説明

電池配線モジュール

【課題】単電池群への組み付け作業の効率を向上した電池配線モジュールを提供する。
【解決手段】正極及び負極の電極端子12を有する単電池11を複数個並べてなる単電池群10に取り付けられる電池配線モジュール20は、電極端子12に接続される複数のバスバー21と、バスバー21を保持する保持部32を有する絶縁樹脂製の樹脂プロテクタ30と、を備える。本発明は、樹脂プロテクタ30の保持部32に、バスバー21を複数の単電池11の並び方向に沿って挿入するバスバー挿入部34を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車用の電池モジュールにおいては、正極および負極の電極端子を有する複数の単電池が並んで配置されている。このような電池モジュールにおいては、正極の電極端子(正極端子)と負極の電極端子(負極端子)とがバスバーで接続されることにより複数の単電池が電気的に接続されるようになっている。
【0003】
複数の単電池を電気的に接続するために、例えば、特許文献1に記載されているような電池配線モジュールが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2011−8955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されている電池配線モジュールでは、バスバー保持部を有する樹脂製の接続ユニットを複数連結し、各接続ユニットのバスバー保持部に上方からバスバーを収容した後に、単電池の電極端子が形成されている端子形成面に接続ユニットを配置して各バスバーと電極端子とが接続されるようになっている。
【0006】
しかしながら、上記のような構成の電池配線モジュールにおいて、バスバー保持部が小さい場合には、上方からバスバーを挿入しにくく、バスバー保持部の大きさとバスバーの大きさの差が大きい場合には、バスバーが適切な位置からずれた状態で配置されることがあった。
【0007】
また、上記のようなバスバーを上方から挿入する構成の電池配線モジュールでは、単電池群への組み付け作業の際に、接続ユニットと、単電池群を構成する単電池の電極端子が形成されている面あるいは電極端子との衝突により、接続ユニットのバスバー保持部に収容されていたバスバーが突き上げられて接続ユニットから脱落してしまうことがあった。
【0008】
バスバーがずれた状態で配置されたり、バスバーが脱落したりすると、バスバーを正規位置に挿入しなおす必要が生じ、作業効率が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、単電池群への組み付け作業の効率を向上した電池配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するものとして、本発明は、正極及び負極の電極端子を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、前記電極端子に接続される複数の接続部材と、前記接続部材を保持する保持部を有する絶縁樹脂製の樹脂プロテクタと、を備え、前記樹脂プロテクタの前記保持部に、前記接続部材を複数の前記単電池の並び方向に沿って挿入する接続部材挿入部を設けたところに特徴を有する。
【0011】
本発明においては、樹脂プロテクタに、接続部材を複数の単電池の並び方向に沿って挿入する接続部材挿入部を設けている。つまり、接続部材が単電池の並び方向に沿って挿入されるようになっている。したがって、樹脂プロテクタと、単電池の端子形成面や電極端子とが衝突したとしても、接続部材が突きあげられにくくなっているので、単電池群への組み付け作業の際に接続部材の脱落が防止される。その結果、本発明によれば、単電池群への組み付け作業の効率を向上した電池配線モジュールを提供することができる。
【0012】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記樹脂プロテクタは、前記保持部と、前記接続部材挿入部とを設けた保持ユニットを、複数備えていてもよい。
このような構成とすると、接続部材を各保持ユニットの接続部材挿入部から単電池の並び方向に沿って挿入させて、保持部により保持させた状態とした保持ユニットを、単電池群を構成する単電池の数に合わせて、準備すればよいので、種々の構成の単電池群に組み付けることができる。
【0013】
前記保持ユニットの前記保持部における、前記接続部材の挿入方向における前端部に、隣り合う前記保持ユニットに配される接続部材との絶縁状態を保持する絶縁壁を設けてもよい。
