説明

電界発光素子の製造方法

【課題】高輝度を有し、高歩留まり、低コストで大画面化が可能な電界発光素子を提供する。
【解決手段】本発明の製法は、電界発光素子の、特に、粒子を塗布して形成される、蛍光体層・電子放出源を含む蛍光体層・誘電体層などを、冷間等方圧縮により、圧縮させることにより、発光層や誘電体層の機能を向上し、高輝度発光素子を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粒子を用いた電界発光素子の製法に関する。
さらに詳しくは、高い発光輝度を有するとともに低閾電圧で駆動させることができ、また、空隙の低下により残存酸素等が減少して酸化による劣化を抑制できるために長期にわたって高い発光輝度を維持することができ、さらに経済性にも優れた電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(EL)は、物質に電界(電場)を印加したときに生じる発光現象をいい、このような発光を生じる蛍光体(電界発光蛍光体)を発光体層として有する素子(以下、電界発光素子ということがある)は、近時、ディスプレイデバイス、液晶表示装置のバックライト、照明などの用途に使用されている。
【0003】
このような電界発光素子には交流駆動型電界発光素子と直流駆動型電界発光素子とが知られている。
交流駆動型電界発光素子には、大別して分散型と薄膜型と2種類の構造のものがある。
【0004】
前者の分散型電界発光素子は、電界発光蛍光体の粒子(以下、蛍光体粒子ということがある)をシアノエチルセルロースのような高誘電体物質(有機バインダー)中に分散させた蛍光体材料により発光体層を形成し、この発光体層を介して、必要に応じて少なくとも片面側に設けた絶縁高誘電体層を介して2つの電極層で挟み込んで構成される。そして、2つの電極層のうちで少なくとも一方を透明電極層とし、電極層間に所定の電圧および周波数の交流電圧を印加することにより、発光が得られる。(例えば、特許文献1参照)
電界発光蛍光体として、例えば、多量の硫化銅(Cu2SもしくはCuxS)を母体であるZnSの結晶中に析出させた銅付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Cu,Cl)が用いられる。この蛍光体は、数十μmの粒子径をもつ粒子である。
【0005】
分散型電界発光素子は、電極を備えた一方の基板に、チタン酸バリウムなどの高誘電率の微粒子を塗布して高誘電体層を形成し、ついで、有機バインダーに分散させたCu2
を内包したEL発光が可能な硫化亜鉛蛍光体粒子を高誘電体層の上に形成し、もう一方の電極を備えた基板で狭持することによって得られる。
【0006】
また、分散型電界発光素子に類似する電界発光素子として、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等のなどの導電性微粒子からなる電子放出源を蛍光体粒子に混入させ、電圧印加により、放出源からの電子により、近傍の蛍光体粒子を発光させる方式がある。
【0007】
薄膜型電界発光素子は、ガラス基板の上にITO透明電極層、第1絶縁層、電界発光体層、第2絶縁層、背面金属電極層が順に積層して形成された構造を有している。そして、電界発光体層は、蒸着などの方法により1/10μmオーダーの厚さの薄膜状に形成されている。ITO透明電極層と背面金属電極層との間に100V程度の交流電圧を加え、電界発光体層に2×106V/cm程度の高電界を印加することにより、発光が得られる。
(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)
また、直流駆動型電界発光素子は、シリコンウェハー等のようなp型半導体基板と、該基板上に形成された発光体層がITO等の透明電極からなるn型半導体基板によって狭持された構造を有している。透明電極とシリコン基板との間に10V程度の直流電圧を印加することにより発光が得られる。
【0008】
しかしながら、上記した従来の分散型電界発光素子、分散型類似電界発光素子あるいは直流駆動型電界発光素子において、発光体層は蛍光体粒子を用いて形成されているので、蛍光体粒子間の空隙の発生が避けられず、得られる電界発光素子は輝度が不充分であった。
【0009】
このような蛍光体を利用した発光素子の多くが、蛍光体粒子を、樹脂や、溶媒に懸濁させ、塗布液を印刷法やドクターブレード法、スピン法などにより塗工することで蛍光体膜を形成している。
【0010】
また、特許文献2(特開2001−345482号公報)には、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂およびポリプロピレンなどに蛍光体を配合した発光素子を発光ダイオードチップのパッケージの前面に配置して、白色発光を行うようにした蛍光表示装置が記載されている。また、特許文献3(特開2004−119634号公報)では、多価イオンを蛍光体粒子表面に付着させることによって帯電した蛍光体を発光ダイオードチップに吸着させることによって蛍光体層を形成する方法も開示されている。
【特許文献1】特開平7−226353号公報
【特許文献2】特開2001−345482号公報
【特許文献3】特開2004−119634号公報
【非特許文献1】T.Inoguchi, M.Takeda,Y,Kakihara, Y.Nakata and M.Yoshida:'74SID Intern.Symposium Digest,84(1974)
