッパー63ならびに止着具63a)によって固定することの効果を示すグラフであり、(a)は、シート状の電気泳動ゲル55を固定器具で固定した状態で切断したときの、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを示し、(b)は、シート状の電気泳動ゲル55を固定器具で固定しない状態で切断したときの、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを示す。
【0080】
図5(a)および(b)を比較すれば明らかなように、固定器具を用いてシート状の電気泳動ゲル55を固定することにより、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを抑えることができた。
【0081】
(自動送りに関する実施例)
図6は、シート状の電気泳動ゲル55を自動送り装置(可動ステージ61)によって自動送りする(X方向に移動させる)ことの効果を示すグラフであり、(a)は、シート状の電気泳動ゲル55を自動送り装置により自動送りしたときの、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを示し、(b)は、シート状の電気泳動ゲル55を手動送りしたときの、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを示す。
【0082】
図5(a)および(b)を比較すれば明らかなように、固定器具を用いてシート状の電気泳動ゲル55を固定することにより、分離された帯状の電気泳動ゲル55aの幅のバラツキを5%以下に抑えることができた(長手方向52mm×短手方向1.2mmの帯状の電気泳動ゲル55aに対し、切断バラツキが1.2mm±0.06mm以内)。
【0083】
(固定工程)
続いて、図2(d)に示すように、切断工程において得られた帯状の電気泳動ゲル55aを、支持体51に固定することにより、電気泳動ゲルチップ50を製造する(固定工程)。上述したように、帯状の電気泳動ゲル55a(または支持体51)には接着層が設けられているため、帯状の電気泳動ゲル55aに対して支持体51を押圧することにより、帯状の電気泳動ゲル55aを、支持体51に固定することができる。
【0084】
ただし、帯状の電気泳動ゲル55aを支持体51に固定するとき、帯状の電気泳動ゲル55aが細長いため、折れ曲がるなどして、適切に固定することができない場合がある。そのため、固定工程では、図7(a)に示すような固定治具70を用いて、帯状の電気泳動ゲル55aを支持体51に固定することが好ましい。
【0085】
図7は、本発明の一実施形態に係る電気泳動ゲルチップの製造方法の固定工程を説明する図である。図7(a)は、固定治具70の概略構成を示す斜視図である。図7(a)に示すように固定治具70には、帯状の電気泳動ゲル55aが挿入可能な幅Dを有する溝70aが設けられている。溝70aは、一例において、幅1.2mm深さ3mmとすることができる。
【0086】
まず、図7(b)に示すように、固定治具70の溝70aに、帯状の電気泳動ゲル55aを挿入する。そして、図7(c)に示すように、固定治具70の溝70aに、帯状の電気泳動ゲル55aを挿入した状態で、さらに、溝70aに支持体51を挿入して押し込むことにより、帯状の電気泳動ゲル55aを支持体51に固定することができる。このとき、溝70aがガイドとして働くので、帯状の電気泳動ゲル55aを支持体51の適切な位置に固定することができる。
【0087】
なお、図7(d)に示すように、帯状の電気泳動ゲル55aが支持体51からはみ出している場合、はみ出し部分を切断する。以上により、図7(e)に示すように、電気泳動ゲルチップ50を製造することができる。
【0088】
なお、図7(d)に示すように、予め、支持体51に対して長めに帯状の電気泳動ゲル55aを作製し、支持体51に固定後に余分な部分を除去するようにすることにより、製造工程におけるバラツキ(例えば、帯状の電気泳動ゲル55aの長さのバラツキ)を吸収し、高品質な電気泳動ゲルチップ50を製造することができる。
【0089】
(2次元電気泳動)
次に、本発明に係る電気泳動ゲルチップ50の使用方法について説明する。一実施形態において、本発明に係る電気泳動ゲルチップ50は、例えば、以下のような自動化2次元電気泳動装置100に適用することができる。但し、電気泳動ゲルチップ50の用途は、自動化2次元電気泳動装置100に適用される場合に限定されず、ゲルの運搬を伴う電気泳動法の実施一般に好適に適用することができる。
【0090】
図8(a)は自動化2次元電気泳動装置100の要部構成を示す斜視図である。図8(b)は、電気泳動ゲルチップ50から保護フィルム54を剥離した電気泳動ゲルチップ56を、保持手段3のアーム31に結合する構成を示す。図8(c)および(d)は、自動化2次元電気泳動装置100において用いられる第2分離部(サンプル分離器具)20の構成を示す断面図および上面図である。
【0091】
すなわち、電気泳動ゲルチップ50は、まず、保護フィルム54を剥離した後に、自動化2次元電気泳動装置100(のアーム31)にセットされる。
【0092】
本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100は、サンプルの2次元目分離を行う第2分離部(サンプル分離器具)20を固定する固定手段1、1次元目の分離を行う電気泳動ゲル53が固定された支持体51を保持するアーム31を備えた保持手段3、固定手段1および/または保持手段3を移動して双方の相対位置を変更させる駆動手段4(41および42)を有している。
【0093】
自動化2次元電気泳動装置100では、第1分離部(示さず)にてサンプルは第1方向(図中Y方向)に分離され、次いで、第2分離部20の第2開口部26へ搬送されかつ接着された後に第2分離部20にて第2方向(図中X方向)に分離される。
【0094】
