電線固定部材
【課題】組み付けが簡単で、部品点数が少なく、十分なラップ量の設定も可能で、さらに部品点数を少なくできる電線固定部材を提供する。
【解決手段】電線20を固定する電線固定バンド1において、リング状に形成し両端部が円周方向に交差した本体部2の一方の端部2aの先端に第1フランジ部3を、他方の端部2bの先端に第2フランジ部4を、他方の端部2bが一方の端部2aから離間する方向に凸部5を、他方の端部2bの先端よりも一方の端部よりに係止部6を、それぞれ設ける。
【解決手段】電線20を固定する電線固定バンド1において、リング状に形成し両端部が円周方向に交差した本体部2の一方の端部2aの先端に第1フランジ部3を、他方の端部2bの先端に第2フランジ部4を、他方の端部2bが一方の端部2aから離間する方向に凸部5を、他方の端部2bの先端よりも一方の端部よりに係止部6を、それぞれ設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス等の電線をハウジングに固定するための電線固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤーハーネスなどの電線が引っ張られた際の応力を加締め部等に伝えないために、電線中間部分をコネクタハウジング等の筐体に固定する構造を図11に示す。図11に示した構造は、電線101と、ハウジング102と、CS−RING103と、ストッパーRING104と、収縮チューブ105と、から構成されている。
【0003】
電線101は、複数の被服電線101aが外側絶縁カバー101bで覆われ、被服電線の一端には、例えば、芯線を露出させて端子金具などが取り付けられる。ハウジング102は、絶縁性の合成樹脂などで略円筒状に形成される。ハウジング102の内部を貫通する孔は、大径部102aと、大径部102aよりも直径が小さい小径部102bと、が連なって構成され、大径部102aと小径部102bとの境界には段部102cが形成されている。
【0004】
CS−RING103は、リング状に形成され、リングの内径は外側絶縁カバー101bの外径よりも大きい。また、CS−RING103は、リングの内側に向かって複数の凸部103aが形成されている。凸部103aは、各凸部103aの先端を結んだ円の径(凸内径)が外側絶縁カバー101bの外径よりも小さくなるように形成されている。ストッパーRING104は、リング状に形成され、リングの内径がCS−RING103の外径と略同一、かつ、外径がハウジング102の大径部102aと略同一となっている。収縮チューブ105は、外側絶縁カバー101bの外表面に取り付けられている。
【0005】
CS−RING103は、ストッパーRING104の内径部に取り付けられて、電線101に組み付けられる。その後ハウジング102内へ段部102cにストッパーRING104の一方の側面が接するように取り付けられる。
【0006】
また、電気伝導ケーブルを電気コネクタに固定する部材としては、特許文献1に記載のストレインリリーフが提案されている。
【特許文献1】特開2005−534141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図1に示した構造では、外側絶縁カバー101bの外径よりも小さい凸内径のCS−RING103を通さなければならないため常に圧入状態で作業することになり組み付けが困難である。また、組み付け性との兼ね合いからCS−RING103の凸部103aの大きさやラップ量には限界があり、十分なラップ量を設定することができない。また、図11の矢印A方向への移動規制は可能であるが逆方向への規制ができない。さらに、固定するためにCS−RING103とストッパーRING104の2つの部品が必要であり部品点数が多い。といった問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載のストレインリリーフはオーバーモールドされるので、分解が困難であり何度も脱着を行うことはできないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、組み付けが簡単で、部品点数が少なく、十分なラップ量の設定も可能で、さらに部品点数を少なくできる電線固定部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、内側に電線を通して、ハウジング内に取り付けられることにより前記電線を前記ハウジングに固定する電線固定部材において、両端部が円周方向に交差してリング状をなすとともに前記両端部が接離することで拡縮自在のリング本体部と、前記両端部の先端から前記リング本体部の外周方向に立設した一対のフランジ部と、前記リング本体部から外周方向に突出し、円周方向に交差した両端部のうち他方の端部が一方の端部から離間する方向に配置された凸部と、前記他方の端部から突出し、前記リング本体部が縮径した際に前記一方の端部の先端から立設した一方の前記フランジ部に係止される係止部と、を備えたことを特徴とする電線固定部材である