【非特許文献2】中西洋一郎(月刊ディスプレイ、2000年1月号、p30)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の発光体層は、微粒子の集合体から構成されているため、空隙率が大きく、また不均質であり、励起源である紫外線や高エネルギーの電子を、かならずしも効率よく、可視光に変換できているとはいえなかった。また、蛍光体粒子間と樹脂バインダーとからなる塗料を用いて発光体層を形成した後、樹脂を焼成して除去する場合には、その空隙がさらに、さらに大きくなり、また樹脂が残存する場合には、その樹脂そのものの存在により、効率が低下したり、さらには粒子表面における散乱により、発光された光の一部が、吸収されて、膜外に取り出す効率が低下するなど多くの問題点があった。また、導電膜付基板と発光体層との間に空隙が存在すると、発光輝度、発光寿命が不充分となることがあった。
【0012】
これらの問題を防ぐために、通常、平板などを用いた圧縮プレス方式等で加圧圧縮することにより蛍光体粒子間の空隙あるいは発光体層と導電膜との間の空隙を低減することが考えられたが、同様に粒子間、粒子と界面との空隙が避けられず、さらにこの方法では一方向からの加圧のために、一部しか加圧できない場合があったり、ごみ等の異物が存在していると、脆性の大きな基板の場合には、基板を損傷する等の弊害が発生し、充分に緻密な発光体層が得られない場合があった。
【0013】
また、薄膜型電界発光素子において、絶縁層(誘電体層ということがある)として、チタン酸バリウム等の粒子を用いて形成する場合、同様に粒子間の空隙の発生が避けられず、絶縁層の表面に凹凸が生成し、発光が不均一となることがあった。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、高輝度を有し、高歩留まりで低コストの電界発光素子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような情況のもと、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。そして
、基板に発光体層を形成した後、発光体層ごと基板を冷間等方圧縮方式による加圧処理を行うことで、蛍光体粒子間の空隙が著しく低減可能であり、励起源である紫外線や高エネルギーの電子を、効率よく可視光に変換できることを見出した。
[1] 表面に導電膜を有する導電膜付基板(1)と、発光体層と、絶縁膜と、表面に導電膜を有する導電膜付基板(2)とが順次積層され、かつ、
発光体層が、基板(1)の導電膜と絶縁膜との間に挟持されてなる電界発光素子の製造方
法において、
基板(1)の導電膜上に、蛍光体粒子からなる発光体層を形成した後、冷間等方圧縮方式
による加圧処理を施し、ついで絶縁膜を形成し、導電膜付基板(2)で狭持することを特徴
とする電界発光素子の製造方法。
[2] 表面に導電膜を有する導電膜付基板(1)と、絶縁膜と、発光体層と、表面に導電膜を有する導電膜付基板(2)とが、順次積層され、かつ、
発光体層が、絶縁膜と、基板(2)の導電膜の間に挟持されてなる電界発光素子の製造方
法において、
基板(1)の導電膜上に、絶縁膜を形成し、ついで蛍光体粒子からなる発光体層を形成し
た後、冷間等方圧縮方式による加圧処理を施し、導電膜付基板(2)で狭持することを特徴
とする電界発光素子の製造方法。
[3] 前記導電膜付基板(1)上に、絶縁膜を形成し、ついで該絶縁膜上に発光体層を形成したのち、冷間等方圧縮方式により加圧処理を行う[1]の電界発光素子の製造方法。
[4] 前記冷間等方圧縮形式による加圧処理を施した後、絶縁膜を形成する[2]の電界発光素子の製造方法。
[5] 表面に導電膜および半導体膜が順次積層されてなる基板(1)と、発光体層と、表面に導電膜を有する導電膜付基板(2)とが順次積層され、かつ発光体層が、基板(1)の半導体膜と、基板(2)の導電膜との間に挟持されてなる電界発光素子の製造方法において、
基板(1)の半導体膜上に、蛍光体粒子からなる発光体層を形成した後、冷間等方圧縮方
式による加圧処理を施し、ついで導電膜付基板(2)で狭持することを特徴とする電界発光
素子の製造方法。
[6] 基板(1)上に、絶縁膜を形成し、ついで該絶縁膜上に発光体層を形成したのち、冷間等方圧縮方式により加圧処理を行う[5]の電界発光素子の製造方法。
[7] 前記基板(1)および導電膜付基板(2)の少なくとも一方が透明導電膜付基板である[1]〜[6]の電界発光素子の製造方法。
[8] 冷間等方圧縮方式による加圧処理を、蛍光体層が形成された基板(1)を柔軟性フィルム袋に封印して行う[1]〜[7]の電界発光素子の製造方法。
[9] 前記加圧処理の圧力が10〜10,000kgf/cm2の範囲にあり、温度が常温(媒体が固化しない最低温度)〜350℃の範囲にある[1]〜[8]の電界発光素子の製造方法。
[10] 前記蛍光体粒子の平均粒子径が0.001〜100μmの範囲にある[1]〜[9]の電界発光素子の製造方法。
[11] 前記発光体層が、さらに電子放出源を含み、電子放出源が、平均粒子径が5〜1000nmの範囲にある導体または半導体粒子であり、発光体層中の電子放出源の含有量が固形分として1〜75重量%の範囲にある[1]〜[10]の電界発光素子の製造方法。
[12] 前記発光体層が、さらに有機バインダーを含み、発光体層中の有機バインダーの含有量が固形分として0.1〜40重量%の範囲にある[1]〜[10]の電界発光素子の製造方
法。
[13] 前記発光体を、発光体粒子および、必要に応じて、電子放出源および/または有機バインダーを含む塗布液を塗布した後、乾燥して形成する[1]〜[12]の電界発光素子の製
造方法。
[14] [1]〜[13]の製造方法で得られた電界発光素子を光源として用いてなる表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製法によれば、従来に比べて緻密な蛍光体層を形成できることにより、高輝度