第2開口部26の形状について、図8(c)および(d)に示すように、第2緩衝液槽28bにおいて上部絶縁板22を貫く開口の幅は、対応する下部絶縁板21の溝幅より広い。この差分によって、電気泳動ゲル53と第2媒体24とを密着させ得、その結果、1次元目分離を終えた電気泳動ゲル53中のサンプルの2次元目分離を首尾よく行い得る。
【0095】
第2媒体24に分離サンプルを含む電気泳動ゲル53を接着させるために、第2媒体24を覆う絶縁物20aは電気泳動ゲル53と第2媒体24とを密着させる部位を有していなければならない。このような部位は第2開口部26であっても、第1開口部25と第2開口部26との間にさらなる開口部(第3開口部)26’が設けられてもよい。第1媒体供給口は、分離サンプルを含む電気泳動ゲル53を、第1方向と垂直な面で第2媒体24に接着させるに適切な大きさおよび形状を有している。
【0096】
第2分離部20が第2媒体24を内包している場合、第1媒体供給部において電気泳動ゲル53と第2媒体24とを密着させるために、第2開口部26から第2媒体24が突出していることが好ましく、密着度を増すためには突出した第2媒体部分に凹凸がないことがより好ましい。なお、第2開口部26から第2媒体24が突出していない場合は、第2開口部26に電気泳動ゲル53と第2媒体24とを密着させるための接着部材(図示せず)が設けられていればよい。好ましい接着部材としては、アガロース、低粘度(1〜3%程度)のアクリルアミドなどのゲル、グリセリン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロースなどの高粘調液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
第1方向(図中Y方向)への分離と第2方向(図中X方向)への分離を規定するパラメータは同じであってもよいが、分離性能を向上させるためにはそれぞれ異なることが好ましい。これら2方向への分離を規定するパラメータとしては、タンパク質の等電点、分子量、単位サイズあたりの表面電荷(ゾーン電気泳動)、ミセルへの分配係数(ミセル動電クロマトグラフィー)、固定相−移動相への分配係数(電気クロマトグラフィー)、相互作用物質との親和定数(親和結合電気泳動)などが挙げられるが、通常の2次元電気泳動では、第1方向への分離が等電点に基づいて、第2方向への分離が分子量に基づいて行われる。
【0098】
図8(a)に示すように、自動化2次元電気泳動装置100においては、駆動手段4は垂直方向用駆動手段41および平行方向用駆動手段42からなり、具体的には、保持手段3(支持アーム31)は垂直方向用駆動手段41の凹部(保持手段連結部)41’を介して垂直方向用駆動手段41によってZ軸方向へ移動可能に保持されている。また、垂直方向用駆動手段41は、平行方向用駆動手段42の凹部(Z軸ステージ連結部)42’を介して平行方向用駆動手段42によってX軸方向へ移動可能に保持されている。よって、固定手段1および/または保持手段3を、第1方向および第2方向からなる平面に対して、垂直方向用駆動手段41によって垂直方向に、平行方向用駆動手段42によって平行方向に移動し得る。
【0099】
用語「サンプル」は当該分野において標本、調製物と同義で用いられ、本明細書中で使用される場合、「生物学的サンプル」またはその等価物が意図される。「生物学的サンプル」は、供給源としての生物材料(例えば、個体、体液、細胞株、組織培養物もしくは組織切片)から得られる、任意の調製物が意図される。生物学的サンプルとしては、体液(例えば、血液、唾液、歯垢、血清、血漿、尿、滑液、および随液)および組織供給源が挙げられる。好ましい生物学的サンプルは、被験体サンプルである。好ましい被験体サンプルは、被験体から得た皮膚病変部、喀痰、咽頭粘液、鼻腔粘液、膿、または分泌物である。本明細書中で使用される場合、用語「組織サンプル」は、組織供給源より得られた生物学的サンプルが意図される。哺乳動物から組織生検および体液を得るための方法は当該分野で周知である。本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」としては、上記生物学的サンプルおよび上記組織サンプル以外に、上記生物学的サンプルおよび上記組織サンプルより抽出したタンパク質サンプル、ゲノムDNAサンプルおよび/または総RNAサンプルも挙げられる。
【0100】
2次元電気泳動について、1次元目をゲル等電点電気泳動にて、2次元目をSDS−PAGEにて行う場合を例に挙げて以下に説明するが、本発明はこの態様に限定されない。
【0101】
自動化2次元電気泳動装置100には、全工程を自動化するために、第1媒体電圧印加手段5および第2媒体電圧印加手段6をそれぞれ第1分離部10および第2分離部20と接続するための配線手段7・8が備えられており、配線手段7はその先端にて第1分離槽11d内に設けられる第3電極14(1対の陽極および陰極)を、配線手段8はその先端にて第1緩衝液槽28a内および第2緩衝液槽28b内にそれぞれ設けられる第1電極29aおよび第2電極29bを有している(図9を参照のこと)。
【0102】
図9は、本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の固定手段1およびその周辺に配置されている部材の断面図を示す。図9において左方から右方に向けて2次元電気泳動が実行される。
【0103】
本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の固定手段1上には、サンプルの1次元目分離を行う第1分離部10とサンプルの2次元目分離を行う第2分離部(サンプル分離器具)20とが真空吸着によって固定されている。第1分離部10には複数の槽が設けられており、そのうちの1つには電極(第3電極)14が設けられている。第2分離部20には2つの槽(第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28b)が設けられており、それぞれに電極(第1電極29aおよび第2電極29b)が設けられている。
【0104】