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記リング本体部の前記一方の端部にスリットを設け、前記スリットに前記他方の端部が進入して円周上に交差されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記電線を固定する爪部が、前記リング本体部の内周に向かって突出するとともに前記リング本体部の円周に沿って複数設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記リング本体部の前記一方の端部と前記他方の端部との中間に前記リング本体部の外周方向に突出した前記ハウジングに固定される固定部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、一対のフランジ部を互いに接近させるようにしてリング本体部の外内径を拡径すれば電線を容易に通すことができるので組み付けが容易となる。また、他方の端部から立設したフランジ部と凸部とを互いに接近させるようにしてリング本体部の内外径を縮径すれば電線を強固に固定することができる。また、係止部によってリング本体部が中立状態に戻ることを阻止して前記した電線を固定する状態を保持することができる。また、固定を解除することが容易なため何度でも組み付けのやり直しが可能となる。さらに、1つの部材で電線の固定が可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に発明の効果に加えて、リング本体部の一方の端部に設けたスリットに他方の端部が進入して円周上に交差されることで、リング本体部のリング状態を保持し易くすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、複数の爪部によってより確実に電線を固定することができ、十分なラップ量を得ることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、固定した電線がどの方向に移動しようとしても移動を規制することができるため確実にハウジング内に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかる電線固定部材としての電線固定バンドを図1ないし図10に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる電線固定バンドの中立状態の斜視図である。図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。図3は、図1に示された電線固定バンドの固定状態の斜視図である。図4は、図3のX−X線に沿う断面図である。本発明の一実施形態にかかる電線固定バンド1は、図1ないし図4に示すように本体部2に、第1フランジ部3と、第2フランジ部4と、凸部5と、係止部6と、爪部7と、固定部8と、を備えている。
【0019】
リング本体部としての本体部2は、例えば帯板状の板金等を曲げる等してリング状に形成されている。また、本体部2は、リングが拡径(内外径が拡大)した際には挿入される電線の外径よりも大きく、後述する爪部7が電線に接触しない程度の大きさに形成されている。また、本体部2の他方の端部2bの幅は一方の端部2aの幅よりも狭く形成されている。また、本体部2の一方の端部2aにはスリット9が設けられており、後述する第2フランジ部4が進入して円周上に交差するように配置されている。従って、スリット9は他方の端部2aと略同じ幅かわずかに広く形成されており、さらに、スリット9は、本体部2が縮径(内外径が縮小)して係止部6が第1フランジ部3に係止されるまで第2フランジ部4が一方の端部2a方向に移動可能な長さに形成されている。すなわち、本体部2は両端部が円周方向に交差してリング状をなすとともに前記両端部が接離することで拡縮自在となっている。
【0020】
一対のフランジ部としての第1フランジ部3は、本体部2の一方の端部2aの先端に本体部2の外周方向に向かって立設している。一対のフランジ部としての第2フランジ部4は、本体部2の他方の端部2bの先端に本体部2の外周方向に向かって立設している。
【0021】
凸部5は、本体部2の一方の端部2aのスリット9よりも他方の端部2b寄りに設けられている。すなわち、本体部2の中立状態(外力を受けてなく弾性変形していない初期状態)で第2フランジ部4が第1のフランジ部3から離間する方向に配置されている。また、凸部5は、本体部2の他方の端部2b寄り(中央寄り)にコ字状に切れ目を入れて外周方向に折り曲げて突出している。
【0022】
係止部6は、本体部2の他方の端部2bに設けられている。また、係止部6は、本体部2の一方の端部2a寄りにコ字状に切れ目を入れて外周方向に折り曲げて突出している。また、係止部6は、図1および図2に示すように本体部2が弾性変形していない中立状態の場合、第1フランジ部3を第2フランジ部4との間に位置するように設けられている。そして、図3および図4に示すように本体部2が縮径して固定状態(電線を固定している状態)の場合、係止部6が第1フランジ部3に係止されて第2フランジ部が第1フランジ部に接近して中立状態に戻るのを阻止する。
