説明

電界強度測定装置および電界強度測定方法

【課題】地上マルチメディア放送波のセグメント連結送信信号の各セグメントの信号強度の実測が可能で、しかも各セグメントがマルチパスなどの影響を受けているか否かを容易に把握できるようにする。
【解決手段】相対値算出手段25は、セグメント測定部23で測定された複数セグメントのそれぞれの信号強度の測定値と、セグメント連結送信信号測定部22の測定結果とセグメント連結送信信号内で連結されているセグメント数とからセグメント平均値算出手段24により算出されたセグメント当たりの信号強度の平均値とから、測定値と平均値との差である相対値をそれぞれのセグメントについて算出し、表示制御部26は、それぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとして表示器27に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波によるサービスを行うにあたって必要な信号強度を測定する技術に関し、特に地上マルチメディア放送波の信号強度測定を容易にするための技術に関する。ここで信号強度とは、電力や電界強度などの測定地点での信号の強さを示す値であり、以降の説明では電力と電界強度を用いて説明する。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送はアナログ方式からデジタル方式に移行し、デジタル方式による地上デジタル放送が開始されている。さらに、テレビ放送のデジタル化により空きスペースとなるVHF帯の207.5MHz〜222MHzでは、デジタル方式による地上マルチメディア放送が計画されている。またこれらのデジタル方式の電波の伝搬状態を調べるために、各地で電界強度測定が行われている。
【0003】
例えば、地上デジタルテレビ放送波の電界強度測定を行うシステムとしては、図3に示すように、測定地点の電波を受けるアンテナ1を設置し、そのアンテナ1の出力信号を周波数変換部11に入力して所望チャンネルの放送波を選択的に中間周波数帯に変換し、チャンネル測定部12に入力する。
【0004】
チャンネル測定部12は、周波数変換部11から出力された信号Sの電力(チャンネル電力という)Pを求め、そのチャンネル電力P、アンテナ1の特性、ケーブル損失などに基づいて電界強度F(dBμV/m)の値を算出する。
【0005】
セグメント測定部13は、周波数変換部11から出力された信号Sのうちの特定セグメントの信号電力Psegを求め、その信号電力Psegとアンテナ係数などの情報から電界強度Fseg を求める。
【0006】
測定されたチャンネル電力Pや電界強度F、特定セグメントの電力Psegは、表示制御部14により表示器15の画面上に数値あるいはグラフ化されて表示される。作業者は例えばアンテナ1の向きや高さを変化させ、その変化に対するチャンネル電力Pや電界強度F、特定セグメントの電力Psegや電界強度Fsegの変化を調べる。
【0007】
上記のように所望チャンネルのチャンネル電力Pや電界強度F、特定セグメントの電力Psegを測定して表示器に表示する電界強度測定装置は、例えば次の特許文献1に開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2007−198936号公報
【0009】
地上デジタルテレビ放送の技術規格ISDB−Tでは、1チャンネルは、図4に示すように、幅約430KHzのセグメント13個により構成され、隣り合うチャンネルはガードバンド(GB)と呼ばれる未使用周波数帯域により分離されている。
【0010】
また、それぞれのチャンネル毎に放送事業者は異なっているため、地上デジタル放送に関する電界強度測定においては、各チャンネル毎(13のセグメント単位)に測定を行えば良かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
地上マルチメディア放送の技術規格ISDB−Tmmでは、図5に示すように、地上マルチメディア放送に割り当てられた周波数帯域(VHF帯の207.5MHz〜222MHz)は33のセグメント(SEG0〜SEG32)により構成されている。なお、以降の説明においては、セグメント番号であるSEG0〜SEG32のそれぞれを、セグメント0〜セグメント32と呼ぶこともある。
【0012】
このとき各セグメントの間はガードバンドによる分離はされておらず、33セグメントの信号が連結され、セグメント連結送信信号として放送用基地局より送信される。また、33セグメント内には、タイプAスーパーセグメントと呼ばれる13セグメント形式によるスーパーセグメントが2つと、タイプBスーパーセグメントと呼ばれる1セグメント形式によるスーパーセグメントが7つ配置されている。
【0013】
また、地上マルチメディア放送では、地上デジタルテレビ放送とは異なり、放送用基地局設備を持たない複数の委託放送事業者から番組やコンテンツを受託放送事業者が受け取り、受け取った番組やコンテンツについて受託放送事業者がセグメント連結送信信号を作成し放送用基地局から送信する。
【0014】