が実現できたり、さらに閾電圧を低下させることもできたり、さらには空隙の低下により残存酸素等が減少して酸化による劣化を抑制できたりするために、長期にわたって高い発光輝度を維持することができる。また、絶縁層を設けた場合は表面凹凸が無く均質な絶縁層が形成できるため耐圧強度が高い上及び寿命が長く、発光が均一であり、このため長期に亘って高輝度を維持することができる。
【0017】
このため、本発明によれば、生産性に優れた電界発光素子の製造方法を提供することができる。
特に、従来のプレス法に比べ、全体に均等に同一圧がかけられるため、突起による基板の破損などがなく、必要十分な圧力印加が実現できる。また、電子放出源を混在せしめるタイプの電界発光素子の場合においては、放出源と蛍光体との密着を、より強固にできるため、電子放出源からの電子を効率よく発光に寄与せしめることができ、相乗効果にて輝度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明に係る電界発光素子の製造方法は、表面に導電膜を有する導電膜付基板(1)と、
発光体層と、絶縁膜と、表面に導電膜を有する導電膜付基板(2)とが順次積層され、かつ

発光体層が、基板(1)の導電膜と絶縁膜との間に挟持されてなる電界発光素子の製造方
法において、
基板(1)の導電膜上に、蛍光体粒子からなる発光体層を形成した後、冷間等方圧縮方式
による加圧処理を施し、ついで絶縁膜を形成し、導電膜付基板(2)で狭持することを特徴
としている。
【0019】
図1に本発明の工程を、図2に従来工程を示した。図中、1は基板、2は導電膜、3は誘電体膜、4は蛍光体、5は有機バインダー(任意成分)、6はフィルム袋、7は圧力、8は圧力、9は導電膜、10は基板(9の導電膜と10の基板で導電膜付基板(2)を形成
する)を示す。
【0020】
本発明の工程の要点は、冷間等方圧縮方式による加圧処理を採用した点にある。冷間等方圧縮方式の加圧処理は、従来より立方体や球形のなどの3次元的な成形体を加工する際に使用されていたが、本発明者らは、この加工処理を、極めて平面的な成形体である基板上の発光体層に適用することで、従来では得ることが困難であった発光体層の緻密化を可能とし、従来のものにくらべて、格段に作用効果が高い発光素子が得られることを見出した。
【0021】
まず本発明で採用される冷間等方圧縮方式による加圧処理方法について詳述する。
導電膜の表面に予め蛍光体層を形成した基板を、(1)有機フィルム袋に入れ、真空脱気する。(2)圧力容器に入れ、昇圧する。(3)加圧する。(4)減圧し、開放する。(5)圧力容器および有機フィルム袋から取り出す。
【0022】
この後、もう一方の導電膜付基板で狭持し、電界発光素子を完成させる。
工程(1)に用いるフィルム袋は、蛍光体層の表面形状にそって、配置し、圧力媒体の粒子間への侵入を防止すると同時に加圧媒体からの圧力をその境界線にて均一に蛍光体層にかける重要な役割を果たす。
【0023】
フィルム袋として、具体的には、ゴム、シリコン、ポリプロピレン、ポリエチレン等、さらにはアルミ箔などの金属薄膜なども使用される。これらは、蛍光体層に用いる蛍光体粒子の種類、適宜設定される圧力、使用する溶媒等によって適宜選択して用いることがで
きる。
【0024】
工程(2)の圧力は、蛍光体層に用いる蛍光体粒子の種類によっても異なるが10〜10,000kgf/cm2、さらには20〜5,000kgf/cm2の範囲にあることが好ましい。
【0025】
前記圧力が小さすぎると、発光体層の緻密化が不十分であり、発光輝度の向上、および閾電圧の低下が不充分となることがある。
前記圧力が大きすぎても、基板が損傷したり、蛍光体粒子の種類によっては蛍光体粒子が破壊して劣化したり、充分な発光輝度が得られないことがある。
【0026】
また、加工温度は用いる有機フィルム袋の耐熱性によって異なるが、通常、常温〜350℃の範囲にあることが好ましい。加圧によって発生する熱による影響を受ける場合は、常温より低い温度でも適用できる。この場合、使用媒体(溶媒)の凝固点以上であればよい。またより表面形状に沿ったものとするため、フィルムの柔軟性を高めればよく、このため、常温より高い温度がより好適である。
【0027】
このような冷間等方圧縮方式処理により、蛍光膜の緻密化が行われ、輝度と耐圧性能の向上が図れる。図3に、冷間等方圧縮方式処理における圧力と空隙率との関係の一例を示す。図3に示されるように、圧力が高くなれば空隙率は大きくなる。このため、基材の強度、蛍光体粒子の種類などに応じて上記範囲で、圧力は選択される。
【0028】
なお空隙率は、水銀圧入法により発光体層の細孔容積を求め、一方で、発光体層の密度から求めた発光体層の体積に対する割合を求めることができる。なお、必要に応じて、発光体層断面のSEM写真を撮影し、蛍光体粒子に該当する面積と空隙に該当する面積を求め
ることにより、空隙率を求めることもできる。なお、絶縁膜、誘電体層の空隙率も同様にして求めることができる。
【0029】
発光体層を形成した基板全体を保護膜フィルム袋にいれ、減圧して蛍光膜に密着させる。次に、保護フィルムを装着した後、圧力容器に入れ、液体を導入し、加圧する。
液体としては、冷間等方圧縮方式の加圧方法で使用されるものを特に制限されることなく使用でき、水、エチレングリコール、鉱物油などが用いられる。
【0030】
加圧時の温度としては、より好ましくは常温〜300℃の範囲にあることが望ましい。
加圧後、減圧し、開放し、圧力容器および有機フィルム袋から、処理後の発光体層が形成された基板を取り出し、ついで、絶縁膜を形成したのち、もう一方の導電膜付基板で、導電膜と、基板の導電膜が対峙するように狭持し、電界発光素子を完成させる。
蛍光体粒子