【0023】
爪部7は、本体部2の両側面に円周に沿って複数設けられている。また、爪部7は、本体部2の内周に向かって突出している。
【0024】
固定部8は、本体部2の一方の端部2aと他方の端部2bの中間に設けられている。中間とは、例えば図1ないし図4のように、第1、第2フランジ部が円周の上方に位置した際には下方近辺に位置することが望ましい。また、固定部8は、本体部2の他方の端部2b寄りにコ字状に切れ目を入れて外周方向に折り曲げて突出している。
【0025】
次に、上述した構成の電線固定バンド1を用いた電線の固定手順について図5ないし図10を参照して説明する。
【0026】
まず、図5に示すように、電線固定バンド1の第1フランジ部3と第2フランジ部4とをラジオペンチ30で挟み、第1フランジ部3と第2フランジ部4が互いに接するようにする。このようにすると、本体部2が拡径する方向に弾性変形する。なお、ラジオペンチ30は、特にラジオペンチ30に限らず、第1フランジ3と第2フランジ4とを挟んで互いに接するようにできる工具であればよい。
【0027】
次に、図6に示すように、本体部2が拡径した状態の電線固定バンド1に電線20を挿入する。電線個定バンド1は、本体部2が拡径しているために電線20の外径よりも大きくなり容易に電線を挿入することができる。ここで、電線20は、従来技術と同様に複数の被服電線が外側絶縁カバーで覆われている。図6ないし図9は簡略化のため電線20の外側絶縁カバーで覆われた外表面部分のみを示す。
【0028】
次に、図7に示すように、電線20の所定の位置に電線固定バンド1が位置付けられた時点で第1、第2フランジを離す。そうすると、本体部2が縮径する方向に弾性復元し中立状態に戻ろうとする。本体部2が弾性復元すると、爪部7が、電線20の外表面に軽く食い込み仮固定することができる。
【0029】
次に、図8に示したように、第2フランジ部4と凸部5とをラジオペンチ30で挟み、第2フランジ部4と凸部5が互いに近づく(つまり、第1フランジ部3と第2フランジ部4とが離れる)ようにする。このようにすると、本体部2が縮径する方向に弾性変形し、係止部6が第1フランジ部4の付け根部分で押されて弾性変形しながら第1フランジ部3を通過する。
【0030】
そして、図9に示したように、係止部6が第1フランジ部3を完全に通過した時点でラジオペンチ30を離すと、係止部6の先端部が第1フランジ部3の側面と接触して本体部2が中立状態に戻ろうとすることを阻止する。この時点で、爪部7は、図7に示した状態よりもより深く電線20に食い込むためにより強固に保持される。
【0031】
上述した方向で電線20に取り付けられた電線固定バンド1は、図10に示すように例えば電線20内の被服電線を端子金具などに接続するコネクタハウジング40内の取り付け部40aに取り付けられる。取り付け部40aは、電線固定バンド1よりも幅(図10のW)が広く、かつ、内径(図10のH)が電線固定バンド1の第1フランジ部3、第2フランジ部4と固定部8を結ぶ円周よりも大きくなるように形成されている。また、取り付け部40aは、電線固定バンド1の幅方向に電線20が貫通できる孔があけられた壁が設けられているので、電線20が図10の矢印Cや矢印Dの方向に引っ張られても、固定部8や第1フランジ部3、第2フランジ部4と壁が接触して移動が規制される。
【0032】
本実施形態によれば、電線20を固定する電線固定バンド1において、リング状に形成し両端部が円周方向に交差した本体部2の一方の端部2aの先端に第1フランジ部3を、他方の端部2bの先端に第2フランジ部4を、他方の端部2bが一方の端部2aから離間する方向に凸部5を、他方の端部2bの先端よりも一方の端部よりに係止部6を、それぞれ設けているので、まず、第1フランジ部3と第2フランジ部4とで本体部2を拡径することができので、電線20を容易に挿入することができる。また、第2フランジ部4と凸部5とで本端部2を縮径することができるので、電線20に電線固定バンド1を固定することができる。また、係止部6により本体部2が弾性変形して中立状態に戻ることを阻止して固定状態を保持することができる。さらに、1つの部材で電線の固定とハウジング内の固定をすることができるので部品点数を削減することができる。
【0033】
また、本体部2の一方の端部2aにスリット9を設けて、スリット9に他方の端部2bが侵入して円周上に交差されているので、本体部2のリング状態を保持し易くすることができる。
【0034】
また、複数の爪部7を本端部2の円周に沿って内周に向かって突出するように設けているので、爪部7を電線20の外表面に食い込ませて確実に固定することができる。また、爪部7の食い込み量を調整することで保持力(ラップ量)を調整することができる。
【0035】
また、固定部8を一方の端部2aと他方の端部2bとの中間に設けたので、コネクタハウジング40内で電線20がどちらの方向に引っ張られても移動を規制することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電線固定バンドの中立状態の斜視図である。