保持ユニットに保持される接続部材は、接続部材挿入部においてその一部が露出して保持されることがあるため、隣り合う保持ユニットに保持される接続部材同士の接触が懸念される。そこで、上記のような構成とすると、保持ユニットの保持部における、接続部材挿入方向における前端部に設けられた絶縁壁により、隣り合う保持ユニットに保持される接続部材同士の絶縁状態が保持される。
【0014】
前記保持部に、前記接続部材を前記保持部に対して抜け止めする抜け止め部を形成してもよい。
このような構成とすると接続部材挿入部から挿入された接続部材が保持部に対して抜け止めされるので、接続部材の脱落の発生をより確実に防止することができる。
【0015】
前記保持部に前記接続部材を係止する係止部を設ける一方、前記接続部材に前記保持部に設けた係止部に係止される被係止部を設けてもよい。
このような構成とすると接続部材の被係止部が保持部の係止部により係止されるので、保持部からの抜け止めが確実なものとなる。
【0016】
前記保持部に、前記接続部材を、前記接続部材挿入部から前記接続部材の挿入方向における前方に案内するガイド部を設けてもよい。
このような構成とすると、接続部材挿入作業を円滑に行うことができるので、作業性が向上する。
【0017】
前記保持部の、前記複数の単電池の並び方向に沿って配される縁部に、前記接続部材を前記保持部から露出しないように保持可能な保持壁を設けてもよい。
上記のような構成とすると、保持部の単電池の並び方向に沿って配される縁部から接続部材が露出しないので、保持部の周囲に配される導電性部材と接続部材との絶縁状態を保持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、単電池群への組み付け作業の効率を向上した電池配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の電池配線モジュールが取り付けられた電池モジュールの平面図
【図2】電池モジュールの正面図
【図3】第1蓋部を開いた状態の電池配線モジュールが取り付けられた電池モジュールの平面図
【図4】保持ユニットの平面図
【図5】保持ユニットの弾性係合片(係止部)を示す要部拡大斜視図
【図6】保持ユニットにバスバー(接続部材)と電圧検知端子を配置する様子を示した斜視図
【図7】第1蓋部および第2蓋部を開いた状態の保持ユニットの側面図
【図8】第1蓋部および第2蓋部を開いた状態の保持ユニットの正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電池配線モジュール20は、正極及び負極の電極端子12を有する複数個(本実施形態では12個)の単電池11を並べてなる単電池群10に取り付けられるものである。以下、正極の電極端子12を正極端子12A、負極の電極端子12を負極端子12Bといい両者を総括するときは電極端子12という。
【0021】
本実施形態の電池配線モジュール20を単電池群10に取り付けてなる電池モジュールMは、例えば、電気自動車又はハイブリッド自動車等の、車両(図示せず)の駆動源として使用される。単電池群10を構成する複数個の単電池11は、電池配線モジュール20によって、異なる単電池11の正極端子12Aと負極端子12Bとを電気的に接続することにより、直列に接続されている。以下の説明において図2、図7および図8における上方を上とし下方を下とする。
【0022】
(単電池11)
単電池11は、扁平な直方体形状をなしている。単電池11の上面11Aには、図1および図2に示すように、正極端子12A及び負極端子12Bが形成されている。電極端子12は、金属板材からなる台座13Aと、台座13Aから上方に向かって丸棒状に突出する電極ポスト13Bとを備える。電極ポスト13Bの表面には、図示しないねじ山が形成されている。複数個の単電池11は、隣り合う単電池11の電極端子12の極性が異なるように(正極端子12Aと負極端子12Bとが交互に配されるように)並べられている。電極ポスト13Bはバスバー21(接続部材の一例)の貫通孔23に挿通され、図示しないネジ部材の螺合によりバスバー21に固定されるようになっている。また、これら複数個の単電池11は、単電池群10を構成するように図示しない保持具によって固定されている。
【0023】
(電池配線モジュール20)
電池用配線モジュール20は、単電池群10の図1に示す左右方向に並ぶ二列の電極端子12の列にそれぞれ取り付けられるが、図1〜3においては、二列のうち図1および図3における奥側に並ぶ電極端子12の列のみに電池配線モジュール20を取り付けた状態を示している。
【0024】