支持体51は本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の保持手段3(図示せず)の一部であるアーム31によって保持される。アーム31は本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の駆動手段4によって、図中に示すようにX方向および/またはZ方向に移動可能である。
【0105】
アーム31は真空吸着によって電気泳動ゲルチップ56を結合した後、駆動手段4によって図9中の矢印2の方向へ移動される。電気泳動ゲル53は電気泳動ゲルチップ56が駆動手段4によって移動されることにより、第1分離部10に設けられた各槽において所望の処理が施され、引き続き第2分離部20へ搬送される。
【0106】
なお、駆動手段4によるアーム31の移動は、以下のように行われる。平行方向用駆動手段42がアーム31を垂直方向用駆動手段41とともに第1媒体配置槽11aの所望のX位置まで駆動し、次いで駆動手段41がアーム31を所望のZ位置まで下降させる。続いて、第1媒体配置槽11aに配置した電気泳動ゲルチップ56を、制御手段によりアーム31への吸着を制御することにより、駆動手段4により電気泳動ゲル53を移動させることが可能になる。アーム31への吸着の制御は、例えば電磁弁を用いれば自動制御され得る。
【0107】
電気泳動ゲル53は、その幅や長さに比べて非常に薄い形状を有している。よって、ゲルの表裏、pH勾配の方向の識別が困難であるだけでなく、反りや捩れが発生しやすく、形状を一定に保つことが困難である。このことは電気泳動結果の再現性が悪い要因となり得る。さらに、電気泳動の各工程での電気泳動ゲル53の操作もまた容易ではないので、電気泳動ゲル53を移動する際の位置精度を向上させることは困難である。このような不具合を克服して電気泳動ゲル53を自動装置にて安定的に保持しかつ操作するために、本発明者らは、電気泳動ゲル53を支持体51に固定して用いた。
【0108】
図9中の第1分離部10および第2分離部20の構成を、図10および図11により詳細に示す。図10は、サンプルの1次元目分離を行う第1分離部10とサンプルの2次元目分離を行う第2分離部20とが固定された固定手段1の断面図を示し、図11は、その上面図を示す。
【0109】
図10に示すように、本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100の固定手段1上には、サンプルの1次元目分離を行う第1分離部10とサンプルの2次元目分離を行う第2分離部20とが固定されている。第1分離部10には複数の試薬槽11(11a〜11d)および12(12a〜12d)が設けられており、第2分離部20には2つの槽(第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28b)が設けられている。なお、図9において、第1分離部10には4つの槽からなる試薬槽11および7つの槽からなる試薬槽12を用いているが、図9〜6では、要部構成の説明を簡略化するために、第1分離部10が4つの槽からなる試薬槽11および4つの槽からなる試薬槽12を有する構成を用いている。
【0110】
第1分離部10では、サンプルを電気泳動ゲル53に導入する工程、電気泳動ゲル53を膨潤させる工程、電気泳動ゲル53に電圧を印加してサンプルを第1方向に分離する工程、電気泳動ゲル53中の分離サンプルを染色する工程、第2分離部20での環境に平衡化する工程が行われる。第1分離部10は、電気泳動ゲル53をこのように処理するに好ましい形状を有している。電気泳動ゲル53へのサンプルの添加と第1媒体の膨潤とを別々に行うことにより、膨潤速度を向上させることができる。
【0111】
また上記染色工程は、従来通りサンプルの第1方向分離前または第2方向分離後に行われてもよいが、染色操作が煩雑でありかつ時間を要し、自動化を試みることが非常に困難であるので、第1方向へのサンプル分離後でありかつ第2方向へのサンプル分離の前に染色を行われるサンプル中のタンパク質(またはDNA)と蛍光物質とを結合させることが好ましい。サンプル中のタンパク質(またはDNA)と蛍光物質との結合様式としては、共有結合、イオン結合、配位結合、インターカレートなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
第1分離部10は、単一の絶縁体に溝(試薬槽)11・12が設けられた構成を有している。第1試薬槽11は、1次元目分離を行うまでの工程に必要な試薬を格納するためのものであり、第2試薬槽12は、1次元目分離後で2次元目分離前に必要な試薬を格納するためのものである。具体的には、第1試薬槽11は、第1媒体配置槽11a、サンプル槽11b、膨潤槽11c、第1分離槽11dからなり、サンプル槽11bはサンプル導入部13を有している。第2試薬槽12は、第1平衡化槽12a、染色槽12b、洗浄槽12c、第2平衡化槽12dからなる。第1分離槽11dは、電気泳動ゲル53での1次元目分離が行われる部位であり、1次元目分離に必要な緩衝液を充填される。ただし、膨潤槽11c内に格納される試薬が1次元目分離に必要な緩衝液を含む場合は、第1分離槽11d内に1次元目分離に必要な緩衝液を充填しなくてもよい。第1分離槽11dでは、第1媒体電圧印加手段5により電圧を印加されることにより、電気泳動ゲル53中のサンプルが分離される。第1平衡化槽12aは、第1方向分離に用いた緩衝液を置換させて、第1方向分離後に行う染色の効率を上げるための緩衝液を格納するために設けられることが好ましい。洗浄槽12cは、蛍光色素を格納した染色槽12bにて付着した過剰な蛍光色素を洗浄する緩衝液を格納するために設けられることが好ましい。第2平衡化槽12dは、第2方向分離を行うために好ましい試薬が格納されており、例えば、電気泳動ゲル53中のタンパク質を還元する試薬、該タンパク質をSDS化する試薬が格納されている。また、第2方向分離の方法に応じて、緩衝液、界面活性剤、酵素、相互作用物質などが格納されてもよい。
【0113】