【図2】図1のX−X線に沿う断面図である。
【図3】図1に示された電線固定バンドの固定状態の斜視図である。
【図4】図3のX−X線に沿う断面図である。
【図5】図1に示された相手方コネクタの斜視図である。
【図6】図1に示された電線固定バンドを用いた電線の固定手順の説明図である。
【図7】図1に示された電線固定バンドを用いた電線の固定手順の説明図である。
【図8】図1に示された電線固定バンドを用いた電線の固定手順の説明図である。
【図9】図1に示された電線固定バンドを用いた電線の固定手順の説明図である。
【図10】図1に示された電線固定バンドを用いた電線のコネクタハウジング内の固定状態の一部断面図である。
【図11】従来の電線の固定方法を示した一部断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 電線固定バンド(電線固定部材)
2 本体部(リング本体部)
2a 一方の端部
2b 他方の端部
3 第1フランジ部(一対のフランジ部)
4 第2フランジ部(一対のフランジ部)
5 凸部
6 係止部
7 爪部
8 固定部
9 スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス等の電線をハウジングに固定するための電線固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤーハーネスなどの電線が引っ張られた際の応力を加締め部等に伝えないために、電線中間部分をコネクタハウジング等の筐体に固定する構造を図11に示す。図11に示した構造は、電線101と、ハウジング102と、CS−RING103と、ストッパーRING104と、収縮チューブ105と、から構成されている。
【0003】
電線101は、複数の被服電線101aが外側絶縁カバー101bで覆われ、被服電線の一端には、例えば、芯線を露出させて端子金具などが取り付けられる。ハウジング102は、絶縁性の合成樹脂などで略円筒状に形成される。ハウジング102の内部を貫通する孔は、大径部102aと、大径部102aよりも直径が小さい小径部102bと、が連なって構成され、大径部102aと小径部102bとの境界には段部102cが形成されている。
【0004】
CS−RING103は、リング状に形成され、リングの内径は外側絶縁カバー101bの外径よりも大きい。また、CS−RING103は、リングの内側に向かって複数の凸部103aが形成されている。凸部103aは、各凸部103aの先端を結んだ円の径(凸内径)が外側絶縁カバー101bの外径よりも小さくなるように形成されている。ストッパーRING104は、リング状に形成され、リングの内径がCS−RING103の外径と略同一、かつ、外径がハウジング102の大径部102aと略同一となっている。収縮チューブ105は、外側絶縁カバー101bの外表面に取り付けられている。
【0005】
CS−RING103は、ストッパーRING104の内径部に取り付けられて、電線101に組み付けられる。その後ハウジング102内へ段部102cにストッパーRING104の一方の側面が接するように取り付けられる。
【0006】
また、電気伝導ケーブルを電気コネクタに固定する部材としては、特許文献1に記載のストレインリリーフが提案されている。
【特許文献1】特開2005−534141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図1に示した構造では、外側絶縁カバー101bの外径よりも小さい凸内径のCS−RING103を通さなければならないため常に圧入状態で作業することになり組み付けが困難である。また、組み付け性との兼ね合いからCS−RING103の凸部103aの大きさやラップ量には限界があり、十分なラップ量を設定することができない。また、図11の矢印A方向への移動規制は可能であるが逆方向への規制ができない。さらに、固定するためにCS−RING103とストッパーRING104の2つの部品が必要であり部品点数が多い。といった問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載のストレインリリーフはオーバーモールドされるので、分解が困難であり何度も脱着を行うことはできないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、組み付けが簡単で、部品点数が少なく、十分なラップ量の設定も可能で、さらに部品点数を少なくできる電線固定部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、内側に電線を通して、ハウジング内に取り付けられることにより前記電線を前記ハウジングに固定する電線固定部材において、両端部が円周方向に交差してリング状をなすとともに前記両端部が接離することで拡縮自在のリング本体部と、前記両端部の先端から前記リング本体部の外周方向に立設した一対のフランジ部と、前記リング本体部から外周方向に突出し、円周方向に交差した