電池配線モジュール20は、単電池11の正極端子12A及び負極端子12Bの電極ポスト13Bにそれぞれ挿通されて接続される一対の貫通孔23(接続部)を有する複数のバスバー21と、バスバー21に接続され単電池11の電圧を検知する複数の電圧検知端子25と、バスバー21を保持する保持部32を有する合成樹脂製の樹脂プロテクタ30と、を備える。
【0025】
(バスバー21)
バスバー21は、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属からなる板材を所定形状にプレス加工してなる。バスバー21の表面には、スズ、ニッケル等に金属がメッキされていてもよい。バスバー21の長手方向(図3および図4における左右方向)の寸法は、隣り合う単電池11の電極端子12A,12B間の寸法に応じて設定される。
【0026】
バスバー21には、所定の間隔を空けて一対の貫通孔23が形成されている。一対の貫通孔23内には、単電池11の電極端子12の電極ポスト13Bがそれぞれ挿通される。本実施形態における貫通孔23は、単電池11の並び方向(図3における左右方向)を長手方向とする長円状をなしている。本実施形態においては、長円状の貫通孔23により、単電池11の製造公差や組み付け公差に起因する隣り合う電極端子12A,12B間のピッチのずれを吸収可能となっている。
【0027】
また、バスバー21は長方形状の平板の4つの角部を面取りした形状をなしており、樹脂プロテクタ30の保持部32内に円滑に挿入できるようになっている。
【0028】
バスバー21の長手方向の一対の端面には、その両端部に図6に示すように、バスバー21の幅方向(短辺の方向)に張り出す上面視台形状の張出部22が形成されている。バスバー21の長手方向の一対の端面には台形状の張出部22と隣接して凹み部24が形成されている。バスバー21に形成された図4における手前側の2つの張出部22のうち、右側の張出部22Aは、隣接する凹み部24に受け入れられた保持部32のバスバー係止爪39Dにより係止されるようになっている(被係止部の一例)。
【0029】
(電圧検知端子25)
バスバー21の上に重ね合わされる電圧検知端子25は、平板状の本体部26Aと、本体部26Aから連なり検知電線Wが圧着されるバレル部26Bを備える。本体部26Aの中心部には、バスバー21の一対の貫通孔23のいずれか一方と重なるように配されて、バスバー21の一方の貫通孔23に挿通される電極端子12の電極ポスト13Bを挿通可能な挿通孔27が貫通して形成されている。挿通孔27は、バスバー21の貫通孔23よりもわずかに大きく形成されている。
【0030】
電圧検知端子25のバレル部26Bが形成されている端縁と、この端縁と対向する端縁には、それぞれ外側方向に張り出す突片28が形成されている。バレル部26B側の端縁に形成された2つの突片28のうち図4における右側の突片28A(第1突片28A)は、保持部32の端子係止爪39Cにより係止され、これにより電圧検知端子25の上方への移動が規制されるようになっている。バレル部26B側の端縁に形成された2つの突片28の間には、切り欠きにより凹部29が形成されており、この電圧検知端子25の凹部29は、対応するバスバー21の凹み部24の一部と重なり合うように配され、バスバー係止爪39Dを受け入れ可能とされる。
【0031】
バレル部26B側の端縁と対向する端縁に形成された突片28(第2突片28B)は、保持部32の端子係止片37により係止され、これにより電圧検知端子25の上下方向の移動が規制される。
【0032】
電圧検知端子25は、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。電圧検知端子25の表面は、スズ、ニッケル等の金属によってメッキされていてもよい。
【0033】
電圧検知端子25に接続された検知電線Wは、後述の樹脂プロテクタ30の電線収容部50に収容されて、図1の右方に設けられた監視ECU(図示せず)に接続される。ここで、監視ECUは、マイクロコンピュータ、素子等が搭載されたものであって、単電池11の電圧・電流・温度等を検出して、各単電池11の監視制御等を行うための機能を備えた周知の構成のものである。
【0034】
(樹脂プロテクタ30)
樹脂プロテクタ30は、図1に示すように、左右方向に連結された複数(本実施形態では5つ)の保持ユニット31からなる。複数の保持ユニット31は単電池11の並び方向に沿って並べられている。
【0035】
(保持ユニット31)
隣り合う保持ユニット31は、相互に連結されている。保持ユニット31の連結構造の詳細については後述する。
【0036】
保持ユニット31は、バスバー21および電圧検知端子25を収容し保持する保持部32と、電圧検知端子25に接続された検知電線Wを導出する導出溝45と、導出溝45から導出された電圧検知端子25の検知電線Wを収容する電線収容部50と、保持部32を覆う第1蓋部41と、電線収容部50を覆う第2蓋部55と、を備えている。これらの部材は一体的に形成されている。以下、各部材について説明する。