第2媒体24において、電気泳動ゲル53中で第1方向に分離した分離サンプルが、第1方向と異なる第2方向にさらに分離される。この第2方向へのサンプル分離を実行するために、第2分離部20では、第1方向に分離したサンプルを含む電気泳動ゲル53を第2媒体24に密着させる工程;第2媒体24に電圧を印加してサンプルを第2方向に分離する工程が行われる。自動化2次元電気泳動装置100においては、第2方向への分離中のサンプルを検出する工程もまた行われる。
【0114】
第2分離部20は、下部絶縁板21と上部絶縁板22とを重ね合わせた絶縁部20aに、上部絶縁部22を貫いて下部絶縁部に設けられた2つの溝(第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28b)を有している。また、下部絶縁板21には、上部絶縁板22との間に第2媒体24を覆いかつ収納するための溝(第2媒体収納部)24’が設けられている。第2媒体収納部24’に収納された第2媒体24(図示せず)は下部絶縁板21および上部絶縁板22からなる絶縁部20aに覆われ、第1開口部25および第2開口部26において絶縁部20aの外部と接触可能である。
【0115】
第1開口部25および第2開口部26は、第2分離部20に設けられた第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bにそれぞれ面している。第2方向へのサンプル分離を実行するために、第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bには、第2媒体収納部24’に収納された第2媒体24と第1開口部25および第2開口部26を介して接する第1緩衝液および第2緩衝液がそれぞれ充填される。第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bには第1電極29aおよび第2電極29bが設けられており、第1電極29aおよび第2電極29bを介して第2媒体電圧印加手段6によって第2媒体24に電圧が印加されると、第1開口部25から第2開口部26に向かって電流が流れるとともにサンプルが第2開口部26から第1開口部25に向かって展開/分離される。
【0116】
自動化2次元電気泳動装置100は、2次元電気泳動に必要なサンプル、試薬、分離媒体を所定の位置にセットした後に、上述した各手段を適切に制御しかつ全工程を自動にて実行させるための制御手段を有している。固定手段1または保持手段3の相対位置を検出するための位置センサなどからの情報を制御手段に入力して、制御手段は、自動化を首尾よく行うために、固定手段1、保持手段3(アーム31)、駆動手段4、第1媒体電圧印加手段5、第2媒体電圧印加手段6、第1配線手段7、第2配線手段8の制御信号を出力する。本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100が有する制御手段は、好ましくは、種々の言語を用いて作製されかつROMおよび/またはRAMなどの記録媒体に格納されたプログラムコードを実行するCPUなどの演算手段であり得る。
【0117】
制御を開始することにより駆動手段4が保持手段3を移動(搬送)する。電気泳動ゲルチップ56は、保持手段3の一部であるアーム31に保持されているので、電気泳動ゲル53を固定化した電気泳動ゲルチップ56は、制御手段により駆動される駆動手段4によって間接的に移動(搬送)されて所望の処理を以下のように施される。
【0118】
第1媒体配置槽11aに配置された電気泳動ゲルチップ56がサンプル槽11bまで搬送される。サンプルが電気泳動ゲル53に吸収されるまで電気泳動ゲルチップ56はサンプル槽11b内に維持されている。サンプル吸収に必要な時間は、制御手段の格納部に記録されている。次いで、電気泳動ゲルチップ56は、膨潤槽11cまで搬送され、電気泳動ゲル53が膨潤するまで膨潤槽11c内に維持され、必要に応じて微小振盪される。電気泳動ゲル53が膨潤するに必要な時間および微小振盪動作に関する情報もまた、制御手段の格納部に記録されている。電気泳動ゲルチップ56上で膨潤した電気泳動ゲル53は第1分離槽11dまで搬送され、第1分離槽11d内の第3電極14間に配置される。ここで、第1媒体電圧印加手段5によって電気泳動ゲル53に電圧が印加されて、サンプルが電気泳動ゲル53中にて第1方向に分離される。サンプル分離に必要な時間および必要な電圧に関する情報もまた、制御手段の格納部に記録されている。上述した各情報は、制御手段の格納部に記録されたプログラムによって、用いる電気泳動ゲル53の種類、サンプルの種類、各試薬の種類に従って適宜選定かつ実行される。
【0119】
電気泳動ゲル53中にて第1方向への分離が終了した後、電気泳動ゲル53は、第1平衡化槽12aまで搬送され、必要に応じて微小振盪されることにより、引き続く染色が首尾よく行われるように平衡化される。次いで、平衡化後の電気泳動ゲル53は染色槽12bまで搬送され、必要に応じて微小振盪されて、電気泳動ゲル53中のサンプルが染色される。染色後の電気泳動ゲル53は洗浄槽12cまで搬送され、微小振盪されることにより過剰な色素が適宜洗浄される。次いで、脱色後の電気泳動ゲル53は、第2媒体中での第2方向への分離を首尾よく行うために、第2平衡化槽12dまで搬送され、必要に応じて微小振盪されることにより、引き続く第2媒体中での第2方向への分離が首尾よく行われるように平衡化される。平衡化後の電気泳動ゲル53は第2媒体24の第1媒体供給部26まで搬送され、第2媒体24に密着される。
【0120】
電気泳動ゲル53が第2媒体24に密着された後に第2媒体電圧印加手段6によって第2媒体24に電圧が印加されることにより、サンプルが第2媒体24中にて第2方向に分離される。リアルタイムモニタリングを行う場合は、この第2方向への分離中に検出手段(図示せず)を介して行えばよい。なお、試薬槽12a〜12dおよび第2媒体24での分離において必要な時間などの情報もまた、制御手段の格納部に記録されている。上述した各情報は、制御手段の格納部に記録されたプログラムによって、用いる電気泳動ゲル53および第2媒体24の種類、サンプルの種類、各試薬の種類に従って適宜選定かつ実行される。