従って、セグメント連結送信信号のセグメント毎に委託放送事業者は異なる場合があり、それぞれの委託放送事業者は、自身の使用するセグメントについて測定する必要がある。一方で受託放送事業者は放送用基地局より送信するセグメント連結送信信号全体について測定する必要がある。
【0015】
さらに、地上マルチメディア放送では、番組やコンテンツによって13セグメント形式のタイプAスーパーセグメントを使用する場合や1セグメント形式のタイプBスーパーセグメントを利用する場合があり、測定者はスーパーセグメントを意識してセグメント連結送信信号を測定する必要もある。
【0016】
ここで1セグメント電界強度は、セグメント連結送信信号の電界強度Fの1/33の演算で求めることができ、この算出値をセグメント連結送信信号の電力や電界強度とともに表示器に表示することが考えられる。
【0017】
しかし、実際の電波伝搬路の周波数特性は、建物の反射(マルチパス)等の影響を受けるため、図6のようにセグメント連結送信信号全体にわたって平坦にならない場合が多く、セグメント連結送信信号全体では十分な電界強度があっても、特定セグメントの電界強度が十分でない場合が発生し、上記のような単純計算で得られた電界強度では正確な情報を得ることが困難である。
【0018】
また、たとえ1セグメントの電界強度を実測し、その実測結果を単純表示したのでは、マルチパスの影響を受けているか否かを判断することは困難である。
【0019】
このとき、セグメント連結送信信号の33セグメント全体に渡り、その電界強度や電力の絶対値を単純にグラフ表示する方法も考えられる。
【0020】
この方法によれば、マルチパスの影響を受けているか否かを確認することはできる。しかし、たとえセグメント間の電界強度や電力が上下する幅が同じだとしても、セグメント連結送信信号全体の電界強度や電力によって、受信する端末側での影響は同じではない。セグメント連結送信信号全体の電界強度や電力が高い場合はその影響は小さく、低くなるほどその影響は大きくなる。
【0021】
しかし、セグメント連結送信信号の電界強度や電力の絶対値を単純に表示した場合、セグメント連結送信信号全体の電界強度や電力の絶対値によって表示スケールが決定されるためセグメント間のばらつきが測定者にとって適切なスケールで表示されることは期待できない。
【0022】
本発明は、これらの課題を解決し、セグメント連結送信信号の各セグメントの信号電力や電界強度の実測が可能で、しかも各セグメントがマルチパスなどの影響を受けているか否かを容易に把握できる電界強度測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の電界強度測定装置は、
地上マルチメディア放送波として送信されるセグメント連結送信信号を受信して、該セグメント連結送信信号の信号強度を測定し、該測定結果を表示器(27)の画面上に表示する電界強度測定装置において、
前記セグメント連結送信信号の信号強度を測定するセグメント連結送信信号測定部(22)と、
前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれのセグメントの信号強度を測定するセグメント測定部(23)と、
前記セグメント連結送信信号測定部の測定結果と前記セグメント連結送信信号を構成するセグメント数とからセグメントあたりの信号強度の平均値を算出するセグメント平均値算出手段(24)と、
前記セグメント測定部で測定された前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれの信号強度の測定値と、前記セグメント平均値算出手段で算出された前記セグメントあたりの信号強度の平均値とを受けて、当該測定値と当該平均値との差である相対値を前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれについて算出する相対値算出手段(25)と、
前記相対値算出手段により得られた前記セグメント連結送信信号を構成する複数のセグメントそれぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとして前記表示器に表示する表示制御部(26)とを設けたことを特徴としている。
【0024】
また、本発明の請求項2の電界強度測定装置は、請求項1記載の電界強度測定装置において、
前記表示制御部は、前記セグメント連結送信信号測定部の測定結果を、前記複数のセグメントそれぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとともに前記表示器に表示することを特徴としている。
【0025】
また、本発明の請求項3の電界強度測定装置は、請求項1または請求項2記載の電界強度測定装置において、
前記表示制御部は、前記複数のセグメントそれぞれの算出結果を、セグメント連結順に並べたグラフ上に前記セグメント連結送信信号内に配置されるスーパーセグメントを識別できるよう前記表示器に表示することを特徴としている。
【0026】
また、本発明の請求項4の電界強度測定方法は、