本発明で用いる蛍光体粒子としては、従来公知の蛍光体粒子を用いることができ、例えば、銅およびアルミニウム付活硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)、ユウロピウム付活酸化イットリウム(Y23:Eu)、ユウロピウム付活酸化・硫化イットリウム(Y22S:Eu)、マンガン付活硫化亜鉛(ZnS:Mn)、銅付活硫化亜鉛(ZnS:Cu)、銀
付活硫化亜鉛(ZnS:Ag)、銅およびアルミニウム付活硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)、マンガン付活珪酸亜鉛(Zn2SiO4:Mn)、ユウロピウム付活酸化アルミニウムバリウムマグネシウム(BaMgAl1017:Eu)、ユウロピウム付活硫化イットリア(Y22S:Eu)、ユウロピウム付活酸化イットリウム(Y23:Eu)等が挙げられる。さらに、後述する電子放出源を粒子内部に含んだ蛍光体粒子も好適に用いることができる。
【0031】
このような蛍光体粒子は発光色、輝度、寿命、コストなどの種々の要求に対応して適宜
選択することができる。なお、本発明では、CIP処理に際して加圧するが、蛍光体粒子よっては、比較的低圧で結晶が破壊され、発光が減少するものがあり、このため圧力は個々に決定する。
【0032】
このような蛍光体粒子は平均粒子径が0.001〜100μm、さらには0.01〜50μmの範囲にあることが好ましい。
蛍光体粒子の平均粒子径が小さい場合は、蛍光体粒子によっては結晶性が不充分な場合があり、付活材として導入する金属添加物による活性化が充分に行われず、蛍光体粒子の発光輝度が不充分となる場合がある。また、蛍光体粒子の平均粒子径が大きすぎると、蛍光を発する表面が減少し、発光輝度が不充分となることがある。
【0033】
発光体層中の蛍光体粒子の含有量は固形分として20重量%以上、さらには50重量%以上の範囲の範囲にあることが好ましい。
発光体層中の蛍光体粒子の含有量が固形分として20重量%未満の場合は、発光が不充分となる。
【0034】
発光体層は、上記した蛍光体粒子の分散液を塗布・乾燥させることによって、形成することができる。
電子放出源
本発明に用いる発光体層にはさらに電子放出源を含んでいてもよく、電子放出源は半導体または導体であって、平均粒子径が5〜1000nm、さらには10〜100nmの範囲にあることが好ましい。
【0035】
このような電子放出源としては、半導体または導体が用いられ、半導体としてはITO、ATO、ZnO、TiO2、NiO、CuAlO2などの酸化物半導体、およびSi、SiGe、GaAsなどのSiおよび化合物半導体等が挙げられ、導体としては、Au、Pt、Pd、Ag
、Cu等の金属微粒子、およびSb25等の酸化物導電体等が挙げられる。
【0036】
電子放出源の平均粒子径が5nm未満の場合は、電子放出源粒子の比表面積が大きくなり電子放出源の表面を介した電流が流れやすくなることにより、上下基板電極が短絡した状態になることがあり、効果的な発光が得られない場合がある。
【0037】
電子放出源の平均粒子径が1000nmを超えると、蛍光体粒子と均一で密着した混合状態が得られず、電子放出源の電子供与効果が不充分となることがある。
発光体層中の電子放出源の含有量は固形分として1〜75重量%、さらには2〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
【0038】
発光体層中の電子放出源の含有量が少なすぎると、電子供与効果が充分得られず、発光輝度の向上あるいは閾電圧の低下が不充分となることがある。
発光体層中の電子放出源の含有量が多すぎても、蛍光体粒子が少ないために発光が不充分となったり、電子放出源が多すぎるために発光体層の導電性が高くなり発光体層を介して上下基板電極が短絡した状態になることがあり、効果的な発光が得られない場合がある。
【0039】
前記発光体層が、さらに有機バインダーを含んでいてもよく、発光体層中の有機バインダーの含有量が固形分として0.1〜40重量%、望ましくは0.2〜20重量%、より望ましくは0.5〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
【0040】
本発明に用いる有機バインダーとしては従来公知の有機バインダーを用いることができ、例えば、シアノエチルセルロース、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
発光体層中に電子放出源を含む場合でも、冷間等方圧縮方式の加圧処理により、第1の効果として蛍光体層の緻密度が向上し、従来と同一膜厚とした場合には発光する蛍光体粒子の量が増加し、それに比例して発光輝度が向上する効果が得られる。加えて、第二の効果として、電子放出源と蛍光体粒子との間隔が縮小したり、密着することによって効果的に電子放出源からの電子が蛍光体を励起できるため輝度を向上する効果が得られる。
【0041】
電子放出源外包型発光素子における第二の効果について、模式的に図4に示した。図中、4は蛍光体、11は電子放出源、13は圧力界面、14は圧力を示す。さらには、基板と蛍光体、蛍光体粒子同士の付着力が向上した結果、脱落粒子に対する不良が減少し、歩留まりも向上する。さらにまた、粒子が緻密なので、電界発光素子の寿命を長くすることができるとともに、またELやFEDなどに適用すると耐圧性を高くすることができる。
【0042】
電子放出源から電子が放出され近傍の蛍光体粒子が発光するが、従来の電界発光素子では電子放出源と蛍光体粒子との距離が離れているため電子の減衰が大きく、発光に付与できない電子放出源が多く存在する。このため、圧縮プレス法(図4(a)参照)により加圧