【0121】
このように自動化2次元電気泳動装置100において、制御手段による上述したような制御が実行されることにより、2次元電気泳動の工程を全自動にて行い得る。また、自動化2次元電気泳動装置100が、上述したような制御が実行する制御手段を有することにより、種々のプロトコルの選定および/または導入を容易に行って、サンプル分離性能を追求することができる。また、2次元電気泳動の電圧印加プログラムをコンピュータにてフィードバック制御するための2次元用高電圧印加制御システムを導入し、自動ステージと連携して制御することができる。
【0122】
なお、第2媒体24を第2媒体収納部24’にて作製しても、別途作製した第2媒体24を移動して第2媒体収納部24’に固定してもよい。第2分離部20にて第2媒体24を作製しない場合は、第2媒体収納部24’は溝である必要はなく、その場合、第2媒体24の厚みと等しいスペーサ(示さず)を下部絶縁板21の第2媒体24を固定する部位を囲むように配置し、スペーサを介して下部絶縁板21と上部絶縁板22とを接着すればよい。
【0123】
第1開口部25および第2開口部26においてのみ第2媒体24が緩衝液と接していることが好ましいので、第2媒体24を覆う絶縁物20aは防水性が高い物質からなることが好ましい。また、リアルタイムモニタリングなどのように第2媒体24を絶縁物20aから取り外すことなくサンプルを検出するためには、絶縁物20aは光透過性の高い物質からなることが好ましい。このような特性を兼ね備えた物質としては、ガラス、樹脂が挙げられ、樹脂材料としてはPMMA、PDMS、COP、ポリカーボネート、ポリスチレン、PET、塩ビなどが挙げられ、重量や操作性、生産性の観点からアクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)が好ましい。
【0124】
自動化2次元電気泳動装置100においては、電気泳動ゲルチップ56が順次移動されながら、種々の工程が実行される。よって、電気泳動ゲルチップ56の3次元での位置精度が重要である。この場合、電気泳動ゲルチップ56が堅固に固定されるだけでなく、相対的に移動する第1分離部10および第2分離部20もまた堅固に固定される必要がある。
【0125】
第1分離部10、第2分離部20および電気泳動ゲルチップ56を、サンプルごとに交換して用いることを考慮すると、これらの固定化は着脱可能であることが好ましい。第1分離部10、第2分離部20および電気泳動ゲルチップ56を、固定手段1および保持手段3に固定するための機構としては、上述したような真空吸着機構以外に、挟固定機構、磁力固定機構および静電吸着機構が挙げられるが、これらに限定されない。また、真空吸着機構を採用する場合は、真空吸着プレートを介して固定することが好ましい。
【0126】
なお、第1分離部10および第2分離部20を透明なPMMAで作製する場合、サンプルの蛍光検出の際に励起光が第1分離部10および第2分離部20の下のステージ(固定手段)1にまで照射される。ステージ(固定手段)1に凹凸がある場合は励起光および/または蛍光波長が不均一に反射することにより検出時のバックグラウンドが上がり、首尾よい検出が妨げられてしまう。よって、真空吸着プレートは、反射の少ない色調であること、凹凸のない平面に処理してあること、真空吸着のために設ける吸引穴を第2分離部20の検出部直下以外の部位に設けることが好ましい。
【0127】
第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bにそれぞれ設けられる第1電極29aおよび第2電極29b、ならびに第1分離槽11dに設けられる第3電極14は、固定されていてもされていなくてもよい。固定されている場合は、電極28a、28bおよび14は、それぞれ各槽28a、28bおよび14にパターニング形成された導電体であってもよい。また、電極の搬送/着脱を自動化にて行う場合は、図12に示すように、アーム31が電極29a、29bおよび14をそれぞれ槽28a、28bおよび11dに搬送し、各槽に設けられた電極固定部(図示せず)に着脱し得る。また、電極29a、29bおよび14をそれぞれ第1緩衝液槽28a、第2緩衝液槽28b、第1分離槽11dに固定せず、充填された緩衝液に浸す形態であってもよい。電極29a、29bおよび14を搬送可能な形態で用いる場合は、図12に示すように、電極洗浄槽40を設けることにより各電極を首尾よく洗浄し得る。なお、電極洗浄槽40の設置部位は図12に示す部位に限られず、第1分離部10の任意の部位に設けられ得る。
【0128】
上述したように、第1分離部10は複数の槽(試薬槽)11・12を有する。この複数の試薬槽は、電気泳動ゲル53におけるサンプル分離に必要な試薬、および分離後の電気泳動ゲル53(または電気泳動ゲル53中のサンプル)の染色に必要な試薬を充填することが好ましいが、充填される試薬は必要に応じて適宜選択され得る。また、複数の試薬槽11・12の数は、必要な処理工程に応じて増減させればよい。
【0129】
特定の実施形態において、複数の試薬槽11・12は、充填された試薬を封止するための剥離除去可能なシート状封止材が設けられている(図13を参照のこと)。シート状封止材を設けることにより、内包する試薬の飛散を避けることができ、かつ試薬を内包した第1分離部10を容易に保存することができる。
【0130】
1つの局面において、シート状封止材は、自動化2次元電気泳動装置100が備えているシート剥離手段(図示せず)によって剥離除去され得る。シート剥離手段は駆動手段4によって駆動されることが好ましい。この場合、シート状封止材を設けたまま第1分離部10を自動化2次元電気泳動装置100に設置しても、制御手段の制御下にて首尾よく剥離除去され得る。なお、図13では、保持手段3のアーム31がシート剥離手段である形態を示している。
【0131】