地上マルチメディア放送波として送信されるセグメント連結送信信号を受信して、該セグメント連結送信信号の信号強度を測定し、該測定結果を表示する電界強度測定方法において、
前記セグメント連結送信信号の信号強度を測定するセグメント連結送信信号測定段階と、
前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれのセグメントの信号強度を測定するセグメント測定段階と、
前記セグメント連結送信信号測定段階の測定結果と前記セグメント連結送信信号を構成するセグメント数とからセグメントあたりの信号強度の平均値を算出するセグメント平均値算出段階と、
前記セグメント測定段階で測定された前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれの信号強度の測定値と、前記セグメント平均値算出段階で算出された前記セグメントあたりの信号強度の平均値とを受けて、当該測定値と当該平均値との差である相対値を前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれについて算出する相対値算出段階と、
前記相対値算出段階により得られた前記セグメント連結送信信号を構成する複数のセグメントそれぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとして表示するグラフ表示段階とを設けたことを特徴としている。
【0027】
また、本発明の請求項5の電界強度測定方法は、請求項4記載の電界強度測定方法において、
前記グラフ表示段階は、前記セグメント連結送信信号測定段階の測定結果を、前記複数のセグメントそれぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとともに表示することを特徴としている。
【0028】
また、本発明の請求項6の電界強度測定方法は、請求項4または請求項5記載の電界強度測定方法において、
前記グラフ表示段階は、前記複数のセグメントそれぞれの算出結果を、セグメント連結順に並べたグラフ上に前記セグメント連結送信信号内に配置されるスーパーセグメントを識別できるよう表示することを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
本発明の電界強度測定装置は、セグメント連結送信信号の各セグメントの信号電力および電界強度を実測でき、しかもその実測結果と、演算で得られた1セグメント当たりの信号電力や電界強度の平均値との差を画面上で識別できるように表示している。
【0030】
このため、特定セグメントの信号電力や電界強度の絶対値だけでなく、1セグメント当たりの平均的な値に対する特定セグメントの実測値の大小比較を容易に行え、その表示情報からマルチパスなどによるセグメント連結送信信号全体の周波数特性の劣化の有無等も容易に判る。
【0031】
また、セグメント連結送信信号全体の信号電力や電界強度の絶対値に依存することなく、マルチパスによる各セグメント間の信号電力や電界強度のばらつきを適切なスケールで確認することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す図
【図2】実施形態の測定結果の表示例を示す図
【図3】従来装置の構成を示す図
【図4】地上デジタルテレビ放送波のチャンネル構成図
【図5】地上マルチメディア放送波のセグメント構成図
【図6】地上マルチメディア放送波の伝搬周波数特性例
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した電界強度測定装置20の構成を示している。
【0034】
この電界強度測定装置20は、前記した従来装置と同様に、測定地点に設置したアンテナ1の出力信号を周波数変換部21に入力してセグメント連結送信信号を中間周波数帯に変換し、その信号Sをセグメント連結送信信号測定部22およびセグメント測定部23に入力する。
【0035】
セグメント連結送信信号測定部22は、入力信号Sの電力、即ちセグメント連結送信信号の電力Pを求め、そのセグメント連結送信信号の電力Pとアンテナ1の係数等に基づいてセグメント連結送信信号の電界強度Fを求める。なお、ここでは電力として単位dBμV(emf)で示される開放端電圧値を用いて説明するが、単位dBm等の別の単位で示される値を用いても良い。
【0036】
セグメント測定部23は、入力信号Sの33セグメント(SEG0〜SEG32)のそれぞれのセグメントについて信号電力Pseg0〜Pseg32を求め、その信号電力Pseg0〜Pseg32とアンテナ係数などの情報からそれぞれのセグメントの電界強度Fseg0〜Fseg32を求める。これらの2つの測定部22、23の処理は例えばDSP等によるデジタルフィルタリングおよび演算処理で行われる。
【0037】
ここで、セグメント測定部による33セグメントそれぞれに対する処理は、DSP等を複数(例えば33個)用意し、複数のセグメントについて同時に処理しても、1つのDSP等により時分割で処理するように構成することも可能である。
【0038】