両端部のうち他方の端部が一方の端部から離間する方向に配置された凸部と、前記他方の端部から突出し、前記リング本体部が縮径した際に前記一方の端部の先端から立設した一方の前記フランジ部に係止される係止部と、を備えたことを特徴とする電線固定部材である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記リング本体部の前記一方の端部にスリットを設け、前記スリットに前記他方の端部が進入して円周上に交差されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記電線を固定する爪部が、前記リング本体部の内周に向かって突出するとともに前記リング本体部の円周に沿って複数設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記リング本体部の前記一方の端部と前記他方の端部との中間に前記リング本体部の外周方向に突出した前記ハウジングに固定される固定部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、一対のフランジ部を互いに接近させるようにしてリング本体部の外内径を拡径すれば電線を容易に通すことができるので組み付けが容易となる。また、他方の端部から立設したフランジ部と凸部とを互いに接近させるようにしてリング本体部の内外径を縮径すれば電線を強固に固定することができる。また、係止部によってリング本体部が中立状態に戻ることを阻止して前記した電線を固定する状態を保持することができる。また、固定を解除することが容易なため何度でも組み付けのやり直しが可能となる。さらに、1つの部材で電線の固定が可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に発明の効果に加えて、リング本体部の一方の端部に設けたスリットに他方の端部が進入して円周上に交差されることで、リング本体部のリング状態を保持し易くすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、複数の爪部によってより確実に電線を固定することができ、十分なラップ量を得ることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、固定した電線がどの方向に移動しようとしても移動を規制することができるため確実にハウジング内に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかる電線固定部材としての電線固定バンドを図1ないし図10に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる電線固定バンドの中立状態の斜視図である。図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。図3は、図1に示された電線固定バンドの固定状態の斜視図である。図4は、図3のX−X線に沿う断面図である。本発明の一実施形態にかかる電線固定バンド1は、図1ないし図4に示すように本体部2に、第1フランジ部3と、第2フランジ部4と、凸部5と、係止部6と、爪部7と、固定部8と、を備えている。
【0019】
リング本体部としての本体部2は、例えば帯板状の板金等を曲げる等してリング状に形成されている。また、本体部2は、リングが拡径(内外径が拡大)した際には挿入される電線の外径よりも大きく、後述する爪部7が電線に接触しない程度の大きさに形成されている。また、本体部2の他方の端部2bの幅は一方の端部2aの幅よりも狭く形成されている。また、本体部2の一方の端部2aにはスリット9が設けられており、後述する第2フランジ部4が進入して円周上に交差するように配置されている。従って、スリット9は他方の端部2aと略同じ幅かわずかに広く形成されており、さらに、スリット9は、本体部2が縮径(内外径が縮小)して係止部6が第1フランジ部3に係止されるまで第2フランジ部4が一方の端部2a方向に移動可能な長さに形成されている。すなわち、本体部2は両端部が円周方向に交差してリング状をなすとともに前記両端部が接離することで拡縮自在となっている。
【0020】
一対のフランジ部としての第1フランジ部3は、本体部2の一方の端部2aの先端に本体部2の外周方向に向かって立設している。一対のフランジ部としての第2フランジ部4は、本体部2の他方の端部2bの先端に本体部2の外周方向に向かって立設している。
【0021】
凸部5は、本体部2の一方の端部2aのスリット9よりも他方の端部2b寄りに設けられている。すなわち、本体部2の中立状態(外力を受けてなく弾性変形していない初期状態)で第2フランジ部4が第1のフランジ部3から離間する方向に配置されている。また、凸部5は、本体部2の他方の端部2b寄り(中央寄り)にコ字状に切れ目を入れて外周方向に折り曲げて突出している。
【0022】