別の局面において、シート状封止材は、電気泳動ゲルチップ56からの押付外力によって穿孔可能であり得る。また、穿孔を容易にするために支持体51は穿孔用補助具を備えていてもよい。この場合、上記シート剥離手段のようなさらなる手段を設けることなく第1分離部における電気泳動ゲルチップ56の通常の動作によってシート状封止材を穿孔し得る。
【0132】
さらなる実施形態において、第1分離部10は、要時調整試薬槽を有し、この要時調整試薬槽は、シート状封止材によって複数の試薬を内包する単一の試薬槽内であり、シート状封止材が剥離除去または穿孔された際に、複数の試薬が混合される。自動化2次元電気泳動装置100が実行する工程において、予め調整することができずに要時調整の必要がある試薬が使用される場合であっても、本実施形態に係る自動化2次元電気泳動装置100を用いれば、煩雑な作業を回避し得る。
【0133】
上述したような試薬槽11・12を有する第1分離部10を備えた自動化2次元電気泳動装置100は、試薬槽11・12に試薬を注入するための試薬注入手段(示さず)を備えていることを特徴とすることがなお好ましい。この試薬注入手段は、保持手段および駆動手段と連動して動作する形態であることが好ましい。
【0134】
なお、第2分離部20において、絶縁物20a、第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bが一体形成されている態様を用いて本発明を説明してきたが、これらは別々に構成されていてもよい。
【0135】
第2分離部20の別の実施形態において、図14に示すように、第2分離部20は、第2媒体24を収納する第2媒体収納部24’を挟んで下部絶縁板21および上部絶縁板22から形成される絶縁物20aと、絶縁物20aを受容する絶縁物受容部27、第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bを有する泳動槽30とからなる。絶縁物20aにおいて、下部絶縁板21および上部絶縁板22は、それぞれ第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bにおいて第2媒体24が緩衝液と接するための第1開口部25および第2開口部26を有している。泳動槽30において、絶縁物受容部27は、絶縁物20a(特に下部絶縁板21)を隙間なく受容し得る平面を有している。
【0136】
本実施形態において、絶縁物20aおよび泳動槽30を構成する材料はそれぞれ同一であっても別であってもよい。泳動槽30は、緩衝液が充填されるという観点から防水性が高い物質からなることが好ましい。絶縁物20aと泳動槽30は固定されることが好ましいが真空吸着機構、挟固定機構、磁力固定機構および静電吸着機構等により着脱可能であることがより好ましい。さらに、泳動槽30は、絶縁物受容部27、第1緩衝液槽28aおよび第2緩衝液槽28bが別々に設けられてもよく、この場合、充填された緩衝液が漏出することなく第1開口部25および第2開口部26に供給されるように密着し得る形態を有していればよいので、真空吸着機構、挟固定機構、磁力固定機構および静電吸着機構等を採用することができる。
【0137】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0138】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、生体試料等の分析のための電気泳動ゲルチップの製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0140】
50 電気泳動ゲルチップ
51 支持体
52 接着層
52a チップ接着層
52b ゲル接着層
53 電気泳動ゲル
54 保護フィルム(保護膜)
55 シート状の電気泳動ゲル
55a 帯状の電気泳動ゲル
60 切断装置
61 可動ステージ(駆動手段、自動送り装置、固定器具、固定手段)
62 刃駆動部(駆動手段)
62a 刃
63 フレームおよびストッパー(固定器具、固定手段)
63a 止着具(固定器具、固定手段)
64a 粘着テープ
70 固定治具
70a 溝
100 自動化2次元電気泳動装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜とを備えている電気泳動ゲルチップの製造方法であって、
片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断して、該帯状の電気泳動ゲルを分離する切断工程、および
該切断工程において分離した該帯状の電気泳動ゲルを、該支持体に固定する固定工程を包含していることを特徴とする電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項2】
上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルを刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して刃を相対的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項3】
上記切断工程では、
上記シート状の電気泳動ゲルから、一つの上記帯状の電気泳動ゲルを分離した後、
上記刃が横断する第1方向に垂直な第2方向における、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整し、
再度、上記シート状の電気泳動ゲルを上記刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して上記刃を相対的に移動させることを特徴とする請求項2に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項4】
上記切断工程では、自動送り装置が、第2方向における上記相対位置を調整することを特徴とする請求項3に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項5】