セグメント平均値算出手段24は、セグメント連結送信信号の電力Pおよびセグメント連結送信信号の電界強度Fと、そのセグメント連結送信信号のセグメント数m(=33)とから、1セグメント当たりの電力Prおよび電界強度Frを次の演算で求める。
【0039】
Fr=F−10 log m
=F−10 log 33=F−15.19 (dBμV/m)
Pr=P−15.19 [dBμV(emf)]
【0040】
上記演算で得られる電界強度Fr、信号電力Prは、各セグメントの電界強度と信号電力の平均値であり、セグメント連結送信信号全体の周波数特性が平坦である理想状態における各セグメントの電界強度と信号電力の値を表している。
【0041】
相対値算出手段25は、上記電界強度Frに対する各セグメントの実測の電界強度Fsegの相対値ΔFn(n:0〜32)、即ち、
ΔFn=Fsegn −Fr (dB) (n:0〜32)
を求める。
【0042】
また、電力Pr、Pseg についても次の演算、
ΔPn=Psegn −Pr (dB) (n:0〜32)
で相対値ΔPn(n:0〜32)を求める。なお、アンテナ係数がセグメント連結送信信号内で一定であれば、両相対値ΔFn、ΔPnは等しい。
【0043】
表示制御部26は、セグメント連結送信信号の電力P、セグメント連結送信信号の電界強度F、1セグメント当たりの電力Pr、1セグメント当たりの電界強度Fr、各セグメントの電力Pseg0〜Pseg32、各セグメントの電界強度Fseg0〜Fseg32 、電界強度Frに対する各セグメントの実測の電界強度Fsegの相対値ΔF0〜ΔF32を受け、これらの情報を表示器27の画面上に所定のレイアウトで表示する。
【0044】
より詳細には、表示制御部26は、測定結果表示制御部261、セグメント連結表示制御部262、スーパーセグメント表示制御部263、特定セグメント表示制御部264を備えて構成されている。
【0045】
測定結果表示制御部261は、セグメント連結送信信号測定部22の測定結果であるセグメント連結送信信号の電力P、電界強度Fの表示器27の画面上への表示を制御する。
【0046】
セグメント連結表示制御部262は、相対値算出手段25の算出結果である、セグメント連結送信信号全体の平均電力と各セグメントの実測の電力とから算出した各セグメントの相対値をセグメントの連結順に並べたグラフとしてスケールとともに表示器27の画面上への表示するための制御を行う。
【0047】
スーパーセグメント表示制御部263は、セグメント連結送信信号全体の平均電力に対する各セグメントの相対値がセグメントの連結順に表示されたグラフ上でスーパーセグメントの区切り、およびタイプAスーパーセグメントの中央セグメントを識別可能に表示するための制御を行う。なお、図示しない操作部からの指定により中央セグメントではなく、他のセグメントを識別可能に表示することも可能である。
【0048】
特定セグメント表示制御部は、セグメント測定部23の測定結果である33セグメントのそれぞれのセグメントの電力Pseg0〜Pseg32、電界強度Fseg0〜Fseg32のうち図示しない操作部から指定されたセグメントの測定結果の表示器27の画面上への表示と、セグメント連結送信信号全体の平均電力に対する各セグメントの相対値がセグメントの連結順に表示されたグラフ上で指定されたセグメントを識別可能に表示するための制御を行う。
【0049】
図2は、その表示レイアウトの一例を示すものであり、上段左側には、セグメント連結送信信号全体(33Segment)50の電力P値「68.28」と電界強度Fの値「87.65」が表示され、上段右側には特定セグメント(1Segment @No)51の電力Psegの値「58.28」と電界強度Fsegの値「77.65」が表示されている。なお、ここでは特定セグメントは図示しない操作部から指定されたセグメント(セグメント23)の値が表示されている。
【0050】
また、下段にはセグメント連結送信信号全体の平均電力に対する各セグメントの相対値を棒グラフ55で示したものを、セグメント連結送信信号内で連結されているセグメントの連結順に左から並べて1つのグラフ(Relative Level vs Segment)52として表示している。
【0051】
グラフ(Relative Level vs Segment)52の左側には、グラフの縦軸スケールを示す−20dB、0dB、+10dBが表示され、下側にはグラフ横軸のスケールとして左側より周波数順に連結されたセグメント番号を示す0、16、32が表示されている。なお、グラフの縦軸のスケール表示は一例であり、測定値に応じて変更が可能である。横軸のスケールについても同様に表示は一例であり変更が可能である。
【0052】
また、グラフ(Relative Level vs Segment)52内には、相対値0dBの位置を示すライン54と、タイプAスーパーセグメントのくくりを示すライン56が表示されている。なお、ラインによりスーパーセグメントのくくりを表示するのではなく、背景色等を変える等によりスーパーセグメントのくくりが識別できるように表示してもよい。
【0053】
