説明

電波受信装置及び電波受信方法

【課題】複数の目標を短時間で識別し得る電波受信装置及び電波受信方法を提供する。
【解決手段】指示された周波数帯域内の電波を受信する受信手段と、この受信手段の出力を時間軸信号から周波数軸信号に変換するFFT(高速フーリエ変換)手段と、このFFT手段の出力から周波数帯域内に存在する複数の目標からの受信波をそれぞれ識別する目標識別手段とを備えた電波受信装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電波を受信して分析し、電波の発生源を特定する電波受信装置及び電波受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体に搭載され目標から到来する電波を受信する電波受信装置にあっては、電波を受信し、周波数などの諸元を求めることにより目標等の電波源を識別することが可能である。一般に、電波受信装置にあっては、広帯域の電波を受信し、周波数などの諸元を求めるため、受信帯域の異なる複数のアンテナや受信器を用意し、それぞれを並列に処理する方法が提案されている。
【0003】
ところで、飛しょう体に搭載する電波受信装置では、搭載スペースに制約があるため、ハードウェア規模を小さくする必要がある。このため、複数のアンテナや受信器を用意し、それぞれを並列に処理する方法を採ることが困難となる。また、運用時間が短いため、処理に長く時間を取ることもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010−15949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電波受信装置では、搭載スペースに制約があるため、ハードウェア規模を小さくする必要があり、また、運用時間が短いため、処理に長く時間を取ることもできないため、有効な手法が強く望まれている。
【0006】
本発明の目的は、複数の目標を短時間で識別し得る電波受信装置及び電波受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、指示された周波数帯域内の電波を受信する受信手段と、この受信手段の出力を時間軸信号から周波数軸信号に変換するFFT(高速フーリエ変換)手段と、このFFT手段の出力から周波数帯域内に存在する複数の目標からの受信波をそれぞれ識別する目標識別手段とを備えた電波受信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態の電波受信装置が適用される飛しょう体の全体構成、及び、電波受信装置と目標との関係を示す概略構成図である。
【図2】実施形態とする電波受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】以前に考えられていた広帯域における目標識別処理を説明するための図である。
【図4】同実施形態における信号処理部の制御処理手順を示すフローチャートである。
【図5】同実施形態において、周波数帯分離処理を説明するために示す概略図である。
【図6】同実施形態において、繰り返し周期を求めるために示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、一実施形態として電波受信装置が適用される飛しょう体の全体構成、及び、電波受信装置と目標との関係を示す概略構成図である。図1において、1は飛しょう体であり、誘導装置2及び操舵装置3を搭載している。また、誘導装置2は、電波受信装置4及び目標追随装置5を備えている。
【0011】
誘導装置2は、目標6から到来する電波を受信して目標6を検出し、目標6を追跡するための誘導信号を操舵装置3に出力する。操舵装置3は誘導装置2からの誘導信号をもとに、飛しょう体1が目標方向に飛しょうするための操舵を実施する。
【0012】
電波受信装置4は、目標6を検出する。目標追随装置5は、電波受信装置4による目標6の検出結果に基づいて、誘導信号を生成する。
【0013】
図2は、電波受信装置4の構成を示すブロック図である。電波受信装置4において、他レーダからの電波を受信用アンテナ11で受信し、受信部12にて振幅・位相検波する。受信部12で振幅・位相検波された受信信号は、信号処理部13に送られ、目標6の検出、分析処理される。制御器14は、受信部12へ測定する周波数を指示する。
【0014】
信号処理部13は、信号変換器21と、検出処理器22と、信号分析処理器23とにより構成される。受信部12で振幅・位相検波された受信信号は、信号変換器21によりデジタル信号に変換され、検出処理器22によりFFT(高速フーリエ変換)処理が施され、時間軸信号から周波数軸信号に変換されて目標検出が施される。
【0015】
検出処理器22による目標検出結果は、信号分析処理器23に供給され、目標の周波数や方向が求められる。
【0016】
次に、上記構成における動作について説明する。
飛しょう体に搭載する電波受信装置では、搭載スペースに制約があるため、ハードウェア規模を小さくする必要がある(例えば、特許文献1)。また、運用時間が短いため、処理に長く時間を取ることもできない。さらに、受信帯域を広めに取ると、図3に示すように、複数の目標からの受信波を識別することができないため、信号処理(ソフトウェア)にて解決する必要がある。
【0017】
そこで、本実施形態では、信号処理部13による信号処理により広帯域に存在する複数の目標からの受信波を識別できるようにした。図4は、上記信号処理部13の制御処理手順を示すフローチャートである。