上記切断工程では、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとが離間した状態で、第2方向における上記相対位置を調整することを特徴とする請求項3または4に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項6】
上記切断工程では、固定器具が上記シート状の電気泳動ゲルを挟んで固定している状態で上記シート状の電気泳動ゲルを切断することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項7】
上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルに、粘着テープが貼付された状態で、該粘着テープごと上記シート状の電気泳動ゲルを切断することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項8】
上記固定工程では、上記帯状の電気泳動ゲルを固定治具に設けられた溝に挿入した状態で、当該帯状の電気泳動ゲルを上記支持体に固定することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項9】
上記支持体は、板状の絶縁体であり、
上記固定工程では、上記支持体の側端面に上記帯状の電気泳動ゲルを固定することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項10】
上記切断工程において分離した帯状の電気泳動ゲルの長さは、上記支持体において上記帯状の電気泳動ゲルを固定する領域の長さよりも長くなっており、
上記固定工程の後、上記帯状の電気泳動ゲルにおける上記支持体からはみ出した部分を除去する除去工程をさらに包含することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項11】
絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜とを備えている電気泳動ゲルチップの製造キットであって、
片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断して、該帯状の電気泳動ゲルを分離する切断装置を備えていることを特徴とする電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項12】
上記切断装置は、刃および駆動手段を備えており、
該駆動手段は、上記シート状の電気泳動ゲルを該刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して該刃を相対的に移動させることを特徴とする請求項11に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項13】
上記駆動手段は、上記シート状の電気泳動ゲルから、一つの上記帯状の電気泳動ゲルを分離した後、上記刃が横断する第1方向に垂直な第2方向における、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整し、再度、上記シート状の電気泳動ゲルを上記刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して上記刃を相対的に移動させることを特徴とする請求項12に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項14】
上記駆動手段は、自動的に、第2方向における上記相対位置を調整することを特徴とする請求項13に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項15】
上記駆動手段は、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとが離間させた状態で、第2方向における上記相対位置を調整することを特徴とする請求項13または14に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項16】
上記切断装置は、上記シート状の電気泳動ゲルを挟んで固定する固定手段をさらに備えていることを特徴とする請求項11〜15の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項17】
上記帯状の電気泳動ゲルを挿入するための溝を備えている固定治具をさらに備えていることを特徴とする請求項11〜16の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項18】
絶縁体からなる支持体と、
該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、
該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜を備えていることを特徴とする電気泳動ゲルチップ。
【請求項1】
絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜とを備えている電気泳動ゲルチップの製造方法であって、
片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断して、該帯状の電気泳動ゲルを分離する切断工程、および
該切断工程において分離した該帯状の電気泳動ゲルを、該支持体に固定する固定工程を包含していることを特徴とする電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項2】
上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルを刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して刃を相対的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項3】
上記切断工程では、