する場合があるが、加圧効果は一部の電界放出源粒子に対してのみ得られ、充分な発光輝度の向上効果は得られない。
【0043】
一方、本発明の冷間等方圧縮方式による加圧処理(図4(b)参照)の場合、加圧により電子放出源と蛍光体粒子とを効果的に密着させることができ、充分な発光輝度の向上効果が得られる。
【0044】
発光体層は、発光体粒子および、必要に応じて、電子放出源および/または有機バインダーを含む塗布液を、基板上に形成された、導電膜または半導体膜表面に塗布した後、乾燥して形成することができる。
[実施態様]
本発明にかかる製造方法の第1の実施態様では、
表面に導電膜を有する導電膜付基板(1)と、発光体層と、絶縁膜と、表面に導電膜を有す
る導電膜付基板(2)とが順次積層され、かつ、
発光体層が、基板(1)の導電膜と絶縁膜との間に挟持されてなる電界発光素子の製造方
法において、
基板(1)の導電膜上に、蛍光体粒子からなる発光体層を形成した後、冷間等方圧縮方式
による加圧処理を施し、ついで絶縁膜を形成し、導電膜付基板(2)で狭持する。
【0045】
導体膜付基板、半導体膜付基板としては特に制限無く使用できる。前記導電膜付基板(1)上に、絶縁膜を形成し、ついで該絶縁膜上に発光体層を形成したのち、冷間等方圧縮方
式により加圧処理を行うことが望ましい。
【0046】
本発明に用いる導電膜付基板(1)は、ガラス、石英、Al23、アクリル等の基板上に導電膜が形成されている。
導電膜としては錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫、アルミニウム、クロム等従来公知の導電膜が用いられる。
【0047】
絶縁膜(誘電体膜ということがある)としては、従来公知の絶縁膜を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム、酸化シリコン、チッ化シリコン、炭化シリコン、ニオブ酸ストロンチウム等の高誘電率の無機薄膜も好適に用いることができる。
【0048】
通常、導電膜の厚さは、0.05〜0.5μmの範囲にある。
蛍光体粒子からなる発光体層および、冷間等方圧縮方式による加圧処理については、前記した通りである。
【0049】
また、本発明では、上記工程の順番を入れ替えて、表面に導電膜を有する導電膜付基板(1)と、絶縁膜と、発光体層と、表面に導電膜を有する導電膜付基板(2)とが、順次積層され、かつ、
発光体層が、絶縁膜と、基板(2)の導電膜の間に挟持されてなる電界発光素子の製造方
法において、
基板(1)の導電膜上に、絶縁膜を形成し、ついで蛍光体粒子からなる発光体層を形成し
た後、冷間等方圧縮方式による加圧処理を施し、導電膜付基板(2)で狭持することで電界
発光素子の製造することも可能である。かかる方法では、前記冷間等方圧縮形式による加圧処理を施した後、絶縁膜を形成することが望ましい。
【0050】
さらにまた、上記態様とは別に、表面に導電膜および半導体膜が順次積層されてなる基板(1)と、発光体層と、表面に導電膜を有する導電膜付基板(2)とが順次積層され、かつ発光体層が、基板(1)の半導体膜と、基板(2)の導電膜との間に挟持されてなる電界発光素子の製造方法において、
基板(1)の半導体膜上に、蛍光体粒子からなる発光体層を形成した後、冷間等方圧縮方
式による加圧処理を施し、ついで導電膜付基板(2)で狭持することも本発明の態様である

【0051】
この場合、導電膜としては前記と同じものが挙げられる。また、半導体膜の厚さは前記導電膜と同程度あればよい。半導体膜としては、NiO、CuAlO2などのp型酸化物半導体などが挙げられる。また、p型半導体特性を有するシリコンウェハも用いることができる。さらには、例えば、チタン酸バリウム、酸化シリコン、チッ化シリコン、炭化シリコン、ニオブ酸ストロンチウム等の高誘電率の無機薄膜も好適に用いることができる。基板(2)の導電膜としては、n型半導体特性を有するITO、ATO、ZnO、TiO2などが挙げられる。かかる方法では、基板(1)上に、絶縁膜を形成し、ついで該絶縁膜上に発光体層を形成し
たのち、冷間等方圧縮方式により加圧処理を行ってもよい。
【0052】
以上の本発明の実施態様で製造される電界発光素子は、分散型電界発光素子の製造に適用される。また、半導体膜付基板を使用する場合は、直流駆動が可能となる。このような電界発光素子は、片面発光型となる。
【0053】
本発明の第2の実施形態は、発光体層が蛍光体粒子と電子放出源とからなる分散型電界発光素子への適用である。この場合、蛍光体粒子の周辺にITOやATOなどの電子放出源の粒子が存在し、電場による電子放出により、蛍光体粒子を発光させることができる(このような蛍光体層を有する発光素子を電子放出源外包型発光素子ということがある)。この態様が、本発明の第3の実施形態であり、薄膜型電界発光素子への適用である。図5に薄膜型電界発光素子の構造を示す断面模式図である。図中、15はLEDチップ、16は蛍光体層、17は前面板を示す
薄膜型電界発光素子は、例えば、ガラス基板の上にITO透明電極層、第1絶縁膜、電界発光体層、第2絶縁膜、背面金属電極層が順に積層して形成された構造を有している。
【0054】
そして、電界発光体層は、蒸着などの方法により1/10μmオーダーの厚さの薄膜状に形成されている。
本発明では、従来の方法と異なり、蛍光体層を形成するとともに、蛍光体層の上層にタン酸バリウムなどの粒子を塗布して各絶縁膜を形成した後、形成冷間等方圧縮方式による加圧処理を施してもよい。具体的には絶縁膜を形成した基板を、(1)有機フィルム袋に入れ、真空脱気する。(2)圧力容器に入れ、昇圧する。(3)加圧する。(4)減圧し、開放する。(5)圧力容器および有機フィルム袋から取り出す。各工程における条件等は前記第1の実施形態、第2の実施形態と同様である。