係止部6は、本体部2の他方の端部2bに設けられている。また、係止部6は、本体部2の一方の端部2a寄りにコ字状に切れ目を入れて外周方向に折り曲げて突出している。また、係止部6は、図1および図2に示すように本体部2が弾性変形していない中立状態の場合、第1フランジ部3を第2フランジ部4との間に位置するように設けられている。そして、図3および図4に示すように本体部2が縮径して固定状態(電線を固定している状態)の場合、係止部6が第1フランジ部3に係止されて第2フランジ部が第1フランジ部に接近して中立状態に戻るのを阻止する。
【0023】
爪部7は、本体部2の両側面に円周に沿って複数設けられている。また、爪部7は、本体部2の内周に向かって突出している。
【0024】
固定部8は、本体部2の一方の端部2aと他方の端部2bの中間に設けられている。中間とは、例えば図1ないし図4のように、第1、第2フランジ部が円周の上方に位置した際には下方近辺に位置することが望ましい。また、固定部8は、本体部2の他方の端部2b寄りにコ字状に切れ目を入れて外周方向に折り曲げて突出している。
【0025】
次に、上述した構成の電線固定バンド1を用いた電線の固定手順について図5ないし図10を参照して説明する。
【0026】
まず、図5に示すように、電線固定バンド1の第1フランジ部3と第2フランジ部4とをラジオペンチ30で挟み、第1フランジ部3と第2フランジ部4が互いに接するようにする。このようにすると、本体部2が拡径する方向に弾性変形する。なお、ラジオペンチ30は、特にラジオペンチ30に限らず、第1フランジ3と第2フランジ4とを挟んで互いに接するようにできる工具であればよい。
【0027】
次に、図6に示すように、本体部2が拡径した状態の電線固定バンド1に電線20を挿入する。電線個定バンド1は、本体部2が拡径しているために電線20の外径よりも大きくなり容易に電線を挿入することができる。ここで、電線20は、従来技術と同様に複数の被服電線が外側絶縁カバーで覆われている。図6ないし図9は簡略化のため電線20の外側絶縁カバーで覆われた外表面部分のみを示す。
【0028】
次に、図7に示すように、電線20の所定の位置に電線固定バンド1が位置付けられた時点で第1、第2フランジを離す。そうすると、本体部2が縮径する方向に弾性復元し中立状態に戻ろうとする。本体部2が弾性復元すると、爪部7が、電線20の外表面に軽く食い込み仮固定することができる。
【0029】
次に、図8に示したように、第2フランジ部4と凸部5とをラジオペンチ30で挟み、第2フランジ部4と凸部5が互いに近づく(つまり、第1フランジ部3と第2フランジ部4とが離れる)ようにする。このようにすると、本体部2が縮径する方向に弾性変形し、係止部6が第1フランジ部4の付け根部分で押されて弾性変形しながら第1フランジ部3を通過する。
【0030】
そして、図9に示したように、係止部6が第1フランジ部3を完全に通過した時点でラジオペンチ30を離すと、係止部6の先端部が第1フランジ部3の側面と接触して本体部2が中立状態に戻ろうとすることを阻止する。この時点で、爪部7は、図7に示した状態よりもより深く電線20に食い込むためにより強固に保持される。
【0031】
上述した方向で電線20に取り付けられた電線固定バンド1は、図10に示すように例えば電線20内の被服電線を端子金具などに接続するコネクタハウジング40内の取り付け部40aに取り付けられる。取り付け部40aは、電線固定バンド1よりも幅(図10のW)が広く、かつ、内径(図10のH)が電線固定バンド1の第1フランジ部3、第2フランジ部4と固定部8を結ぶ円周よりも大きくなるように形成されている。また、取り付け部40aは、電線固定バンド1の幅方向に電線20が貫通できる孔があけられた壁が設けられているので、電線20が図10の矢印Cや矢印Dの方向に引っ張られても、固定部8や第1フランジ部3、第2フランジ部4と壁が接触して移動が規制される。
【0032】
本実施形態によれば、電線20を固定する電線固定バンド1において、リング状に形成し両端部が円周方向に交差した本体部2の一方の端部2aの先端に第1フランジ部3を、他方の端部2bの先端に第2フランジ部4を、他方の端部2bが一方の端部2aから離間する方向に凸部5を、他方の端部2bの先端よりも一方の端部よりに係止部6を、それぞれ設けているので、まず、第1フランジ部3と第2フランジ部4とで本体部2を拡径することができので、電線20を容易に挿入することができる。また、第2フランジ部4と凸部5とで本端部2を縮径することができるので、電線20に電線固定バンド1を固定することができる。また、係止部6により本体部2が弾性変形して中立状態に戻ることを阻止して固定状態を保持することができる。さらに、1つの部材で電線の固定とハウジング内の固定をすることができるので部品点数を削減することができる。
【0033】
また、本体部2の一方の端部2aにスリット9を設けて、スリット9に他方の端部2bが侵入して円周上に交差されているので、本体部2のリング状態を保持し易くすることができる。
【0034】
また、複数の爪部7を本端部2の円周に沿って内周に向かって突出するように設けているので、爪部7を電線20の外表面に食い込ませて確実に固定することができる。また、爪部7の食い込み量を調整することで保持力(ラップ量)を調整することができる。