上記シート状の電気泳動ゲルから、一つの上記帯状の電気泳動ゲルを分離した後、
上記刃が横断する第1方向に垂直な第2方向における、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整し、
再度、上記シート状の電気泳動ゲルを上記刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して上記刃を相対的に移動させることを特徴とする請求項2に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項4】
上記切断工程では、自動送り装置が、第2方向における上記相対位置を調整することを特徴とする請求項3に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項5】
上記切断工程では、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとが離間した状態で、第2方向における上記相対位置を調整することを特徴とする請求項3または4に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項6】
上記切断工程では、固定器具が上記シート状の電気泳動ゲルを挟んで固定している状態で上記シート状の電気泳動ゲルを切断することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項7】
上記切断工程では、上記シート状の電気泳動ゲルに、粘着テープが貼付された状態で、該粘着テープごと上記シート状の電気泳動ゲルを切断することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項8】
上記固定工程では、上記帯状の電気泳動ゲルを固定治具に設けられた溝に挿入した状態で、当該帯状の電気泳動ゲルを上記支持体に固定することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項9】
上記支持体は、板状の絶縁体であり、
上記固定工程では、上記支持体の側端面に上記帯状の電気泳動ゲルを固定することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項10】
上記切断工程において分離した帯状の電気泳動ゲルの長さは、上記支持体において上記帯状の電気泳動ゲルを固定する領域の長さよりも長くなっており、
上記固定工程の後、上記帯状の電気泳動ゲルにおける上記支持体からはみ出した部分を除去する除去工程をさらに包含することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造方法。
【請求項11】
絶縁体からなる支持体と、該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜とを備えている電気泳動ゲルチップの製造キットであって、
片面が保護膜に覆われているシート状の電気泳動ゲルを切断して、該帯状の電気泳動ゲルを分離する切断装置を備えていることを特徴とする電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項12】
上記切断装置は、刃および駆動手段を備えており、
該駆動手段は、上記シート状の電気泳動ゲルを該刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して該刃を相対的に移動させることを特徴とする請求項11に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項13】
上記駆動手段は、上記シート状の電気泳動ゲルから、一つの上記帯状の電気泳動ゲルを分離した後、上記刃が横断する第1方向に垂直な第2方向における、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとの相対位置を調整し、再度、上記シート状の電気泳動ゲルを上記刃が横断するように、上記シート状の電気泳動ゲルに対して上記刃を相対的に移動させることを特徴とする請求項12に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項14】
上記駆動手段は、自動的に、第2方向における上記相対位置を調整することを特徴とする請求項13に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項15】
上記駆動手段は、上記刃と上記シート状の電気泳動ゲルとが離間させた状態で、第2方向における上記相対位置を調整することを特徴とする請求項13または14に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項16】
上記切断装置は、上記シート状の電気泳動ゲルを挟んで固定する固定手段をさらに備えていることを特徴とする請求項11〜15の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項17】
上記帯状の電気泳動ゲルを挿入するための溝を備えている固定治具をさらに備えていることを特徴とする請求項11〜16の何れか1項に記載の電気泳動ゲルチップの製造キット。
【請求項18】
絶縁体からなる支持体と、
該支持体に固定されている帯状の電気泳動ゲルと、
該帯状の電気泳動ゲルにおける該支持体とは反対側の面を覆う保護膜を備えていることを特徴とする電気泳動ゲルチップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−40792(P2013−40792A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176172(P2011−176172)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
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