【0055】
この後、もう一方の導電膜付基板で狭持し、薄膜型電界発光素子を完成させる。このようにして得られた薄膜型電界発光素子は、絶縁膜が緻密であり、また発光体との密着性も高い。このため、絶縁性が向上し、より高電圧印加が可能にできる。あるいは同じ絶縁性であれば、絶縁膜を薄くすることが可能であり、実効電圧を向上できるために高い発光輝度が得られる。また、得られる絶縁膜の表面は平坦であり、均質な絶縁層が形成できるため耐圧強度が高く、発光が均一であり、このため長期に亘って高輝度を維持することができる。
【0056】
なお、前記第1の実施形態および第2の実施形態において、必要に応じて絶縁膜あるいは誘電体膜を設ける場合も、第3の実施形態と同様にチタン酸バリウムなどの粒子を塗布して絶縁膜あるいは誘電体膜を形成した後、形成冷間等方圧縮方式による加圧処理を施すことができる。
【0057】
さらに、第1の実施形態、第2の実施形態および第3の実施形態において、従来と同様に一対の導電膜付基板で狭持した後、前記したと同様に形成冷間等方圧縮方式による加圧処理を施すことも可能である。
【0058】
本発明の製造方法で得られた電界発光素子を光源として、各種表示装置用途に好適に用いることができる。たとえば、プラズマディスプレー、FED(フィールドエミッシンディスプレー)、照明用LEDなどの用途を挙げることができる。
【0059】
プラズマディスプレーの場合、蛍光体としては、赤:(Y、Gd、Eu)23 緑:(Zn、Mn)2SiO4 青:(Ba、Eu)MgAl1017 などが用いられ、各種樹脂、たとえば印刷法の場合には高粘性樹脂と、フォトリソ法の場合には、フォトレジストと混合して、これを塗布することによって蛍光体層が形成される。
【0060】
FEDは、電子源が蛍光体層と相対して配置され、スペーサーによって、一定間隔が保持されており、電子源で放出された電子は、蛍光体層との間に印加された高電圧によって加速され、蛍光体を励起し、各々の電子源により、青、緑、赤の三原色を発光させて、映像を得ることを可能としたものである。この場合、蛍光体は、青:ZnS:Ag,Al、 緑:ZnS:Cu,Al、 赤:Y22S:Eu などが使用され、いずれも1−5μm前後の粒子を、塗布方法に準じてバインダー中に分散させ塗布する。バインダーはベーキングにより、除去される。
【0061】
照明用LEDは発光ダイオードから発せられる青色光と、発光ダイオードにより励起され
る蛍光体層からの光との合成により、適切な白色光源を得るものである。
[実施例]
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
電界発光素子(1)の作成
金属アルミニウム製背面基板((株)マテリアル製:Al板 A2024)上にチタン酸バリウム微粒子(共立マテリアル(株)製:BT-HP900DX、平均粒子径0.15μm)を塗布して形成した誘電体膜の上に、平均粒子径約10μの銅付活硫化亜鉛(ZnS:Cu、電子放出源としてCu2l内包)蛍光体粒子(東芝(株)製)をシアノエチルセルロースのバインダーに
分散させた分散液を塗布し、約100℃で加熱処理して発光体層を形成した。発光体層の厚さは100μm、空隙率は40容積%であった。
これをポリプロピレン袋に入れ、真空封止を行い、ついで、水圧50MPa下で、1時間
CIP処理を行った。発光体層の厚さは50μm、空隙率は40容積%であった。
【0062】
ついで、真空を破り、袋を取り除いた後、ガラス基板の片面にITOから成る透明電極層を形成した透明電極層付基板で挟み、さらに全体を外皮フィルムで覆い、電界発光素子(1)を作成した。
【0063】
発光輝度の測定
分散型の電界発光素子(1)の両電極にAC100V、周波数1kHzの交流電圧を印加し
、発光輝度を測定したところ、125cd/m2であった。
【0064】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を
発光寿命として測定した。分散型の電界発光素子(1)の発光寿命は15,000時間であ
った。
敷位電圧の測定
電界発光素子(1)に、0Vppから徐々に電圧を印加し、最大輝度の50%の発光強度が確
認される印加電圧(敷位電圧)を測定したところ、50Vであった。
[比較例1] (実施例1でCIP処理なし)
電界発光素子(R1)の作成
実施例1と同様にして誘電体膜を形成し、ついで発光体層を形成した。発光体層の厚さは100μm、空隙率は40容積%であった。
ついで、ガラス基板の片面にITOから成る透明電極層を形成した透明電極層付基板で挟み、さらに全体を外皮フィルムで覆い、電界発光素子(R1)を作成した。
【0065】
発光輝度の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(R1)の発光輝度を測定したところ95cd/m2
あった。
【0066】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定したところ4,000時間であった。
【0067】
敷位電圧の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(R1)の敷位電圧を測定したところ、50Vであった

[実施例2] (電子放出源を混合した蛍光体粒子)
電界発光素子(2)の作成
ガラス基板の片面にITOから成る透明電極層を形成して一対の透明電極層付基板を作成した。一方、5μmの平均粒径を有する銅およびアルミニウム付活硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)蛍光体粒子(東芝(株)製)100gに、電子放出源として平均粒径20nmのITO微粒子のエタノール分散液(固形分10重量%)20gを加えて混合した後、100℃に加熱し溶剤を揮発させて乾燥し、電子放出源を混合した蛍光体粒子を調製した。