【0037】
(保持部32)
保持部32は、上方に開口すると共に、バスバー21を収容可能に図4における左側方以外の三つの側方を包囲して保持する包囲壁33(33A、33B,33C)と、バスバー21が載置される底壁33Dを備える。
【0038】
底壁33Dは、図6に示すように、保持部32の略中央部分、図示左端部および図示右端部に部分的に設けられており、バスバー21の一部を載置しつつ、バスバー21と電極端子12との電気的な接続を妨げないように設けられている。
【0039】
包囲壁33の高さ寸法は、図2に示すように電池配線モジュール20が単電池群10に接続された状態において、電極端子12の上端部よりも高く設定されている。これにより、工具等が正極端子12Aおよび負極端子12Bに接触して、正極端子12Aと負極端子12Bとが工具等を介して短絡することを抑制できるようになっている。
【0040】
包囲壁33は、バスバー21の長手方向の一対の側縁のうち図4における奥側に配される側縁に沿って配される後壁33Aと、バスバー21の長手方向の一対の側縁のうち、図4における手前側に配される側縁に沿って配される前壁33Bと、バスバー21の短辺方向の一対の側縁のうち図4における右側に配される側縁に沿って配される右側壁33Cとからなる。前壁33Bの長手方向における略中央部には、前壁33Bを2つにわける開口部333が導出溝45に貫通して設けられている。開口部333により2つに分けられた前壁33Bのうち、図4における右側の前壁33Bを右前壁331、図4における左側の前壁33Bを左前壁332とする。
【0041】
さて、本実施形態では、保持部32において、バスバー21の短辺方向の一対の側縁のうち図4における左側に配される側縁(左側縁21A)の配される部分は、包囲壁33が形成されていない開放端34となっている(図6および図7を参照)。この開放端34からは、バスバー21を単電池11の並び方向(図4の左右方向)に挿入可能となっており、バスバー挿入部34(接続部材挿入部の一例)として機能する。
【0042】
包囲壁33の右側壁33Cは、バスバー21の挿入方向における前端部に配されて、隣接する保持ユニット31に保持されるバスバー21との絶縁状態を保持する絶縁壁33Cとして機能する。
【0043】
前壁33Bおよび後壁33Aの内壁には、それぞれ、図6および図7に示すように、挿入されたバスバー21上下方向への移動を規制して抜け止めする複数の抜け止め部35が内側方向に突出形成されている。
【0044】
後壁33Aの中央よりも開放端34側(図4における左側)の領域には、図4および図6に示すように、保持部32の開放端34(バスバー挿入部)から保持部32内に挿入されたバスバー21を、挿入方向における前方(絶縁壁33C側)に案内するガイド部36が突出形成されている。
【0045】
後壁33Aの中央よりも右側壁33C側(図4における右側)の領域には、電圧検知端子25の上方への移動およびバスバー21挿入方向における前方(図示右方向)への移動を規制する端子係止片37が突出形成されている。端子係止片37はバスバー21挿入方向に沿って形成され、その下側にバスバー21と電圧検知端子25が配置可能とされる。端子係止片37のバスバー21挿入方向における前端には係止突部38が設けられ、この係止突部38により電圧検知端子25の第2突片28Bが係止されるようになっている(図4を参照)。
【0046】
また、本実施形態において、包囲壁33の後壁33Aには、図6に示すように、スリット等の、バスバー21が保持部32の外側に露出する部分は形成されていない。したがって、単電池の並び方向に沿って配される後壁33Aは、バスバー21を保持部32から露出しない状態で保持可能な保持壁として機能し、工具や周囲の金属部材等との接触による短絡を防止できるようになっている。
【0047】
包囲壁33の右前壁331には、図5に示すように、2本のスリット39Bが下端部から上方に伸びて形成され、その間に弾性係合片39Aが形成されている。この弾性係合片39Aには、電圧検知端子25を係止する端子係止爪39Cと、バスバー21を係止するバスバー係止爪39D(係止部の一例)とが、上下に並んで設けられている。バスバー係止爪39Dは端子係止爪39Cよりも、バスバー21挿入方向における後方(図5では右側)にずれて設けられているが、端子係止爪39Cとバスバー係止爪39Dとは、一部が互いに重なるように設けられている。
【0048】