【0035】
また、固定部8を一方の端部2aと他方の端部2bとの中間に設けたので、コネクタハウジング40内で電線20がどちらの方向に引っ張られても移動を規制することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電線固定バンドの中立状態の斜視図である。
【図2】図1のX−X線に沿う断面図である。
【図3】図1に示された電線固定バンドの固定状態の斜視図である。
【図4】図3のX−X線に沿う断面図である。
【図5】図1に示された相手方コネクタの斜視図である。
【図6】図1に示された電線固定バンドを用いた電線の固定手順の説明図である。
【図7】図1に示された電線固定バンドを用いた電線の固定手順の説明図である。
【図8】図1に示された電線固定バンドを用いた電線の固定手順の説明図である。
【図9】図1に示された電線固定バンドを用いた電線の固定手順の説明図である。
【図10】図1に示された電線固定バンドを用いた電線のコネクタハウジング内の固定状態の一部断面図である。
【図11】従来の電線の固定方法を示した一部断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 電線固定バンド(電線固定部材)
2 本体部(リング本体部)
2a 一方の端部
2b 他方の端部
3 第1フランジ部(一対のフランジ部)
4 第2フランジ部(一対のフランジ部)
5 凸部
6 係止部
7 爪部
8 固定部
9 スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に電線を通して、ハウジング内に取り付けられることにより前記電線を前記ハウジングに固定する電線固定部材において、
両端部が円周方向に交差してリング状をなすとともに前記両端部が接離することで拡縮自在のリング本体部と、
前記両端部の先端から前記リング本体部の外周方向に立設した一対のフランジ部と、
前記リング本体部から外周方向に突出し、円周方向に交差した両端部のうち他方の端部が一方の端部から離間する方向に配置された凸部と、
前記他方の端部から突出し、前記リング本体部が縮径した際に前記一方の端部の先端から立設した一方の前記フランジ部に係止される係止部と、
を備えたことを特徴とする電線固定部材。
【請求項2】
前記リング本体部の前記一方の端部にスリットを設け、前記スリットに前記他方の端部が進入して円周上に交差されていることを特徴とする請求項1に記載の電線固定部材。
【請求項3】
前記電線を固定する爪部が、前記リング本体部の内周に向かって突出するとともに前記リング本体部の円周に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電線固定部材。
【請求項4】
前記リング本体部の前記一方の端部と前記他方の端部との中間に前記リング本体部の外周方向に突出した前記ハウジングに固定される固定部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の電線固定部材。
【請求項1】
内側に電線を通して、ハウジング内に取り付けられることにより前記電線を前記ハウジングに固定する電線固定部材において、
両端部が円周方向に交差してリング状をなすとともに前記両端部が接離することで拡縮自在のリング本体部と、
前記両端部の先端から前記リング本体部の外周方向に立設した一対のフランジ部と、
前記リング本体部から外周方向に突出し、円周方向に交差した両端部のうち他方の端部が一方の端部から離間する方向に配置された凸部と、
前記他方の端部から突出し、前記リング本体部が縮径した際に前記一方の端部の先端から立設した一方の前記フランジ部に係止される係止部と、
を備えたことを特徴とする電線固定部材。
【請求項2】
前記リング本体部の前記一方の端部にスリットを設け、前記スリットに前記他方の端部が進入して円周上に交差されていることを特徴とする請求項1に記載の電線固定部材。
【請求項3】
前記電線を固定する爪部が、前記リング本体部の内周に向かって突出するとともに前記リング本体部の円周に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電線固定部材。
【請求項4】
前記リング本体部の前記一方の端部と前記他方の端部との中間に前記リング本体部の外周方向に突出した前記ハウジングに固定される固定部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の電線固定部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−31939(P2010−31939A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193559(P2008−193559)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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