【0018】
信号処理部13は、受信用アンテナ11にて受信した受信波を、制御器23から指示された周波数にて受信部12で振幅・位相検波した受信信号を信号変換器21へ出力する。信号変換器21では信号をA/D(アナログ/デジタル)変換して受信デジタル信号を出力する(ステップS1)。
【0019】
続いて、信号処理部13は、検出処理器22にて信号変換器21からの受信デジタル信号を高速フーリエ変換し、振幅値の大きさをしきい値にて判定し、しきい値より大きいものを目標として検出する(ステップS2)。検出結果およびそのときのデジタル信号はメモリ221に記憶しておき、ステップS1乃至ステップS3の処理を所定の回数繰り返したのち、信号分析処理器23へ出力する。
【0020】
信号処理部13は、受信デジタル信号のFFT結果から、図5に示すように、周波数軸上の異なる周波数に位置する振幅をそれぞれ抜き出すことで、周波数帯分離処理を実行する(ステップS4)。この検出された信号の周波数セル(分解能単位)の違いにより、制御器14から指示された周波数の同じ帯域内に複数の目標からの受信波があっても識別することができる。
【0021】
なお、FFTの分解能より小さい周波数差で複数の受信波が入力されたときは識別できないが、複数の目標(レーダ)はいずれも本飛しょう体1を検出するために動作していることから、複数のレーダの周波数が近いと干渉して機能しないため、一定の周波数差は必ず生じている。したがって、それより小さい周波数の分解能を持っていればよい。
【0022】
続いて、信号処理部13は、上記ステップS4による周波数帯分離処理の結果から、図6に示すように、識別したそれぞれの受信波について受信時間間隔から繰返し周期を求める(ステップS5)。
【0023】
以上のように上記実施形態によれば、飛しょう体1において、受信用アンテナ11を用いて制御器14により指定された受信帯域の電波を受信するだけでよく、この受信波を信号処理部13の検出処理器22により時間軸信号から周波数軸信号に変換し、信号分析処理器23により受信波の各特性情報を用いて複数の目標を識別するようにしている。
【0024】
従って、飛しょう体1に適した小さいハードウェア規模で受信した電波の電波源の数、つまり目標の数を求めることができる。
【0025】
また、上記実施形態では、信号分析処理器23において、検出処理器22の出力から周波数セルの違いにより制御器14により指示された周波数帯域内に存在する複数の目標からの受信波をそれぞれ識別するようにしているので、受信した電波の電波源の数だけでなく、それらの周波数を求めることができ、これにより目標となる電波源の識別精度の向上や処理時間の短縮を図ることができる。
【0026】
さらに、上記実施形態では、信号分析処理器23において、分離した周波数セルごとに識別したそれぞれの受信波について受信時間間隔から繰り返し周期を求めるようにしているので、さらに電波源の識別上における信頼性を高めることができる。
【0027】
その他、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…飛しょう体、2…誘導装置、3…操舵装置、4…電波受信装置、5…目標追随装置、6…目標、11…受信用アンテナ、12…受信部、13…信号処理部、14…制御器、21…信号変換器、22…検出処理器、23…信号分析処理器、221…メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示された周波数帯域内の電波を受信する受信手段と、
この受信手段の出力を時間軸信号から周波数軸信号に変換するFFT(高速フーリエ変換)手段と、
このFFT手段の出力から前記周波数帯域内に存在する複数の目標からの受信波をそれぞれ識別する目標識別手段とを具備することを特徴とする電波受信装置。
【請求項2】
前記目標識別手段は、前記FFT手段の出力から周波数セルの違いにより前記周波数帯域内に存在する複数の目標からの受信波をそれぞれ識別することを特徴とする請求項1記載の電波受信装置。
【請求項3】
前記目標識別手段は、前記FFT手段の出力を周波数セルごとに分離し、この分離した周波数セルごとに識別したそれぞれの受信波について受信時間間隔から繰り返し周期を求めることを特徴とする請求項2記載の電波受信装置。
【請求項4】
前記目標識別手段は、前記FFT手段の出力から振幅値の大きさが予め決められたしきい値を越えるか否かを判定し、しきい値を越える振幅値を目標として検出することを特徴とする請求項1記載の電波受信装置。
【請求項5】
前記目標識別手段は、前記しきい値を越える振幅値を記憶する記憶部を備え、この記憶部に記憶された振幅値について所定回数、前記しきい値を越えるか否かの判定処理を実行することを特徴とする請求項4記載の電波受信装置。
【請求項6】
指示された周波数帯域内の電波を受信する受信手段を備える電波受信装置で使用される電波受信方法において、
この受信手段の出力を時間軸信号から周波数軸信号に変換し、
この周波数軸信号から前記周波数帯域内に存在する複数の目標からの受信波をそれぞれ識別することを特徴とする電波受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−78131(P2012−78131A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221590(P2010−221590)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】