端子係止爪39Cは、上方から挿入された電圧検知端子25の第1突片28Aが当接することにより、包囲壁33の外側方向に弾性変形するが、電圧検知端子25が端子係止爪39Cの下端部よりも下側に配されると弾性復帰し、これにより電圧検知端子25の上方への移動が規制されるようになっている。
【0049】
バスバー係止爪39Dは、開放端34から挿入されたバスバー21の張出部22Aが通過するときには包囲壁33の外側方向に弾性変形するが、バスバー21の凹み部24が配されると、この凹み部24内に受け入れられ弾性復帰し、これにより、バスバー21がバスバー係止爪39Dにより係止される。本実施形態においては、バスバー21の凹み部24の直上に配置される電圧検知端子25の凹部29もバスバー係止爪39Dにより係止されるようになっている。
【0050】
(第1蓋部41)
保持部32には、図1、図3、図4および図6に示すように、包囲壁33の後壁33Aの上端から連なるヒンジ40を介して第1蓋部41が一体に設けられている。第1蓋部41は、ヒンジ40を軸中心として回動可能とされ、第1蓋部41を閉じたときに、保持部32全体及び導出溝45の一部が覆われるようになっている(図1を参照)。
【0051】
第1蓋部41のうち、閉蓋時に下側に配される面からは、図4および図6に示すように、一対の第1係止片42が突設されている。第1係止片42は、導出溝45の幅方向両側に設けた第2係止溝47(後述する)と隣り合う位置に形成された第1係止溝46に係止されるようになっている。一対の第1係止片42と隣接する位置には、詳細は後述するが、隣接する保持ユニット31の第1蓋部41を連結する蓋部連結係合片43および蓋部連結被係合部44がそれぞれ設けられている。
【0052】
(導出溝45)
導出溝45は、保持部32から導出された電圧検知端子25のバレル部26Bと、バレル部26Bに圧着された検知電線Wが配される部材であり、保持部32と電線収容部50とを連通する溝状の部材である。導出溝45は凹状をなしており、単電池11の並び方向と略垂直な方向に設けられている。詳しくは、導出溝45は、保持部3線収容部50の後側溝壁部52A(詳細は後述)の開口部52Cを貫通して電線収容部50に連通するように設けられている。
【0053】
(電線収容部50)
電線収容部50は、単電池11の並び方向に延びる一対の溝壁部52および一対の溝壁部52をつなぐ底壁部53によって断面凹状に構成されている。保持ユニット31同士を連結することで、電線収容部50が連結され、単電池11の並び方向に連通する1本の溝(電線収容溝51)が形成される。
【0054】
各保持ユニット31の導出溝45から導出された各検知電線Wは、略直角に屈曲されて、電線収容部50の延設方向に沿って収容されるようなっている。電線収容部50に収容された複数の検知電線Wは、電池ECU側へ導出される。
【0055】
一対の溝壁部52のうち導出溝45側の溝壁部を後側溝壁部52Aとし、もう一方の溝壁部を前側溝壁部52Bとする。後側溝壁部52Aには後壁溝壁部を2つにわける開口部52Cが設けられており、当該開口部52Cには導出溝45が貫通している。前側溝壁部52Bにはヒンジ54を介して電線収容部50を覆う第2蓋部55が連設されている。
【0056】
(第2蓋部55)
電線収容部50には、図1、図3、図6および図7に示すように、前側溝壁部52Bの側面から連なるヒンジ54を介して第2蓋部55が一体に設けられている。第2蓋部55は、ヒンジ54を軸中心として回動可能とされ、第2蓋部55を閉じたときに、電線収容部50全体が覆われるようになっている(図1および図3参照)。第2蓋部55の側縁には、閉蓋時に導出溝45をその上方から覆うとともに、第2蓋部55を係止する一対の第2係止片57が設けられた延出蓋部56が延設されている。第2係止片57は延出蓋部56の幅方向における両側縁から突設されている。第2係止片57は、導出溝45の幅方向両側に設けた第2係止溝47により係止されるようになっている。
【0057】
本実施形態では、第2蓋部55を閉じたのちに第1蓋部41を閉じると、第2蓋部55の延出蓋部56の一部と第1蓋部41の一部が重なり合って、導出溝45は第2蓋部55の延出蓋部56と第1蓋部41とで二重に蓋をされた状態となる。これにより、保持ユニット31の上部全域を、蓋部41,55により覆った状態に維持することができる。
【0058】
(保持ユニット31の連結構造)
次に、隣り合う保持ユニット31同士を連結するための連結構造について説明する。
一対の第1係止溝46と隣接する位置には、図4及び図6に示すように、隣り合う保持ユニット31同士を連結する連結係合爪48と、連結係合爪48と係合可能な連結係合凹部49が設けられている。図示右側(バスバー21挿入方向の前方側)の第1係止溝46の右側に連結係合爪48が設けられ、図示左側の第1係止溝46の左側に連結係合凹部49が設けられている。