【0068】
次いで、得られた電子放出源を混合した蛍光体粒子を、一方の透明電極層付基板上に沈降法により塗布して発光体層を形成した。発光体層の厚さ30μm、空隙率は45%であった。
【0069】
この発光体層を形成した基板を、ポリプロピレン袋に入れ、真空封止を行い、水圧50MPa下で、1時間CIP処理を行った。発光体層の厚さは20μm、空隙率は15容積%となった。CIP処理前後の発光体層の写真を図6に示すが、発光体層表面の凹凸が大幅に減少した。
ついで、真空を破り、袋を取り除いた後、絶縁膜として厚さ12μmのポリエチレン膜をその上に形成し、もう1方の透明電極層付基板で挟み、さらに全体を外皮フィルムで覆い、電界発光素子(2)を作成した。
【0070】
発光輝度の測定
得られた電界発光素子(2)に、100V、周波数1kHzの交流電圧を印加したところ、
鮮やかな緑色の発光が見られた。輝度は250cd/m2であった。
【0071】
発光寿命の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(2)の発光寿命を測定したところ20,000時間
であった。
【0072】
敷位電圧の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(2)の敷位電圧を測定したところ、70Vであった。[比較例2] (実施例2でCIP処理なし)
電界発光素子(R2)の作成
実施例2と同様にして電子放出源を混合した蛍光体粒子を含む発光体層を形成した。発光体層の厚さ30μm、空隙率は40容積%であった。
ついで、絶縁膜として厚さ12μmのポリエチレン膜をその上に形成し、もう1方の透明電極層付基板で挟み、さらに全体を外皮フィルムで覆い、電界発光素子(R2)を作成した。
【0073】
発光輝度の測定
実施例2と同様にして100V、周波数1kHzの交流電圧を印加したところ、緑色の発光が見られた。輝度は150cd/m2であった。
【0074】
発光寿命の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(R2)の発光寿命を測定したところ10,000時間であった。
【0075】
敷位電圧の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(R2)の敷位電圧を測定したところ、80Vであった

[実施例3]
電界発光素子(3)の作成
ガラス基板の片面にITOから成る透明電極層を形成して一対の透明電極層付基板を作成した。一方、1μmの平均粒径を有するユウロピウム付活酸化イットリウム(Y23:Eu)蛍光体粒子(東芝(株)製)100gに、電子放出源として平均粒径20nmのIT
O微粒子のエタノール分散液(固形分10重量%)20gを加えて混合した後、100℃に加熱し溶剤を揮発させて乾燥し、電子放出源を混合した蛍光体粒子を調製した。
【0076】
次いで、得られた電子放出源を混合した蛍光体粒子を、前記透明ガラス電極板上に沈降法により塗布して発光体層を形成した。発光体層の厚さは5μm、空隙率は45容積%であった。
【0077】
この発光体層を形成した基板を、ポリプロピレン袋に入れ、真空封止を行い、水圧500MPa下で、1時間CIP処理を行った。発光体層の厚さは2μm、空隙率は15容積%であった。
【0078】
ついで、真空を破り、袋を取り除いた後、絶縁膜として厚さ12μmのポリエチレン膜をその上に形成し、もう1方の透明電極層付基板で挟み、さらに全体を外皮フィルムで覆
い、電界発光素子(3)を作成した。
【0079】
発光輝度の測定
得られた電界発光素子(3)に、150V、周波数1kHzの交流電圧を印加したところ
、鮮やかな赤色の発光が見られた。輝度は100cd/m2であった。
【0080】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定したところ40,000時間であった。
【0081】
敷位電圧の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(3)の敷位電圧を測定したところ、120Vであった。
[比較例3] (実施例3でCIP処理なし)
電界発光素子(R3)の作成
実施例3と同様にして電子放出源を混合した蛍光体粒子を含む発光体層を形成した。発光体層の厚さ5μm、空隙率は40%であった。
ついで、絶縁膜として厚さ12μmのポリエチレン膜をその上に形成し、もう1方の透明電極層付基板で挟み、さらに全体を外皮フィルムで覆い、電界発光素子(R3)を作成した。
【0082】
発光輝度の測定
得られた電界発光素子(R3)に、150V、周波数1kHzの交流電圧を印加したところ、発光しなかった。
【0083】
つぎに、電圧を300Vに変更して印加したところ赤色の発光が見られた。輝度は30cd/m2であった。
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を電圧300Vで継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定したところ30000時間であった。
【0084】
敷位電圧の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(R3)の敷位電圧を測定したところ、270Vであった。
[実施例4]
電界発光素子(4)の作成
ガラス基板の片面にITOから成る透明電極層を形成して一対の透明電極層付基板を作成した。
【0085】
ついで、一方の透明電極層付基板上に、EB(electron beam)蒸着法により厚さ0.