さらに、各セグメントの相対値を示した棒グラフ55の内、タイプAスーパーセグメントの中央セグメント57を他のセグメントとは表示色や模様を変えることにより識別可能に表示している。
【0054】
また、上段右側に表示される特定セグメント(1Segment @No)51の表示と連動して、図示しない操作部から指定されたセグメントが他のセグメントとは表示色や模様を変えることにより識別可能に表示することができる。ここでは指定されたセグメント(セグメント23)58が識別可能に表示されている。
【0055】
なお、タイプAスーパーセグメントの中央セグメント57やタイプAスーパーセグメントのくくりを示すライン56は常時表示するのではなく、図示しない操作部からの指定により表示、非表示を選択するようにすることも可能である。
【0056】
グラフ(Relative Level vs Segment)52の右にはセグメント連結送信信号全体の電力が棒グラフ(ALL)53として表示されグラフ右側には縦軸スケールとし0、+120と単位であるdBμVが表示されている。なお、セグメント連結送信信号全体の電力を表示した棒グラフ(ALL)53を、グラフ(Relative Level vs Segment)52と同一画面で表示するのではなく、別画面に表示したり、図示しない操作部からの指定により表示、非表示を選択するようにすることも可能である。なお、グラフの縦軸のスケール表示は一例であり、測定に応じて変更が可能である。
【0057】
次に、本発明の電界強度測定方法について説明する。
測定地点でセグメント連結送信信号を受信し、中間周波数帯に変換する。そして中間周波数帯に変換されたセグメント連結送信信号の電界強度Fおよび信号電力Pを測定するとともに、33セグメントのそれぞれのセグメントについて信号電力Pseg0〜Pseg32および電界強度Fseg0〜Fseg32を測定する。
【0058】
次に、測定したセグメント連結送信信号の電界強度Fおよび信号電力Pとセグメント連結送信信号のセグメント数m(=33)とから1セグメントあたりの電力Prおよび電界強度Frをすでに説明した演算により求める。
【0059】
次に求めた1セグメントあたりの電力Prに対する各セグメントの実測の電力Pseg0〜Pseg32の相対値であるΔP0〜ΔP32および、1セグメントあたりの電界強度Frに対する各セグメントの実測の電界強度Fseg0〜Fseg32の相対値であるΔF0〜ΔF32をすでに説明した演算により算出する。
【0060】
そして、セグメント連結送信信号の電力P、セグメント連結送信信号の電界強度F、1セグメント当たりの電力Pr、1セグメント当たりの電界強度Fr、各セグメントの電力Pseg0〜Pseg32、各セグメントの電界強度Fseg0〜Fseg32 、電界強度Frに対する各セグメントの実測の電界強度Fsegの相対値ΔF0〜ΔF32の情報を表示器27の画面上に所定のレイアウトで表示する。表示レイアウトの一例は図2であり、すでに説明しているので省略する。
【0061】
このように実施形態の電界強度測定装置20および電界測定方法では、セグメント連結送信信号の電力P、電界強度Fだけでなく、各セグメントの電力Pseg 、電界強度Fseg を実測して、その実測結果と、セグメント連結送信信号の1セグメント当たりの電界強度Frや電力Prの平均値との差が識別できるように表示している。
【0062】
このため、単に特定セグメントの電力や電界強度が規定レベル以上か否かの判定だけでなく、特定セグメントの電力や電界強度がセグメント連結送信信号内で平均値に対してどのようなレベルにあるか否かを一目で判定でき、マルチパスの影響も把握することができる。
【0063】
また、セグメント連結送信信号全体の信号電力や電界強度の絶対値に依存することなく、1セグメントあたりの信号電力や電界強度の平均値に対する各セグメントの実測の信号電力や電界強度の相対値を表示することにより、マルチパスによる各セグメント間の信号電力や電界強度のばらつきを適切なスケールで表示し確認することが出来る。
【0064】
ここで、上述の電界強度測定装置20の実施形態では、セグメント平均値算出手段24が電界強度Frと電力Prの両方を求めていたが、セグメントについての実測値と平均値とを電界強度のみで表す場合、セグメント平均値算出手段24は電界強度Frのみを求めればよく、セグメントについての実測値と平均値とを電力値のみで表す場合、セグメント平均値算出手段24は電力値Prのみを求めればよい。また、電界強度測定装置についても同様である。
【0065】
なお、以上の説明では、地上マルチメディア放送波として33セグメントの信号がセグメント連結送信信号として使用される技術規格ISDB−Tmmについて説明したが、他の技術規格であるISDB−TやISDB−Tsbなどを測定する場合にも、連結されるセグメント数やスーパーセグメントの配置について変更することにより同様に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0066】