【0059】
隣り合う保持ユニット31のうち、一方の保持ユニット31の連結係合爪48の一対の弾性片48Aを、他方の保持ユニット31の連結係合凹部49に挿入すると、一対の弾性片48Aが近づく方向に弾性変形しながら挿入され、連結係合凹部49内の所定位置まで挿入されると弾性片48Aが弾性復帰することで係合されるようになっている。
【0060】
また、第1蓋部41の一対の第1係止片42の両側には、図4および図6に示すように、隣り合う保持ユニット31の第1蓋部41同士を連結する蓋部連結部43,44が設けられている。第1蓋部41の図4における右端部には、蓋部連結係合片43が形成されており、第1蓋部41の図4における左端部には蓋部連結被係合部44が設けられている。
【0061】
蓋部連結係合片43の端部には、相手方となる蓋部連結被係合部44の連結係合孔44Bに係合される連結係合突部43Aが形成されている。蓋部連結被係合部44は、蓋部連結係合片43を挿通可能に、保持ユニット31の連結方向に貫通する係合片挿通部44Aと、係合片挿通部44Aに隣接して設けられ蓋部連結係合片43の連結係合突部43Aを受け入れて係合可能な連結係合孔44Bと、を備える。蓋部連結被係合部44の係合片挿通部44Aに蓋部連結係合片43を挿通させて、連結係合突部43Aを連結係合孔44Bに係合させることで、互いに隣り合う第1蓋部41同士を連結することができるようになっている。
【0062】
(電池配線モジュール20の組み付け方法)
次に電池配線モジュール20の組み付け方法について説明する。
まず、保持ユニット31にバスバー21を取り付ける。保持ユニット31の保持部32の開放端34からバスバー21を保持部32内に差し込むと、バスバー21は、保持部32の後壁33Aに形成されたガイド部36により、図4における右方向に案内される。バスバー21の張出部22Aと前壁33Bに形成されたバスバー係止爪39Dとが当接すると、バスバー係止爪39Dが包囲壁33の外側方向に撓み変形する。
【0063】
さらにバスバー21を前方(図4における右方向)に挿入し、バスバー21の凹み部24がバスバー係止爪39Dに至るとバスバー21の凹み部24内に、バスバー係止爪39Dが受け入れられて、バスバー係止爪39Dが弾性復帰し、バスバー21の張出部22Aの端面とバスバー係止爪39Dとの当接により、バスバー21の挿入方向における前後方向への移動が規制される。また、バスバー21は、包囲壁33に設けた抜け止め部35により、上下方向への移動が規制され抜け止めされる。
【0064】
次に、保持ユニット31同士を連結する。第1蓋部41及び第2蓋部55を開いた状態で、保持ユニット31の連結係合爪48の一対の弾性片48Aを、隣り合う保持ユニット31の連結係合凹部49に挿入すると、一対の弾性片48Aが近づく方向に弾性変形しながら挿入され、連結係合凹部49内の所定位置まで挿入されると弾性片48Aが弾性復帰することで係合され、保持部32および電線収容部50が連結される。
【0065】
さらに、隣り合う保持ユニット31の蓋部連結被係合部44の係合片挿通部44Aに蓋部連結係合片43を挿通させたのち、連結係合突部43Aを連結係合孔44Bに係合させると、互いに隣り合う第1蓋部41同士が連結される。ここで、バスバー21を保持させた保持ユニット31を、複数個連結することにより、隣り合う位置に配されるバスバー21の間には、保持ユニット31の絶縁壁33Cが配されるので、保持部32に開放端34が設けられていたとしても、バスバー21同士が接触することはない。
【0066】
次に、電圧検知端子25を保持部32の上方から、保持部32に収容されたバスバー21の上へと嵌め込むとともに、導出溝45から電圧検知端子25に圧着された検知電線Wを電線収容部50(電線収容溝51)へと導出することにより、電圧検知端子25を取り付ける。電圧検知端子25を取り付ける際には、まず、電圧検知端子25の第2突片28Bを端子係止片37の下方に差し込むと、電圧検知端子25の第2突片28Bが、端子係止片37の係止突部38により、上方およびバスバー21の挿入方向における前後方向への移動を規制され位置決めされる。
【0067】
さらに、電圧検知端子25のバレル部25B側の端縁を、保持部32に対して上方から押し込んでいく。すると、電圧検知端子25と弾性係合片39Aの端子係止爪39Cが当接して、端子係止爪39Cが包囲壁33の外側方向に撓み変形する。さらに電圧検知端子25を下方に押し込んで、電圧検知端子25が端子係止爪39Cの下端部よりも下側に配されると、端子係止爪39Cが弾性復帰して電圧検知端子25の上に張り出すことで、電圧検知端子25の上下方向への移動が規制される。