5μmのマンガン付活硫化亜鉛(ZnS:Mn)の発光体層を形成した。ついで、発光体層
上に印刷法によりチタン酸バリウム微粒子からなる厚さ30μmの誘電体層を形成した。このとき、誘電体層の空隙率は40容量%であった。
【0086】
ついで、誘電体層を形成した基板をポリプロピレン袋に入れ、真空封止を行い、水圧50MPa下で、1時間CIP処理を行った。誘電体層の厚さは22μm、空隙率は20容量%であった。
【0087】
ついで、真空を破り、袋を取り除いた後、もう一方の透明電極層付基板で挟み、さらに全体を外皮フィルムで覆い、電界発光素子(4)を作成した。
発光輝度の測定
得られた電界発光素子(4)に、100V、周波数1kHzの交流電圧を印加したところ、
鮮やかなオレンジの発光が見られた。輝度は300cd/m2であった。
【0088】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定したところ30,000時間であった。
【0089】
敷位電圧の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(4)の敷位電圧を測定したところ、40Vであった

[比較例4] (実施例4でCIP処理なし)
電界発光素子(R4)の作成
ガラス基板の片面にITOから成る透明電極層を形成して一対の透明電極層付基板を作成した。
【0090】
ついで、一方の透明電極層付基板上に、EB蒸着法により厚さ0.5μmのマンガン付活硫化亜鉛(ZnS:Mn)の発光体層を形成した。ついで、発光体層上に印刷法によりチ
タン酸バリウム微粒子からなる厚さ30μmの誘電体層を形成した。このとき、誘電体層の空隙率は40容量%であった。
【0091】
ついで、真空を破り、袋を取り除いた後、もう一方の透明電極層付基板で挟み、さらに全体を外皮フィルムで覆い、電界発光素子(R4)を作成した。
発光輝度の測定
得られた電界発光素子(R4)に、100V、周波数1kHzの交流電圧を印加したところ、オレンジの発光が見られた。輝度は200cd/m2であった。
【0092】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定したところ20,000時間であった。
【0093】
敷位電圧の測定
実施例1と同様にして電界発光素子(4)の敷位電圧を測定したところ、60Vであった

[産業上の利用可能性]
本発明の製法よれば、より明るく、長寿命な電界発光素子が可能になる。耐圧特性の安定などにより歩留も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施形態である分散型電界発光素子の製法を模式的に示す断面図である。
【図2】従来本発明の分散型電界発光素子の製法を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明のCIP法における圧力と得られる緻密度の一例を示す図である。
【図4】ラバープレス法よる加圧法と、本発明のCIP法における加圧による方法との効果の違いを示す図である。
【図5】薄膜型EL素子の構造を示す。
【図6】CIP処理前後の発光体層の写真を示す。
【符号の説明】
【0095】
1…基板
2…導電膜
3…絶縁膜
4…蛍光体層
5…有機バインダー
6…フィルム袋
7…圧力
8…圧力
9…導電膜
10…基板
11…電子放出源
12…発光部分
13…圧力界面
14…圧力
15…LEDチップ
16…蛍光体層
17…前面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導電膜を有する導電膜付基板(1)と、発光体層と、絶縁膜と、表面に導電膜を有す
る導電膜付基板(2)とが順次積層され、かつ、
発光体層が、基板(1)の導電膜と絶縁膜との間に挟持されてなる電界発光素子の製造方
法において、
基板(1)の導電膜上に、蛍光体粒子からなる発光体層を形成した後、冷間等方圧縮方式
による加圧処理を施し、ついで絶縁膜を形成し、導電膜付基板(2)で狭持することを特徴
とする電界発光素子の製造方法。
【請求項2】
表面に導電膜を有する導電膜付基板(1)と、絶縁膜と、発光体層と、表面に導電膜を有す
る導電膜付基板(2)とが、順次積層され、かつ、
発光体層が、絶縁膜と、基板(2)の導電膜の間に挟持されてなる電界発光素子の製造方
法において、
基板(1)の導電膜上に、絶縁膜を形成し、ついで蛍光体粒子からなる発光体層を形成し
た後、冷間等方圧縮方式による加圧処理を施し、導電膜付基板(2)で狭持することを特徴
とする電界発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記導電膜付基板(1)上に、絶縁膜を形成し、ついで該絶縁膜上に発光体層を形成したの
ち、冷間等方圧縮方式により加圧処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記冷間等方圧縮形式による加圧処理を施した後、絶縁膜を形成することを特徴とする請求項2に記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項5】
表面に導電膜および半導体膜が順次積層されてなる基板(1)と、発光体層と、表面に導電
膜を有する導電膜付基板(2)とが順次積層され、かつ発光体層が、基板(1)の半導体膜と、基板(2)の導電膜との間に挟持されてなる電界発光素子の製造方法において、
基板(1)の半導体膜上に、蛍光体粒子からなる発光体層を形成した後、冷間等方圧縮方
式による加圧処理を施し、ついで導電膜付基板(2)で狭持することを特徴とする電界発光
素子の製造方法。
【請求項6】
基板(1)上に、絶縁膜を形成し、ついで該絶縁膜上に発光体層を形成したのち、冷間等方
圧縮方式により加圧処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記基板(1)および導電膜付基板(2)の少なくとも一方が透明導電膜付基板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項8】
冷間等方圧縮方式による加圧処理を、蛍光体層が形成された基板(1)を柔軟性フィルム袋
に封印して行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記加圧処理の圧力が10〜10,000kgf/cm2の範囲にあり、温度が常温(媒体が固
化しない最低温度)〜350℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記蛍光体粒子の平均粒子径が0.001〜100μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記発光体層が、さらに電子放出源を含み、電子放出源が、平均粒子径が5〜1000nmの範囲にある導体または半導体粒子であり、発光体層中の電子放出源の含有量が固形分として1〜75重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記発光体層が、さらに有機バインダーを含み、発光体層中の有機バインダーの含有量が固形分として0.1〜40重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記発光体を、発光体粒子および、必要に応じて、電子放出源および/または有機バインダーを含む塗布液を塗布した後、乾燥して形成することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法で得られた電界発光素子を光源として用いてなる表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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