1…アンテナ、20…電界強度測定装置、21…周波数変換部、22…セグメント連結送信信号測定部、23…セグメント測定部、24…セグメント平均値算出手段、25…相対値算出手段、26…表示制御部、27…表示器、261…測定結果表示制御部、261…セグメント連結表示制御部、263…スーパーセグメント表示制御部、264…特定セグメント表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上マルチメディア放送波として送信されるセグメント連結送信信号を受信して、該セグメント連結送信信号の信号強度を測定し、該測定結果を表示器(27)の画面上に表示する電界強度測定装置において、
前記セグメント連結送信信号の信号強度を測定するセグメント連結送信信号測定部(22)と、
前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれのセグメントの信号強度を測定するセグメント測定部(23)と、
前記セグメント連結送信信号測定部の測定結果と前記セグメント連結送信信号を構成するセグメント数とからセグメントあたりの信号強度の平均値を算出するセグメント平均値算出手段(24)と、
前記セグメント測定部で測定された前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれの信号強度の測定値と、前記セグメント平均値算出手段で算出された前記セグメントあたりの信号強度の平均値とを受けて、当該測定値と当該平均値との差である相対値を前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれについて算出する相対値算出手段(25)と、
前記相対値算出手段により得られた前記セグメント連結送信信号を構成する複数のセグメントそれぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとして前記表示器に表示する表示制御部(26)とを設けたことを特徴とする電界強度測定装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記セグメント連結送信信号測定部の測定結果を、前記複数のセグメントそれぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとともに前記表示器に表示することを特徴とする請求項1記載の電界強度測定装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記複数のセグメントそれぞれの算出結果を、セグメント連結順に並べたグラフ上に前記セグメント連結送信信号内に配置されるスーパーセグメントを識別できるよう前記表示器に表示することを特徴とする請求項1または請求項2記載の電界強度測定装置。
【請求項4】
地上マルチメディア放送波として送信されるセグメント連結送信信号を受信して、該セグメント連結送信信号の信号強度を測定し、該測定結果を表示する電界強度測定方法において、
前記セグメント連結送信信号の信号強度を測定するセグメント連結送信信号測定段階と、
前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれのセグメントの信号強度を測定するセグメント測定段階と、
前記セグメント連結送信信号測定段階の測定結果と前記セグメント連結送信信号を構成するセグメント数とからセグメントあたりの信号強度の平均値を算出するセグメント平均値算出段階と、
前記セグメント測定段階で測定された前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれの信号強度の測定値と、前記セグメント平均値算出段階で算出された前記セグメントあたりの信号強度の平均値とを受けて、当該測定値と当該平均値との差である相対値を前記セグメント連結送信信号を構成する複数セグメントのそれぞれについて算出する相対値算出段階と、
前記相対値算出段階により得られた前記セグメント連結送信信号を構成する複数のセグメントそれぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとして表示するグラフ表示段階とを設けたことを特徴とする電界強度測定方法。
【請求項5】
前記グラフ表示段階は、前記セグメント連結送信信号測定段階の測定結果を、前記複数のセグメントそれぞれの算出結果をセグメント連結順に並べたグラフとともに表示することを特徴とする請求項4記載の電界強度測定方法。
【請求項6】
前記グラフ表示段階は、前記複数のセグメントそれぞれの算出結果を、セグメント連結順に並べたグラフ上に前記セグメント連結送信信号内に配置されるスーパーセグメントを識別できるよう表示することを特徴とする請求項4または請求項5記載の電界強度測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104821(P2013−104821A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249987(P2011−249987)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)