すべての電圧検知端子の取付作業が終了したら電池配線モジュール20が完成する。
【0068】
次に電池配線モジュール20を単電池群10に組み付ける。隣り合う単電池11の隣り合う電極端子12が異なった極性となるように並べて単電池群10を作製しておき、単電池群10に電池配線モジュール20を組み付ける。具体的には、各バスバー21の貫通孔23及びこの貫通孔23と重なり合う電圧検知端子25の挿通孔27に、単電池11の電極端子12(電極ポスト13B)を挿通させる。
【0069】
このとき、本実施形態の電池配線モジュール20では、バスバー21が単電池11の並び方向に沿って挿入され、かつ、抜け止め部35によりバスバー21が保持部32に対して上下方向に移動を規制された状態で保持されているので、樹脂プロテクタ30と単電池11の電極ポスト13Bや上面11A(端子形成面)が衝突したとしても、バスバー21が突きあげられにくくなっており、円滑に作業を進めることができる。
【0070】
貫通孔23、又は貫通孔23及び挿通孔27を電極ポスト13Bに挿通させてバスバー21を電極端子12の台座13Aに接触させるように配して、各電極ポスト13Bに図示しないネジ部材を螺合して固定する。このとき、保持ユニット31の包囲壁33が電極ポスト13Bよりも高く形成されているので、電極ポスト13Bにネジ部材を螺合させる作業に用いる工具が落下、接触したとしても短絡が発生することはない。上記の作業を繰り返して、電極ポスト13Bにネジ部材を固定し終わったら、単電池群10は電気的に接続可能となる。次に、電池配線モジュール20の第2蓋部55および第1蓋部41を、この順に閉じると電池モジュールMが完成する。
【0071】
(本実施形態の作用、効果)
以下、本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態においては、樹脂プロテクタ30に、バスバー21を複数の単電池11の並び方向に沿って挿入するバスバー挿入部34(開放端34)を設けており、バスバー21が単電池11の並び方向に沿って挿入され、かつ、抜け止め部35によりバスバー21が保持部32に対して上下方向に移動を規制された状態で保持される。したがって、樹脂プロテクタ30と、単電池11の上面11A(端子形成面)や電極端子12とが衝突したとしても、バスバー21は抜け止め部35により上方から抑えられているので、突き上げられにくくなっており、単電池群10への組み付け作業の際にバスバー21の脱落が防止される。その結果、本実施形態によれば、単電池群10への組み付け作業の効率を向上した電池配線モジュール20を提供することができる。
【0072】
特に、本実施形態によれば、保持部32に、バスバー21を、バスバー21の挿入方向における前方に案内するガイド部36を設けたから、バスバー21挿入作業を円滑に行うことができ、作業性が向上する。
【0073】
また、本実施形態によれば、樹脂プロテクタ30は、保持部32およびバスバー挿入部34を設けた保持ユニット31を、複数備えているから、バスバー21を各保持ユニット31のバスバー挿入部34から単電池11の並び方向に沿って挿入させて、保持部32により保持させた状態とした保持ユニット31を、単電池群10を構成する単電池11の数に合わせて、準備すればよいので、種々の構成の単電池群10に組み付けることができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、保持ユニット31の保持部32における、バスバー21の挿入方向における前端部には、隣り合う保持ユニット31に配されるバスバー21との絶縁状態を保持する絶縁壁33Cが設けられているから、当該絶縁壁33Cにより、隣り合う保持ユニット31に保持されるバスバー21同士の絶縁状態が保持される。
【0075】
特に、本実施形態によれば、保持部32にバスバー21を係止するバスバー係止爪39Dを設ける一方、バスバー21にバスバー係止爪39Dに係止される被係止部を設けたから、バスバー21の保持部32からの抜け止めをより確実に防止することができる。
【0076】
また、本実施形態では、保持部32の、複数の単電池11の並び方向に沿って配される縁部(後壁33A)を、バスバー21を非露出状態で保持する保持壁33Aとしているので、本実施形態によれば、保持部32の単電池11の並び方向に沿って配される縁部(後壁33A)からバスバー21が露出せず、保持部32の周囲に配される導電性部材とバスバー21との絶縁状態を保持することができる。
【0077】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、保持部32の一部を開放端34としてバスバー21を複数の単電池11の並び方向に沿って挿入するバスバー挿入部34としたが、壁状の部分にバスバーを挿入可能なバスバー挿入口を設けてバスバー挿入部としてもよい。
(2)上記実施形態では保持ユニット31の保持部32の包囲壁33のうちバスバー挿入方向における前端部に配される右側壁33Cを絶縁壁33Cとしたが、保持ユニットとは別体の絶縁壁を備えていてもよいし、絶縁壁がない構成であってもよい。
(3)上記実施形態では、バスバー21を保持部32に対して抜け止めする抜け止め部35を複数形成した保持部32を示したが、抜け止め部は1つだけでもよいし、抜け止め部を備えない保持部であってもよい。
(4)上記実施形態では、保持部32にバスバー21を係止するバスバー係止爪39Dを設ける一方、バスバー21にバスバー係止爪39Dに係止される被係止部(凹み部24)を設けたものを示したが、保持部に凹み形状のバスバーを係止部を設け、バスバーに凸状の被係止部を設けてもよい。
(5)上記実施形態では、バスバー21を、バスバー挿入部34からバスバー21の挿入方向における前方に案内するガイド部36を設けた保持部32を示したが、保持部にはガイド部がなくてもよい。
(6)上記実施形態では、複数の単電池11の並び方向に沿って配される縁部に、バスバーを非露出状態で保持する保持壁を設けた保持部32を示したが、保持部とは別体の保持壁を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
M…電池モジュール
10…単電池群
11…単電池
11A…上面(端子形成面)
12…電極端子
12A…正極端子
12B…負極端子
20…電池配線モジュール
21…バスバー(接続部材)
22A…張出部(被係止部)
24…凹み部
30…樹脂プロテクタ
31…保持ユニット
32…保持部
33…包囲壁
33A…後壁(保持壁)
33B…前壁
33C…右側壁(絶縁壁)
34…開放端(接続部材挿入部)
35…抜け止め部
36…ガイド部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極の電極端子を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、
前記電極端子に接続される複数の接続部材と、前記接続部材を保持する保持部を有する絶縁樹脂製の樹脂プロテクタと、を備え、
前記樹脂プロテクタの前記保持部に、前記接続部材を複数の前記単電池の並び方向に沿って挿入する接続部材挿入部を設けたことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項2】
前記樹脂プロテクタは、前記保持部と、前記接続部材挿入部とを設けた保持ユニットを、複数備えることを特徴とする請求項1に記載の電池配線モジュール。
池配線モジュール。
【請求項3】
前記保持ユニットの前記保持部における、前記接続部材の挿入方向における前端部に、隣り合う前記保持ユニットに配される接続部材との絶縁状態を保持する絶縁壁を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電池配線モジュール。
【請求項4】
前記保持部に、前記接続部材を前記保持部に対して抜け止めする抜け止め部を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電池配線モジュール。
【請求項5】
前記保持部に前記接続部材を係止する係止部を設ける一方、前記接続部材に前記保持部に設けた係止部に係止される被係止部を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電池配線モジュール。
【請求項6】
前記保持部に、前記接続部材を、前記接続部材挿入部から前記接続部材の挿入方向における前方に案内するガイド部を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電池配線モジュール。
【請求項7】
前記保持部の、前記複数の単電池の並び方向に沿って配される縁部に、前記接続部材を前記保持部から露出しないように保持可能な保持壁を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電池配線モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−105572(P2013−105572A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247493(P2011−247493)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】